説明

シリコーンゴム組成物及びキーパッド

【課題】動的疲労耐久性(打鍵耐久性)に優れたキーパッド用として好適なシリコーンゴム組成物及び該組成物を硬化成型してなるシリコーンゴム製キーパッドを提供する。
【解決手段】(A)下記平均組成式(I)
1aSiO(4-a)/2 (I)
(式中、R1は同一又は異種の非置換もしくは置換一価炭化水素基を示し、aは1.95〜2.05の正数である。)
で表される重合度が100以上のオルガノポリシロキサン、
(B)BET吸着法による比表面積が50m2/g以上の補強性シリカ、
(C)下記一般式(II)
23SiNHSiR23 (II)
(式中、R2は同一又は異種の一価炭化水素基を示し、R2の少なくとも一個はアルケニル基である。)
で示される分子中にアルケニル基を有するオルガノシラザン、
(D)脂肪酸エステル及び/又は脂肪族アルコールのエステル、
(E)硬化剤
を含有するシリコーンゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動的疲労耐久性に優れ、キーパッド材料として好適なシリコーンゴム組成物及び該組成物を硬化成型してなるキーパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
キーパッド材料は、携帯電話、パソコンのキーボード等に広く用いられており、これらキーパッド材料に要求される特性としては、キーを打鍵した時の荷重変化が少ないことが要求される。通常、成型キーの打鍵を繰り返すと、打鍵回数が増えるにつれキーの荷重は低下する。このピーク荷重の低下が少ないものほどキー特性としては良好であり、このような荷重特性を示す材料がキーパッド材料として優れている。
【0003】
このようなキーパッド材料としては、シリコーンゴム製のものが広く用いられている。特開平6−145523号公報(特許文献1)、特開平9−132712号公報(特許文献2)、特開2000−309710号公報(特許文献3)、特開2001−164111号公報(特許文献4)等には、キーパッド用シリコーンゴム組成物が提案されている。
【0004】
しかしながら、近年、成型されるキー形状の複雑化に伴い、キーにかかる歪自体もより大きなものとなってきており、更に近年使用される機器の小型化に伴い、材料により大きな歪がかかる形状のものが増えている。そのため、近年の厳しい要求に対し、動的疲労耐久性に関しては十分満足するものとなっていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−145523号公報
【特許文献2】特開平9−132712号公報
【特許文献3】特開2000−309710号公報
【特許文献4】特開2001−164111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、動的疲労耐久性(打鍵耐久性)に優れたキーパッド用として好適なシリコーンゴム組成物及び該組成物を硬化成型してなるシリコーンゴム製キーパッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、重合度が100以上のオルガノポリシロキサンと、補強性シリカ、アルケニル基を有するシラザンと、脂肪酸エステル及び/又は脂肪族アルコールのエステルとを配合したシリコーンゴム組成物を硬化させることにより、動的疲労特性に優れたキーパッド材料となり得ることを知見し、本発明をなすに至った。
【0008】
従って、本発明は、下記のシリコーンゴム組成物及び該組成物を硬化成型してなるキーパッドを提供する。
〔請求項1〕
(A)下記平均組成式(I)
1aSiO(4-a)/2 (I)
(式中、R1は同一又は異種の非置換もしくは置換一価炭化水素基を示し、aは1.95〜2.05の正数である。)
で表される重合度が100以上のオルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)BET吸着法による比表面積が50m2/g以上の補強性シリカ
5〜70質量部、
(C)下記一般式(II)
23SiNHSiR23 (II)
(式中、R2は同一又は異種の一価炭化水素基を示し、R2の少なくとも一個はアルケニル基である。)
で示される分子中にアルケニル基を有するオルガノシラザン 0.1〜10質量部、
(D)脂肪酸エステル及び/又は脂肪族アルコールのエステル 0.01〜5質量部、
(E)硬化剤 有効量
を含有するシリコーンゴム組成物。
〔請求項2〕
(C)アルケニル基を有するオルガノシラザンが、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザンである請求項1記載のシリコーンゴム組成物。
〔請求項3〕
(E)硬化剤が、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとヒドロシリル化触媒との組み合わせ、又は有機過酸化物であることを特徴とする請求項1又は2記載のシリコーンゴム組成物。
〔請求項4〕
更に、(F)成分として、下記一般式(III)
【化1】

(式中、R3は同一又は異種のアルキル基もしくは水素原子、R4は同一又は異種の非置換もしくは置換一価炭化水素基、mは1〜50の正数である。)
で表されるオルガノシラン又はオルガノシロキサンを含む請求項1〜3のいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物。
〔請求項5〕
キーパッド用である請求項1〜4のいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物。
〔請求項6〕
請求項1〜5のいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物を硬化成型してなるキーパッド。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、成型キーの打鍵耐久性試験において良好な結果を示すキーパッド用として好適なシリコーンゴム組成物及び該組成物を硬化成型してなるシリコーンゴム製のキーパッドを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るキーパッドの側面図である。
【図2】本発明に係るキーパッドのクリックパターンである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
−(A)成分−
本発明において、(A)成分は、下記平均組成式(I)で表される重合度が100以上のオルガノポリシロキサンである。
1aSiO(4-a)/2 (I)
(式中、R1は同一又は異種の非置換もしくは置換一価炭化水素基を示し、aは1.95〜2.05の正数である。)
【0012】
上記平均組成式(I)中、R1は同一又は異種の非置換もしくは置換の一価炭化水素基を示し、通常、炭素数1〜12、特に炭素数1〜8のものが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基、シクロアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基、あるいはこれらの基の水素原子の一部又は全部をハロゲン原子もしくはシアノ基等で置換した基などが挙げられ、メチル基、ビニル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基が好ましく、特にメチル基、ビニル基が好ましい。
【0013】
具体的には、該オルガノポリシロキサンの主鎖を構成するジオルガノシロキサン単位(R12SiO2/2、R1は上記と同じ、以下同様)の繰返し構造がジメチルシロキサン単位のみの繰り返しからなるもの、又はこの主鎖を構成するジメチルシロキサン単位の繰り返しからなるジメチルポリシロキサン構造の一部として、フェニル基、ビニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等を置換基として有するジフェニルシロキサン単位、メチルフェニルシロキサン単位、メチルビニルシロキサン単位、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシロキサン単位等のジオルガノシロキサン単位を導入したもの等が好適である。
【0014】
なお分子鎖両末端は、例えば、トリメチルシロキシ基、ジメチルフェニルシロキシ基、ビニルジメチルシロキシ基、ジビニルメチルシロキシ基、トリビニルシロキシ基などのトリオルガノシロキシ基(R13SiO1/2)やヒドロキシジメチルシロキシ基などのヒドロキシジオルガノシロキシ基(R12(HO)SiO1/2)等で封鎖されていることが好ましい。
【0015】
特に、(A)成分としてのオルガノポリシロキサンは、1分子中に2個以上、通常、2〜50個、特に2〜20個程度のアルケニル基、シクロアルケニル基等の脂肪族不飽和基を有するものが好ましく、特にビニル基を有するものであることが好ましい。この場合、全R1中0.01〜20モル%、特に0.02〜10モル%が脂肪族不飽和基であることが好ましい。なお、この脂肪族不飽和基は、分子鎖末端でケイ素原子に結合していても、分子鎖の途中(分子鎖非末端)のケイ素原子に結合していても、その両方であってもよいが、少なくとも分子鎖末端のケイ素原子に結合していることが好ましい。
【0016】
また、aは1.95〜2.05、好ましくは1.98〜2.02、より好ましくは1.99〜2.01の正数である。また、全R1中90モル%以上、好ましくは95モル%以上、更に好ましくは脂肪族不飽和基を除く全てのR1がアルキル基、特にはメチル基であることが望ましい。
【0017】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、分子鎖末端がトリメチルシロキシ基、ジメチルフェニルシロキシ基、ジメチルビニルシロキシ基、メチルジビニルシロキシ基、トリビニルシロキシ基等のトリオルガノシロキシ基(R13SiO1/2)又はジメチルヒドロキシシロキシ基等のヒドロキシジオルガノシロキシ基(R12(HO)SiO1/2)で封鎖され、主鎖が前記したジオルガノシロキサン単位(R12SiO2/2)の繰り返しからなる直鎖状のものを好ましく挙げることができる。特に好ましいものとしては、分子中の置換基(即ち、ケイ素原子に結合する非置換又は置換一価炭化水素基)の種類として、メチルビニルポリシロキサン、メチルフェニルビニルポリシロキサン、メチルトリフルオロプロピルビニルポリシロキサン等を挙げることができる。
【0018】
このようなオルガノポリシロキサンは、例えばオルガノハロゲノシランの1種又は2種以上を(共)加水分解縮合することにより、あるいは環状ポリシロキサン(シロキサンの3量体、4量体等)をアルカリ性又は酸性の触媒を用いて開環重合することによって得ることができる。これらは基本的に直鎖状のジオルガノポリシロキサンであるが、(A)成分としては、分子量(重合度)や分子構造の異なる2種又は3種以上の混合物であってもよい。
【0019】
なお、上記オルガノポリシロキサンの重合度は100以上(通常、100〜100,000)、好ましくは1,000〜100,000、より好ましくは2,000〜50,000、特に好ましくは3,000〜20,000であり、室温(25℃)において自己流動性のない、いわゆる生ゴム状(非液状)であることが好ましい。重合度が小さすぎるとコンパウンドとした際に、ロール粘着等の問題が生じ、ロール作業性が悪化する。なお、この重合度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析によるポリスチレン換算の重量平均重合度として測定することができる。
【0020】
−(B)成分−
(B)成分の補強性シリカは、機械的強度の優れたシリコーンゴム組成物を得るために添加されるものであり、この目的のためには比表面積(BET吸着法)が50m2/g以上であることが必要であり、好ましくは100〜450m2/g、より好ましくは100〜300m2/gである。比表面積が50m2/g未満だと、硬化物の機械的強度が低くなってしまう。
このような補強性シリカとしては、例えば煙霧質シリカ、沈降シリカ等が挙げられ、またこれらの表面をクロロシランやヘキサメチルジシラザン等で疎水化処理したものも好適に用いられる。このなかでも動的疲労特性に優れる煙霧質シリカが好ましい。(B)成分は1種又は2種以上を併用してもよい。
【0021】
(B)成分の補強性シリカの配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して5〜70質量部であり、10〜50質量部であることが好ましい。(B)成分の配合量が少なすぎる場合には補強効果が得られず、多すぎる場合には加工性が悪くなり、また機械的強度が低下してしまい、動的疲労耐久性も悪化してしまう。
【0022】
−(C)成分−
(C)成分は、下記一般式(II)で示される分子中にアルケニル基を有するオルガノジシラザンである。
23SiNHSiR23 (II)
(式中、R2は同一又は異種の一価炭化水素基を示し、R2の少なくとも一個はアルケニル基である。)
【0023】
上記式(2)中、R2としては、前記(A)成分におけるR1と同様のものが挙げられるが、特にメチル基、エチル基等の炭素数1〜6程度のアルキル基が好ましく、また分子中のアルケニル基の数は1〜6個、更に1〜4個、特に1又は2個であることが好ましく、また2個以上のアルケニル基を含有する場合には各アルケニル基はジシラザンを構成する異なるケイ素原子に結合したものであることが好ましい。
【0024】
(C)成分としては、1−ビニルペンタメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ジメチル−1,1,3,3−テトラビニルジシラザン等が例示されるが、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザンが好ましい。
【0025】
(C)成分のアルケニル基を有するオルガノジシラザンの配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1〜10質量部であり、0.5〜5質量部であることが好ましい。(C)成分の配合量が少なすぎる場合には、動的疲労耐久性向上の効果が得られず、多すぎる場合には、得られるゴムの硬度が高くなりすぎ、また経済的にも好ましくない。
【0026】
−(D)成分−
(D)成分は、脂肪酸エステル及び/又は脂肪族アルコールのエステルであり、このうち脂肪酸エステルとしては、酪酸、カプロン酸、コナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸等のC4〜C9の低級飽和脂肪酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸等のC10〜C20の高級飽和脂肪酸、ミリストレイン酸、オレイン酸、リノール酸等の不飽和脂肪酸、リシノール酸等のOH基を有する脂肪酸などの各種脂肪酸のエステル化合物、特に低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール等の炭素数1〜6程度の低級アルコール)とのエステル化合物や、ソルビタンエステル、グリセリンエステル等の多価アルコールとのエステル化合物が例示される。
【0027】
また、脂肪族アルコールのエステルとしては、カプリリルアルコール、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、アウテアリルアルコール等の飽和アルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレンアルコール等の不飽和アルコールなどの脂肪族アルコールのグルタル酸エステルや、スベリン酸エステルのような二塩基酸エステル、クエン酸エステルなどの三塩基酸エステルなどが例示される。
【0028】
これらの中でもリシノール酸のグリセリンエステル、脂肪族アルコールのクエン酸エステルが好ましい。
【0029】
(D)成分の配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.01〜5質量部であり、好ましくは0.05〜3質量部である。(D)成分の配合量が少なすぎる場合には、シリコーンゴムの金型剥離性が向上せず、多すぎる場合には、シリコーンゴムの変色や、圧縮永久歪等の特性悪化、可塑戻りの悪化等が起こり、経済的にも好ましくない。
【0030】
−(E)成分−
(E)成分の硬化剤としては、上記(A)成分を硬化させ得るものであれば特に限定されるものではないが、一般的にゴム硬化剤として公知の(i)付加反応(ヒドロシリル化反応)型硬化剤、即ちオルガノハイドロジェンポリシロキサン(架橋剤)とヒドロシリル化触媒との組み合わせ、又は(ii)有機過酸化物が好ましい。
【0031】
上記(i)付加反応(ヒドロシリル化反応)における架橋剤としてのオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合した水素原子(SiH基)を含有するもので、下記平均組成式(IV)で示される従来から公知のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが適用可能である。
【0032】
5bcSiO(4-b-c)/2 (IV)
(ここで、R5は炭素数1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基で、好ましくは脂肪族不飽和結合を有さないものである。具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基等の非置換の一価炭化水素基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノメチル基等の上記一価炭化水素基の水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子やシアノ基で置換された置換アルキル基等の置換の一価炭化水素基である。bは0.7〜2.1、cは0.01〜1.0、かつb+cは0.8〜3.0、好ましくはbは0.8〜2.0、cは0.10〜1.0、より好ましくは0.18〜1.0、更に好ましくは0.2〜1.0、かつb+cは1.0〜2.5を満足する正数で示される。)
【0033】
また、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網目状のいずれの構造であってもよい。この場合、1分子中のケイ素原子の数(又は重合度)は2〜300個、特に4〜200個程度の室温で液状のものが好適に用いられる。なお、ケイ素原子に結合する水素原子(SiH基)は分子鎖末端にあっても側鎖(分子鎖途中)にあっても、その両方にあってもよく、1分子中に少なくとも2個(通常2〜300個)、好ましくは3個以上(例えば3〜200個)、より好ましくは4〜150個程度含有するものが使用される。
【0034】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、環状メチルハイドロジェンポリシロキサン、環状メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、環状メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C65)SiO3/2単位とからなる共重合体等や上記各例示化合物において、メチル基の一部又は全部がエチル基、プロピル基等の他のアルキル基やフェニル基等のアリール基で置換されたもの等が挙げられる。また、このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、具体的に下記構造式の化合物を例示することができる。
【0035】
【化2】


(式中、kは2〜10の整数、s及びtは0〜10の整数である。)
【0036】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、25℃における粘度が0.5〜10,000mPa・s、特に1〜300mPa・sであることが好ましい。粘度は、回転粘度計により測定することができる。
【0037】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量部、更に好ましくは0.3〜10質量部である。
【0038】
また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基等の脂肪族不飽和基に対するオルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)のモル比が0.5〜10モル/モル、好ましくは0.8〜6モル/モル、より好ましくは1〜5モル/モルとなる量で配合することが望ましい。0.5モル/モル未満だと架橋が十分でなく、十分な機械的強度が得られない場合があり、また10モル/モルを超えると硬化後の物理特性が低下し、特に耐熱性と圧縮永久歪性が著しく劣化する場合がある。
【0039】
また、上記(i)付加反応(ヒドロシリル化反応)における架橋反応に用いられるヒドロシリル化触媒は、(A)成分中の脂肪族不飽和基(例えばアルケニル基等)と架橋剤としての上記オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子(SiH基)を付加反応させる触媒である。ヒドロシリル化触媒としては、白金族金属系触媒が挙げられ、白金族の金属単体とその化合物があり、これには従来、付加反応硬化型シリコーンゴム組成物の触媒として公知のものが使用できる。例えば、シリカ、アルミナ又はシリカゲルのような担体に吸着させた微粒子状白金金属、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸6水塩のアルコール溶液、パラジウム触媒、ロジウム触媒等が挙げられるが、白金又は白金化合物が好ましい。
【0040】
ヒドロシリル化触媒の添加量は、付加反応を促進できる、いわゆる触媒量であればよく、通常、(A)成分に対して白金系金属質量に換算して1ppm〜1質量%の範囲で使用されるが、10〜500ppmの範囲が好ましい。添加量が1ppm未満だと、付加反応が十分促進されず、硬化が不十分である場合があり、一方、1質量%を超えると、これより多く加えても、反応性に対する影響も少なく、不経済となる場合がある。
【0041】
また、上記の触媒のほかに硬化速度を調整する目的で、付加架橋制御剤を使用してもよい。具体的にはエチニルシクロヘキサノールやテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。
【0042】
一方、(ii)有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、p−メチルベンゾイルパーオキサイド、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−ビス(2,5−t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−t−ブチルパーオキシカーボネート等が挙げられる。
【0043】
有機過酸化物の添加量は(A)成分100質量部に対して0.1〜15質量部、特に0.2〜10質量部が好ましい。添加量が少なすぎると架橋反応が十分に進行せず、硬度低下やゴム強度不足、圧縮永久歪増大等の物性悪化を生じる場合があり、多すぎると経済的に好ましくないばかりでなく、硬化剤の分解物が多く発生して、圧縮永久歪増大等の物性悪化や得られたシートの変色を増大させる場合がある。
【0044】
本発明のシリコーンゴム組成物には、上記成分に加え任意成分として必要に応じて、更に(F)成分として、下記一般式(III)で表されるオルガノシラン又はオルガノシロキサンを含有してもよい。これを添加することにより、シリカ充填剤のゴム中への分散性を高め、加工性も改良することができる。
【0045】
【化3】


(式中、R3は同一又は異種のアルキル基もしくは水素原子、R4は同一又は異種の非置換もしくは置換一価炭化水素基、mは1〜50の正数である。)
【0046】
ここで、R3は同一又は異種のアルキル基もしくは水素原子であり、上記一般式(III)で表されるオルガノシラン又はオルガノシロキサンは、分子鎖両末端にアルコキシ基又は水酸基を有している。R3としては水素原子又はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が例示され、メチル基、エチル基、水素原子が好ましい。R4としては、通常炭素数1〜12、特に1〜8のものが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、β−フェニルプロピル基等のアラルキル基、又はこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基等で置換した例えばクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられ、メチル基、ビニル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基が好ましく、特にメチル基、ビニル基が好ましい。また(A)成分のオルガノポリシロキサンとの相溶性の点から(A)成分の一価炭化水素基と同一であることが好ましい。
【0047】
mは1〜50の正数であり、2〜30の範囲のものが好ましい。mが50を超えると、(C)成分の補強性シリカを処理する処理剤として効果が少なくなる場合がある。
【0048】
(F)成分は、必要に応じて添加してもよい任意の成分であるが、(F)成分を配合する場合には、(F)成分の配合量は、(A)成分と(B)成分の合計量100質量部当たり0.1〜50質量部、特に0.5〜30質量部が好ましい。0.1質量部未満だと、混練り困難となり、可塑戻りが大きくなる場合があり、50質量部を超えると、得られるシリコーンゴム組成物に粘着が発生する場合がある。
【0049】
本発明のシリコーンゴム組成物には、上記成分以外に、本発明の目的を損なわない範囲で、カーボンブラック等の導電性付与剤、酸化鉄やハロゲン化合物のような難燃性付与剤、軟化剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤等を添加することができる。
【0050】
更に、本発明のシリコーンゴム組成物は、上述した成分の所定量を2本ロール、ニーダー、バンバリーミキサー等で混練りすることによって得ることができる。
【0051】
本発明のシリコーンゴム組成物は、主にキーパッド用として用いられる。かかるキーパッドを形成するために、上記シリコーンゴム組成物を硬化する必要があるが、その硬化条件は特に限定されない。一般的には、80〜300℃、特に100〜250℃で5秒〜1時間、特に30秒〜30分程度加熱硬化させることによりキーパッドを得ることができる。また、100〜200℃で10分〜10時間程度ポストキュアーしてもよい。
【0052】
成型方法としては、特に限定されないが、プレス成型が好ましい。
【実施例】
【0053】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例中の部は質量部を示す。物性特性測定法、動的疲労特性の評価方法について下記に示す。
【0054】
物性特性測定法
シリコーンゴム組成物を165℃/10分の条件で硬化させ、JIS K6249に準じて、硬さ(デュロメーターA)、引張り強さを測定した。
【0055】
動的疲労性試験方法
動的疲労耐久性は以下の方法により測定した。
〔打鍵試験方法〕
シリコーンゴム組成物を、金型を用いてプレス成型し、図1に示される形状の成型キーを調製し、この成型キーを固定し、上方より1,200gの荷重をかけ、毎秒3回の速度で打鍵をした。
〔成型キーの荷重測定方法〕
荷重測定器(アイコーエンジニアリング(株)製MODEL−1305−DS)を用いてキーの荷重を測定した。キーを押し、変位をかけると、通常、図2で示すクリックパターンが得られる。クリックパターンのF1を、ピーク荷重として測定した。
〔成型キーの打鍵疲労耐久性の評価方法〕
上記打鍵試験方法によって、20万回打鍵前後のピーク荷重変化を、下記式で求めた。
ピーク荷重変化(%)
=[打鍵試験前F1値−打鍵試験後F1値]/打鍵試験前F1値×100
【0056】
[実施例1]
主鎖を構成するジオルガノシロキサン単位としてジメチルシロキサン単位99.850モル%とメチルビニルシロキサン単位0.125モル%、分子鎖末端基としてジメチルビニルシロキシ基0.025モル%を含有する平均重合度が約6,000である直鎖状オルガノポリシロキサン(生ゴム)60部、主鎖を構成するジオルガノシロキサン単位としてジメチルシロキサン単位99.475モル%とメチルビニルシロキサン単位0.50モル%、分子鎖末端基としてジメチルビニルシロキシ基0.025モル%を含有する平均重合度が約6,000である直鎖状オルガノポリシロキサン(生ゴム)40部、BET比表面積300m2/gのヒュームドシリカ(商品名アエロジル300、日本アエロジル(株)製)32部、分散剤として両末端シラノール基を有し、平均重合度15、25℃における粘度が30mPa・sであるジメチルポリシロキサン6部、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン3.0部をニーダーにて混練りし、170℃にて2時間加熱処理してコンパウンド1を調製した。炭素数13の脂肪族アルコールのクエン酸エステル(カオーワックス220、花王(株)製)を0.4部添加した。
上記コンパウンド100部に対し、架橋剤として2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン0.4部を添加し、均一に混合した後、165℃、70kgf/cm2の条件で10分間プレスキュアーを行い、試験用シートを作製した。その後、200℃で4時間のポストキュアーを行った。
【0057】
[実施例2]
1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザンの添加量を1.5部とした以外は、実施例1と同様な方法により製造した。
【0058】
[実施例3]
炭素数13の脂肪族アルコールのクエン酸エステル(カオーワックス220、花王(株)製)の代わりに、リシノール酸のグリセリンエステル(カオース85−、花王(株)製)とした以外は、実施例1と同様な方法により製造した。
【0059】
[比較例1]
1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザンの代わりにビニルトリメトキシシランを添加した以外は実施例1と同様に製造した。
【0060】
[比較例2]
1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザンの代わりにヘキサメチルジシラザンを添加した以外は実施例1と同様に製造した。
【0061】
[比較例3]
炭素数13の脂肪族アルコールのクエン酸エステル(カオーワックス220、花王(株)製)を添加しない以外は実施例1と同様に製造した。
【0062】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記平均組成式(I)
1aSiO(4-a)/2 (I)
(式中、R1は同一又は異種の非置換もしくは置換一価炭化水素基を示し、aは1.95〜2.05の正数である。)
で表される重合度が100以上のオルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)BET吸着法による比表面積が50m2/g以上の補強性シリカ
5〜70質量部、
(C)下記一般式(II)
23SiNHSiR23 (II)
(式中、R2は同一又は異種の一価炭化水素基を示し、R2の少なくとも一個はアルケニル基である。)
で示される分子中にアルケニル基を有するオルガノシラザン 0.1〜10質量部、
(D)脂肪酸エステル及び/又は脂肪族アルコールのエステル 0.01〜5質量部、
(E)硬化剤 有効量
を含有するシリコーンゴム組成物。
【請求項2】
(C)アルケニル基を有するオルガノシラザンが、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザンである請求項1記載のシリコーンゴム組成物。
【請求項3】
(E)硬化剤が、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとヒドロシリル化触媒との組み合わせ、又は有機過酸化物であることを特徴とする請求項1又は2記載のシリコーンゴム組成物。
【請求項4】
更に、(F)成分として、下記一般式(III)
【化1】

(式中、R3は同一又は異種のアルキル基もしくは水素原子、R4は同一又は異種の非置換もしくは置換一価炭化水素基、mは1〜50の正数である。)
で表されるオルガノシラン又はオルガノシロキサンを含む請求項1〜3のいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物。
【請求項5】
キーパッド用である請求項1〜4のいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物を硬化成型してなるキーパッド。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−105782(P2011−105782A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259043(P2009−259043)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】