説明

シリコンウエハ表面損傷評価方法

【課題】シリコンウエハ表面の微小加工損傷を検出する方法に関する。
【解決手段】シリコンウエハを希フッ酸で処理し、前記処理されたシリコンウエハをCuイオン含有希フッ酸に浸漬し、純水洗浄した後SC1洗浄し、前記シリコンウエハの表面に形成されたヘイズを分析することを特徴とする。
【効果】シリコンウエハ表面の微小加工損傷を確実にかつ高精度で検出、評価することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハ表面の損傷の評価方法、特にシリコンウエハ等の半導体ウエハ(以下単にウエハと称することがある)を加工する際に生じる表面損傷を評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近のシリコンウエハを用いた半導体LSIの製造技術の多くの分野において、シリコンウエハの表面に種々の工程が施される。かかる工程のうち研磨処理工程の目的のひとつはシリコンウエハの表面を湿式若しくは乾式方法で研削して表面を鏡面化することである。しかしながらかかる研磨処理工程により、表面上に微小であるが検出しにくい損傷が生じることも知られている。このような損傷の存在はその後のデバイス製造工程において歩留まりの低下、品質の低下等の重大な問題を引き起こす。そこで研磨処理工程の後等のシリコンウエハ表面の損傷を評価して管理することが重要となっている。
【0003】
従来この目的を達成するための評価方法が知られている。これらはシリコンウエハ表面をSC1洗浄した後、該表面に形成されたLPDの個数を検出する方法であり(特許文献2参照)、さらに損傷を増幅する目的でCu等汚染させたSC1液を用いるものである(特許文献1参照)。さらに係るSC1洗浄を行う前処理として、希フッ酸によりシリコンウエハ表面の自然酸化膜を除去し、その後希フッ酸中でCuイオンと処理して損傷部にCuを析出させる処理を行い、特にレーザー散乱式パーティクル検査装置を用いてピットを検出して評価する方法も開発されている(特許文献3参照)。
【0004】
しかしこれらの評価方法では、シリコンウエハ表面の損傷を十分に評価することはできず、より確実にかつより高い精度でシリコンウエハ表面の全範囲に亘って検出し評価する方法が強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−158271号公報
【特許文献2】特開平11−312717号公報
【特許文献3】特開2008−153538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はシリコンウエハ表面の全面に亘り損傷を確実にかつ高精度で検出、評価する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、かかる強い要望を満たすべく鋭意研究開発した結果、SC1洗浄を行う前処理として、希フッ酸によりシリコンウエハ表面の自然酸化膜を除去し、その後希フッ酸中でCuイオンと処理して損傷部にCuを析出させる処理を行った後、ウエハの全表面のヘイズを測定することにより解決できることを見いだし本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明はシリコンウエハ表面の微小加工損傷を検出する方法であって、シリコンウエハを希フッ酸で処理し、前記処理されたシリコンウエハをCuイオン含有希フッ酸に浸漬し、純水洗浄した後SC1洗浄し、前記シリコンウエハの表面に形成された表面粗さを、ヘイズ成分を分析することにより行うことを特徴とする、方法である。
【0009】
また本発明は、前記フッ酸の濃度が0.1〜10%、Cuイオン含有希フッ酸のCuイオン及び希フッ酸の濃度が、それぞれ0.01ppb以上、0.1〜10%であることを特徴とする、方法である。
【0010】
さらに、本発明のシリコンウエハ表面の微小加工損傷を検出する方法は、前記表面に形成されたヘイズを分析するためにレーザー散乱式パーティクル検査装置を用いることを特徴とする方法である。
【0011】
ここで本発明で、評価されるシリコンウエハ表面の損傷とは、種々の工程によりシリコンウエハ表面のみならず表面から10〜100nm程度の深さに形成される損傷を含む意味である。かかる損傷の具体的な種類としては、ポリッシング工程の際の微小スクラッチや潜傷などが挙げられる。
【0012】
また本発明で損傷の評価とは、損傷を与える工程の処理前の表面状態への当該工程の処理により受ける損傷を評価する意味であり、特定の損傷の有無を定性的に評価することと、特定の損傷の程度を定量的に評価することを含む。また、本発明で損傷の評価には、損傷を与える工程の処理前の表面状態への当該工程の処理により受ける損傷の種類及び/又は程度が特定の範囲内であるかどうかを評価することも意味する。
【発明の効果】
【0013】
SC1洗浄を行う前処理として、希フッ酸で処理することによりシリコンウエハ表面の自然酸化膜を除去し、表面を疎水性にする。その後希フッ酸中でCuイオンと処理することにより、損傷部に特異的にCuを析出させることができ、SC1洗浄によりCu析出部分又はその付近がヘイズを生じ、係るヘイズをウエハ全面に亘りマッピングすることにより、ウエハ表面の各部において生じている損傷を確実にかつ高精度で検出、評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明における加工損傷の評価結果を示す。
【図2】図2は、本発明における加工損傷のヘイズ検出による評価結果を示す。
【図3】図3は、比較方法による加工損傷のピット検出による評価結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上で説明した通り、本発明に係る評価方法は、評価されるべき表面に損傷を有するシリコンウエハをSC1洗浄を行う前に、まず希フッ酸によりシリコンウエハ表面の自然酸化膜を除去し、その後希フッ酸中でCuイオンと処理して損傷部にCuを析出させる処理を行うことを特徴とする(図1参照)。
【0016】
シリコンウエハ:
本発明の方法で評価されるシリコンウエハについては特に制限はなく、種々の材料、形状を有するものの評価が可能である。また損傷を与える工程の種類についても特に制限はなく、シリコンウエハの表面に損傷を与える可能性のある工程をすべて含む。具体的には研磨工程が挙げられ、特に最終仕上げの目的で行われる化学機械研磨工程が挙げられる。化学機械研磨工程ではシリコンウエハ表面に、擦り傷損傷、凹凸損傷、などが形成される。
【0017】
希フッ酸処理:
本発明の方法において、まずシリコンウエハを希フッ酸処理することを特徴とする。この処理によりシリコンウエハ表面の自然酸化膜が除去される。
【0018】
本発明においては希フッ酸の濃度としては0.1〜10%の範囲で使用することが好ましい。希フッ酸処理の時間、処理温度についても特に制限はなく、当該自然酸化膜を除去するために適宜選択することができる。
【0019】
希フッ酸処理の後は、通常公知の純水洗浄し、乾燥することができる。
【0020】
ここで上で説明した処理を行う装置についても本発明においては特に制限はなく従来公知の装置が使用可能である。
【0021】
Cuイオン含有希フッ酸処理:
本発明の方法は、希フッ酸処理したシリコンウエハに、Cuイオンを含む希フッ酸で処理すると、表面の損傷部分にのみCuが選択的に析出するという意想外の知見に基づくものである。ここでCuが析出するとは、Cuイオンが金属Cuとして損傷部分に析出することのみならず、種々の塩、復塩、錯体の形で損傷部分に蓄積、付着、沈殿等されることも意味する。
【0022】
本発明において希フッ酸の濃度、Cuイオンの濃度、Cuイオンの供給化合物については特に制限はない。シリコンウエハの材料、形状、損傷を形成する工程、表面の損傷の種類、程度、評価の方法に即して適宜選択することができる。本発明においては希フッ酸の濃度としては0.1〜10%の範囲で使用することが好ましい。さらにCuイオンの濃度は、0.01ppb以上であることが好ましい。0.01ppbよりも低濃度ではCuイオンが十分析出できない恐れがあるからである。
【0023】
当該処理の時間、処理温度についても特に制限はなく、十分Cuイオンを析出させるために適宜選択することができる。
【0024】
ここで上で説明した処理を行う装置についても本発明においては特に制限はなく従来公知の装置が使用可能である。
【0025】
当該処理の後は、通常公知の純水で洗浄し、乾燥することができる。
【0026】
純水洗浄処理:
ここで上で説明した純水洗浄処理についても本発明においては特に制限はなく従来公知の方法、装置が使用可能である。
【0027】
SC1洗浄処理:
本発明の方法は、シリコンウエハ表面の損傷部分にCuを析出させた後、通常のSC1洗浄処理を行うことを特徴とする。本発明で使用するSC1洗浄の方法、洗浄液、洗浄装置については特に制限はない。従来公知のSC1洗浄液組成物、洗浄装置が好ましく使用可能である。
【0028】
SC1洗浄液組成物としては、体積比で29%アンモニア水:31%過酸化水素水:純水=1:1:200から1:1:5の範囲であれば好ましく使用できる。また必要ならば他の成分を添加して使用することも可能である。
【0029】
また、シリコンウエハを一枚ずつ洗浄する方法と、複数のシリコンウエハを同時に洗浄する方法を共に使用可能である。洗浄時間、洗浄温度についても特に制限はなく、通常公知の時間、温度を使用することができる。例えば60〜80℃×50〜200分間の処理が例示できる。
【0030】
ヘイズ分析・評価:
本発明の方法によりSC1洗浄後のシリコンウエハ表面に形成されたヘイズは、ウエハ表面において生じている微小な凹凸であって、そのサイズ、形状で特徴づけられるものであって、よく知られたものである(例えば、特開2002−76082号公報参照)。従って当該ヘイズを分析する方法に関しては本発明は特に制限されず、通常公知の分析方法、分析装置を好ましく使用することができる。
【0031】
具体的にはヘイズの分析方法、分析装置としては、顕微鏡観察、レーザー散乱式パーティクル検査装置が挙げられる。ヘイズの定性的な分析・評価にはSEMやAFM等による顕微鏡観察が挙げられる。さらにヘイズの定量的分析・評価にはレーザー散乱式パーティクル検査装置の使用が好ましい。かかるシリコンウエハ表面のヘイズの分析、評価により、シリコンウエハ表面の加工損傷が評価できることになる。
【0032】
本発明においては、ウエハ全面のヘイズを測定することが好ましく、特にウエハ表面全面のヘイズをマッピングして視覚化することが好ましい。具体的にはウエハ表面をレーザー散乱式パーティクル検査装置でスキャンする方法が使用可能である。
【0033】
得られたウエハ表面のヘイズのマッピングは、ウエハの各位置での潜在的損傷を正確に、連続的に、かつ定量的に評価することを可能とする。
【0034】
また本発明の潜在的損傷評価方法は、従来のピットを検出して評価する方法と組み合わせて使用することも好ましい。これらを組み合わせて評価することにより、例えばLPDマップでは僅かしか検出できなかったウエハ表面損傷をヘイズモードでは高感度に検出することができる。故にLPDマップとヘイズマップを併用することで潜在的部分を含めた損傷部分全体をより具体的に視覚化することができる。
【0035】
以下本発明を実施例に則してより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0036】
評価シリコンウエハの準備:CZ法で引き上げられたp−型200mmシリコンウエハでCOPが非常に少ない結晶を用いた。
【0037】
(実施例)図1に示すように、試料ウエハを希フッ酸で処理し表面を疎水性にした後、Cuイオンを5ppb含有した希フッ酸にこの試料ウエハを浸漬した。その後体積比で29%アンモニア水:31%過酸化水素水:純水=1:5:50のSC1洗浄液を用いて60℃で90分間洗浄を実施した。最後にKLA−Tencor社製のSP1−TBIを用いて0.100μm以上のサイズのLPDを測定した。得られた結果を図2に示した。
【0038】
(比較例)特開2008−153538号公報の方法を用いてピット検出により評価した結果を図3に示した。
【0039】
図2に示したとおり、本発明の方法は従来の方法よりも水準間での微小加工損傷の差を高感度に、かつウエハ全面にわたり各部毎に検出評価することができた。
【産業上の利用可能性】
【0040】
半導体製造技術分野において、種々の加工工程で生じるシリコンウエハ表面の微小加工損傷を確実にかつ高精度で検出、評価することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンウエハを希フッ酸で処理し、前記処理されたシリコンウエハをCuイオン含有希フッ酸に浸漬し、純水洗浄した後SC1洗浄し、前記シリコンウエハの表面に形成されたヘイズを分析することを特徴とする、シリコンウエハ表面の加工損傷を検出する方法。
【請求項2】
フッ酸の濃度が0.1〜10%、Cuイオン含有希フッ酸のCuイオン及び希フッ酸の濃度が、それぞれ0.01ppb以上、0.1〜10%であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
表面に形成されたヘイズを分析するためにレーザー散乱式パーティクル検査装置を用いることを特徴とする、請求項1又は2のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−278234(P2010−278234A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−129282(P2009−129282)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(599119503)ジルトロニック アクチエンゲゼルシャフト (223)
【氏名又は名称原語表記】Siltronic AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】