説明

シリル化ウレタン系水性組成物

【課題】耐水性、耐熱性が優れているとともに、接着性、密着性、皮膜物性、保存安定性を優れたレベルで発揮することができるシリル化ウレタン系水性組成物を得る。
【解決手段】シリル化ウレタン系水性組成物は、水分散性シリル化ウレタン系樹脂を含有しており、水分散性シリル化ウレタン系樹脂が、第2級アミノ基を少なくとも2つ含有するアルコキシシラン化合物により、少なくとも1つのアルコキシシリル基が分子中に側鎖として導入された構成を有している水分散性シリル化ウレタン系樹脂であることを特徴とする。第2級アミノ基を少なくとも2つ含有するアルコキシシラン化合物としては、第2級アミノ基を含有する基を有している第2級アミノ基が、2価の有機基を介して又は介さずにアルコキシシリル基の珪素原子に結合している形態の、第2級アミノ基を少なくとも2つ含有するアルコキシシラン化合物を好適に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリル化ウレタン系水性組成物に関し、より詳細には、側鎖にアルコキシシリル基が導入された構成を有している水分散性シリル化ウレタン系樹脂を含有するシリル化ウレタン系水性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルコキシシリル基等の加水分解性シリル基が導入されたシリル化ウレタン系樹脂を水性化して得られる一液架橋型ウレタン系エマルジョンに関しては、数多くの提案がなされており、これらの提案の中でも、末端に加水分解性シリル基を導入する手法に関する提案が多くなされている(特許文献1〜5参照)。このような一液架橋型ウレタン系エマルジョンにおいて、水分散後のシリル化ウレタン系樹脂の保存安定性を高めるために、加水分解性シリル基を保護する役割を果たすように加水分解性シリル基を修飾したものについては、特に実用性が高い。しかしながら、シリル化ウレタン系樹脂が、ウレタン系樹脂の末端に加水分解性シリル基が導入された構成を有している場合、1分子中に導入することが可能な加水分解性シリル基の導入量は、2個以下(1個又は2個)であるので、シリル化ウレタン系樹脂の硬化物の耐水性、耐溶剤性や耐熱性を向上させるために、シリル化ウレタン系水性組成物中に含まれる加水分解性シリル基の量を多くしようとすると、必然的に、ウレタン系樹脂の分子量(重量平均分子量など)が小さくなり、接着させる際の接着性の向上、コーティングさせる際の密着性(皮膜の密着性)の向上、皮膜の硬さ特性などの皮膜物性の向上を図ることが困難になる。
【0003】
また、末端ではなく側鎖に、加水分解性シリル基を導入する手法も提案されている(特許文献6参照)。このように、側鎖に加水分解性シリル基が導入されたシリル化ウレタン系樹脂では、加水分解性シリル基が、末端ではなく、側鎖に導入されているので、シリル化ウレタン系樹脂の分子量を低減させなくても、加水分解性シリル基の導入量を増大させることが可能であると思われる。また、このような側鎖に加水分解性シリル基が導入されたシリル化ウレタン系樹脂では、末端に、さらなる加水分解性シリル基を導入したり、加水分解性シリル基以外の官能基を導入したりすることも可能であり、シリル化ウレタン系樹脂に各種の機能を付与したり、シリル架橋との相乗効果による新たな機能を付与したりすることなども期待できる。
【0004】
【特許文献1】特開2004−300402号公報
【特許文献2】特開2004−43554号公報
【特許文献3】特開2003−105053号公報
【特許文献4】特開2003−96406号公報
【特許文献5】特開2003−48946号公報
【特許文献6】特開2004−217943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特開2004−217943号公報では、側鎖に加水分解性シリル基が導入されたシリル化ウレタン系樹脂を調製する際には、少なくとも1個の遊離イソシアネート基を有するシランカップリング剤(イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物)が用いられているので、ゲル化してしまい、アルコキシシリル基の導入量が多くなると、現実的に、側鎖に加水分解性シリル基が導入されたシリル化ウレタン系樹脂を調製することは、極めて困難になると思われる。なお、特開2004−217943号公報における実施例3で用いられている多官能のイソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物を用いた場合は、より一層にゲル化が生じてしまうので、現実的に、この多官能のイソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物を用いることは、さらに困難であると思われる。また、得られたシリル化ウレタン系樹脂は、水中における保存安定性が低く、しかもコストが高い。
【0006】
なお、シリル化ウレタン系樹脂に、加水分解性シリル基としてのアルコキシシリル基を導入する際には、アミノ基を有するアルコキシシラン化合物などが用いられている。このようなアミノ基を有するアルコキシシラン化合物として、1級アミノ基(無置換アミノ基)を少なくとも含むアミノ基を2つ有するアルコキシシラン化合物を用いた場合、1級アミノ基の反応性が高いため、ウレタンプレポリマーの合成時での添加が難しく、ウレタンプレポリマーの合成条件をコントロールすることにより、たとえ、添加できたとしても、その添加量はごく少量であり、シリル化ウレタン系樹脂の硬化物の耐水性や耐熱性を優れたレベルにまで向上させることは極めて困難である。
【0007】
そのため、従来における側鎖にアルコキシシリル基が導入されたシリル化ウレタン系樹脂では、実質的に、アルコキシシリル基の導入量に限界があり、水分散性シリル化ウレタン系樹脂を含有するシリル化ウレタン系水性組成物について、耐水性、耐溶剤性や耐熱性(特に、耐水性及び/又は耐熱性)をより一層向上させるとともに、接着性、密着性や、皮膜物性(皮膜の硬さ特性など)を向上させることは困難であった。特に、密着性を向上させることが求められていた。また、水中における保存安定性についても、優れたレベルで確保することが困難であった。
【0008】
従って、本発明の目的は、密着性を優れたレベルで発揮することができるシリル化ウレタン系水性組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、耐水性及び/又は耐熱性が優れているとともに、接着性、密着性、皮膜物性、または保存安定性を優れたレベルで発揮することができるシリル化ウレタン系水性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、水分散性シリル化ウレタン系樹脂を調製する際に、特定のアルコキシシラン化合物を用いると、アルコキシシリル基を、耐水性、耐熱性を十分に向上させることが可能な導入量で水分散性シリル化ウレタン系樹脂に導入することができるとともに、水分散性シリル化ウレタン系樹脂は、接着性、密着性、皮膜物性や、保存安定性を優れたレベルで発揮させることができることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。
【0010】
すなわち、本発明は、水分散性シリル化ウレタン系樹脂を含有するシリル化ウレタン系水性組成物であって、水分散性シリル化ウレタン系樹脂が、第2級アミノ基を少なくとも2つ含有するアルコキシシラン化合物により、少なくとも1つのアルコキシシリル基が分子中に側鎖として導入された構成を有している水分散性シリル化ウレタン系樹脂であることを特徴とするシリル化ウレタン系水性組成物である。
【0011】
前記第2級アミノ基を少なくとも2つ含有するアルコキシシラン化合物としては、第2級アミノ基を含有する基を有している第2級アミノ基が、2価の有機基を介して又は介さずにアルコキシシリル基の珪素原子に結合している形態の、第2級アミノ基を少なくとも2つ含有するアルコキシシラン化合物を好適に用いることができ、中でも、第1級アミノ基及び第2級アミノ基を、それぞれ、少なくとも1つ含有するアルコキシシラン化合物と、炭素−炭素二重結合を有する化合物又はイソシアネート基を有する化合物との反応により得られる、第2級アミノ基を少なくとも2つ含有するアルコキシシラン化合物が好適である。前記炭素−炭素二重結合を有する化合物としては、α,β−不飽和カルボン酸系化合物が好ましく、特に、アルキルエステル部位におけるアルキル基の炭素数が1〜20である不飽和脂肪族カルボン酸アルキルエステルを好適に用いることができる。
【0012】
また、少なくとも1つのアルコキシシリル基が分子中に側鎖として導入された構成を有している水分散性シリル化ウレタン系樹脂としては、第2級アミノ基を少なくとも2つ含有するアルコキシシラン化合物、アニオン性基非含有で且つ複数のイソシアネート反応性基を含有する化合物、アニオン性基及び複数のイソシアネート反応性基を含有する化合物、およびポリイソシアネート化合物を反応して得られる、アルコキシシリル基を側鎖に有する水分散性ウレタンプレポリマー(A)が好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のシリル化ウレタン系水性組成物によれば、前記構成を有しているので、密着性を優れたレベルで発揮することができる。また、耐水性及び/又は耐熱性が優れているとともに、接着性、密着性、皮膜物性、または保存安定性を優れたレベルで発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のシリル化ウレタン系水性組成物は、第2級アミノ基(モノ置換アミノ基)を少なくとも2つ含有するアルコキシシラン化合物(「第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物」と称する場合がある)により、少なくとも1つのアルコキシシリル基(モノアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、トリアルコキシシリル基など)が分子中に側鎖として導入された構成を有する水分散性シリル化ウレタン系樹脂を含有している。なお、水分散性シリル化ウレタン系樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
[第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物]
このように、前記水分散性シリル化ウレタン系樹脂では、第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物が、分子中に側鎖としてアルコキシシリル基を導入させる際に用いられている。該第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物は、分子中(分子内)に第2級アミノ基を少なくとも2つ含有しているアルコキシシラン化合物であり、少なくとも2つ(2個以上)の第2級アミノ基と、珪素原子(Si)に少なくとも1つ(1個、2個又は3個)のアルコキシ基が結合している形態のアルコキシシリル基(モノアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、トリアルコキシシリル基)とを有している。第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物において、少なくとも2つの第2級アミノ基は、それぞれ単独で、アルコキシシリル基の珪素原子に結合していてもよいが、第2級アミノ基を少なくとも1つ含有する基(「第2級アミノ含有基」と称する場合がある)を有している第2級アミノ基の形態で、アルコキシシリル基の珪素原子に結合していることが好ましい。この際、アルコキシシリル基の珪素原子に結合している第2級アミノ基は、2価の有機基を介してアルコキシシリル基の珪素原子に結合していてもよく、2価の有機基を介さずに、アルコキシシリル基の珪素原子に結合していてもよい。従って、第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物としては、第2級アミノ含有基を有する第2級アミノ基が、2価の有機基を介して又は介さずに、アルコキシシリル基の珪素原子に結合している形態の第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物が好適である。
【0016】
なお、第2級アミノ基は、モノ置換アミノ基であり、具体的には、水素原子が1つだけ窒素原子に結合している構成のアミノ基[すなわち、水素原子と、水素原子以外の基である置換基とが窒素原子に結合している構成のアミノ基]である。第2級アミノ基における窒素原子に結合している置換基としては、特に制限されず、各種の有機基の中から適宜選択することができる。例えば、第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物における少なくとも2つの第2級アミノ基のうち、少なくとも1つの第2級アミノ基に係る置換基は、前述のように、第2級アミノ基含有基であってもよい。
【0017】
また、第2級アミノ含有基は、第2級アミノ基を少なくとも1つ含有していれば、含有するアミノ基の数は特に制限されない。第2級アミノ含有基としては、第2級アミノ基を2つ以上含有している場合、第2級アミノ基が、2価の有機基を介して又は介さずに、他の第2級アミノ基に結合している形態を有していることが好ましい。
【0018】
さらに、第2級アミノ含有基を有する第2級アミノ基としては、第2級アミノ含有基における第2級アミノ基が、2価の有機基を介さずに、第2級アミノ基(第2級アミノ含有基ではない方の第2級アミノ基)に結合している形態を有していてもよいが、第2級アミノ含有基における第2級アミノ基が、2価の有機基を介して、第2級アミノ基に結合している形態を有していることが好ましい。
【0019】
従って、本発明では、第2級アミノ含有基を有する第2級アミノ基は、すべての第2級アミノ基が直鎖状に配列している形態を有していることが好ましく、特に、すべての第2級アミノ基が、それぞれ2価の有機基を介して他の第2級アミノ基に結合している形態で直鎖状に配列している形態を有していることが好ましい。もちろん、第2級アミノ含有基を有する第2級アミノ基は、第2級アミノ基を3つ以上有している場合、第2級アミノ基がすべて直鎖状に配列しておらず、部分的に直鎖状に配列している形態を有していてもよい。具体的には、第2級アミノ含有基を有する第2級アミノ基としては、例えば、2つの第2級アミノ基が直鎖状に配列している形態を有している場合、N−(モノ置換アミノ−2価の有機基)−アミノ基が好ましく、また、3つの第2級アミノ基が直鎖状に配列している形態を有している場合、N−[N´−(モノ置換アミノ−2価の有機基)−アミノ−2価の有機基]−アミノ基が好ましい。
【0020】
なお、2価の有機基としては、特に制限されず、公知の2価の有機基の中から適宜選択することができ、例えば、炭素原子、酸素原子、水素原子、窒素原子、硫黄原子などの各種原子により構成された2価の有機基等が挙げられる。より具体的には、2価の有機基としては、例えば、アルキレン基、アリレン基、アルキレン−アリレン基、アルキレン−アリレン−アルキレン基等の炭化水素基のみにより構成される2価の炭化水素基;アルキレン−オキシ−アルキレン基、アルキレン−カルボニル−オキシ−アルキレン基、アルキレン−オキシ−カルボニル−アルキレン基、アルキレン−ポリ(オキシアルキレン)基、アルキレン−イミノ基、アルキレン−イミノ−アルキレン基等の炭化水素基と他の基(オキシ基、カルボニル−オキシ基、オキシ−カルボニル基、カルボニル基、イミノ基、アミド結合含有基など)との種々の組み合わせにより構成される各種の2価の基などが挙げられる。2価の有機基としては、炭素数が1〜20程度の2価の有機基(2価の炭化水素基など)を好適に用いることができる。なお、このような2価の有機基において、アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基などが挙げられ、アリレン基としては、例えば、フェニレン基などが挙げられる。
【0021】
また、第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物における少なくとも2つの第2級アミノ基のうち、少なくとも1つの第2級アミノ基(例えば、複数の第2級アミノ基が直鎖状に配列している形態を有している場合、末端側の第2級アミノ基)は、第1級アミノ基に、該第1級アミノ基と反応することが可能な有機化合物(「第1級アミノ基反応性有機化合物」と称する場合がある)が反応することにより形成された第2級アミノ基であってもよい。すなわち、第2級アミノ基としては、第1級アミノ基に、第1級アミノ基反応性有機化合物が反応することにより第2級アミノ基が形成された際の該第2級アミノ基における窒素原子に置換している有機基(第1級アミノ基反応性有機化合物に対応した有機基)を、置換基として有していてもよい。このような第1級アミノ基反応性有機化合物としては、第1級アミノ基に対して反応性を有している有機化合物であれば特に制限されないが、炭素−炭素二重結合を有する化合物(「炭素−炭素二重結合含有化合物」と称する場合がある)、イソシアネート基を有する化合物(「イソシアネート基含有化合物」と称する場合がある)が好適である。従って、第2級アミノ基としては、置換基として、炭素−炭素二重結合含有化合物に対応した有機基、又はイソシアネート基含有化合物に対応した有機基を有していることが好ましい。
【0022】
従って、第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物としては、第2級アミノ含有基を有する第2級アミノ基を有しているとともに、末端側の第2級アミノ基が、炭素−炭素二重結合含有化合物に対応した有機基、又はイソシアネート基含有化合物に対応した有機基を、置換基として有している形態の第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物が好適である。
【0023】
なお、第1級アミノ基反応性有機化合物において、炭素−炭素二重結合含有化合物としては、ビニル基を有する有機化合物が好ましく、例えば、α,β−不飽和カルボン酸系化合物、アクリロニトリル系化合物、マレイミド系化合物などが挙げられる。また、イソシアネート基含有化合物としては、例えば、イソシアネート系化合物などが挙げられる。第1級アミノ基反応性有機化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
前記α,β−不飽和カルボン酸系化合物としては、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、クロトン酸エステル、イソクロトン酸エステル、2−ブテン酸エステル、3−メチル−2−ブテン酸エステル、2−ペンテン酸エステル、2−オクテン酸エステル等の他、桂皮酸エステル等の不飽和1価カルボン酸エステル;マレイン酸エステル(モノ又はジエステル)、フマル酸エステル(モノ又はジエステル)、イタコン酸エステル(モノ又はジエステル)等の不飽和2価カルボン酸のエステル(モノエステル、ジエステル)などが挙げられる。このような不飽和カルボン酸エステル(不飽和1価カルボン酸エステルや、不飽和2価カルボン酸のエステル)において、エステル部位としては、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s−ブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、ノニルエステル、イソノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル(ラウリルエステル)、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル(ステアリルエステル)、イソステアリルエステル、ノナデシルエステル、エイコシルエステル等の脂肪族炭化水素によるエステル(アルキルエステルなど);シクロヘキシルエステル、イソボルニルエステル、ボルニルエステル、ジシクロペンタジエニルエステル、ジシクロペンタニルエステル、ジシクロペンテニルエステル、トリシクロデカニルエステル等の脂環式炭化水素によるエステル(シクロアルキルエステルなど);フェニルエステル、ベンジルエステル等の芳香族炭化水素によるエステル(アリールエステルなど)などが挙げられる。なお、エステル部位を複数有する場合、それぞれのエステル部位は、同一であってもよく異なっていてもよい。
【0025】
本発明では、α,β−不飽和カルボン酸系化合物としては、不飽和脂肪族カルボン酸アルキルエステルが好適である。このような不飽和脂肪族カルボン酸アルキルエステルとしては、アルキルエステル部位におけるアルキル基の炭素数が1〜20である不飽和脂肪族カルボン酸アルキルエステル(「不飽和脂肪族カルボン酸C1-20アルキルエステル」と称する場合がある)を好適に用いることができ、なかでも、アルキルエステル部位におけるアルキル基の炭素数が1〜18である不飽和脂肪族カルボン酸アルキルエステルを好適に用いることができる。
【0026】
α,β−不飽和カルボン酸系化合物としては、前記例示の不飽和カルボン酸エステルの中でもアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル(以下、これらを「(メタ)アクリル酸エステル」と総称する場合がある)、マレイン酸ジエステルを好適に用いることができる。より具体的には、(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。また、マレイン酸ジエステルには、例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジヘキシル、マレイン酸ジヘプチル、マレイン酸ジオクチル、マレイン酸ジ(2−エチルヘキシル)、マレイン酸ジイソオクチル、マレイン酸ジノニル、マレイン酸ジイソノニル、マレイン酸ジデシル、マレイン酸ジイソデシル、マレイン酸ジウンデシル、マレイン酸ジドデシル、マレイン酸ジトリデシル、マレイン酸ジテトラデシル、マレイン酸ジヘキサデシル、マレイン酸ジオクタデシル、マレイン酸ジイソステアリル、マレイン酸ジノナデシル、マレイン酸ジエイコシル等のマレイン酸ジアルキルエステルなどが含まれる。
【0027】
また、前記アクリロニトリル系化合物としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。さらに、前記マレイミド系化合物としては、例えば、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、ヒドロキシフェニルモノマレイミド、N−ラウリルマレイミド、ジエチルフェニルモノマレイミド、N−(2−クロロフェニル)マレイミドなどが挙げられる。さらにまた、前記イソシアネート系化合物としては、例えば、イソシアン酸エチル、イソシアン酸n−ヘキシル、イソシアン酸n−デシル、イソシアン酸p−トルエンスルホニル、イソシアン酸ベンジル、イソシアン酸2−メトキシフェニルなどが挙げられる。
【0028】
第1級アミノ基反応性有機化合物としては、炭素−炭素二重結合含有化合物が好適であり、なかでもα,β−不飽和カルボン酸系化合物を好適に用いることができる。
【0029】
具体的には、第1級アミノ基に第1級アミノ基反応性有機化合物が反応することにより形成された第2級アミノ基としては、例えば、第1級アミノ基反応性有機化合物がα,β−不飽和カルボン酸系化合物である場合、下記式(1a)で表されるものなどが挙げられ、第1級アミノ基反応性有機化合物がマレイミド系化合物である場合、下記式(1b)で表されるものなどが挙げられ、第1級アミノ基反応性有機化合物がアクリロニトリル系化合物である場合、下記式(1c)で表されるものなどが挙げられ、第1級アミノ基反応性有機化合物がイソシアネート系化合物である場合、下記式(1d)で表されるものなどが挙げられる。
【化1】

[式(1a)〜(1d)において、R1aは水素原子、炭化水素基又は「C(=O)Z」で示される基である。R1bは水素原子又は炭化水素基である。Zは炭化水素−オキシ基を示す。R1cは水素原子又は有機基である。R1dは有機基である。]
【0030】
前記式(1a)〜(1d)において、R1aに係る炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルアルキル基、シクロアルキル−アルキル基などが挙げられる。また、R1bに係る炭化水素基としては、R1aに係る炭化水素基と同様に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルアルキル基などが挙げられる。これらの炭化水素基において、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、イソステアリル基、ノナデシル基、エイコシル基等の炭素数1〜20程度のアルキル基が挙げられる。また、シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの環を構成する炭素数が5〜10程度のシクロアルキル基が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。アルアルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等のフェニル−C1-6アルキル基などが挙げられ、シクロアルキル−アルキル基としては、例えば、シクロヘキシル−メチル基、シクロヘキシル−エチル基等のシクロアルキル−C1-6アルキル基などが挙げられる。なお、シクロアルキル基やアリール基は、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アシル基等の置換基を有していてもよい。本発明では、R1bに係る炭化水素基としては、メチル基が好適である。
【0031】
Zとしての炭化水素−オキシ基としては、例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルアルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基などが挙げられる。炭化水素−オキシ基において、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブチルオキシ基、s−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、イソノニルオキシ基、デシルオキシ基、イソデシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、ヘプタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、イソステアリルオキシ基、ノナデシルオキシ基、エイコシルオキシ基等のC1-20アルキル−オキシ基などが挙げられる。また、アリールオキシ基としては、例えば、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基などが挙げられ、シクロアルキルオキシ基としては、例えば、シクロヘキシルオキシ基が挙げられ、アルアルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基などが挙げられ、シクロアルキルオキシ基としては、例えば、シクロヘキシルオキシ基などが挙げられる。Zとしての炭化水素−オキシ基としては、アルコキシ基が好適である。なお、R1aが「C(=O)Z」で示される基である場合、(1a)で示される第2級アミノ基における2つの「C(=O)Z」に係るZは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0032】
1cに係る有機基としては、例えば、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルアルキル基等の炭化水素基のみにより構成される1価の炭化水素基;アルキル−オキシ−アルキル基、アルキル−カルボニル−オキシ−アルキル基、アルキル−オキシ−カルボニル−アルキル基等の炭化水素基と他の基(オキシ基、カルボニル−オキシ基、オキシ−カルボニル基、カルボニル基など)との種々の組み合わせにより構成される各種の1価の基などが挙げられる。なお、R1cに係る炭化水素基において、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基としては、前記でR1aに係る炭化水素基として例示のアルキル基、アリール基、シクロアルキル基などが挙げられる。なお、アリール基やシクロアルキル基は、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アシル基等の置換基を有していてもよい。
【0033】
1dに係る有機基としては、前記R1cに係る有機基と同様に、例えば、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルアルキル基等の炭化水素基のみにより構成される1価の炭化水素基;アルキル−オキシ−アルキル基、アルキル−カルボニル−オキシ−アルキル基、アルキル−オキシ−カルボニル−アルキル基等の炭化水素基と他の基(オキシ基、カルボニル−オキシ基、オキシ−カルボニル基、カルボニル基など)との種々の組み合わせにより構成される各種の1価の基などが挙げられる。なお、R1dに係る炭化水素基において、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基としては、前記でR1aに係る炭化水素基として例示のアルキル基、アリール基、シクロアルキル基などが挙げられる。なお、アリール基やシクロアルキル基は、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アシル基等の置換基を有していてもよい。
【0034】
また、第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物において、アルコキシシリル基は、通常、1〜3個のアルコキシ基(好ましくは2又は3個のアルコキシ基)を有している。アルコキシシリル基がアルコキシ基を2又は3個有している場合、2又は3個のアルコキシ基は、すべて同一のアルコキシ基であってもよく、部分的に同一の又はすべて異なるアルコキシ基であってもよい。アルコキシシリル基におけるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブチルオキシ基、s−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基などのC1-4アルコキシ基を好適に用いることができる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基がさらに好ましく、特にメトキシ基、エトキシ基が好適である。
【0035】
従って、アルコキシシリル基としては、モノアルコキシシリル基である場合、例えば、モノメトキシシリル基、モノエトキシシリル基、モノプロポキシシリル基などが挙げられ、また、ジアルコキシシリル基である場合、例えば、ジメトキシシリル基、ジエトキシシリル基、ジプロポキシシリル基などが挙げられ、さらに、トリアルコキシシリル基である場合、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリプロポキシシリル基などが挙げられる。
【0036】
より具体的には、第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物としては、例えば、第2級アミノ基を2つ有している場合、下記式(2)で表される第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物を好適に用いることができる。
【化2】

[式(2)において、R1、R2は、同一又は異なって、アルキル基を示す。R3はアルキレン基又はアリレン基を示し、R4はアルキレン基又はアリレン基を示す。なお、R3、R4は、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、R5は水素原子又は「−C(=O)OR7」で示される基である。R6は水素原子又はメチル基である。R7は炭化水素基である。nは1〜3の整数を示す。]
【0037】
前記式(2)において、R1のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等の炭素数1〜20程度のアルキル基(C1-20アルキル基)を好適に用いることができる。R1のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4程度のアルキル基が好適である。
【0038】
また、R2のアルキル基としては、R1のアルキル基と同様のアルキル基を用いることができるが、メチル基やエチル基が好ましい。
【0039】
なお、R1と、R2とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0040】
さらに、R3のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基等の炭素数1〜10のアルキレン基などが挙げられ、炭素数1〜3のアルキレン基が好適である。R3のアリレン基としては、例えば、フェニレン基などが挙げられる。また、R4のアルキレン基としては、前記R3のアルキレン基と同様に、炭素数1〜10のアルキレン基を用いることができ、炭素数1〜3のアルキレン基が好適である。R4のアリレン基としては、前記R3のアリレン基と同様に、フェニレン基などが挙げられる。R3やR4において、アルキレン基は側鎖を有していてもよく、アリレン基は置換基を有していてもよい。R3と、R4とは、ともに、アルキレン基であることが好ましい。なお、R3と、R4とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0041】
さらにまた、R7の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルアルキル基(アラルキル基)などが挙げられる。R7の炭化水素基としては、アルキル基が好適である。R7のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、イソステアリル基、ノナデシル基、エイコシル基等の炭素数1〜20程度のアルキル基(C1-20アルキル基)などが挙げられる。R7のシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。R7のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。R7のアルアルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基などが挙げられる。
【0042】
なお、R5が「−C(=O)OR7」である場合、R5に係る「−C(=O)OR7」と、R6が結合している炭素原子に直接結合している「−C(=O)OR7」とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、R5が「−C(=O)OR7」である場合、R6は水素原子であることが好ましい。
【0043】
従って、前記式(2)で表される第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物としては、例えば、N−{N´−[2−(アルコキシカルボニル)−エチル]−アミノアルキル}−アミノアルキル−トリアルコキシシラン、N−{N´−[2−(アルコキシカルボニル)−2−メチル−エチル]−アミノアルキル}−アミノアルキル−トリアルコキシシラン、N−{N´−[1,2−ジ(アルコキシカルボニル)−エチル]−アミノアルキル}−アミノアルキル−トリアルコキシシラン等のN−(モノ置換アミノアルキル)−アミノアルキル−トリアルコキシシラン;N−{N´−[2−(アルコキシカルボニル)−エチル]−アミノアルキル}−アミノアルキル−ジアルコキシモノアルキルシラン、N−{N´−[2−(アルコキシカルボニル)−2−メチル−エチル]−アミノアルキル}−アミノアルキル−ジアルコキシモノアルキルシラン、N−{N´−[1,2−ジ(アルコキシカルボニル)−エチル]−アミノアルキル}−アミノアルキル−ジアルコキシモノアルキルシラン等のN−(モノ置換アミノアルキル)−アミノアルキル−ジアルコキシモノアルキルシラン;N−{N´−[2−(アルコキシカルボニル)−エチル]−アミノアルキル}−アミノアルキル−モノアルコキシジアルキルシラン、N−{N´−[2−(アルコキシカルボニル)−2−メチル−エチル]−アミノアルキル}−アミノアルキル−モノアルコキシジアルキルシラン、N−{N´−[1,2−ジ(アルコキシカルボニル)−エチル]−アミノアルキル}−アミノアルキル−モノアルコキシジアルキルシラン等のN−(モノ置換アミノアルキル)−アミノアルキル−モノアルコキシジアルキルシランなどが挙げられる。
【0044】
より具体的には、N−(モノ置換アミノアルキル)−アミノアルキル−トリアルコキシシランにおいて、N−{N´−[2−(アルコキシカルボニル)−エチル]−アミノアルキル}−アミノアルキル−トリアルコキシシランとしては、例えば、N−{N´−[2−(アルコキシカルボニル)−エチル]−β−アミノ−エチル}−γ−アミノプロピル−トリメトキシシラン、N−{N´−[2−(アルコキシカルボニル)−エチル]−β−アミノ−エチル}−γ−アミノプロピル−トリエトキシシラン、N−{N´−[2−(アルコキシカルボニル)−エチル]−β−アミノ−エチル}−γ−アミノプロピル−トリプロポキシシラン、N−{N´−[2−(アルコキシカルボニル)−エチル]−β−アミノ−エチル}−γ−アミノプロピル−トリイソプロポキシシラン、N−{N´−[2−(アルコキシカルボニル)−エチル]−β−アミノ−エチル}−γ−アミノプロピル−トリブトキシシランなどが挙げられる。
【0045】
また、N−{N´−[2−(アルコキシカルボニル)−2−メチル−エチル]−アミノアルキル}−アミノアルキル−トリアルコキシシランとしては、前記N−{N´−[2−(アルコキシカルボニル)−エチル]−アミノアルキル}−アミノアルキル−トリアルコキシシランとして例示されているものに対応したものなどが挙げられる。
【0046】
さらに、N−{N´−[1,2−ジ(アルコキシカルボニル)−エチル]−アミノアルキル}−アミノアルキル−トリアルコキシシランとしては、例えば、N−{N´−[1,2−ジ(アルコキシカルボニル)−エチル]−β−アミノ−エチル}−γ−アミノプロピル−トリメトキシシラン、N−{N´−[1,2−ジ(アルコキシカルボニル)−エチル]−β−アミノ−エチル}−γ−アミノプロピル−トリエトキシシラン、N−{N´−[1,2−ジ(アルコキシカルボニル)−エチル]−β−アミノ−エチル}−γ−アミノプロピル−トリプロポキシシラン、N−{N´−[1,2−ジ(アルコキシカルボニル)−エチル]−β−アミノ−エチル}−γ−アミノプロピル−トリイソプロポキシシラン、N−{N´−[1,2−ジ(アルコキシカルボニル)−エチル]−β−アミノ−エチル}−γ−アミノプロピル−トリブトキシシランなどが挙げられる。
【0047】
なお、N−{N´−[2−(アルコキシカルボニル)−エチル]−アミノアルキル}−アミノアルキル−トリアルコキシシランにおける「2−(アルコキシカルボニル)−エチル」基中の「アルコキシカルボニル」基、N−{N´−[2−(アルコキシカルボニル)−2−メチル−エチル]−アミノアルキル}−アミノアルキル−トリアルコキシシランにおける「2−(アルコキシカルボニル)−2−メチル−エチル」基中の「アルコキシカルボニル」基や、N−{N´−[1,2−ジ(アルコキシカルボニル)−エチル]−アミノアルキル}−アミノアルキル−トリアルコキシシランにおける「1,2−ジ(アルコキシカルボニル)−エチル」基中の「アルコキシカルボニル」基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、s−ブチルオキシカルボニル基、t−ブチルオキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、イソオクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基、ノニルオキシカルボニル基、イソノニルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、イソデシルオキシカルボニル基、ウンデシルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基、トリデシルオキシカルボニル基、テトラデシルオキシカルボニル基、ペンタデシルオキシカルボニル基、ヘキサデシルオキシカルボニル基、ヘプタデシルオキシカルボニル基、オクタデシルオキシカルボニル基、イソステアリルオキシカルボニル基、ノナデシルオキシカルボニル基、エイコシルオキシカルボニル基などのC1-20アルキル−オキシ−カルボニル基などが挙げられる。
【0048】
N−(モノ置換アミノアルキル)−アミノアルキル−ジアルコキシモノアルキルシランにおいて、N−{N´−[2−(アルコキシカルボニル)−エチル]−アミノアルキル}−アミノアルキル−ジアルコキシモノアルキルシランとしては、例えば、N−{N´−[2−(アルコキシカルボニル)−エチル]−β−アミノ−エチル}−γ−アミノプロピル−メチルジメトキシシラン、N−{N´−[2−(アルコキシカルボニル)−エチル]−β−アミノ−エチル}−γ−アミノプロピル−メチルジエトキシシラン、N−{N´−[2−(アルコキシカルボニル)−エチル]−β−アミノ−エチル}−γ−アミノプロピル−エチルジメトキシシラン、N−{N´−[2−(アルコキシカルボニル)−エチル]−β−アミノ−エチル}−γ−アミノプロピル−エチルジエトキシシランなどが挙げられる。
【0049】
また、N−{N´−[2−(アルコキシカルボニル)−2−メチル−エチル]−アミノアルキル}−アミノアルキル−ジアルコキシモノアルキルシランとしては、前記N−{N´−[2−(アルコキシカルボニル)−エチル]−アミノアルキル}−アミノアルキル−ジアルコキシモノアルキルシランとして例示されているものに対応したものなどが挙げられる。
【0050】
さらに、N−{N´−[1,2−ジ(アルコキシカルボニル)−エチル]−アミノアルキル}−アミノアルキル−ジアルコキシモノアルキルシランとしては、例えば、N−{N´−[1,2−ジ(アルコキシカルボニル)−エチル]−β−アミノ−エチル}−γ−アミノプロピル−メチルジメトキシシラン、N−{N´−[1,2−ジ(アルコキシカルボニル)−エチル]−β−アミノ−エチル}−γ−アミノプロピル−メチルジエトキシシラン、N−{N´−[1,2−ジ(アルコキシカルボニル)−エチル]−β−アミノ−エチル}−γ−アミノプロピル−エチルジメトキシシラン、N−{N´−[1,2−ジ(アルコキシカルボニル)−エチル]−β−アミノ−エチル}−γ−アミノプロピル−エチルジエトキシシランなどが挙げられる。
【0051】
なお、N−{N´−[2−(アルコキシカルボニル)−エチル]−アミノアルキル}−アミノアルキル−ジアルコキシモノアルキルシランにおける「2−(アルコキシカルボニル)−エチル」基中の「アルコキシカルボニル」基、N−{N´−[2−(アルコキシカルボニル)−2−メチル−エチル]−アミノアルキル}−アミノアルキル−ジアルコキシモノアルキルシランにおける「2−(アルコキシカルボニル)−2−メチル−エチル」基中の「アルコキシカルボニル」基や、N−{N´−[1,2−ジ(アルコキシカルボニル)−エチル]−アミノアルキル}−アミノアルキル−ジアルコキシモノアルキルシランにおける「1,2−ジ(アルコキシカルボニル)−エチル」基中の「アルコキシカルボニル」基としては、N−(モノ置換アミノアルキル)−アミノアルキル−トリアルコキシシランの場合と同様であり、C1-20アルキル−オキシ−カルボニル基などが挙げられる。
【0052】
N−(モノ置換アミノアルキル)−アミノアルキル−モノアルコキシジアルキルシランにおいて、N−{N´−[2−(アルコキシカルボニル)−エチル]−アミノアルキル}−アミノアルキル−モノアルコキシジアルキルシラン、N−{N´−[2−(アルコキシカルボニル)−2−メチル−エチル]−アミノアルキル}−アミノアルキル−モノアルコキシジアルキルシランや、N−{N´−[1,2−ジ(アルコキシカルボニル)−エチル]−アミノアルキル}−アミノアルキル−モノアルコキシジアルキルシランとしては、前記N−(モノ置換アミノアルキル)−アミノアルキル−ジアルコキシモノアルキルシランの場合に対応したものなどを例示することができる。
【0053】
なお、本発明において、第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物は、第2級アミノ基を2つ以上有しているので、鎖延長剤としての機能も発揮することができる。
【0054】
[水分散性シリル化ウレタン系樹脂]
シリル化ウレタン系水性組成物中に含まれている水分散性シリル化ウレタン系樹脂は、第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物により、少なくとも1つのアルコキシシリル基が分子中に側鎖として導入された構成を有しているので、分子中に、アルコキシシリル基が、1個又は2個以上導入されていてもよく、特に3個以上で導入されていてもよい。すなわち、シリル化ウレタン系水性組成物中に含まれるアルコキシシリル基の導入量が、どのような導入量であっても、水分散性シリル化ウレタン系樹脂の分子量(重量平均分子量)とは関係なく(具体的には、水分散性シリル化ウレタン系樹脂の分子量を低減させなくても)、分子中にアルコキシシリル基が適宜な導入量で導入された水分散性シリル化ウレタン系樹脂を調製することができる。
【0055】
水分散性シリル化ウレタン系樹脂において、分子内に側鎖として導入されたアルコキシシリル基の量としては、特に制限されず、前述のように、水分散性シリル化ウレタン系樹脂の分子量(重量平均分子量)とは関係なく適宜設定することができ、要求される各種特性(耐水性、耐溶剤性、耐熱性など)などに応じて適宜選択することができる。具体的には、水分散性シリル化ウレタン系樹脂における分子内に側鎖として導入されたアルコキシシリル基の量としては、例えば、1分子中に1個以上であればよく、好ましくは1分子中に2個以上(さらに好ましくは1分子中に3個以上)である。水分散性シリル化ウレタン系樹脂における分子内に側鎖として導入されたアルコキシシリル基の量の上限としては、特に制限されないが、例えば、1分子中に200個以下であってもよく、好ましくは1分子中に100個以下(さらに好ましくは1分子中に50個以下)である。なお、水分散性シリル化ウレタン系樹脂において、分子内に側鎖として導入されたアルコキシシリル基の量の値は、通常、平均値、計算値または理論値となる。
【0056】
また、水分散性シリル化ウレタン系樹脂の重量平均分子量としては、特に制限されず、水分散性シリル化ウレタン系樹脂における分子内に側鎖として導入されたアルコキシシリル基の量とは関係なく適宜設定することができ、水分散性シリル化ウレタン系樹脂の皮膜物性、硬さ、粘度などに応じて適宜選択することができる。具体的には、水分散性シリル化ウレタン系樹脂の重量平均分子量としては、例えば、2000〜100万(好ましくは3000〜50万、さらに好ましくは5000〜20万)の範囲から適宜選択することができる。なお、水分散性シリル化ウレタン系樹脂の重量平均分子量は、水分散前のプレポリマー中のイソシアネート基の割合(質量%)を元に、水中でイソシアネート基をアミン架橋させて(もちろん、この際、水との架橋も考慮してもよい)、プレポリマーを何倍に鎖延長させたかを計算した値である。
【0057】
このように、本発明では、水分散性シリル化ウレタン系樹脂の分子量(重量平均分子量など)と、水分散性シリル化ウレタン系樹脂における分子内に側鎖として導入されたアルコキシシリル基の量(すなわち、シリル化ウレタン系水性組成物中に含まれるアルコキシシリル基の導入量)とを、それぞれ独立して(別々に)、コントロールすることが可能である。従って、水分散性シリル化ウレタン系樹脂の分子量を増減させずに、一定にした状態であっても、シリル化ウレタン系水性組成物中に含まれるアルコキシシリル基の量を増減させる(特に、増加させる)ことができる。また、シリル化ウレタン系水性組成物中に含まれるアルコキシシリル基の量を増減させずに、一定にした状態であっても、水分散性シリル化ウレタン系樹脂の分子量を増減させる(特に、増加させる)ことができる。
【0058】
さらに、アルコキシシリル基は、水分散性シリル化ウレタン系樹脂の側鎖に導入されているので、水分散性シリル化ウレタン系樹脂の末端には、アルコキシシリル基以外の各種官能基が導入されていてもよい。すなわち、本発明では、側鎖にアルコキシシリル基が導入されている水分散性シリル化ウレタン系樹脂は、末端が限定されず、目的とする特性(接着性、密着性、皮膜物性、保存安定性、速硬化性、架橋性、顔料分散性など)を発揮することが可能な又は発揮させるための官能基を、主鎖の末端に有していてもよい。従って、側鎖にアルコキシシリル基が導入されている水分散性シリル化ウレタン系樹脂の末端を、目的とする特性が付与されるように、コントロールすることができ、末端を選択または規定する際の自由度が高い。具体的には、例えば、水分散性シリル化ウレタン系樹脂は、末端を、通常のウレタン系樹脂(アルコキシシリル基などの特別な官能基を有していないウレタン系樹脂)における末端の基と同様の基(イソシアネート基など)とすることにより、通常のウレタン系樹脂と同様の接着性または密着性も発揮することができる。また、例えば、水分散性シリル化ウレタン系樹脂は、末端を、反応性を有している官能基(イソシアネート基など)とし、鎖延長剤を用いて鎖延長させることにより、分子量(重量平均分子量など)をより一層増加させることもでき、皮膜の硬さ特性(特に、高温での皮膜の硬さ特性)などの皮膜物性をより一層向上させることも可能である。さらに、鎖延長剤としてアミン系鎖延長剤を用いることにより、水分散性シリル化ウレタン系樹脂の速硬化性を高めることもできる。しかも、水分散性シリル化ウレタン系樹脂は、保存安定性も優れている。
【0059】
このように、本発明では、側鎖にアルコキシシリル基が導入されている水分散性シリル化ウレタン系樹脂は、側鎖のアルコキシシリル基による架橋や、末端の官能基による架橋により、架橋反応を生じさせることができ、しかも、それぞれの架橋を、独立して(別々に)コントロールすることも可能である。従って、従来のように、末端にアルコキシシリル基を有している水分散性シリル化ウレタン系樹脂では、鎖延長剤による架橋を行う場合は、末端のアルコキシシリル基の量を減少させて、イソシアネート基を残存させなければならないという制限が生じるが、本発明における側鎖にアルコキシシリル基が導入されている水分散性シリル化ウレタン系樹脂では、アルコキシシリル基が側鎖に導入されているので、このような制限が生じない。
【0060】
従って、水分散性シリル化ウレタン系樹脂は、密着性を優れたレベルで発揮することができる。特に、水分散性シリル化ウレタン系樹脂は、コロナ放電処理等の表面処理が施された面に対しても、優れた密着性を発揮することができる。
【0061】
また、水分散性シリル化ウレタン系樹脂は、耐水性及び/又は耐熱性が優れているとともに、接着性、密着性、皮膜物性、または保存安定性を優れたレベルで発揮することができる。すなわち、水分散性シリル化ウレタン系樹脂は、接着性、密着性、皮膜物性、または保存安定性を向上させることが可能であるとともに、優れた耐水性及び/又は耐熱性を発揮することができる。
【0062】
なお、水分散性シリル化ウレタン系樹脂は、水中では、側鎖のアルコキシシリル基が部分的に又は全体的に水により加水分解されて、シラノール基及び/又はシロキサン結合となっており、このシラノール基が縮合反応を起こすことにより、硬化(架橋)が生じて接着性を発揮することができる。この硬化(架橋)反応は、水の減少により進行しており、しかも、水がある程度存在していても進行することができる。そのため、第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物により、少なくとも1つのアルコキシシリル基が分子中に側鎖として導入された構成を有する水分散性シリル化ウレタン系樹脂は、水を保持したままでも、凝集力を発現することができる。
【0063】
本発明では、水分散性シリル化ウレタン系樹脂は、ウレタン系樹脂の観点から、ウレタン結合部位を少なくとも有していることが重要である。そのため、水分散性シリル化ウレタン系樹脂では、モノマー成分として、ポリイソシアネート化合物と、イソシアネート系化合物に対して反応性を有しているイソシアネート反応性化合物とが少なくとも用いられている。
【0064】
また、水分散性シリル化ウレタン系樹脂は、水分散性の観点から、水溶性又は水分散性を有していることが重要である。なお、水分散性シリル化ウレタン系樹脂は、分子中に親水性基(例えば、カルボキシル基又はその塩、スルホ基又はその塩や、ヒドロキシル基、アミノ基又はその塩、エーテル結合を含有する基など)が導入されていることにより、水溶性又は水分散性を発揮することができる。そのため、水分散性シリル化ウレタン系樹脂では、モノマー成分として、例えば、カルボキシル基を含有するジオール成分等のアニオン性基を有するイソシアネート反応性化合物が用いられていてもよい。
【0065】
従って、水分散性シリル化ウレタン系樹脂としては、ウレタン結合部位を少なくとも有しているとともに、分子中にアニオン性基(カルボキシル基など)を有しており、且つアルコキシシリル基を側鎖に有している水分散性シリル化ウレタン系樹脂などが挙げられる。このようなアニオン性基を有している水分散性シリル化ウレタン系樹脂では、モノマー成分として、第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物[「第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物(A1)」と称する場合がある]とともに、アニオン性基非含有で且つ複数のイソシアネート反応性基を含有する化合物[「アニオン性基非含有イソシアネート反応性化合物(A2)」と称する場合がある]、アニオン性基及び複数のイソシアネート反応性基を含有する化合物[「アニオン性基含有イソシアネート反応性化合物(A3)」と称する場合がある]およびポリイソシアネート化合物[「ポリイソシアネート化合物(A4)」と称する場合がある]とが用いられていることが好ましい。すなわち、水分散性シリル化ウレタン系樹脂としては、第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物(A1)と、アニオン性基非含有イソシアネート反応性化合物(A2)と、アニオン性基含有イソシアネート反応性化合物(A3)と、ポリイソシアネート化合物(A4)とを反応して得られる、アルコキシシリル基を側鎖に有する水分散性ウレタンプレポリマー(A)[「アルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマー(A)」と称する場合がある]を好適に用いることができる。
【0066】
本発明では、水分散性シリル化ウレタン系樹脂では、さらに、鎖延長剤[「鎖延長剤(A5)」と称する場合がある]が用いられていてもよい。鎖延長剤(A5)(特に、アミン系鎖延長剤)を用いることにより、皮膜物性を向上させることができる。
【0067】
[アニオン性基非含有イソシアネート反応性化合物(A2)]
アニオン性基非含有イソシアネート反応性化合物(A2)(アニオン性基非含有で且つ複数のイソシアネート反応性基を含有する化合物)としては、分子内にアニオン性基を有しておらず、かつ分子内に少なくとも2つのイソシアネート反応性基を有する化合物であれば特に制限されない。アニオン性基非含有イソシアネート反応性化合物(A2)は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。アニオン性基非含有イソシアネート反応性化合物(A2)において、イソシアネート反応性基としては、イソシアネート基に対する反応性を有する基であれば特に制限されず、例えば、ヒドロキシル基、第1級アミノ基(無置換アミノ基)、第2級アミノ基(モノ置換アミノ基)、メルカプト基などが挙げられる。なお、イソシアネート反応性基は、1種のみであってもよく、2種以上が組み合わせられていてもよい。本発明では、該イソシアネート反応性基としては、ヒドロキシル基、第1級アミノ基又は第2級アミノ基が好ましく、特にヒドロキシル基が好適である。従って、アニオン性基非含有イソシアネート反応性化合物(A2)としては、例えば、アニオン性基非含有ポリオール化合物、アニオン性基非含有ポリアミン化合物、アニオン性基非含有ポリチオール化合物(好ましくは、アニオン性基非含有ポリオール化合物やアニオン性基非含有ポリアミン化合物、特にアニオン性基非含有ポリオール化合物)などを用いることができる。
【0068】
アニオン性基非含有イソシアネート反応性化合物(A2)において、アニオン性基非含有ポリオール化合物としては、多価アルコール、ポリエーテルポリオール、ポリビニルエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリアクリルポリオール、ヒマシ油などが挙げられる。
【0069】
アニオン性基非含有ポリオール化合物において、多価アルコールには、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−テトラメチレンジオール(1,4−ブタンジオール)、1,3−テトラメチレンジオール、2−メチル−1,3−トリメチレンジオール、1,5−ペンタメチレンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレンジオール、3−メチル−1,5−ペンタメチレンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタメチレンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、シクロヘキサンジオール類(1,4−シクロヘキサンジオールなど)、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)、糖アルコール類(キシリトールやソルビトールなど)などが含まれる。
【0070】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリアルキレングリコールの他、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体などのモノマー成分として複数のアルキレンオキシドを含む(アルキレンオキサイド−他のアルキレンオキサイド)共重合体などが挙げられる。
【0071】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多価アルコールと多価カルボン酸との縮合重合物;環状エステル(ラクトン)の開環重合物;多価アルコール、多価カルボン酸及び環状エステルの3種類の成分による反応物などを用いることができる。多価アルコールと多価カルボン酸との縮合重合物において、多価アルコールとしては、前記例示の多価アルコールを用いることができる。一方、多価カルボン酸としては、例えば、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、トリメリット酸等の芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。また、環状エステルの開環重合物において、環状エステルとしては、例えば、プロピオラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなどが挙げられる。3種類の成分による反応物において、多価アルコール、多価カルボン酸、環状エステルとしては、前記例示のものなどを用いることができる。
【0072】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、多価アルコールとホスゲンとの反応物;環状炭酸エステル(アルキレンカーボネートなど)の開環重合物などが挙げられる。具体的には、多価アルコールとホスゲンとの反応物において、多価アルコールとしては、前記例示の多価アルコールを用いることができる。また、環状炭酸エステルの開環重合物において、アルキレンカーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、ヘキサメチレンカーボネートなどが挙げられる。なお、ポリカーボネートポリオールは、分子内にカーボネート結合を有し、末端がヒドロキシル基である化合物であればよく、カーボネート結合とともにエステル結合を有していてもよい。
【0073】
ポリオレフィンポリオールは、オレフィンを重合体又は共重合体の骨格(又は主鎖)の成分とし且つ分子内に(特に末端に)ヒドロキシル基を少なくとも2つ有するポリオールである。前記オレフィンとしては、末端に炭素−炭素二重結合を有するオレフィン(例えば、エチレン、プロピレン等のα−オレフィンなど)であってもよく、また末端以外の部位に炭素−炭素二重結合を有するオレフィン(例えば、イソブテンなど)であってもよく、さらにはジエン(例えば、ブタジエン、イソプレンなど)であってもよい。
【0074】
ポリアクリルポリオールは、(メタ)アクリレートを重合体又は共重合体の骨格(又は主鎖)の成分とし且つ分子内に(特に末端に)ヒドロキシル基を少なくとも2つ有するポリオールである。(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル[例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシルなどの(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルなど]が好適に用いられる。
【0075】
なお、ポリオレフィンポリオールやポリアクリルポリオールにおいて、分子内にヒドロキシル基を導入するために、オレフィンや(メタ)アクリレートの共重合成分として、ヒドロキシル基を有するα,β−不飽和化合物[例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルなど]を用いることができる。
【0076】
また、アニオン性基非含有ポリオール化合物としては、分子内に第3級アミノ基を有するポリオール化合物(「第3級アミノ基含有ポリオール化合物」と称する場合がある)も用いることができる。このような第3級アミノ基含有ポリオール化合物としては、分子内に少なくとも1つの第3級アミノ基を含有しており、かつ分子内に少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物であれば特に制限されない。第3級アミノ基含有ポリオール化合物において、第3級アミノ基(ジ置換アミノ基)としては、炭化水素基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基などのアルキル基;フェニル基などのアリール基;シクロヘキシル基などのシクロアルキル基など)等の置換基を有することにより、第3級アミノ基を形成していてもよい。該炭化水素基は、さらに他の置換基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アシル基など)を有していてもよい。第3級アミノ基含有ポリオールにおける分子内の第3級アミノ基の数としては、特に制限されず、例えば、1〜6の範囲から選択することができ、好ましくは1〜3(さらに好ましくは1又は2、特に1)であることが好適である。このように、第3級アミノ基含有ポリオール化合物は、第3級アミノ基を分子内に複数有していてもよいが、1つのみ有していていることが特に好ましい。なお、複数の第3級アミノ基を有している場合、第3級アミノ基は、1種のみであってもよく、2種以上組み合わせられていてもよい。
【0077】
また、第3級アミノ基含有ポリオール化合物における分子内のヒドロキシル基の数としては、少なくとも2つであれば特に制限されないが、例えば、1〜6(好ましくは1〜3)の範囲から選択することができ、特に2であることが好適である。第3級アミノ基含有ポリオール化合物において、ヒドロキシル基は、第3級アミノ基の窒素原子に直接結合していてもよいが、2価の基を介して結合していることが好ましい。このような2価の基としては、例えば、アルキレン基、アリレン基、アルキレン−アリレン基、アルキレン−アリレン−アルキレン基等の炭化水素基のみにより構成される2価の炭化水素基;オキシ−アルキレン基、アルキレン−オキシ−アルキレン基、アルキレン−カルボニル−オキシ−アルキレン基、アルキレン−オキシ−カルボニル−アルキレン基、アルキレン−ポリ(オキシアルキレン)基[ポリ(アルキレンオキシ)−アルキレン基]等の炭化水素基と他の基(オキシ基、カルボニル−オキシ基など)との種々の組み合わせにより構成される各種の2価の基などが挙げられる。
【0078】
第3級アミノ基含有ポリオール化合物は、第3級アミノ基が各種有機基に結合している形態を有している。第3級アミノ基が結合している有機基としては、特に制限されないが、炭化水素基が好適である。このような炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基など)、脂環式炭化水素基(例えば、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基など)、芳香族炭化水素基(例えば、フェニル基等のアリール基など)などが挙げられる。炭化水素基は、置換基を1種又は2種以上有していてもよく、該置換基としては、例えば、他の炭化水素基、イソシアネート反応性基(例えば、ヒドロキシル基、第1級アミノ基、第2級アミノ基、メルカプト基など)や、非イソシアネート反応性基(例えば、第3級アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アシル基など)などが挙げられる。
【0079】
具体的には、第3級アミノ基含有ポリオール化合物としては、例えば、N,N−ビス(ヒドロキシメチル)−N−メチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルアミン、N,N−ビス(3−ヒドロキシプロピル)−N−メチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−N−メチルアミン、N,N−ビス(4−ヒドロキシブチル)−N−メチルアミン、N,N−ビス(ヒドロキシメチル)−N−エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−エチルアミン、N,N−ビス(3−ヒドロキシプロピル)−N−エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−N−エチルアミン、N,N−ビス(4−ヒドロキシブチル)−N−エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−プロピルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−イソプロピルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−n−ブチルアミン等のN,N−ビス(ヒドロキシアルキル)−N−アルキルアミン;N,N−ビス[ヒドロキシメチル−ポリ(オキシメチレン)]−N−メチルアミン、N,N−ビス[2−ヒドロキシエチル−ポリ(オキシエチレン)]−N−メチルアミン、N,N−ビス[3−ヒドロキシプロピル−ポリ(オキシプロピレン)]−N−メチルアミン、N,N−ビス[2−ヒドロキシプロピル−ポリ(オキシイソプロピレン)]−N−メチルアミン、N,N−ビス[4−ヒドロキシブチル−ポリ(オキシブチレン)]−N−メチルアミン、N,N−ビス[ヒドロキシメチル−ポリ(オキシメチレン)]−N−エチルアミン、N,N−ビス[2−ヒドロキシエチル−ポリ(オキシエチレン)]−N−エチルアミン、N,N−ビス[3−ヒドロキシプロピル−ポリ(オキシプロピレン)]−N−エチルアミン、N,N−ビス[2−ヒドロキシプロピル−ポリ(オキシイソプロピレン)]−N−エチルアミン、N,N−ビス[4−ヒドロキシブチル−ポリ(オキシブチレン)]−N−エチルアミン、N,N−ビス[2−ヒドロキシエチル−ポリ(オキシエチレン)]−N−プロピルアミン、N,N−ビス[2−ヒドロキシエチル−ポリ(オキシエチレン)]−N−イソプロピルアミン、N,N−ビス[2−ヒドロキシエチル−ポリ(オキシエチレン)]−N−n−ブチルアミン等のN,N−ビス[ヒドロキシアルキル−ポリ(オキシアルキレン)]−N−アルキルアミンなどのN,N−ビス(ヒドロキシ−有機基)−N−アルキルアミンや、N,N−ビス(ヒドロキシメチル)−N−フェニルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−フェニルアミン、N,N−ビス(3−ヒドロキシプロピル)−N−フェニルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−N−フェニルアミン、N,N−ビス(4−ヒドロキシブチル)−N−フェニルアミン等のN,N−ビス(ヒドロキシアルキル)−N−アリールアミン;N,N−ビス[ヒドロキシメチル−ポリ(オキシメチレン)]−N−フェニルアミン、N,N−ビス[2−ヒドロキシエチル−ポリ(オキシエチレン)]−N−フェニルアミン、N,N−ビス[3−ヒドロキシプロピル−ポリ(オキシプロピレン)]−N−フェニルアミン、N,N−ビス[2−ヒドロキシプロピル−ポリ(オキシイソプロピレン)]−N−フェニルアミン、N,N−ビス[4−ヒドロキシブチル−ポリ(オキシブチレン)]−N−フェニルアミン等のN,N−ビス[ヒドロキシアルキル−ポリ(オキシアルキレン)]−N−アリールアミンなどのN,N−ビス(ヒドロキシ−有機基)−N−アリールアミン;これらに対応するN,N−ビス(ヒドロキシ−有機基)−N−シクロアルキルアミンなどが挙げられる。
【0080】
また、第3級アミノ基含有ポリオール化合物としては、例えば、N,N,N−トリス(ヒドロキシメチル)アミン、N,N,N−トリス(2−ヒドロキシエチル)アミン、N,N,N−トリス(3−ヒドロキシプロピル)アミン、N,N,N−トリス(2−ヒドロキシプロピル)アミン、N,N,N−トリス(4−ヒドロキシブチル)アミン等のN,N,N−トリス(ヒドロキシアルキル)アミン;N,N,N−トリス[ヒドロキシメチル−ポリ(オキシメチレン)]アミン、N,N,N−トリス[2−ヒドロキシエチル−ポリ(オキシエチレン)]アミン、N,N,N−トリス[3−ヒドロキシプロピル−ポリ(オキシプロピレン)]アミン、N,N,N−トリス[2−ヒドロキシプロピル−ポリ(オキシイソプロピレン)]アミン、N,N,N−トリス[4−ヒドロキシブチル−ポリ(オキシブチレン)]アミン等のN,N,N−トリス[ヒドロキシアルキル−ポリ(オキシアルキレン)]アミンなどのN,N,N−トリス(ヒドロキシ−有機基)アミンなども用いることができる。さらにまた、第3級アミノ基含有ポリオール化合物としては、例えば、N,N,N´,N´−テトラ(ヒドロキシメチル)エチレンジアミン、N,N,N´,N´−テトラ(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N,N´,N´−テトラ(3−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N,N´,N´−テトラ(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N,N´,N´−テトラ(4−ヒドロキシブチル)エチレンジアミン等のN,N,N´,N´−テトラ(ヒドロキシ−アルキル)アルキレンジアミンなどのN,N,N´,N´−テトラ(ヒドロキシ−有機基)アルキレンジアミンなども用いることができる。
【0081】
アニオン性基非含有イソシアネート反応性化合物(A2)において、アニオン性基非含有ポリオール化合物としては、多価アルコール、第3級アミノ基含有ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールを好適に用いることができ、特に、ポリエーテルポリオール(中でも、ポリテトラメチレングリコール)を好適に用いることができる。
【0082】
なお、アニオン性基非含有イソシアネート反応性化合物(A2)としての、アニオン性基非含有ポリアミン化合物やアニオン性基非含有ポリチオール化合物としては、例えば、前記例示のアニオン性基非含有ポリオール化合物に対応するアニオン性基非含有ポリアミン化合物やアニオン性基非含有ポリチオール化合物などが挙げられる。
【0083】
具体的には、アニオン性基非含有ポリアミン化合物としては、例えば、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン、芳香脂肪族ポリアミン、ヒドラジン及びその誘導体などが挙げられる。前記脂肪族ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3−トリメチレンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,3−ペンタメチレンジアミン、1,5−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,2−ブチレンジアミン、2,3−ブチレンジアミン、1,3−ブチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタメチレンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタメチレンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンの他、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなどが挙げられる。
【0084】
脂環式ポリアミンとしては、例えば、1,3−シクロペンタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1−アミノ−1−メチル−4−アミノメチルシクロヘキサン、1−アミノ−1−メチル−3−アミノメチルシクロヘキサン、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4´−メチレンビス(3−メチル−シクロヘキシルアミン)、メチル−2,3−シクロヘキサンジアミン、メチル−2,4−シクロヘキサンジアミン、メチル−2,6−シクロヘキサンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン等の脂環式ジアミンなどが挙げられる。
【0085】
芳香族ポリアミンとしては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、ナフチレン−1,4−ジアミン、ナフチレン−1,5−ジアミン、4,4´−ジフェニルジアミン、4,4´−ジフェニルメタンジアミン、2,4´−ジフェニルメタンジアミン、4,4´−ジフェニルエ−テルジアミン、2−ニトロジフェニル−4,4´−ジアミン、2,2´−ジフェニルプロパン−4,4´−ジアミン、3,3´−ジメチルジフェニルメタン−4,4´−ジアミン、4,4´−ジフェニルプロパンジアミン、3,3´−ジメトキシジフェニル−4,4´−ジアミン等の芳香族ジアミンなどが挙げられる。
【0086】
芳香脂肪族ポリアミンとしては、例えば、1,3−キシリレンジアミン、1,4−キシリレンジアミン、α,α,α´,α´−テトラメチル−1,3−キシリレンジアミン、α,α,α´,α´−テトラメチル−1,4−キシリレンジアミン、ω,ω´−ジアミノ−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−ビス(1−アミノ−1−メチルエチル)ベンゼン、1,4−ビス(1−アミノ−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(α,α−ジメチルアミノメチル)ベンゼン等の芳香脂肪族ジアミンなどが挙げられる。
【0087】
ヒドラジン及びその誘導体としては、例えば、ヒドラジンや、ジヒドラジド系化合物などが挙げられる。ジヒドラジド系化合物には、例えば、カルボジヒドラジド(カルボヒドラジド)、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジドなどの脂肪族ジカルボン酸ジヒドラジド類;イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジドなどの芳香族ジカルボン酸ジヒドラジド類;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジヒドラジドなどの脂環式ジカルボン酸ジヒドラジド類などが挙げられる。
【0088】
なお、本発明では、アニオン性基非含有イソシアネート反応性化合物(A2)としては、数平均分子量が500以上のアニオン性基非含有イソシアネート反応性化合物と、数平均分子量が500未満のアニオン性基非含有イソシアネート反応性化合物とを組み合わせて用いてもよい。
【0089】
[アニオン性基含有イソシアネート反応性化合物(A3)]
アニオン性基含有イソシアネート反応性化合物(A3)(アニオン性基及び複数のイソシアネート反応性基を含有する化合物)としては、分子内に少なくとも1つのアニオン性基を有しており、かつ分子内に少なくとも2つのイソシアネート反応性基を有する化合物であれば特に制限されない。アニオン性基含有イソシアネート反応性化合物(A3)は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。アニオン性基含有イソシアネート反応性化合物(A3)において、アニオン性基としては、カルボキシル基、スルホ基を好適に用いることができ、中でもカルボキシル基が最適である。また、アニオン性基含有イソシアネート反応性化合物(A3)において、イソシアネート反応性基としては、イソシアネート基に対する反応性を有する基であれば特に制限されず、例えば、ヒドロキシル基、第1級アミノ基(無置換アミノ基)、第2級アミノ基(モノ置換アミノ基)、メルカプト基などが挙げられる。なお、アニオン性基やイソシアネート反応性基は、1種のみであってもよく、2種以上が組み合わせられていてもよい。本発明では、該イソシアネート反応性基としては、ヒドロキシル基、第1級アミノ基又は第2級アミノ基が好ましく、特にヒドロキシル基が好適である。従って、アニオン性基含有イソシアネート反応性化合物(A3)としては、例えば、アニオン性基含有ポリオール化合物、アニオン性基含有ポリアミン化合物、アニオン性基含有ポリチオール化合物(好ましくは、アニオン性基含有ポリオール化合物やアニオン性基含有ポリアミン化合物、特にアニオン性基含有ポリオール化合物)などを用いることができる。
【0090】
アニオン性基含有イソシアネート反応性化合物(A3)としてのアニオン性基含有ポリオール化合物としては、例えば、前記アニオン性基非含有イソシアネート反応性化合物(A2)としてのアニオン性基非含有ポリオール化合物にカルボキシル基が導入されたカルボキシル基含有ポリオール化合物などが挙げられる。本発明では、アニオン性基含有イソシアネート反応性化合物(A3)としては、アニオン性基を有する低分子量のポリオール化合物が好ましく、特に、下記式(3)で表されるポリヒドロキシカルボン酸を好適に用いることができる。
(HO)XL(COOH)Y (3)
(但し、式(3)において、Lは炭素数1〜12の炭化水素部位を示す。Xは2以上の整数であり、Yは1以上の整数である。)
【0091】
前記式(3)において、Lの炭化水素部位としては、脂肪族炭化水素部位であることが好ましく、直鎖状又は分岐鎖状の形態のいずれであってもよい。また、X,Yは同一であってもよく、異なっていてもよい。2つ以上のヒドロキシル基は、同一の炭素原子に結合していてもよく、異なる炭素原子に結合していてもよい。さらに、Yが2以上である場合、2つ以上のカルボキシル基は、同一の炭素原子に結合していてもよく、異なる炭素原子に結合していてもよい。
【0092】
このようなポリヒドロキシカルボン酸としては、特に、ジメチロールアルカン酸(なかでも、2,2−ジメチロールアルカン酸)が好適である。ジメチロールアルカン酸としては、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールペンタン酸、2,2−ジメチロールヘキサン酸、2,2−ジメチロールヘプタン酸、2,2−ジメチロールオクタン酸、2,2−ジメチロールノナン酸、2,2−ジメチロールデカン酸などが挙げられる。
【0093】
なお、アニオン性基含有イソシアネート反応性化合物(A3)としてのアニオン性基含有ポリアミン化合物やアニオン性基含有ポリチオール化合物としては、例えば、前記アニオン性基含有ポリオール化合物に対応するアニオン性基含有ポリアミン化合物(前記式(3)で表されるポリヒドロキシカルボン酸に対応するポリアミンカルボン酸など)やアニオン性基含有ポリチオール化合物(前記式(3)で表されるポリヒドロキシカルボン酸に対応するポリチオールカルボン酸など)などが挙げられる。
【0094】
[ポリイソシアネート化合物(A4)]
ポリイソシアネート化合物(A4)(ポリイソシアネート化合物)は、分子内に少なくとも2つのイソシアネート基を有する化合物であれば特に制限されない。ポリイソシアネート化合物(A4)は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0095】
ポリイソシアネート化合物(A4)としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートなどの各種ポリイソシアネート化合物が挙げられる。
【0096】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−トリメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネ−ト、1,3−ペンタメチレンジイソシアネート、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2−メチル−1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート、リジンジイソシアネ−ト等の脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0097】
脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0098】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネ−ト、p−フェニレンジイソシアネ−ト、2,4−トリレンジイソシアネ−ト、2,6−トリレンジイソシアネ−ト、ナフチレン−1,4−ジイソシアネ−ト、ナフチレン−1,5−ジイソシアネ−ト、4,4´−ジフェニルジイソシアネ−ト、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、2,4´−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、4,4´−ジフェニルエ−テルジイソシアネ−ト、2−ニトロジフェニル−4,4´−ジイソシアネ−ト、2,2´−ジフェニルプロパン−4,4´−ジイソシアネ−ト、3,3´−ジメチルジフェニルメタン−4,4´−ジイソシネ−ト、4,4´−ジフェニルプロパンジイソシアネ−ト、3,3´−ジメトキシジフェニル−4,4´−ジイソシアネ−ト等の芳香族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0099】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−キシリレンジイソシアネ−ト、1,4−キシリレンジイソシアネ−ト、ω,ω´−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン、1,4−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(α,α−ジメチルイソシアネートメチル)ベンゼン等の芳香脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0100】
ポリイソシアネート化合物(A4)としては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネ−ト、2,6−トリレンジイソシアネ−ト、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、1,3−キシリレンジイソシアネ−ト、1,4−キシリレンジイソシアネ−ト、ノルボルナンジイソシアネート、1,3−ビス(α,α−ジメチルイソシアネートメチル)ベンゼンを好適に用いることができる。なお、ポリイソシアネート化合物(A4)として、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネートや芳香脂肪族ポリイソシアネートを用いると、変色の少ない樹脂を得ることができる。
【0101】
なお、本発明では、ポリイソシアネート化合物(A4)としては、前記例示の脂肪族ポリイソシアネ−ト、脂環式ポリイソシアネ−ト、芳香族ポリイソシアネ−ト、芳香脂肪族ポリイソシアネ−トによる二量体や三量体、反応生成物又は重合物(例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートの二量体や三量体、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとの反応生成物、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネートなど)なども用いることができる。
【0102】
また、本発明では、ポリイソシアネート化合物(A4)とともに、ジイソチオシアネート系化合物(例えば、フェニルジイソチオシアネートなど)を併用することができる。
【0103】
[鎖延長剤(A5)]
鎖延長剤(A5)(鎖延長剤)としては、特に制限されず、公知の鎖延長剤(アミン系鎖延長剤、ポリオール系鎖延長剤など)から適宜選択して用いることができるが、アミン系鎖延長剤を好適に用いることができる。鎖延長剤(A5)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0104】
鎖延長剤(A5)において、アミン系鎖延長剤としては、分子内に第3級アミノ基(ジ置換アミノ基)以外のアミノ基[第1級アミノ基(無置換アミノ基)や、第2級アミノ基(モノ置換アミノ基)など]を1つ有するアミン系化合物であってもよいが、分子内に第3級アミノ基以外のアミノ基を複数有するポリアミンを好適に用いることができる。このようなポリアミンの分子内における第3級アミノ基以外のアミノ基(官能性アミノ基)の数は、少なくとも2つであれば特に制限されないが、例えば、2〜6(好ましくは2〜4、さらに好ましくは2〜3)の範囲から選択することができる。
【0105】
具体的には、アミン系鎖延長剤としては、例えば、アニオン性基非含有イソシアネート反応性化合物(A2)の項で、アニオン性基非含有ポリアミン化合物して例示されている数平均分子量が500未満のアニオン性基非含有ポリアミン化合物(脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン、芳香脂肪族ポリアミン、ヒドラジン及びその誘導体など)から適宜選択して用いることができる。アミン系鎖延長剤としては、エチレンジアミン、1,3−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4´−メチレンビス(3−メチル−シクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、1,3−キシリレンジアミン等の脂肪族、脂環式及び芳香脂肪族ポリアミンや、ヒドラジン、カルボジヒドラジド等のヒドラジン及びその誘導体を好適に用いることができる。
【0106】
なお、ポリオール系鎖延長剤としては、例えば、アニオン性基非含有イソシアネート反応性化合物(A2)の項で、アニオン性基非含有ポリオール化合物して例示されている数平均分子量が500未満のアニオン性基非含有ポリオール化合物(多価アルコールの他、数平均分子量が500未満のポリエーテルポリオール、数平均分子量が500未満のポリエステルポリオール、数平均分子量が500未満のポリカーボネートポリオール、数平均分子量が500未満のポリオレフィンポリオール、数平均分子量が500未満のポリアクリルポリオール、数平均分子量が500未満の第3級アミノ基含有ポリオール化合物など)から適宜選択して用いることができる。
【0107】
[アルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマー(A)]
本発明では、水分散性シリル化ウレタン系樹脂としては、アルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマー(A)を好適に用いることができる。該アルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマー(A)は、前述のように、第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物(A1)と、アニオン性基非含有イソシアネート反応性化合物(A2)と、アニオン性基含有イソシアネート反応性化合物(A3)と、ポリイソシアネート化合物(A4)と、必要に応じて鎖延長剤(A5)との反応生成物であり、側鎖に、第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物(A1)に由来するアルコキシシリル基と、分子内に、アニオン性基含有イソシアネート反応性化合物(A3)に由来するアニオン性基とを少なくとも有しているウレタン系ポリマーである。さらに、アルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマー(A)は、ポリイソシアネート化合物(A4)に由来するイソシアネート基と、鎖延長剤(A5)としてのアミン系鎖延長剤のアミノ基との反応による尿素結合部位などを、必要に応じて、有することができる。
【0108】
アルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマー(A)としては、アニオン性基非含有イソシアネート反応性化合物(A2)、アニオン性基含有イソシアネート反応性化合物(A3)、およびポリイソシアネート化合物(A4)の反応により得られるアニオン性基含有ウレタンプレポリマーと、第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物(A1)との反応により、前記アニオン性基含有ウレタンプレポリマーが鎖延長されて、側鎖にアルコキシシリル基が導入されたアニオン性基含有ウレタンプレポリマー(「アルコキシシリル基側鎖導入アニオン性基含有ウレタンプレポリマー」と称する場合がある)であってもよく、前記アルコキシシリル基側鎖導入アニオン性基含有ウレタンプレポリマーを、さらに、鎖延長剤(A5)と反応させて、アルコキシシリル基側鎖導入アニオン性基含有ウレタンプレポリマー中の残存している官能基(イソシアネート基など)と、前記鎖延長剤(A5)の官能基(アミノ基など)との反応により、さらに鎖延長されたアルコキシシリル基側鎖導入アニオン性基含有ウレタンプレポリマーであってもよい。
【0109】
アルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマー(A)の調製方法は、特に制限されない。アルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマー(A)は、まず、アニオン性基非含有イソシアネート反応性化合物(A2)と、アニオン性基含有イソシアネート反応性化合物(A3)と、ポリイソシアネート化合物(A4)とを反応させて、反応生成物としてアニオン性基含有ウレタンプレポリマーを得た後、該アニオン性基含有ウレタンプレポリマーと、第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物(A1)とを反応させ、必要に応じて、さらに鎖延長剤(A5)と反応させることにより、反応生成物としてアルコキシシリル基側鎖導入アニオン性基含有ウレタンプレポリマーを得ることにより調製することができる。
【0110】
前記アニオン性基含有ウレタンプレポリマーは、アニオン性基非含有イソシアネート反応性化合物(A2)と、アニオン性基含有イソシアネート反応性化合物(A3)と、ポリイソシアネート化合物(A4)との反応生成物であり、該反応は、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させてウレタンプレポリマーを調製する公知乃至慣用の方法に準じて行うことができ、例えば、アニオン性基非含有イソシアネート反応性化合物(A2)、アニオン性基含有イソシアネート反応性化合物(A3)、およびポリイソシアネート化合物(A4)を混合し、必要に応じて加熱することにより行う方法などが挙げられる。なお、アニオン性基含有ウレタンプレポリマーとしては、末端がイソシアネート基となっているものが好ましい。
【0111】
アニオン性基非含有イソシアネート反応性化合物(A2)、アニオン性基含有イソシアネート反応性化合物(A3)、およびポリイソシアネート化合物(A4)を混合又は反応する際には、反応促進のために重合触媒を用いることができる。また、反応又は混合は溶媒中で行うことができる。なお、アニオン性基含有ウレタンプレポリマーの調製に際しては、アニオン性基非含有イソシアネート反応性化合物(A2)、およびアニオン性基含有イソシアネート反応性化合物(A3)の混合物に、ポリイソシアネート化合物(A4)を加え、さらに必要に応じて重合触媒を加えて反応させて、アニオン性基含有ウレタンプレポリマーを調製することが好ましい。
【0112】
また、アニオン性基含有ウレタンプレポリマーと、第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物(A1)との反応は、両者を混合し、必要に応じて加熱することにより行うことができる。このようなアニオン性基含有ウレタンプレポリマーと、第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物(A1)との反応により、前記アニオン性基含有ウレタンプレポリマーの末端のイソシアネート基と、第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物(A1)の第2級アミノ基とが反応して、アニオン性基含有ウレタンプレポリマーが第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物(A1)により鎖延長された状態となり、側鎖にアルコキシシリル基が導入されたアルコキシシリル基側鎖導入アニオン性基含有ウレタンプレポリマー[すなわち、アルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマー(A)]を調製することができる。この混合又は反応に際しては、前述のように重合触媒を用いることができる。また、前記混合又は反応に際しては、溶媒を用いることができる。なお、アルコキシシリル基側鎖導入アニオン性基含有ウレタンプレポリマーの調製に際しては、アニオン性基含有ウレタンプレポリマーの調製により得られた反応混合液に、第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物(A1)を加えて反応させることにより、アルコキシシリル基側鎖導入アニオン性基含有ウレタンプレポリマーを調製することが好ましい。
【0113】
前記重合触媒としては、例えば、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させる際に用いられる公知乃至慣用の重合触媒(硬化触媒)を用いることができる。より具体的には、重合触媒としては、有機錫化合物、金属錯体、アミン化合物などの塩基性化合物、有機燐酸化合物などが挙げられる。有機錫化合物には、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレート、ジブチル錫フタレート、オクチル酸第一錫、ジブチル錫メトキシド、ジブチル錫ジアセチルアセテート、ジブチル錫ジバーサテートなどが含まれる。また、金属錯体としては、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、トリエタノールアミンチタネート等のチタネート化合物類;オクチル酸鉛、ナフテン酸鉛、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸コバルト等のカルボン酸金属塩;アルミニウムアセチルアセトナート錯体、バナジウムアセチルアセトナート錯体等の金属アセチルアセトナート錯体などが挙げられる。さらに、アミン化合物等の塩基性化合物には、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン類;テトラメチルアンモニウムクロライド、ベンザルコニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩類;三共エアプロダクツ社製の商品名「DABCO」シリーズや「DABCO BL」シリーズ、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン等の複数の窒素原子を含む直鎖或いは環状の第三級アミン又は第四級アンモニウム塩などが含まれる。さらにまた、有機燐酸化合物としては、モノメチル燐酸、ジ−n−ブチル燐酸、燐酸トリフェニル等が挙げられる。
【0114】
さらに、前記アルコキシシリル基側鎖導入アニオン性基含有ウレタンプレポリマーと、鎖延長剤(A5)との反応は、両者を混合し、必要に応じて加熱することにより行うことができる。該反応により、前記アルコキシシリル基側鎖導入アニオン性基含有ウレタンプレポリマー中の残存している官能基(末端のイソシアネート基など)と、前記鎖延長剤(A5)の反応性基(アミノ基など)とが反応して、前記アルコキシシリル基側鎖導入アニオン性基含有ウレタンプレポリマーが鎖延長剤(A5)により鎖延長されて、さらに鎖延長されたアルコキシシリル基側鎖導入アニオン性基含有ウレタンプレポリマー[すなわち、アルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマー(A)]を調製することができる。この混合又は反応に際しては、前述と同様に重合触媒を加えることができる。重合触媒としては、例えば、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させる際に用いられる公知乃至慣用の重合触媒(硬化触媒)を用いることができる。
【0115】
特に、前記アルコキシシリル基側鎖導入アニオン性基含有ウレタンプレポリマーと、鎖延長剤(A5)との混合又は反応は、前記アルコキシシリル基側鎖導入アニオン性基含有ウレタンプレポリマー又はその反応混合物(塩基性化合物が含まれていてもよい)の水への分散前、分散中または分散後のいずれであってもよいが、分散中又は分散後が好ましい。すなわち、アルコキシシリル基側鎖導入アニオン性基含有ウレタンプレポリマーを水に分散させる際に、鎖延長剤(A5)を水とともに添加するか、又は水に分散させた後に、鎖延長剤(A5)を添加して混合して、アルコキシシリル基側鎖導入アニオン性基含有ウレタンプレポリマーと、鎖延長剤(A5)とを反応させることが好ましい。具体的には、鎖延長剤(A5)を用いる場合、アニオン性基含有ウレタンプレポリマーの調製により得られた反応混合液に、第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物(A1)を加えて反応させることにより、アルコキシシリル基側鎖導入アニオン性基含有ウレタンプレポリマーを調製し、その後に、鎖延長剤(A5)を水とともに加えて、アルコキシシリル基側鎖導入アニオン性基含有ウレタンプレポリマーを水に分散させる際に、アルコキシシリル基側鎖導入アニオン性基含有ウレタンプレポリマーを鎖延長剤(A5)により鎖延長させて、鎖延長されたアルコキシシリル基側鎖導入アニオン性基含有ウレタンプレポリマーを調製することが好ましい。
【0116】
アルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマー(A)において、各成分の割合は特に制限されない。具体的には、例えば、ポリイソシアネート化合物(A4)と、アニオン性基非含有イソシアネート反応性化合物(A2)およびアニオン性基含有イソシアネート反応性化合物(A3)との割合としては、ポリイソシアネート化合物(A4)におけるイソシアネート基/アニオン性基非含有イソシアネート反応性化合物(A2)およびアニオン性基含有イソシアネート反応性化合物(A3)におけるイソシアネート反応性基(NCO/NCO反応性基)(当量比)が、1より大きく2.0以下(好ましくは1.02〜1.5、さらに好ましくは1.05〜1.4)となるような範囲から選択することができる。該NCO/NCO反応性基の比が2.0(当量比)を超えると、未反応のモノマー成分が残存し、そのため、延長する際の反応(架橋反応)の制御が困難になったり、分散性が低下したりする。一方、NCO/NCO反応性基の比が1以下であると、末端がイソシアネート基となっているウレタンプレポリマーを得ることが困難になる。
【0117】
あるいは、ポリイソシアネート化合物(A4)は、アニオン性基含有ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基の含有量が、0.1〜20質量%(好ましくは0.2〜15質量%、さらに好ましくは0.3〜10質量%)となるような割合で含まれていてもよい。
【0118】
また、アニオン性基含有イソシアネート反応性化合物(A3)は、アルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマー(A)中のアニオン性基の含有量が、0.1meq/g以上(例えば、0.2〜0.8meq/g、好ましくは0.2〜0.7meq/g)となるような割合で含まれていることが好ましい。該アニオン性基の含有量が多すぎると、シリル化ウレタン系水性組成物の粘度が高くなり作業性が低下するとともに、硬化後の耐水性も低下する。一方、該アニオン性基の含有量が少なすぎると(例えば、0.1meq/g未満であると)、シリル化ウレタン系水性組成物中の樹脂成分の分散安定性が低下するとともに、タック力が低下する。
【0119】
第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物(A1)は、アルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマー(A)中のケイ素原子の含有量が、例えば、0.01meq/g以上となるような割合で用いられていてもよく、好ましくは0.02meq/g以上となるような割合(さらに好ましくは0.05meq/g以上となるような割合)で用いられていることが望ましい。
【0120】
従って、水分散性シリル化ウレタン系樹脂[アルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマー(A)など]において、分子内の側鎖として導入されたアルコキシシリル基(モノアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、トリアルコキシシリル基)の数としては、前述のように、1分子中に1個以上の範囲から適宜設定することができる。このように、水分散性シリル化ウレタン系樹脂は、アルコキシシリル基を、側鎖として含有しているので、1分子中に3個以上含有することができる。もちろん、水分散性シリル化ウレタン系樹脂は、アルコキシシリル基を、1分子中に1〜2個含有していてもよい。
【0121】
鎖延長剤(A5)の使用量としては、アニオン性基含有ウレタンプレポリマーと、第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物(A1)との反応により得られるアルコキシシリル基側鎖導入アニオン性基含有ウレタンプレポリマーにおける官能基(末端のイソシアネート基など)と当量で化学量論通り反応させることが好ましいが、アルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマー(A)の水分散中もしくは水分散後に鎖延長剤(A5)を添加する場合、反応装置や攪拌条件により鎖延長剤(A5)と水との反応を考慮して、該官能基(イソシアネート基など)1当量に対して0.5〜1.0当量の範囲から選択してもよい。
【0122】
[塩基性化合物]
本発明では、水分散性シリル化ウレタン系樹脂が、分子内にアニオン性基を有している水分散性シリル化ウレタン系樹脂(「アニオン性基含有水分散性シリル化ウレタン系樹脂」と称する場合がある)である場合[例えば、アルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマー(A)(すなわち、アルコキシシリル基側鎖導入アニオン性基含有ウレタンプレポリマー)である場合]、シリル化ウレタン系水性組成物中には、塩基性化合物が含有されていてもよい。塩基性化合物を用いることにより、アニオン性基含有水分散性シリル化ウレタン系樹脂(例えば、アルコキシシリル基側鎖導入アニオン性基含有ウレタンプレポリマーなど)を塩の形態にして水溶性または水分散性にすることができる。
【0123】
塩基性化合物としては、塩基性無機化合物であってもよく、塩基性有機化合物であってもよい。塩基性化合物は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。塩基性無機化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等のアルカリ金属酢酸塩などのアルカリ金属化合物や、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;炭酸マグネシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩などのアルカリ土類金属化合物の他、アンモニアを好適に用いることができる。
【0124】
一方、塩基性有機化合物としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、塩基性含窒素複素環化合物などのアミン系化合物を好適に用いることができる。脂肪族アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリs−ブチルアミン、トリt−ブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミンなどのトリアルキルアミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミンなどのジアルキルアミン;メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミンなどのモノアルキルアミン;トリメタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリペンタノールアミン、トリイソペンタノールアミン、トリヘキサノールアミンなどのトリアルコールアミン;ジメタノールアミン、ジエタノールアミンなどのジアルコールアミン;メタノールアミン、エタノールアミンなどのモノアルコールアミンなどの他、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどが挙げられる。芳香族アミンには、例えば、N,N−ジメチルアニリンなどが含まれる。塩基性含窒素複素環化合物としては、例えば、モルホリン、ピペリジン、ピロリジンなどの環状アミンの他、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、キノリン、N−メチルモルホリンなどが挙げられる。
【0125】
塩基性化合物としては、アンモニアや、アミン系化合物(トリアルキルアミンやトリアルコールアミン等の第三級アミン化合物など)を好適に用いることができる。
【0126】
[水]
なお、本発明のシリル化ウレタン系水性組成物では、水(例えば、水道水、イオン交換水や純水など)が用いられている。
【0127】
[シリル化ウレタン系水性組成物]
本発明のシリル化ウレタン系水性組成物は、前述のように、水分散性シリル化ウレタン系樹脂を含有しており、もちろん、水も含まれている。なお、本発明のシリル化ウレタン系水性組成物では、水分散性シリル化ウレタン系樹脂が、アニオン性基含有水分散性シリル化ウレタン系樹脂(例えば、アルコキシシリル基側鎖導入アニオン性基含有ウレタンプレポリマー)である場合、アニオン性基含有水分散性シリル化ウレタン系樹脂は塩の形態を有していてもよい。従って、前述のように、アニオン性基含有水分散性シリル化ウレタン系樹脂等の水分散性シリル化ウレタン系樹脂について、塩を形成させるための物質(例えば、塩基性化合物や酸など)が用いられていてもよい。
【0128】
また、水分散性シリル化ウレタン系樹脂は、水と反応していてもよい。水分散性シリル化ウレタン系樹脂と、水との反応としては、水分散性シリル化ウレタン系樹脂における側鎖のアルコキシシリル基が水により加水分解される加水分解反応が挙げられる。すなわち、水分散性シリル化ウレタン系樹脂と、水との反応により、水分散性シリル化ウレタン系樹脂における側鎖のアルコキシシリル基が部分的に又は全体的にシラノール基及び/又はシロキサン結合となっていてもよい。なお、シラノール基とは、少なくとも1つのヒドロキシル基を有するケイ素原子からなる基のことを意味しており、アルコキシ基などの置換基を有していてもよい。
【0129】
従って、水分散性シリル化ウレタン系樹脂がアニオン性基含有水分散性シリル化ウレタン系樹脂である場合、シリル化ウレタン系水性組成物は、アニオン性基含有水分散性シリル化ウレタン系樹脂におけるアニオン性基が塩基性化合物により中和されてアニオン性基の塩となっており、且つ側鎖のアルコキシシリル基が部分的に又は全体的に水により加水分解されてシラノール基及び/又はシロキサン結合となっている水性シラノール化ウレタン系樹脂を含んでいてもよい。
【0130】
なお、水分散化剤としての塩基性化合物は、アニオン性基含有水分散性シリル化ウレタン系樹脂を調製した後に用いられていてもよく、アニオン性基含有水分散性シリル化ウレタン系樹脂を調製する際に予め用いられていてもよい。塩基性化合物の使用量としては、アニオン性基含有水分散性シリル化ウレタン系樹脂中のアニオン性基に対して50〜120モル%(好ましくは80〜110モル%)程度の範囲から選択することができる。
【0131】
また、水は、水分散性シリル化ウレタン系樹脂(アニオン性基含有水分散性シリル化ウレタン系樹脂など)を調製した後に用いられていてもよく、水分散性シリル化ウレタン系樹脂を調製する際に予め用いられていてもよい。水の使用量としては、水分散性シリル化ウレタン系樹脂100質量部に対して65〜900質量部(好ましくは100〜400質量部)程度の範囲から選択することができる。
【0132】
なお、本発明のシリル化ウレタン系水性組成物では、樹脂分としては、特に制限されないが、例えば、10〜60質量%(好ましくは20〜50質量%)程度の範囲から選択することができる。
【0133】
本発明のシリル化ウレタン系水性組成物は、有機溶剤を全く含まない完全に水性であるシリル化ウレタン系水性組成物であることが好ましいが、粘度調整等のために、ケトン類、低級アルコールなどの親水性の有機溶剤(水溶性有機溶剤)を含んでいてもよい。
【0134】
また、シリル化ウレタン系水性組成物には、例えば、濡れ性改質親水性溶剤(例えば、N−メチル−2−ピロリドン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の界面活性剤、アルギン酸ナトリウム、ムコ多糖類、アクリル酸ナトリウムなど)、充填材(例えば、炭酸カルシウム、フュームドシリカ、クレー、タルク、各種バルーン、ノイブルシリカ、カオリン、ケイ酸アルミニウムなど)、可塑剤(例えば、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレートなどのフタル酸エステル類;アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチルなどの脂肪族カルボン酸エステルなど)、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤、着色剤(顔料や染料など)、防かび剤、濡れ促進剤、粘性改良剤、香料、各種タッキファイヤー(例えば、安定化ロジンエステル、重合ロジンエステル、テルペンフェノール、石油系樹脂等のエマルジョンタッキファイヤーなど)、カップリング剤(チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤など)、光硬化触媒、乳化剤、界面活性剤、エマルジョンやラテックス、架橋剤(例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ポリエチレンイミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、コロイダルシリカなど)、保湿剤、消泡剤などの各種添加剤又は成分、溶剤などが含まれていてもよい。
【0135】
また、シリル化ウレタン系水性組成物中には、少なくとも1つのアルコキシシリル基が分子中に側鎖として導入された構成を有している水分散性シリル化ウレタン系樹脂とともに、該水分散性シリル化ウレタン系樹脂以外の水溶性又は水分散可能なポリマー(例えば、末端にアルコキシシリル基を有しており且つ水溶性又は水分散可能なシリル化ウレタン系樹脂、末端や側鎖にアルコキシシリル基を有しておらず且つ水溶性又は水分散可能なポリウレタン系ポリマー、ポリビニルピロリドンなど)が含まれていてもよい。
【0136】
[水性接着剤など]
本発明のシリル化ウレタン系水性組成物は、水性接着剤や、水性コーティング剤(水性塗料など)として用いることができ、特に、水性接着剤として好適に用いることができる。また、前記シリル化ウレタン系水性組成物は、水性接着剤や水性コーティング剤の他にも、バインダ、ラミネート、シーラー、プライマー、サイジング剤、シーリング材等として用いることができる。すなわち、水性接着剤や水性コーティング剤などの各種処理剤は、前記シリル化ウレタン系水性組成物を含有している。
【0137】
前記シリル化ウレタン系水性組成物を含有する水性接着剤や水性コーティング剤などは、シリル化ウレタン系水性組成物が、少なくとも1つのアルコキシシリル基が分子中に側鎖として導入された構成を有する水分散性シリル化ウレタン系樹脂を含有しているので、接着性、密着性、皮膜物性、または保存安定性を向上させることが可能であるとともに、優れた耐水性及び/又は耐熱性を発揮することができる。
【0138】
しかも、水分散性シリル化ウレタン系樹脂[特に、アルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマー(A)]において、分子中に側鎖として導入されているアルコキシシリル基は、水中でも、部分的に又は全体的に水により加水分解されてシラノール基及び/又はシロキサン結合となった状態で安定に存在することができる。そのため、本発明のシリル化ウレタン系水性組成物を含有する水性接着剤や、水性コーティング剤などは、1液型の水性接着剤や1液型の水性コーティング剤などの1液型の処理剤とすることができる。
【0139】
なお、このような水性接着剤や水性コーティング剤は、水性タイプであるので(特に、有機溶剤を全く含まない完全な水性であってもよいので)、取り扱い性や作業性が優れており、人体や環境に対して安全性が高い。
【0140】
また、水分散性シリル化ウレタン系樹脂[特に、アルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマー(A)]のアルコキシシリル基は、シラノール基等の形態となっているので、シリル化ウレタン系水性組成物を含有する水性接着剤(特に、水性コンタクト型接着剤)や水性コーティング剤などは、紙などの多孔質材料のみならず、金属やガラスなどの非多孔質材料に対しても良好な接着性や密着性を発現することができる。すなわち、前記水性接着剤や水性コーティング剤などを適用できる基材(被着体や塗布体など)として、以下に具体例が示されているように、種々の基材を用いることができる。なお、接着により貼り合わせる際の基材としては、同一の素材からなる基材同士であってもよく、異なる素材からなる基材であってもよい。基材はそれぞれ単独で又は2種以上が組み合わせられていてもよい。
【0141】
前記基材としては、例えば、多孔質材料、非多孔質材料のいずれであってもよい。より具体的には、被着体の素材としては、例えば、木材、合板、チップボード、パーチクルボード、ハードボードなどの木質材料;スレート板、珪カル板、モルタル、タイルなどの無機質材料;メラミン樹脂化粧板、ベークライト板、発泡スチロール、各種プラスチックフィルム又は成形品(例えば、ポリ塩化ビニル系フィルム又は成形品、ポリエステル系フィルム又は成形品、ポリスチレンフィルム又は成形品、ポリオレフィン系フィルム又は成形品等)などのプラスチック材料;天然ゴム、合成ゴム、シリコンゴム等のゴム材料;段ボール紙、板紙、クラフト紙などの紙質材料の他、加工紙(例えば、防湿紙などの表面処理された加工紙など)などの難接着紙材料、ガラス材料、金属材料(例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス、銅など)、皮革材料、布、不織布などの繊維質材料などが挙げられる。
【0142】
このように、本発明のシリル化ウレタン系水性組成物を含有する水性接着剤や水性コーティング剤などは、幅広い材料からなる基材に対して適用することが可能であり、特にコンタクト接着により、非多孔質同士の接着に対しても用いることができるようになる。
【0143】
なお、シリル化ウレタン系水性組成物を含有する水性接着剤を用いて被着体を貼り合わせる方法としては、特に制限されず、例えば、被着体に塗布した後、直ちに被着体同士を貼り合わせる方法や、被着体に塗布した後、所定時間経過させて、水を保持しているとともに粘着性が発現している状態で被着体同士を貼り合わせるコンタクト接着方法などの種々の方法を採用することができる。なお、本発明において、コンタクト接着方法としては、JIS K 6800で規定されているように、貼り合わせる2つの被着体における両被着体の貼着面に塗布して、所定時間経過させて、水を保持しているとともに粘着性が発現している状態で2つの被着体を貼り合わせて接着させる方法だけでなく、貼り合わせる2つの被着体における何れか一方の被着体の貼着面に塗布して、所定時間経過させて、水を保持しているとともに粘着性が発現している状態で2つの被着体を貼り合わせて接着させる方法も含まれる。すなわち、本発明では、コンタクト接着とは、貼り合わせる被着体のうち少なくとも何れか一方の貼着面に塗布して、所定時間経過後に水を保持しているとともに粘着性が発現している状態で、2つの被着体を貼り合わせて接着させることを意味している。
【実施例】
【0144】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、以下、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を示す。
【0145】
(第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物(A1)の調製例)
(1)商品名「KBM603」[信越化学工業社製、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン]:222.4部に対して、2−エチルヘキシルアクリレート:184.3部の割合で用い、混合して、50℃で28日間反応させて、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン中の第1級アミノ基(無置換アミノ基)に、2−エチルヘキシルアクリレートが付加した形態を有している第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物(A1)を含む反応混合物[「シリル化剤(A)」と称する場合がある]を得た。
(2)商品名「KBM603」[信越化学工業社製、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン]:222.4部に対して、イソステアリルアクリレート:324.6部の割合で用い、混合して、50℃で28日間反応させて、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン中の第1級アミノ基(無置換アミノ基)に、イソステアリルアクリレートが付加した形態を有している第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物(A1)を含む反応混合物[「シリル化剤(B)」と称する場合がある]を得た。
(3)商品名「KBM603」[信越化学工業社製、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン]:222.4部に対して、ブチルアクリレート:128.2部の割合で用い、混合して50℃で28日間反応させて、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン中の第1級アミノ基(無置換アミノ基)に、ブチルアクリレートが付加した形態を有している第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物(A1)を含む反応混合物[「シリル化剤(C)」と称する場合がある]を得た。
(4)商品名「KBM603」[信越化学工業社製、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン]:222.4部に対して、メチルアクリレート:86.1部の割合で用い、混合して、50℃で28日間反応させて、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン中の第1級アミノ基(無置換アミノ基)に、メチルアクリレートが付加した形態を有している第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物(A1)を含む反応混合物[「シリル化剤(D)」と称する場合がある]を得た。
(5)商品名「KBM602」[信越化学工業社製、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン]:206.4部に対して、ブチルアクリレート:128.2部の割合で用い、混合して、50℃で28日間反応させて、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン中の第1級アミノ基(無置換アミノ基)に、ブチルアクリレートが付加した形態を有している第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物(A1)を含む反応混合物[「シリル化剤(E)」と称する場合がある]を得た。
【0146】
(第2級アミノ基及び第1級アミノ基を含有するアルコキシシラン化合物)
(1)商品名「KBM603」[信越化学工業社製、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン;「シリル化剤(F)」と称する場合がある]
【0147】
(第2級アミノ基を単数含有するアルコキシシラン化合物の調製例)
(1)商品名「KBE903」[信越化学工業社製、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン]:221.4部に対して、ラウリルアクリレート:240.4部の割合で用い、混合して、50℃で28日間反応させて、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン中の第1級アミノ基に、ラウリルアクリレートが付加した形態を有しているアルコキシシラン化合物を含む反応混合物[「シリル化剤(G)」と称する場合がある]を得た。
(2)商品名「KBE903」[信越化学工業社製、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン]:221.4部に対して、イソステアリルアクリレート:324.6部の割合で用い、混合して、50℃で28日間反応させて、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン中の第1級アミノ基に、イソステアリルアクリレートが付加した形態を有しているアルコキシシラン化合物を含む反応混合物[「シリル化剤(H)」と称する場合がある]を得た。
(3)商品名「KBM603」[信越化学工業社製、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン]:222.4部に対して、2−エチルヘキシルアクリレート:368.6部の割合で用い、混合して、50℃で28日間反応させて、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン中の第1級アミノ基(無置換アミノ基)と第2級アミノ基とに、2−エチルヘキシルアクリレートが付加した形態を有しているアルコキシシラン化合物を含む反応混合物[「シリル化剤(I)」と称する場合がある]を得た。
(4)商品名「KBM603」[信越化学工業社製、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン]:222.4部に対して、イソステアリルアクリレート:649.1部の割合で用い、混合して、50℃で28日間反応させて、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン中の第1級アミノ基(無置換アミノ基)と第2級アミノ基とに、イソステアリルアクリレートが付加した形態を有しているアルコキシシラン化合物を含む反応混合物[「シリル化剤(J)」と称する場合がある]を得た。
【0148】
[アニオン性基非含有イソシアネート反応性化合物(A2)]
(1)商品名「PTMG2000」(三菱化学社製、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、数平均分子量:2000、水酸基価:58.2mg−KOH/g;「PTMG2000」と称する場合がある)
(2)商品名「NS2400」(旭電化工業社製、ポリエステルジオール、数平均分子量:2000、水酸基価:56.2mg−KOH/g;「NS2400」と称する場合がある)
(3)商品名「バイロン220」(東洋紡績社製、ポリエステルジオール、数平均分子量:2000、水酸基価:50mg−KOH/g;「バイロン220」と称する場合がある)
(4)商品名「T4672」(旭化成ケミカルズ社製、ポリカーボネートジオール、数平均分子量:2000、水酸基価:54.3mg−KOH/g;「T4672」と称する場合がある)
(5)1,4−ブタンジオール(水酸基価:1245.3mg−KOH/g;「1,4−BD」と称する場合がある)
(6)1,6−ヘキサンジオール(水酸基価:949.5mg−KOH/g;「1,6−HD」と称する場合がある)
【0149】
[アニオン性基含有イソシアネート反応性化合物(A3)]
(1)2,2−ジメチロールプロピオン酸(水酸基価:832.0mg−KOH/g;「DMPA」と称する場合がある)
【0150】
[ポリイソシアネート化合物(A4)]
(1)イソホロンジイソシアネート[イソシアネート含有率(NCO含有率):37.8%;「IPDI」と称する場合がある]
【0151】
[鎖延長剤(A5)]
(1)イソホロンジアミン(「IPDA」と称する場合がある)
【0152】
[塩基性化合物]
(1)トリエチルアミン
【0153】
[第2級アミノ基含有化合物]
(1)ジ−n−ブチルアミン(「ジブチルアミン」と称する場合がある)
【0154】
[水]
(1)イオン交換水(脱イオン水)
【0155】
[触媒]
(1)ジブチル錫ジラウリレート
【0156】
(実施例1)
窒素導入管、温度計、コンデンサー及び撹拌装置の付いた4つ口フラスコに、PTMG2000:80部、DMPA:14.6部、IPDI:120.1部、1,4−BD:18.7部、及びメチルエチルケトン(MEK):200部、触媒としてMEKで5%に希釈したジブチル錫ジラウレート:0.01部を配合し、80〜85℃の温度で、窒素気流下、5時間反応を行い、残存イソシアネート基が6.6%のアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
【0157】
次に、60℃まで冷却した後、このアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物全量に、第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物であるシリル化剤(A):47.4部を配合して混合した後、70℃の温度で、窒素気流下、1.5時間反応を行い、残存イソシアネート基が2.0%のアルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
【0158】
次に、このアルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマーを含む反応混合物全量を40℃まで冷却した後に、トリエチルアミン:11.09部を配合し、高速撹拌下、予めジブチルアミン:3.48部及びIPDA:7.34部をイオン交換水:845部に溶解した水溶液を加えて、分散液を得た。この分散液を減圧下、40〜45℃でMEKを留去させた後、イオン交換水により固形分を25.1質量%に調整し、粘度(23℃;BM型粘度計、ローター:No.1、回転数:30rpm)が145mPa・sであり且つ側鎖にシリル基を有しているウレタン系水性組成物を得た。
【0159】
なお、このウレタン系水性組成物を、室温で60日間、50℃で30日間、それぞれ保存したが、ゲル化や分離が生じておらず、いずれも粘度は初期粘度の±30%以内であり、良好な保存安定性を示した。また、保存後のウレタン系水性組成物について、下記の評価方法に準じて、耐水性、耐溶剤性及び密着性を評価したところ、初期のウレタン系水性組成物(保存前のウレタン系水性組成物)と同等の性能を保持していた。
【0160】
(実施例2)
窒素導入管、温度計、コンデンサー及び撹拌装置の付いた4つ口フラスコに、PTMG2000:80部、DMPA:14.6部、IPDI:120.1部、1,4−BD:18.7部、及びメチルエチルケトン(MEK):200部、触媒としてMEKで5%に希釈したジブチル錫ジラウレート:0.01部を配合し、80〜85℃の温度で、窒素気流下、5時間反応を行い、残存イソシアネート基が6.6%のアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
【0161】
次に、60℃まで冷却した後、このアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物全量に、第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物であるシリル化剤(B):62部を配合して混合した後、70℃の温度で、窒素気流下、1.5時間反応を行い、残存イソシアネート基が2.0%のアルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
【0162】
次に、このアルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマーを含む反応混合物全量を40℃まで冷却した後に、トリエチルアミン:11.02部を配合し、高速撹拌下、予めジブチルアミン:3.64部及びIPDA:7.67部をイオン交換水:710部に溶解した水溶液を加えて、分散液を得た。この分散液を減圧下、40〜45℃でMEKを留去させた後、イオン交換水により固形分を29.5質量%に調整し、粘度(23℃;BM型粘度計、ローター:No.1、回転数:30rpm)が55mPa・sであり且つ側鎖にシリル基を有しているウレタン系水性組成物を得た。
【0163】
なお、このウレタン系水性組成物について、実施例1と同様にして、室温で60日間、50℃で30日間、それぞれ保存したが、ゲル化や分離が生じておらず、いずれも粘度は初期粘度の±30%以内であり、良好な保存安定性を示した。また、保存後のウレタン系水性組成物について、実施例1と同様にして耐水性、耐溶剤性及び密着性を評価したところ、初期のウレタン系水性組成物と同等の性能を保持していた。
【0164】
(実施例3)
窒素導入管、温度計、コンデンサー及び撹拌装置の付いた4つ口フラスコに、PTMG2000:80部、DMPA:14.6部、IPDI:120.1部、1,4−BD:24.3部、及びメチルエチルケトン(MEK):200部、触媒としてMEKで5%に希釈したジブチル錫ジラウレート:0.01部を配合し、80〜85℃の温度で、窒素気流下、6時間反応を行い、残存イソシアネート基が4.3%のアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
【0165】
次に、60℃まで冷却した後、このアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物全量に、第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物であるシリル化剤(A):24部を配合して混合した後、70℃の温度で、窒素気流下、1.5時間反応を行い、残存イソシアネート基が2.0%のアルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
【0166】
次に、このアルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマーを含む反応混合物全量を40℃まで冷却した後に、トリエチルアミン:11.02部を配合し、高速撹拌下、予めジブチルアミン:3.23部及びIPDA:6.81部をイオン交換水:755部に溶解した水溶液を加えて、分散液を得た。この分散液を減圧下、40〜45℃でMEKを留去させた後、イオン交換水により固形分を26.0質量%に調整し、粘度(23℃;BM型粘度計、ローター:No.1、回転数:30rpm)が155mPa・sであり且つ側鎖にシリル基を有しているウレタン系水性組成物を得た。
【0167】
なお、このウレタン系水性組成物について、実施例1と同様にして、室温で60日間、50℃で30日間、それぞれ保存したが、ゲル化や分離が生じておらず、いずれも粘度は初期粘度の±30%以内であり、良好な保存安定性を示した。また、保存後のウレタン系水性組成物について、実施例1と同様にして耐水性、耐溶剤性及び密着性を評価したところ、初期のウレタン系水性組成物と同等の性能を保持していた。
【0168】
(実施例4)
窒素導入管、温度計、コンデンサー及び撹拌装置の付いた4つ口フラスコに、PTMG2000:80部、DMPA:14.6部、IPDI:120.1部、1,4−BD:27.8部、及びメチルエチルケトン(MEK):200部、触媒としてMEKで5%に希釈したジブチル錫ジラウレート:0.01部を配合し、80〜85℃の温度で、窒素気流下、8時間反応を行い、残存イソシアネート基が2.9%のアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
【0169】
次に、60℃まで冷却した後、このアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物全量に、第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物であるシリル化剤(A):9部を配合して混合した後、70℃の温度で、窒素気流下、1.5時間反応を行い、残存イソシアネート基が2.0%のアルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
【0170】
次に、このアルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマーを含む反応混合物全量を40℃まで冷却した後に、トリエチルアミン:11.02部を配合し、高速撹拌下、予めジブチルアミン:3.13部及びIPDA:6.60部をイオン交換水:750部に溶解した水溶液を加えて、分散液を得た。この分散液を減圧下、40〜45℃でMEKを留去させた後、イオン交換水により固形分を25.2質量%に調整し、粘度(23℃;BM型粘度計、ローター:No.1、回転数:30rpm)が175mPa・sであり且つ側鎖にシリル基を有しているウレタン系水性組成物を得た。
【0171】
なお、このウレタン系水性組成物について、実施例1と同様にして、室温で60日間、50℃で30日間、それぞれ保存したが、ゲル化や分離が生じておらず、いずれも粘度は初期粘度の±30%以内であり、良好な保存安定性を示した。また、保存後のウレタン系水性組成物について、実施例1と同様にして耐水性、耐溶剤性及び密着性を評価したところ、初期のウレタン系水性組成物と同等の性能を保持していた。
【0172】
(実施例5)
窒素導入管、温度計、コンデンサー及び撹拌装置の付いた4つ口フラスコに、PTMG2000:80部、DMPA:14.6部、IPDI:120.1部、1,4−BD:18.7部、及びメチルエチルケトン(MEK):200部、触媒としてMEKで5%に希釈したジブチル錫ジラウレート:0.01部を配合し、80〜85℃の温度で、窒素気流下、5時間反応を行い、残存イソシアネート基が6.6%のアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
【0173】
次に、60℃まで冷却した後、このアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物全量に、第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物であるシリル化剤(A):47.4部を配合して混合した後、70℃の温度で、窒素気流下、1.5時間反応を行い、残存イソシアネート基が2.0%のアルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
【0174】
次に、このアルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマーを含む反応混合物全量を40℃まで冷却した後に、トリエチルアミン:11.02部を配合し、高速撹拌下、予めジブチルアミン:0.35部及びIPDA:9.35部をイオン交換水:705部に溶解した水溶液を加えて、分散液を得た。この分散液を減圧下、40〜45℃でMEKを留去させた後、イオン交換水により固形分を28.8質量%に調整し、粘度(23℃;BM型粘度計、ローター:No.2、回転数:30rpm)が225mPa・sであり且つ側鎖にシリル基を有しているウレタン系水性組成物を得た。
【0175】
なお、このウレタン系水性組成物について、実施例1と同様にして、室温で60日間、50℃で30日間、それぞれ保存したが、ゲル化や分離が生じておらず、いずれも粘度は初期粘度の±30%以内であり、良好な保存安定性を示した。また、保存後のウレタン系水性組成物について、実施例1と同様にして耐水性、耐溶剤性及び密着性を評価したところ、初期のウレタン系水性組成物と同等の性能を保持していた。
【0176】
(実施例6)
窒素導入管、温度計、コンデンサー及び撹拌装置の付いた4つ口フラスコに、NS2400:80部、DMPA:14.6部、IPDI:119.9部、1,6−HD:24.3部、及びメチルエチルケトン(MEK):200部、触媒としてMEKで5%に希釈したジブチル錫ジラウレート:0.01部を配合し、80〜85℃の温度で、窒素気流下、5時間反応を行い、残存イソシアネート基が6.5%のアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
【0177】
次に、60℃まで冷却した後、このアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物全量に、第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物であるシリル化剤(A):47.4部を配合して混合した後、70℃の温度で、窒素気流下、1.5時間反応を行い、残存イソシアネート基が2.0%のアルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
【0178】
次に、このアルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマーを含む反応混合物全量を40℃まで冷却した後に、トリエチルアミン:11.02部を配合し、高速撹拌下、予めジブチルアミン:3.60部及びIPDA:7.58部をイオン交換水:600部に溶解した水溶液を加えて、分散液を得た。この分散液を減圧下、40〜45℃でMEKを留去させた後、イオン交換水により固形分を32.3質量%に調整し、粘度(23℃;BM型粘度計、ローター:No.1、回転数:30rpm)が110mPa・sであり且つ側鎖にシリル基を有しているウレタン系水性組成物を得た。
【0179】
なお、このウレタン系水性組成物について、実施例1と同様にして、室温で60日間、50℃で30日間、それぞれ保存したが、ゲル化や分離が生じておらず、いずれも粘度は初期粘度の±30%以内であり、良好な保存安定性を示した。また、保存後のウレタン系水性組成物について、実施例1と同様にして耐水性、耐溶剤性及び密着性を評価したところ、初期のウレタン系水性組成物と同等の性能を保持していた。
【0180】
(実施例7)
窒素導入管、温度計、コンデンサー及び撹拌装置の付いた4つ口フラスコに、T4672:80部、DMPA:14.6部、IPDI:119.5部、1,4−BD:18.7部、及びメチルエチルケトン(MEK):200部、触媒としてMEKで5%に希釈したジブチル錫ジラウレート:0.01部を配合し、80〜85℃の温度で、窒素気流下、5時間反応を行い、残存イソシアネート基が6.6%のアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
【0181】
次に、60℃まで冷却した後、このアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物全量に、第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物であるシリル化剤(A):47.4部を配合して混合した後、70℃の温度で、窒素気流下、1.5時間反応を行い、残存イソシアネート基が2.0%のアルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
【0182】
次に、このアルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマーを含む反応混合物全量を40℃まで冷却した後に、トリエチルアミン:11.02部を配合し、高速撹拌下、予めジブチルアミン:3.48部及びIPDA:7.32部をイオン交換水:700部に溶解した水溶液を加えて、分散液を得た。この分散液を減圧下、40〜45℃でMEKを留去させた後、イオン交換水により固形分を28.7質量%に調整し、粘度(23℃;BM型粘度計、ローター:No.1、回転数:30rpm)が60mPa・sであり且つ側鎖にシリル基を有しているウレタン系水性組成物を得た。
【0183】
なお、このウレタン系水性組成物について、実施例1と同様にして、室温で60日間、50℃で30日間、それぞれ保存したが、ゲル化や分離が生じておらず、いずれも粘度は初期粘度の±30%以内であり、良好な保存安定性を示した。また、保存後のウレタン系水性組成物について、実施例1と同様にして耐水性、耐溶剤性及び密着性を評価したところ、初期のウレタン系水性組成物と同等の性能を保持していた。
【0184】
(実施例8)
窒素導入管、温度計、コンデンサー及び撹拌装置の付いた4つ口フラスコに、PTMG2000:80部、DMPA:14.6部、IPDI:120.1部、1,4−BD:18.7部、及びメチルエチルケトン(MEK):200部、触媒としてMEKで5%に希釈したジブチル錫ジラウレート:0.01部を配合し、80〜85℃の温度で、窒素気流下、5時間反応を行い、残存イソシアネート基が6.6%のアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
【0185】
次に、60℃まで冷却した後、このアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物全量に、第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物であるシリル化剤(A):47.4部を配合して混合した後、70℃の温度で、窒素気流下、1.5時間反応を行い、残存イソシアネート基が2.0%のアルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
【0186】
次に、このアルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマーを含む反応混合物全量を40℃まで冷却した後に、トリエチルアミン:11.02部を配合し、高速撹拌下、予めジブチルアミン:17.36部をイオン交換水:850部に溶解した水溶液を加えて、分散液を得た。この分散液を減圧下、40〜45℃でMEKを留去させた後、イオン交換水により固形分を24.2質量%に調整し、粘度(23℃;BM型粘度計、ローター:No.1、回転数:30rpm)が155mPa・sであり且つ側鎖にシリル基を有しているウレタン系水性組成物を得た。
【0187】
なお、このウレタン系水性組成物について、実施例1と同様にして、室温で60日間、50℃で30日間、それぞれ保存したが、ゲル化や分離が生じておらず、いずれも粘度は初期粘度の±30%以内であり、良好な保存安定性を示した。また、保存後のウレタン系水性組成物について、実施例1と同様にして耐水性、耐溶剤性及び密着性を評価したところ、初期のウレタン系水性組成物と同等の性能を保持していた。
【0188】
(実施例9)
窒素導入管、温度計、コンデンサー及び撹拌装置の付いた4つ口フラスコに、PTMG2000:75部、バイロン220:75部、DMPA:22.7部、IPDI:89.8部、及びメチルエチルケトン(MEK):200部、触媒としてMEKで5%に希釈したジブチル錫ジラウレート:0.01部を配合し、80〜85℃の温度で、窒素気流下、6時間反応を行い、残存イソシアネート基が5.2%のアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
【0189】
次に、60℃まで冷却した後、このアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物全量に、第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物であるシリル化剤(A):33.7部を配合して混合した後、70℃の温度で、窒素気流下、1.5時間反応を行い、残存イソシアネート基が2.0%のアルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
【0190】
次に、60℃まで冷却した後、このアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物全量に、第2級アミノ基を単数含有するアルコキシシラン化合物であるシリル化剤(F):84.00部を配合して混合した後、70℃の温度で、窒素気流下、1.5時間反応を行い、アルコキシシリル基を側鎖および末端に含有している水分散性ウレタンを含む反応混合物を得た。
【0191】
次に、このアルコキシシリル基を側鎖および末端に含有している水分散性ウレタンを含む反応混合物全量を40℃まで冷却した後に、トリエチルアミン:17.13部を配合し、高速撹拌下、イオン交換水:600部を加えて、分散液を得た。この分散液を減圧下、40〜45℃でMEKを留去させた後、イオン交換水により固形分を38.1%に調整し、粘度(23℃;BM型粘度計、ローター:No.1、回転数:30rpm)が50mPa・sであり且つ側鎖(側鎖及び末端)にシリル基を有しているウレタン系水性組成物を得た。
【0192】
なお、このウレタン系水性組成物について、実施例1と同様にして、室温で60日間、50℃で30日間、それぞれ保存したが、ゲル化や分離が生じておらず、いずれも粘度は初期粘度の±30%以内であり、良好な保存安定性を示した。また、保存後のウレタン系水性組成物について、実施例1と同様にして耐水性、耐溶剤性及び密着性を評価したところ、初期のウレタン系水性組成物と同等の性能を保持していた。
【0193】
(実施例10)
窒素導入管、温度計、コンデンサー及び撹拌装置の付いた4つ口フラスコに、PTMG2000:80部、DMPA:14.6部、IPDI:120.1部、1,4−BD:18.7部、及びメチルエチルケトン(MEK):200部、触媒としてMEKで5%に希釈したジブチル錫ジラウレート:0.01部を配合し、80〜85℃の温度で、窒素気流下、5時間反応を行い、残存イソシアネート基が6.6%のアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
【0194】
次に、60℃まで冷却した後、このアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物全量に、第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物であるシリル化剤(C):41.4部を配合して混合した後、70℃の温度で、窒素気流下、1.5時間反応を行い、残存イソシアネート基が2.0%のアルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
【0195】
次に、このアルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマーを含む反応混合物全量を40℃まで冷却した後に、トリエチルアミン:11.02部を配合し、高速撹拌下、予めジブチルアミン:3.39部及びIPDA:7.15部をイオン交換水:650部に溶解した水溶液を加えて、分散液を得た。この分散液を減圧下、40〜45℃でMEKを留去させた後、イオン交換水により固形分を30.1質量%に調整し、粘度(23℃;BM型粘度計、ローター:No.1、回転数:30rpm)が70mPa・sであり且つ側鎖にシリル基を有しているウレタン系水性組成物を得た。
【0196】
なお、このウレタン系水性組成物について、実施例1と同様にして、室温で60日間、50℃で30日間、それぞれ保存したが、ゲル化や分離が生じておらず、いずれも粘度は初期粘度の±30%以内であり、良好な保存安定性を示した。また、保存後のウレタン系水性組成物について、実施例1と同様にして耐水性、耐溶剤性及び密着性を評価したところ、初期のウレタン系水性組成物と同等の性能を保持していた。
【0197】
(実施例11)
窒素導入管、温度計、コンデンサー及び撹拌装置の付いた4つ口フラスコに、PTMG2000:80部、DMPA:14.6部、IPDI:120.1部、1,4−BD:18.7部、及びメチルエチルケトン(MEK):200部、触媒としてMEKで5%に希釈したジブチル錫ジラウレート:0.01部を配合し、80〜85℃の温度で、窒素気流下、5時間反応を行い、残存イソシアネート基が6.6%のアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
【0198】
次に、60℃まで冷却した後、このアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物全量に、第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物であるシリル化剤(D):36.8部を配合して混合した後、70℃の温度で、窒素気流下、1.5時間反応を行い、残存イソシアネート基が2.0%のアルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
【0199】
次に、このアルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマーを含む反応混合物全量を40℃まで冷却した後に、トリエチルアミン:11.02部を配合し、高速撹拌下、予めジブチルアミン:3.33部及びIPDA:7.02部をイオン交換水:550部に溶解した水溶液を加えて、分散液を得た。この分散液を減圧下、40〜45℃でMEKを留去させた後、イオン交換水により固形分を33.3質量%に調整し、粘度(23℃;BM型粘度計、ローター:No.1、回転数:30rpm)が30mPa・sであり且つ側鎖にシリル基を有しているウレタン系水性組成物を得た。
【0200】
なお、このウレタン系水性組成物について、実施例1と同様にして、室温で60日間、50℃で30日間、それぞれ保存したが、ゲル化や分離が生じておらず、いずれも粘度は初期粘度の±30%以内であり、良好な保存安定性を示した。また、保存後のウレタン系水性組成物について、実施例1と同様にして耐水性、耐溶剤性及び密着性を評価したところ、初期のウレタン系水性組成物と同等の性能を保持していた。
【0201】
(実施例12)
窒素導入管、温度計、コンデンサー及び撹拌装置の付いた4つ口フラスコに、PTMG2000:80部、DMPA:14.6部、IPDI:120.1部、1,4−BD:18.7部、及びメチルエチルケトン(MEK):200部、触媒としてMEKで5%に希釈したジブチル錫ジラウレート:0.01部を配合し、80〜85℃の温度で、窒素気流下、5時間反応を行い、残存イソシアネート基が6.6%のアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
【0202】
次に、60℃まで冷却した後、このアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物全量に、第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物であるシリル化剤(E):39.7部を配合して混合した後、70℃の温度で、窒素気流下、1.5時間反応を行い、残存イソシアネート基が2.0%のアルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
【0203】
次に、このアルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマーを含む反応混合物全量を40℃まで冷却した後に、トリエチルアミン:11.02部を配合し、高速撹拌下、予めジブチルアミン:3.36部及びIPDA:7.09部をイオン交換水:560部に溶解した水溶液を加えて、分散液を得た。この分散液を減圧下、40〜45℃でMEKを留去させた後、イオン交換水により固形分を33.3質量%に調整し、粘度(23℃;BM型粘度計、ローター:No.1、回転数:30rpm)が55mPa・sであり且つ側鎖にシリル基を有しているウレタン系水性組成物を得た。
【0204】
なお、このウレタン系水性組成物について、実施例1と同様にして、室温で60日間、50℃で30日間、それぞれ保存したが、ゲル化や分離が生じておらず、いずれも粘度は初期粘度の±30%以内であり、良好な保存安定性を示した。また、保存後のウレタン系水性組成物について、実施例1と同様にして耐水性、耐溶剤性及び密着性を評価したところ、初期のウレタン系水性組成物と同等の性能を保持していた。
【0205】
(比較例1)
窒素導入管、温度計、コンデンサー及び撹拌装置の付いた4つ口フラスコに、PTMG2000:80部、DMPA:14.6部、IPDI:120.1部、1,4−BD:30部、及びメチルエチルケトン(MEK):200部、触媒としてMEKで5%に希釈したジブチル錫ジラウレート:0.01部を配合し、80〜85℃の温度で、窒素気流下、9時間反応を行い、残存イソシアネート基が2.0%のアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
【0206】
次に、60℃まで冷却した後、このアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物全量に、第2級アミノ基を単数含有するアルコキシシラン化合物であるシリル化剤(H):63.62部を配合して混合した後、70℃の温度で、窒素気流下、1.5時間反応を行い、アルコキシシリル基を末端に含有している水分散性ウレタンを含む反応混合物を得た。
【0207】
次に、このアルコキシシリル基を末端に含有している水分散性ウレタンを含む反応混合物全量を40℃まで冷却した後に、トリエチルアミン:11.02部を配合し、高速撹拌下、イオン交換水:1045部を加えて、分散液を得た。この分散液を減圧下、40〜45℃でMEKを留去させた後、イオン交換水により固形分を22.6質量%に調整し、粘度(23℃;BM型粘度計、ローター:No.1、回転数:30rpm)が95mPa・sであり且つ末端にシリル基を有しているウレタン系水性組成物を得た。
【0208】
(比較例2)
窒素導入管、温度計、コンデンサー及び撹拌装置の付いた4つ口フラスコに、PTMG2000:80部、DMPA:22部、IPDI:120.1部、1,4−BD:25部、及びメチルエチルケトン(MEK):200部、触媒としてMEKで5%に希釈したジブチル錫ジラウレート:0.01部を配合し、80〜85℃の温度で、窒素気流下、9時間反応を行い、残存イソシアネート基が2.0%のアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
【0209】
次に、60℃まで冷却した後、このアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物全量に、第2級アミノ基を単数含有するアルコキシシラン化合物であるシリル化剤(G):54.38部を配合して混合した後、70℃の温度で、窒素気流下、1.5時間反応を行い、アルコキシシリル基を末端に含有している水分散性ウレタンを含む反応混合物を得た。
【0210】
次に、このアルコキシシリル基を末端に含有している水分散性ウレタンを含む反応混合物全量を40℃まで冷却した後に、トリエチルアミン:16.60部を配合し、イオン交換水:870部を加えて、分散液を得た。この分散液を減圧下、40〜45℃でMEKを留去させた後、イオン交換水により固形分を25.4質量%に調整し、粘度(23℃;BM型粘度計、ローター:No.2、回転数:30rpm)が900mPa・sであり且つ末端にシリル基を有しているウレタン系水性組成物を得た。
【0211】
(比較例3)
窒素導入管、温度計、コンデンサー及び撹拌装置の付いた4つ口フラスコに、PTMG2000:80部、DMPA:14.6部、IPDI:120.1部、1,4−BD:30部、及びメチルエチルケトン(MEK):200部、触媒としてMEKで5%に希釈したジブチル錫ジラウレート:0.01部を配合し、80〜85℃の温度で、窒素気流下、9時間反応を行い、残存イソシアネート基が2.0%のアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
【0212】
次に、60℃まで冷却した後、このアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物全量に、第2級アミノ基を単数含有するアルコキシシラン化合物であるシリル化剤(I):68.80部を配合して混合した後、70℃の温度で、窒素気流下、1.5時間反応を行い、アルコキシシリル基を末端に含有している水分散性ウレタンを含む反応混合物を得た。
【0213】
次に、このアルコキシシリル基を末端に含有している水分散性ウレタンを含む反応混合物全量を40℃まで冷却した後に、トリエチルアミン:11.02部を配合し、高速撹拌下、イオン交換水:1025部を加えて、分散液を得た。この分散液を減圧下、40〜45℃でMEKを留去させた後、イオン交換水により固形分を23.2質量%に調整し、粘度(23℃;BM型粘度計、ローター:No.2、回転数:30rpm)が320mPa・sであり且つ末端にシリル基を有しているウレタン系水性組成物を得た。
【0214】
(比較例4)
窒素導入管、温度計、コンデンサー及び撹拌装置の付いた4つ口フラスコに、PTMG2000:80部、DMPA:14.6部、IPDI:120.1部、1,4−BD:30部、及びメチルエチルケトン(MEK):200部、触媒としてMEKで5%に希釈したジブチル錫ジラウレート:0.01部を配合し、80〜85℃の温度で、窒素気流下、9時間反応を行い、残存イソシアネート基が2.0%のアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
【0215】
次に、60℃まで冷却した後、このアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物全量に、第2級アミノ基を単数含有するアルコキシシラン化合物であるシリル化剤(I):13.76部を配合して混合した後、70℃の温度で、窒素気流下、1.5時間反応を行い、アルコキシシリル基を末端に含有している水分散性ウレタンを含む反応混合物を得た。
【0216】
次に、このアルコキシシリル基を末端に含有している水分散性ウレタンを含む反応混合物全量を40℃まで冷却した後に、トリエチルアミン:11.02部を配合し、高速撹拌下、予めIPDA:6.35部をイオン交換水:820部に溶解した水溶液を加えて、分散液を得た。この分散液を減圧下、40〜45℃でMEKを留去させた後、イオン交換水により固形分を24.2質量%に調整し、粘度(23℃;BM型粘度計、ローター:No.2、回転数:30rpm)が330mPa・sであり且つ末端にシリル基を有しているウレタン系水性組成物を得た。
【0217】
(比較例5)
窒素導入管、温度計、コンデンサー及び撹拌装置の付いた4つ口フラスコに、PTMG2000:80部、DMPA:14.6部、IPDI:120.1部、1,4−BD:30部、及びメチルエチルケトン(MEK):200部、触媒としてMEKで5%に希釈したジブチル錫ジラウレート:0.01部を配合し、80〜85℃の温度で、窒素気流下、9時間反応を行い、残存イソシアネート基が2.0%のアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
【0218】
次に、60℃まで冷却した後、このアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物全量に、第2級アミノ基を単数含有するアルコキシシラン化合物であるシリル化剤(J):101.55部を配合して混合した後、70℃の温度で、窒素気流下、1.5時間反応を行い、アルコキシシリル基を末端に含有している水分散性ウレタンを含む反応混合物を得た。
【0219】
次に、このアルコキシシリル基を末端に含有している水分散性ウレタンを含む反応混合物全量を40℃まで冷却した後に、トリエチルアミン:11.02部を配合し、高速撹拌下、イオン交換水:1460部を加えて、分散液を得た。この分散液を減圧下、40〜45℃でMEKを留去させた後、イオン交換水により固形分を19.1質量%に調整し、粘度(23℃;BM型粘度計、ローター:No.2、回転数:30rpm)が620mPa・sであり且つ末端にシリル基を有しているウレタン系水性組成物を得た。
【0220】
(比較例6)
窒素導入管、温度計、コンデンサー及び撹拌装置の付いた4つ口フラスコに、PTMG2000:80部、DMPA:14.6部、IPDI:120.1部、1,4−BD:30部、及びメチルエチルケトン(MEK):200部、触媒としてMEKで5%に希釈したジブチル錫ジラウレート:0.01部を配合し、80〜85℃の温度で、窒素気流下、9時間反応を行い、残存イソシアネート基が2.0%のアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
【0221】
次に、このアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物全量を40℃まで冷却した後に、トリエチルアミン:11.02部を配合し、高速撹拌下、予めジブチルアミン:3.01部及びIPDA:6.35部をイオン交換水:670部に溶解した水溶液を加えて、分散液を得た。この分散液を減圧下、40〜45℃でMEKを留去させた後、イオン交換水により固形分を26.8質量%に調整し、粘度(23℃;BM型粘度計、ローター:No.1、回転数:30rpm)が130mPa・sであり且つシリル基を有していないウレタン系水性組成物を得た。
【0222】
(比較例7)
窒素導入管、温度計、コンデンサー及び撹拌装置の付いた4つ口フラスコに、PTMG2000:80部、DMPA:14.6部、IPDI:120.1部、1,4−BD:30部、及びメチルエチルケトン(MEK):200部、触媒としてMEKで5%に希釈したジブチル錫ジラウレート:0.01部を配合し、80〜85℃の温度で、窒素気流下、9時間反応を行い、残存イソシアネート基が2.0%のアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
【0223】
次に、このアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物全量を40℃まで冷却した後に、トリエチルアミン:11.02部を配合し、高速撹拌下、予めジブチルアミン:15.07部をイオン交換水:725部に溶解した水溶液を加えて、分散液を得た。この分散液を減圧下、40〜45℃でMEKを留去させた後、イオン交換水により固形分を24.6質量%に調整し、粘度(23℃;BM型粘度計、ローター:No.2、回転数:30rpm)が440mPa・sであり且つシリル基を有していないウレタン系水性組成物を得た。
【0224】
(比較例8)
窒素導入管、温度計、コンデンサー及び撹拌装置の付いた4つ口フラスコに、PTMG2000:80部、DMPA:14.6部、IPDI:120.1部、1,4−BD:28.9部、及びメチルエチルケトン(MEK):200部、触媒としてMEKで5%に希釈したジブチル錫ジラウレート:0.01部を配合し、80〜85℃の温度で、窒素気流下、8時間反応を行い、残存イソシアネート基が2.4%のアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
【0225】
次に、60℃まで冷却した後、このアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物全量に、第2級アミノ基及び第1級アミノ基を含有するアルコキシシラン化合物であるシリル化剤(F):2.6部を配合して混合した後、70℃の温度で、窒素気流下、反応を行おうとしたところ、系内がゲル化してしまい、反応を続行させることができなかった。
【0226】
(比較例9)
窒素導入管、温度計、コンデンサー及び撹拌装置の付いた4つ口フラスコに、PTMG2000:80部、DMPA:14.6部、IPDI:120.1部、1,4−BD:18.7部、及びメチルエチルケトン(MEK):200部、触媒としてMEKで5%に希釈したジブチル錫ジラウレート:0.01部を配合し、80〜85℃の温度で、窒素気流下、5時間反応を行い、残存イソシアネート基が6.6%のアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
【0227】
次に、60℃まで冷却した後、このアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物全量に、第2級アミノ基及び第1級アミノ基を含有するアルコキシシラン化合物であるシリル化剤(F):27部を配合して混合した後、70℃の温度で、窒素気流下、反応を行おうとしたところ、系内がゲル化してしまい、反応を続行させることができなかった。
【0228】
なお、実施例1〜12及び比較例1〜9により得られたウレタン系水性組成物について、組成や物性についてのデータを、表1〜3に示した。表1〜3において、「COOH含有率(meq/g)」は、ウレタン系水性組成物における樹脂単位質量中のカルボキシル基(COOH)の含有率(meq/g)を示している。「シリル基含有率(meq/g)」は、ウレタン系水性組成物における樹脂単位質量中のケイ素原子(Si)の含有のモル数(meq/g)を示している。「シリル基量(個/1分子)」は、ウレタン系ポリマーの1分子中のシリル基(トリメトキシシリル基またはメチルジメトキシシリル基)の平均個数(個/1分子)を示している。
【0229】
【表1】

【0230】
【表2】

【0231】
【表3】

【0232】
(評価)
実施例1〜12及び比較例1〜7により得られたウレタン系水性組成物について、下記の評価方法(耐水性の評価方法、耐溶剤性の評価方法、密着性の評価方法)により、耐水性、耐溶剤性、密着性を、それぞれ評価した。評価結果は、表1〜3に併記した。
【0233】
(耐水性の評価方法)
商品名「EMBLET」(ユニチカ社製;ポリエチレンテレフタレートフィルム;銘柄S、厚み25μm)のコロナ放電処理面に対して、ベーカー式アプリケーターを用いて、実施例1〜12及び比較例1〜7により得られた各ウレタン系水性組成物を、乾燥後の塗布量が10g/m2となるように塗布し、120℃で100秒間乾燥させて、ポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の面にウレタン系水性組成物による皮膜を形成させた。この皮膜を有するフィルムを、50℃又は70℃の温水に24時間浸績させた後、皮膜の状態を目視で観察し、下記の耐水性の評価基準により、ウレタン系水性組成物についての耐水性を評価した。
耐水性の評価基準
○:皮膜が透明な状態を保持しており、変化なし。
×:皮膜が白化している。
【0234】
(耐溶剤性の評価方法)
商品名「EMBLET」(ユニチカ社製;ポリエチレンテレフタレートフィルム;銘柄S、厚み25μm)のコロナ放電処理面に対して、ベーカー式アプリケーターを用いて、実施例1〜12及び比較例1〜7により得られた各ウレタン系水性組成物を、乾燥後の塗布量が10g/m2となるように塗布し、120℃で100秒間乾燥させて、ポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の面にウレタン系水性組成物による皮膜を形成させた。この皮膜を有するフィルムを、テトラヒドロフラン(THF)に、23℃で24時間浸績させた後、皮膜の状態を目視で観察し、下記の耐溶剤性の評価基準により、ウレタン系水性組成物についての耐溶剤性を評価した。
耐溶剤性の評価基準
○:皮膜が溶解せず、元の状態を保持している。
×:皮膜が溶解している。
【0235】
(密着性の評価方法)
商品名「EMBLET」(ユニチカ社製;ポリエチレンテレフタレートフィルム;銘柄S、厚み25μm)のコロナ放電処理面に対して、ベーカー式アプリケーターを用いて、実施例1〜12及び比較例1〜7により得られた各ウレタン系水性組成物を、乾燥後の塗布量が10g/m2となるように塗布し、120℃で100秒間乾燥させて、ポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の面にウレタン系水性組成物による皮膜を形成させた。この皮膜を有するフィルムに対して、1cm×1cmで1mm間隔の碁盤目になるようにカッターで、皮膜が形成されている側の表面に切れ込みを入れ、上から粘着テープ(商品名「4051P−18」(ニチバン社製)を貼り、1kgのローラーで10往復させた後、200mm/sの引張速度且つ剥離角度180°で粘着テープを剥がして、180°剥離試験を行い、その際の剥離状態を目視で観察し、下記の密着性の評価基準により、ウレタン系水性組成物についての密着性を評価した。
密着性の評価基準
◎:ポリエチレンテレフタレートフィルムに裂ける部分が生じている。
○:ポリエチレンテレフタレートフィルムが、剥離により伸長し、ポリエチレンテレフタレートフィルムが白くなっている。
△:皮膜を形成しているウレタン系水性組成物層の凝集破壊が生じている。
×:ポリエチレンテレフタレートフィルムと皮膜との界面で剥離が生じている。
【0236】
(実施例13)
窒素導入管、温度計、コンデンサー及び撹拌装置の付いた4つ口フラスコに、PTMG2000:80部、DMPA:14.6部、IPDI:120.1部、1,4−BD:18.7部、及びメチルエチルケトン(MEK):200部、触媒としてMEKで5%に希釈したジブチル錫ジラウレート:0.01部を配合し、80〜85℃の温度で、窒素気流下、5時間反応を行い、残存イソシアネート基が6.6%のアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
【0237】
次に、60℃まで冷却した後、このアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物全量に、第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物として、商品名「X−12−5283」[信越化学工業社製;構造式:(CH3O)3Si(CH23NH(CH22NH(CH23Si(OCH33]:44.9部を配合して混合した後、70℃の温度で、窒素気流下、1.5時間反応を行い、残存イソシアネート基が2.0%のアルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
【0238】
次に、このアルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマーを含む反応混合物全量を40℃まで冷却した後に、トリエチルアミン:11.02部を配合し、高速撹拌下、予めジブチルアミン:3.47部及びIPDA:7.25部をイオン交換水:710部に溶解した水溶液を加えて、分散液を得た。この分散液を減圧下、40〜45℃でMEKを留去させた後、イオン交換水により固形分を28.6質量%に調整し、粘度(23℃;BM型粘度計、ローター:No.1、回転数:30rpm)が10mPa・sであり且つ側鎖にシリル基を有しているウレタン系水性組成物を得た。
【0239】
この側鎖にシリル基を有しているウレタン系水性組成物について、前記の密着性の評価方法により、密着性を評価したところ、「○:ポリエチレンテレフタレートフィルムが、剥離により伸長し、ポリエチレンテレフタレートフィルムが白くなっている。」の評価結果が得られた。
【0240】
なお、実施例13に係る側鎖にシリル基を有しているウレタン系水性組成物について、ウレタン系水性組成物における樹脂単位質量中のカルボキシル基(COOH)の含有率(meq/g)[COOH含有率(meq/g)]は、0.38(meq/g)であった。また、ウレタン系水性組成物における樹脂単位質量中のケイ素原子(Si)の含有のモル数(meq/g)[シリル基含有率(meq/g)]は、0.81(meq/g)であった。さらに、アルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマーの1分子中のシリル基(トリメトキシシリル基)の平均個数(個/1分子)[シリル基量(個/1分子)]は、17.8(個/1分子)であった。
【0241】
(実施例14)
窒素導入管、温度計、コンデンサー及び撹拌装置の付いた4つ口フラスコに、PTMG2000:80部、DMPA:13.9部、IPDI:120.1部、1,4−BD:25.2部、及びメチルエチルケトン(MEK):200部、触媒としてMEKで5%に希釈したジブチル錫ジラウレート:0.01部を配合し、80〜85℃の温度で、窒素気流下、6時間反応を行い、残存イソシアネート基が4.1%のアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
【0242】
次に、60℃まで冷却した後、このアニオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物全量に、第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物として、商品名「X−12−5283」[信越化学工業社製;構造式:(CH3O)3Si(CH23NH(CH22NH(CH23Si(OCH33]:21部を配合して混合した後、70℃の温度で、窒素気流下、1.5時間反応を行い、残存イソシアネート基が2.0%のアルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
【0243】
次に、このアルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマーを含む反応混合物全量を40℃まで冷却した後に、トリエチルアミン:10.49部を配合し、高速撹拌下、予めジブチルアミン:3.21部及びIPDA:6.76部をイオン交換水:725部に溶解した水溶液を加えて、分散液を得た。この分散液を減圧下、40〜45℃でMEKを留去させた後、イオン交換水により固形分を26.7質量%に調整し、粘度(23℃;BM型粘度計、ローター:No.2、回転数:30rpm)が300mPa・sであり且つ側鎖にシリル基を有しているウレタン系水性組成物を得た。
【0244】
この側鎖にシリル基を有しているウレタン系水性組成物について、前記の密着性の評価方法により、密着性を評価したところ、「◎:ポリエチレンテレフタレートフィルムに裂ける部分が生じている。」の評価結果が得られた。
【0245】
なお、実施例14に係る側鎖にシリル基を有しているウレタン系水性組成物について、ウレタン系水性組成物における樹脂当たり単位質量中のカルボキシル基(COOH)の含有率(meq/g)[COOH含有率(meq/g)]は、0.38(meq/g)であった。また、ウレタン系水性組成物における樹脂単位質量中のケイ素原子(Si)の含有のモル数(meq/g)[シリル基含有率(meq/g)]は、0.41(meq/g)であった。さらに、アルコキシシリル基側鎖含有水分散性ウレタンプレポリマーの1分子中のシリル(トリメトキシシリル基)の平均個数(個/1分子)[シリル基量(個/1分子)]は、8.9(個/1分子)であった。
【0246】
(弾性特性の評価)
実施例1及び比較例1に係る側鎖又は末端にシリル基を有しているウレタン系水性組成物(すなわち、実施例1に係るシリル化ウレタン系水性組成物は、側鎖にシリル基を有しているウレタン系水性組成物であり、比較例1に係るシリル化ウレタン系水性組成物は、末端にシリル基を有しているウレタン系水性組成物である)について、下記の弾性特性の測定方法により、側鎖又は末端にシリル基を有しているウレタン系水性組成物に関する弾性率に関するデータ[動的貯蔵弾性率(E´)、動的損失弾性率(E″)、損失正接(tanδ)]を測定したところ、図1に示されるようなグラフが得られた。なお、「実線」で示されるグラフ(データ)が実施例1に関するデータであり、「+」で示されるグラフ(データ)が比較例1に関するデータである。また、グラフの左端側(低温度側)で上段に位置している「実線」及び「+」で示されるグラフは動的貯蔵弾性率(E´)に関しており、グラフの左端側で中段に位置している「実線」及び「+」で示されるグラフは損失正接(tanδ)に関しており、グラフの左端側で下段に位置している「実線」及び「+」で示されるグラフは動的損失弾性率(E″)に関している。さらに、図1で示されるグラフにおいて、横軸(X軸)は、温度(Temp.;℃)である。一方、縦軸(Y軸)は、動的貯蔵弾性率(E´)(Pa)、動的損失弾性率(E″)(Pa)、損失正接(tanδ)に関しており、グラフの左側に位置している2つの目盛りのうち左側の目盛りが損失正接(tanδ)の目盛り(0.0001〜2.8000の範囲;常用対数表示)となっており、グラフの左側に位置している2つの目盛りのうち右側の目盛りが動的貯蔵弾性率(E´)(Pa)の目盛り(3.0×106〜6.0×109の範囲;常用対数表示)となっており、グラフの右側の目盛りが動的損失弾性率(E″)(Pa)(1.0×103〜1.4×1014の範囲;常用対数表示)となっている。
【0247】
(弾性特性の測定方法)
ガラス板(10cm×10cm、厚み:0.1cm)に、商品名「EMBLET」(ユニチカ社製;ポリエチレンテレフタレートフィルム;銘柄S、厚み:25μm)を、コロナ放電処理面がガラス板側に位置する形態で(すなわち、コロナ放電の未処理面が外面側に位置する形態で)貼り合わせ、ガラス板に貼り合わせられたポリエチレンテレフタレートフィルム上の端に「TMテープW1」(コニシ社製、両面テープ、厚み:1.15mm)を2重に貼って、枠を形成させた。そして、この枠内に、乾燥後の皮膜の厚みが0.5mmになるように、各ウレタン系水性組成物を流し込み、95℃で3時間乾燥させた後、さらに70℃で1週間乾燥させ、ポリエチレンテレフタレートフィルムにおけるコロナ放電未処理面上に、ウレタン系水性組成物の皮膜を形成した。次に、ウレタン系水性組成物の皮膜を、40mm×10mmのサイズ(厚み:0.5mm)で切り出した。その後、皮膜の粘弾性測定機器である商品名「DMS6100」(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を用いて、切り出した皮膜の粘弾性測定を行い(測定条件;昇温速度:2℃/分、周波数:1Hz、チャック間距離:20mm、歪振幅:10μm、最小張力/圧縮力:100mN、張力/圧縮力ゲイン:1.5)、弾性率に関するデータ[動的貯蔵弾性率(E´)、動的損失弾性率(E″)、損失正接(tanδ)]を求めた。
【0248】
図1で示されるグラフより、実施例1に係る側鎖にシリル基を有しているウレタン系水性組成物は、比較例1に係る末端にシリル基を有しているウレタン系水性組成物よりも、動的貯蔵弾性率(E´)が、温度の上昇により低下し始める温度が高くなっている(図1で示されるグラフのうち、低温側で上段に位置している「実線」及び「+」で示されるグラフ)。逆に言えば、比較例1に係る末端にシリル基を有しているウレタン系水性組成物の動的貯蔵弾性率(E´)が急激に低下している温度域における何れかの温度(例えば、100℃)に関する動的貯蔵弾性率の値よりも、実施例1に係る側鎖にシリル基を有しているウレタン系水性組成物における前記温度に関する動的貯蔵弾性率の値の方が大きくなっている。従って、実施例1に係る側鎖にシリル基を有しているウレタン系水性組成物は、高温時でも皮膜物性を有効に保持することが可能となっており、動的貯蔵弾性率(E´)が106Paのオーダーのゴム状平坦部から106Pa以下の流動域に移行する温度が高く、耐熱クリープ温度が高く、皮膜物性が優れていることが確認できる。
【0249】
このように、シリル化剤として、第2級アミノ基複数含有アルコキシシラン化合物を用いることにより、シリル基を有しているウレタン系水性組成物の耐熱性を有効にコントロールすることが可能であることが確認された。
【0250】
さらに、実施例に係るシリル基を有しているウレタン系水性組成物は、硬化反応が水の減少により進行するため、多数のアルコキシシリル基を有していても、保存安定性が極めて良好である。
【0251】
従って、密着性が優れているシリル化ウレタン系水性組成物が得られた。特に、耐水性や耐熱性とともに、接着性、密着性、皮膜物性や保存安定性が優れているシリル化ウレタン系水性組成物が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0252】
【図1】図1は、実施例においてウレタン系水性組成物の弾性特性を評価した際に得られた弾性率に関するデータのグラフを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分散性シリル化ウレタン系樹脂を含有するシリル化ウレタン系水性組成物であって、水分散性シリル化ウレタン系樹脂が、第2級アミノ基を少なくとも2つ含有するアルコキシシラン化合物により、少なくとも1つのアルコキシシリル基が分子中に側鎖として導入された構成を有している水分散性シリル化ウレタン系樹脂であることを特徴とするシリル化ウレタン系水性組成物。
【請求項2】
第2級アミノ基を少なくとも2つ含有するアルコキシシラン化合物が、第2級アミノ基を含有する基を有している第2級アミノ基が、2価の有機基を介して又は介さずにアルコキシシリル基の珪素原子に結合している形態の、第2級アミノ基を少なくとも2つ含有するアルコキシシラン化合物である請求項1記載のシリル化ウレタン系水性組成物。
【請求項3】
第2級アミノ基を少なくとも2つ含有するアルコキシシラン化合物が、第1級アミノ基及び第2級アミノ基を、それぞれ、少なくとも1つ含有するアルコキシシラン化合物と、炭素−炭素二重結合を有する化合物又はイソシアネート基を有する化合物との反応により得られる、第2級アミノ基を少なくとも2つ含有するアルコキシシラン化合物である請求項1又は2記載のシリル化ウレタン系水性組成物。
【請求項4】
炭素−炭素二重結合を有する化合物が、α,β−不飽和カルボン酸系化合物である請求項3記載のシリル化ウレタン系水性組成物。
【請求項5】
α,β−不飽和カルボン酸系化合物が、アルキルエステル部位におけるアルキル基の炭素数が1〜20である不飽和脂肪族カルボン酸アルキルエステルである請求項4記載のシリル化ウレタン系水性組成物。
【請求項6】
少なくとも1つのアルコキシシリル基が分子中に側鎖として導入された構成を有している水分散性シリル化ウレタン系樹脂が、第2級アミノ基を少なくとも2つ含有するアルコキシシラン化合物、アニオン性基非含有で且つ複数のイソシアネート反応性基を含有する化合物、アニオン性基及び複数のイソシアネート反応性基を含有する化合物、およびポリイソシアネート化合物を反応して得られる、アルコキシシリル基を側鎖に有する水分散性ウレタンプレポリマー(A)である請求項1〜5の何れかの項に記載のシリル化ウレタン系水性組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2007−326985(P2007−326985A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−160592(P2006−160592)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【出願人】(000105648)コニシ株式会社 (217)
【Fターム(参考)】