説明

シリコーンゴム用接着剤

【課題】シリコーンゴムに対して良好に接着し、かつ保存安定性に優れたシリコーンゴム用接着剤を提供する。
【解決手段】(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を一分子中に平均2個以上有し、かつ23℃における粘度が0.05〜1,000Pa・sであるオルガノポリシロキサン:100質量部、(B)ケイ素原子に結合した水素原子を一分子中に平均2個以上有し、かつ23℃における粘度が0.001〜100Pa・sであるオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分のケイ素原子に結合したアルケニル基に対する本成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.01〜20となる量、(C)表面が脂肪酸エステルで処理された炭酸カルシウム:1〜100質量部、及び(D)白金族金属系触媒:有効量、を含有してなることを特徴とするシリコーンゴム用接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーンゴムに対して良好に接着するシリコーンゴム用接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゴムは撥水性、耐候性、耐熱性等が優れることから、各種基材のコーティング剤や皮膜形成剤として使用されている。しかし、シリコーンゴムは接着されにくいので、その点を改良するために、ケイ素原子結合アルケニル基とケイ素原子結合アルコキシ基またはシラノール基とを有するオルガノポリシロキサン、縮合反応触媒、及び有機過酸化物からなるシリコーンゴム用接着剤を提案されている(特許文献1)。また、シリコーン被覆布同士を積み重ね、該積み重ね部分に常温で可塑性の白金系触媒含有付加反応硬化型もしくは有機過酸化物含有ラジカル反応硬化型のシリコーンゴム接着剤を介在させ、圧着後、加熱硬化させるか、圧着しつつ加熱硬化させる方法が提案されている(特許文献2)。しかし、いずれの文献に記載の接着剤または方法を適用しても、シリコーンゴムに対する十分な接着性は得られない。特に、特許文献2中には、白金系触媒含有付加反応硬化型のシリコーンゴム接着剤が記載されているが、この接着剤は付加反応硬化型シリコーンゴムに対して十分な接着性を示さないという問題がある。
【0003】
特許文献3には、シリコーンゴム用接着剤として、炭酸カルシウム粉末を含有する付加反応硬化型シリコーン組成物が開示されているが、表面処理された炭酸カルシウム粉末としては、脂肪酸、樹脂酸等の有機酸で表面処理された炭酸カルシウム粉末が記載されているに過ぎない。これらの有機酸で表面処理された炭酸カルシウム粉末、特に軽質炭酸カルシウム粉末(即ち、沈降炭酸カルシウム粉末)は白金族金属系触媒に対して触媒毒になり、このような炭酸カルシウム粉末を含有する組成物は経時で硬化遅延を起こす、又は硬化しなくなるという問題がある。
【0004】
特許文献4には、シリコーンゴム用接着剤として、パラフィン系化合物で表面処理された炭酸カルシウム粉末を含有する付加反応硬化型シリコーン組成物が提案されている。しかし、この組成物は、保存性に優れ、満足な伸びは示すものの、シリコーンゴムに対する接着強度は満足いくものではない。
【特許文献1】特開昭61−278580号公報
【特許文献2】特開昭62−90369号公報
【特許文献3】特開2002−285130号公報
【特許文献4】特開2007−297598号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明は、シリコーンゴムに対して良好に接着し、かつ保存安定性に優れたシリコーンゴム用接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、表面が脂肪酸エステルで処理された炭酸カルシウムを含有する付加反応硬化型シリコーン組成物がシリコーンゴム、特に付加反応硬化型シリコーンゴム組成物を硬化させることによって得られたシリコーンゴム(以下、単に「付加反応硬化型シリコーンゴム」という)に対して良好な接着性を示し、かつ保存安定性に優れていることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0007】
即ち、本発明は、
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を一分子中に平均2個以上有し、かつ23℃における粘度が0.05〜1,000Pa・sであるオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)ケイ素原子に結合した水素原子を一分子中に平均2個以上有し、かつ23℃における粘度が0.001〜100Pa・sであるオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分のケイ素原子に結合したアルケニル基に対する本成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.01〜20となる量、
(C)表面が脂肪酸エステルで処理された炭酸カルシウム:1〜100質量部、
(D)白金族金属系触媒:有効量
を含有してなることを特徴とするシリコーンゴム用接着剤を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のシリコーンゴム用接着剤は、シリコーンゴム、特に付加反応硬化型シリコーンゴムに対して良好に接着し、かつ保存安定性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書において、粘度の値は回転粘度計による測定値であり、特に断りがない限り、その測定温度は23℃である。
【0010】
[(A)成分]
(A)成分のオルガノポリシロキサンは本発明接着剤のベースポリマーであり、ケイ素原子に結合したアルケニル基を一分子中に平均2個以上、好ましくは個々の分子につき少なくとも2個、好ましくは2〜50個、より好ましくは個々の分子につき2〜20個程度含有し、23℃における粘度が0.05〜1,000Pa・sであるオルガノポリシロキサンである。(A)成分は、1種単独で使用しても、粘度や分子構造の異なる2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0011】
(A)成分の分子構造は特に限定されず、例えば、直鎖状構造、一部分岐を有する直鎖状構造、分岐鎖状構造、環状構造、分岐を有する環状構造が挙げられる。(A)成分は、通常、実質的に直鎖状のオルガノポリシロキサンであることが好ましく、具体的には、分子鎖が主にジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンであることが好ましい。また、(A)成分は、単一のシロキサン単位からなる重合体であっても、2種以上のシロキサン単位からなる共重合体であってもよい。更に、(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基の位置は特に制限されず、該アルケニル基は分子鎖末端部分のケイ素原子及び分子鎖非末端部分(分子鎖途中)のケイ素原子のどちらか一方にのみ結合していてもよいし、これら両者に結合していてもよい。
【0012】
(A)成分の23℃における粘度は、通常、0.05〜1,000Pa・sであるが、好ましくは0.1〜500Pa・sである。前記粘度が低すぎると、得られる接着剤の硬化物の物理的特性と接着性とが十分満足なものとなりにくい場合がある。また、前記粘度が高すぎると、得られる接着剤は著しく流動性に欠けたものとなりやすく、作業性が劣ったものとなりやすい。
【0013】
(A)成分としては、例えば、下記平均組成式(1):
1L2mSiO(4-L-m)/2 (1)
(式中、R1は独立に脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の一価炭化水素基を表し、R2は独立にアルケニル基を表し、Lは、通常、0.7〜2.2、好ましくは1.8〜2.1、より好ましくは1.95〜2.0の正数であり、mは、通常、0.0001〜0.2、好ましくは0.0005〜0.1、より好ましくは0.01〜0.05の正数であり、但し、L+mは、通常0.8〜2.3、好ましくは1.9〜2.2、より好ましくは1.98〜2.05の正数である。)
で表され、ケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個含有し、23℃における粘度が、通常、0.05〜1,000Pa・s、好ましくは0.1〜500Pa・sであるオルガノポリシロキサンが挙げられる。
【0014】
上記R1としては、例えば、炭素原子数1〜10の、脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の一価炭化水素基が挙げられる。該R1の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ベンジル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基等のアラルキル基;これらの炭化水素基中の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全てが塩素原子、臭素原子、沃素原子等のハロゲン原子;シアノ基等によって置換された基、例えば、クロロメチル基、2−ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。
【0015】
これらの中でも、メチル基、フェニル基又はこれら両者の組み合わせが好ましい。R1がメチル基、フェニル基又はこれら両者の組み合わせである(A)成分は、合成が容易であり、化学的安定性が良好であるからである。また、本発明の接着剤に特に耐溶剤性が必要とされる場合には、R1は更にメチル基、フェニル基又はこれら両者の組み合わせと3,3,3−トリフルオロプロピル基との組み合わせであることが好ましい。
【0016】
上記R2としては、例えば、炭素原子数2〜8のアルケニル基が挙げられる。該R2の具体例としては、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、イソブテニル基、ヘキセニル基等が挙げられる。これらの中でもビニル基が好ましい。R2がビニル基である(A)成分は、合成が容易であり、化学的安定性が良好であるからである。
【0017】
(A)成分の具体例としては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジビニルメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン等が挙げられる。
【0018】
[(B)成分]
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、ケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)を一分子中に平均2個以上有し、かつ23℃における粘度が0.001〜100Pa・s、好ましくは0.001〜10Pa・sであり、本発明接着剤の硬化剤として作用する。(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は特に限定されず、例えば、直鎖状構造、環状構造、分岐鎖状構造、三次元網状構造等が挙げられるが、通常、直鎖状構造、環状構造、分岐鎖状構造である。(B)成分中のSiH基は、分子鎖末端部分にのみ存在していてもよいし、分子鎖側鎖として分子鎖非末端部分にのみ存在していてもよいし、その両方に存在していてもよい。(B)成分は、1種単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、
(B−1)ケイ素原子に結合した水素原子を分子鎖両末端にのみ、式:RHSiO1/2で表されるシロキサン単位[式中、Rは独立に、脂肪族不飽和結合を含有しない非置換または置換の一価炭化水素基を表す。]として含有し、かつ23℃における粘度が0.001〜100Pa・s、好ましくは0.001〜10Pa・sである直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(B−2)ケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個含有し、式:RHSiOで表されるシロキサン単位および式:RXSiO1/2で表されるシロキサン単位[式中、Rは上記のとおりであり、Xは水素原子またはRを表す。]のいずれか一方または両方を含有し、かつ23℃における粘度が0.001〜100Pa・s、好ましくは0.001〜10Pa・sであるオルガノハイドロジェンポリシロキサンおよび
(B−1)と(B−2)の組み合わせが挙げられ、(B−1)と(B−2)の組み合わせが好ましい。
【0020】
上記R3としては、例えば、炭素原子数が好ましくは1〜10、より好ましくは1〜8の、脂肪族不飽和結合を含有しない非置換または置換の一価炭化水素基が挙げられる。該Rの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;3,3,3−トリフロロプロピル基、3−クロロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基等が挙げられる。好ましくは、メチル基、フェニル基、3,3,3−トリフロロプロピル基であり、特に好ましくは、メチル基、フェニル基である。
【0021】
(B−1)成分の直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、下記一般式(2):
32HSiO(R32SiO)nSiR32H (2)
(式中、R3は上記のとおりであり、nはこのオルガノハイドロジェンポリシロキサンの23℃における粘度が、0.001〜100Pa・s、好ましくは0.001〜10Pa・sとなる整数であり、通常は2〜1000、好ましくは2〜500程度の整数である。)
で表されるものが挙げられる。(B−1)成分の具体例としては、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジフェニルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体等が挙げられる。(B−1)成分の直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0022】
(B−2)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一分子中のケイ素原子数(又は重合度)が、通常、2〜1000個程度、好ましくは2〜500個程度、より好ましくは2〜300個程度、特に好ましくは2〜100個程度であり、また、一分子中のケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)の数が、通常、3〜1000個、好ましくは3〜500個、より好ましくは3〜300個、特に好ましくは3〜100個程度である。また、(B−2)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は特に限定されず、例えば、直鎖状構造、環状構造、分岐鎖状構造、三次元網状構造等が挙げられるが、通常、直鎖状構造、環状構造、分岐鎖状構造である。(B−2)成分中のSiH基は、分子鎖末端部分および分子鎖非末端部分(即ち、分子鎖側鎖)のどちらか一方にのみ存在していてもよいし、その両方に存在していてもよい。
【0023】
(B−2)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、下記一般式:
32HSiO(R3HSiO)pSiR32
32HSiO(R3HSiO)p(R32SiO)qSiR32
33SiO(R3HSiO)pSiR33
33SiO(R3HSiO)(R32SiO)qSiR33
(R32HSiO)3SiR3
(R32HSiO)4Si
【0024】
【化1】


(式中、R3は上記と同じであり、p、q、r、sは独立に1以上の整数であり、tは4〜20の整数であり、r+sは4〜20の整数であり、但し、p、p+qはこのオルガノハイドロジェンポリシロキサンの23℃における粘度が0.001〜100Pa・s、好ましくは0.001〜10Pa・sの範囲を満足する数であり、通常、2〜1000、好ましくは2〜500、より好ましくは2〜300、特に好ましくは2〜100の整数である。)
で表されるものが挙げられる。
【0025】
(B−2)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの具体例としては、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)メチルシラン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)フェニルシラン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン、メチルフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位と(CH3)3SiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C65)3SiO1/2単位とからなる共重合体や、これらの各例示化合物においてメチル基の一部をエチル基、プロピル基等の他のアルキル基やフェニル基等のアリール基で置換したもの等が挙げられる。(B−2)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0026】
本発明組成物において(B)成分の含有量は、(A)成分のケイ素原子に結合したアルケニル基に対する本成分中のケイ素原子結合水素原子(即ち、SiH基)のモル比が0.01〜20となる量であり、好ましくは、0.1〜10となる量である。(B)成分の含有量が上記モル比が0.01未満となる量であると、得られる接着剤が十分に硬化しなくなり、一方、(B)成分の含有量が上記モル比が20を超える量であると、得られる硬化物の機械的特性及び耐熱特性が低下する。
【0027】
(B−1)成分と(B−2)成分を組み合わせて使用する場合、(B−2)成分中のSiH基の量は、(B−1)および(B−2)成分中のSiH基の合計量に対して5〜98モル%であることが好ましく、より好ましくは10〜95モル%である。この範囲で併用すると特に接着性に優れたものとなる。(B−2)成分中のSiH基の量が5モル%未満の場合には、得られる接着剤が十分に硬化しなくなる傾向がある。一方、上記SiH基の量が98モル%を超える場合には、得られる硬化物の伸び特性の低下に伴い、耐熱特性が低下する傾向がある。
【0028】
[(C)成分]
(C)成分は、表面が脂肪酸エステルで処理された炭酸カルシウムであり、本発明接着剤の保存安定性を改善すると共に、シリコーンゴム、特に付加反応硬化型シリコーンゴムに対する優れた接着性を該接着剤に与える。脂肪酸エステルで表面処理される炭酸カルシウムは特に限定されないが、重質炭酸カルシウム粉末;コロイド質炭酸カルシウム粉末等の軽質炭酸カルシウム粉末等が好ましく、その中でも特に軽質炭酸カルシウム粉末が好ましい。
【0029】
(C)成分の炭酸カルシウムの形状、粒子径等は特に制限されない。(C)成分の形状としては、例えば、球状、柱状、不定形状、針状等が挙げられる。また、(C)成分の平均粒子径は、好ましくは0.01〜0.20μm、より好ましくは0.02〜0.10μm、特に好ましくは0.03〜0.07μmである。該平均粒子径が0.01〜0.20μmであると、(C)成分の分散性が良好となりやすく、また、得られる硬化物の機械的特性が向上しやすい。なお、本明細書において、「平均粒子径」とは、レーザー光回折法を用いた粒度分布測定装置により求めた累積分布の50%に相当する体積基準の平均粒径をいう。
【0030】
また、(C)成分の炭酸カルシウムは、窒素ガス吸着法による比表面積が1〜60m2/gであることが好ましく、10〜50m/gであることがより好ましい。
【0031】
炭酸カルシウムの表面処理剤として用いられる脂肪酸エステルは、特に限定はされず、低分子量のものであっても高分子量のものであってもよいが、具体例としては、グリセリン脂肪酸エステル等の多価アルコール脂肪酸エステル、アルファスルホ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの脂肪酸エステルは1種単独で使用しても2種以上を併用してもよい。前記脂肪酸エステルを与える脂肪酸としては、炭素原子数が3〜100のものが好ましく、3〜60のものがより好ましく、12〜18のものが更に好ましく、16〜18のものが特に好ましく、また、飽和脂肪酸が好ましい。前記脂肪酸エステルとしては、特に好ましくは、グリセリン飽和脂肪酸エステル等が用いられる。
【0032】
(C)成分の炭酸カルシウムの表面処理状態及び表面処理量(即ち、炭酸カルシウムの表面に残存する脂肪酸エステルの量)は特に制限されるものではない。しかし、脂肪酸エステルで処理された表面は、脂肪酸エステルが炭酸カルシウムの表面に強固に結合し、温度変化によって該表面から遊離しない状態にあることが好ましい。また、表面処理量は、得られる接着剤に十分な保存安定性を与える最小量であることが好ましく、具体的には、表面処理された炭酸カルシウムに対して、好ましくは0.5〜15質量%、特に好ましくは1〜7質量%である。
【0033】
(C)成分としては、予め脂肪酸エステルで表面処理された炭酸カルシウムを使用してもよく、また、本発明の接着剤を調製する段階で、(A)成分、(B)成分等の(C)成分以外の成分とともに、炭酸カルシウムおよび脂肪酸エステルを混合することにより表面処理される炭酸カルシウムを使用してもよい。
【0034】
(C)成分としては、市販されているものを使用してもよく、例えば、脂肪酸エステル系化合物で表面処理された軽質炭酸カルシウムであるシーレッツ200及び700(商品名、丸尾カルシウム(株)製)等を挙げることができる。
【0035】
(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して1〜100質量部であり、好ましくは、2〜50質量部である。該含有量が1質量部未満では、本発明の接着剤はシリコーンゴムに対する接着性が十分ではなく、該含有量が100質量部を超えると、均一な接着剤を調製することが困難となる。
【0036】
[(D)成分]
(D)成分は白金族金属系触媒であり、ヒドロシリル化反応触媒として公知のものが全て使用できる。(D)成分は、1種単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
(D)成分としては、例えば、白金(白金黒を含む)、ロジウム、パラジウム等の白金族金属;H2PtCl4・kH2O、H2PtCl6・kH2O、NaHPtCl6・kH2O、KHPtCl6・kH2O、Na2PtCl6・kH2O、K2PtCl4・kH2O、PtCl4・kH2O、PtCl2、Na2HPtCl4・kH2O(式中、kは0〜6の整数であり、好ましくは0又は6である。)等の塩化白金、塩化白金酸及び塩化白金酸塩;アルコール変性塩化白金酸(米国特許第3,220,972号明細書参照);塩化白金酸とオレフィンとの錯体(米国特許第3,159,601号明細書、同第3,159,662号明細書、同第3,775,452号明細書参照);白金黒、パラジウム等の白金族金属をアルミナ、シリカ、カーボン等の担体に担持させたもの;白金とトリフェニルフォスフィンとの錯体;ロジウム−オレフィン錯体;クロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ロジウム(ウィルキンソン触媒);塩化白金、塩化白金酸又は塩化白金酸塩とビニル基含有シロキサン、特にビニル基含有環状シロキサンとの錯体などが挙げられる。これらの中では、白金黒;塩化白金酸;塩化白金酸とオレフィンとの錯体;塩化白金、塩化白金酸又は塩化白金酸塩とビニル基含有シロキサン、特にビニル基含有環状シロキサンとの錯体;白金とトリフェニルフォスフィンとの錯体等の白金系触媒が望ましい。
【0038】
(D)成分の配合量は、ヒドロシリル化反応触媒としての有効量でよく、所望の硬化速度が得られる限り、特に制限されない。該配合量としては、例えば、本発明の接着剤全体の量に対して(D)成分中の白金族金属の量が、質量基準で、通常、0.1〜1,000ppm、好ましくは0.1〜500ppm、特に好ましくは0.5〜200ppmとなる量である。
【0039】
[(E)成分]
本発明の接着剤は、更に、(E)窒素ガス吸着法(BET法)により測定された比表面積が50m2/g以上の微粉末シリカを含有することが好ましい。
(E)成分は、比表面積が50m2/g以上、好ましくは50〜400m2/g、より好ましくは100〜350m2/gである微粉末シリカである。(E)成分は、得られる接着剤に適度な強度を付与することができる。(E)成分は、1種単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
(E)成分としては、公知の微粉末シリカを用いることができ、親水性の微粉末シリカであっても疎水性の微粉末シリカであってもよい。親水性の微粉末シリカとしては、例えば、沈降シリカ等の湿式シリカ、シリカキセロゲル、ヒュームドシリカ等の乾式シリカが挙げられる。疎水性の微粉末シリカとしては、例えば、親水性の微粉末シリカの表面を疎水化処理して得られる微粉末シリカが挙げられる。疎水化処理剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン等のオルガノシラザン;メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン等のハロゲン化シラン;該ハロゲン化シランのハロゲン原子がメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基で置換されたオルガノアルコキシシラン等が挙げられる。疎水化処理方法としては、例えば、親水性の微粉末シリカを疎水化処理剤により150〜200℃、特に150〜180℃で2〜4時間程度加熱処理する方法が挙げられる。このようにして親水性の微粉末シリカの表面を予め疎水化処理して得た疎水性の微粉末シリカを本発明接着剤に配合してもよいし、また、本発明接着剤中に親水性の微粉末シリカとともに疎水化処理剤を配合することにより、本発明接着剤を調製する段階で該親水性の微粉末シリカの表面が疎水化処理されるようにしてもよい。
【0041】
(E)成分の具体例としては、アエロジル(登録商標)50、130、200及び300(商品名、日本アエロジル社製)、キャボシル(登録商標)MS−5及びMS−7(商品名、キャボット社製)、レオロジルQS−102及び103(商品名、トクヤマ社製)、ニプシルLP(商品名、日本シリカ社製)等の親水性の微粉末シリカ;アエロジル(登録商標)R−812,R−812S、R−972及びR−974(商品名、デグッサ社製)、レオロジルMT−10(商品名、トクヤマ社製)、ニプシルSSシリーズ(商品名、日本シリカ社製)等の疎水性の微粉末シリカが挙げられる。
【0042】
(E)成分を配合する場合、配合量は、前記(A)成分100質量部に対して、好ましくは1〜100質量部、より好ましくは2〜50質量部である。この範囲であると、(E)成分による強度付与効果が充分に発揮され、得られる接着剤が良好な流動性を有し、作業性に優れたものとなる。(E)成分の配合量が少なすぎると配合効果が不十分となることがあり、多すぎると作業性および接着剤の物理的特性が低下することがある。
【0043】
[その他の成分]
本発明組成物には、上記(A)〜(E)成分に加えて、必要に応じ他の成分を配合することができる。
【0044】
本発明接着剤には、その接着性を更に向上させるための接着性付与剤を配合してもよい。接着性付与剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリメトキシシリル)プロパン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン等のシランカップリング剤;テトラエチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンエチルアセトネート、チタンアセチルアセトネート等のチタン化合物;エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)等のアルミニウム化合物;ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムビスアセチルアセトネート、ジルコニウムエチルアセトアセテート等のジルコニウム化合物が挙げられる。接着性付与剤は、1種単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。本発明組成物に接着性付与剤を配合する場合、その含有量は特に限定されないが、(A)成分100質量部に対して、20質量部以下(0〜20質量部)程度がよく、好ましくは0.01〜10質量部である。
【0045】
また、本発明の接着剤には、その他任意の成分として、例えば、ヒュームド酸化チタン、カーボンブラック、ケイ藻土、酸化鉄、酸化アルミニウム、アルミノケイ酸塩、石英、重質炭酸カルシウム、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、銀、銅、ニッケル等の無機質充填剤及びこれらの充填剤の表面を(E)成分の項で説明した疎水化処理剤で処理した充填剤を含有してもよい。
【0046】
更に、本発明の接着剤には、その貯蔵安定性を向上させたり、取扱い作業性を向上させたりするために、硬化制御剤を配合してもよい。該硬化制御剤としては、例えば、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−フェニル−1−ブチン−3−オール等のアセチレン系化合物;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等のエンイン化合物;1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルビニルシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルビニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体等の一分子中にビニル基を5質量%以上持つオルガノシロキサン化合物;ベンゾトリアゾール等のトリアゾール類;フォスフィン類;メルカプタン類;ヒドラジン類等が挙げられる。硬化制御剤は1種単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。本発明の接着剤に硬化制御剤を配合する場合、その含有量は限定されないが、(A)成分100質量部に対して、通常、0.001〜5質量部、好ましくは0.01〜5質量部である。
【0047】
[調製方法]
本発明の接着剤を調製する方法は限定されず、(A)〜(D)成分、ならびに必要に応じて(E)成分及びその他任意の成分を混合することにより調製することができるが、本発明の接着剤が(E)成分を含有する場合には、予め(A)成分と(E)成分を加熱混合して調製したベースコンパウンドに、(B)〜(D)成分を添加することが好ましい。なお、その他任意の成分を添加する場合には、ベースコンパウンドを調製するときに添加してもよく、また、その他任意の成分が加熱混合により変質する場合には、ベースコンパウンドに(B)〜(D)成分を添加するときに添加することが好ましい。また、このベースコンパウンドを調製するときに、前記の疎水化処理剤を添加して、(E)成分の表面をin−situで疎水化処理してもよい。本発明の接着剤を調製するためには、2本ロールミル、ニーダーミキサー、ロスミキサー等の周知の混練装置を用いることができる。
【0048】
本発明の接着剤は、1液型の接着剤でも、通常の硬化性シリコーンゴム組成物と同様に2液に分け、使用時にこの2液を混合して硬化させる所謂2液型の接着剤でもよい。
【0049】
[接着剤の用途]
本発明接着剤はシリコーンゴムに塗布した後、硬化させることができる。本発明の接着剤の硬化条件は、公知の付加反応硬化型シリコーンゴム組成物の硬化条件と同様でよい。本発明接着剤は、例えば、常温でも十分硬化し、シリコーンゴムに対して接着性を発現するが、必要に応じて40〜180℃に加熱して硬化させてもよい。
【0050】
本発明の接着剤は、シリコーンゴムの接着に使用される。この場合、シリコーンゴムは特に制限されないが、付加反応硬化型シリコーンゴムであることが好ましい。本発明の接着剤は特に付加反応硬化型シリコーンゴムに対して優れた接着性を発揮するからである。即ち、本発明の接着剤は付加反応硬化型シリコーンゴムに対する接着剤として特に有効である。なお、この付加反応硬化型シリコーンゴム組成物としては、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、付加反応触媒を含有する公知のいずれの付加反応硬化型シリコーンゴム組成物をも用いることができる。
【0051】
このように、本発明の接着剤はシリコーンゴムに対し優れた接着性を発揮するものであり、被着体としては、例えば、シリコーンゴムそのもの、シリコーンゴム被覆物等が挙げられる。即ち、本発明の接着剤は、シリコーンゴム同士、シリコーンゴムとシリコーンゴム被覆物、またはシリコーンゴム被覆物同士を接着させるのに使用される。該シリコーンゴム被覆物としては、例えば、付加反応硬化型シリコーンゴムコーティング布が挙げられる。該シリコーンゴム被覆物における被覆される基材は特に限定されないが、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46などのポリアミド繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ビニロン繊維、レーヨン繊維、ポリオレフィン繊維、ポリエーテルイミド繊維等からなるエアーバッグ用合成繊維製基布などであることが好ましい。
【0052】
本発明の接着剤を用いた接着方法としては、例えば、2つの被着体の一方または両方に本発明の接着剤を塗布し、該2つの被着体を重ねて室温下(23℃±10℃)又は加熱下(例えば、40〜180℃)で該接着剤を硬化させる方法等が挙げられる。該接着剤の塗布量としては、例えば、2つの被着体を重ねたときの接着剤層の厚さが0.1〜5mm、特に0.2〜2mmとなる量が挙げられる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0054】
[実施例1]
(A)粘度30Pa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン100質量部、(E)窒素ガス吸着法(BET法)により測定された比表面積が300m2/gであるヒュームドシリカ15質量部、シリカの表面に対する疎水化処理剤としてヘキサメチルジシラザン1.5質量部、及び水1質量部を均一に混合した後、減圧下(30mmHg)、160℃で4時間加熱混合してベースコンパウンドを調製した。
【0055】
このベースコンパウンド115質量部に、(C)窒素ガス吸着法による比表面積が15m2/gであり脂肪酸エステルで表面処理されたコロイド質炭酸カルシウム(丸尾カルシウム株式会社製のシーレッツ200、表面処理量5.7質量%)粉末7質量部、(B−1)粘度0.01Pa・sの分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(上記ベースコンパウンドに含まれる(A)成分中のケイ素原子に結合したビニル基に対する本(B−1)成分中のケイ素原子結合水素原子(即ち、SiH基)のモル比が1.2となる量)、(B−2)(Me2HSiO)3SiMeで表される、3個のSiH基を有し、粘度が0.0012Pa・sであるオルガノハイドロジェンポリシロキサン(上記ベースコンパウンドに含まれる(A)成分中のケイ素原子に結合したビニル基に対する本(B−2)成分中のSiH基のモル比が0.3となる量)、(F)硬化抑制剤として粘度40mPa・sの分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基の含有量=8質量%)0.2質量部、及び(D)白金の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(上記ベースコンパウンド中の(A)成分のジメチルポリシロキサン100万質量部に対して本成分中の白金金属の量が25質量部となる量)を混合してシリコーンゴム用接着剤を調製した。
【0056】
《評価方法》
・硬さ
上記接着剤を23℃で1日間(24時間)放置することにより硬化させた。この接着剤硬化物の硬さをJIS K 6253に規定のタイプAデュロメータにより測定した。測定結果を表1に示す。
【0057】
・伸び及び引張強さ
上記接着剤を23℃で1日間(24時間)放置することにより硬化させて、JIS K 6251に規定のダンベル状3号形試験片を作製した。この試験片について伸び及び引張強さをJIS K 6251に規定の方法により測定した。測定結果を表1に示す。
【0058】
・接着力及び破壊モード
上記接着剤の付加反応硬化型シリコーンゴムに対する接着力をJIS K 6854に規定の方法に準じて、次のようにして測定した。付加反応硬化型シリコーンゴム組成物の硬化物(シリコーンゴム)を被覆した幅25mmのシリコーンゴム被覆ナイロンテープ同士を上記接着剤の厚さが0.6mmとなるように貼り合わせ、23℃で1日間放置することにより該接着剤を硬化させた。次に、この貼り合わせたテープについて、200mm/分の引張速度においてT型剥離試験を行なって、接着力を測定した。測定結果を表1に示す。
【0059】
また、剥離後に上記接着剤硬化物と上記テープとの界面の状態を目視にて観察することにより破壊モードを確認した。接着剤硬化物が完全に凝集破壊している場合、表1では「凝集破壊」と表示した。接着剤とテープに被覆されたシリコーンゴムとの界面において、接着剤自身の部分剥離が観察された場合、表1では「接着剤剥離」と表示した。
【0060】
・保存安定性
保存安定性を評価するために、まず、上記接着剤のうち、硬化剤成分、即ち、(B)及び(D)成分のみを除いた成分からなる組成物を調製した。この組成物を70℃で1週間放置した後、該硬化剤成分、即ち、(B)及び(D)成分を混合して接着剤を調製した。この接着剤を硬化させて硬化物を得、この硬化物について上記と同様に物性(硬さ、伸び、引張強さ、接着力)を測定し、破壊モードを観察した。なお、以下、1週間の放置を経て調製した接着剤を「放置後の接着剤」といい、このような放置を経ずに調製した接着剤を「放置前の接着剤」という。
【0061】
放置後の接着剤について、放置前の接着剤と比較して、硬化遅延が起こるかどうかを確認した。具体的には、放置後の接着剤の硬化時間が、放置前の接着剤の硬化時間に対して1.5倍以上であった場合に、放置後の接着剤について硬化遅延が起こったと評価した。表1では、硬化遅延が起こった場合、「有」と表示し、硬化遅延が起こらなかった場合、「無」と表示した。
【0062】
また、放置前後で上記物性が低下するかどうかを確認した。具体的には、放置後の接着剤硬化物についての値が、放置前の接着剤硬化物についての値の70%以下であった場合に、放置前後でその物性が低下したと評価した。表1では、上記4種のうち1種でも物性が低下した場合、「有」と表示し、上記4種のいずれの物性も低下しなかった場合、「無」と表示した。
【0063】
更に、破壊モードが放置前後で変化するかどうかを確認した。表1では、破壊モードが「凝集破壊」から「接着剤剥離」に変化した場合、「有」と表示し、破壊モードが変化しなかった場合、「無」と表示した
【0064】
保存安定性を次のとおり総合的に評価した。即ち、硬化遅延が起こらず、上記各物性が低下せず、かつ破壊モードが変化しなかった場合に、保存安定性が良好であると評価し、表1では「良」と表示した。それ以外の場合は、保存安定性が不良であると評価し、表1では「不良」と表示した。
【0065】
[実施例2]
実施例1において、(C)成分の量を15質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてシリコーンゴム用接着剤を調製した。この接着剤について実施例1と同様にして測定を行った。測定結果を表1に示す。
【0066】
[実施例3]
実施例1において、(C)成分を窒素ガス吸着法による比表面積が15m2/gであり脂肪酸エステルで表面処理されたコロイド質炭酸カルシウム(丸尾カルシウム株式会社製のシーレッツ700、表面処理量2.9質量%)に変更した以外は、実施例1と同様にしてシリコーンゴム用接着剤を調製した。この接着剤について実施例1と同様にして測定を行った。測定結果を表1に示す。
【0067】
[比較例1]
実施例1において、(C)成分を除いた以外は、実施例1と同様にしてシリコーンゴム用接着剤を調製した。この接着剤について実施例1と同様にして測定を行った。測定結果を表1に示す。
【0068】
[比較例2]
実施例1において、(C)成分を窒素ガス吸着法による比表面積が18m2/gであり脂肪酸で表面処理された沈降炭酸カルシウム粉末(白石工業株式会社製の白艶化CCR)に変更した以外は、実施例1と同様にしてシリコーンゴム用接着剤を調製した。この接着剤について実施例1と同様にして測定を行った。測定結果を表1に示す。
【0069】
[比較例3]
実施例1において、(C)成分を窒素ガス吸着法による比表面積が17m2/gであり樹脂酸で表面処理された沈降炭酸カルシウム粉末(丸尾カルシウム株式会社製のMT−100)に変更した以外は、実施例1と同様にしてシリコーンゴム用接着剤を調製した。この接着剤について実施例1と同様にして測定を行った。測定結果を表1に示す。
【0070】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を一分子中に平均2個以上有し、かつ23℃における粘度が0.05〜1,000Pa・sであるオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)ケイ素原子に結合した水素原子を一分子中に平均2個以上有し、かつ23℃における粘度が0.001〜100Pa・sであるオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分のケイ素原子に結合したアルケニル基に対する本成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.01〜20となる量、
(C)表面が脂肪酸エステルで処理された炭酸カルシウム:1〜100質量部
(D)白金族金属系触媒:有効量
を含有してなることを特徴とするシリコーンゴム用接着剤。
【請求項2】
(C)成分が、窒素ガス吸着法による比表面積が1〜60m2/gの軽質炭酸カルシウム粉末であることを特徴とする請求項1に係る接着剤。
【請求項3】
(C)成分が、脂肪酸エステルがグリセリン脂肪酸エステル、アルファスルホ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2に係る接着剤。
【請求項4】
更に、(E)窒素ガス吸着法による比表面積が50m2/g以上の微粉末シリカを含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に係る接着剤。
【請求項5】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが、
(B−1)ケイ素原子に結合した水素原子を分子鎖両末端にのみ、式:RHSiO1/2で表されるシロキサン単位[式中、Rは独立に、脂肪族不飽和結合を含有しない非置換または置換の一価炭化水素基を表す。]として含有し、かつ23℃における粘度が0.001〜100Pa・sである直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(B−2)ケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個含有し、式:RHSiOで表されるシロキサン単位および式:RXSiO1/2で表されるシロキサン単位[式中、Rは上記のとおりであり、Xは水素原子またはRを表す。]のいずれか一方または両方を含有し、かつ23℃における粘度が0.001〜100Pa・sであるオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの組み合わせであり、前記(B−1)および(B−2)成分中のケイ素原子に結合した水素原子の合計量に対する前記(B−2)成分中のケイ素原子に結合した水素原子の量の割合が5〜98モル%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に係る接着剤。
【請求項6】
更に、接着性付与剤を含有する請求項1〜5のいずれか1項に係る接着剤。
【請求項7】
被着体のシリコーンゴムが付加反応硬化型シリコーンゴム組成物の硬化物であるシリコーンゴムである請求項1〜6のいずれか1項に係る接着剤。
【請求項8】
被着体が付加反応硬化型シリコーンゴムコーティング布であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に係る接着剤。

【公開番号】特開2010−43221(P2010−43221A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−209672(P2008−209672)
【出願日】平成20年8月18日(2008.8.18)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】