説明

シリコン融液の粗脱炭法

本発明は、シリコン融液の新規な粗脱炭法、及びシリコン、好ましくはソーラーシリコン又は半導体シリコンの製造のためのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なシリコン融液の粗脱炭法、及びシリコン、好ましくはソーラーシリコン又は半導体シリコンの製造のためのその使用に関する。
【0002】
シリコン融液の炭素含有率が複数の工程で低下する種々の公知のプロセスがある。一例は、脱炭が複数の工程で実施されるSolsilcプロセス(www.ecn.nl)である。これはSiC粒子が融液から分離する過程で、制御された条件下で出湯されたシリコンを最初に冷却することを含む。次に、これらがセラミックフィルタにおいてシリコンから除去される。その後、シリコンをアルゴン−水蒸気混合物を用いて脱酸素する。最後に、予備精製された、粗脱炭シリコンが直接的な凝固に供給される。しかしながら、記載されたプロセスは、制御された冷却の過程で分離するSiC粒子がるつぼ壁に付着するので、コストがかかり且つ不便である。更に、セラミックフィルタは頻繁にSiC粒子によって遮断される。濾過が終了した後、るつぼ及びフィルタは実験室作業において、例えば、フッ化水素酸を用いる酸洗浄によって、更に洗浄されなければならない。
【0003】
代替的なアプローチでは、例えば、DE3883518号及びJP2856839号は、SiOをシリコン融液中に吹き込むことを提案した。このSiOはシリコン融液中に溶けた炭素と反応してCOを形成する。次にこれはシリコン融液から出て行く。
【0004】
このプロセスの欠点は、シリコン融液中に存在するSiCはSiOと完全に反応しないことである。従って、このプロセスに対する種々の改変が進展し、これはJP02267110号、JP6345416号、JP4231316号、DE3403131号及びJP2009120460号に記載されている。公知になったこれらのプロセスの欠点としては、プラント部分での凝固と閉塞が挙げられる。
【0005】
従って、SiOの炭素還元によって得られる、シリコン融液の脱炭のための効率的で、単純で且つコストのかからないプロセスが至急求められ続けている。
【0006】
従って、本発明の課題は、たとえ先行技術のプロセスの欠点の程度が低減されただけであっても、シリコン融液の新規な脱炭方法を提供することであった。特別な課題では、本発明による方法は、ソーラーシリコン及び/又は半導体シリコンの製造に利用できなければならない。更に特別な課題は、出湯された材料を1500℃未満まで冷却する過程で、SiC堆積がたとえあっても殆どない程度まで還元炉が出湯される前にシリコン融液の全炭素含有率を低くできる方法を提供することであった。明確に記載されていない更なる課題は、発明の詳細な説明、実施例及び特許請求の範囲の全体の脈絡から明らかである。
【0007】
この課題は、実施例及び特許請求の範囲に従う、発明の詳細な説明において、詳細に記載された方法によって達成される。
【0008】
本発明者らは、驚くことに、単純で、費用がかからず且つ効率的な方法で、酸素キャリアがシリコン融液中に導入される時にシリコン融液の粗脱炭を達成できることを見出したが、添加は保持時間によって1回以上中断される。
【0009】
このプロセスは、先行技術の方法の問題、例えば、フィルタの遮断又はフィルタの複雑な浄化を、不要にすることができ、コスト及び不便の程度を低下させることができるため、特に有利である。加えて、装置の複雑性を低下させる。
【0010】
光アーク還元炉から生じるシリコン融液は、約1000ppmの炭素含有率を有する。1800℃の出湯温度では、炭素の大部分が融液に溶解する。しかしながら、融液を、例えば、1600℃まで冷却する場合、結果は、炭素の大部分がSiCとして過飽和融液から析出する。炭素のシリコンへの溶解性は、Yanabaら、Solubility of Carbon in liquid Silicon, Materials Transactions. JIM、第38巻、第11号(1997年)、第990〜994頁に従って、
logC=3.63−9660/T
(式中、炭素含有率Cは質量パーセントで示され、温度Tは絶対温度で示される)
によって温度の関数として記載されている。以下の表1は1000ppmの融液の関係性を示す:
【表1】

【0011】
SiCは、溶解した炭素よりもシリコン融液から除去することが遥かに困難である。本発明による方法は、従って、1500℃未満まで冷却した後に融液から析出されるSiCがあっても殆どない程度まで、粗脱炭によって、シリコン融液の炭素含有率を最初に低下させる意図に基づいている。
【0012】
これは本発明に従って、好ましくは更に還元炉内で、更に好ましくは光アーク還元炉内で、酸素キャリアをシリコン融液に添加し、この添加が特定の周期(保持時間)で1回以上中断されることによって、シリコン融液の粗脱炭を実行することで達成される。
【0013】
特定の理論により拘束されないが、本発明者らは、酸素キャリアの添加時間に、シリコン融液に溶解した炭素が融液から除去されて炭素不飽和融液が得られると考える。中断時間(保持時間)に、SiCは再びシリコン融液に溶解できる。これは再びSiCから溶解した炭素を形成し、これはその後、酸素キャリアの新たな添加によって融液から容易に除去可能である。記載した関係を、再度、図1に図示する。
【0014】
この単純な方法では、シリコン融液の全炭素含有率は、好ましくは出湯の前に、150ppm未満、好ましくは100ppm未満まで低下させることができる。これは、濾過をせず、従って先行技術から知られる問題を回避して、SiCのない又は実質的にSiCのない融液を得ることを可能にし、この融液はその後、公知の方法による精密な脱炭にかけることができる。先行技術の方法、例えば、Solsilcプロセスと比較して、本発明による方法は、改善された空時収量で、顕著に単純で、効率的で且つ好ましい方法を構成する。
【0015】
SiOがシリコン融液に添加される、先行技術から知られる上記の方法と比較して、本発明による方法は、有意に良好に融液からSiCが除去される利点を有する。これは、保持時間が先行技術のプロセスでは全く認識されず、従って、実質的に溶解したCのみがそこで融液から除去されるという事実によって説明できる。
【0016】
従って、本発明は、酸素キャリアをシリコン融液に添加し、酸素キャリアの添加は1回以上中断され、その後、再開されることを特徴とする、シリコン融液の粗脱炭法を提供する。
【0017】
本発明の文脈において、「粗脱炭」とは、シリコン融液の全炭素含有率を、250ppm未満、好ましくは200ppm未満、更に好ましくは150ppm未満、特に好ましくは10〜100ppmまで低下させることを意味する。
【0018】
本発明の文脈において、「精密な脱炭」とは、シリコン融液の全炭素含有率を、5ppm未満、好ましくは3ppm未満、更に好ましくは2ppm未満、特に好ましくは0.0001〜1ppmまで低下させることを意味する。
【0019】
「シリコン融液に実質的にSiCのない」とは、シリコン融液の全炭素含有率におけるSiCの質量割合が、20質量%未満、好ましくは10質量%未満、更に好ましくは5質量%未満、最も好ましくは1質量%であることを意味する。
【0020】
酸素キャリアは、酸化剤又は酸素供給源を含むガス、液体又は固体であってよい。酸素キャリアは原則的に物質の任意の形態で添加してよい。
【0021】
酸素キャリアは好ましくは、追加の不純物をシリコン融液中に導入しない化学物質である。しかしながら、SiO(式中、x=0.5〜2.5)、特に好ましくは二酸化ケイ素を、粉末として、更に好ましくは500μm未満の平均粒径を有する粉末として、最も好ましくは1〜200μmの平均粒径を有する粉末として、ペレットとして、好ましくは500μm〜5cmの平均粒径を有するペレットとして、更に一層好ましくは500μm〜1cmの平均粒径を有するペレットとして、特に好ましくは1mm〜3mmの平均粒径を有するペレットとして、又は一片として使用することが特に好ましい。この二酸化ケイ素は任意の源に由来してよい。
【0022】
特定の実施態様では、ケイ素の生成において副生物として形成される一酸化ケイ素と空気又は別の酸素源との反応から得られる二酸化ケイ素が使用されている。SiO副生物を回収し、SiOに変換した後に、これをシリコン融液中に直接導入して戻し、最も好ましくは閉回路をもたらすことが特に好ましい。
【0023】
本発明の有利な実施態様では、固体二酸化ケイ素、好ましくは二酸化ケイ素粉末が、ガス流れによって、好ましくは新規な又は不活性なガス、更に好ましくは希ガス、水素、窒素又はアンモニア流れ、更に好ましくはアルゴン又は窒素流れ、又は上記のガスの混合物から構成される流れによってシリコン融液中に吹き込まれる。
【0024】
酸素キャリアは異なる位置で融液に添加できる。例えば、酸素キャリアは、出湯される前に還元反応器内でシリコン融液に添加できる。しかしながら、シリコンを出湯した後、酸素キャリアを、例えば、溶融るつぼ又は溶融タンク内で、シリコン融液に添加することも可能である。これらの方法の変種の組み合わせも同様に考えられる。酸素キャリアを、更に還元容器内でシリコン融液に供給することが特に好ましい。
【0025】
酸素キャリアは種々の方法でシリコン融液に供給することができる。例えば、酸素キャリアは、中空電極を通してシリコン融液上に又はその中に吹き込むことができる。
【0026】
しかしながら、それを通して酸素キャリアをシリコン融液上に又はその中に吹き込むことができる供給管(プローブ)を含むように、還元反応器を変更することも可能である。これらの供給管は、管に作用する温度で溶融しない材料で構成されなければならない。ソーラーシリコンの製造では、シリコン融液の管との接触による汚染を防ぐことが更に要求されている。従って、この管は好ましくは高純度のグラファイト、石英、炭化ケイ素又は窒化ケイ素から製造される。
【0027】
酸素キャリアの添加時の融液の温度は、1500℃〜2000℃の間、好ましくは1600℃〜1900℃、更に好ましくは1700℃〜1800℃の間でなければならない。温度に応じて、シリコン融液中のC及びSiCの含有率は表1に示す通りに変わる。
【0028】
本発明による方法において、酸素キャリアの添加は1回以上中断され、その後、再開される。1分〜5時間、好ましくは1分〜2.5時間、更に好ましくは5〜60分間でそれぞれ1〜5回の中断を実施することが好ましい。特に、上記の時間で更に1回中断することが好ましい。更に特に、最初に酸素キャリアをシリコン融液に添加し、0.1分〜1時間、好ましくは0.1分〜30分間、更に好ましくは0.5分〜15分間、特に好ましくは1分〜10分間の添加時間後に、1分〜5時間、好ましくは1分〜2.5時間、更に好ましくは5〜60分間の持続時間(保持時間)にわたり添加を中断して、SiC粒子が融液中に溶解できるようにすることが好ましい。保持時間の終了後、酸素キャリアの添加を再開し、所望の低い全炭素含有率、好ましくは150ppm未満、更に好ましくは100ppm未満が達成されるまで継続する。全プロセス時間にわたり、融液の温度は好ましくは上記の範囲内に保持される。
【0029】
好ましくは、本発明による方法では、1〜5倍の化学量論量の、好ましくは2〜3倍の化学量論量の酸素キャリアが添加される。
【0030】
バッチプロセスでは、酸素キャリアは好ましくはSiOとCとの反応の終了時に添加されるが、更に好ましくは還元炉の出湯前に添加される。連続プロセスでは、好ましくは添加の後にそれぞれの出湯が続き、即ち、シリコン融液が出湯されて、適切な装置、例えば、溶融るつぼ又は溶融タンクに回収され、その後、本発明による方法によって粗脱炭にかけられる。
【0031】
特に好ましい実施態様では、粉状の二酸化ケイ素が酸素キャリアとして、プローブ、好ましくはグラファイトで作られたプローブにより融液中に吹き込まれる。プローブは好ましくは、ゼロ電流が中空電極を通して予め供給されているか、又はセラミックガイド素子によって側面で炉内に導入される。別の特に好ましい実施態様では、二酸化ケイ素が、ガス流れ、好ましくは希ガス流れ、更に好ましくはアルゴン流れによって中空電極を通してシリコン融液上に直接吹き込まれる。両方の場合において、溶解した炭素がCOに酸化され、その後、
C+SiO=CO+SiO
に従って分解する過程で、二酸化ケイ素は溶解し且つシリコン融液と反応する。
【0032】
炭素含有率は吹き込まれた量に応じて低下する。融液中で分離されたSiC粒子は、最初は酸化されていない。これらの粒子はシリコン融液中に溶解し、これは最初の二酸化ケイ素の添加後に、即ち、最初の酸化処理後に、5〜60分間の保持時間内で、不飽和である。この保持時間後、融液を再び上記の通り酸化処理する、即ち、二酸化ケイ素を添加する。融液の炭素含有率は、その後、約100ppmまで低下し、融液はSiC不純物がない又は殆どない。
【0033】
本発明による方法は、融液を通して/融液中に泡形成剤を通すことによって又は融液に泡形成剤を添加することによって、更に効率的にすることができる。使用する泡形成剤はガス又はガス放出物質であってよい。泡形成剤は、気泡数を増大させて、COガスの融液からの追い出しを改善する。融液を通過したガスは、例えば、希ガス又は水素又は窒素、好ましくはアルゴン又は窒素であってよい。
【0034】
ガス放出物質、好ましくは固体は、好ましくは酸素キャリアに添加され、更に好ましくは酸素キャリアとガス形成剤との混合物を基準として1〜10質量%の割合で添加される。この目的に適した物質は炭酸アンモニウム粉末である。なぜなら、これが融液中に吹き込まれる時に残留物なしでガスに分解し且つ融液を汚染しないからである。
【0035】
本発明による方法によって粗脱炭されたシリコンは、その後、当業者に公知の方法によって精密な脱炭にかけることができる。これは溶解した炭素のみ又はほぼ溶解した炭素のみが粗脱炭融液中に存在し、SiCは存在しないか又は殆ど存在しないので、特に単純である。
【0036】
精密な脱炭に適したプロセスは当業者に公知であり、例えば、一方向凝固、融液の酸化処理、帯域溶融が挙げられる。
【0037】
本発明による方法は、冶金シリコンを製造するだけではなく、ソーラーシリコン又は半導体シリコンを製造するために使用することもできる。ソーラーシリコン又は半導体シリコンの製造のための前提条件は、使用される材料、特にSiO及びC、及びシリコン/シリコン融液と接触する使用される装置/反応器及びそれらの部品が適正な純度を有することである。
【0038】
好ましくは、ソーラーシリコン及び/又は半導体シリコンの製造において、純化された、純粋な又は高度に純粋な使用される材料及び原料、例えば、二酸化ケイ素及び炭素は、以下の含有率を特徴とする:
a. 5ppm以下のアルミニウム、好ましくは5ppm〜0.0001pptの間、特に3ppm〜0.0001pptの間、好ましくは0.8ppm〜0.0001pptの間、更に好ましくは0.6ppm〜0.0001pptの間、更に一層好ましくは0.1ppm〜0.0001pptの間、更に一層好ましくは0.01ppm〜0.0001pptの間、更に一層好ましくは1ppb〜0.0001pptであり、
b. 10ppm未満〜0.0001pptのボロン、特に5ppm〜0.0001pptの範囲、好ましくは3ppm〜0.0001pptの範囲又は更に好ましくは、10ppb〜0.0001pptの範囲、更に一層好ましくは1ppb〜0.0001pptの範囲、
c. 2ppm以下のカルシウム、好ましくは2ppm〜0.0001pptの間、特に0.3ppm〜0.0001pptの間、好ましくは0.01ppm〜0.0001pptの間、更に好ましくは1ppb〜0.0001pptの間、
d. 20ppm以下の鉄、好ましくは10ppm〜0.0001pptの間、特に0.6ppm〜0.0001pptの間、好ましくは0.05ppm〜0.0001pptの間、更に好ましくは0.01ppm〜0.0001pptの間、及び最も好ましくは1ppb〜0.0001ppt;
e. 10ppm以下のニッケル、好ましくは5ppm〜0.0001pptの間、特に0.5ppm〜0.0001pptの間、好ましくは0.1ppm〜0.0001pptの間、更に好ましくは0.01ppm〜0.0001pptの間、及び最も好ましくは1ppb〜0.0001pptの間、
f. 10ppm未満〜0.0001pptのリン、好ましくは5ppm〜0.0001pptの間、特に3ppm未満〜0.0001ppt、好ましくは10ppb〜0.0001pptの間、及び最も好ましくは1ppb〜0.0001pptの間、
g. 2ppm以下のチタン、好ましくは1ppm以下〜0.0001ppt、特に0.6ppm〜0.0001pptの間、好ましくは0.1ppm〜0.0001pptの間、更に好ましくは0.01ppm〜0.0001pptの間、及び最も好ましくは1ppb〜0.0001pptの間、
h. 3ppm以下の亜鉛、好ましくは1ppm以下〜0.0001ppt、特に0.3ppm〜0.0001pptの間、好ましくは0.1ppm〜0.0001pptの間、更に好ましくは0.01ppm〜0.0001pptの間、及び最も好ましくは1ppb〜0.0001pptの間、
また、これらは更に好ましくは10ppm未満、好ましくは5ppm未満、更に好ましくは4ppm未満、更に一層好ましくは3ppm未満、特に好ましくは0.5〜3ppm、更に特に好ましくは1ppm〜3ppmの上記不純物の合計を有する。それぞれの要素について、検出制限範囲内の純度が目標である。
【0039】
ソーラーシリコンは99.999質量%の最小限のシリコン含有率を特徴とし、半導体シリコンは99.9999質量%の最小限のシリコン含有率を特徴とする。
【0040】
本発明による方法は、構成要素プロセスとしてシリコンの製造のための冶金プロセス、例えば、US4,247,528号によるプロセス又はDow CorningによるDow Corningプロセス、"Solar Silicon via the Dow Corning Process" , Final Report, 1978; Technical Report of a NASA Sponsored project; NASA-CR 157418又は15706; DOE /JPL- 954559-78 / 5 ; ISSN: 0565-7059又はAulichら、"Solar-grade silicon prepared by carbothermic reduction of silica"によるSiemensによって開発されたプロセス; JPL Proceedings of the Flat-Plate Solar Array Project Workshop on Low-Cost Polysilicon for Terrestrial Photovoltaic Solar-Cell Applications, 02/1986, 第267〜275頁(N86−26679 17−44を参照のこと)に組み込むことができる。同様に、該プロセス工程をDE102008042502号又はDE102008042506号によるプロセスに導入することが好ましい。
【0041】
試験法
上記の不純物の測定は、ICP−MS/OES(誘導結合分光分析−質量分析/光学電子分光分析)及びAAS(原子吸光分析)によって行われる。
【0042】
冷却後のシリコン又はシリコン融液中の炭素含有率は、LECO(CS244又はCS600)元素分析器によって測定される。これは約100〜150mgのシリカをセラミックるつぼに秤量し、これに燃焼添加剤を与え且つ誘導オーブン内で酸素流れの下で加熱することによって行われる。試料材料を約1gのLecocel II(タングステン−錫(10%)合金の粉末)及び約0.7gの鉄やすり粉で覆う。その後、るつぼを蓋で閉じる。炭素含有率が低ppm範囲である時、測定の正確性は、シリコンの出発質量を500mgまで増大させることによって向上する。しかしながら、添加剤の出発質量は変化しないままである。元素分析器のための操作指示及びLecocel IIの製造業者からの指示に留意すべきである。
【0043】
粉状の酸素キャリアの平均粒径はレーザー回析によって測定される。粉状固体の粒径分布の測定のためのレーザー回析の使用は、粒子が、それらのサイズに応じて全ての方向で異なる強度パターンを用いて、単色レーザービームからの光を散乱又は回析する現象に基づいている。照射された粒子の直径が小さいほど、単色レーザービームの散乱又は回析角が大きくなる。
【0044】
その後の測定手順は二酸化ケイ素試料に関して記載されている。
【0045】
試料は、親水性の二酸化ケイ素の場合、分散液として脱塩水を用いて、水に不十分に湿る二酸化ケイ素の場合、純粋なエタノール用いて調製され且つ分析される。分析の開始前に、LS230レーザー回折計(ベックマンコールター社製;測定範囲:0.04〜2000μm)及び液体モジュール(Small Volume Module Plus、120ml、ベックマンコールター社)を2時間温めて、モジュールを脱塩水で3回濯ぐ。疎水性二酸化ケイ素を分析するために、濯ぎ操作を純粋なエタノールで行う。
【0046】
LS230レーザー回析計の測定器ソフトウェアでは、Mie理論による評価に関する以下の光学パラメータを.rfdファイルで保存する:
分散液体の屈折率R.I.Realwater=1.332(エタノールの場合1.359)
固体(試料材料)の屈折率Realsilica=1.46
虚部=0.1
形状因子=1
【0047】
更に、粒子分析に関する以下のパラメータを設定するべきである:
測定時間=60秒
測定数=1
ポンプ速度=75%
【0048】
試料の特徴に応じて、試料を、粉状固体としてスパチュラを用いて、又は懸濁形態で2mlの使い捨てピペットを用いて、装置の液体モジュール(Small Volume Module Plus)に直接的に添加できる。分析に要求される試料濃度が達成された時(最適な光学的シャドウイング)、LS230レーザー回析計の測定機器ソフトウェアは「OK」のメッセージを示す。
【0049】
粉砕された二酸化ケイ素を、CV181超音波変換器及び6mmの超音波チップを有するSonics社製のVibra Cell VCX130超音波プロセッサを用いて、同時ポンプ循環で70%振幅にて液体モジュールでの60sの超音波処理によって分散させる。粉砕されていない二酸化ケイ素の場合、分散は、液体モジュールでの60sのポンプ循環による超音波処理なしで行われる。
【0050】
測定は室温で行う。測定機器ソフトウェアはMie理論に基づいて、予め記録された光学的パラメータ(.rfdファイル)によって、粗データを使用して、粒径及びd50値(中央値)の体積分布を計算する。
【0051】
ISO13320「粒径分析−レーザー回析法に対するガイド」は粒径分布の測定のためのレーザー回析法を詳細に記載している。当業者は代替的な酸素キャリア及び分散液についてMie理論による評価に関する光学的パラメータのリストをそこに見出している。
【0052】
粒状の酸素キャリアの場合、平均粒径をふるい残留分析(Alpine)によって測定する。
【0053】
このふるい残留測定は、Alpine社製のS 200エアジェットふるい装置によるDIN ISO 8130−1に基づくエアジェットふるいプロセスである。微粒剤及び粒体のd50を測定するために、300μmより大きなメッシュサイズを有するふるいも、この目的に使用される。d50を測定するために、ふるいは、d50を測定できる粒径分布を提供するように選択されなければならない。図による表示及び評価は、ISO 2591−1、第8.2章と同様に行われる。
【0054】
50は、粒子の50%が、d50の粒径を有する粒子よりも小さいか又は同じ粒径を有する累積の粒径分布における粒子直径を意味すると理解される。
【0055】
以下の実施例は、本発明によるプロセスを説明するが、決してこれらを制限しない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は光アーク炉内での脱炭の線図を示す。
【0057】
比較例1:
1MWの取り付けられた電源を有する光アーク炉では、シリコンは高純度の粗材料から得られた。4時間毎に、約215kgのシリコンが周期的に出湯された。脱炭は全く起こらなかった。試料をキャスティングジェットから取り出してクエンチする。炭素含有率は1180ppmであった。粉砕試料は、走査型電子顕微鏡(SEM)の下で多くのSiCのインクルージョンを示した。
【0058】
比較例2:
SiOペレットを融液中に吹き込み、5分後に中空電極を通して供給されたCFCプローブによって出湯することを除いて、比較例1に従って実験を行った。750gのSiO(化学量論量の3倍)が負荷された1m(STP)のアルゴンを1分毎に吹き込んだ。酸化処理を5分続けた。これは出湯直後であった。クエンチされた試料は125ppmの炭素含有率を有し;SEM試料は単独のSiCインクルージョンを示した。
【0059】
実施例1:
3kgのSiOペレットを、1m(STP)のアルゴンと共に、5分以内に中空電極を通して融液上に吹き込み、45分後に計画された出湯を行うことを除いて、比較例1に従って実験を行った。この後に35分間の待機が続いた。その後、SiO粉末を再び融液上に5分間吹き込み、その後直ちに出湯を行った。クエンチされた試料は108ppmの炭素含有率を示し;SiCインクルージョンは見られなかった。
【0060】
実施例1は、先行技術のプロセス(比較例2)と比較しても、非常に明確に本発明による方法の効果及び利点を示す。特にSiCインクルージョンの有意な低下が顕著である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン融液の粗脱炭法であって、酸素キャリアがシリコン融液に添加され、前記酸素キャリアの添加はいずれの場合にも保持時間によって1回以上中断され、その後、前記添加が再開されることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
酸素キャリアが固体の形態で、好ましくは粉末として添加され、及び/又は前記酸素キャリアが二酸化ケイ素であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酸素キャリアが、ガス流れによって、好ましくは希ガス流れによって、更に好ましくはアルゴン流れによってシリコン融液中に及び/又はその上に吹き込まれることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
酸素キャリアを添加した時のシリコン融液が1500℃〜2000℃、好ましくは1600℃〜1900℃、更に好ましくは1700℃〜1800℃の間の温度を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
酸素キャリアの添加が1分〜5時間、好ましくは1分〜2.5時間、更に好ましくは5〜60分間の保持時間にわたり1回以上、好ましくは1回中断されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
酸素キャリアの添加が0.1分〜1時間、好ましくは0.1分〜30分、更に好ましくは0.5分〜15分、特に好ましくは1分〜10分の添加時間後に中断されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
シリコン融液の全炭素含有率が250ppm未満、好ましくは200ppm未満、更に好ましくは150ppm未満、特に好ましくは10〜100ppmであり、及び/又はシリコン融液の全炭素含有率におけるSiCの質量割合が20質量%未満、好ましくは10質量%未満、更に好ましくは5質量%未満、最も好ましくは1質量%未満であるまでは酸素キャリアの添加が継続されることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
好ましくはガス、更に好ましくは希ガス、最も好ましくはアルゴンを導入することによって、又はガス形成物質、好ましくはガス形成固体、更に好ましくは炭酸アンモニウム粉末を供給することによって、最も好ましくは炭酸アンモニウム粉末を、二酸化ケイ素と炭酸アンモニウムとの混合物の質量を基準として1〜10質量%の割合で二酸化ケイ素に添加することによって、泡形成剤がシリコン融液に供給されることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
炭素を用いてSiOを還元するシリコンの製造方法であって、シリコン融液の粗脱炭を請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法によって行うことを特徴とする、前記製造方法。
【請求項10】
シリコンがソーラーシリコン又は半導体シリコンであり、及び/又は高純度の二酸化ケイ素及び/又は高純度の炭素が使用されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
粗脱炭の後に、シリコン融液の全炭素含有率が、5ppm未満、好ましくは3ppm未満、更に好ましくは2ppm未満、特に好ましくは0.0001〜1ppmまで低下するような精密な脱炭を行うことを特徴とする、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
バッチプロセスであり及び/又はシリコン融液が出湯される前に、酸素キャリアを還元炉に添加することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
酸素キャリアが、シリコン融液が出湯された後に還元炉の外でシリコン融液に添加される連続プロセスであることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−517211(P2013−517211A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549274(P2012−549274)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【国際出願番号】PCT/EP2010/070753
【国際公開番号】WO2011/088952
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】