説明

シリコーンゴム配合物用充填剤としての親水性シリカ

シリコーンゴム配合物(RTV−1、RTV−2、HTV、およびLSR)中での使用に適し、とりわけHTVシリコーンゴム配合物中での使用に適した、親水性沈降シリカが提供される。これは、BET表面積185〜260m2/g、CTAB表面積100〜160m2/g、BET/CTAB比1.2〜2.6、および導電率<250μS/cmを有する。また、当該沈降シリカを製造するための方法、およびシリコーンゴム配合物の増粘および補強のための当該沈降シリカの使用も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーンゴム配合物(RTV−1、RTV−2、HTV、およびLSR)中での使用に適し、とりわけHTVシリコーンゴム配合物中での使用に適した親水性沈降シリカ、その製造のための方法、ならびにシリコーンゴム配合物の増粘および補強のためのその使用に関する。
【0002】
シリコーンゴムは、弾性状態に転化させることができ、ベースポリマーとして、架橋反応を生じやすい基を有するポリジオルガノシロキサンを含有する材料である。そのようなものとして主に適しているのは、H原子、OH基、およびビニル基であり、これらは鎖末端に存在するが、鎖に組み込まれていてもよい。充填剤、例えば親水性沈降シリカなどは、補強剤としてこの系に混入され、その種類および量は、加硫物の機械的挙動および化学的挙動に実質的に影響を与える。シリコーンゴムは、無機顔料で着色されていてもよい。高温加硫型シリコーンゴムタイプと室温加硫型シリコーンゴムタイプは区別される(HTVおよびRTV)。高温加硫型シリコーンゴムタイプの場合、HTVシリコーンゴムと液状シリコーンゴム(LSR)とをさらに区別することができる。
【0003】
室温硬化型またはRTVシリコーンゴム材料の場合、一成分系と二成分系とを区別することができる。第1の群(RTV−1C)は、大気湿度の影響下、室温でゆっくり重合し、架橋はSi−O結合の形成を伴うSiOH基の縮合によって行なわれる。SiOH基は、末端OH基を有するポリマーといわゆる架橋剤R−SiX3(例えば、X=−O−CO−CH3、−NHR)とから中間体として形成される種のSiX基の加水分解によって形成される。二成分ゴム(RTV−2C)の場合、例えば、ケイ酸エステル(例えば、ケイ酸エチル)と有機スズ化合物との混合物を架橋剤として使用し、アルコール離脱による≡Si−ORおよび≡Si−OH(−=メチル基;R=有機基)からのSi−O−Si架橋の形成が、架橋反応として生じる。
【0004】
とりわけ、シリカは、RTV−1Cシリコーンゴムの増粘および補強に使用される。これらは、シリコーンシーリング化合物が加水分解感受性であるため、系に導入する湿分を可能な限り少量にしなければならない。そのことから、これまで事実上ヒュームドシリカのみがこの用途に使用されてきた。しかしながら、欧州特許第1860066号は、RTV−1C配合物の増粘に適した特殊な表面特性を有する新規の親水性沈降シリカを開示している。さらに、米国特許第5,395,605号、米国特許第2008/0019898号、および国際出願第2003/055801号は、シリコーンゴム配合物用の種々の沈降シリカを記載しているが、これらのシリカは、いずれの場合も低い吸水率により特徴付けられる。低い吸水率を有する沈降シリカは、極めて特殊かつ複雑な製造方法を必要とする。さらに、製造および輸送に相当な努力が要求される。
【0005】
一方、水架橋により、RTV−1Cシリコーンゴム配合物は、水のいかなる導入にも極めて敏感であり、したがって水の導入に関して充填剤に特別な要件が設けられるが、この問題は、HTVシリコーンゴム配合物の場合この程度までは生じない。このとき、とりわけ、充填剤の導入後の配合物の良好な加工性、およびシリコーンゴム製品の高い機械的許容荷重、とりわけ長期許容荷重を確保しなければならない。さらに、とりわけ透明シリコーンゴム配合物の場合、充填剤は、変色を可能な限り少なくし、高い透明度を可能にすべきである。
【0006】
RTV−2Cシリコーンゴムおよび液状シリコーンゴム配合物の場合も、シリコーンゴムの製造者は、充填剤、例えば親水性沈降シリカを特別に前処理または後処理するため、系への水の導入は重大ではない。したがって、例えば、シリカは、in situコンパウンド化時に撥水性になるため、シリカによって導入された湿分は流出するか、またはこの製造プロセス中に減少する。
【0007】
欧州特許第1557446号は、押出時に発泡しないHTVシリコーンゴム配合物を記載している。この場合も、沈降シリカの吸水率の低下が、解決法として提示されている。
【0008】
したがって、比較的高い含水量の場合でも使用可能であり、良好な加工特性を示す、シリコーンゴム配合物用、とりわけHTV配合物用の充填剤が依然として必要とされている。
【0009】
したがって、従来技術の沈降シリカの不利点のうち少なくともいくつかを有さないか、あるいはそれらの不利点をより低い程度で有する、新規の沈降シリカを提供することが、本発明の目的であった。さらに、本発明は、新規の沈降シリカの製造のための方法を提供することを目的としている。
【0010】
本発明の特定の目的は、シリコーンゴム配合物、とりわけHTV配合物に容易に混入して分散させることができ、それらに良好な機械的特性、とりわけ良好な長期許容荷重を与えられる沈降シリカを提供することであった。さらに、極めて高い透明度を好ましくは極めて少ない変色と一緒に有するHTV配合物(化合物および加硫物)の製造を可能にする沈降シリカを提供することは、本発明の特定の目的であった。
【0011】
明記していないさらなる目的は、以下の説明、実施例、および請求項の文脈全体から生じる。
【0012】
上述の目的は、以下の説明、実施例、および請求項においてより詳細に定義する沈降シリカによって、またそれらにおいてより詳細に定義する方法によって達成される。
【0013】
したがって、本発明は、
BET表面積185〜260m2/gと、
CTAB表面積100〜160m2/gと、
BET/CTAB比1.2〜2.6m2/gと、
導電率<250(μS)/cmと、
を有することを特徴とする、親水性沈降シリカに関する。
【0014】
本発明は、さらに、本発明による沈降シリカを製造するための方法であって、
a)Y値10〜30を有する初期導入混合物を製造する工程と、
b)この初期導入混合物に、アルカリ金属ケイ酸塩および/またはアルカリ土類金属ケイ酸塩と酸性化剤とを、撹拌しながら80〜95℃で60〜90分にわたり同時計量供給する工程と、
c)この沈降懸濁液を再酸性化する工程と、
d)この懸濁液を5〜50分間熟成させる工程と、
e)濾過、洗浄、および乾燥する工程と、
を含むことを特徴とし、
工程a)および/またはb)において使用するアルカリ金属ケイ酸塩および/またはアルカリ土類金属ケイ酸塩が、4〜7質量%の範囲のアルカリ金属酸化物もしくはアルカリ土類金属酸化物含有量および12〜28質量%の範囲の二酸化ケイ素含有量を有すること、
工程b)および/またはc)において使用する酸性化剤が、相応して可能な濃度の濃鉱酸および炭酸(またはCO2ガス)および亜硫酸水素ナトリウム(またはSO2ガス)からなる群から選択される酸性化剤であること、ならびに
沈降懸濁液のY値が、沈降中に10〜30の値で一定に維持される(ここで一定に維持するとは、酸性化剤、およびアルカリ金属ケイ酸塩またはアルカリ土類金属ケイ酸塩の同時添加の過程において、Y値が出発Y値、すなわち酸性化剤とアルカリ金属ケイ酸塩またはアルカリ土類金属ケイ酸塩との同時添加の開始直前の値から3%以下しか変化しないことを意味する)ことを特徴とする方法に関する。
【0015】
また、本発明は、本発明による沈降シリカを含有するシリコーンゴム配合物、とりわけHTVシリコーンゴム配合物、およびシリコーンゴム配合物用の補強充填剤としての本発明による沈降シリカの使用にも関する。
【0016】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明による沈降シリカが、シリコーンゴム配合物に極めて容易に混入することができること、すなわち短い混入時間を有することを発見した。したがって、本発明による沈降シリカを用いて、良好な分散性および高荷重を達成する、すなわちシリコーンゴム配合物に多量の補強充填剤を混入することが可能である。
【0017】
さらに、本発明による沈降シリカは、シリコーンゴム配合物に良好な機械的特性を与える。とりわけ高荷重の場合には、本発明による沈降シリカは、シリコーンゴム配合物の良好な長期許容性をもたらす。
【0018】
本発明による沈降シリカのさらなる利点は、本発明による沈降シリカを含むシリコーンゴム配合物、すなわちまだ硬化していない混合物および硬化した加硫物が、高い透明度(半透明)を有することである。したがって、本発明による沈降シリカを、とりわけ透明度の高い配合物に混入することができる。特に、とりわけ好適な実施形態においては、本発明による沈降シリカは、このとき極めて少ない変色をもたらす。
【0019】
本発明の主題を下記において詳細に説明する。
【0020】
本発明による沈降シリカは、高いBET表面積185〜260m2/gを有する。本発明の好適な実施形態において、BET表面積は、好ましくは185〜210m2/g、とりわけ好ましくは190〜205m2/gの範囲である。別の好適な実施形態において、BET表面積は、210〜260m2/g、好ましくは211〜260m2/g、とりわけ好ましくは215〜250m2/g、極めて好ましくは220〜250m2/gの範囲である。BET表面積は、沈降シリカの潜在的補強性に影響を与える。BET表面積が広いほど、補強性が高くなる。しかしながら、広いBET表面積は、沈降シリカのシリコーンゴム配合物への混入の可能性を低下させることにもつながる。今回、本発明者らは、沈降シリカが、広いBET表面積に加え、極めて狭いCTAB表面積と高いBET/CTAB表面積比とを有する場合には、この不利点が生じない、すなわち極めて良好な混入特性を達成することができることを発見した。
【0021】
本発明による沈降シリカは、したがって、CTAB表面積100〜160m2/g、好ましくは110〜150m2/g、とりわけ好ましくは120〜150m2/g、極めて好ましくは126〜145m2/g、およびBET/CTAB比1.2〜2.6、好ましくは1.25〜2.3、とりわけ好ましくは1.3〜2、極めて好ましくは1.4〜1.9であることによって区別される。BET/CTAB比は、独立したパラメータ、すなわち本発明による沈降シリカの独立した特徴である。BETおよびCTABについて一般的に提示した範囲から算出することができる、すなわちそれらの範囲から理論的に算出することができる比率の部分集合から、これらの初期パラメータを有するものは、BET/CTAB比により本発明によって区別される。言い換えると、160m2/gのCTABを有する本発明による沈降シリカは、少なくとも200m2/gのBETを有さなければならない。CTAB表面積は、ゴムが接触できる表面を表わす。特定の理論に縛られるものではないが、本発明者らは、BET/CTAB比が、沈降シリカの屈折率にも影響を与え、この屈折率は界面領域における特性を反映し、そしてこれが使用するシリカの異なる方法で測定された表面積に依存し、そのため本発明による沈降シリカの良好な透明度に寄与していると考える。
【0022】
本発明による沈降シリカのさらなる重要な特徴は、中央粒径d50である。したがって、小さすぎる粒子は、シリコーンゴム配合物に浮かんで沈まないため、シリコーンゴム配合物に混入するのが困難であることが判明した。その結果として、混入時間が長くなる。一方、大きすぎる粒子は、シリカをシリコーンゴム混合物に分散させる際に問題を有しうる。本発明による沈降シリカは、しがたって、好ましくは中央粒径d50が5〜95μmである。
【0023】
本発明の第1の特定の変形形態において、レーザー回折法で測定した中央粒径d50は、5〜25μm、好ましくは8〜24μm、とりわけ好ましくは10〜20μm、極めて好ましくは12〜18μmの範囲である。とりわけ好ましくは、d5値で示される極微細粒子の部分は、この変形形態において4〜10μm、とりわけ4.3〜6μmである。上記ですでに指摘したように、小さすぎる粒子は、シリコーンゴム配合物への混入の際の不利点をもたらす。d5値は、適切な粉砕により、それに応じて高く維持することができる。
【0024】
本発明の第2の好適な変形形態において、中央粒径は、25〜95μm、好ましくは30〜90μm、とりわけ好ましくは30〜80μm、特に好ましくは40〜75μmである。第1の変形形態と比較して、この変形形態は、乾燥した沈降シリカの粉砕が必要ではないという利点を有する。しかしながら、同時に、比較的大きい粒径は、分散性の低下を伴いうる。当業者は、それぞれのシリコーンゴム配合物に、変形形態1の沈降シリカを使用しているか、変形形態2の沈降シリカを使用しているかを、簡単なマニュアル実験によって判断することができる。
【0025】
本発明による沈降シリカのさらなる重要な特徴は、その低い導電率、すなわち例えば硫酸塩、塩化物、および硝酸塩などの塩の低い含有量である。これは良好な混入特性を助長し、とりわけ、化合物および加硫物の脱色、ならびにシリコーンゴム配合物製造後の粘度の望ましくない増加が防止される。本発明による沈降シリカは、導電率が、250(μS)/cm未満、好ましくは200(μS)/cm未満、特に好ましくは1〜200(μS)/cm未満、極めて好ましくは5〜150(μS)/cm、特に好ましくは5〜100(μS)/cm、殊に好ましくは10〜50(μS)/cmである。
【0026】
本発明による沈降シリカの好ましい特性は、それらが低い充填密度を有する場合にさらに向上しうる。特定の理論に縛られるものではないが、本発明者らは、充填密度がとりわけ良好な分散性をもたらすと考えている。
【0027】
レーザー回折法で測定した中央粒径d50が、5〜25μm、好ましくは8〜24μm、とりわけ好ましくは10〜20μm、極めて好ましくは12〜18μmの範囲であり、好ましくは同時にd5値で示される極微細粒子の部分が、4〜10μm、とりわけ4.3〜6μmである本発明の好適な実施形態において、本発明による沈降シリカの充填密度は、好ましくは50〜150g/l、とりわけ好ましくは80〜150g/l、極めて好ましくは90〜140g/l、特に好ましくは100〜130g/lである。
【0028】
レーザー回折法で測定した中央粒径d50が、25〜95μm、好ましくは30〜90μm、とりわけ好ましくは30〜80μm、特に好ましくは40〜75μmの範囲である、本発明の第2の好適な実施形態において、本発明による沈降シリカの充填密度は、好ましくは150〜350g/l、とりわけ好ましくは180〜330g/l、極めて好ましくは200〜300g/l、特に好ましくは210〜290g/lである。
【0029】
好ましくは、本発明による沈降シリカは、含水量が7質量%未満である。本発明の特定の変形形態において、本発明による沈降シリカは、含水量が、5〜7質量%、とりわけ好ましくは5.5〜7質量%である。実際に、本発明による沈降シリカは、5〜7質量%の比較的高い含水量にもかかわらず、押出可能なHTVシリコーンゴム配合物に容易に混入することができることが判明した。低含水量および低吸水率を有する沈降シリカを製造するために、従来技術において相当な努力がなされていることから、これは驚くべきことである。特別なパラメータの組み合わせによって、本発明による沈降シリカは、高含水量の場合であっても、エラストマー混合物用の補強充填剤として容易に使用することができる。このことは、沈降シリカの製造、輸送、および保存において、大幅なコスト削減をもたらす。
【0030】
本発明による沈降シリカは、好ましくは、DBP吸収量が、240〜300g/100g、とりわけ好ましくは250〜300g/100g、極めて好ましくは260〜290g/100gである。このDBP吸収量を有する沈降シリカは、とりわけ良好な分散性を有する。
【0031】
本発明による沈降シリカのpHは、好ましくは5〜8、とりわけ好ましくは6〜7の範囲である。
【0032】
本発明による沈降シリカは、
a)Y値10〜30を有する初期導入混合物を製造する工程と、
b)この初期導入混合物に、アルカリ金属ケイ酸塩および/またはアルカリ土類金属ケイ酸塩と酸性化剤とを、撹拌しながら80〜95℃で60〜90分にわたり同時計量供給する工程と、
c)この沈降懸濁液を再酸性化する工程と、
d)この懸濁液を5〜50分間熟成させる工程と、
e)濾過、洗浄、および乾燥する工程と、
を含み、
工程a)および/またはb)において使用するアルカリ金属ケイ酸塩および/またはアルカリ土類金属ケイ酸塩が、4〜7質量%の範囲のアルカリ金属酸化物もしくはアルカリ土類金属酸化物含有量および12〜28質量%の範囲の二酸化ケイ素含有量を有すること、
工程b)および/またはc)において使用する酸性化剤が、相応して可能な濃度の濃鉱酸および炭酸(またはCO2ガス)および亜硫酸水素ナトリウム(またはSO2ガス)からなる群から選択される酸性化剤であること、ならびに
沈降懸濁液のY値が、沈降中に10〜30の値で一定に維持される(この際一定に維持するとは、酸性化剤とアルカリ金属ケイ酸塩またはアルカリ土類金属ケイ酸塩との同時添加の過程において、Y値が出発Y値、すなわち酸性化剤とアルカリ金属ケイ酸塩またはアルカリ土類金属ケイ酸塩との同時添加の開始直前の値から3%以下しか変化しないことを意味する)ことを特徴とする方法によって製造することができる。
【0033】
沈降シリカおよびシリカという用語は、本発明に関して同義的に使用される。さらに、ケイ酸塩溶液とアルカリ金属ケイ酸塩溶液および/またはアルカリ土類金属ケイ酸塩溶液とも同義的に使用される。本発明によって使用するケイ酸塩溶液中のアルカリ金属酸化物またはアルカリ土類金属酸化物の含有量は、4〜7質量%の範囲、好ましくは5〜6.5質量%の範囲、とりわけ好ましくは5.5〜6.5質量%の範囲である。具体的には、本発明による方法において使用するケイ酸塩溶液は、ケイ酸ナトリウム溶液(水ガラス)またはケイ酸カリウム溶液である。本発明のとりわけ好適な実施形態では、高純度ケイ酸塩溶液が使用される。高純度のケイ酸塩溶液は、Fe2-含有量が、200mg/kg以下、好ましくは180mg/kg以下、とりわけ好ましくは150mg/kg以下であり、Al23含有量が、0.55質量%以下、好ましくは0.45質量%以下、とりわけ好ましくは0.25質量%以下であることを特徴とする。
【0034】
本発明によって使用するケイ酸塩溶液中の二酸化ケイ素含有量は、12〜23質量%、好ましくは13〜23質量%、とりわけ好ましくは14〜18質量%である。係数、すなわち本発明によって使用するケイ酸塩溶液中の二酸化ケイ素のアルカリ金属酸化物またはアルカリ土類金属酸化物に対する質量比は、好ましくは2.0〜5.75、とりわけ好ましくは2.5〜4.5、極めて好ましくは3〜4、特に好ましくは3.2〜3.7である。
【0035】
本発明による方法において、好ましくは酸性化剤として、濃鉱酸、例えば塩酸、硫酸、硝酸、またはリン酸、あるいはCO2を使用する。濃鉱酸とは、塩酸の場合、濃度36〜47.2質量%、好ましくは40〜47質量%、硫酸の場合、濃度90〜98.5質量%、好ましくは93〜98.5質量%、極めて好ましくは96〜98質量%、硝酸の場合は、濃度60〜68質量%、リン酸の場合、濃度80〜100質量%、好ましくは80〜90質量%、とりわけ好ましくは80〜85質量%を意味する。
【0036】
さらに、本発明による方法の少なくとも1つの工程において、好ましくは洗浄プロセスにおいて、水として脱塩水、好ましくは蒸留または逆浸透により精製した水を使用すると有利であることが証明された。
【0037】
工程a)における初期導入混合物は、塩基が添加される水、または塩基の水性溶液からなり、これは好ましくは、少なくとも1つのアルカリ金属ケイ酸塩および/またはアルカリ土類金属ケイ酸塩を含む。初期導入混合物が、沈降の開始前、すなわち酸性化剤とケイ酸塩溶液との同時添加の前に、温度40〜90℃に加熱すると有利であることが証明された。ケイ酸塩溶液または塩基を添加することによって、初期導入混合物のY値を沈降中に維持すべき値に調整する。初期導入混合物のY値の調整は、好ましくは、沈降にも用いるケイ酸塩溶液によってもたらされる。
【0038】
本発明者らは、酸性化剤とアルカリ金属ケイ酸塩またはアルカリ土類金属ケイ酸塩との同時添加の過程において、Y値が一定に維持されること、つまり出発Y値、すなわち酸性化剤とアルカリ金属ケイ酸塩またはアルカリ土類金属ケイ酸塩との同時添加の開始直前の値から3%以下しか変化しないことが、本発明による方法にとって不可欠であることをさらに見出した。Y値は、反応溶液中のアルカリ金属イオン濃度を示す。したがって、Y値は、沈降中の化学反応、とりわけイオンのシリカ骨格への組込みを反映する。シリカの基本構造に関する推論をここから引き出すことができ、したがって、関連する生産の質および再現性について、最終生成物の物理化学的分析を行なう前に述べることができる。本発明による方法において、Y値は、沈降中に、10〜30、好ましくは15〜25、極めて好ましくは18〜22の範囲で一定に維持される。
【0039】
沈降は、温度80〜95℃、好ましくは85〜90℃で実施する。純粋な沈降時間、すなわち中断時間を考慮に入れないケイ酸塩溶液と酸性化剤との同時添加の持続時間は、60〜90分、好ましくは65〜85分、極めて好ましくは70〜80分である。酸性化剤およびケイ酸塩溶液の流速は、所望の沈降時間だけでなく、同時に沈降懸濁液の所望のY値変量も維持することができるように選定する。
【0040】
本発明による方法の工程のうちの1つにおいて、好ましくは沈降工程または流動化工程中に、例えば内部もしくは外部せん断装置により、沈降シリカ粒子に対して高いせん断力が作用すると、本発明の方法にとってとりわけ有利となりうる。
【0041】
工程c)において、沈降懸濁液の再酸性化は、好ましくはpH1〜7、とりわけ好ましくは2〜5、極めて好ましくは3〜4をもたらす。この工程の結果として、沈降反応が停止し、沈降懸濁液中の残留水ガラスが、酸性化剤と反応する。
【0042】
工程c)において沈降反応を止めたあと、工程d)において、沈降懸濁液の熟成を5〜50分間、好ましくは10〜40分間、とりわけ好ましくは10〜30分間、極めて好ましくは15〜25分間行なう。この熟成工程は、とりわけBET表面積およびCTAB表面積の確立に影響を与える。
【0043】
本発明による沈降シリカの場合、工程c)のあと、例えば懸濁液槽内で、懸濁液を48時間保存したとしても害を及ぼさない。このことは、より柔軟性の高い生産を可能にする。
【0044】
本発明による方法によって製造された沈降シリカ懸濁液は、工程e)において濾過し、濾過ケーキを水で洗浄する。複数の洗浄工程を実施してもよい。すでに言及したように、少なくとも1つの洗浄工程において脱塩水を使用すると、とりわけ有利である。したがって、洗浄は、好ましくは、最初は普通の水で行ない、あとの段階または最期の段階でのみ脱塩水で行なってもよい。これにより、製造コストが低減される。
【0045】
本発明によるシリカの濾過、流動化(例えば、DE 2447613に準拠)、および長期乾燥または短期乾燥は、当業者にはよく知られており、例えばこの説明中で言及する文書に記載されている。シリカの濾過および洗浄は、好ましくは、最終生成物の導電率が、250(μS)/cm未満、好ましくは200(μS)/cm未満、とりわけ好ましくは1〜200(μS)/cm、極めて好ましくは5〜150(μS)/cm、特に好ましくは5〜100(μS)/cm、殊に好ましくは10〜50(μS)/cmとなるように行なう。
【0046】
好ましくは、本発明によるシリカは、空気乾燥機、噴霧乾燥機、棚式乾燥機、ベルト式乾燥機、Buettner乾燥機、ロータリーチューブ乾燥機、フラッシュ乾燥機、スピンフラッシュ乾燥機、またはノズルタワー乾燥機で乾燥させる。これらの乾燥の変形形態には、アトマイザー、一液もしくは二液ノズル、または一体型流動床を用いた作業が含まれる。とりわけアトマイザーを用いた噴霧乾燥は、とりわけ好適である。これは例えば米国特許第4094771号に従って実施することができる。とりわけ好ましくは、噴霧乾燥は、固形分15〜20質量%、およびpH4〜7、好ましくは5〜6を有するフィードを用いて実施する。噴霧乾燥した粒子は、レーザー回折法で測定した中位径が、15μm超、好ましくは25〜95μm、とりわけ好ましくは30〜80μm、極めて好ましくは30〜75μm、特に好ましくは40〜75μmでありうる。米国特許第4094771号および欧州特許第0 937755号の開示内容は、参考として本申請で援用される。
【0047】
本発明による方法の好適な変形形態では、乾燥した沈降シリカを粉砕する。本発明による沈降シリカの粉砕のための技法は、当業者には既知であり、例えば、Ullmann, 5th edition,B2,5−20に記載されている。本発明によるシリカの粉砕には、インパクトミル、または対向ジェットミル、または機械的ミルが好ましく用いられる。粉砕パラメータは、好ましくは、レーザー回折法で測定した本発明による沈降シリカの中央粒径d50が、5〜25μm、好ましくは8〜25μm、とりわけ好ましくは10〜20μm、極めて好ましくは12〜18μmの範囲となり、および/またはd5値が4〜10μm、とりわけ4.3〜6μmの範囲となるように選定される。
【0048】
本発明による沈降シリカは、好ましくは、RTV−1C系、RTV−2C系、およびLSR系のシリコーンゴム配合物、とりわけHTVシリコーンゴム配合物中の充填剤として使用される。
【0049】
使用可能なオルガノポリシロキサンは、室温で加硫可能もしくは加硫性の物質(RTV)、ごくわずかに上昇させた温度で加硫可能もしくは加硫性である物質(LTV)、または高温で加硫可能もしくは加硫性の物質(HTV)の場合に、オルガノポリシロキサンエラストマーの主成分として、今までに使用されてきた、あるいは今までに使用が可能であった全てのポリシロキサンである。これらは例えば、一般式
【化1】

で表わすことができ、式中、基ZおよびRは、同一でも異なってもよく、あるいは基RおよびZは、しかしながら、それら自体が同一であっても異なってもよく、このときこれらの基は、以下のように定義される:
R=1〜50個の炭素原子を有し、未置換またはO、S、F、Cl、Br、Iで置換されていており、それぞれ同一でも異なってもよい、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヒドロキシ基、ヒドリド基、またはアルケニル基、および/または50〜10,000個の繰り返し単位を有する、ポリスチレン基、ポリ酢酸ビニル基、ポリアクリレート基、ポリメタクリレート基、およびポリアクリロニトリル基であり、
Z=H基、OH基、Cl基、Br基、アミノ基、アミノキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、またはリン酸塩基であり、これらの有機基は、最大20個の炭素原子を担持していてもよく、前記有機基は、それぞれ同一でも異なってもよく、
n=1〜3であり、
X=100〜15,000、好ましくは100〜11,000、とりわけ好ましくは100〜8000である。
【0050】
RTV−1Cシリコーンゴム配合物に特に適したポリシロキサンは、例えば、以下の構造式
【化2】

を有してもよく、式中、
R=1〜50個の炭素原子を有し、未置換またはO、S、F、Cl、Br、Iで置換されていており、それぞれ同一でも異なってもよい、アルキル基、アセトキシ基、オキシム基、アルコキシ基、アミド基、アリール基、またはアルケニル基、および/または50〜10,000個の繰り返し単位を有する、ポリスチレン基、ポリ酢酸ビニル基、ポリアクリレート基、ポリメタクリレート基、およびポリアクリロニトリル基であり、
Z=OH基、Cl基、Br基、アセトキシ基、アミノ基、アミド基、アミノキシ基、オキシム基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アクリロイルオキシ基、またはリン酸塩基であり、これらの有機基は、最大20個の炭素原子を担持していてもよく、前記有機基は、それぞれ同一でも異なってもよく、
Z’=オキシム基、アルコキシ基、アミド基、またはアセトキシ基であり、
n=1〜3であり、
X=100〜15,000、好ましくは100〜11,000、とりわけ好ましくは100〜8000である。
【0051】
上述の式において、シロキサン鎖内またはシロキサン鎖に沿って、一般に不純物として含まれるだけの別のシロキサン単位が、例えば式RSiO3/2、R31/2、およびSiO4/2(式中、Rは、それぞれ上記にそれについて提示した意味を有する)のものなどのジオルガノシロキサン単位として含まれていてもよい。これらのその他のシロキサン単位の量は、10mol%を超えるべきではない。
【0052】
アルキル基を意味するRの例は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、およびオクチル基であり、ビニル基、アリル基、エチルアリル基、およびブタジエニル基は、アルケニル基として使用することができ、フェニル基およびトリル基は、アリール基として使用することができる。
【0053】
置換炭化水素基Rの例は、とりわけハロゲン化炭化水素基、例えば3,3,3−トリフルオロプロピル基、クロロフェニル基、およびブロモトリル基;ならびにシアノアルキル基、例えばシアノエチル基である。
【0054】
基Rとしてのポリマーの例は、炭素を介してシリコーンに結合したポリスチレン基、ポリ酢酸ビニル基、ポリアクリレート基、ポリメタクリレート基、およびポリアクリロニトリ基である。
【0055】
より容易な接触性により、基Rの大部分は、好ましくはメチル基からなる。残りの基Rは、とりわけビニル基および/またはフェニル基である。
【0056】
とりわけ、水の不在下で保存可能であり、室温で水が進入したときに硬化してエラストマーを形成する配合物が存在する場合には、Zは加水分解可能な基である。そのような基の例は、アミノ基、アミノキシ基、アルケニルオキシ基(例えば、H2C=(CH3CO−))、アシルオキシ基、およびリン酸基である。特に、容易な接触性により、アシルオキシ基、とりわけアセトキシ基が、Zとして好適である。加水分解可能な原子Zの例は、ハロゲンおよび水素原子である。アルケニル基Zの例は、とりわけビニル基である。
【0057】
好ましくは、本発明で使用するオルガノポリシロキサンの粘度は、25℃において500,000cPを上回らず、とりわけ好ましくは25℃において150,000cPである。したがって、値xは、好ましくは40,000を上回らない。また、異なるオルガノポリシロキサンの混合物を使用することもできる。
【0058】
これらのオルガノポリシロキサンの本発明によるシリカと、また場合により本発明による配合物のさらなる構成成分との混合は、任意の既知の方法で、例えば機械的混合装置で実施することができる。この混合、混合物の構成成分の添加を実施する順序にかかわらず、極めて迅速かつ容易に行なわれる。
【0059】
好ましくは、本発明によって使用するシリカは、硬化してエラストマーを形成する材料の総質量に対して、0.5〜60%質量%、好ましくは5〜60質量%、とりわけ好ましくは10〜40質量%、極めて好ましくは20〜30質量%の量で使用する。HTVオルガノポリシロキサンエラストマーの場合、最大60質量%を同様に使用することができる。
【0060】
上述のオルガノポリシロキサンの比率は、硬化してエラストマーを形成する材料の総質量に対して、好ましくは30〜99.5質量%である。
【0061】
そのようなSi結合ヒドロキシル基が、末端単位を含有する反応性ジオルガノポリシロキサン中唯一の反応性末端単位として存在する場合、これらのジオルガノポリシロキサンは、場合により縮合触媒の存在下で、既知の方法で架橋剤と反応させて、それ自体公知の方法でそれらを硬化させるか、あるいはそれらを空気中に存在する水によって(場合によりさらなる水を添加して)硬化する化合物に変換して、エラストマーにしなければならない。HTVジオルガノポリシロキサンエラストマーの場合、有機過酸化物、例えば2,5−ジメチル−2,5−(ジ−tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、ビス−2,4−ジクロロベンゾイル過酸化物、ベンゾイル過酸化物、tert−ブチルペルベンゾエート、またはtert−ブチルペルアセテートを0.5〜5.0質量%の量で、相応して有利な温度で使用することができる。
【0062】
好ましく使用される高温加硫型オルガノシロキサンは、有機置換基が、メチル基、エチル基、フェニル基、トリフルオロメチルフェニル基[F3CC64]、またはトリメチルシルメチレン基[(CH33SiCH2−]からなるもの、例えばジメチルシロキサン、ジエチルシロキサン、フェニルメチルシロキサン、フェニルエチルシロキサン、エチルメチルシロキサン、トリメチルシルメチレンメチルシロキサン、トリメチルシルメチレンエチルシロキサン、トリフルオロメチルフェニルメチルシロキサン、もしくはトリフルオロメチルフェニルエチルシロキサン、またはそのような化合物のコポリマーである。さらに、ポリマーは、好ましくは、限定された量のジフェニルシロキサン単位、ビストリメチルシルメチレンシロキサン単位、またはビストリフルオロメチルフェニルシロキサン単位、ならびに式RSiO1.5およびR3SiO0.5(式中、Rは、上記の基のうちの1つを表わす)の単位を有するシロキサンを含有してもよい。
【0063】
本発明による配合物は、シランの添加により架橋することができる。シリコーンゴム配合物は、したがって、0.01〜20質量%、好ましくは0.5〜5質量%の一般式
【化3】

[式中、
R’=1〜50個の炭素原子を有し、未置換またはO、S、F、Cl、Br、Iで置換されており、それぞれ同一でも異なってもよいアルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアルケニル基、および/または5〜5,000個の繰り返し単位を有する、ポリスチレン基、ポリ酢酸ビニル基、ポリアクリレート基、ポリメタクリレート基、およびポリアクリロニトリル基であり、
Z’=H基、OH基、Cl基、Br基、アミノ基、アミノキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、またはリン酸塩基であり、これらの有機基は、最大20個の炭素原子を担持していてもよく、またそれぞれ同一でも異なってもよく、
t=3または4である]を有する架橋剤を付加的に含有していてもよい。
【0064】
上記の式のシランの例は、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、イソプロピルトリアセトキシシラン、イソプロポキシトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリスジエチルアミノオキシシラン、メチルトリス(シクロヘキシルアミノ)シラン、メチルトリス(ジエチルホスファト)シラン、およびメチルトリス(メチルエチルケトキシモ)シランである。
【0065】
本発明のシリコーンゴム配合物は、オルガノポリシロキサンと架橋剤とに加え、0.5〜99.5質量%、好ましくは2.0〜30.0質量%の官能化されていないポリシロキサンを付加的に含有することがさらに可能である。
【0066】
このとき使用するポリシロキサンは、粘度が最大500,000cP(500Pa・s)であってよい。例えば、とりわけ、Momentive Performance Materials社から入手可能なBaysilone MS 10(粘度10〜20mPa・S)またはディストリビュータオイル Si 200(粘度約28mPa・s)は、本発明によるHTVシリコーンゴムに適している。RTV−2Cシリコーンゴムの場合は、例えば、同製造業者のオイルM 100(粘度約100mPa・s)を使用することができる。
【0067】
オルガノポリシロキサン、本発明によるシリカ、架橋剤、および架橋触媒に加え、本発明による配合物は、当然ながら、場合により、硬化してエラストマーを形成する材料に一般的または頻繁に使用されている充填剤を従来のように含有していてもよい。そのような物質の例は、50m2/g未満の表面積を有する充填剤、例えば石英粉末、カオリン、フィロシリケート、タウ鉱物、珪藻土、さらにケイ酸ジルコニウムおよび炭酸カルシウム、さらに未処理の焼成によって生成した二酸化ケイ素、有機樹脂、例えばポリ塩化ビニル粉末、オルガノポリシロキサン樹脂、繊維状充填剤、例えばアスベスト、ガラス繊維、および有機顔料、可溶性染料、香料、腐食防止剤、水の影響に対して物質を安定化させる組成物、例えば無水酢酸、硬化を遅延させる組成物、例えばベンゾトリアゾール、および可塑剤、例えばトリメチルシロキシ基で末端封鎖されたジメチルポリシロキサンである。配合物構成成分および添加剤のさらなる例は、帯電防止特性または比導電率を確立するためのカーボンブラック、UV安定剤、変色防止組成物、例えば、TSF−484(Momentive Performance Materials社)またはKF 99(Shin−Etsu Silicones社)などの製品である。
【0068】
さらに、シリコーンゴム配合物は、触媒としての金属Pt、Sn、Ti、および/またはZnの有機もしくは無機化合物0.01〜6質量%、および/または阻害剤0.01〜6質量%、および/または防かび剤もしくは殺菌剤0.01〜6質量%、および/または接着促進剤0.01〜6質量%を付加的に含有していてもよい。
【0069】
RTV−1Cシリコーンゴム配合物は、場合により、0.1〜20質量%、好ましくは0.1〜15質量%、とりわけ好ましくは0.1〜10質量%(配合物の総量に対して)の水結合物質を含有していてもよい。この目的で適切な物質は、例えば、カルボン酸無水物、例えば、無水酢酸または無水マレイン酸、および/または炭酸エステル、例えば、炭酸ジエチル、炭酸エチレンなど、および/またはアルケニルオキシ化合物、および/またはケタール、例えばジメチルジオキソランである。これらの物質のうち1つ以上を使用することができる。
【0070】
上述の量の範囲は、添加剤としてみなされない。当業者は、全体で100質量%に到達するように、上述の量範囲内の成分を選択しなければならないことを理解している。
【0071】
さらなるシリコーンゴム配合物または上述のシリコーンゴム配合物の修正形態は、当業者に周知である。これらの例は、例えば、欧州特許第1557446(A1)号に記載されている。また、本発明による沈降シリカをこれらの配合物中に使用することもできる。
【0072】
本発明に関して、とりわけ好適なHTVシリコーンゴム配合物は、以下の配合物構成成分を意味するものと理解されるべきである:
第1の配合物構成成分:
100部のHTVシリコーンポリマー、ビニル官能性ポリシロキサン(ビニル含有量約0.15%)であり、分子量600,000g/molを有し、以下の構造式により定義可能である。
R=メチル基、フェニル基
1=ビニル基
【化4】

製品名:Dongjue 110−2、製造業者:Nanjing Dongjue(中国)。
【0073】
第2の配合物構成成分:
40部の本発明による沈降シリカ。
【0074】
第3の配合物構成成分:
3.2部の加工助剤、OH濃度約8%を有する短鎖OH官能性シリコーンオイル(α,ω−ジヒドロキシシロキサン)であり、以下の構造式により定義可能である。
【化5】

製造業者:Shanghai HuaRun Chemical Co., Ltd.(中国)。
【0075】
第4の配合物構成成分:
1%の架橋剤、有機過酸化物、(2,5−ジメチル−2,5−ジ−tert−ブチルペルオキシ)ヘキサンであり、以下の構造式により定義可能である。
【化6】

製品名:DHBP−C8BS(過酸化物濃度45%のDHBPペースト)
製造業者:Qiangsheng Chemical Co., Ltd.(中国)。
【0076】
本発明による沈降シリカの物理化学的パラメータおよびプロセスパラメータを以下に定義する。
【0077】
Y値の測定
Y値は、標準溶液としての硫酸、および指示薬としてのフェノールフタレインを用いて測定する。
【0078】
試薬
−フェノールフタレインのエタノール溶液、濃度10g/l
−硫酸溶液、濃度1mol/l。
【0079】
手順
100mlの研究のための試料、例えば沈降懸濁液を500mlのビーカーに入れ、約10mlの水と3〜5滴のフェノールフタレイン溶液を添加する。混合物を磁気撹拌機で撹拌し、ビュレットを用いて、フェノールフタレインの色が赤から薄桃色に変化するまで硫酸溶液を添加する。さらに3〜5滴のフェノールフタレインを添加し、滴定を継続する。色変化が検出できなくなるまで、このプロセスを繰り返す。
Y値は、以下のように算出する:
【数1】

【0080】
式中、
C=硫酸濃度(mol/l)
V=滴定で消費した硫酸の体積(ml)
N=酸の規定度。
【0081】
初期導入混合物または沈降懸濁液のpHの測定
初期導入混合物または沈降懸濁の試料50〜100mlを採取し、60℃でpHを測定する。
【0082】
乾燥前のシリカフィードの固形分の測定
10gの試料(質量Eを採取)を磁製皿(直径45mm)に入れ、120〜140℃の赤外線乾燥ランプ下で恒量まで乾燥させる。その後、乾燥剤としてシリカゲルを含むデシケーターキャビネット内でこの試料を室温まで冷却する。最終質量Aを重量測定法で測定する。固形分(SC)%を
SC−A÷E×100%
(式中、A=最終質量(g)であり、E=採取した質量(g)である)によって測定した。
【0083】
シリカのpHの測定(最終生成物)
シリカのpHの測定は、DIN EN ISO 787−9に基づいて、室温の5%濃度の水性懸濁液として実施する。採取する質量は、この標準規格の指定から変更した(シリカ5.00g/脱イオン水100ml)。
【0084】
含水量の測定
シリカの含水量は、105℃の循環乾燥炉で2時間乾燥させたあと、ISO 787−2に従って測定する。この乾燥減量は、主に水蒸気からなる。
【0085】
BET表面積の測定
粉末状、球状、または粒状シリカの窒素比表面積(以下、BET表面積とする)は、ISO 5794−1/Annex Dに従って、AREA Meter(Stroehlein、JUWE)を用いて測定する。
【0086】
CTAB表面積の測定
この方法は、ASTM 3765またはNFT 45−007(第5.12.1.3項)による、シリカの「外」面上へのCTAB(N−ヘキサデシル−N,N,N−トリメチルアンモニウムブロミド)の吸着に基づく。
【0087】
CTABの吸着は、撹拌および超音波処理により、水性溶液中で生じる。滴定処理装置を用い、NDSS(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム溶液、「Aerosol OT」溶液)による逆滴定によって、過剰の未吸着CTABを測定するが、終点は、この溶液の濁りの最大点によって示され、フォトトローデ(Phototrode)を用いて測定する。実施する全作業中の温度は、23〜25℃として、それによりCTABの晶出を防止する。逆滴定は、以下の方程式に基づく:
【化7】

【0088】
装置
それぞれpH電極(Mettlerブランド、DG 111型)およびPhototrode(Mettlerブランド、DP 550型)を備える、METTLER Toledo DL 55型滴定処理装置およびMETTLER Toled DL 70型滴定処理装置
100mlのポリプロピレン製滴定ビーカー
150mlの滴定ガラス容器(蓋付き)
加圧濾過装置、容量100ml
ニトロセルロースを含むメンブレンフィルタ(孔径0.1μm、直径47mm)、例えばWhatman(製造番号7181−004)。
【0089】
試薬
CTABの溶液(脱イオン中のCCTAB=0.015mol/l)およびNDSS(脱イオン水中の濃度=0.00423mol/l)をすぐに使用できる状態で入手し、(Bernd Kraft GmbH社、47167デュースブルグ:製造番号6056.4700、濃度0.015mol/lのCTAB溶液;製造番号6057.4730、0.00423mol/lのNDSS溶液)、25℃で保管し、1ヶ月以内に使用する。
【0090】
手順
1.ブランク滴定
5mlのCTAB溶液の滴定のためのNDSS溶液の消費量を毎回の一連の測定前に、1日1回確認するべきである。この目的で、Phototrodeを滴定開始前に1000±20mVに設定する(透明度100%に相当する)。
【0091】
正確に5.00mlのCTAB溶液をピペットで滴定ビーカーに移し、50.0mlの脱イオン水を添加する。撹拌しながら、当業者に周知の測定方法でNDSS溶液による滴定を実施するが、これはDL 55滴定処理装置を使用して、溶液の濁りが最大値になるまで行なう。NDSS溶液の消費量VAは、mlで測定する。それぞれの滴定は、三重測定として実施すべきである。
【0092】
2.吸着
含水量5±2%(含水量は、場合により、105℃にて乾燥炉で乾燥させるか、あるいは均一に湿潤させることによって調整する)の粉末状、球状、または粒状シリカ10.0gを粉砕機(Krups社製、KM 75型、品番2030−70)を用いて、30秒間粉砕した。正確に500.0mgの粉砕試料(質量Eを採取)を、磁気撹拌棒を備える150mlの滴定容器に移し、そこに正確に100.0mlのCTAB溶液(T1)を計量供給する。この滴定容器に蓋をし、Ultra Turrax T 25撹拌機(撹拌軸KV−18G、直径18mm)を用いて、18,000rpmで1分以下、湿潤が完了するまで撹拌する。この滴定容器をDL 70滴定処理装置にねじ止めし、懸濁液のpHをKOH(0.1mol/l)で9±0.05の値に調整する。
【0093】
25℃の超音波浴(Bandelin社製、Sonorex RK 106 S、35kHz、有効出力100Wまたは最大出力200W)中の滴定容器内で、この懸濁液の4分間の超音波処理を4分間実施する。その後、窒素圧1.2barでメンブレンフィルタを通して即座に加圧濾過を行なう。前留分の5mlは廃棄する。
【0094】
3.滴定
5.00mlの残留濾液をピペットで100mlの滴定ビーカーに移し、脱イオン水で50.00mlにした。この滴定ビーカーをDL 55滴定処理装置にねじ止めし、NDSS溶液を用いた滴定を濁りが最大値になるまで撹拌することで実施する。NDSS溶液の消費量VBをmlで測定する。それぞれの滴定は、三重測定として実施すべきである。
【0095】
計算
【数2】

A=ブランク試料の滴定におけるNDSS溶液の消費量(ml)
B=濾液使用時のNDSS溶液の消費量(ml)
CTAB=CTAB溶液の濃度(mol/l)
CTAB=CTABのモル質量=364.46g/mol
1=CTAB溶液の添加量(l)
P=CTABに要する空間=578.435m2/g
E=採取したシリカの質量
CTAB表面積は、無水シリカに対して、このため以下の補正を実施する。
【数3】

【0096】
シリカの含水率は、前記の方法「含水率の測定」に従って測定する。
【0097】
DBP吸収量の測定
沈降シリカの吸収率の尺度であるDBP吸収量(DBP数)は、以下のように、標準規格DIN 53601に基づいて測定する。
【0098】
含水量0〜10%(含水量は、場合により、105℃にて乾燥炉で乾燥させることによって調整する)の粉末状または球状シリカ12.50gをBrabender吸収計「E」(トルク変換器の出口フィルタの気化を伴わない)の混練チャンバー(商品番号279061)に入れる。顆粒の場合、1〜3.15mmの篩分級物(Retsch社製ステンレス鋼篩)(顆粒を、プラスチック製スパチュラで穏やかに加圧して、孔径3.15mmの篩を通すことによる)を使用する。絶えず混合しながら(混練羽根の循環速度125rpm)、「Dosimat Brabender T 90/50」を用いて、室温でこの混合物にジブチルフタレートを4ml/分の速度で滴加する。混合はわずかな力しか要さず、これをデジタル表示に基づいて監視する。測定が終わる頃には、混合物がペースト状になるが、これは要求される力の急速な増加によって示される。600桁が表示されると(トルク0.6Nm)、混練機とDBP計量供給の双方が、電気接点によって停止される。DBPフィードのための同期電動機をデジタル計数器に連結することによって、DBPの消費量(ml)を読み取ることができる。
【0099】
DBP吸収量は、g/(100g)で示され、以下の式に基づいて計算される:
【数4】

[式中、
DBP=DBP吸収量(g/(100g))
V=DBPの消費量(ml)
D=DBPの密度(g/ml)(20℃において1.047g/ml)
E=採取したシリカの質量(g)
K=湿分補正表による補正値(g/(100g)]
DBP吸収量は、無水乾燥シリカに対して定義される。含水沈降シリカの使用では、補正値Kを考慮して、DBP吸収量を計算すべきである。この値は、以下の補正表によって決定することができる。例えば、シリカ中の含水量5.8%は、DBP吸収量の33g/(100g)の追加を意味する。シリカの含水量は、「含水量または乾燥減量の測定」方法に従って測定する。
【表1】

【0100】
導電率の測定
シリカの導電率の測定は、DIN EN ISO 787−14に基づいて、室温において4%濃度の水性懸濁液で実施する。採取する質量は、この標準規格の指定から変更した(シリカ4.00g/脱イオン水100ml)。
【0101】
レーザー回折法による粒径の測定
粉末の粒径を測定するためのレーザー回折法の使用は、粒子が異なる強度パターンで全方向に単色光を散乱させる現象に基づく。この散乱は、粒径によって異なる。粒子が小さいほど、散乱の角度が大きくなる。
【0102】
試料調製および測定(モジュールの洗浄など)は、親水性沈降シリカの場合、分散液(脱塩水中の0.05m−%テトラ−ナトリウム−ジホスフェート)を用いて実施する。水で十分に湿潤させることができない沈降シリカの場合、純エタノール/水混合物(体積比1:1)を用いる。
【0103】
測定を開始する前に、レーザー回折装置LS 230(Beckmann Coulter社、品番6605210)、および超音波処理装置SONICS Vibracell(Modul VCX 130)を含むリキッドモジュール(Small Volume Module Plus、120ml、Beckmann Coulter社、内部超音波フィンガー付き(直径6mm)、品番6605506)を2時間暖め、モジュールを分散液で3回洗浄し、較正し、疎水性沈降シリカの場合はエタノール/水混合物で3回洗浄する。装置のソフトウェア(例えば、Version 3.29)のコントロールバーで、メニューオプション「測定」から「光学モデルを計算」ウィンドウを選択し、屈折率を.rfdファイルで規定する:液体屈折率R.I.実数=1.332(エタノールの場合1.359);材料屈折率実数=1.46;虚数=0.1;形状因子1。このウィンドウで、「試料情報」、「試料名」、測定のデータを保存するための「ファイル名」、「分散液」を定義し、「OK」で確認する。その後、コントロールバー「測定サイクル」を選択する。このウィンドウで、第1の工程として「新しい試料」を確認しなければならず、続いて「オフセット測定」、「調整」、「バックグラウンド測定」、「試料濃度設定」、「試料情報入力」(「試料情報」で定義された試料を確認するために必要)、「測定1開始」の定義および有効化をそれぞれ行ない、PIDSファンクションを無効にする。さらに、光学モデル「Fraunhofer−rfd」を選択し、「サイズ分布」(「測定中」にロック、および「セーフデータ」を有効にする。装置(Small Volume Moduleそれぞれ)上で、ポンプ速度を30%に設定する。
【0104】
研究のためのシリカ試料から、懸濁液を製造する。粉砕生成物の場合、Vibra Cell社製の超音波処理装置VC 70 T型(70W)および超音波フィンガーCV 181を用いて、1分間の超音波処理により再分散を実施する。未粉砕生成物の場合、分散は、Small Volume Module Plus中のポンプを用いて、1分間の循環により実施する。その後、2mlの使い捨てピペットを用いて、脱塩水40ml中にシリカ1gを含む均一懸濁液を装置のリキッドモジュールに、8〜12%の光吸収で一定の濃度が達成され、かつ装置が「OK」を報告するように添加する。測定は、室温で実施する。生データ曲線から、ソフトウェアによって、体積分布に基づき、Mie理論および光学モデルパラメータ(.rtd file)を考慮して、粒径分布(d5値)およびd50値(中央値)が算出される。
【0105】
充填密度の測定
充填密度の測定は、DIN EN ISO 787−11に従って実施した。
【0106】
水ガラスのFe2+およびAl23含有量の測定
測定原理
乾燥するまで蒸発させたケイ酸塩溶液をフッ化水素酸と硫酸との混合物に加えて加熱する。これは気体状四フッ化ケイ素の形成をもたらすが、これを燻蒸して、シリコンを除去する。残留した金属塩を塩酸中に取り、水で希釈する。
【0107】
鉄含有量
この金属塩溶液の鉄含有量は、原子吸光分光法を用い、波長248.3nmにおける光吸収の測定により測定する。
【0108】
アルミニウム含有量
アルミニウム含有量の測定は、安定なアルミニウム−クロマズリンS−臭化セチルピリジニウム三元複合体を用いて、比色分析により実施する。
【0109】
必要とされる試薬
(括弧内の数字は、混合物中の試薬と脱イオン水それぞれの含有量(体積部/体積部)を表わしている。最初の数字は、試薬の含有量を表わし、2番目の数字は、脱イオン水の含有量を表わす)。
−蒸留水中の2質量%のアスコルビン酸溶液(使用前に新たに調製したもの)
−1質量%のo−フェナントロリン溶液を、エタノール溶液100mlを用いて調製する(1+1)。
−0.2質量%のクロマズリンS溶液を、エタノール溶液100mlを用いて調製する(1+3)。
−0.4質量%の臭化セチルピリジニウム溶液を、臭化セチルピリジニウム溶液100mlを用いて調製する(1+3)。
−Al標準溶液1000μg/ml
−Al標準溶液10μg/mlを1000μg/mlのAl標準溶液1mlと塩酸溶液2mlとを100mLのメスフラスコに加え、蒸留水によって100mlにすることによって調製する。
−硫酸98%
−塩酸36%
−塩酸(2+5)(V/V)
−フッ化水素酸40%
−Cu標準溶液、1000μg/ml
−Fe標準溶液、1000μg/ml
−Mn標準溶液、1000μg/ml
−金属含有量10μg/mlを有するCu、Fe、Mnの混合溶液を、Fe標準溶液、Mn標準溶液、およびCu標準溶液それぞれ1mlと濃塩酸2mlとを100mlのメスフラスコに入れ、標線まで蒸留水で希釈して調製する。
−含有量0、0.2、0.4、0.6、0.8μg/mlを有するCu、Fe、Mnの混合溶液を、それぞれ250mlのメスフラスコ中に、蒸留水で希釈して調製する。
【0110】
必要とされる装置
−GGX−9 AAS分光計、Beijing Kechuang Haiguang Instrument Co.,Ltd社
−721E分光計、Shanghai Analytical Instrument. Factory社(中国)
−10ml、100ml、および150mlのメスフラスコ
−1ml、2ml、3ml、5ml、10ml、15ml、20mlのメスピペット
−105±2℃の乾燥炉
−精度±0.1mgの化学天秤
−シリカゲルを含むデシケータ
−蓋付き秤量瓶。
【0111】
試料調製
濃縮水ガラス溶液を105℃の炉内で1.5時間乾燥させてから冷ます。1.5g(±0.1mg)の乾燥試料を白金るつぼ内で脱イオン水により湿潤させ、10mlのフッ化水素酸および0.5mlの硫酸と混合する。この混合物を、加熱撹拌機を用いて白煙を形成するまで濃縮して冷まし、5mlのフッ化水素酸を再び添加し、再び白煙を形成するまで濃縮を実施する。冷ました残留物に5mlの塩酸を加え、固体が全て溶解するまで加熱する。冷ました溶液を20mlのフラスコに移し、10mlの標線まで蒸留水で希釈する。上述のようにして、試験溶液Aを得る。
【0112】
測定の実施
鉄含有量(Fe mg/kg)の測定
AAS分光計GGX−9のスイッチを入れ、運転準備ができるまで15分間待機する。1mlの試験溶液Aを100mlのメスフラスコに移し、2mlの塩酸を添加し、この溶液に100mlの標線まで蒸留水を加える。上述のようにして、試験溶液Bを得る。試料の分析は、AAS分光計の操作説明書を参照して実施する。鉄/mlが0μg、0.2μg、0.4μg、0.6μg、および0.8μgの較正溶液を使用する。
【0113】
Al23含有量(%)の測定
較正曲線の記録
0μg、10μg、20μg、30μg、および50μg(Al含有量が10μg/mlのAl較正溶液0ml、1ml、2ml、3ml、および5mlの添加)を100mlのメスフラスコに入れる。その後、ニトロフェノール(0.1質量%)1滴を添加し、20mlの蒸留水で希釈し、2質量%の硝酸と2質量%のアンモニア溶液とを添加して、黄色の溶液を無色にする。その直後、5mlの4質量%硝酸を添加し、十分に混合する。20〜30分後、1mlのアスコルビン酸を添加し、再び激しく振盪する。このあと、この溶液を蒸留水で希釈して70mlにし、5mlの0.2質量%濃度のクロマズリンS溶液と、5mlの0.4質量%濃度の臭化セチルピリジニウム溶液と、5mlの30質量%濃度のヘキサメチルテトラミン溶液とを添加する。この混合物を激しく振盪し、10分間放置する。次いで、721E分光計を用い、5cmの吸収容器内で波長620nmにおいて、この較正溶液の光吸収を測定する。較正曲線を座標系に記録するが、このとき吸光度は横軸に沿って、アルミニウム含有量(μg)は縦軸に沿ってプロットする。Alの勾配k1とAl23の勾配k2とを決定する、このときk2=51/27×k1である。
【0114】
試料の分析
アルミニウム酸化物含有量を測定するために、2mlの試験溶液B(上記の鉄含有量の測定を参照)および2mlのブランク溶液をそれぞれ100mlのメスフラスコに初期導入し、次いで較正曲線の記録のための手順を採用する。
【0115】
以下の実施例は、本発明の例示および理解に役立つが、本発明の範囲を決して制限するものではない。
【0116】
実施例1
45.94m3の水を容量85m3の沈降容器に初期導入し、5.08m3の水ガラス(Be=29.0;質量比SiO2:Na2O=3.23)を添加する。次いでこの初期導入混合物を64.1℃まで加熱する。沈降開始時、すなわち水ガラスおよび硫酸(約98.0±0.5質量%)の初期導入混合物への同時添加開始時のこの初期導入混合物のY値は19.65である。75分以内に、水ガラス(上記のとおり)および硫酸(上記のとおり)を続いて添加し、その間一定の沈降温度87℃(最大偏差±0.2℃)を維持し、タービンによりせん断エネルギーを導入し、それによってY値を一定に保つ、すなわちY値は、出発値から最大偏差±1.9%となる。75分後、水ガラスの添加を停止し、pH3.68に達するまで硫酸をさらに添加する。その後、この懸濁液をpH3.68〜3.74で20分間撹拌する。
【0117】
得られた懸濁液をチャンバーフィルタプレスで濾過し、濾過ケーキを水で洗浄する。次いでこの濾過ケーキを溶解槽内で流動化する。次いで、固形分約18.9質量%、pH約5.7のシリカフィードを噴霧乾燥し、それによりpH6.3(5%濃度の懸濁液として測定)を最終生成物において達成する。
【0118】
次いで、噴霧乾燥した生成物を、分級器を有する機械的ミル(Vortex Pulverizing Mill QWJ−60)により粉砕する。
【0119】
得られた噴霧乾燥した粉砕していない生成物(実施例1a)、および粉砕した生成物(実施例1b)の代表試料の物理化学的データを第2表に記載する。
【0120】
実施例2
20.52m3の水を容量45m3の沈降容器に初期導入し、2.42m3の水ガラス(Be=23;質量比SiO2:Na2O=3.28;SiO2含有量=14.7±0.5質量%)を添加する。次いでこの初期導入混合物を86℃まで加熱する。沈降開始時、すなわち水ガラスおよび硫酸(約98.0±0.5質量%)の初期導入混合物への同時添加開始時のこの初期導入混合物のY値は20.35である。75分以内に、水ガラス(上記のとおり)および硫酸(上記のとおり)を続いて添加し、その間一定の沈降温度86℃(最大偏差±0.2℃)を維持し、それによってY値を一定に保つ、すなわちY値は、出発値から最大偏差±3.1%となる。75分後、水ガラスの添加を停止し、pH3.74に達するまで硫酸をさらに添加する。その後、この懸濁液をpH3.74〜3.78で20分間撹拌する。
【0121】
得られた懸濁液をチャンバーフィルタプレスで濾過し、逆浸透により事前に完全に脱塩した水で濾過ケーキを洗浄する。次いでこの濾過ケーキを溶解槽内で流動化する。次いで、固形分約18.2質量%、pH約5.7のシリカフィードを噴霧乾燥し、それによりpH6.5(5%濃度の懸濁液として測定)を最終生成物において達成する。
【0122】
次いで、噴霧乾燥した生成物を、分級器を有する機械的ミル(Vortex Pulverizing Mill QWJ−60)により粉砕する。
【0123】
得られた噴霧乾燥した粉砕していない生成物(実施例2a)、および粉砕した生成物(実施例2b)の代表試料の物理化学的データを表2に記載する。
【0124】
比較例1〜4
従来の方法で製造した標準シリカUltrasil VN3(Evonik Degussa GmbH社)を比較例1として選択した。比較例2〜4において、シリコーンゴムエラストマーの補強に特化して開発および販売されている沈降シリカを選択した。比較例2は、Nippon Silica社製のNipsil LPである。比較例3および4において、Rhodia Chimie社製のZeosil 132の2つの異なる試料を試験した。これら2つの試料は、極めて異なる特性を示す。出願人には、その理由は不明である。その理由は、例えば、Rhodia Chimie社が、同じ名称で異なる製品品質を販売しているとも考えられる。
【表2】

【0125】
実施例3
表3に示す比較実験は、実験室用混練機を用いたコンパウンド化に基づく。第4表に示す比較実験も2本ロールミルによるコンパウンド化に基づく。実験を以下のように実施した。
【0126】
装置
1.サーモスタット付き実験室用混練機、型番:HI−KD−5(Hongyi社、台湾)
2.2本ロールミル、型番:LRM−S−110/3E(Labtech社、台湾)
ロール直径:100mm
ロール長さ:200mm
ロール間隙:1.0+/−0.05mm
速度:15rpm/20rpm
摩擦:1:1.3
3.加熱プレス機、型番:GT−7014−A50(Gotech社、中国)
圧力:0〜50t
温度範囲:RT〜300℃
加圧範囲:315×288mm
4.寸法330mm×330mm×2mmのステンレス鋼板2枚、および同じ厚さで寸法130mm×130mmの4つの凹部を有するスペーサ板、ならびに寸法300mm×300mm×6mのステンレス鋼板2枚、および同じ厚さで寸法60mm×60mmの2つの凹部を有するスペーサ板。
5.高温炉(ESPEC社、中国)
6.引張試験機(Gotech社、中国)
7.Datacolor(Datacolor 400TM)
8.硬度(Shore A)、Williams可塑度および試料厚さ(Gotech社、中国)を測定するためのさらなる試験機
9.実験室天秤、精度少なくとも±0.01g。
【0127】
使用原料:
HTVポリマー:
Dongjue 110−2 分子量600,000g/mol、ビニル含有量:0.15%、Nanjing Dongjue社(中国)
ディストリビュータオイル/加工助剤:
α,ω−ジヒドロキシシロキサン、OH官能基含有量およそ:8%、Shanghai HuaRun Chemical社(中国)。
【0128】
架橋剤/有機過酸化物:
DHBP−C8BSペースト(45%)、Qiangsheng Chemical. Co., Ltd.社(中国)
本発明によるシリカおよび比較生成物(表2を参照)。
【0129】
実験項:
Part 1.実験室用混練機によるコンパウンド化
配合:
100部のHTVポリマー(1500g)
40部のシリカ(600g)
3.2部のディストリビュータオイル/加工助剤(48g)
1.0%の架橋剤/有機過酸化物。
【0130】
コンパウンド化/作製:
混練器具の回転速度を20rpmに調整後、1500gのHTVポリマーを混練チャンバーに入れる。次いで、シリカおよび加工助剤を室温で、4回(40%、25%、20%、および15%)に分けて添加した。
1.40質量%=240gのシリカ+19.2gの加工助剤
2.25質量%=150gのシリカ+12.0gの加工助剤
3.20質量%=120gのシリカ+9.6gの加工助剤
4.15質量%=90gのシリカ+7.2gの加工助剤。
【0131】
シリカの分散完了後、シリカに必要とされた混入時間を測定した(記録した)。シリカの全量の混入後、混練機のサーモスタットの加熱力を170℃に設定して、次いで温度170℃で2時間コンパウンド化を実施する(真空を用いない)。その後、混練機内で、真空下で加熱せずに、さらなる分散を0.5時間実施する(冷却プロセス)。化合物の冷却後、Williams可塑度(ASTM D 926−67に準拠)を24時間後に測定した。化合物の光学特性の測定前に、特別な化合物試験片を作製しなければならない。6mm厚の化合物試験片の作製のために、寸法300mm×300mm×6mmのステンレス鋼板2枚と、同じ厚さで寸法60mm×60mmの2つの凹部を有するスペーサ板を使用する。
【0132】
6mmのHTV化合物試験片(採取質量:化合物25gを2回)の作製は、室温の加熱プレス機内で(架橋剤/過酸化物の添加はしない)、1分間、約6bar(6mPa)の圧力で実施する。
【0133】
均一な試験片の作製後、Datacolor 400を用いて、化合物の光学特性の測定を実施することができる。
【0134】
以下のものを測定した:
1.標準規格ASTM E 313/DIN 6167に準拠した、l,a,b値、黄変
2.標準規格DIN 53146に準拠した、濁り
3.標準規格DIN 53147に準拠した、透明度
化合物の冷却後、そして24時間の保管後、Part 3に記載のように、化合物の加硫を実施して、さらなる性能特性を測定することができる。
【0135】
Part 2.2本ロールミルによるコンパウンド化
配合:
100部のHTVポリマー(200g)
40部のシリカ(80g)
3.2部のディストリビュータオイル/加工助剤(6.4g)
1.0%の架橋剤/有機過酸化物。
【0136】
コンパウンド化/作製:
2本ロールミルのスイッチを入れたあと、重要な加工パラメータ、例えばロール間隙(1.0+/−0.05mm)、および分散速度(20rpm/15rpm、すなわち摩擦1:1.3)を設定する。
【0137】
室温において、2本ロールミルに200gのHTVポリマーを付与し、化合物が均一化された状態で存在するまで、すなわち、より高速のロールが前記化合物で完全に被覆され、平滑な表面を有するまで分散する。この目的で、2本ロールミルを停止し、シリカ(シリカの総量は80g)の約10%の量を2つのロール間の中央に導入する。その後、加工助剤の全量(6.4gのディストリビュータオイル)をすでに付与されたシリカに計量供給する。2本ロールミルを再び起動することにより、シリカのポリマーへの混入がこのとき達成される。さらなる量のシリカの添加は、極めてゆっくりかつ段階的に実施する。シリカの総量の約50%を添加および混入したあと、この化合物をロールから除去し、折りたたみ、再びロールに付与する。ここでシリカの残りの50%を段階的に混入する。少量のシリカが、ロール間隙を通り2本ロールミル下方に落下する可能性がある。これに関して、このシリカの量を清潔な下敷上で確実に回収し、2本ロールミルに再び付与して完全に混入させるべきである。
【0138】
シリカの完全な混入後、化合物が均一化された状態で存在するようになるとすぐに、すなわちより高速のロールが前記化合物で完全に被覆され、前記化合物が平滑な表面を有するようになるとすぐに、シリカに必要とされた混入時間を測定した(記録した)。
【0139】
シリカの完全な分散を確実にするために、ここで化合物の均一化を継続する。この手順において、化合物を2本ロールミルからさらに5回除去し、折りたたみ、再び付与する。合計後続分散時間は、5分を超えるべきではない。コンパウンド化後、単一の長い化合物皮膜の形態で化合物をロールから除去する。この化合物皮膜をここで4つの均一層に折りたたみ、熱風炉に入れて、ステンレス鋼板上で170℃にて1時間保管する。
【0140】
この加熱後、化合物を炉から除去し、室温で1時間保管して冷ます。その後、5〜10分間(シリカ特性に依存する)圧延することにより、化合物を再び可塑化する。すなわち化合物を2本ロールミルに再び付与し、化合物が均一化された状態で存在するまで、すなわちより高速のロールが前記化合物で完全に被覆され、前記化合物が平滑な表面を有するまで分散させる。
【0141】
その後、この化合物をロールから除去し、次いで、Part 1にも記載したように、Williams可塑度(ASTM D 926−67に準拠)を測定し、この化合物の光学特性を測定するための特別な化合物試験片を作製する。
【0142】
その後、Part 3に記載のように、化合物の加硫を実施して、さらなる性能特性を測定することができる。
【0143】
Part 3.加硫:
実験室用混練によるコンパウンド化後、あるいは2本ロールミルよるコンパウンド化後に、加硫を実施する。
【0144】
性能特性を測定するためには、厚さ2mm(引張強さ、破断点伸び、および引裂伝播抵抗の測定用)および厚さ6mm(HTV加硫物の硬度および光学特性の測定用)の加硫物またはHTV試験片が必要である。
【0145】
2本ロールミルのスイッチを入れたあと、重要な加工パラメータ、例えばロール間隙(1.0+/−0.05mm)、および分散速度(20rpm/15rpm、すなわち摩擦1:1.3)を設定する。
【0146】
室温において、必要とされる量のHTV化合物を2本ロールミルに付与し、完全に再可塑化された化合物(圧延により可塑化された化合物)が形成されるまで分散させる。
【0147】
化合物が均一化された状態で存在するようになるとすぐに、すなわちより高速のロールが前記化合物で完全に被覆されるとすぐに、過酸化物の添加を実施することができる。
【0148】
使用する化合物の質量に対して、1.0質量%のDHBP−45−PSI(2,5−ジメチル−2,5−ジ−tert−ブチルペルオキシ)ヘキサンをここで添加し、分散させる。
【0149】
過酸化物の良好な分散を確実にするために、さらに8分間の分散を実施する。この圧延時間中に、化合物を合計8回ロールから除去し、折りたたみ、ロールに再び付与する。
【0150】
過酸化物が分散したあと、化合物を、粉塵を避けて24時間保管する。実際の加硫の前に、再び圧延によって、化合物を完全に再可塑化する。
【0151】
加熱プレス機を170℃に予熱したあと、実際の加硫を実施する。この目的で、以下の研磨ステンレス鋼板を使用する。
【0152】
2mm厚の試験片の場合、寸法330mm×330mm×2mmのステンレス鋼板2枚、および同じ厚さで寸法130mm×130mmの4つの凹部を有するスペーサ板を使用する。
【0153】
6mm厚の試験片の場合、寸法300mm×300mm×6mのステンレス鋼板2枚、および同じ厚さで寸法60mm×60mmの2つの凹部を有するスペーサ板を使用する。
【0154】
2mmのHTV試験片(採取質量:化合物35gを4回)の加硫は、170℃の加熱プレス機内で、7分間約15bar(15mPa)の圧力で実施する。
【0155】
6mmのHTV試験片(採取質量:化合物25gを2回)の加硫は、170℃の加熱プレス機内で、10分間約15bar(15mPa)の圧力で実施する。
【0156】
重要なのは、加硫に使用するステンレス鋼板を再使用前に室温まで冷却しなければならないことであるが、これは、そうしなければ、加硫物の光学特性が悪影響を受ける可能性があるためである。
【0157】
完全な加硫を確実にし、また加硫物から分解生成物を除去するために、全ての試験片を続いて高温循環炉(1分当たりおよびHTV加硫物1kg当たり少なくとも120lの外気が要求される)内で、200℃にて4時間後加硫する。
【0158】
表3および表4に示す性能特性は、それぞれの測定方法の要件に従った調整室内または調整チャンバー内でHTV加硫物を保管後に試験することができる。比較データを測定するために、以下の標準試験方法を選択した。
硬度(Shore A):DIN 53 505
引張強さおよび破断点伸び:ISO 37
引裂伝播抵抗:ISO 34−1
光学特性
黄変、l,a,b値:ASTM E 313/DIN 6167
濁り:DlN 53146
半透明度:DIN 53147。
【表3−1】

【表3−2】

【0159】
表3からの試験結果の解釈
本発明による沈降シリカ(実施例1a、1b、2a、および2b)は、従来の方法で製造された沈降シリカ(比較例1)と比較して、実質的に混入時間が減少している。すなわちこれらは、より迅速に混入し、より迅速に分散/均一化することができる。本発明による沈降シリカ(実施例1bおよび2b)のみを考慮する場合、これらはまた、すでに市場に出回っており、特にシリコーンゴム用途で提供されている沈降シリカ(比較例3)よりも、実質的により有利な混入時間を有する。化合物の増粘特性およびレオロジー特性の尺度であるWilliams可塑度は、表3に示す全ての例について同程度である。本発明による沈降シリカのさらなる利点は、化合物半透明度を検討したときに認められる。
【0160】
この点において、実施例1a、1b、2a、および2bと比較例1および2とを比較すると、化合物透明度の尺度としての化合物半透明度が、本発明による全ての沈降シリカについて、極めて高い値であることが示される。本発明による沈降シリカが比較例1と明らかに区別され、また実施例1a、1b、2aが比較例2と明らかに区別されることから、化合物明度にも同じことが当てはまる。この場合、比較例4の極めて良好な値さえも上回っている。
【0161】
比較例2および3と直接比較して、より低い本発明による沈降シリカ(実施例1a、1b、2a、および2b)のShore A硬度は、より低い加硫物硬度が、シリカの添加の増加(配合物に対して)を可能にすることから、同様に有利である。このことは、理論上は同じ硬度でより多くのシリカを添加することにより、より良好な機械的特性を達成することができることを意味する。実施例1bおよび2bの機械的特性、例えば引張強さおよび引裂伝播抵抗などは、比較例2および3と比較して同様に高い値である。しかしながら、実施例1aで得られた結果は、この点において特別に指摘される。これは未粉砕シリカであるが、粉砕シリカ(比較例2)と比較して、許容可能な引張強さおよび許容可能な引裂伝播抵抗をすでに達成することができる。現在のところ、従来技術によると、これは従来の未粉砕沈降シリカでは達成することができない。しかしながら、本発明による沈降シリカの以下の利点は、とりわけ指摘すべきである:
実施例1a、1b、2a、および2bは、架橋シリコーン系の透明度および清澄度の尺度としての加硫物の極めて高い半透明度を示している。これにより、極めて高い透明度を要求する新規シリコーン生成物における使用が可能になる。全ての比較例(1、2、および3)は、実質的により低い半透明度値を示しており、加硫物の明度も比較例1および2では実質的により低い値が測定された。
【0162】
透明度の高い加硫物の場合には、通常は、b値の増加も黄色成分および黄変の増加の尺度であることが認められる。しかしながら、透明度の高い特性にもかかわらず、本発明による沈降シリカに基づく全ての加硫物は、中程度のb値(実施例1a、1b)、または極めて低いb値(実施例2a、2b)、および極めてわずかな黄変(実施例2aおよび2b)しか示さない。
【0163】
この点において、実施例2aおよび2bは、従来の沈降シリカ(比較例1)と比較して実質的な改善点を有するだけでなく、シリコーンゴム用途で提供されている、すでに市場で確立されている沈降シリカ(比較例2および3)との直接比較においても実質的に改善することができた。
【表4−1】

【表4−2】

【0164】
表4からの試験結果の解釈
本発明による沈降シリカ(実施例1a、1b、2a、および2b)は、従来の方法で製造された沈降シリカ(比較例1)と比較して、混入時間が減少している。しかしながら、どの例でも実質的により迅速な(混練機実験−第3表と比較して)2本ロールミルによるコンパウンド化法では、一部の例において、すでに市場に出回っており、特にシリコーンゴム用途で提供されている沈降シリカ(比較例2〜4)と大幅に区別することはもはや不可能である。しかしながら、すでに市場に出回っており、特にシリコーンゴム用途で提供されている、比較例2および4からの沈降シリカと比較すると、本発明による実施例1a、1bは、最大20%速い混入時間を示している。
【0165】
化合物の増粘特性およびレオロジー特性の尺度であるWilliams可塑度は、第4表に示す全ての例について同程度である。本発明による沈降シリカのさらなる利点は、化合物半透明度を検討したときに認められる。
【0166】
この点において、実施例1a、1b、2a、および2bと従来の沈降シリカ(比較例1)とを比較すると、化合物透明度の尺度としての化合物半透明度が、高い値であることが示される。しかしながら、本発明による全ての沈降シリカについて測定された極めて低いb値は、とりわけ指摘すべきである。低いb値は、化合物の極めて少ない黄変に相当する。実施例1a、1b、2a、および2bのb値をここで比較例2〜4と比較すると、本発明による沈降シリカに基づく化合物は、黄変が実質的に少ないことが明らかになる。残念ながら、b値間の比較的小さい差は、化合物の単純な視覚的評価ほどはこれを明らかにしない(写真によってでさえ、日光の下、目で容易に見られるこの差を、再現可能な形で示すことは残念ながらできない)。
【0167】
比較例2と直接比較して、より低い本発明による沈降シリカ(実施例1a、1b、2a、および2b)のShore A硬度は、より低い加硫物硬度が、シリカの添加の増加(配合物に対して)を可能にすることから、同様に有利である。
【0168】
実施例2bの機械的特性、例えば引張強さおよび引裂伝播抵抗などは、比較例2および3と比較して同様に高い値である。しかしながら、この点において、実施例1aおよび2aで得られた結果は、とりわけ指摘される。これらは未粉砕シリカであるが、粉砕シリカ(比較例2および3)と比較して、同程度の高さの引裂伝播抵抗を達成することができる。
【0169】
しかしながら、本発明による沈降シリカの以下の利点は、とりわけ指摘すべきである:
実施例1a、1b、2a、および2bは、従来の沈降シリカ(比較例1)と比較して、架橋シリコーン系の透明度および清澄度の尺度としての加硫物の高い半透明度を示している。これにより、透明度の高いシリコーン生成物における使用が可能になる。透明度の高い加硫物の場合、黄色成分および黄変の増加の尺度としてのb値の増加も、通常認められる。しかしながら、透明度の高い特性にもかかわらず、本発明による沈降シリカに基づく全ての加硫物は、中程度のb値(実施例1a、1b)、または極めて低いb値(実施例2a、2b)、および極めてわずかな黄変(実施例2aおよび2b)しか示さない。
【0170】
この点において、実施例2aおよび2bは、従来の沈降シリカ(比較例1)と比較して実質的な改善点を有するだけでなく、シリコーンゴム用途で提供されている、すでに市場で確立されている沈降シリカ(比較例2および3)との直接比較においても実質的に改善することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
BET表面積185〜260m2/gと、
CTAB表面積100〜160m2/gと、
BET/CTAB比1.2〜2.6m2/gと、
導電率<250(μS)/cmと、
を有することを特徴とする、沈降シリカ。
【請求項2】
中央粒径d50が5〜25μmであり、充填密度が50〜150g/lであることを特徴とする、請求項1に記載の沈降シリカ。
【請求項3】
中央粒径d50が8〜25μmであり、および/またはd5値が4〜10μmであることを特徴とする、請求項1または2のいずれか1項に記載の沈降シリカ。
【請求項4】
中央粒径d50が25〜90μmであり、充填密度が150〜350g/lであることを特徴とする、請求項1に記載の沈降シリカ。
【請求項5】
導電率が1〜200(μS)/cmであることを特徴とする、請求項1から5までのいずれかに記載の沈降シリカ。
【請求項6】
DBP吸収量が250〜300g/100gであることを特徴とする、請求項1から5までのいずれかに記載の沈降シリカ。
【請求項7】
含水量が7質量%未満、好ましくは5〜7質量%、とりわけ好ましくは5.5〜7質量%であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれかに記載の沈降シリカ。
【請求項8】
pHが5〜8、好ましくは6〜7であることを特徴とする、請求項1から7までのいずれかに記載の沈降シリカ。
【請求項9】
沈降シリカを製造するための方法であって、
a)Y値10〜30を有する初期導入混合物を製造する工程と、
b)この初期導入混合物に、アルカリ金属ケイ酸塩および/またはアルカリ土類金属ケイ酸塩と酸性化剤とを、撹拌しながら80〜95℃で60〜90分にわたり同時計量供給する工程と、
c)前記沈降懸濁液を再酸性化する工程と、
d)前記懸濁液を5〜50分間熟成させる工程と、
e)濾過、洗浄、および乾燥する工程と、
を含むことを特徴とし、
工程a)および/またはb)において使用する前記アルカリ金属ケイ酸塩および/またはアルカリ土類金属ケイ酸塩が、4〜7質量%の範囲のアルカリ金属酸化物もしくはアルカリ土類金属酸化物含有量、および12〜28質量%の範囲の二酸化ケイ素含有量を有すること、
工程b)および/またはc)において使用する前記酸性化剤が、相応して可能な濃度の濃鉱酸および炭酸(またはCO2ガス)および亜硫酸水素ナトリウム(またはSO2ガス)からなる群から選択される酸性化剤であること、ならびに
前記沈降懸濁液のY値が、沈降中に10〜30の値で一定に維持される(ここで一定に維持するとは、酸性化剤およびアルカリ金属ケイ酸塩またはアルカリ土類金属ケイ酸塩の前記同時添加の過程において、Y値が出発Y値、すなわち酸性化剤とアルカリ金属ケイ酸塩またはアルカリ土類金属ケイ酸塩との前記同時添加の開始直前の値から3%以下しか変化しないことを意味する)ことを特徴とする、前記方法。
【請求項10】
本発明による方法の少なくとも1つの工程において、好ましくは少なくとも前記洗浄プロセスにおいて、脱塩水、好ましくは蒸留または逆浸透によって精製した水を用いることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
本発明による方法の少なくとも1つの工程において、前記沈降シリカ粒子に対して高いせん断力が作用することを特徴とする、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記乾燥が噴霧乾燥によって実施されること、とりわけ好ましくは、固形分15〜20質量%、およびpH4〜7を有するフィードが噴霧乾燥されることを特徴とする、請求項9から11までのいずれかに記載の方法。
【請求項13】
シリコーンゴム配合物、好ましくはRTV−1、RTV−2、HTV、およびLSRシリコーンゴム配合物用の充填剤としての、請求項1から8までのいずれかに記載の沈降シリカの使用。
【請求項14】
請求項1から8までのいずれかに記載の少なくとも1つの沈降シリカを含有する、シリコーンゴム配合物、好ましくはRTV−1、RTV−2、HTV、およびLSRシリコーンゴム配合物。

【公表番号】特表2012−531379(P2012−531379A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518719(P2012−518719)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【国際出願番号】PCT/CN2009/000754
【国際公開番号】WO2011/000133
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】