説明

シリル化されたポリカーボネート重合体の調製に適した単量体

式(1a)のシリル化されたジヒドロキシ芳香族化合物を開示する。式中、G及びGは、各々独立して、C1〜12アルキル、−OSi(C1〜12アルキル)、C1〜12アリールアルキル、又は−OSi(C1〜12アリールアルキル)であり;Z及びZは、各々独立して、直鎖状又は分岐状のC2〜18アルキレン、C8〜18アリールアルキレン、又はC8〜18アルキルアリーレンであり、Xは、直接結合、ヘテロ原子含有基、又はC1〜18の有機基であり、r及びsは、各々独立して、1又は2である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリカーボネート、特にシリル化されたポリカーボネート、その製造方法、並びにその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネートは、透明性、光沢性及び衝撃強度といった、その固有の性質のために、自動車部品から医療機器に至る広範囲の用途に適する物品や部材の製造に有用である。ポリカーボネートはまた、光による黄変に対する耐性を改善することもできる。これらの性質の組合せによって、ポリカーボネートは、衝撃や汚れのような環境負荷に対する高い耐性並びに引っかきに対する耐性が必要とされる外装用途(例えば、ドアパネル、バンパー、内装をはじめとする自動車用途など)において有用とされている。しかしながら、ポリカーボネートは、例えばポリオレフィンなどの他の熱可塑性樹脂よりも親水性の高い表面を一般に呈し、これによって、ポリカーボネート表面はより容易に濡れることとなり、その結果、水性の汚染物質によって汚れたり、悪影響を受け易い傾向にある。加えて、ポリカーボネートは、一般には高い耐引っかき性を有していないため、磨耗状態にさらされると、光沢やつやを失ってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、改善された耐湿潤性を有するポリカーボネートが当分野において必要とされている。さらには、表面仕上げ、衝撃強度及び/又は透明性等の他の有利な性質を維持しつつ、同時に耐摩耗性が維持あるいは改善されたポリカーボネートが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述の技術的欠点並びに他の技術的欠点は、下記式(1)のシリル化カーボネート単位を含有するシリル化されたポリカーボネートによって解消される。
【0005】
【化1】

【0006】
式中、G及びGは、各々独立して、C1〜12アルキル、−OSi(C1〜12アルキル)、C1〜12アリールアルキル、又は−OSi(C1〜12アリールアルキル)であり;Z及びZは、各々独立して、直鎖状又は分岐状のC2〜18アルキレン、C8〜18アリールアルキレン、又はC8〜18アルキルアリーレンであり、Xは、直接結合、ヘテロ原子含有基、又はC1〜18の有機基であり、r及びsは、各々独立して、1又は2である。
【0007】
他の実施形態では、シリル化されたポリカーボネートは、下記式(1a)のシリル化されたジヒドロキシ芳香族化合物から誘導されるカーボネート単位を含有する。
【0008】
【化2】

【0009】
式中、G及びGは、各々独立して、C1〜12アルキル、−OSi(C1〜12アルキル)、C1〜12アリールアルキル、又は−OSi(C1〜12アリールアルキル)であり;Z及びZは、各々独立して、直鎖状又は分岐状のC2〜18アルキレン、C8〜18アリールアルキレン、又はC8〜18アルキルアリーレンであり、Xは、直接結合、ヘテロ原子含有基、又はC1〜18の有機基であり、r及びsは、各々独立して、1又は2である。
【0010】
他の実施形態では、シリル化されたジヒドロキシ芳香族化合物は、下記式(1a)を有する。
【0011】
【化3】

【0012】
式中、G及びGは、各々独立して、C1〜12アルキル、−OSi(C1〜12アルキル)、C1〜12アリールアルキル、又は−OSi(C1〜12アリールアルキル)であり;Z及びZは、各々独立して、直鎖状又は分岐状のC2〜18アルキレン、C8〜18アリールアルキレン、又はC8〜18アルキルアリーレンであり、Xは、直接結合、ヘテロ原子含有基、又はC1〜18の有機基であり、r及びsは、各々独立して、1又は2である。
【0013】
他の実施形態では、シリル化されたジヒドロキシ芳香族化合物は、下記式(6)を有する。
【0014】
【化4】

【0015】
他の実施形態では、シリル化されたジヒドロキシ芳香族化合物は、下記式(7)を有する。
【0016】
【化5】

【0017】
他の実施形態では、シリル化されたポリカーボネートは、下記式(5)のシリル化されたイソプロピリデンビスフェノールから誘導されるカーボネート単位を1〜100モル%:
【0018】
【化6】

【0019】
式中、G及びGは、各々独立して、C1〜8アルキル又は−OSi(C1〜8アルキル)であり;Z及びZは、各々独立して、直鎖状又は分岐状のC2〜8アルキレンであり、そしてXは、直接結合又はC1〜12アルキレン基である
【0020】
並びに、下記式(8)のジヒドロキシ芳香族化合物から誘導されるカーボネート単位を0〜99モル%含有して成る。
【0021】
【化7】

【0022】
式中、R及びRは、各々独立して、C1〜12アルキル又はハロゲンであり、p及びqは、各々独立して、0又は1であり、Xは以下の基である。
【0023】
【化8】

【0024】
式中、R及びRは、各々独立して、水素、C1〜12アルキル、C1〜12環状アルキル、C7〜12アリールアルキル、C1〜12ヘテロアルキル、又はC7〜12環状ヘテロアルキルであり、Rは、二価のC1〜12の炭化水素基である。該ジヒドロキシ芳香族化合物は、シリル化されたジヒドロキシ芳香族化合物と同一ではない。ここで、前述のモル%の各々は、シリル化されたジヒドロキシ芳香族化合物とジヒドロキシ芳香族化合物との合計モル数に基づく。
【0025】
一実施形態では、シリル化されたポリカーボネートの製造方法は、式(1a)のシリル化されたジヒドロキシ芳香族化合物の界面重合を包含する。他の実施形態では、シリル化されたポリカーボネートの製造方法は、シリル化されたジヒドロキシ芳香族化合物の溶融重合を包含する。
【0026】
他の実施形態では、熱可塑性組成物は、シリル化されたポリカーボネート及び添加剤を含んで成る。
【0027】
他の実施形態では、物品は、シリル化されたポリカーボネートを含んで成る。
【発明の効果】
【0028】
以下、図の説明を行うが、これは例示であって限定の意はない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】接触角の測定を表す図
【図2】実施例2及び比較例1〜3に関する接触角のプロット図
【発明を実施するための形態】
【0030】
上述の形態並びに他の形態を、以下の詳細な説明において例示する。
【0031】
本書において開示するのは、ポリカーボネートを調製するのに有用である、新規なシリル化されたジヒドロキシ芳香族化合物である。驚くべきことに、シリル化されたジヒドロキシ芳香族化合物を使用して調製されたポリカーボネートは、シリル化されたジヒドロキシ芳香族化合物を含まないポリカーボネートと比較して、より大きな表面接触角と、より低い湿潤性とを呈する物品を形成することができる。このシリル化されたポリカーボネートは、改善された耐引っかき性、衝撃強度及び透明性のような他の有利な性質もまた有することができ、使用頻度の高い外装用途において特に有用である。シリル化されたジヒドロキシ芳香族化合物は、相間移動重合の条件下、又は溶融重合の何れかの条件下において重合されて、シリル化されたポリカーボネートを与えることが可能である。
【0032】
本書で用いるとき、用語「ポリカーボネート」には、下記式(2)の繰り返し構造のカーボネート単位を含んで成るホモポリカーボネート並びにコポリカーボネートが含まれる。
【0033】
【化9】

【0034】
式中、R基は、ジヒドロキシ芳香族化合物から誘導される。
【0035】
本書に開示されるのは、シリル化されたポリカーボネートであり、これは、式(2)のカーボネート単位のR基がシリル基を含有するものである。詳細には、シリル化されたポリカーボネートは、式(1)で表されるシリル化カーボネート単位を含んで成る。
【0036】
【化10】

【0037】
式中、G及びGは、各々独立して、C1〜12アルキル、−OSi(C1〜12アルキル)、C1〜12アリールアルキル、又は−OSi(C1〜12アリールアルキル)であり;Z及びZは、各々独立して、直鎖状又は分岐状のC2〜18アルキレン、C8〜18アリールアルキレン、又はC8〜18アルキルアリーレンであり、Xは、直接結合、ヘテロ原子含有基、又はC1〜18の有機基であり、r及びsは、各々独立して、1又は2である。
【0038】
一実施形態では、本書に開示するシリル化されたポリカーボネートのシリル化カーボネート単位は、式(1)のシリル化カーボネート単位が、下記式(1a)のシリル化されたジヒドロキシ芳香族化合物を含むジヒドロキシ芳香族化合物から誘導されたポリカーボネートである。
【0039】
【化11】

【0040】
式中、G、G、Z、Z、r及びsは、上記式(1)について記載した通りである。一実施形態では、Z及びZはそれぞれ、ヒドロキシ基に対しオルト位に位置する。
【0041】
また式(1a)において、Xは、二つのヒドロキシ置換芳香族基(即ち、フェノール又はo−クレゾールなどの、ヒドロキシで置換されたCアリーレン基)を接続する架橋基を表す。一実施形態では、この架橋基と、Cアリーレン基のヒドロキシ置換基とは、Cアリーレン基上で互いにパラ位に配置される。一実施形態では、架橋基Xは、直接結合、S、S(O)、S(O)、Oのようなヘテロ原子含有基、又はC1〜18の有機基である。C1〜18の有機架橋基は、環状又は非環状、芳香族又は非芳香族、置換又は無置換であってよく、ハロゲン、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、又はリンのようなヘテロ原子をさらに含有してもよい。C1〜18の有機基は、それに結合するCアリーレン基の各々がC1〜18の有機架橋基の同じアルキリデン炭素又は異なる炭素に結合するように配置することができる。
【0042】
一実施形態では、Xは、下記式(3)の基のうちの1つである。
【0043】
【化12】

【0044】
式中、R及びRは、各々独立して、水素、C1〜12アルキル、C1〜12環状アルキル、C7〜I2アリールアルキル、C1〜12ヘテロアルキル、又はC7〜I2環状ヘテロアリールアルキルであり、Rは、二価のC1〜12の炭化水素基である。
【0045】
他の実施形態では、Xは、C1〜18アルキレン基、C3〜18シクロアルキレン基、C6〜18の縮合したシクロアルキレン基、又は式−B−W−B−の基であり、ここで、B及びBは、同一であるか又は異なるC1〜6アルキレン基であり、Wは、C3〜12シクロアルキレン基又はC6〜16のアルキレン基である。
【0046】
さらに他の実施形態では、Xは、C1〜18の非環状アルキリデン基、C4〜18シクロアルキリデン基、又はC2〜18へテロシクロアルキリデン基(即ち、環の中に三つまでのヘテロ原子を有するシクロアルキリデン基)であり、ここで、ヘテロ原子としては、−O−、−S−、又は−N(Z)−が挙げられ、Zは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C1〜12アルキル、C1〜12アルコキシ、又はC1〜12アシルである。
【0047】
は、下記式(4)の置換されたC4〜18のシクロアルキリデンとし得る。
【0048】
【化13】

【0049】
式中、R、R、R、及びRの各々は、独立して、水素、ハロゲン、酸素、又はC1〜12の有機基であり;Iは、直接結合、炭素、又は二価の酸素、硫黄、又は−N(Z)−であり、ここで、Zは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C1〜12アルキル、C1〜12アルコキシ、又はC1〜12アシルであり;hは0〜2であり、jは1又は2であり、iは0又は1の整数であり、kは0〜3の整数である。但し、R、R、R、及びRのうち少なくとも二つは、一緒になって、シクロ脂肪族、芳香族、又はヘテロ芳香族の縮合環となっている。縮合環が芳香族である場合、式(4)で示される環は、不飽和の炭素−炭素結合を有し、環は縮合している、と理解されよう。kが1であり、そしてiが0である場合、式(4)で示される環は四つの炭素原子を含み、kが2である場合、示されるこの環は五つの炭素原子を含み、そしてkが3である場合、この環は六つの炭素原子を含む。一実施形態では、二つの近隣する基は(例えば、R及びRが一緒になって)、芳香族基を形成し、そして他の実施形態では、R及びRは、一緒になって一つの芳香族基を形成し、そしてR及びRは、一緒になってもう一つの芳香族基を形成する。
【0050】
一実施形態では、式(1a)のシリル化されたジヒドロキシ芳香族化合物において、G及びGは、各々独立して、C1〜8アルキル又は−OSi(C1〜8アルキル)であり;Z及びZは、各々独立して、直鎖状又は分岐状のC2〜12アルキレンであり、r及びsは、各々独立して、1又は2であり、Xは、S、S(O)、S(O)、O、C5〜16シクロアルキレン、C5〜16シクロアルキリデン、C1〜8アルキレン、C1〜8アルキリデン、C6〜13アリーレン、C7〜12アリールアルキレン、C7〜12アリールアルキリデン、又はC7〜12アリーレンアルキルであり、Z及びZはそれぞれ、ヒドロキシ基に対しオルト位に位置する。別途記載のない限り、置換基によって占有されてない各炭素の原子価は水素によって満たされていることが理解されよう。
【0051】
具体的な一実施形態では、シリル化されたジヒドロキシ芳香族化合物は、下記式(5)を有する。
【0052】
【化14】

【0053】
式中、G及びGは、各々独立して、C1〜4アルキル又は−OSi(C1〜4アルキル)であり;Z及びZは、各々独立して、直鎖状又は分岐状のC2〜8アルキレンであり、そしてXは、直接結合(−)又はC1〜12アルキリデン基である。具体的な一実施形態では、Xは、直接結合又はイソプロピリデン基である。
【0054】
一つの典型的な実施形態では、シリル化されたジヒドロキシ芳香族化合物は、下記式(6)のシリル化されたイソプロピリデン架橋ビスフェノールを含む。
【0055】
【化15】

【0056】
他の典型的な実施形態では、シリル化されたジヒドロキシ芳香族化合物は、下記式(7)のシリル化されたビフェノールを含む。
【0057】
【化16】

【0058】
本書に開示するシリル化されたポリカーボネートを含むポリカーボネートは、さらに、式(1a)のシリル化されたジヒドロキシ芳香族化合物とは異なるビスフェノールから誘導された単位をさらに含有することができる。このビスフェノールは、式(8)を有する。
【0059】
【化17】

【0060】
式中、R及びRは、各々独立して、ハロゲン又はC1〜12アルキルを表し、それは同一であるか又は異なっていてもよく、p及びqは、各々独立して、0〜4の整数である。p及び/又はqが0である場合、この原子価は、水素原子によって満たされる、と理解されよう。また式(8)において、Xは、Xに関し先に記載した通りである。
【0061】
いくつかの実例となる、適切なビスフェノール化合物の例としては、限定はしないが、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフチルメタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、1,1−ビス(ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)イソブテン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、トランス−2,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブテン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンチン、(アルファ,アルファ’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)トルエン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アセトニトリル、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−n−プロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1−ジブロモ−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1−ジクロロ−2,2−ビス(5−フェノキシ−4−ヒドロキシフェニル)エチレン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブタノン、1,6−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,6−ヘキサンジオン,エチレングリコールビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、2,7−ジヒドロキシピレン、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチルスピロ(ビス)インダン(「スピロビインダンビスフェノール」)、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタリド、2,6−ジヒドロキシジベンゾ−p−ジオキシン、2,6−ジヒドロキシチアントレン、2,7−ジヒドロキシフェノキサチン、2,7−ジヒドロキシ−9,10−ジメチルフェナジン、3,6−ジヒドロキシジベンゾフラン、3,6−ジヒドロキシジベンゾチオフェン、及び2,7−ジヒドロキシカルバゾール、並びにこれらのジヒドロキシ芳香族化合物の少なくとも一つを含む組み合わせが挙げられる。
【0062】
式(2)によって表されるこの種のビスフェノール化合物の具体的な例としては、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」又は「BPA」という)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−1−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミジン、2−フェニル−3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミジン(「PPPBP」)、及び9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンが挙げられる。これらのジヒドロキシ芳香族化合物の少なくとも一つを含む組合せも、使用することができる。
【0063】
他の種類のジオールも、シリル化されたポリカーボネートに少量存在することができる。例えば、Rの一部は、式(9)のジヒドロキシ芳香族化合物から誘導することができる。
【0064】
【化18】

【0065】
式中、各々のRは、独立して、C1〜12アルキル又はハロゲンであり、uは、0〜4である。uが0の場合、Rは水素であると理解されよう。典型的には、ハロゲンは、塩素又は臭素とし得る。一実施形態では、式(9)の化合物は、−OH基が互いにメタ位に置換されており、そして式中、R及びuは、上述の通りであるが、これはまた、一般にレゾルシノールと呼ばれる。式(9)によって表され得る化合物の例としては、レゾルシノール(式中、uは0である)、5−メチルレゾルシノール、5−エチルレゾルシノール、5−プロピルレゾルシノール、5−ブチルレゾルシノール、5−t−ブチルレゾルシノール、5−フェニルレゾルシノール、5−クミルレゾルシノール、2,4,5,6−テトラフルオロレゾルシノール、2,4,5,6−テトラブロモレゾルシノールなどの置換レゾルシノール化合物;カテコール;ヒドロキノン;2−メチルヒドロキノン、2−エチルヒドロキノン、2−プロピルヒドロキノン、2−ブチルヒドロキノン、2−t−ブチルヒドロキノン、2−フェニルヒドロキノン、2−クミルヒドロキノン、2,3,5,6−テトラメチルヒドロキノン、2,3,5,6−テトラ−t−ブチルヒドロキノン、2,3,5,6−テトラフルオロヒドロキノン、2,3,5,6−テトラブロモヒドロキノンなどの置換ヒドロキノン;又は、これらの化合物の少なくとも一つを含む組合せが挙げられる。
【0066】
枝分れ基をもつ種々の種類のポリカーボネートもまた、そのような枝分れがポリカーボネートの望ましい性質にさほど悪影響を与えない場合には有用であると考えられる。分岐ポリカーボネートのブロックは、重合時に分岐剤を添加することによって調製することができる。この分岐剤としては、ヒドロキシ、カルボキシル、カルボン酸無水物、ハロホルミル(haloformyl)、及びこれらの官能基の混合物から選択される少なくとも三つの官能基を有する多官能性の有機化合物が挙げられる。具体的な例としては、トリメリット酸、無水トリメリット酸、トリメリット酸トリクロリド、トリス−p−ヒドロキシフェニルエタン、イサチン−ビス−フェノール、トリス−フェノールTC(即ち、1,3,5−トリス((p−ヒドロキシフェニル)イソプロピル)ベンゼン)、トリス−フェノールPA(即ち、4(4(1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−エチル)アルファ,アルファ−ジメチルベンジル)フェノール)、4−クロロホルミルフタル酸無水物、トリメシン酸、及びベンゾフェノンテトラカルボン酸が挙げられる。分岐剤は、約0.05〜約2.0wt%の濃度にて添加し得る。直鎖ポリカーボネートと、分岐ポリカーボネートとから成る混合物を使用することができる。
【0067】
シリル化されたポリカーボネート中に存在する各種カーボネート単位の相対的な量は、共重合体の望ましい性質に依存し、ここに提示する指針を利用することで、当業者であれば過度の実験作業なしに容易に突き止めることができる。一般的に、シリル化されたポリカーボネートは、1〜100モル%、詳細には10〜100モル%、さらに詳細には15〜100モル%の、式(1)のシリル化カーボネート単位を含有する。一実施形態では、シリル化カーボネート単位は、式(1a)のシリル化されたジヒドロキシ芳香族化合物から誘導される。シリル化されたポリカーボネートは、0〜99モル%、詳細には0〜90モル%、さらに詳細には0〜85モル%の補足的なカーボネート単位をさらに含有する。一実施形態では、補足的なカーボネート単位の各々は、式(8)のジヒドロキシ芳香族化合物から誘導される。具体的な一実施形態では、シリル化されたポリカーボネートは、式(1a)のシリル化されたジヒドロキシ芳香族化合物から誘導されるカーボネート単位から実質的になる単独重合体である。他の具体的な実施形態では、シリル化されたポリカーボネートは、式(1)のシリル化カーボネート単位を1〜60モル%、詳細には5〜50モル%、より詳細には10〜40モル%、さらに詳細には10〜30モル%を含有する共重合体である。一実施形態では、シリル化カーボネート単位は、式(1a)のシリル化されたジヒドロキシ芳香族化合物から誘導される。これらのモル%の各々は、式(1)のシリル化カーボネート単位と、補足的なカーボネート単位との全モル数に基づく。シリル化されたポリカーボネートが、式(1a)のシリル化されたジヒドロキシ芳香族化合物と、式(8)のジヒドロキシ芳香族化合物とから誘導される実施形態においては、このモル%は、シリル化されたポリカーボネートを製造するために使用される、式(1)のシリル化されたジヒドロキシ化合物と、式(8)のジヒドロキシ芳香族化合物との全モル数に基づく。
【0068】
他の種類のジヒドロキシ単量体、例えば、式(9)の単量体は、10モル%までの、詳細には7モル%までの、さらに詳細には5モル%までの量で使用することができる。一実施形態では、シリル化されたポリカーボネートは、シリル化されたジヒドロキシ芳香族化合物と、ジヒドロキシ化合物とから誘導される単位から実質的になり、ここで、使用されるジヒドロキシ化合物は、シリル化されたポリカーボネートの望ましい性質にさほど悪影響を与えない。他の実施形態では、式(1a)と式(8)との範囲内に入る単量体のみが使用される。即ち、シリル化されたポリカーボネートは、シリル化されたジヒドロキシ芳香族化合物と、ジヒドロキシ芳香族化合物とから誘導される単位からなる。
【0069】
また、本書に開示するように、シリル化されたポリカーボネートを含むポリカーボネートは、カーボネート単位と、エステル単位、ポリシロキサン単位、及びホモポリカーボネートとコポリカーボネートの少なくとも一つを含む組合せ、のような他の種類の重合体単位とを含有する共重合体をさらに含むことができる。この種のポリカーボネート共重合体の具体的な種類は、ポリエステルカーボネートであり、ポリエステル−ポリカーボネートとしても知られる。このような共重合体は、式(2)の繰り返しカーボネート鎖単位に加えて、下記式(10)の繰り返し単位を含有するオリゴマー状のエステル含有ジヒドロキシ化合物(ヒドロキシで末端化されたオリゴマー状のアリーラートエステル(arylate esters)とも呼ばれる)から誘導されるカーボネート単位をさらに含む。
【0070】
【化19】

【0071】
式中、Dは、ジヒドロキシ化合物から誘導される二価の基であり、例えば、C2〜10アルキレン基、C6〜20の脂環式基、C6〜20芳香族基、又はポリオキシアルキレン基(ここで、アルキレン基は、2〜6個の炭素原子、詳細には2、3又は4個の炭素原子を含む)であってよく;Tは、ジカルボン酸から誘導される二価の基であり、例えば、C2〜10アルキレン基、C6〜20脂環式基、C6〜20アルキル芳香族基、又はC6〜20芳香族基とし得る。
【0072】
一実施形態では、Dは、直鎖状、分岐状、又は環状(多環状を含む)の構造を有するC2〜30アルキレン基である。他の実施形態では、Dは、上記式(8)の芳香族ジヒドロキシ芳香族化合物から誘導される。他の実施形態では、Dは、上記式(9)のジヒドロキシ芳香族化合物から誘導される。
【0073】
ポリエステル単位を調製するために用い得る芳香族ジカルボン酸の例としては、イソフタル酸又はテレフタル酸、1,2−ジ(p−カルボキシフェニル)エタン、4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’−ビス安息香酸、及びこれらの酸の少なくとも一つを含む組合せが挙げられる。1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、又は2,6−ナフタレンジカルボン酸のような、縮合環を有する酸もまた存在してよい。具体的なジカルボン酸は、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、又はそれの組合せである。具体的なジカルボン酸は、イソフタル酸とテレフタル酸との組合せから成り、イソフタル酸:テレフタル酸の重量比は、約91:9〜約2:98である。他の具体的な実施形態では、Dは、C2〜6アルキレン基であり、Tは、p−フェニレン、m−フェニレン、ナフタレン、二価の脂環式基、又はそれの組合せである。この種のポリエステルとしては、ポリ(アルキレンテレフタラート)が挙げられる。
【0074】
ポリエステル−ポリカーボネートにおけるエステル単位の数は、典型的には4以上、詳細には5以上、さらに詳細には8以上である。また一実施形態では、式(10)のエステル単位の数は、100以下、詳細には90以下、より詳細には70以下である。式(10)のエステル単位の数に関する下限値及び上限値の値は、独立して、組み合わせることができる。具体的な一実施形態では、ポリエステル−ポリカーボネートにおける式(10)のエステル単位の数は、4〜50、詳細には5〜30、より詳細には8〜25、さらに詳細には10〜20とし得る。ポリエステル−ポリカーボネート共重合体中のエステル単位:カーボネート単位のモル比は、最終組成物の望ましい性質に応じて非常に幅広く変化させることができ、例えば、1:99〜99:1、詳細には10:90〜90:10、より詳細には25:75〜75:25である。
【0075】
具体的な一実施形態では、ポリエステル−ポリカーボネートのポリエステル単位は、イソフタル酸とテレフタル酸(又は、それの誘導体)との組合せを、レゾルシノールと反応させることによって誘導することができる。他の具体的な実施形態では、ポリエステル−ポリカーボネートのポリエステル単位は、イソフタル酸とテレフタル酸との組合せを、ビスフェノールAと反応させることによって誘導される。具体的な一実施形態では、ポリエステル−ポリカーボネートのカーボネート単位は、式(1a)のシリル化されたジヒドロキシ芳香族化合物から誘導することができる。他の方法として、又はさらに加えて、典型的な一実施形態では、カーボネート単位は、レゾルシノール及び/又はビスフェノールAから誘導することができる。他の典型的な実施形態では、ポリエステル−ポリカーボネートのカーボネート単位は、レゾルシノールのカーボネート単位:ビスフェノールAのカーボネート単位の最終モル比が1:99〜99:1となるように、レゾルシノールとビスフェノールAから誘導することができる。
【0076】
本書に開示するシリル化されたポリカーボネートを含むポリカーボネートはまた、式(2)のカーボネート単位と、式(11)のジオルガノシロキサン単位のブロックを含むシロキサン含有ジヒドロキシ化合物から誘導されたポリシロキサンブロック(「ヒドロキシアリールで末端化されたポリシロキサン」とも呼ばれる)とを含有して成るポリシロキサン−ポリカーボネートとし得る。
【0077】
【化20】

【0078】
式中、各Rは、同一又は異なるC1〜13の一価の有機基である。例えば、Rは、C〜C13のアルキル基、C〜C13のアルコキシ基、C〜C13のアルケニル基、C〜C13のアルケニルオキシ基、C〜Cのシクロアルキル基、C〜Cのシクロアルコキシ基、C〜C14のアリール基、C〜C10のアリールオキシ基、C〜C13のアラルキル基、C〜C13のアラルコキシ基、C〜C13のアルキルアリール基、又はC〜C13のアルキルアリールオキシ基とし得る。これらの基は、完全に又は一部をフッ素、塩素、臭素若しくはヨウ素、又はそれらの組合せによってハロゲン化されていてもよい。一実施形態では、透明なシリル化されたポリカーボネートが望まれる場合、Rは、ハロゲンを含まない。同一のシリル化ポリカーボネートにおいて、前述のR基を組み合わせて用いることができる。
【0079】
式(11)におけるEの値は、シリル化されたポリカーボネート中における異なった各単位の種類及び相対的な量、シリル化されたポリカーボネートに望まれる性質、並びに同様の考慮すべき事項に応じて、大きく変化させ得る。一般に、Eは、約2〜約1,000、詳細には約2〜約500、より詳細には約2〜約100の平均値を有することができる。一実施形態では、Eは、約4〜約90、詳細には約5〜約80、より詳細には約10〜約70の平均値を有する。Eがより低い値である(例えば、約40よりも小さい)場合、ポリシロキサンを含有する単位を比較的多量に使用することが望ましい。対照的に、Eがより大きい値である(例えば、約40よりも大きい)場合、ポリシロキサンを含有する単位を比較的少量にて使用することが望ましい。
【0080】
一実施形態では、ポリシロキサンのブロックは、下記式(12)の繰り返し構造単位によってもたらされる。
【0081】
【化21】

【0082】
式中、Eは、先に定義した通りであり;各Rは、同一であるか又は異なり、先に定義した通りであり;各Arは、同一であるか又は異なり、置換又は無置換のC〜C30アリーレン基であり、ここで、結合は、芳香族基に直に接続される。式(12)におけるAr基は、C〜C30のジヒドロキシアリーレン化合物、例えば、以下に詳細に示す式(8)又は式(9)のジヒドロキシアリーレン化合物から誘導することができる。このジヒドロキシアリーレン化合物の少なくとも一つを含む組合せも、使用することができる。典型的なジヒドロキシアリーレン化合物は、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン,1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−1−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニルスルフィド)、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、及び1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン、又はこれらのジヒドロキシ化合物の少なくとも一つを含む組合せである。
【0083】
このような単位を含むポリカーボネートは、対応する下記式(12a)のジヒドロキシ化合物から誘導することができる。
【0084】
【化22】

【0085】
式中、Ar及びEは、上述の通りである。式(12a)の化合物は、相間移動条件下で、ジヒドロキシアリーレン化合物と、例えば、アルファ,オメガ−ビス−アセトキシ−ポリジオルガノシロキサンのオリゴマーとの反応によって得られる。式(12a)の化合物は、酸スカベンジャーの存在下で、ジヒドロキシアリーレン化合物と、例えば、アルファ,オメガ−ビス−クロロ−ポリジメチルシロキサンのオリゴマーとの縮合生成物からも得られる。
【0086】
他の実施形態では、ポリジオルガノシロキサンのブロックは、下記式(13)の単位を含む。
【0087】
【化23】

【0088】
式中、R及びEは、上述の通りであり、各Rは、独立して、C〜C30の二価の有機基であり、ここで、オリゴマー化されたポリシロキサン単位は、その対応するジヒドロキシ化合物の反応残基である。式(13)に対応するポリシロキサンのブロックは、対応するジヒドロキシ化合物(13a)から誘導される。
【0089】
【化24】

【0090】
式中、R、E及びRは、式(13)に関して記載した通りである。
【0091】
具体的な一実施形態では、ポリジオルガノシロキサンのブロックは、下記式(14)の繰り返し構造単位によってもたらされる。
【0092】
【化25】

【0093】
式中、R及びEは、先に定義した通りである。式(14)におけるRは、C〜Cの二価の脂肪族基である。式(14)における各Mは、同一であるか又は異なってよく、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C〜Cのアルキルチオ、C〜Cのアルキル、C〜Cのアルコキシ、C〜Cのアルケニル、C〜Cのアルケニルオキシ基、C〜Cのシクロアルキル、C〜Cのシクロアルコキシ、C〜C10のアリール、C〜C10のアリールオキシ、C〜C12のアラルキル、C〜C12のアラルコキシ、C〜C12のアルキルアリール、又はC〜C12のアルキルアリールオキシであり、各nは、独立して、0、1、2、3又は4である。
【0094】
一実施形態では、Mは、臭素又は塩素;メチル、エチル、又はプロピルのようなアルキル基;メトキシ、エトキシ、又はプロポキシのようなアルコキシ基;フェニル、クロロフェニル、又はトリルのようなアリール基であり;Rは、ジメチレン基、トリメチレン基、又はテトラメチレン基であり;Rは、C1〜8アルキル、トリフルオロプロピルのようなハロアルキル、シアノアルキル、又は、フェニル、クロロフェニル又はトリルのようなアリールである。他の実施形態では、Rは、メチル、又はメチルとトリフルオロプロピルとの組合せ、又はメチルとフェニルとの組合せである。さらに他の実施形態では、Mはメトキシであり、nは1であり、RはC1〜3の二価の脂肪族基であり、Rはメチルである。
【0095】
式(14)の単位を含むポリシロキサン−ポリカーボネートは、対応するジヒドロキシポリジオルガノシロキサン(14a)から誘導することができる。
【0096】
【化26】

【0097】
式中、R、E、M、R、及びnの各々は、上述の通りである。このようなジヒドロキシポリシロキサンは、下記式(15)のシロキサンヒドリドと、脂肪族的に不飽和の一価フェノールとを、白金触媒を用いて付加させることによって調製することができる。
【0098】
【化27】

【0099】
式中、R及びEは、先に定義した通りである。脂肪族的に不飽和の典型的な一価フェノールとしては、例えば、オイゲノール、2−アリルフェノール、4−アリル−2−メチルフェノール、4−アリル−2−フェニルフェノール、4−アリル−2−ブロモフェノール、4−アリル−2−t−ブトキシフェノール、4−フェニル−2−フェニルフェノール、2−メチル−4−プロピルフェノール、2−アリル−4,6−ジメチルフェノール、2−アリル−4−ブロモ−6−メチルフェノール、2−アリル−6−メトキシ−4−メチルフェノール、4−アリルフェノール、及び2−アリル−4,6−ジメチルフェノールが挙げられる。これらの少なくとも一つを含む組合せも使用することができる。
【0100】
一実施形態では、ポリシロキサン−ポリカーボネートは、対応するジヒドロキシポリシロキサン化合物から誘導されるポリシロキサンのブロックを含有することができ、これは、ポリシロキサンブロックとカーボネート単位との全重量に基づいて、0.15〜30wt%、詳細には0.5〜25wt%、より詳細には1〜20wt%の量にて存在する。具体的な一実施形態では、ポリシロキサンブロックは、ポリシロキサンブロックとカーボネート単位との全重量に基づいて、1〜10wt%、詳細には2〜9wt%、より詳細には3〜8wt%の量にて存在する。
【0101】
ポリシロキサン−ポリカーボネートは、式(8)のジヒドロキシ芳香族化合物から誘導される式(2)のカーボネート単位をさらに含有する。典型的な一実施形態では、ジヒドロキシ芳香族化合物は、ビスフェノールAである。一実施形態では、ポリシロキサン−ポリカーボネートを構成するカーボネート単位は、ポリシロキサンブロックとカーボネート単位との全重量に基づいて70〜99.85wt%、詳細には75〜99.5、より詳細には80〜99wt%の量にて存在する。具体的な一実施形態では、カーボネート単位は、ポリシロキサンブロックとカーボネート単位との全重量に基づいて、90〜99wt%、詳細には91〜98wt%、より詳細には92〜97wt%の量にて存在する。
【0102】
シリル化されたポリカーボネートは、シロキサン基(ここで、このシロキサンは、式(1a)のシリル化されたジヒドロキシ芳香族化合物への前駆物質であるヒドリドシロキサンから誘導される)を、シリル化されたポリカーボネートの全重量に基づいて0.5〜57wt%、詳細には1〜57wt%、さらに詳細には2〜57wt%の量にて含有する。具体的な一実施形態では、シリル化されたポリカーボネートは、シロキサンを、シリル化されたポリカーボネートの全重量に基づいて0.5〜35wt%、詳細には1〜30wt%、より詳細には2〜25wt%、さらに詳細には5〜20wt%の量にて含有する。
【0103】
シリル化されたポリカーボネートは、架橋スチレン−ジビニルベンゼンカラムを使用してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定し、標準ポリカーボネートに対して校正した際に、約1,000〜約100,000g/モル、詳細には約5,000〜約75,000g/モル、より詳細には約7,500〜約50,000g/モルの重量平均分子量を有し得る。GPCの試料は、塩化メチレン又はクロロホルムのような溶媒中で約1mg/mlの濃度にて調製され、そして約1.5ml/分の流量で溶離される。
【0104】
ポリカーボネートは、ASTM−D1238−04に従って、1.2kgの荷重をかけ、300℃で測定して、約0.5〜約80cm/10分、より詳細には約2〜約40cm/10分の溶融流動体積比(MVR;melt volume ratio)を有し得る。
【0105】
シリル化されたポリカーボネートはさらに、実質的に透明になるように製造することができる。この場合、ポリカーボネート組成物は、ASTM−D1003−00に従って、3.2mmの板状試験片を使用して測定したとき、0.5〜10%の透明度を有し得る。他の方法として又はさらに加えて、シリル化されたポリカーボネートは、ASTM−D1003−00に従って、3.2mmの厚板試験片を使用して測定したとき、0.5〜5%のヘイズ値を有し得る。
【0106】
ポリカーボネートは、界面相間移動プロセス又は溶融重合を用いて製造することができる。界面重合の反応条件は変化させ得るが、典型的なプロセスには、一般に、二価フェノール反応物をカセイソーダ水又はカセイカリ水に溶解又は分散させること、生成した混合物を、水と混和しない溶媒媒質に添加すること、そして反応物を、例えば、トリエチルアミン又は相間移動触媒塩のような触媒の存在下、制御されたpH条件下(例えば、約pH8〜約pH10)で、カーボネート前駆物質と接触させることが含まれる。
【0107】
従って、二相の溶液中で、上述のヒドロキシ含有単量体及び末端キャップ化剤(例えば、モノフェノール)は、pH8〜pH9に達するのに充分な水酸化物により処理され、次いで、pH6.0〜pH9.0、詳細にはpH8.0〜pH9.0を維持するのに充分な水酸化物の存在下で、一般に相間移動触媒の存在下で、カルボニル前駆物質(例えば、ホスゲン)と反応する。
【0108】
相間移動触媒としては、式(RXの化合物が挙げられ、式中、各Rは、同一又は異なるC1〜10アルキル基であり;Qは、窒素原子又はリン原子であり;Xは、ハロゲン原子又はC1〜8アルコキシ基又はC6〜18アリールオキシ基である。典型的な相間移動触媒塩としては、例えば、[CH(CHNX、[CH(CHPX、[CH(CHNX、[CH(CHNX、[CH(CHNX、CH[CH(CHNX、及びCH[CH(CHNXが挙げられ、式中、Xは、Cl、Br、C1〜8アルコキシ基、又はC6〜18アリールオキシ基である。
【0109】
典型的なカーボネート前駆物質としては、例えば、臭化カルボニル若しくは塩化カルボニルなどのハロゲン化カルボニル、又は、二価フェノールのビスハロホルマート(例えば、ビスフェノールA、ヒドロキノンなどのビスクロロホルマート)又はグリコールのビスハロホルマート(例えば、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングルコールなどのビスハロホルマート)のようなハロホルマートが挙げられる。少なくとも一つのこれらの種類のカーボネート前駆物質を含む組合せも用いることができる。好ましくは、このプロセスは、カーボネート前駆物質としてホスゲンを使用する。
【0110】
二相の溶液を生じさせるために使用される、水と混和しない溶媒としては、例えば、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、トルエンなどが挙げられる。
【0111】
末端キャップ化剤(連鎖停止剤とも呼ばれる)は、分子量成長速度を制限し、ポリカーボネートの分子量を制御する。典型的な連鎖停止剤としては、或る種のモノフェノール性の化合物(即ち、単一の遊離ヒドロキシ基を有するフェニル化合物)、モノカルボン酸クロリド、及び/又はモノクロロホルマートが挙げられる。フェノール系の連鎖停止剤としては、フェノール、p−クミル−フェノールなどのC〜C22のアルキルで置換されたフェノール、レゾルシノールモノベンゾアート、p−tert−ブチルフェノール、クレゾール、及びp−メトキシフェノールのようなジフェノールのモノエーテルが挙げられる。8〜9個の炭素原子を有する分岐状のアルキル置換基をもつ、アルキル置換されたフェノールを具体的に挙げることができる。或る種のモノフェノール性の紫外線吸収剤もまた、キャップ化剤として用いることができ、例えば、4−置換−2−ヒドロキシベンゾフェノン及びその誘導体、アリールサリチラート、レゾルシノールモノベンゾアートのようなジフェノールのモノエステル、2−(2−ヒドロキシアリール)−ベンゾトリアゾール及びその誘導体、2−(2−ヒドロキシアリール)−1,3,5−トリアジン及びその誘導体などがある。
【0112】
適切なモノカルボン酸クロリドとしては、ベンゾイルクロリドのような単環状のモノカルボン酸クロリド、C〜C22のアルキルで置換されたベンゾイルクロリド、トルオイルクロリド、ハロゲンで置換されたベンゾイルクロリド、ブロモベンゾイルクロリド、シンナモイルクロリド、4−ナジミドベンゾイルクロリド(4-nadimidobenzoyl chloride)、及びそれらの組合せ;トリメリット酸無水物クロリド、及びナフトイルクロリドのような多環状のモノカルボン酸クロリド;並びに、単環状のモノカルボン酸クロリドと多環状のモノカルボン酸クロリドとの組合せが挙げられる。約22以下の炭素原子をもつ脂肪族モノカルボン酸の塩化物が有用である。アクリロイルクロリド及びメタクリロイルクロリドのような脂肪族モノカルボン酸の官能基化された塩化物もまた有用である。フェニルクロロホルマート、C〜C22のアルキルで置換されたフェニルクロロホルマート、p−クミルフェニルクロロホルマート、トルエンクロロホルマート、及びそれらの組合せのような、単環状のモノクロロホルマートをはじめとするモノクロロホルマートもまた有用である。
【0113】
他の方法として、溶融プロセスを用いて、シリル化されたポリカーボネートを含むポリカーボネートを調製することができる。一般的に、溶融重合プロセスでは、均一分散させるべくBanbury(登録商標)ミキサー、単軸又は二軸のスクリュー押出機などを用いて、ジヒドロキシ反応物と、ジフェニルカーボナートのようなジアリールカーボナートとを、エステル交換反応触媒の存在下、溶融状態において相互に反応させることによってポリカーボネートを調製することができる。揮発性の一価フェノールは、蒸留によって溶融反応物から取り除かれ、そして重合体は、溶融残留物として単離される。ポリカーボネートを調製するのに適した具体的に有用な溶融プロセスは、アリール上に電子吸引性の置換基を有するジアリールカーボナートエステルを使用する。電子吸引性の置換基をもつ具体的に有用なジアリールカーボナートエステルの例としては、ビス(4−ニトロフェニル)カーボナート、ビス(2−クロロフェニル)カーボナート、ビス(4−クロロフェニル)カーボナート、ビス(メチルサリチル)カーボナート、ビス(4−メチルカルボキシフェニル)カーボナート、ビス(2−アセチルフェニル)カーボナート、ビス(4−アセチルフェニル)カーボナート、又はこれらの少なくとも一つを含む組合せが挙げられる。また、典型的なエステル交換反応触媒には、上記の式(RXの相間移動触媒が含まれ、式中、R、Q及びXの各々は、先に定義した通りである。エステル交換反応触媒の例としては、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムアセタート、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド、テトラブチルホスホニウムアセタート、テトラブチルホスホニウムフェノラート、又はこれらの少なくとも一つを含む組合せが挙げられる。
【0114】
例えば、ビスフェノールAポリカーボナートのような典型的なポリカーボネートは、当該ポリカーボネートを用いて調製された製品の表面が、水分(即ち、水)を引きつけ、保持できるほど充分にそれらを親水性とさせ得る表面性質を有することが知られているが、水分をはじいたり又は消散させたりすることはできない。表面の親水性は、表面上に置かれた、汚染物質不含の水の静滴の接触角によって測定することができ、水滴と表面との間の接線方向の接触角を測定する。ポリカーボネートに関しては、接触角は、典型的には約75°〜80°であり、これは高分子基材としては比較的高い湿潤性を表す。水分中に含まれる汚染物質が水分蒸発時にポリカーボネート製物品の表面に堆積される程度でも、より大きな親水性(即ち、より小さな接触角)をもつ表面は、そのような汚染物質をしっかりと保持することとなり、これにより汚染された表面(例えば汚れた表面)を視覚的に存在するものとして明示してしまう。そのような表面は、水分散逸後の外観が審美的な目的から視覚的に汚染物質を免れているべきである場合、又は汚染物質のない表面が望まれる用途においては、望ましいものではない。
【0115】
本書に開示するのは、ペンダントシロキサン基を有する式(1a)の新規なシリル化されたジヒドロキシ芳香族化合物である。驚くべきことに、シリル化されたジヒドロキシ芳香族化合物を用いて調製したシリル化ポリカーボネートは、シリル化されたジヒドロキシ芳香族化合物を含まないポリカーボネートと比較して、著しく大きい表面接触角を呈する製品に帰着することが見出された。本書に開示するシリル化ポリカーボネートから調製された製品の表面は、少なくとも95°あるいはそれより大きい表面接触角を有することができ、その結果、シリル化されたジヒドロキシ芳香族化合物を用いずに調製されたポリカーボネートよりも、より効果的に水分をはじき、消散させることができる。この共重合体は、向上された耐引っかき性や透明性のような他の有利な性質も有し得る。従って、シリル化されたポリカーボネートは、湿潤な環境条件にさらされる利用頻度の高い外装用途に特に有用である。
【0116】
シリル化されたポリカーボネートは、熱可塑性組成物をもたらす他の成分と組み合わせることができ、ここで、他の成分の種類及び量は、熱可塑性組成物に望まれる性質が、これら他の成分によってさほど悪影響を被らない程度である。一実施形態では、熱可塑性組成物は、シリル化されたポリカーボネートから実質的になる。
【0117】
シリル化されたポリカーボネートを用いて調製された熱可塑性組成物は、水の静滴を用いて測定する際、97°以上、詳細には98°以上、より詳細には99°以上、さらに詳細には100°以上の平均表面接触角を有することが望ましい。
【0118】
上述のシリル化されたポリカーボネートに加えて、シリル化されたポリカーボネートと、式(1)のシリル化カーボネート単位を含有しない他の熱可塑性重合体とを組合せて含む熱可塑性組成物は、例えば、ホモポリカーボネート、カーボネート単位に異なったR基を含有する他のポリカーボネート共重合体(即ち、コポリカーボネート)、ポリシロキサン−ポリカーボネート、ポリエステル−カーボネート(ポリエステル−ポリカーボネートとも呼ばれる)、及びポリエステルを用いて調製することができる。この組合せでは、シリル化されたポリカーボネートを1〜99wt%、詳細には10〜90wt%、より詳細には20〜80wt%にて含有することができ、組成物の残余は、前述の他の重合体、及び/又は後述の添加剤である。
【0119】
例えば、熱可塑性組成物は、添加剤として衝撃改質剤をさらに含むことができる。適切な衝撃改質剤は、典型的には、オレフィン、モノビニル芳香族単量体、アクリル酸及びメタクリル酸、及びそれらのエステル誘導体だけでなく共役ジエンからも誘導される高分子量エラストマー物質である。共役ジエンから生成された重合体は、完全に又は部分的に水素化されてよい。エラストマー物質は、単独重合体、又は、ランダム、ブロック、ラジカル重合によるブロック、グラフト、及びコアシェル(core-shell)の共重合体をはじめとする共重合体の形態とし得る。衝撃改質剤は組み合わせて用いることができる。
【0120】
衝撃改質剤の具体的な種類は、エラストマーで修飾されたグラフト共重合体であり、これは、約10℃未満、詳細には約−10℃未満、より詳細には約−40℃〜−80℃のTgを有するエラストマーの(即ち、弾性のある)高分子基質と、(ii)エラストマーの高分子基質に上層グラフト重合(superstrate grafted)された硬質高分子とを含有する。エラストマー相としての使用に適した材料としては、例えば、共役ジエンゴム(例えば、ポリブタジエン及びポリイソプレン);共役ジエンと、約50%より少ない共重合可能な単量体(例えば、スチレン、アクリロニトリル、n−ブチルアクリラート、又はエチルアクリラートのようなモノビニル性の化合物)との共重合体;エチレンプロピレン共重合体(EPR)又はエチレン−プロピレン−ジエン単量体ゴム(EPDM)のようなオレフィンゴム;エチレン−ビニルアセタートゴム;シリコーンゴム;エラストマーのC1〜8アルキル(メタ)アクリラート;C1〜8アルキル(メタ)アクリラートと、ブタジエン及び/又はスチレンとのエラストマー共重合体;又は、これらのエラストマーの少なくとも一つを含む組合せが挙げられる。
【0121】
具体的なエラストマーで修飾されたグラフト共重合体としては、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン(SEBS)、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)、アクリロニトリル−エチレン−プロピレン−ジエン−スチレン(AES)、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)、メチルメタクリラート−ブタジエン−スチレン(MBS)、及びスチレン−アクリロニトリル(SAN)から形成されたものが挙げられる。
【0122】
衝撃改質剤は、一般に、組成物中の重合体の全重量に基づいて、1〜30wt%の量にて存在する。
【0123】
シリル化されたポリカーボネートに加えて、熱可塑性組成物は、この種の樹脂組成物に通常混和されている種々の添加剤を含有することができる。但し、添加剤は、熱可塑性組成物に望まれる性質にさほど悪影響を与えないように選択される。添加剤を組み合わせて用いることもできる。このような添加剤は、組成物を生成するための成分の混合の際の適切な時間に配合することができる。
【0124】
適する充填剤又は補強剤としては、例えば、ケイ酸アルミニウム(ムル石)、合成ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、融解石英、りん状シリカ黒鉛、天然けい砂などのケイ酸塩及びシリカ粉末;窒化ホウ素粉末、ホウ素−ケイ酸粉末などのホウ素粉末;TiO、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどの酸化物;硫酸カルシウム(その無水物、二水和物、又は三水和物として);チョーク、石灰石、大理石、合成沈殿炭酸カルシウムなどの炭酸カルシウム;繊維状の、モジュールの、針状の、層状のタルクなどをはじめとするタルク;珪灰石;表面処理された珪灰石;中空の、及び中身の詰まったガラス球、ケイ酸塩の球、セノスフィア、アルミノケイ酸塩(アルモスフィア)などのガラス球;硬質カオリン、軟質カオリン、焼きカオリン、高分子マトリックス樹脂との相容性を促進する技術上既知である種々のコーティングを含有するカオリン、などをはじめとするカオリン;炭化ケイ素、アルミナ、炭化ホウ素、鉄、ニッケル、銅などの単結晶繊維又は「ホイスカー」;アスベスト、炭素繊維、Eガラス、Aガラス、Cガラス、ECRガラス、Rガラス、Sガラス、Dガラス、又はNEガラスのようなガラス繊維、などの繊維(連続繊維と切断繊維とを含む);モリブデンスルフィド、亜鉛スルフィドなどの硫化物;チタン酸バリウム、バリウムフェライト、硫酸バリウム、重晶石などのバリウム化合物;粒子状又は繊維状のアルミニウム、青銅、亜鉛、銅、及びニッケルなどの金属及び金属酸化物;ガラスフレーク、薄片状炭化ケイ素、二ホウ化アルミニウム、アルミニウムフレーク、スチールフレークなどの薄片状充填剤;繊維状充填剤、例えば、少なくとも一つのケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、及び硫酸カルシウム半水和物などを含有する配合物から誘導される繊維のような無機短繊維;微粉木によって得られる木粉、繊維状の生産物(例えば、セルロース、綿、シサル麻、ジュート、デンプン、コルク粉、リグニン、ラッカセイの殻、とうもろこし、もみ殻)などの天然の充填剤及び補強材;ポリテトラフルオロエチレンのような有機充填剤;ポリ(エーテルケトン)、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリ(フェニレンスルフィド)、ポリエステル、ポリエチレン、芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレン、アクリル樹脂、ポリ(ビニルアルコール)のような繊維を生成する能力のある有機重合体などから生成された補強された有機繊維状の充填剤;及び、雲母、粘土、長石、煙じん、フィライト、石英、珪石、真珠岩、トリポリ岩、けいそう土、カーボンブラックなどの補足的な充填剤及び補強剤、又はこれらの充填剤又は補強剤の少なくとも一つを含む組合せが挙げられる。
【0125】
充填剤及び補強剤は、伝導性を促進する金属物質層によりコーティングすることができ、あるいは高分子マトリックス樹脂との接着性並びに分散性を向上させるためにシランにより表面処理することができる。また、補強充填剤は、モノフィラメント繊維又はマルチフィラメント繊維の形態で与えることができ、単独で、又は、例えば、共織り込み型又は芯鞘型、並列配置、オレンジタイプ(orange-type)、又はマトリックス、及び微小繊維構造によって他の種類の繊維と組合せて、また繊維製造分野の当業者に既知の他の方法によって用いることができる。典型的な混交織布の構造は、例えば、ガラス繊維−炭素繊維、炭素繊維−芳香族ポリイミド(アラミド)繊維、及び芳香族ポリイミドグラスファーバー繊維などを含む。繊維状充填剤は、例えば、0〜90度の織物のような粗紡、織り繊維補強材;連続ストランドマット、切断ストランドマット、ティッシュペーパー、紙、及びフェルトなどの不織繊維補強材;又は、組みひものような三次元の補強材;の形態で供給することができる。充填剤は、一般に、シリル化ポリカーボネート及び衝撃改質剤100重量部に基づいて、約1〜約20重量部の量にて使用される。
【0126】
典型的な酸化防止添加剤としては、例えば、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリトリトールジホスファイトなどの有機亜リン酸エステル;アルキル化されたモノフェノール又はポリフェノール;ポリフェノールと、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマート)]メタンなどのジエンとのアルキル化された反応生成物;アルキル化されたヒドロキノン;ヒドロキシ化されたチオジフェニルエーテル;ベンジル化合物;ベータ−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオン酸と、一価アルコール又は多価アルコールとのエステル;ベータ−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−プロピオン酸と、一価アルコール又は多価アルコールとのエステル;ジステアリルチオプロピオナート、ジラウリルチオプロピオナート、ジトリデシルチオジプロピオナート、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート、ペンタエリトリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナートなどのチオアルキル化合物又はチオアリール化合物;ベータ−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオン酸などのアミド;又は、これらの酸化防止剤の少なくとも一つを含む組合せが挙げられる。酸化防止剤は、一般に、シリル化ポリカーボネート及び衝撃改質剤100重量部に基づいて、約0.01〜約0.1重量部の量にて使用される。
【0127】
典型的な熱安定剤用の添加剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス−(2,6−ジメチルフェニル)ホスファイト、トリス−(モノ−ノニルフェニル及びジ−ノニルフェニルの混合)ホスファイトなどの有機亜リン酸エステル;ジメチルベンゼンホスホナートなどのホスホン酸エステル、トリメチルホスファートなどのリン酸エステル、又はこれらの熱安定剤の少なくとも一つを含む組合せが挙げられる。熱安定剤は、一般に、シリル化ポリカーボネート及び衝撃改質剤100重量部に基づいて、約0.01〜約0.1重量部の量にて使用される。
【0128】
光安定剤及び/又は紫外線(UV)吸収剤用の添加剤も用いることができる。典型的な光安定剤用添加剤としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾールのようなベンゾトリアゾール、及び2−ヒドロキシ−4−n−オクチルベンゾフェノンなど、又はこれらの光安定剤の少なくとも一つを含む組合せが挙げられる。光安定剤は、一般に、シリル化ポリカーボネート及び衝撃改質剤100重量部に基づいて、約0.01〜約5重量部の量にて使用される。
【0129】
典型的なUV吸収剤用添加剤としては、例えば、ヒドロキシベンゾフェノン;ヒドロキシベンゾトリアゾール;ヒドロキシベンゾトリアジン;シアノアクリラート;オキサニリド;ベンゾオキサジノン;2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノール(CYASORB(登録商標)5411);2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン(CYASORB(登録商標)531);2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチルオキシ)−フェノール(CYASORB(登録商標)1164);2,2’−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)(CYASORB(登録商標)UV−3638);1,3−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[[2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル]プロパン(UVINUL(登録商標)3030);2,2’−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン);1,3−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[[2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル]プロパン;総てが約100ナノメートル以下の粒径をもつ、酸化チタン、酸化セリウム、及び酸化亜鉛のようなナノサイズの無機物質;など、又はこれらのUV吸収剤の少なくとも一つを含む組合せが挙げられる。UV吸収剤は、一般に、シリル化ポリカーボネート及び衝撃改質剤100重量部に基づいて、約0.01〜約5重量部の量にて使用される。
【0130】
可塑剤、潤滑剤、及び/又は離型剤も用いることができる。これらの種類の物質のあいだにはかなりの重複があり、これらとしては、例えば、ジオクチル−4,5−エポキシ−ヘキサヒドロフタラートのようなフタル酸エステル;トリス−(オクトキシカルボニルエチル)イソシアヌラート;トリステアリン;レゾルシノールテトラフェニルジホスファート(RDP)、ヒドロキノンのビス(ジフェニル)ホスファート及びビスフェノールAのビス(ジフェニル)ホスファートのような二官能性又は多官能性の芳香族リン酸エステル;ポリ−アルファ−オレフィン;エポキシ化された大豆油;シリコーン油を含むシリコーン;エステル、例えば、アルキルステアリルエステルのような脂肪酸エステル、例えば、メチルステアラート、ステアリルステアラート、ペンタエリトリトールテトラステアラートである;メチルステアラートと、親水性及び疎水性の非イオン性界面活性剤との組合せであり、この界面活性剤は、ポリエチレングリコール重合体、ポリプロピレングリコール重合体、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)共重合体、又はこれらのグリコール重合体の少なくとも一つを含む組合せ(例えば、適切な溶媒中のメチルステアラートとポリエチレン−ポリプロピレングリコール共重合体);みつろう、モンタンろう、パラフィンろうなどのろう;が挙げられる。かかる物質は、一般に、シリル化ポリカーボネート及び衝撃改質剤100重量部に基づいて、約0.1〜約1重量部の量にて使用される。
【0131】
用語「帯電防止剤」は、導電性並びに全般的な物理的性能を向上させるべく、高分子樹脂に加工処理されたり、及び/又は物質若しくは製品にスプレー処理することができるところの、単量体、オリゴマー、又は高分子の物質を指す。単量体の帯電防止剤の例としては、グリセロールモノステアラート、グリセロールジステアラート、グリセロールトリステアラート、エトキシ化されたアミン、第一級、第二級及び第三級のアミン、エトキシ化されたアルコール、アルキルスルファート、アルキルアリールスルファート、アルキルホスファート、アルキルアミンスルファート;ステアリルスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルスルホナート塩;第四級アンモニウム塩、第四級アンモニウム樹脂、イミダゾリン誘導体、ソルビタンエステル、エタノールアミド、ベタインなど、又はこれらの単量体の帯電防止剤の少なくとも一つを含む組合せが挙げられる。
【0132】
典型的な高分子の帯電防止剤としては、或る種のポリエステルアミド、ポリエーテル−ポリアミド(ポリエーテルアミド)ブロック共重合体、ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体、ポリエーテルエステル、又はポリウレタンが挙げられ、各々、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリアルキレングリコール基のポリアルキレンオキシド単位を有する。このような高分子の帯電防止剤は市販されており、例えば、PELESTAT(登録商標)6321(Sanyo製)又はPEBAX(登録商標)MH1657(Atofina製)、IRGASTAT(登録商標)P18、及びP22(Ciba-Geigy製)がある。帯電防止剤として用いることのできる他の高分子物質は、ポリアニリン(PANIPOL(登録商標)EBとしてPanipolから市販されている)、ポリピロール、及びポリチオフェン(Bayerから市販されている)のような元来導電性の重合体であり、これは高温における溶融加工後に、いくらかの固有伝導率を保持する。一実施形態では、化学的な帯電防止剤を含有する高分子樹脂において、炭素繊維、炭素ナノ繊維、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、又はこれらの少なくとも一つを含む組合せを用いることによって、組成物の静電気を散逸させることができる。帯電防止剤は、一般に、シリル化ポリカーボネート及び衝撃改質剤100重量部に基づいて、約0.05〜約0.5重量部の量にて使用される。
【0133】
顔料添加剤及び/又は染料添加剤のような着色剤も用いることができる。有用な顔料としては、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化鉄などの金属酸化物及び混合された金属酸化物;硫化亜鉛などの硫化物;アルミン酸塩;スルホケイ酸ナトリウム、硫酸塩、クロム酸塩など;カーボンブラック、亜鉛フェライト;群青;のような、例えば、無機顔料;アゾ、ジアゾ、キナクリドン、ペリレン、ナフタレンテトラカルボン酸、フラバントロン、イソインドリノン、テトラクロロイソインドリノン、アントラキノン、エントロン、ジオキサジン、フタロシアニン、及びアゾレーキ;Pigment Red 101、 Pigment Red 122、 Pigment Red 149、 Pigment Red 177、 Pigment Red 179、 Pigment Red 202、 Pigment Violet 29、 Pigment Blue 15、 Pigment Blue 60、 Pigment Green 7、 Pigment Yellow 119、 Pigment Yellow 147、 Pigment Yellow 150、及びPigment Brown 24のような有機顔料、又はこれらの顔料の少なくとも一つを含む組合せが挙げられる。顔料は、一般に、シリル化ポリカーボネート及び衝撃改質剤100重量部に基づいて、約0.001〜約3重量部の量にて使用される。
【0134】
典型的な染料は、一般に有機物質であり、例えば、クマリン460(青色)、クマリン6(緑色)、ナイルレッドなどのクマリン染料;ランタニド錯体;炭化水素染料及び置換炭化水素染料;多環状芳香族炭化水素染料;オキサゾール染料又はオキサジアゾール染料のようなシンチレーション染料;アリール置換又はヘテロアリール置換のポリ(C2〜8)オレフィン染料;カルボシアニン染料;インダントロン染料;フタロシアニン染料;オキサジン染料;カルボスチリル染料;ナフタレンテトラカルボン酸染料;ポリフィリン染料;ビス(スチリル)ビフェニル染料;アクリジン染料;アントラキノン染料;シアニン染料;メチン染料;アリールメタン染料;アゾ染料;インジゴイド染料;チオインジゴイド染料;ジアゾニウム染料;ニトロ染料;キノンイミン染料;アミノケトン染料;テトラゾリウム染料;チアゾール染料;ペリレン染料、ペリノン染料;ビス−ベンゾオキサゾリルチオフェン(BBOT);トリアリールメタン染料;キサンテン染料;チオキサンテン染料;ナフタルイミド染料;ラクトン染料;近赤外波長で吸収し、そして可視波長で放射する反ストークシフト染料などの蛍光色素分子(fluorophore);7−アミノ−4−メチルクマリンのようなルミネセンス染料;3−(2’−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン;2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール;2,5−ビス−(4−ビフェニリル)−オキサゾール;2,2’−ジメチル−p−クオーターフェニル;2,2−ジメチル−p−ターフェニル;3,5,3’’’’,5’’’’−テトラ−t−ブチル−p−キンクエフェニル;2,5−ジフェニルフラン;2,5−ジフェニルオキサゾール;4,4’−ジフェニルスチルベン;4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン;ヨウ化1,1’−ジエチル−2,2’−カルボシアニン;ヨウ化3,3’−ジエチル−4,4’,5,5’−ジベンゾチアトリカルボシアニン;7−ジメチルアミノ−1−メチル−4−メトキシ−8−アザキノロン−2;7−ジメチルアミノ−4−メチルキノロン−2;2−(4−(4−ジメチルアミノフェニル)−1,3−ブタジエニル)−3−エチルベンゾチアゾリウム過塩素酸塩;3−ジエチルアミノ−7−ジエチルイミノフェノキサゾニウム過塩素酸塩;2−(1−ナフチル)−5−フェニルオキサゾール;2,2’−p−フェニレン−ビス(5−フェニルオキサゾール);ロダミン700;ロダミン800;ピレン、クリセン、ルブレン、コロネンなど;又は、これらの染料の少なくとも一つを含む組合せが挙げられる。染料は、一般に、シリル化ポリカーボネート及び衝撃改質剤100重量部に基づいて、約0.0001〜約5重量部の量にて使用される。
【0135】
発泡体が必要な場合、有用な発泡剤としては、例えば、低沸点のハロ炭化水素及び二酸化炭素を発生する発泡剤;室温で固体であり、分解温度よりも高い温度まで加熱された時、窒素、二酸化炭素、及びアンモニアガスのような気体を発生する、アジジカルボンアミド、アジジカルボンアミドの金属塩、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウムなど、又はこれらの発泡剤の少なくとも一つを含む組合せが挙げられる。発泡剤は、一般に、シリル化ポリカーボネート及び衝撃改質剤100重量部に基づいて、約1〜約20重量部の量にて使用される。
【0136】
有用な難燃剤としては、リン、臭素、及び/又は塩素を含む有機化合物が挙げられる。ある種の用途では、規制の理由から、非臭素系及び非塩素系のリン含有難燃剤(例えば、有機リン酸エステルと、リン−窒素結合を有する有機化合物)が好ましい。
【0137】
典型的な有機リン酸エステルの一つの種類は、式(GO)P=Oの芳香族リン酸エステルであり、式中、各Gは、独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、又はアラルキル基である。但し、少なくとも一つのGは芳香族基である。二つのG基は、結合されてよく、環状基、例えば、ジフェニルペンタエリトリトールジホスファートを与える。典型的な芳香族リン酸エステルとしては、フェニルビス(ドデシル)ホスファート、フェニルビス(ネオペンチル)ホスファート、フェニルビス(3,5,5’−トリメチルエチル)ホスファート、エチルジフェニルホスファート,2−エチルヘキシルジ(p−トリル)ホスファート,ビス(2−エチルヘキシル)p−トリルホスファート、トリトリルホスファート,ビス(2−エチルヘキシル)フェニルホスファート、トリ(ノニルフェニル)ホスファート、ビス(ドデシル)p−トリルホスファート、ジブチルフェニルホスファート、2−クロロエチルジフェニルホスファート、p−トリルビス(2,5,5’−トリメチルヘキシル)ホスファート、2−エチルヘキシルジフェニルホスファートなどが挙げられる。具体的な芳香族ホスファートは、各Gが芳香族であるホスファート、例えば、トリフェニルホスファート、トリクレジルホスファート、イソプロピル化トリフェニルホスファートなどである。
【0138】
二官能性又は多官能性の芳香族リン含有化合物(例えば、下記式の化合物)も有用である。
【0139】
【化28】

【0140】
式中、各Gは、独立して、1〜30個の炭素原子を有する炭化水素であり;各Gは、独立して、1〜30個の炭素原子を有する炭化水素又はヒドロカルボンオキシ(hydrocarbonoxy)であり;各Xは、独立して、臭素又は塩素であり;mは0〜4であり;nは1〜約30である。典型的な二官能性又は多官能性の芳香族リン含有化合物としては、レゾルシノールテトラフェニルジホスファート(RDP)、ヒドロキノンのビス(ジフェニル)ホスファート、及びビスフェノールAのビス(ジフェニル)ホスファート、それらのオリゴマー対応物並びに高分子対応物などが挙げられる。
【0141】
リン−窒素結合を有する典型的な難燃剤化合物としては、窒化塩化リン、リンエステルアミド、リン酸アミド、ホスホン酸アミド、ホスフィン酸アミド、トリス(アジリジニル)ホスフィンオキシドが挙げられる。存在する場合、リン含有難燃剤は、一般に、シリル化ポリカーボネート及び衝撃改質剤100重量部に基づいて、約0.1〜約30重量部、より詳細には約1〜約20重量部の量にて存在する。
【0142】
ハロゲン化された物質、例えば、下記式(18)のハロゲン化化合物及びハロゲン化樹脂もまた、難燃剤として使用することができる。
【0143】
【化29】

【0144】
式中、Rは、アルキレン、アルキリデン又は脂環式の結合(例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、イソプロピリデン、ブチレン、イソブチレン、アミレン、シクロヘキシレン、シクロペンチリデンなど);又は、酸素エーテル、カルボニル、アミン又は硫黄含有結合(例えば、スルフィド、スルホキシド、スルホンなど)である。Rはまた、芳香族、アミノ、エーテル、カルボニル、スルフィド、スルホキシド、スルホンなどの基によって接続された二つ以上のアルキレン又はアルキリデンの結合からなってもよい。
【0145】
式(18)のAr及びAr’は、各々独立して、フェニレン、ビフェニレン、ターフェニレン、ナフチレンなどの単環状又は多環状の芳香族基である。
【0146】
Yは、有機、無機、又は有機金属の基であり、例えば、(1a)ハロゲン(例えば、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素)、又は(2)一般式OBのエーテル基(式中、Bは、Xと同種の一価の炭化水素基)、又は(3)Rによって表される種類の一価の炭化水素基、又は(4)アリールの核当り、一つ以上、詳細には二つ以上のハロゲン原子があるという条件下で、他の置換基(例えば、ニトロ、シアノ)である。
【0147】
存在する場合、各Xは、独立して、一価の炭化水素基であり、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、デシルなどのアルキル基;フェニル、ナフチル、ビフェニル、キシリル、トリルなどのアリール基;ベンジル、エチルフェニルなどのアラルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシルなどの脂環式基である。一価の炭化水素基は、それ自体、不活性な置換基を含んでいてもよい。
【0148】
各dは、独立して、1から、Ar又はAr’を構成する芳香族環上の置換可能な水素の数と同数の最大値までである。各eは、独立して、1から、R上の置換可能な水素の数と同数の最大値までである。a、b及びcの各々は、独立して、0を含む整数である。bが0でない場合、aもcも0ではない。そうでない場合、両方ではなく、aかcの何れかは0とし得る。bが0の場合、芳香族基は、炭素−炭素結合によって直に接続される。
【0149】
芳香族基Ar及びAr’上のヒドロキシ及びYの置換基は、芳香族環上でオルト位、メタ位、又はパラ位の位置にて変えることができ、基は、互いに関して、可能であるどのような幾何学的な関係にあってもよい。
【0150】
上記式の範囲に包含されるビフェノールとしては:2,2−ビス−(3,5−ジクロロフェニル)−プロパン;ビス−(2−クロロフェニル)−メタン;ビス(2,6−ジブロモフェニル)−メタン;1,1−ビス−(4−ヨードフェニル)−エタン;1,2−ビス−(2,6−ジクロロフェニル)−エタン;1,1−ビス−(2−クロロ−4−ヨードフェニル)エタン;1,1−ビス−(2−クロロ−4−メチルフェニル)−エタン;1,1−ビス−(3,5−ジクロロフェニル)−エタン;2,2−ビス−(3−フェニル−4−ブロモフェニル)−エタン;2,6−ビス−(4,6−ジクロロナフチル)−プロパン;2,2−ビス−(2,6−ジクロロフェニル)−ペンタン;2,2−ビス−(3,5−ジブロモフェニル)−ヘキサン;ビス−(4−クロロフェニル)−フェニル−メタン;ビス−(3,5−ジクロロフェニル)−シクロヘキシルメタン;ビス−(3−ニトロ−4−ブロモフェニル)−メタン;ビス−(4−ヒドロキシ−2,6−ジクロロ−3−メトキシフェニル)−メタン;及び2,2−ビス−(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパンが代表的なものである。上記構造式にはまた、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジブロモベンゼン、1,3−ジクロロ−4−ヒドロキシベンゼン、そして、2,2’−ジクロロビフェニル、ポリブロモ化された1,4−ジフェノキシベンゼン、2,4’−ジブロモビフェニル、及び2,4’−ジクロロビフェニルのようなビフェニル;並びにデカブロモジフェニルオキシドなどが含まれる。
【0151】
ビスフェノールAと、テトラブロモビスフェノールAと、カーボネート前駆物質(例えば、ホスゲン)とのコポリカーボネートのようなオリゴマー状並びに高分子状のハロゲン化された芳香族化合物もまた有用である。金属相乗剤(例えば、酸化アンチモン)も、難燃剤と共に使用することができる。存在する場合、ハロゲン含有難燃剤は、一般に、シリル化ポリカーボネート及び衝撃改質剤100重量部に基づいて、約1〜約25重量部、より詳細には約2〜約20重量部の量にて存在する。
【0152】
他の方法として、熱可塑性組成物は、実質的に塩素及び臭素を含有しなくてもよい。本書で用いるとき、実質的に塩素及び臭素を含有しないとは、塩素若しくは臭素、又は、塩素含有物質若しくは臭素含有物質を意図的に添加することなく生成された物質を指す。しかしながら、多様な生成物を加工する設備において若干量の相互汚染が起こってしまい、典型的には重量ppmのスケールで臭素及び/又は塩素の濃度が生じ得ることを理解されたい。従って、実質的に塩素及び臭素を含有しないとは、約100重量ppm(ppm)以下、約75ppm以下、又は約50ppm以下の臭素及び/又は塩素を有するものと定義し得ることが、容易且つ適切に認識されよう。この定義を難燃剤に適用する際は、難燃剤の全重量に基づく。この定義を熱可塑性組成物に適用する際は、充填剤を除外した、組成物の全重量に基づく。
【0153】
無機難燃剤も使用することができ、例えば、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム(Rimar塩)、パーフルオロオクタンスルホン酸カリウム、パーフルオロヘキサンスルホン酸テトラエチルアンモニウム、及びジフェニルスルホンスルホン酸カリウムなどのC1〜16アルキルスルホン酸塩;例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を反応させることによって生成される塩(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、及びバリウムの塩)、無機酸の錯塩(例えば、NaCO、KCO、MgCO、CaCO、及びBaCOなどの、炭酸のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩のようなオキソ陰イオン)、又はLiAlF、BaSiF、KBF、KAlF、KAlF、KSiF、及び/又はNaAlFなどのフルオロ陰イオン錯体である。存在する場合、無機難燃剤塩は、一般に、シリル化ポリカーボネート及び衝撃改質剤100重量部に基づいて、約0.01〜約10重量部、より詳細には約0.02〜約1重量部の量にて存在する。
【0154】
滴下防止剤(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの、微小繊維生成フッ素重合体又は非微小繊維生成フッ素重合体)もまた、組成物に用いることができる。滴下防止剤は、上述の硬質共重合体(例えば、スチレン−アクリロニトリル共重合体(SAN))によってカプセル化することができる。SANに封入されたPTFEは、TSANとして知られる。封入されたフッ素重合体は、フッ素重合体(例えば、水分散物)の存在下、カプセル化用重合体を重合させることによって調製することができる。TSANは、TSANがより容易に組成物中に分散され得るという点において、PTFEを超える著しい利点を与える。典型的なTSANは、封入されたフッ素重合体の全重量に基づいて、約50wt%のPTFEと約50wt%のSANを含有し得る。SANは、例えば、共重合体の全重量に基づいて約75wt%のスチレンと、約25wt%のアクリロニトリルとを含有し得る。あるいはまた、フッ素重合体は、何らかの方法で第二の重合体(例えば、芳香族ポリカーボネート又はSAN)と前もって配合することにより、滴下防止剤として用いるための集塊物質を生成することができる。どちらの方法も、封入されたフッ素重合体を生成するために使用することができる。滴下防止剤は、一般に、シリル化ポリカーボネート及び衝撃改質剤100重量パーセントに基づいて、0.1〜10重量パーセントの量にて使用される。
【0155】
放射線安定剤、詳細にはガンマ線安定剤もまた含有させ得る。典型的なガンマ線安定剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール,1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、メソ−2,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,4−ヘキサンジオールなどのアルキレンポリオール;1,2−シクロペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオールなどのシクロアルキレンポリオール;2,3−ジメチル−2,3−ブタンジオール(ピナコール)などの分岐アルキレンポリオール、並びにアルコキシ置換された環状又は非環状のアルカンが挙げられる。不飽和アルケノールも有用であり、この例としては、4−メチル−4−ペンテン−2−オール、3−メチル−ペンテン−3−オール、2−メチル−4−ペンテン−2−オール、2,4−ジメチル−4−ペンテン−2−オール、及び9−デセン−l−オール、並びに少なくとも一つのヒドロキシ置換された第三級炭素を有する第三級アルコール(例えば、2−メチル−2,4−ペンタンジオール(ヘキシレングリコール)、2−フェニル−2−ブタノール、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン、2−フェニル−2−ブタノールなど)、及び1−ヒドロキシ−1−メチル−シクロヘキサンのような環状第三級アルコールが挙げられる。芳香族環中の不飽和炭素に結合した飽和炭素上にヒドロキシ置換を有する、或る種のヒドロキシメチル芳香族化合物も使用することができる。ヒドロキシ置換された飽和炭素は、メチロール基(−CHOH)、又は−CRHOH又は−CROHのようなより複雑な炭化水素基成分とし得、式中、Rは、複雑な又は単純な炭化水素である。具体的なヒドロキシメチル芳香族化合物としては、ベンズヒドロール、1,3−ベンゼンジメタノール、ベンジルアルコール、4−ベンジルオキシベンジルアルコール、及びベンジルベンジルアルコールが挙げられる。多くの場合、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコールがガンマ線安定剤として使用される。ガンマ線安定化化合物は、典型的に、シリル化ポリカーボネート及び衝撃改質剤100重量部に基づいて、0.05〜1重量部の量にて使用される。
【0156】
シリル化されたポリカーボネートを含有する熱可塑性組成物は、さらに別の望ましい性質を有することができる。一実施形態では、当該熱可塑性組成物から成形された3.2mmの厚さを有する製品は、ASTM・D256−04に従い23℃で測定する際、メートル当り20〜100ジュール(J/m)のNII強度(NII strength)を有する。他の実施形態では、当該熱可塑性組成物から成形された3.2mmの厚さを有する製品は、ASTM・D1003−00に従い測定する際、10%より少ないヘイズ値を有する。他の実施形態では、当該熱可塑性組成物から成形された3.2mmの厚さを有する製品は、ASTM・D3763−02によって測定する際、4〜40ジュールのダイナタップ試験による延性全エネルギー(Dynatup Ductility total energy)を有する。
【0157】
シリル化されたポリカーボネートを含有する熱可塑性組成物は、種々の方法によって製造することができる。例えば、粉末のシリル化ポリカーボネート、他の重合体(もし存在すれば)、及び/又は他の任意成分を、HENSCHEL−Mixer(登録商標)高速ミキサー中で、場合によっては充填剤と共に、まず混合する。手動混合をはじめとする他の低せん断プロセスによってもまた、この混合を達成し得る。次に、混合物はホッパーを通って二軸スクリュー押出機のスロート(throat)に供給される。あるいはまた、少なくとも一つの成分は、スロートで押出機に直に供給することによって、及び/又はサイドスタッファー(sidestuffer)を通して後半の段階で組成物に導入することができる。添加剤はまた、望ましい高分子樹脂と混合してマスターバッチとし、それを押出機に供給してもよい。一般に、押出機は、組成物を流動させるのに必要な温度よりも高い温度で操作される。押出品は、すぐに水バッチで急冷され、そしてペレット化される。このように調製されたペレットは、押出品を切断する際、必要に応じて長さ4分の1インチ以下にし得る。かかるペレットを、その後の成型、成形、又は形成に使用することができる。
【0158】
シリル化ポリカーボネート組成物から構成された、成型製品、形成製品、又は成形製品も提供される。ポリカーボネート組成物は、射出成形、押出成形、回転成形、吹込み成形、及び熱成形のような種々の手段によって有用な成形品に成形することができ、例えば、側板、デッキリッド、バンパー、ヘッドランプ用レンズのような自動車部品、ビン、及び容器(例えば、医療用途);携帯電話、PDA、mp3プレーヤーなどの家庭用電化製品における透明部品を形成し得る。
【実施例】
【0159】
シリル化されたポリカーボネートを、以下の非限定的な実施例によって、さらに説明することとする。
【0160】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して、以下の実施例において調製されたビスフェノールシロキサン生成物の純度を検査した。寸法4.6mm×50mm及び粒径5マイクロメートルのXterra C18カラムを分析に用いた。カラム温度は30℃に維持した。体積対体積(v/v)比で、40パーセントの水と60パーセントのアセトニトリルとを有する水−アセトニトリル溶離液系によりカラムを溶離した。溶離液の流量は毎分1.00mlとした。ビスフェノールシロキサン生成物(20ミリグラム(mg))をアセトニトリル(10ml)に溶解することによって試料溶液を調製した。試料溶液(5マイクロリットル(μl))をカラムに注入し、41分の全実行時間にわたって試料を溶離した。
【0161】
ここに記載する全てのビスフェノールシロキサン化合物及び2,2’−ジアリルビスフェノールAについて、溶媒に重水素化クロロホルム(CDCl)を使用し、300メガヘルツ(MHz)のBruker製NMR分光計を使用してプロトンNMRスペクトルを測定した。ここに記載する4,4’−ジアリルオキシジフェニル及び3,3’−ジアリルビフェニル−4,4’−ジオールについては、溶媒に重水素化ジメチルシロキサン(DMSO−d)を使用し、300メガヘルツのBruker製NMR分光計を使用してプロトンNMRスペクトルを測定した。試料(約5〜7ミリグラム(mg))をNMR溶媒(0.75ミリリットル(ml))に溶解することによって、分析用の試料を調製した。
【0162】
5973N・MS検出器と連結したAgilent 6890シリーズのガスクロマトグラフ(GC)を用いて、ビスフェノールシロキサン生成物に関するガスクロマトグラフィー−質量スペクトルグラフ(GCMS)を記録した。長さ50メートル(m)及び直径0.320ミリメートル(mm)の寸法、0.52マイクロメートルの膜厚を有するHewlett−Packard・Ultra−2キャピラリーカラムを使用した。毎分1.2mlの流量でヘリウムガスを使用し、カラム中の試料を溶離した。ビスフェノールシロキサン(2mg)をアセトニトリル(1ml)に溶解することによって、注入用の試料を調製した。320℃の注入温度で、試料(1μl)をカラムに注入した。オーブン温度を毎分15℃の速度で80℃から300℃まで上昇させ、そして300℃で15分間保持した。
【0163】
単量体実施例1. ビスフェノールA−シロキサン単量体の調製
【0164】
工程A. 市販の2,2’−ジアリルビスフェノールAの精製
25℃に維持し、水冷式凝縮器を備え付けた250mlの三口丸底フラスコに、2,2’−ジアリルビスフェノールA(40グラム;g)及び水酸化ナトリウム水溶液(130ミリリットル;ml、12重量/体積(w/v)パーセントの水酸化ナトリウム水溶液)を添加した。得られた混合物を65℃まで加熱した。65℃で1時間撹拌した後、混合物を25℃に冷却した。トルエン(100ml)を添加し、得られた混合物を約0.5時間撹拌した。得られた混合物を約10分間放置して、水層と有機(トルエン)層とに分けた。水層を分離し、トルエン(100ml)により処理し、得られた混合物を約10分間放置して、水層と有機(トルエン)層とに分けた。得られた水層に塩酸(2.75規定度;160ml)を添加した。次いで、得られた混合物を上記と同じ方法によってトルエン(3×150ml)により処理した。分離した有機(トルエン)層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、トルエンを有機層から蒸留除去し、精製された2,2’−ジアリルビスフェノールA(35.7g)を得た。
【0165】
精製された2,2’−ジアリルビスフェノールAのプロトンNMRスペクトルは、δ1.6(s、6H、−C(CH)、3.4(d、4H、ArCH)、4.9(br、2H、−OH)、5.1(m、4H、アリルCH)、6.0(m、2H、アリルCH)、6.7(m、2H、Ar)、及び7.0(m、4H、Ar)にピークを示した。
【0166】
工程B. ビスフェノールA−シロキサンの調製
25℃に維持し、窒素雰囲気下、1Lの三口丸底フラスコに、ヘプタメチルトリシロキサン(52.1g)及びトルエン(40ml)を添加した。得られた混合物を40℃まで加熱した。40℃を維持し、窒素雰囲気下で、この溶液にもう一つのフラスコで別に調製した、2,2’−ジアリルビスフェノールA(35.7g、工程Aから)及びカルステッド触媒(40mg)(ビニルシリコーン中の白金−ジビニルテトラメチル−ジシロキサン錯体、ビニル末端PDMSO中に3.0〜3.5pt濃度)のトルエン(80ml)溶液を添加した。次に、反応混合物の温度を約60℃〜65℃まで上昇させ、混合物を60℃〜65℃にて7時間撹拌した。次いで、温度を25℃まで低下させ、混合物をシリカベッド(60から120メッシュ)に通して濾過し、そしてトルエンを濾液から蒸留除去し、油状の液体としてビスフェノールA−シロキサン(77.8g)を得た。
【0167】
工程C. 工程Bで調製されたビスフェノールA−シロキサンの精製
工程Bで調製したビスフェノールA−シロキサンをヘキサン(250ml)に溶解し、溶液を生成した。この溶液にシリカゲル(60から120メッシュ;8.0g)を添加した。得られた混合物を25℃で約30分間撹拌した。活性炭(3.0g)を混合物に添加し、得られた混合物を25℃で約2時間撹拌した。次にこの混合物をCelite(登録商標)ベッドを通して濾過した。ヘキサンを濾液から蒸留除去し、ビスフェノールA−シロキサン(68.4g)を得た。
【0168】
ビスフェノールA−シロキサンのプロトンNMRスペクトルは、δ0.1(m、42H、−SiCH)、0.5(t、4H、−SiCH)、1.6(m、10H、C(CH、及びCCHC)、2.6(t、4H、ベンジルCH)、4.8(br、2H、−OH)、6.7(m、2H、Ar)、7.0(m、4H、Ar)にピークを示した。
【0169】
単量体実施例(1a)の生成物の質量スペクトル分析は、表1に示すように、ヒドロシリル化反応に由来するいくつかの他の異性体及び副生物に加えて、式(1a)の構造に相当する構造を有する単量体の存在に対応するピークを示した。
【0170】
【表1】

【0171】
単量体実施例2. ビスフェノール−シロキサンの調製
【0172】
工程A. 4,4’−ジアリルオキシジフェニルの調製
25℃、窒素雰囲気下に維持され、水冷式凝縮器を備え付けた500mlの三口丸底フラスコに、4,4’−ジアリルオキシジフェニル(38.3g)、無水エタノール(300ml)、炭酸カリウム(57.9g)、及びヨウ化カリウム(6.15g)を添加した。得られた混合物を約10分間撹拌した。塩化アリル(87ml)を毎分10mlの速度でこのフラスコに添加した。得られた混合物を89℃に加熱した。89℃で約20時間還流した後、混合物を25℃まで冷却した。得られた固形物を濾過し、水(500ml)で洗浄し、60℃で乾燥して、所望の生成物(46.5g)を得た。
【0173】
4,4’−ジアリルオキシジフェニルのプロトンNMRスペクトルは、δ4.6(d、4H、O−CH)、5.3〜5.4(m、4H、アリルCH)、6.1(m、2H、アリルCH)、7.0(d、4H、Ar、O−アリルに対しオルト位)、及び7.6(d、4H、Ar、O−アリルに対しメタ位)にピークを示した。
【0174】
工程B. 3,3’−ジアリルビフェニル−4,4’−ジオールの調製(Brittonらによる米国特許第2,229,010号公報を参照)
窒素雰囲気下に維持した100mlの三口丸底フラスコに、4,4’−ジアリルオキシジフェニル(36g)及びジエチルアニリン(36ml)を入れた。得られた混合物を、240℃〜244℃の温度まで30分で加熱した。混合物を240℃〜244℃にて30分間窒素雰囲気下に維持した後、混合物を5℃まで冷却した。水酸化ナトリウム溶液(360ml、7.5重量/体積パーセントの水酸化ナトリウム水溶液)を混合物に添加し、得られた混合物を約20分間撹拌した。トルエン(250ml)を混合物に撹拌しながら添加した。得られた混合物を約10分間放置して、水層と有機層(トルエン層)とに分けた。水層を分離し、上記と同じ方法によってトルエン(250ml)により二回処理した。得られた水層に、硫酸(270ml、98パーセントの硫酸27mlと水243mlとの混合物)を添加した。硫酸を添加してすぐに、得られた混合物から固形物が析出した。次に混合物を10℃まで冷却した。10℃で約20分間撹拌した後、固形物を濾過して取り除き、水(5×100ml)により洗浄し、60℃で4時間乾燥した。得られた乾燥固形物をトルエン(180ml)に25℃で溶解した。得られた溶液に石油エーテル(180ml)を添加し、得られた溶液を10℃まで冷却した。10℃で約30分間撹拌した後、分離した固形物を濾過し、60℃で5時間乾燥して再結晶した生成物(22.3g)を得た。この生成物は80℃の融点を有した。
【0175】
3,3’−ジアリルビフェニル−4,4’−ジオールのプロトンNMRスペクトルは、δ3.3(m、4H、ArCH)、5.0(m、4H、アリルCH)、6.0(m、2H、アリルCH)、6.8(d、2H、Ar)、7.2(m、4H、Ar)、及び9.3(br、2H、−OH)にピークを示した。
【0176】
工程C. ビフェノール−シロキサンの調製
25℃に維持し、窒素雰囲気下で、1Lの三口丸底フラスコに、3,3’−ジアリルビフェニル−4,4’−ジオール(22.3g)、ヘプタメチルトリシロキサン(38.1g)、トルエン(100ml)、及びカルステッド触媒(26.7mg)を添加した。得られた混合物を100℃まで加熱した。混合物を100℃で約28時間維持した。得られた混合物をシリカゲル(60から120メッシュ)に通して濾過した。トルエンを濾液から蒸留除去し、油の形態で所望の生成物(58g)を得た。粗物質をカラムクロマトグラフィーによって精製した。シリカゲル(60から120メッシュ)をカラム充填物として使用し、酢酸エチル:ヘキサンを0:100〜10:90の体積対体積比率にて溶離液として使用した。所望の生成物を、油の形態で約12gの収量にて得た。HPLCにより決定された純度は96.4パーセントであった。
【0177】
ビフェノール−シロキサンのプロトンNMRスペクトルは、δ0.2(m、42H、Si−CH)、0.6(m、4H、SiCH)、1.8(m、4H、−C−CH−C−)、2.7(m、4H、ベンジルCH)、5.0(br、2H、−OH)、6.8(d、2H、Ar)、7.3(m、4H、Ar)にピークを示した。
【0178】
重合体実施例1−4.
ビスフェノールA−シロキサン(単量体実施例1から)及びビスフェノールAから誘導された構造単位を含有する重合体実施例1−4を、共重合体調製工程においてビスメチルサリチルカーボナートを用いることにより調製した。使用した反応物の量は、下表2に示す。
【0179】
長さ29cm、外径3.8cm、内径3.2cmを有するガラス製の円筒形重合反応器に、ビスフェノールA、ビスメチルサリチルカーボナート、及びビスフェノールA−シロキサンを入れ、反応混合物を生成した。テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(2.6mg)及び水酸化ナトリウム(9.58mg)を含有する溶液(400マイクロリットル;μl)を、反応混合物に添加した。反応器を1ミリバールよりも低い真空にさらした後、窒素により置換した。反応器を真空にさらした後に窒素ガスにより置換するこのプロセスを三回繰り返した。最終的に、反応器の内部圧力を窒素によって大気圧まで上昇させた。その後、反応器を180℃まで約15分間で加熱し、溶融状態の混合物を得た。180℃、大気圧にて約5分間保持し、そして撹拌開始後に、温度を190℃まで上昇させた。混合物を190℃にて15分間撹拌した後、大気圧下、温度を約5分間で210℃まで上昇させた。210℃、大気圧にて約5分間保持し、さらに温度を220℃まで上昇させ、もう5分間保持した。その後、温度をさらに230℃まで約5分間かけて上昇させ、圧力を約10分で100ミリバールまで減少させた。230℃、100ミリバールにて約10分間保持し、さらに温度を240℃まで上昇させ、240℃、100ミリバールにてもう10分間保持した後、反応器の温度を260℃まで約5分で上昇させ、同時に圧力を1ミリバール未満まで減少させた。260℃、1ミリバール未満にて約10分間保持し、温度を275℃まで上昇させ、275℃、1ミリバール未満にてもう5分間保持した後、反応器の内部圧力を大気圧まで上昇させた。そして所望の共重合体を約20gの収量にて単離した。この方法で調製した共重合体試料に関するデータは、下表2に与える。
【0180】
重合体実施例5−7.
ビスフェノールA−シロキサン(単量体実施例1から)及びビスフェノールAから誘導された構造単位を含有する重合体実施例5−7を、共重合体調製過程においてトリホスゲンを用いることによって調製した。使用した反応物の量は、下表2に示す。
【0181】
二つの滴下漏斗とメカニカルスターラーとを備え付け、窒素雰囲気下に維持した四口フラスコに、ビスフェノールA、ビスフェノールA−シロキサン、水(100ml)、ジクロロメタン(100ml)、及びテトラエチルベンジルアンモニウムクロリド(0.2グラム)を入れ、混合物を生成した。フラスコを、窒素雰囲気下、25℃の温度に維持した。混合物を700rpmの撹拌機速度で撹拌した。得られた混合物に、トリホスゲン(TP)をジクロロメタン溶液(50ml)として、滴下漏斗の一つから約15分〜20分間をかけて滴下する方式で添加した。得られた混合物のpHを、必要な量の水酸化ナトリウム水溶液(30重量/体積パーセントの水酸化ナトリウム水溶液)を第二の滴下漏斗から同時に添加することによって、約5〜6に維持した。得られた混合物をもう30分間撹拌した後、混合物のpHを、上述のように必要な量の水酸化ナトリウム水溶液を添加することによって、約10〜11まで上昇させた。得られた混合物に、トリエチルアミン(150μl)、ジクロロメタン(5ml)、及びp−クミルフェノール(318mg)を添加した。得られた混合物のpHを、上述のように必要な量の水酸化ナトリウム水溶液を添加することによって、約12まで高めた。混合物を約10分間撹拌した後、反応系をさらにジクロロメタン(15ml)及び水(50ml)により希釈し約15分間放置し、この間に混合物を水層と有機ジクロロメタン層とに分けた。有機ジクロロメタン層を分離し、そして希塩酸(1N)(3×100ml)により洗浄した。酸洗浄した有機ジクロロメタン層を、次に水(3×500ml)により洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機ジクロロメタン層を撹拌しながらメタノール(300ml)に添加し、得られた沈殿重合体を混合物から濾過し、濾過ケーキを風乾し、所望の生成物を30グラムの収量にて得た。この方法で調製した共重合体試料に関するデータは、下表2に与える。
【0182】
重合体実施例8−10.
ビスフェノールA−シロキサン(単量体実施例1から)及びビスフェノールAから誘導された構造単位を含有する重合体実施例8−10を、共重合体調製過程においてジフェニルカーボナートを用いることによって調製した。使用した反応物の量は、下表2に示す。
【0183】
長さ29cm、外径3.8cm、内径3.2cmを有するガラス製の円筒形重合反応器に、ビスフェノールA、ジフェニルカーボナート(DPC)、及びビスフェノールA−シロキサンを入れ、反応混合物を生成した。テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(2.6mg)及び水酸化ナトリウム(9.58mg)を含有する溶液(400μl)を、反応混合物に添加した。反応器を1ミリバールよりも低い真空にさらした後、窒素により置換した。反応器を真空にさらした後に窒素ガスにより置換するこのプロセスを三回繰り返した。最終的に、反応器の内部圧力を窒素によって大気圧まで上昇させた。次に反応器を150℃まで約15分間で加熱し、内容物が溶融状態にある混合物を得た。150℃、大気圧にて約5分間保持した後、撹拌を開始した。150℃にて15分間撹拌した後、大気圧下、温度を約5分間で220℃まで上昇させた。220℃、大気圧にてもう60分間保持した後、温度を230℃まで約5分で上昇させ、そして圧力を同時に170ミリバールまで減少させた。230℃、170ミリバールにて約30分間保持し、温度を240℃まで上昇させ、そして240℃、170ミリバールにてもう30分間保持した後、反応器の温度を260℃まで約5分で上昇させ、圧力を同時に20ミリバールまで減少させた。260℃、20ミリバールにて約10分間保持し、次に温度を270℃まで上昇させ、そして270℃、20ミリバールにてもう20分間保持した。その後、温度を280℃まで約5分で上昇させ、圧力を同時に1ミリバール未満まで減少させた。280℃、1ミリバール未満にて約60分間保持した後、反応器の内部圧力を大気圧まで上昇させ、所望の共重合体を約30gの収量にて単離した。この方法で調製した共重合体試料に関するデータは、下表2に与える。
【0184】
【表2】

【0185】
カーボネート源のDPC及びBMSCについて、特定範囲の分子量のための、全カーボネート対全フェノールの理論的なモル比の必要条件は、コモノマーの濃度分布により変化してはならない。しかしながら、ビスフェノールA−シロキサン単量体は、約15wt%の不純物(他の異性体及び反応副生物を含む)を含み、これは、HPLCのピーク積分値並びに提案された分子構造(表1を参照)に基づきモル%に変換する際に、単量体の実際の化学量論における多少の最小誤差の原因となり得る。比較的多い量(即ち、重合体実施例3及び4にみられるように、単量体の全添加量に基づき15.5モル%のビスフェノールA−シロキサン)を用いて調製された共重合体に関しては、不純物及び/又は異性体を説明することは、重合体実施例におけるビスフェノールA−シロキサン対ビスフェノールAの化学量論において、より高い精度を与えるために必要であり、これは、ビスフェノールA−シロキサンの全添加量が、単量体の全添加量に基づき3.3モル%の場合(重合体実施例1、2、及び5−10)に必要であったよりも、さらに必要である。
【0186】
また、トリホスゲンが媒介する界面重合に関しては、分子量の制御は、フェノールとトリホスゲン(即ち、重合体実施例5−7におけるカーボネート源)とのモル比ではなくて、p−クミルフェノール(PCP)の末端キャップ化剤の濃度によって支配されることが見出され、それ故、フェノールとトリホスゲンとのモル比は、これらの共重合について一定であることに留意されたい。
【0187】
熱可塑性組成物の調製及び評価
熱可塑性組成物(実施例1及び2並びに比較例1−3)を、重合体実施例2及び4のシリル化ポリカーボネートと、下表3に列挙する成分とを用いて調製した。
【0188】
【表3】

【0189】
実施例1及び2、並びに比較例1−4を、下表4に記載の通り調合し、Henschel(商標)タンブラーで5〜10分間混合した。次いで、この調合物をWayne単軸スクリュー押出機で押出し、ペレット化した。このペレットを3.2mmの厚さの分析用パーツに射出成形した。
【0190】
【表4】

【0191】
実施例1及び2、比較例1−3の表面接触角の測定
表面接触角の測定は、接触角測定装置(Kruss Drop Shape Analysis System DSA10)を使用し、流体試験プローブとしてMilli−Q(登録商標)精製水(Millipore Corp.製の精製装置を用いて精製)を配置し静滴を生成した。図1に示す静滴法を用い、水の一滴を、試験される表面又は基質上にそっと置き、表面と、三つの相(即ち、表面、水滴、及び空気)の接合点から出る三相の接線との間の接触角(θ)を、この装置によって自動的に測定した。測定に際しては、この装置は、15mlの水滴を試験片の表面上にそっと配置した。この装置は、記録したライブビデオ映像から、(水滴が試験片表面との間で形成する三相の接触線における)基質と水滴表面の接線との間の角度として、接触角を自動的に測定する。結果は、表5に示す通りである。
【0192】
【表5】

【0193】
表5に示す結果から、3.3モル%のビスフェノールシロキサン単量体(単量体実施例1)を有する実施例1における接触角は、平均接触角において、比較例1よりも大きく、そして接触角において、比較例2及び3について測定された値よりも小さいことが分かる。15.5モル%のビスフェノールシロキサン単量体と約20wt%のシロキサン含量を有する実施例2は、比較例1(ビスフェノールAポリカーボナート、105グレード)よりも著しく大きい平均水接触角を有し、そして、ビスフェノールAと、4.4wt%のシロキサン含量を有するPDMS/PC共重合体との混合物(比較例2)や、3.5wt%のシロキサン含量を有する同様の混合物(比較例3)よりも、大きな平均水接触角を有する。実施例2及び比較例1−3の結果を表すグラフを図2に示す。
【0194】
単数形の「a」、「an」、及び「the」は、別途明記のない限り、複数の指示対象をも包含する。別途定義のない場合、本書で用いる技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって通例理解される意味と同じ意味を有する。同一の成分又は性質について言及する全ての範囲の限界値は、包括的であり且つ独立して組み合せることができる(例えば、「約25wt%以下、又は、より詳細には約5wt%〜約20wt%」の範囲は、「約5wt%〜約25wt%」の範囲における限界値並びに全ての中間値を含む)。本書で用いる接尾辞の「s」は、「s」が修飾する用語の単数形と複数形との両方を含むように意図されており、それによって、その用語の少なくとも一つを含む(例えば、着色剤(colorant(s))は、少なくとも一つの着色剤を含む)。「任意の(optional)」又は「場合によっては(optionally)」は、その後に記載する事態又は状況が起きてもよいし、又は起きなくてもよく、そしてこの記載は、この事態が起きる場合と、この事態が起きない場合とを含むことを意味する。本書で用いるとき、「組合せ」は、配合物、混合物、合金、反応生成物などを含む。全ての参考文献は、参照することで本明細書に取り入れることとする。
【0195】
化合物は、標準的な命名法を使用して記載した。例えば、表示した基によって置換されてない位置は、表示した結合又は水素原子によってその原子価が満たされていると理解されよう。二つの文字又は記号の間にないダッシュ「−」は、置換基に関する接続点を表示する。例えば、−CHOは、カルボニル基の炭素を介して接続される。
【0196】
本書で用いるとき、用語「ヒドロカルビル(hydrocarbyl)」は、炭素と水素を含有し、場合により、少なくとも一つのヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、ハロゲン、又は硫黄)を有する置換基を指し;「アルキル」は、直鎖状又は分岐状の一価の炭化水素基を指し;「アルキレン」は、直鎖状又は分岐状の二価の炭化水素基を指し;「アルキリデン」は、一つの同じ炭素原子上に二つの原子価をもつ、直鎖状又は分岐状の二価の炭化水素基を指し;「アルケニル」は、炭素−炭素二重結合によって結合された少なくとも二つの炭素原子を有する直鎖状又は分岐状の一価の炭化水素基を指し;「シクロアルキル」は、少なくとも三つの炭素原子を有する、非芳香族で一価の単環状又は多環状の炭化水素基を指し;「シクロアルケニル」は、少なくとも一つの不飽和度をもち、少なくとも三つの炭素原子を有する非芳香族で環状の二価の炭化水素基を指し;「アリール」は、芳香族環に炭素だけを有する芳香族の一価の基を指し;「アリーレン」は、芳香族環に炭素だけを有する芳香族の二価の基を指し;「アルキルアリール」は、先に定義したアルキル基で置換されているアリール基を指し(4−メチルフェニルは、典型的なアルキルアリール基である);「アリールアルキル」は、先に定義したアリール基で置換されているアルキル基を指し(ベンジルは、典型的なアリールアルキル基である);「アシル」は、カルボニル炭素の橋(−C(=O)−)を介して接続された、表示した数の炭素原子をもつ、先に定義したアルキル基を指し;「アルコキシ」は、酸素の橋(−O−)を介して接続された、表示した数の炭素原子をもつ、先に定義したアルキル基を指し;そして、「アリールオキシ」は、酸素の橋(−O−)を介して接続された、表示した数の炭素原子をもつ、先に定義したアリール基を指す。
【0197】
典型的な実施形態を例示目的で説明してきたが、上記の記載は範囲を限定する意はない。従って、当業者であれば、発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、種々の改良、調節、及び代替を想到し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1a)のシリル化されたジヒドロキシ芳香族化合物。
【化1】


式中、G及びGは、各々独立して、C1〜12アルキル、−OSi(C1〜12アルキル)、C1〜12アリールアルキル、又は−OSi(C1〜12アリールアルキル)であり;Z及びZは、各々独立して、直鎖状又は分岐状のC2〜18アルキレン、C8〜18アリールアルキレン、又はC8〜18アルキルアリーレンであり、Xは、直接結合、ヘテロ原子含有基、又はC1〜18の有機基であり、r及びsは、各々独立して、1又は2である。
【請求項2】
シリル化されたジヒドロキシ芳香族化合物が、下記式(16)のビニル置換芳香族ジオールと、ヒドリドシランとの、金属触媒によるヒドロシリル化生成物である、請求項1記載のシリル化されたジヒドロキシ芳香族化合物。
【化2】


式中、Y及びYは、各々独立して、直鎖状又は分岐状のC0〜16アルキレン、C6〜16アリールアルキレン、又はC6〜16のアルキルアリーレンであり、Xは、C5〜16のシクロアルキレン、C5〜16のシクロアルキリデン、C1〜5のアルキレン、C1〜5のアルキリデン、C6〜13のアリーレン、C7〜12のアリールアルキレン、C7〜12のアリールアルキリデン、C7〜12のアルキルアリーレン、又はC7〜12のアリーレンアルキルであり、そしてr及びsは、各々独立して、1又は2である。
【請求項3】
ヒドリドシランが、下記式を有する、請求項2記載のシリル化されたジヒドロキシ芳香族化合物。
H−Si(G)
式中、各Gは、独立して、C1〜12アルキル、−OSi(C1〜12アルキル)、C1〜12アリールアルキル、又は−OSi(C1〜12アリールアルキル)である。
【請求項4】
ビニル置換芳香族ジオールが、下記式(17)を含み、ヒドリドシランが、式H−Si(CH)(OSi(CHを含む、請求項2記載のシリル化されたジヒドロキシ芳香族化合物。
【化3】


式中、Xは、直接結合又はイソプロピリデンである。
【請求項5】
金属触媒によるヒドロシリル化が、白金触媒、パラジウム触媒、又はロジウム触媒を用いて行われる、請求項2記載のシリル化されたジヒドロキシ芳香族化合物。
【請求項6】
下記式(6)の構造を有するシリル化されたジヒドロキシ芳香族化合物。
【化4】

【請求項7】
下記式(7)の構造を有するシリル化されたジヒドロキシ芳香族化合物。
【化5】






【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2010−513528(P2010−513528A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542946(P2009−542946)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/026211
【国際公開番号】WO2008/079358
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(508229301)モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ インコーポレイテッド (120)
【Fターム(参考)】