シリコン芯線ホルダおよび多結晶シリコンの製造方法
【課題】シリコン芯線の芯線ホルダへの装着が容易であり、芯線ホルダにシリコン芯線を充分な強度で保持させるまでの時間を短くし、転倒を防止するとともに、多結晶シリコンの析出反応初期における成長速度抑制時間の短縮化を可能とする多結晶シリコン製造技術を提供すること。
【解決手段】芯線ホルダ20には本体の上面に開口部22をもち下面側に向かう芯線挿入孔21が形成されており、この芯線挿入孔21にシリコン芯線5が挿入される。また、芯線挿入孔21の中心軸Cを含む仮想平面Pに沿うスリット状の間隙部60が形成されており、このスリット状間隙部60は、芯線挿入孔21からホルダ20の本体の外側面にまで至る間隙部となっている。芯線挿入孔21に挿入されたシリコン芯線5は、例えばボルト・ナット方式の固定部材31によってホルダ20の本体の上部が側面から締め付けられることにより、間隙部60の間隔が狭まるように締め付けられて固定される。
【解決手段】芯線ホルダ20には本体の上面に開口部22をもち下面側に向かう芯線挿入孔21が形成されており、この芯線挿入孔21にシリコン芯線5が挿入される。また、芯線挿入孔21の中心軸Cを含む仮想平面Pに沿うスリット状の間隙部60が形成されており、このスリット状間隙部60は、芯線挿入孔21からホルダ20の本体の外側面にまで至る間隙部となっている。芯線挿入孔21に挿入されたシリコン芯線5は、例えばボルト・ナット方式の固定部材31によってホルダ20の本体の上部が側面から締め付けられることにより、間隙部60の間隔が狭まるように締め付けられて固定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多結晶シリコンの製造に用いられる芯線ホルダおよび当該芯線ホルダを用いた多結晶シリコンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造用の単結晶シリコンや太陽電池製造用のシリコンの原料となる多結晶シリコンを製造する方法として、シーメンス法が知られている。シーメンス法は、クロロシランを含む原料ガスを、加熱されたシリコン芯線に接触させることにより、該シリコン芯線の表面に多結晶シリコンをCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて気相成長させる方法である。
【0003】
シーメンス法により多結晶シリコンを気相成長する際、気相成長装置の反応炉内に、鉛直方向に2本と水平方向に1本のシリコン芯線を鳥居型に組み立てる。そして、該鳥居型のシリコン芯線の両端を、一対の芯線ホルダを介して、ベースプレート上に配置した一対の金属電極に固定する。このような構成は、例えば特開2010−235438号公報(特許文献1)に開示されている。
【0004】
上述の金属電極は、絶縁物を挟んでベースプレートを貫通し、配線により別の金属電極に接続されるか、反応炉外に配置された電源に接続される。気相成長中に多結晶シリコンが析出することを防止するために、金属電極とベースプレートと反応炉は、冷媒を用いて冷却される。その結果、金属電極に固定された芯線ホルダも、金属電極により冷却される。
【0005】
金属電極から電流を導通させてシリコン芯線を水素雰囲気中で900℃以上1200℃以下の温度範囲に加熱しながら、原料ガスとして、例えばトリクロロシランと水素の混合ガスを、ガスノズルから反応炉内に供給する。原料ガス中に含まれるシリコンは、シリコン芯線上に多結晶シリコンとして析出(気相成長)し、所望の直径の多結晶シリコン棒が逆U字状に形成される。
【0006】
ところで、従来より、このような多結晶シリコンの気相成長の工程中あるいは工程後において、多結晶シリコン棒の倒れが生じることが問題として認識されていた。そして、このような倒れ防止の対策として、例えば特開2002−234720号公報(特許文献2)には、145W/m・Kより大きい熱伝導率を有し、かつシリコンの熱膨張率に適合した熱膨張率を有する芯線ホルダを用いることが提案されている。
【0007】
シーメンス法により多結晶シリコンを気相成長する場合、生産性の向上のためには、成長初期から原料ガスを大流量または高濃度に供給して成長速度を大きくすることが望ましい。しかし、成長初期に原料ガスを大流量または高濃度に供給すると、シリコン芯線が倒れやすい。
【0008】
シリコン芯線の倒れは、シリコン芯線と芯線ホルダの接合強度が不十分な時期に発生し易いが、これは、多結晶シリコンの成長初期において、芯線ホルダのシリコン芯線保持部(接合部)近傍で、シリコン芯線上に多結晶シリコンが不均一に成長することに起因すると考えられる。
【0009】
芯線ホルダは通常グラファイト製であり、その一方端側(上端側)にはシリコン芯線を挿入して保持させるために開口された空洞(孔部)が形成され、他方端側(下端側)が金属電極に固定される。そして、金属電極から芯線ホルダの下端側に供給された電流は、抵抗の低い芯線ホルダの上端側の端まで流れ、空洞の開口部近傍で初めてシリコン芯線に流入する。
【0010】
図1は、従来の態様でシリコン芯線を芯線ホルダに保持させた状態を説明するための断面概略図である。シリコン芯線5の断面は一般的には四角形であり、この場合、芯線ホルダ20に形成される孔部21の断面も四角形である。シリコン芯線の端部は、この四角形断面の孔部に挿入され、棒状の締付部材40等により、孔部21の内面の4面のうちの隣接する2面に押し付けられて固定される。
【0011】
金属電極から芯線ホルダ20の下端側に供給された電流は、シリコン芯線の端部に密着する上記2面からシリコン芯線5に流れ込む。シリコン芯線5に流れ込んだ電流は最短距離でシリコン芯線5の上方へと流れるため、芯線ホルダ20の孔部21の内面の4面のうちのシリコン芯線5に密着する2面側のシリコン芯線5の部位での発熱は、非密着の2面側のシリコン芯線5の部位に比較して促進される。
【0012】
このような発熱状態の不均等は、多結晶シリコンの析出不均等を生じさせるため、多結晶シリコンの反応反応の初期段階において、芯線ホルダ20の孔部21の内面に密着する2面側のシリコン芯線5の部位と非密着の2面側のシリコン芯線5の部位での、多結晶シリコン形状の不均等が顕著になってしまう。また、シリコン芯線5に密着していない孔部21の内部領域では、放電が生じ易く、シリコン芯線5の損傷も生じ易い。
【0013】
図2は、従来の他の態様でシリコン芯線を芯線ホルダに保持させた状態を説明するための断面概略図であるが、シリコン芯線5の断面が円形で、芯線ホルダ20に形成される孔部21の断面も円形である場合であっても、孔部21内面にはシリコン芯線5との非密着部が生じており、上述したのと同様の問題が生じる。
【0014】
芯線ホルダ20は金属電極により冷却されているため、シリコン芯線5の芯線ホルダ20側の温度はシリコン芯線5の直胴部に比較して低い。このため、とりわけ多結晶シリコンの析出反応の初期段階において、析出速度が相対的に遅い芯線ホルダ20側と析出速度が相対的に早い直胴部での多結晶シリコン径の差が顕著となる。
【0015】
このように、特に析出反応の初期段階においては、芯線ホルダのシリコン芯線保持部の近傍で多結晶シリコンの径が直胴部に比較して顕著に細く且つ当該領域の多結晶シリコンの形状が不均等な状態にある。このような状態で原料ガスの流量や濃度を大幅に増加すると、シリコン芯線に揺れが発生しこの揺れによって保持部にモーメントが集中する。しかも、上述したように、当該保持部では放電によりシリコン芯線の損傷が起き易い。これらが原因となって、シリコン芯線の倒れが起き易くなる。
【0016】
加えて、原料ガスの流量や濃度を増加させた場合には、シリコン芯線の温度を維持するために、原料ガスの対流伝熱に相当する熱量を補給する必要があるため、供給電流も急激に増加させる必要がある。このような急激な供給電流の増加は、シリコン芯線の各部位における電流密度の急激な増加を意味するから、形状不均等部位や細径部位において部分的なシリコン融解や溶断を誘発する。これもまた、シリコン芯線が倒れる原因となる。
【0017】
このような背景の下、従来は、多結晶シリコンを気相成長させるに際し、芯線ホルダの孔部内のシリコン芯線と接していない隙間全体に多結晶シリコンが堆積してシリコン芯線が芯線ホルダに保持される強度が十分なものとなるまでの間、原料ガスの流量および濃度を制限する必要があった。その結果、当該原料ガスの供給制御が行われている間は、多結晶シリコンの析出速度が低下せざるを得ないという問題があった。
【0018】
また、WO2010/115542号パンフレット(特許文献3)には、初期加熱によるダメージを抑制するために、シリコン芯線を保持する部分を3つ以上に対称に分割した保持部が開示されている。
【0019】
さらに、WO2010/133386号パンフレット(特許文献4)には、シリコン芯線と芯線ホルダの良好な接触を得るために、芯線ホルダの一部に間隙を設け、テーパーをつけたキャップ機構によって保持すべきシリコン芯線の下端部を締め付けるという手法が提案されている。
【0020】
しかし、特許文献3や特許文献4に開示の技術は、シリコン芯線を芯線ホルダに保持させる作業が必ずしも容易とは言えず、短時間で作業を完了することは難しい。例えば、特許文献4に開示されているようなキャップ機構を用いる場合、シリコン芯線を芯線ホルダに保持させる作業は煩雑であり、しかも、締め付け強度の調整も難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2010−235438号公報
【特許文献2】特開2002−234720号公報
【特許文献3】WO2010/115542号パンフレット
【特許文献4】WO2010/133386号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、上述したような従来技術が抱える問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、シリコン芯線の芯線ホルダへの装着が容易であり、芯線ホルダにシリコン芯線を充分な強度で保持させるまでの時間を短くすることにより、多結晶シリコンの析出反応初期における成長速度抑制時間の短縮化を可能とする多結晶シリコン製造技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
このような課題を解決するために、本発明に係る第1の態様のシリコン芯線ホルダは、シーメンス法による多結晶シリコン製造時に用いられるシリコン芯線を保持するためのホルダであって、前記ホルダの本体には、上面から下面側に向かう孔部であって前記シリコン芯線を挿入するための芯線挿入孔と、前記芯線挿入孔の中心軸を含む仮想平面上に位置するスリット状の間隙部もしくは該仮想平面と平行な面上に位置するスリット状の間隙部であって前記芯線挿入孔から前記ホルダ本体の外側面にまで至る間隙部が設けられており、前記間隙部の間隔が狭まるように締め付けて前記芯線挿入孔内に挿入された前記シリコン芯線の固定を行う固定部材を備えている。
【0024】
本発明に係る第2の態様のシリコン芯線ホルダは、シーメンス法による多結晶シリコン製造時に用いられるシリコン芯線を保持するためのホルダであって、前記ホルダの本体には、上面から下面側に向かう孔部であって前記シリコン芯線を挿入するための芯線挿入孔と、前記芯線挿入孔の中心軸を含む仮想平面上に位置するスリット状の間隙部もしくは該仮想平面と平行な面上に位置するスリット状の間隙部であって前記芯線挿入孔から前記ホルダ本体の外側面にまで至る間隙部と、前記芯線挿入孔の中心軸を通り且つ前記仮想平面に垂直な方向に固定部材挿入孔が設けられており、前記固定部材挿入孔から前記シリコン芯線の下端側に設けられた貫通孔を通るように挿入され、前記間隙部の間隔が狭まるように締め付けて前記芯線挿入孔内に挿入された前記シリコン芯線の固定を行う固定部材を備えている。
【0025】
本発明のシリコン芯線ホルダにおいて、前記間隙部は、前記芯線挿入孔の中心軸に対してn回対称(nは2以上の整数)の関係にある前記ホルダ本体の外側面にまで至るn個のスリット状の間隙部として設けられている態様とすることができる。
【0026】
また、本発明のシリコン芯線ホルダにおいて、前記スリット状の間隙部の下端は、前記ホルダ本体の底面より高い位置にあり、前記ホルダ本体の底面が分割されていない態様としてもよく、前記スリット状の間隙部の下端は、前記ホルダ本体の底面にまで達しており、前記ホルダ本体の底面が分割されている態様としてもよい。
【0027】
好ましくは、前記ホルダ本体は、曲げ強さが10MPa以上でショア硬さが20以上の強度を有する材料からなる。
【0028】
本発明に係る多結晶シリコンの製造方法では、本発明に係るシリコン芯線ホルダを用い、前記シリコン芯線を前記芯線挿入孔内に挿入するに際して、前記ホルダ本体と前記シリコン芯線との接触面に抵抗率が1500μΩ-cm以下の導電性シートを挟み込み、前記シリコン芯線に通電した際の前記ホルダ本体と前記シリコン芯線との接触面における接触抵抗を下げる。
【発明の効果】
【0029】
本発明のシリコン芯線ホルダを用いれば、芯線挿入孔両端から実質的に対称に且つ均等にシリコン芯線を固定できる。このため、熱伝導や熱輻射といった熱環境が析出反応の初期から均一となり、その結果、析出する多結晶シリコンの形状が軸に対して対称的なものとなる。
【0030】
また、従来構造のシリコン芯線ホルダを用いた場合に生じ易かった放電も抑えられ、析出反応初期の芯線ホルダやシリコン芯線の損傷も抑えられる。
【0031】
本発明により、シリコン芯線の芯線ホルダへの装着が容易であり、芯線ホルダにシリコン芯線を充分な強度で保持させるまでの時間を短くすることにより、多結晶シリコンの析出反応初期における成長速度抑制時間の短縮化を可能とする多結晶シリコン製造技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】従来の態様でシリコン芯線を芯線ホルダに保持させた状態を説明するための断面概略図である。
【図2】従来の他の態様でシリコン芯線を芯線ホルダに保持させた状態を説明するための断面概略図である。
【図3A】本発明に係る第1の態様のシリコン芯線ホルダの構成例を説明するための図(側面図)である。
【図3B】本発明に係る第1の態様のシリコン芯線ホルダの構成例を説明するための図(正面図)である。
【図3C】本発明に係る第1の態様のシリコン芯線ホルダの構成例を説明するための図(上面図)である。
【図4】本発明に係る第1の態様のシリコン芯線ホルダの他の構成例を説明するための図(上面図)である。
【図5】本発明に係る第1の態様のシリコン芯線ホルダの他の構成例を説明するための図(断面図)である。
【図6】本発明に係る第1の態様のシリコン芯線ホルダの他の構成例を説明するための図(側面図)である。
【図7A】本発明に係る第2の態様のシリコン芯線ホルダの構成例を説明するための図(断面図)である。
【図7B】本発明に係る第2の態様のシリコン芯線ホルダの構成例を説明するための図(上面図)である。
【図7C】本発明に係る第2の態様のシリコン芯線ホルダの構成例を説明するための図(側面図)である。
【図7D】本発明に係る第2の態様のシリコン芯線ホルダの構成例を説明するための図(上面図)である。
【図7E】本発明に係る第2の態様のシリコン芯線ホルダの構成例を説明するための図(側面図)である。
【図7F】本発明に係る第2の態様のシリコン芯線ホルダの構成例を説明するための図(上面図)である。
【図7G】本発明に係る第2の態様のシリコン芯線ホルダの構成例を説明するための図(側面図)である。
【図7H】本発明に係る第2の態様のシリコン芯線ホルダの構成例を説明するための図(上面図)である。
【図8】本発明に係る第2の態様のシリコン芯線ホルダの他の構成例を説明するための図(断面図)である。
【図9】導電性シートを用いた状態を説明するためのシリコン芯線ホルダの構上面図である。
【図10】従来の構成のホルダを用いた場合の多結晶シリコンの形状を説明するための図である。
【図11】本発明に係るホルダを用いた場合の多結晶シリコンの形状を説明するための図である。
【図12】多結晶シリコンの気相成長装置の構成を説明するための断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、図面を参照して、本発明のシリコン芯線ホルダおよび多結晶シリコンの製造方法について説明する。
【0034】
図3A〜Cは、本発明に係る第1の態様のシリコン芯線ホルダの構成例を説明するための図で、それぞれ、側面図、正面図、および上面図である。
【0035】
この芯線ホルダ20は、シーメンス法による多結晶シリコン製造時に用いられるシリコン芯線を保持するためのホルダであって、ホルダ20の本体の上面に開口部22をもち下面側に向かう孔部(芯線挿入孔)21が形成されており、この芯線挿入孔21にシリコン芯線5が挿入される。また、芯線挿入孔21の中心軸Cを含む仮想平面Pに沿う(仮想平面上に位置する)スリット状の間隙部60が形成されており、このスリット状間隙部60は、芯線挿入孔21からホルダ20の本体の外側面にまで至る間隙部となっている。
【0036】
芯線挿入孔21に挿入されたシリコン芯線5は、プレート状の押圧部材31cを備えたピンチコックタイプの固定部材31によってホルダ20の本体の上部が側面から締め付けられることにより、間隙部60の間隔が狭まるように締め付けられて固定されることになる。
【0037】
なお、図3A〜Cに示した構成のものは、スリット状の間隙部60が2箇所、すなわち、芯線挿入孔21の中心軸Cに対して2回対称(360°/180°回対称)の関係にあるホルダ本体20の外側面S1とS2にまで至る2個のスリット状の間隙部として設けられている。しかし、本発明はこの態様に限定されるものではなく、スリット状の間隙部は1つだけ設けられる態様のものであってもよい。これとは逆に、芯線挿入孔21の中心軸Cに対して3回対称以上の関係にあるホルダ本体20の外側面にまで至るn個(nは3以上の整数)のスリット状の間隙部を設けるようにしてもよい。さらに、上記「間隙部」は単一のスリット状の間隙部である必要はなく、複数のスリット状の間隙部の組を「間隙部」と観念することもできる。このような場合、2回対称の「間隙部」を設ける場合においても、スリット状の間隙部は2m個(mは2以上の整数)となる。例えば、「間隙部」が2個のスリット状の間隙部の組から成るものであるとすると、このような「間隙部」が2個(2組)形成されることとなり、総計では4個のスリット状の間隙部が設けられることになる。
【0038】
ここで、間隙部60の間隔を狭まるような締め付けは、図3A〜Cに例示したようなピンチコックタイプの固定部材31によるものに限定されるものではない。
【0039】
例えば、図4の上面図に例示した様に、図3Cに示したようなプレート状の部材31cを用いることなく、これと同様の作用が得られる部位をホルダ20の本体上部に形成するようにしてもよい。そして、当該部位に設けた孔部(固定部材挿入孔)にボルト状の部材(固定軸)を通し、これをナットで締める構成の固定部材31を用いるようにしてもよい。
【0040】
また、例えば、図5の断面図に例示したように、ホルダ本体20に固定部材31の一方である凸部31aを雄ネジ状に形成しておき、この凸部31aと固定部材31の他方であるナット状の部材31bの組み合わせにより、間隙部60の間隔を狭めるように締め付けてシリコン芯線5を固定するようにしてもよい。
【0041】
さらには、図6の側面図に例示したように、ホルダ本体20に固定部材31の一方としての凹部31aを形成してその内面を雌ネジ状にしておき、この凹部31aと固定部材31の他方であるボルト状の部材31bの組み合わせにより、間隙部60の間隔を狭めるように締め付けてシリコン芯線5を固定するようにしてもよい。シリコン芯線5の取り付け作業性は、図6に示した態様のものが高い。
【0042】
なお、固定部材31がボルト・ナット方式の場合、雄ネジ部品1つに対し、雌ネジ部品が1つのものでも2つのものでもよいが、本発明者らの比較によれば、後者の方がより確実な締め付けができる。
【0043】
これまで図示した態様では、スリット状の間隙部60の下端(終端)はホルダ本体20の底面より高い位置にあり、ホルダ本体20の底面が分割されていない。しかし、間隙部60の下端がホルダ本体20の底面にまで達しており、ホルダ本体20の底面が分割されている態様であってもよい。
【0044】
図7A〜Bは、本発明に係る第2の態様のシリコン芯線ホルダの構成例を説明するための図で、それぞれ、断面図および上面図である。
【0045】
この芯線ホルダ20は、シーメンス法による多結晶シリコン製造時に用いられるシリコン芯線を保持するためのホルダであって、ホルダ20の本体の上面に開口部22をもち下面側に向かう孔部(芯線挿入孔)21が形成されており、この芯線挿入孔21にシリコン芯線5が挿入される。また、芯線挿入孔21の中心軸Cを含む仮想平面Pに沿うスリット状の間隙部60が形成されており、このスリット状間隙部60は、芯線挿入孔21からホルダ20の本体の外側面にまで至る間隙部となっている。
【0046】
ホルダ本体20には、さらに、芯線挿入孔21の中心軸Cを通り且つ仮想平面Pに垂直な方向に固定部材31の挿入孔30が設けられている。また、シリコン芯線5の下端側にも貫通孔32が形成されており、固定部材の挿入孔30から挿入された固定部材31は貫通孔32を貫通し、間隙部60の間隔が狭まるように締め付けがなされて、芯線挿入孔21内に挿入されたシリコン芯線5の固定がなされる。
【0047】
なお、図7A〜Bに示した構成のものは、スリット状の間隙部60が2箇所、すなわち、芯線挿入孔21の中心軸Cに対して2回対称(360°/180°回対称)の関係にあるホルダ本体20の外側面S1とS2にまで至る2個のスリット状の間隙部として設けられている。しかし、既に述べたとおり、本発明はこの態様に限定されるものではなく、スリット状の間隙部は1つだけ設けられる態様のものであってもよい。また、これとは逆に、芯線挿入孔21の中心軸Cに対して3回対称以上の関係にあるホルダ本体20の外側面にまで至るn個(nは3以上の整数)のスリット状の間隙部を設けるようにしてもよい。なお、図7Cおよび図7Dに示したように、スリット状の間隙部60を敢えて設けることなく、芯線挿入孔21とシリコン芯線5との間の隙間を適切なものとすることにより、固定部材31により締め付けた際のホルダ本体20の撓みを利用して、ホルダ本体20とシリコン芯線5との良好な接触を形成するようにしてもよい。さらに、図7Eおよび図7Fに示したように、2個のスリット状の間隙部の組(60A:60A1〜2、60B:60B1〜2)を「間隙部」と観念し、この「間隙部」(60Aと60B)を2回対称で配置したり、図7Gおよび図7Hに示したように、3個のスリット状の間隙部の組(60A:60A1〜3、60B:60B1〜3)を「間隙部」と観念し、この「間隙部」(60Aと60B)を2回対称で配置したりしてもよい。つまり、m個のスリット状の間隙部の組を「間隙部」と観念し、この「間隙部」を2回対称で配置するようにしてもよい。この場合には、スリット状の間隙部は総計で2m個(mは2以上の整数)となる。
【0048】
さらに、固定部材31は1つ(若しくは1組)である必要はなく、例えば図8の断面図に例示するように、複数の固定部材31を備える構成としてもよい。なお、この点については上述の第1の態様においても同様であり、固定部材31の態様に種々のバリエーションがあることは、第1の態様において説明したとおりであるので重複しての説明は省略する。
【0049】
本発明のシリコン芯線ホルダでは、間隙部60の間隔が狭まる方向への締め付け力は、芯線挿入孔21内に挿入されたシリコン芯線5に対して概ね対称となり、従来方法のような非対称性をもたない。
【0050】
シリコン芯線ホルダの本体20は、曲げ強さ10MPa、ショア硬さ20以上の強度を有する材料を使用することが好ましい。具体的には、結晶化度の低い炭素材を3000℃前後で熱処理して結晶度を高めた炭素材料が好ましい。なお、これらの強度に関する情報は、カタログ情報等で容易に入手することができる。
【0051】
また、図9に示したように、シリコン芯線5を芯線挿入孔21内に挿入するに際して、ホルダ本体20とシリコン芯線5との接触面に、抵抗率が1500μΩ-cm以下の導電性シート61を挟み込み、シリコン芯線5に通電した際のホルダ本体20とシリコン芯線5との接触面におけるミクロな接触面積を上げることによって接触抵抗を下げることが好ましい。このような導電性シート61としては、グラファイトの他、アルミ−炭素繊維、アルミ−シリコンカーバイド等の複合材料やタングステンカーバイド等の金属からなるものを例示することができる。このような導電性シート61の厚さは、例えば、0.2〜2mmとする。
【0052】
以下に、図7A〜Bに例示した、本発明に係る第2の態様のシリコン芯線ホルダを用いて行う多結晶シリコンの製造手順について説明する。
【0053】
ホルダ本体20は、例えば、グラファイト製の炭素電極とすることができる。図7A〜Bに示した例では、一方端側が円錐台状の斜面を有する形状とされ、当該端部には開口部22が設けられ、シリコン芯線5を挿入して保持するための孔部(芯線挿入孔)21が形成されている。
【0054】
ここで、シリコン芯線5の断面形状および芯線挿入孔21の断面形状は必ずしも矩形である必要はなく、何れもが円形であったり三角形や五角形などであってもよい。しかし、これらの断面形状が矩形であると、固定部材31で締め付けを行った際に確実に広い接触面積を得ることが容易である。
【0055】
シリコン芯線5の表面には、シーメンス法により多結晶シリコンが気相成長し、多結晶シリコン棒の製造が行われる。なお、芯線ホルダ20の他方端側は、後述する通り、シリコン芯線5に電流を流すための金属電極、もしくは金属電極と芯線ホルダの間に設けられるアダプタとの接触部となり、芯線ホルダ20が金属電極2に、アダプタがある場合にはアダプタを介して固定される。
【0056】
開口部22近傍の円錐台状斜面には、芯線ホルダを貫通する固定部材31の挿入孔30が設けられている。また、芯線挿入孔21に挿入されるシリコン芯線5には、ホルダ本体20に設けられた挿入孔30と同一の高さに、貫通孔32が設けられている。
【0057】
ホルダ本体20に設けられた挿入孔30とシリコン芯線5に設けられた貫通孔32に、固定部材31の一方であるボルト形状の固定軸31aを通し、その両側から固定部品31の他方であるナット31bで固定する。
【0058】
図1および図2で説明したように、芯線ホルダ本体20とシリコン芯線5に共通の固定軸31aを通せる孔部が設けられていない従来の態様では、芯線ホルダ20に設けられた芯線挿入孔21とこの芯線挿入孔21に挿入されたシリコン芯線5との接触状態は、シリコン芯線5の中心軸に対して顕著に非対称なものとなる。このような状態で通電を行うと、シリコン芯線5の温度もその中心軸に対して顕著に非対称なものとなるため、析出した多結晶シリコン6の形状は、図10に示すように不均一なものとなる。
【0059】
これに対し、本発明のシリコン芯線ホルダを用いた場合には、シリコン芯線5を芯線挿入孔21内の中央に位置させることができるため、芯線挿入孔21とこの芯線挿入孔21に挿入されたシリコン芯線5との接触状態を、シリコン芯線5の中心軸に対して実質的に対称なものとすることができる。
【0060】
このような状態で通電を行うと、シリコン芯線5の温度もその中心軸に対して実質的に対称なものとなるため、析出した多結晶シリコン6の形状は、図11に示すように均一なものとなる。
【0061】
また、図9を用いて説明したように、シリコン芯線5を芯線挿入孔21内に挿入するに際して、ホルダ本体20とシリコン芯線5との接触面に抵抗率が1500μΩ-cm以下の導電性シートを挟み込むこととした場合には、ホルダ本体20とシリコン芯線5の固定がより確実なものとなるだけではなく、接触抵抗が下がるために多結晶シリコンの析出反応初期の形状均一性が更に高まる。
【0062】
このように、本発明に係るシリコン芯線ホルダを用いると、芯線ホルダ20へのシリコン芯線5の強固な保持が実現して転倒が防止されるだけではなく、多結晶シリコンの析出反応初期における成長速度抑制期間が短縮される結果、生産性も高まる。
【0063】
本発明者らによる検討によれば、芯線ホルダ20とシリコン芯線5の良好な接触状態を得るためには、シリコン芯線5を芯線ホルダ20の芯線挿入孔21に挿入した際のシリコン芯線5と芯線挿入孔21の内面との隙間は、固定部材31による締め付け前の状態で0.3mm以下であることが好ましい。
【0064】
シリコン芯線5と芯線挿入孔21の内面との隙間が0.3mmを超えると、固定部材31による締め付けを行った際に、ホルダ本体20の締め付け部分に割れ等が発生し易い。このような不都合を回避するためには、ホルダ本体20の強度を高いものとしておく必要があり、ホルダ本体20の部材としては、ショア硬さが20以上で曲げ強さが10Mpa以上のものが望ましい。
【0065】
なお、固定部材31をボルト・ナット方式のものとした場合、締め付けトルクを一定に管理することが好ましい。
【0066】
図12は、本発明が用いられる気相成長装置100の一例を示す概略説明図である。気相成長装置100は、シーメンス法によりシリコン芯線5の表面に多結晶シリコン6を気相成長させる装置であり、ベースプレート1と反応炉10により概略構成される。なお、ここでは、芯線ホルダ20はグラファイト製の炭素電極である。
【0067】
ベースプレート1には、シリコン芯線5に電流を供給する金属電極2と、窒素ガス、水素ガス、トリクロロシランガスなどのプロセスガスを供給するガスノズル3と、排気ガスを排出する排気口4が配置されている。
【0068】
金属電極2は、絶縁物7を挟んでベースプレート1を貫通し、配線を通して別の金属電極に接続されるか、反応炉外に配置された電源に接続される。金属電極2とベースプレート1と反応炉10は冷媒を用いて冷却される。
【0069】
図12に示したように、多結晶シリコン6を気相成長する際、反応炉10内にシリコン芯線5を鉛直方向2本、水平方向1本の鳥居型に組み立て、該鳥居型のシリコン芯線5の両端を一対の芯線ホルダ20を介してベースプレート1上に配置した一対の金属電極2に固定する。
【0070】
芯線ホルダ20は、ショア硬さが20以上で曲げ強さが10Mpa以上、そして、熱伝導率が145W/m・K以下のグラファイト製であり、円錐台状の斜面を有する一方端側(上端側)にはシリコン芯線5を挿入して保持させるために開口された空洞(芯線挿入孔)21が形成されており、他方端側(下端側)が金属電極2に固定される。
【0071】
熱伝導が145W/m・K以下とするのは、本発明者らの検討の結果によるが、芯線ホルダ20自体の熱伝導率が低いほど金属電極2へと逃げる熱の量は低下し、断熱効果が働いて芯線ホルダ20の上部の温度を高く維持することができるためである。芯線ホルダ20の上部の温度を高く維持することができれば、通電時のシリコン芯線下部の温度を高く維持することができるから、印加電圧を下げることができて通電時の損傷を抑えることができる。また、この部分での反応初期の多結晶シリコンの析出速度を高めることもできる。
【0072】
上端側の円錐台状斜面に孔部(挿入孔)30を有する芯線ホルダ20の芯線挿入孔21に、挿入孔30に位置合わせされた挿入孔32を形成したシリコン芯線5を挿入し、ボルト31aとナット31bを用いて固定する。上述したように、ナット31bの締め付けはトルク管理するのが望ましい。
【0073】
ボルト31aはマシンボルトタイプでも良いが、その場合は、ナット31bは片側からのみ締め付けることとなる。また、ボルト31aがスタットボルトタイプの場合は、ナット31bは両側から締め付けることになる。本発明者らの検討によれば、ボルト30aはスタットボルトタイプが好ましい。
【0074】
次に、図示しないヒータを用いてシリコン芯線5を250℃以上の温度に予備加熱し、シリコン芯線5中を電流が効率的に流れるほどの導電性にする。続いて、金属電極2から芯線ホルダ20を介してシリコン芯線5へと電流を供給し、シリコン芯線5を900℃以上に加熱する。
【0075】
本発明の検討によれば、点火時には60〜70A程度の電流を流し、その後、100A程度の電流を供給して芯線表面温度を900℃以上として多結晶シリコンの析出反応を開始することが好ましい。そこで、点火後に、約100Aの電流を供給しながら水素ガスとともにトリクロロシランガスを原料ガスとして低流量で供給し、気相成長を開始する。このとき、グラファイト製芯線ホルダ20に固定されたシリコン芯線5に流れる電流の断面電流密度は、0.13A/mm2以上4.9A/mm2以下となる。
【0076】
シリコン芯線5への通電が開始され、多結晶シリコン6の気相成長が始まると、シリコン芯線5および多結晶シリコン6からの伝導熱および輻射熱を受けて、芯線ホルダ20の上端側が加熱されるが、上述したように、本発明ではシリコン芯線5と芯線ホルダ20は実質的に軸対称となるように接触しているため、芯線ホルダ20の上端側とシリコン芯線5の接触面が均一に(軸対称で)加熱され、多結晶シリコン6の析出も均一なものとなる。
【0077】
上述したとおり、均一に析出した多結晶シリコンは、芯線ホルダ20によるシリコン芯線5の固定をより強固なものとするのみならず、当該部分の多結晶シリコンの形状が軸対称であるために異常な応力もかからない。
【0078】
従来の手法では、芯線ホルダ20によるシリコン芯線5の固定を十分に強固なものとするには、シリコン棒の直径が35mm程度にまで到達する必要があったが、本発明のシリコン芯線ホルダを用いた場合には、シリコン棒の直径が15mm程度となった時点で十分に強固な固定が実現することが分かった。
【0079】
芯線ホルダ20によるシリコン芯線5の固定を十分に強固なものとした後、原料ガスの水素ガスとトリクロロシランガスの供給量ならびに電流供給量をさらに増加させながら、シリコン芯線5上に多結晶シリコン6を900℃以上1200℃以下の温度範囲で気相成長させる。未反応ガスと副生成ガスは、排気口4から排出される。
【0080】
そして、多結晶シリコン6が所望の直径(例えば120mm)まで成長した後、原料ガスの供給を停止し、反応炉10内の温度を低下させ、反応炉内の雰囲気を水素から窒素に置換し、反応炉10を大気開放する。
【実施例】
【0081】
[実施例1]
上端側が円錐台状で、芯線挿入孔21の開口部22から10mm離れた円錐台の斜面位置に、芯線挿入孔21に向かって4mmネジの挿入孔30が形成され、開口部22には縦方向にスリット60の入ったグラファイト製芯線ホルダ20を用いた。
【0082】
また、シリコン芯線5を芯線挿入孔21の底まで挿入したときに、共通固定軸であるボルト31aが芯線ホルダの貫通孔32とシリコン芯線5の挿入孔30を通るように貫通孔32を開けたシリコン芯線5を用いた。
【0083】
さらに、芯線挿入孔21の内面とシリコン芯線5の接触面に、芯線ホルダ20と同等の固有抵抗を有する導電性シート材61を挿入し、ボルト31aと固ナット31bで固定した。
【0084】
ここで、共通固定軸であるボルト31aには、カーボングラファイト製の3.7mmスタットタイプネジを用い、ナット31bを用いて両端から締め付けた。
【0085】
シリコン芯線5を1063℃に加熱しながら、水素ガスとともにトリクロロシランガスを原料ガスとして供給すると、気相成長開始後10時間の成長速度抑制期間で、芯線ホルダ20の上端側は多結晶シリコン6の析出により均等に被覆された。その際、多結晶シリコン6の直径は14mm、電流値は210Aであった。この時点から供給ガス量アップを始め、その後、多結晶シリコン棒の径の成長に伴い電流値を上げ、63時間で121mm径の多結晶シリコンを得ることができた。
【0086】
[実施例2]
実施例1と同じタイプのグラファイト製芯線ホルダ20を用い、該芯線ホルダ20に保持されたシリコン芯線5を1050℃に加熱しながら、水素ガスとともにトリクロロシランガスを原料ガスとして供給した。気相成長開始後12時間の成長速度抑制期間で、芯線ホルダ20の第一端側は多結晶シリコン6の析出により均等に被覆された。その際、多結晶シリコン6の直径は13mm、電流値は195Aであった。この時点から供給ガス量アップを始め、その後、多結晶シリコン棒の径の成長に伴い電流値を上げ、62時間で119mm径の多結晶を得ることができた
【0087】
[比較例1]
実施例1と同じ材料からなるグラファイト製の芯線ホルダ20であって、図1に示す構造の従来タイプの芯線ホルダ20を用いた。この芯線ホルダ20に保持されたシリコン芯線5を1055℃に加熱しながら、水素ガスとともにトリクロロシランガスを原料ガスとして供給した。気相成長開始後16時間の成長速度抑制期間で、多結晶シリコン6の直径は18mm、電流値は240Aであった。実施例1および2と同様に、供給ガス量アップを開始した後に電流値を上げ始めたが、この時点で既に、芯線ホルダ20の上端側での多結晶シリコン6の析出形状は図10に示したように不均一なものとなっていた。その後も電流値を514Aとして成長を継続したところ、多結晶シリコン6の直径が36mmとなったところで多結晶シリコン棒は倒れてしまい、反応継続ができなかった。
【0088】
[比較例2]
比較例1と同様に反応初期条件を制御して多結晶シリコンの析出を行った。33時間で多結晶シリコン6の径が35mmとなったところで芯線ホルダ20の上端側での多結晶シリコン6の析出が均一となった。その後、供給ガス量アップを開始して電流値を上げ始めた。87時間の析出で121mm径の多結晶シリコン棒を得ることができた。
【0089】
以上説明したように、本発明によれば、芯線ホルダの上端近傍に多結晶シリコンが均一に堆積させることができるため、多結晶シリコンの局部的な成長に起因する倒れも発生し難くなる。このため、供給ガス量アップの開始時間を大幅に早めることができ、生産性を大幅に高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明により、シリコン芯線の芯線ホルダへの装着が容易であり、芯線ホルダにシリコン芯線を充分な強度で保持させるまでの時間を短くし、転倒を防止するとともに、多結晶シリコンの析出反応初期における成長速度抑制時間の短縮化を可能とする多結晶シリコン製造技術が提供される。
【符号の説明】
【0091】
1 ベースプレート
2 金属電極
3 ガスノズル
4 排気口
5 シリコン芯線
6 多結晶シリコン
7 絶縁物
10 反応炉
20 芯線ホルダ
21 芯線挿入孔
22 開口部
30 固定部材の挿入孔
31 固定部材
32 貫通孔
40 棒状の締付部材
60 スリット状の間隙部
61 導電性シート
100 気相成長装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、多結晶シリコンの製造に用いられる芯線ホルダおよび当該芯線ホルダを用いた多結晶シリコンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造用の単結晶シリコンや太陽電池製造用のシリコンの原料となる多結晶シリコンを製造する方法として、シーメンス法が知られている。シーメンス法は、クロロシランを含む原料ガスを、加熱されたシリコン芯線に接触させることにより、該シリコン芯線の表面に多結晶シリコンをCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて気相成長させる方法である。
【0003】
シーメンス法により多結晶シリコンを気相成長する際、気相成長装置の反応炉内に、鉛直方向に2本と水平方向に1本のシリコン芯線を鳥居型に組み立てる。そして、該鳥居型のシリコン芯線の両端を、一対の芯線ホルダを介して、ベースプレート上に配置した一対の金属電極に固定する。このような構成は、例えば特開2010−235438号公報(特許文献1)に開示されている。
【0004】
上述の金属電極は、絶縁物を挟んでベースプレートを貫通し、配線により別の金属電極に接続されるか、反応炉外に配置された電源に接続される。気相成長中に多結晶シリコンが析出することを防止するために、金属電極とベースプレートと反応炉は、冷媒を用いて冷却される。その結果、金属電極に固定された芯線ホルダも、金属電極により冷却される。
【0005】
金属電極から電流を導通させてシリコン芯線を水素雰囲気中で900℃以上1200℃以下の温度範囲に加熱しながら、原料ガスとして、例えばトリクロロシランと水素の混合ガスを、ガスノズルから反応炉内に供給する。原料ガス中に含まれるシリコンは、シリコン芯線上に多結晶シリコンとして析出(気相成長)し、所望の直径の多結晶シリコン棒が逆U字状に形成される。
【0006】
ところで、従来より、このような多結晶シリコンの気相成長の工程中あるいは工程後において、多結晶シリコン棒の倒れが生じることが問題として認識されていた。そして、このような倒れ防止の対策として、例えば特開2002−234720号公報(特許文献2)には、145W/m・Kより大きい熱伝導率を有し、かつシリコンの熱膨張率に適合した熱膨張率を有する芯線ホルダを用いることが提案されている。
【0007】
シーメンス法により多結晶シリコンを気相成長する場合、生産性の向上のためには、成長初期から原料ガスを大流量または高濃度に供給して成長速度を大きくすることが望ましい。しかし、成長初期に原料ガスを大流量または高濃度に供給すると、シリコン芯線が倒れやすい。
【0008】
シリコン芯線の倒れは、シリコン芯線と芯線ホルダの接合強度が不十分な時期に発生し易いが、これは、多結晶シリコンの成長初期において、芯線ホルダのシリコン芯線保持部(接合部)近傍で、シリコン芯線上に多結晶シリコンが不均一に成長することに起因すると考えられる。
【0009】
芯線ホルダは通常グラファイト製であり、その一方端側(上端側)にはシリコン芯線を挿入して保持させるために開口された空洞(孔部)が形成され、他方端側(下端側)が金属電極に固定される。そして、金属電極から芯線ホルダの下端側に供給された電流は、抵抗の低い芯線ホルダの上端側の端まで流れ、空洞の開口部近傍で初めてシリコン芯線に流入する。
【0010】
図1は、従来の態様でシリコン芯線を芯線ホルダに保持させた状態を説明するための断面概略図である。シリコン芯線5の断面は一般的には四角形であり、この場合、芯線ホルダ20に形成される孔部21の断面も四角形である。シリコン芯線の端部は、この四角形断面の孔部に挿入され、棒状の締付部材40等により、孔部21の内面の4面のうちの隣接する2面に押し付けられて固定される。
【0011】
金属電極から芯線ホルダ20の下端側に供給された電流は、シリコン芯線の端部に密着する上記2面からシリコン芯線5に流れ込む。シリコン芯線5に流れ込んだ電流は最短距離でシリコン芯線5の上方へと流れるため、芯線ホルダ20の孔部21の内面の4面のうちのシリコン芯線5に密着する2面側のシリコン芯線5の部位での発熱は、非密着の2面側のシリコン芯線5の部位に比較して促進される。
【0012】
このような発熱状態の不均等は、多結晶シリコンの析出不均等を生じさせるため、多結晶シリコンの反応反応の初期段階において、芯線ホルダ20の孔部21の内面に密着する2面側のシリコン芯線5の部位と非密着の2面側のシリコン芯線5の部位での、多結晶シリコン形状の不均等が顕著になってしまう。また、シリコン芯線5に密着していない孔部21の内部領域では、放電が生じ易く、シリコン芯線5の損傷も生じ易い。
【0013】
図2は、従来の他の態様でシリコン芯線を芯線ホルダに保持させた状態を説明するための断面概略図であるが、シリコン芯線5の断面が円形で、芯線ホルダ20に形成される孔部21の断面も円形である場合であっても、孔部21内面にはシリコン芯線5との非密着部が生じており、上述したのと同様の問題が生じる。
【0014】
芯線ホルダ20は金属電極により冷却されているため、シリコン芯線5の芯線ホルダ20側の温度はシリコン芯線5の直胴部に比較して低い。このため、とりわけ多結晶シリコンの析出反応の初期段階において、析出速度が相対的に遅い芯線ホルダ20側と析出速度が相対的に早い直胴部での多結晶シリコン径の差が顕著となる。
【0015】
このように、特に析出反応の初期段階においては、芯線ホルダのシリコン芯線保持部の近傍で多結晶シリコンの径が直胴部に比較して顕著に細く且つ当該領域の多結晶シリコンの形状が不均等な状態にある。このような状態で原料ガスの流量や濃度を大幅に増加すると、シリコン芯線に揺れが発生しこの揺れによって保持部にモーメントが集中する。しかも、上述したように、当該保持部では放電によりシリコン芯線の損傷が起き易い。これらが原因となって、シリコン芯線の倒れが起き易くなる。
【0016】
加えて、原料ガスの流量や濃度を増加させた場合には、シリコン芯線の温度を維持するために、原料ガスの対流伝熱に相当する熱量を補給する必要があるため、供給電流も急激に増加させる必要がある。このような急激な供給電流の増加は、シリコン芯線の各部位における電流密度の急激な増加を意味するから、形状不均等部位や細径部位において部分的なシリコン融解や溶断を誘発する。これもまた、シリコン芯線が倒れる原因となる。
【0017】
このような背景の下、従来は、多結晶シリコンを気相成長させるに際し、芯線ホルダの孔部内のシリコン芯線と接していない隙間全体に多結晶シリコンが堆積してシリコン芯線が芯線ホルダに保持される強度が十分なものとなるまでの間、原料ガスの流量および濃度を制限する必要があった。その結果、当該原料ガスの供給制御が行われている間は、多結晶シリコンの析出速度が低下せざるを得ないという問題があった。
【0018】
また、WO2010/115542号パンフレット(特許文献3)には、初期加熱によるダメージを抑制するために、シリコン芯線を保持する部分を3つ以上に対称に分割した保持部が開示されている。
【0019】
さらに、WO2010/133386号パンフレット(特許文献4)には、シリコン芯線と芯線ホルダの良好な接触を得るために、芯線ホルダの一部に間隙を設け、テーパーをつけたキャップ機構によって保持すべきシリコン芯線の下端部を締め付けるという手法が提案されている。
【0020】
しかし、特許文献3や特許文献4に開示の技術は、シリコン芯線を芯線ホルダに保持させる作業が必ずしも容易とは言えず、短時間で作業を完了することは難しい。例えば、特許文献4に開示されているようなキャップ機構を用いる場合、シリコン芯線を芯線ホルダに保持させる作業は煩雑であり、しかも、締め付け強度の調整も難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2010−235438号公報
【特許文献2】特開2002−234720号公報
【特許文献3】WO2010/115542号パンフレット
【特許文献4】WO2010/133386号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、上述したような従来技術が抱える問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、シリコン芯線の芯線ホルダへの装着が容易であり、芯線ホルダにシリコン芯線を充分な強度で保持させるまでの時間を短くすることにより、多結晶シリコンの析出反応初期における成長速度抑制時間の短縮化を可能とする多結晶シリコン製造技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
このような課題を解決するために、本発明に係る第1の態様のシリコン芯線ホルダは、シーメンス法による多結晶シリコン製造時に用いられるシリコン芯線を保持するためのホルダであって、前記ホルダの本体には、上面から下面側に向かう孔部であって前記シリコン芯線を挿入するための芯線挿入孔と、前記芯線挿入孔の中心軸を含む仮想平面上に位置するスリット状の間隙部もしくは該仮想平面と平行な面上に位置するスリット状の間隙部であって前記芯線挿入孔から前記ホルダ本体の外側面にまで至る間隙部が設けられており、前記間隙部の間隔が狭まるように締め付けて前記芯線挿入孔内に挿入された前記シリコン芯線の固定を行う固定部材を備えている。
【0024】
本発明に係る第2の態様のシリコン芯線ホルダは、シーメンス法による多結晶シリコン製造時に用いられるシリコン芯線を保持するためのホルダであって、前記ホルダの本体には、上面から下面側に向かう孔部であって前記シリコン芯線を挿入するための芯線挿入孔と、前記芯線挿入孔の中心軸を含む仮想平面上に位置するスリット状の間隙部もしくは該仮想平面と平行な面上に位置するスリット状の間隙部であって前記芯線挿入孔から前記ホルダ本体の外側面にまで至る間隙部と、前記芯線挿入孔の中心軸を通り且つ前記仮想平面に垂直な方向に固定部材挿入孔が設けられており、前記固定部材挿入孔から前記シリコン芯線の下端側に設けられた貫通孔を通るように挿入され、前記間隙部の間隔が狭まるように締め付けて前記芯線挿入孔内に挿入された前記シリコン芯線の固定を行う固定部材を備えている。
【0025】
本発明のシリコン芯線ホルダにおいて、前記間隙部は、前記芯線挿入孔の中心軸に対してn回対称(nは2以上の整数)の関係にある前記ホルダ本体の外側面にまで至るn個のスリット状の間隙部として設けられている態様とすることができる。
【0026】
また、本発明のシリコン芯線ホルダにおいて、前記スリット状の間隙部の下端は、前記ホルダ本体の底面より高い位置にあり、前記ホルダ本体の底面が分割されていない態様としてもよく、前記スリット状の間隙部の下端は、前記ホルダ本体の底面にまで達しており、前記ホルダ本体の底面が分割されている態様としてもよい。
【0027】
好ましくは、前記ホルダ本体は、曲げ強さが10MPa以上でショア硬さが20以上の強度を有する材料からなる。
【0028】
本発明に係る多結晶シリコンの製造方法では、本発明に係るシリコン芯線ホルダを用い、前記シリコン芯線を前記芯線挿入孔内に挿入するに際して、前記ホルダ本体と前記シリコン芯線との接触面に抵抗率が1500μΩ-cm以下の導電性シートを挟み込み、前記シリコン芯線に通電した際の前記ホルダ本体と前記シリコン芯線との接触面における接触抵抗を下げる。
【発明の効果】
【0029】
本発明のシリコン芯線ホルダを用いれば、芯線挿入孔両端から実質的に対称に且つ均等にシリコン芯線を固定できる。このため、熱伝導や熱輻射といった熱環境が析出反応の初期から均一となり、その結果、析出する多結晶シリコンの形状が軸に対して対称的なものとなる。
【0030】
また、従来構造のシリコン芯線ホルダを用いた場合に生じ易かった放電も抑えられ、析出反応初期の芯線ホルダやシリコン芯線の損傷も抑えられる。
【0031】
本発明により、シリコン芯線の芯線ホルダへの装着が容易であり、芯線ホルダにシリコン芯線を充分な強度で保持させるまでの時間を短くすることにより、多結晶シリコンの析出反応初期における成長速度抑制時間の短縮化を可能とする多結晶シリコン製造技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】従来の態様でシリコン芯線を芯線ホルダに保持させた状態を説明するための断面概略図である。
【図2】従来の他の態様でシリコン芯線を芯線ホルダに保持させた状態を説明するための断面概略図である。
【図3A】本発明に係る第1の態様のシリコン芯線ホルダの構成例を説明するための図(側面図)である。
【図3B】本発明に係る第1の態様のシリコン芯線ホルダの構成例を説明するための図(正面図)である。
【図3C】本発明に係る第1の態様のシリコン芯線ホルダの構成例を説明するための図(上面図)である。
【図4】本発明に係る第1の態様のシリコン芯線ホルダの他の構成例を説明するための図(上面図)である。
【図5】本発明に係る第1の態様のシリコン芯線ホルダの他の構成例を説明するための図(断面図)である。
【図6】本発明に係る第1の態様のシリコン芯線ホルダの他の構成例を説明するための図(側面図)である。
【図7A】本発明に係る第2の態様のシリコン芯線ホルダの構成例を説明するための図(断面図)である。
【図7B】本発明に係る第2の態様のシリコン芯線ホルダの構成例を説明するための図(上面図)である。
【図7C】本発明に係る第2の態様のシリコン芯線ホルダの構成例を説明するための図(側面図)である。
【図7D】本発明に係る第2の態様のシリコン芯線ホルダの構成例を説明するための図(上面図)である。
【図7E】本発明に係る第2の態様のシリコン芯線ホルダの構成例を説明するための図(側面図)である。
【図7F】本発明に係る第2の態様のシリコン芯線ホルダの構成例を説明するための図(上面図)である。
【図7G】本発明に係る第2の態様のシリコン芯線ホルダの構成例を説明するための図(側面図)である。
【図7H】本発明に係る第2の態様のシリコン芯線ホルダの構成例を説明するための図(上面図)である。
【図8】本発明に係る第2の態様のシリコン芯線ホルダの他の構成例を説明するための図(断面図)である。
【図9】導電性シートを用いた状態を説明するためのシリコン芯線ホルダの構上面図である。
【図10】従来の構成のホルダを用いた場合の多結晶シリコンの形状を説明するための図である。
【図11】本発明に係るホルダを用いた場合の多結晶シリコンの形状を説明するための図である。
【図12】多結晶シリコンの気相成長装置の構成を説明するための断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、図面を参照して、本発明のシリコン芯線ホルダおよび多結晶シリコンの製造方法について説明する。
【0034】
図3A〜Cは、本発明に係る第1の態様のシリコン芯線ホルダの構成例を説明するための図で、それぞれ、側面図、正面図、および上面図である。
【0035】
この芯線ホルダ20は、シーメンス法による多結晶シリコン製造時に用いられるシリコン芯線を保持するためのホルダであって、ホルダ20の本体の上面に開口部22をもち下面側に向かう孔部(芯線挿入孔)21が形成されており、この芯線挿入孔21にシリコン芯線5が挿入される。また、芯線挿入孔21の中心軸Cを含む仮想平面Pに沿う(仮想平面上に位置する)スリット状の間隙部60が形成されており、このスリット状間隙部60は、芯線挿入孔21からホルダ20の本体の外側面にまで至る間隙部となっている。
【0036】
芯線挿入孔21に挿入されたシリコン芯線5は、プレート状の押圧部材31cを備えたピンチコックタイプの固定部材31によってホルダ20の本体の上部が側面から締め付けられることにより、間隙部60の間隔が狭まるように締め付けられて固定されることになる。
【0037】
なお、図3A〜Cに示した構成のものは、スリット状の間隙部60が2箇所、すなわち、芯線挿入孔21の中心軸Cに対して2回対称(360°/180°回対称)の関係にあるホルダ本体20の外側面S1とS2にまで至る2個のスリット状の間隙部として設けられている。しかし、本発明はこの態様に限定されるものではなく、スリット状の間隙部は1つだけ設けられる態様のものであってもよい。これとは逆に、芯線挿入孔21の中心軸Cに対して3回対称以上の関係にあるホルダ本体20の外側面にまで至るn個(nは3以上の整数)のスリット状の間隙部を設けるようにしてもよい。さらに、上記「間隙部」は単一のスリット状の間隙部である必要はなく、複数のスリット状の間隙部の組を「間隙部」と観念することもできる。このような場合、2回対称の「間隙部」を設ける場合においても、スリット状の間隙部は2m個(mは2以上の整数)となる。例えば、「間隙部」が2個のスリット状の間隙部の組から成るものであるとすると、このような「間隙部」が2個(2組)形成されることとなり、総計では4個のスリット状の間隙部が設けられることになる。
【0038】
ここで、間隙部60の間隔を狭まるような締め付けは、図3A〜Cに例示したようなピンチコックタイプの固定部材31によるものに限定されるものではない。
【0039】
例えば、図4の上面図に例示した様に、図3Cに示したようなプレート状の部材31cを用いることなく、これと同様の作用が得られる部位をホルダ20の本体上部に形成するようにしてもよい。そして、当該部位に設けた孔部(固定部材挿入孔)にボルト状の部材(固定軸)を通し、これをナットで締める構成の固定部材31を用いるようにしてもよい。
【0040】
また、例えば、図5の断面図に例示したように、ホルダ本体20に固定部材31の一方である凸部31aを雄ネジ状に形成しておき、この凸部31aと固定部材31の他方であるナット状の部材31bの組み合わせにより、間隙部60の間隔を狭めるように締め付けてシリコン芯線5を固定するようにしてもよい。
【0041】
さらには、図6の側面図に例示したように、ホルダ本体20に固定部材31の一方としての凹部31aを形成してその内面を雌ネジ状にしておき、この凹部31aと固定部材31の他方であるボルト状の部材31bの組み合わせにより、間隙部60の間隔を狭めるように締め付けてシリコン芯線5を固定するようにしてもよい。シリコン芯線5の取り付け作業性は、図6に示した態様のものが高い。
【0042】
なお、固定部材31がボルト・ナット方式の場合、雄ネジ部品1つに対し、雌ネジ部品が1つのものでも2つのものでもよいが、本発明者らの比較によれば、後者の方がより確実な締め付けができる。
【0043】
これまで図示した態様では、スリット状の間隙部60の下端(終端)はホルダ本体20の底面より高い位置にあり、ホルダ本体20の底面が分割されていない。しかし、間隙部60の下端がホルダ本体20の底面にまで達しており、ホルダ本体20の底面が分割されている態様であってもよい。
【0044】
図7A〜Bは、本発明に係る第2の態様のシリコン芯線ホルダの構成例を説明するための図で、それぞれ、断面図および上面図である。
【0045】
この芯線ホルダ20は、シーメンス法による多結晶シリコン製造時に用いられるシリコン芯線を保持するためのホルダであって、ホルダ20の本体の上面に開口部22をもち下面側に向かう孔部(芯線挿入孔)21が形成されており、この芯線挿入孔21にシリコン芯線5が挿入される。また、芯線挿入孔21の中心軸Cを含む仮想平面Pに沿うスリット状の間隙部60が形成されており、このスリット状間隙部60は、芯線挿入孔21からホルダ20の本体の外側面にまで至る間隙部となっている。
【0046】
ホルダ本体20には、さらに、芯線挿入孔21の中心軸Cを通り且つ仮想平面Pに垂直な方向に固定部材31の挿入孔30が設けられている。また、シリコン芯線5の下端側にも貫通孔32が形成されており、固定部材の挿入孔30から挿入された固定部材31は貫通孔32を貫通し、間隙部60の間隔が狭まるように締め付けがなされて、芯線挿入孔21内に挿入されたシリコン芯線5の固定がなされる。
【0047】
なお、図7A〜Bに示した構成のものは、スリット状の間隙部60が2箇所、すなわち、芯線挿入孔21の中心軸Cに対して2回対称(360°/180°回対称)の関係にあるホルダ本体20の外側面S1とS2にまで至る2個のスリット状の間隙部として設けられている。しかし、既に述べたとおり、本発明はこの態様に限定されるものではなく、スリット状の間隙部は1つだけ設けられる態様のものであってもよい。また、これとは逆に、芯線挿入孔21の中心軸Cに対して3回対称以上の関係にあるホルダ本体20の外側面にまで至るn個(nは3以上の整数)のスリット状の間隙部を設けるようにしてもよい。なお、図7Cおよび図7Dに示したように、スリット状の間隙部60を敢えて設けることなく、芯線挿入孔21とシリコン芯線5との間の隙間を適切なものとすることにより、固定部材31により締め付けた際のホルダ本体20の撓みを利用して、ホルダ本体20とシリコン芯線5との良好な接触を形成するようにしてもよい。さらに、図7Eおよび図7Fに示したように、2個のスリット状の間隙部の組(60A:60A1〜2、60B:60B1〜2)を「間隙部」と観念し、この「間隙部」(60Aと60B)を2回対称で配置したり、図7Gおよび図7Hに示したように、3個のスリット状の間隙部の組(60A:60A1〜3、60B:60B1〜3)を「間隙部」と観念し、この「間隙部」(60Aと60B)を2回対称で配置したりしてもよい。つまり、m個のスリット状の間隙部の組を「間隙部」と観念し、この「間隙部」を2回対称で配置するようにしてもよい。この場合には、スリット状の間隙部は総計で2m個(mは2以上の整数)となる。
【0048】
さらに、固定部材31は1つ(若しくは1組)である必要はなく、例えば図8の断面図に例示するように、複数の固定部材31を備える構成としてもよい。なお、この点については上述の第1の態様においても同様であり、固定部材31の態様に種々のバリエーションがあることは、第1の態様において説明したとおりであるので重複しての説明は省略する。
【0049】
本発明のシリコン芯線ホルダでは、間隙部60の間隔が狭まる方向への締め付け力は、芯線挿入孔21内に挿入されたシリコン芯線5に対して概ね対称となり、従来方法のような非対称性をもたない。
【0050】
シリコン芯線ホルダの本体20は、曲げ強さ10MPa、ショア硬さ20以上の強度を有する材料を使用することが好ましい。具体的には、結晶化度の低い炭素材を3000℃前後で熱処理して結晶度を高めた炭素材料が好ましい。なお、これらの強度に関する情報は、カタログ情報等で容易に入手することができる。
【0051】
また、図9に示したように、シリコン芯線5を芯線挿入孔21内に挿入するに際して、ホルダ本体20とシリコン芯線5との接触面に、抵抗率が1500μΩ-cm以下の導電性シート61を挟み込み、シリコン芯線5に通電した際のホルダ本体20とシリコン芯線5との接触面におけるミクロな接触面積を上げることによって接触抵抗を下げることが好ましい。このような導電性シート61としては、グラファイトの他、アルミ−炭素繊維、アルミ−シリコンカーバイド等の複合材料やタングステンカーバイド等の金属からなるものを例示することができる。このような導電性シート61の厚さは、例えば、0.2〜2mmとする。
【0052】
以下に、図7A〜Bに例示した、本発明に係る第2の態様のシリコン芯線ホルダを用いて行う多結晶シリコンの製造手順について説明する。
【0053】
ホルダ本体20は、例えば、グラファイト製の炭素電極とすることができる。図7A〜Bに示した例では、一方端側が円錐台状の斜面を有する形状とされ、当該端部には開口部22が設けられ、シリコン芯線5を挿入して保持するための孔部(芯線挿入孔)21が形成されている。
【0054】
ここで、シリコン芯線5の断面形状および芯線挿入孔21の断面形状は必ずしも矩形である必要はなく、何れもが円形であったり三角形や五角形などであってもよい。しかし、これらの断面形状が矩形であると、固定部材31で締め付けを行った際に確実に広い接触面積を得ることが容易である。
【0055】
シリコン芯線5の表面には、シーメンス法により多結晶シリコンが気相成長し、多結晶シリコン棒の製造が行われる。なお、芯線ホルダ20の他方端側は、後述する通り、シリコン芯線5に電流を流すための金属電極、もしくは金属電極と芯線ホルダの間に設けられるアダプタとの接触部となり、芯線ホルダ20が金属電極2に、アダプタがある場合にはアダプタを介して固定される。
【0056】
開口部22近傍の円錐台状斜面には、芯線ホルダを貫通する固定部材31の挿入孔30が設けられている。また、芯線挿入孔21に挿入されるシリコン芯線5には、ホルダ本体20に設けられた挿入孔30と同一の高さに、貫通孔32が設けられている。
【0057】
ホルダ本体20に設けられた挿入孔30とシリコン芯線5に設けられた貫通孔32に、固定部材31の一方であるボルト形状の固定軸31aを通し、その両側から固定部品31の他方であるナット31bで固定する。
【0058】
図1および図2で説明したように、芯線ホルダ本体20とシリコン芯線5に共通の固定軸31aを通せる孔部が設けられていない従来の態様では、芯線ホルダ20に設けられた芯線挿入孔21とこの芯線挿入孔21に挿入されたシリコン芯線5との接触状態は、シリコン芯線5の中心軸に対して顕著に非対称なものとなる。このような状態で通電を行うと、シリコン芯線5の温度もその中心軸に対して顕著に非対称なものとなるため、析出した多結晶シリコン6の形状は、図10に示すように不均一なものとなる。
【0059】
これに対し、本発明のシリコン芯線ホルダを用いた場合には、シリコン芯線5を芯線挿入孔21内の中央に位置させることができるため、芯線挿入孔21とこの芯線挿入孔21に挿入されたシリコン芯線5との接触状態を、シリコン芯線5の中心軸に対して実質的に対称なものとすることができる。
【0060】
このような状態で通電を行うと、シリコン芯線5の温度もその中心軸に対して実質的に対称なものとなるため、析出した多結晶シリコン6の形状は、図11に示すように均一なものとなる。
【0061】
また、図9を用いて説明したように、シリコン芯線5を芯線挿入孔21内に挿入するに際して、ホルダ本体20とシリコン芯線5との接触面に抵抗率が1500μΩ-cm以下の導電性シートを挟み込むこととした場合には、ホルダ本体20とシリコン芯線5の固定がより確実なものとなるだけではなく、接触抵抗が下がるために多結晶シリコンの析出反応初期の形状均一性が更に高まる。
【0062】
このように、本発明に係るシリコン芯線ホルダを用いると、芯線ホルダ20へのシリコン芯線5の強固な保持が実現して転倒が防止されるだけではなく、多結晶シリコンの析出反応初期における成長速度抑制期間が短縮される結果、生産性も高まる。
【0063】
本発明者らによる検討によれば、芯線ホルダ20とシリコン芯線5の良好な接触状態を得るためには、シリコン芯線5を芯線ホルダ20の芯線挿入孔21に挿入した際のシリコン芯線5と芯線挿入孔21の内面との隙間は、固定部材31による締め付け前の状態で0.3mm以下であることが好ましい。
【0064】
シリコン芯線5と芯線挿入孔21の内面との隙間が0.3mmを超えると、固定部材31による締め付けを行った際に、ホルダ本体20の締め付け部分に割れ等が発生し易い。このような不都合を回避するためには、ホルダ本体20の強度を高いものとしておく必要があり、ホルダ本体20の部材としては、ショア硬さが20以上で曲げ強さが10Mpa以上のものが望ましい。
【0065】
なお、固定部材31をボルト・ナット方式のものとした場合、締め付けトルクを一定に管理することが好ましい。
【0066】
図12は、本発明が用いられる気相成長装置100の一例を示す概略説明図である。気相成長装置100は、シーメンス法によりシリコン芯線5の表面に多結晶シリコン6を気相成長させる装置であり、ベースプレート1と反応炉10により概略構成される。なお、ここでは、芯線ホルダ20はグラファイト製の炭素電極である。
【0067】
ベースプレート1には、シリコン芯線5に電流を供給する金属電極2と、窒素ガス、水素ガス、トリクロロシランガスなどのプロセスガスを供給するガスノズル3と、排気ガスを排出する排気口4が配置されている。
【0068】
金属電極2は、絶縁物7を挟んでベースプレート1を貫通し、配線を通して別の金属電極に接続されるか、反応炉外に配置された電源に接続される。金属電極2とベースプレート1と反応炉10は冷媒を用いて冷却される。
【0069】
図12に示したように、多結晶シリコン6を気相成長する際、反応炉10内にシリコン芯線5を鉛直方向2本、水平方向1本の鳥居型に組み立て、該鳥居型のシリコン芯線5の両端を一対の芯線ホルダ20を介してベースプレート1上に配置した一対の金属電極2に固定する。
【0070】
芯線ホルダ20は、ショア硬さが20以上で曲げ強さが10Mpa以上、そして、熱伝導率が145W/m・K以下のグラファイト製であり、円錐台状の斜面を有する一方端側(上端側)にはシリコン芯線5を挿入して保持させるために開口された空洞(芯線挿入孔)21が形成されており、他方端側(下端側)が金属電極2に固定される。
【0071】
熱伝導が145W/m・K以下とするのは、本発明者らの検討の結果によるが、芯線ホルダ20自体の熱伝導率が低いほど金属電極2へと逃げる熱の量は低下し、断熱効果が働いて芯線ホルダ20の上部の温度を高く維持することができるためである。芯線ホルダ20の上部の温度を高く維持することができれば、通電時のシリコン芯線下部の温度を高く維持することができるから、印加電圧を下げることができて通電時の損傷を抑えることができる。また、この部分での反応初期の多結晶シリコンの析出速度を高めることもできる。
【0072】
上端側の円錐台状斜面に孔部(挿入孔)30を有する芯線ホルダ20の芯線挿入孔21に、挿入孔30に位置合わせされた挿入孔32を形成したシリコン芯線5を挿入し、ボルト31aとナット31bを用いて固定する。上述したように、ナット31bの締め付けはトルク管理するのが望ましい。
【0073】
ボルト31aはマシンボルトタイプでも良いが、その場合は、ナット31bは片側からのみ締め付けることとなる。また、ボルト31aがスタットボルトタイプの場合は、ナット31bは両側から締め付けることになる。本発明者らの検討によれば、ボルト30aはスタットボルトタイプが好ましい。
【0074】
次に、図示しないヒータを用いてシリコン芯線5を250℃以上の温度に予備加熱し、シリコン芯線5中を電流が効率的に流れるほどの導電性にする。続いて、金属電極2から芯線ホルダ20を介してシリコン芯線5へと電流を供給し、シリコン芯線5を900℃以上に加熱する。
【0075】
本発明の検討によれば、点火時には60〜70A程度の電流を流し、その後、100A程度の電流を供給して芯線表面温度を900℃以上として多結晶シリコンの析出反応を開始することが好ましい。そこで、点火後に、約100Aの電流を供給しながら水素ガスとともにトリクロロシランガスを原料ガスとして低流量で供給し、気相成長を開始する。このとき、グラファイト製芯線ホルダ20に固定されたシリコン芯線5に流れる電流の断面電流密度は、0.13A/mm2以上4.9A/mm2以下となる。
【0076】
シリコン芯線5への通電が開始され、多結晶シリコン6の気相成長が始まると、シリコン芯線5および多結晶シリコン6からの伝導熱および輻射熱を受けて、芯線ホルダ20の上端側が加熱されるが、上述したように、本発明ではシリコン芯線5と芯線ホルダ20は実質的に軸対称となるように接触しているため、芯線ホルダ20の上端側とシリコン芯線5の接触面が均一に(軸対称で)加熱され、多結晶シリコン6の析出も均一なものとなる。
【0077】
上述したとおり、均一に析出した多結晶シリコンは、芯線ホルダ20によるシリコン芯線5の固定をより強固なものとするのみならず、当該部分の多結晶シリコンの形状が軸対称であるために異常な応力もかからない。
【0078】
従来の手法では、芯線ホルダ20によるシリコン芯線5の固定を十分に強固なものとするには、シリコン棒の直径が35mm程度にまで到達する必要があったが、本発明のシリコン芯線ホルダを用いた場合には、シリコン棒の直径が15mm程度となった時点で十分に強固な固定が実現することが分かった。
【0079】
芯線ホルダ20によるシリコン芯線5の固定を十分に強固なものとした後、原料ガスの水素ガスとトリクロロシランガスの供給量ならびに電流供給量をさらに増加させながら、シリコン芯線5上に多結晶シリコン6を900℃以上1200℃以下の温度範囲で気相成長させる。未反応ガスと副生成ガスは、排気口4から排出される。
【0080】
そして、多結晶シリコン6が所望の直径(例えば120mm)まで成長した後、原料ガスの供給を停止し、反応炉10内の温度を低下させ、反応炉内の雰囲気を水素から窒素に置換し、反応炉10を大気開放する。
【実施例】
【0081】
[実施例1]
上端側が円錐台状で、芯線挿入孔21の開口部22から10mm離れた円錐台の斜面位置に、芯線挿入孔21に向かって4mmネジの挿入孔30が形成され、開口部22には縦方向にスリット60の入ったグラファイト製芯線ホルダ20を用いた。
【0082】
また、シリコン芯線5を芯線挿入孔21の底まで挿入したときに、共通固定軸であるボルト31aが芯線ホルダの貫通孔32とシリコン芯線5の挿入孔30を通るように貫通孔32を開けたシリコン芯線5を用いた。
【0083】
さらに、芯線挿入孔21の内面とシリコン芯線5の接触面に、芯線ホルダ20と同等の固有抵抗を有する導電性シート材61を挿入し、ボルト31aと固ナット31bで固定した。
【0084】
ここで、共通固定軸であるボルト31aには、カーボングラファイト製の3.7mmスタットタイプネジを用い、ナット31bを用いて両端から締め付けた。
【0085】
シリコン芯線5を1063℃に加熱しながら、水素ガスとともにトリクロロシランガスを原料ガスとして供給すると、気相成長開始後10時間の成長速度抑制期間で、芯線ホルダ20の上端側は多結晶シリコン6の析出により均等に被覆された。その際、多結晶シリコン6の直径は14mm、電流値は210Aであった。この時点から供給ガス量アップを始め、その後、多結晶シリコン棒の径の成長に伴い電流値を上げ、63時間で121mm径の多結晶シリコンを得ることができた。
【0086】
[実施例2]
実施例1と同じタイプのグラファイト製芯線ホルダ20を用い、該芯線ホルダ20に保持されたシリコン芯線5を1050℃に加熱しながら、水素ガスとともにトリクロロシランガスを原料ガスとして供給した。気相成長開始後12時間の成長速度抑制期間で、芯線ホルダ20の第一端側は多結晶シリコン6の析出により均等に被覆された。その際、多結晶シリコン6の直径は13mm、電流値は195Aであった。この時点から供給ガス量アップを始め、その後、多結晶シリコン棒の径の成長に伴い電流値を上げ、62時間で119mm径の多結晶を得ることができた
【0087】
[比較例1]
実施例1と同じ材料からなるグラファイト製の芯線ホルダ20であって、図1に示す構造の従来タイプの芯線ホルダ20を用いた。この芯線ホルダ20に保持されたシリコン芯線5を1055℃に加熱しながら、水素ガスとともにトリクロロシランガスを原料ガスとして供給した。気相成長開始後16時間の成長速度抑制期間で、多結晶シリコン6の直径は18mm、電流値は240Aであった。実施例1および2と同様に、供給ガス量アップを開始した後に電流値を上げ始めたが、この時点で既に、芯線ホルダ20の上端側での多結晶シリコン6の析出形状は図10に示したように不均一なものとなっていた。その後も電流値を514Aとして成長を継続したところ、多結晶シリコン6の直径が36mmとなったところで多結晶シリコン棒は倒れてしまい、反応継続ができなかった。
【0088】
[比較例2]
比較例1と同様に反応初期条件を制御して多結晶シリコンの析出を行った。33時間で多結晶シリコン6の径が35mmとなったところで芯線ホルダ20の上端側での多結晶シリコン6の析出が均一となった。その後、供給ガス量アップを開始して電流値を上げ始めた。87時間の析出で121mm径の多結晶シリコン棒を得ることができた。
【0089】
以上説明したように、本発明によれば、芯線ホルダの上端近傍に多結晶シリコンが均一に堆積させることができるため、多結晶シリコンの局部的な成長に起因する倒れも発生し難くなる。このため、供給ガス量アップの開始時間を大幅に早めることができ、生産性を大幅に高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明により、シリコン芯線の芯線ホルダへの装着が容易であり、芯線ホルダにシリコン芯線を充分な強度で保持させるまでの時間を短くし、転倒を防止するとともに、多結晶シリコンの析出反応初期における成長速度抑制時間の短縮化を可能とする多結晶シリコン製造技術が提供される。
【符号の説明】
【0091】
1 ベースプレート
2 金属電極
3 ガスノズル
4 排気口
5 シリコン芯線
6 多結晶シリコン
7 絶縁物
10 反応炉
20 芯線ホルダ
21 芯線挿入孔
22 開口部
30 固定部材の挿入孔
31 固定部材
32 貫通孔
40 棒状の締付部材
60 スリット状の間隙部
61 導電性シート
100 気相成長装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーメンス法による多結晶シリコン製造時に用いられるシリコン芯線を保持するためのホルダであって、
前記ホルダの本体には、上面から下面側に向かう孔部であって前記シリコン芯線を挿入するための芯線挿入孔と、前記芯線挿入孔の中心軸を含む仮想平面上に位置するスリット状の間隙部もしくは該仮想平面と平行な面上に位置するスリット状の間隙部であって前記芯線挿入孔から前記ホルダ本体の外側面にまで至る間隙部が設けられており、
前記間隙部の間隔が狭まるように締め付けて前記芯線挿入孔内に挿入された前記シリコン芯線の固定を行う固定部材を備えている、シリコン芯線ホルダ。
【請求項2】
シーメンス法による多結晶シリコン製造時に用いられるシリコン芯線を保持するためのホルダであって、
前記ホルダの本体には、上面から下面側に向かう孔部であって前記シリコン芯線を挿入するための芯線挿入孔と、前記芯線挿入孔の中心軸を含む仮想平面上に位置するスリット状の間隙部もしくは該仮想平面と平行な面上に位置するスリット状の間隙部であって前記芯線挿入孔から前記ホルダ本体の外側面にまで至る間隙部と、前記芯線挿入孔の中心軸を通り且つ前記仮想平面に垂直な方向に固定部材挿入孔が設けられており、
前記固定部材挿入孔から前記シリコン芯線の下端側に設けられた貫通孔を通るように挿入され、前記間隙部の間隔が狭まるように締め付けて前記芯線挿入孔内に挿入された前記シリコン芯線の固定を行う固定部材を備えている、シリコン芯線ホルダ。
【請求項3】
前記間隙部は、前記芯線挿入孔の中心軸に対してn回対称(nは2以上の整数)の関係にある前記ホルダ本体の外側面にまで至るn個のスリット状の間隙部として設けられている、請求項1又は2に記載のシリコン芯線ホルダ。
【請求項4】
前記スリット状の間隙部の下端は、前記ホルダ本体の底面より高い位置にあり、前記ホルダ本体の底面が分割されていない、請求項1乃至3の何れか1項に記載のシリコン芯線ホルダ。
【請求項5】
前記スリット状の間隙部の下端は、前記ホルダ本体の底面にまで達しており、前記ホルダ本体の底面が分割されている、請求項1乃至3の何れか1項に記載のシリコン芯線ホルダ。
【請求項6】
前記ホルダ本体は、曲げ強さが10MPa以上でショア硬さが20以上の強度を有する材料からなる、請求項1乃至5の何れか1項に記載のシリコン芯線ホルダ。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載のシリコン芯線ホルダを用い、前記シリコン芯線を前記芯線挿入孔内に挿入するに際して、前記ホルダ本体と前記シリコン芯線との接触面に抵抗率が1500μΩ-cm以下の導電性シートを挟み込み、前記シリコン芯線に通電した際の前記ホルダ本体と前記シリコン芯線との接触面における接触抵抗を下げる、ことを特徴とする多結晶シリコンの製造方法。
【請求項1】
シーメンス法による多結晶シリコン製造時に用いられるシリコン芯線を保持するためのホルダであって、
前記ホルダの本体には、上面から下面側に向かう孔部であって前記シリコン芯線を挿入するための芯線挿入孔と、前記芯線挿入孔の中心軸を含む仮想平面上に位置するスリット状の間隙部もしくは該仮想平面と平行な面上に位置するスリット状の間隙部であって前記芯線挿入孔から前記ホルダ本体の外側面にまで至る間隙部が設けられており、
前記間隙部の間隔が狭まるように締め付けて前記芯線挿入孔内に挿入された前記シリコン芯線の固定を行う固定部材を備えている、シリコン芯線ホルダ。
【請求項2】
シーメンス法による多結晶シリコン製造時に用いられるシリコン芯線を保持するためのホルダであって、
前記ホルダの本体には、上面から下面側に向かう孔部であって前記シリコン芯線を挿入するための芯線挿入孔と、前記芯線挿入孔の中心軸を含む仮想平面上に位置するスリット状の間隙部もしくは該仮想平面と平行な面上に位置するスリット状の間隙部であって前記芯線挿入孔から前記ホルダ本体の外側面にまで至る間隙部と、前記芯線挿入孔の中心軸を通り且つ前記仮想平面に垂直な方向に固定部材挿入孔が設けられており、
前記固定部材挿入孔から前記シリコン芯線の下端側に設けられた貫通孔を通るように挿入され、前記間隙部の間隔が狭まるように締め付けて前記芯線挿入孔内に挿入された前記シリコン芯線の固定を行う固定部材を備えている、シリコン芯線ホルダ。
【請求項3】
前記間隙部は、前記芯線挿入孔の中心軸に対してn回対称(nは2以上の整数)の関係にある前記ホルダ本体の外側面にまで至るn個のスリット状の間隙部として設けられている、請求項1又は2に記載のシリコン芯線ホルダ。
【請求項4】
前記スリット状の間隙部の下端は、前記ホルダ本体の底面より高い位置にあり、前記ホルダ本体の底面が分割されていない、請求項1乃至3の何れか1項に記載のシリコン芯線ホルダ。
【請求項5】
前記スリット状の間隙部の下端は、前記ホルダ本体の底面にまで達しており、前記ホルダ本体の底面が分割されている、請求項1乃至3の何れか1項に記載のシリコン芯線ホルダ。
【請求項6】
前記ホルダ本体は、曲げ強さが10MPa以上でショア硬さが20以上の強度を有する材料からなる、請求項1乃至5の何れか1項に記載のシリコン芯線ホルダ。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載のシリコン芯線ホルダを用い、前記シリコン芯線を前記芯線挿入孔内に挿入するに際して、前記ホルダ本体と前記シリコン芯線との接触面に抵抗率が1500μΩ-cm以下の導電性シートを挟み込み、前記シリコン芯線に通電した際の前記ホルダ本体と前記シリコン芯線との接触面における接触抵抗を下げる、ことを特徴とする多結晶シリコンの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図7G】
【図7H】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図7G】
【図7H】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−232878(P2012−232878A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104183(P2011−104183)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】
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