説明

シリンジポンプ

【課題】 シリンジポンプを構成するスライダ送り機構において、安定した直線動作を低コストで実現することを目的とする。
【解決手段】 スライダ組立体とスライダ送り機構とを備え、シリンジ内に充填された薬剤を送り出すシリンジポンプであって、前記スライダ送り機構は、ハーフナット501と、クラッチレバーの操作に伴って回動し、ハーフナット501を歯合位置から非歯合位置へと回動させる非歯合化部材510と、ハーフナット501が歯合位置にある場合に、ハーフナット501の送りねじ303の回転軸方向の動きを規制するとともに、非歯合化部材510が回動した場合に、ハーフナット501を支持位置から退避位置へと移動する支持部材520とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
患者への栄養補給や輸血、化学療法剤・麻酔剤などの薬液の注入に際して、従来より、シリンジポンプが利用されている。シリンジポンプは、薬液等の内容物が充填されたシリンジを支持台に装着し、スライダ組立体をシリンダ押子に当接させたうえで動作開始ボタンを押下し、スライダ組立体によってシリンジ押子を押圧させることで、シリンジ内の内容物を送り出す装置である。当該シリンジポンプによれば、長時間にわたって高い精度で流量制御を行うことができる。
【0003】
このようなシリンジポンプでは、スライダ組立体によってシリンジ押子を押圧させるにあたり、スライダ送り機構と呼ばれる動力伝達機構を用いて、モータの回転駆動を直線動作に変換している。
【0004】
具体的には、モータの回転駆動に伴って回転する送りねじに対して、ハーフナットを歯合させ、送りねじの回転に伴って、当該ハーフナットを直線動作させることで、パイプシャフトを介して接続されたスライダ組立体を直線動作させる構成となっている(例えば、上記特許文献1参照)。
【0005】
更に、スライダ組立体には、クラッチレバーが配されており、クラッチレバーを操作することで、パイプシャフト内に配されたインナークラッチシャフトが回動し、送りねじに対するハーフナットの歯合状態を解除させることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−306991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のようなスライダ送り機構を備えるシリンジポンプでは、一般に、送りねじとして、金属材料を切削加工したものを用いていた。しかしながら、金属材料を切削加工した送りねじの場合、ねじ部の歯形状を鋸歯形状(送液方向側の歯面を90°)にできるため、歯合したハーフナットが外れにくいといったメリットがある一方で、製造コストがかかるといったデメリットもある。
【0008】
このため、低コストなスライダ送り機構を実現すべく、例えば、転造加工により送りねじを実現することが考えられる。しかしながら、転造加工によりねじ面を形成する場合、加工可能な断面形状に一定の制約が生じる。具体的には、送りねじの歯形状として、送液方向側の面を90°に加工することができない。このため、従来のスライダ送り機構と比べ、ハーフナットの歯合が外れやすくクラッチ外れ(ハーフナットと送りねじとの歯合が外れる現象)や半クラッチ時(ハーフナットと送りねじとの歯合がやや外れた状態)にハーフナットのねじ先端部に集中応力が作用し、歯が破損するというデメリットがある。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、シリンジポンプを構成するスライダ送り機構において、安定した直線動作を低コストで実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明に係るシリンジポンプは以下のような構成を備える。即ち、
シリンジ押子に当接されるスライダ組立体と、該スライダ組立体と連結され、該スライダ組立体を該シリンジ押子の押圧方向にスライドさせるスライダ送り機構と、を備え、該スライダ組立体により該シリンジ押子を押圧することで、シリンジ内に充填された薬剤を送り出すシリンジポンプであって、
前記スライダ送り機構は、
送りねじに歯合し、該送りねじの回転に伴って前記シリンジ押子の押圧方向に動作するハーフナットと、
前記スライダ組立体に配されたレバーの操作に伴って回動し、前記ハーフナットを、前記送りねじと歯合する歯合位置から前記送りねじと歯合しない非歯合位置まで回動させる非歯合化部材と、
前記ハーフナットが前記歯合位置にある場合に、該ハーフナットを前記送りねじの回転軸方向に支持することで該ハーフナットの前記送りねじの回転軸方向の動きを規制するとともに、前記非歯合化部材が回動した場合に、該ハーフナットを前記送りねじの回転軸方向に支持する支持位置から、支持しない退避位置へと移動する支持部材とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シリンジポンプを構成するスライダ送り機構において、歯合が確実で、安定した直線動作を低コストで実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るシリンジポンプの外観構成の一例を示す図である。
【図2】シリンジポンプのスライダ組立体の構成を示す図である。
【図3】シリンジポンプのスライダ送り機構の構成を示す図である。
【図4】スライダ送り機構のナットホルダの外観構成を示す図である。
【図5】ナットホルダの内部構成を示す図である。
【図6】ナットホルダの歯合状態と非歯合状態とを説明するための図である。
【図7】ナットホルダの歯合状態と非歯合状態とを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
[第1の実施形態]
1.シリンジポンプの外観構成
図1は、本発明の一実施形態に係るシリンジポンプ100の外観構成である。図1において、ポールの上段の載置具に取り付けられたシリンジポンプは、シリンジSがセットされる前の状態を、ポールの下段の載置具に取り付けられたシリンジポンプは、シリンジSがセットされた後の状態を、それぞれ示している。
【0015】
図1に示すように、シリンジポンプ100は、シリンジSの本体部SBを挟持しつつフランジ部SFを嵌合させることで、シリンジSをシリンジポンプ100に装着するシリンジ固定部120と、シリンジ押子SPを矢印140方向(押圧方向)に押圧するために、不図示のスライダ送り機構と連結されたスライダ組立体130と、シリンジポンプ100に対する各種設定や動作指示を行ったり、設定内容や動作状態を表示したりするための操作パネル110とを備える。
【0016】
シリンジ固定部120は、シリンジSの本体部SBの外周面を下側から支持する支持台122と、該支持台122との間で、シリンジSの本体部SBの外周面を挟持するクランプ121とを備えており、これにより、シリンジポンプ100上におけるシリンジSのX軸方向及びZ軸方向の位置が規定されることとなる。更に、シリンジ固定部120は、フランジ部SFが嵌合されることで、シリンジSのY軸方向の位置を規定する凹部123を備える。
【0017】
スライダ組立体130は、矢印140方向にスライド可能に構成された当接部136を備える。当接部136は、不図示のパイプシャフト、インナークラッチシャフトを介して不図示のスライダ送り機構に連結されており、当該スライダ送り機構が動作することにより、矢印140方向にスライドする。
【0018】
当接部136は、更に、クラッチレバー131を有しており、当該クラッチレバー131が押圧されることにより、左右フック132、133が開方向に動作するとともに、インナークラッチシャフトが回動し、スライダ送り機構を構成する送りねじと該送りねじに歯合するハーフナットとの歯合状態が解除される。なお、左右フック132、133は閉方向に付勢されており、クラッチレバー131に対する押圧力が解除されると、閉方向に戻ることとなる。
【0019】
このため、看護師等のユーザが、シリンジ固定部120にシリンジSを装着した後、クラッチレバー131を押圧したまま(つまり、左右フック132、133を開いた状態で)当接部136をシリンジ押子SPに当接させ、その後、クラッチレバー131から手を放すと、当接部136は、シリンジ押子SPに接続されることとなる(図1のうち、下段の載置具に取り付けられたシリンジポンプ100参照)。このようにして、シリンジSのシリンジポンプ100へのセットが完了する。
【0020】
ここで、当接部136の上面には、当接部136が、シリンジ押子SPに正しく接続できなかった場合にこれを検出し、点灯または点滅するランプ134が設けられている。これにより、ユーザは、当接部136がシリンジ押子SPに正しく接続されていないことを認識することができる。
【0021】
操作パネル110は、各種設定や動作指示を受け付けたり、設定内容や動作状態を表示したりするための機器が配列されている。
【0022】
2.スライダ組立体の構成
次に、スライダ組立体130に接続されたパイプシャフト及びインナークラッチシャフトについて説明する。図2はスライダ組立体130の外観構成を示す図である。
【0023】
図2に示すように、スライダ組立体130には、防水のためのブーツ203内に、中空のパイプシャフト201の一端が接続されている。パイプシャフト201の他端は、スライダ送り機構に配されたナットホルダ(後述)に接続されており、当該ナットホルダに内蔵されたハーフナットが送りねじの回転に伴って直線動作することで、パイプシャフト201が直線動作し、その結果、スライダ組立体130が矢印140方向にスライドする。
【0024】
また、パイプシャフト201内には、インナークラッチシャフト202が配されており、クラッチレバー131が押圧されることにより、回動するよう構成されている。クラッチレバー131の押圧に伴ってインナークラッチシャフト202が回動することにより、ナットホルダに内蔵されたハーフナットが回動し、送りねじとの歯合状態が解除されることとなる。
【0025】
3.スライダ送り機構の構成
図3は、シリンジポンプ100のスライダ送り機構300の構成を示す図である。図3において、301はステッピングモータであり、ギア302を介して送りねじ303に接続されている。304、305は案内部材であり、スライダ組立体130に接続されたパイプシャフト201を、送りねじ303に対して平行移動するように軸支している。
【0026】
なお、送りねじ303は鋼のような金属材料を転造加工することにより構成されているものとし、拡大領域310に示すように、ねじの断面形状は送液方向(送液方向)に対して、角度α=約85°の傾き、ねじ山のピッチはP=約0.75mm、角度β=約40°、高さH=0.6mmをもって構成されているものとする。このような構成により、加工が容易で、切削加工に比べ低いコストで送りねじが作成できるという効果が得られる。また、ハーフナットとの歯合が確実で非歯合も容易に行うことができる。
【0027】
306はナットホルダであり、送りねじ303と歯合するハーフナットを備える。ハーフナットは、インナークラッチシャフト202の回動に伴って回動するよう構成されており、インナークラッチシャフト202の回動に伴って、送りねじ303と歯合する歯合位置と、歯合が解除された非歯合位置との間を回動する。ナットホルダ306には、更に、パイプシャフト201の一端が接続されている。また、動作方向を規定する平行軸部材307が挿通されている。
【0028】
このような構成を備えることにより、ハーフナットが歯合位置にある場合にあっては、送りねじ303が回転すると、ハーフナットが矢印140方向に直線動作し、これに伴って、ハーフナットを保持するナットホルダ306及びナットホルダ306に接続されたパイプシャフト201が矢印140方向にスライドすることとなる。
【0029】
一方、クラッチレバー131が操作されハーフナットが非歯合位置にある場合にあっては、ユーザがスライダ組立体130を矢印140方向に移動させることで、ナットホルダ306は矢印140方向に移動することとなる。そして、ユーザが任意の位置でクラッチレバー131から手を放すことで、インナークラッチシャフト202が回動し、ハーフナットは再び歯合状態となる。つまり、ユーザは、任意の位置で、ハーフナットを送りねじ303に歯合させることができる。
【0030】
4.ナットホルダの構成
次にナットホルダ306の構成について説明する。図4はナットホルダ306の外観構成を示す図である。
【0031】
図4に示すように、ナットホルダ306には、送りねじ303を貫通させる貫通穴401と、送りねじ303の回転に伴って、内蔵されたハーフナット(樹脂成型品)が送りねじ303に沿って移動する場合に、ナットホルダ306を送りねじ303に平行に移動させるための平行軸部材307に摺動させる摺動穴402とが設けられている。なお、パイプシャフト201はナットホルダ306のハウジングに接続されており、パイプシャフト201内に配されたインナークラッチシャフト202は、不図示の穴を介して、ナットホルダ306内においてハーフナットを保持している。
【0032】
図5は、ナットホルダ306の内部構成を示す図である。図5に示すように、ナットホルダ306には、ハーフナット501が内蔵されている。ハーフナット501は、ねじ部502が送りねじ303に歯合した場合に、送りねじ303の回転に伴って、矢印140方向に移動するよう構成されている。
【0033】
また、ハーフナット501は、パイプシャフト201に内挿されたインナークラッチシャフト202の周面に対して回動可能に保持される回動穴503を有しており、当該回動穴503にインナークラッチシャフト202が挿通されることで、ハーフナット501がインナークラッチシャフト202によって回動可能に保持される。
【0034】
ハーフナット501は、更に、後述する非歯合化部材510によって押圧されることで、ハーフナット501をインナークラッチシャフト202の周面に沿って非歯合位置まで回動させる回動シャフト504を備える。更に、ハーフナット501が歯合位置にある場合に、後述する支持部材520によって送りねじ303の回転軸方向に押圧される押圧面505を備える。
【0035】
また、ナットホルダ306には、更に、非歯合化部材510が内蔵されている。非歯合化部材510は、ハーフナット501の回動穴503を介してインナークラッチシャフト202と接続されており、インナークラッチシャフト202の回動に伴って回動する。非歯合化部材510が回動することにより、非歯合化部材510の当接面511が回動シャフト504に当接し、回動シャフト504を押圧することで、ハーフナット501が非歯合位置まで回動する。
【0036】
ナットホルダ306には、更に、支持部材520が内蔵されている。支持部材520は、ハーフナット501が歯合位置において送りねじ303に歯合した状態で、ハーフナット501の押圧面505を送りねじ303の回転軸方向に押圧する第1の面521と、非歯合化部材510が回動した場合に、非歯合化部材510の当接面511が当接する第2の面522と、非歯合位置に回動したハーフナット501を歯合位置に戻す方向に押圧する第3の面523とを備える。
【0037】
支持部材520は、ハーフナット501が送りねじ303に歯合した状態で、ハーフナット501の押圧面505を支持する支持位置と、ハーフナット501が非歯合位置に回動する際に、干渉することがないように退避する退避位置との間を移動可能となるように構成されている。
【0038】
ナットホルダ306には、更に、弾性部材530が内蔵されている。弾性部材530は、非歯合化部材510が回動した際に非歯合化部材510の当接面511が支持部材520の第2の面522に当接することで支持部材520が移動する退避位置方向と反対方向(つまり支持位置方向)に、支持部材520を付勢している(つまり、付勢部材として機能する)。
【0039】
5.ハーフナットの歯合状態と非歯合状態について
次に、ナットホルダ306に内蔵された各部材が動作することで、ハーフナット501が歯合位置と非歯合位置との間を回動する機構について、図6を用いて説明する。
【0040】
図6(a)は、ハーフナット501が送りねじ303に歯合した状態を示している。ハーフナット501が送りねじ303に歯合した状態では、弾性部材530が支持部材520を支持位置方向に付勢することで、ハーフナット501の押圧面505を支持部材520の第1の面521が、送りねじ303の回転軸方向に押圧している。これにより、ハーフナット501の送りねじの回転軸方向の動きが規制されることとなる。このため、送りねじ303が回転した場合に、送りねじ303に対してハーフナット501が外れることなく、安定して直線動作することとなる。
【0041】
図6(b)は、クラッチレバー131が操作され、インナークラッチシャフト202が回動した様子を示している。インナークラッチシャフト202が回動することで、図6(b)に示すように、非歯合化部材510が回動し、非歯合化部材510の当接面511が、支持部材520の第2の面522に当接する。これにより、弾性部材530による支持位置方向への付勢に対して、支持部材520が退避位置方向に移動する。
【0042】
この結果、支持部材520の第1の面521がハーフナット501の押圧面505から離れ、ハーフナット501は支持部材520によって支持されてない状態となる。この状態で、非歯合化部材510が更に回動することで、非歯合化部材510の当接面511は、更に、ハーフナット501の回動シャフト504に当接する。
【0043】
非歯合化部材510の当接面511がハーフナット501の回動シャフト504に当接することで、ハーフナット501は、インナークラッチシャフト202周りに非歯合位置方向に回動する。このとき、非歯合化部材510の当接面511は、支持部材520の第2の面522も押圧しているため、支持部材520は、更に、退避位置方向へと移動することとなる。
【0044】
図6(c)は、ハーフナット501が非歯合位置まで回動した様子を示している。図6(c)に示すように、ハーフナット501が非歯合位置まで回動した状態では、非歯合化部材510が回動シャフト504を介してハーフナット501を非歯合位置の方向に押圧するとともに、支持部材520を退避位置方向に押圧している。
【0045】
なお、図6(c)に示す状態で、クラッチレバー131から手を放すと、弾性部材530の支持位置方向への付勢力によって、支持部材520が支持位置方向へと移動する。これにより、支持部材520の第3の面523がハーフナット501の押圧面505を押圧し、ハーフナット501が歯合位置方向へと回動する(図6(b))。そして、ハーフナット501が歯合位置まで回動することで、支持部材520の第1の面521がハーフナット501の押圧面505の下側に完全に入り込み、ハーフナット501を送りねじ303の回転軸方向に押圧することとなる(図6(a))。このように、ナットホルダ306では、ハーフナット501の歯合位置から非歯合位置への回動方向と、支持部材520の支持位置から退避位置への移動方向とが、略直交するように構成されている。
【0046】
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係るシリンジポンプ100では、送りねじを転造加工し、ハーフナットを樹脂成型品にすることで、低コスト化を実現することが可能となった。
【0047】
また、転造加工することに伴って、ハーフナットが送りねじから外れやすくなることに鑑みて、本実施形態に係るシリンジポンプ100では、ハーフナットの背面を支持部材によって支持する構成とした。これにより、送りねじの回転中にハーフナットが送りねじから外れてしまうといった事態を回避することが可能となった。
【0048】
更に、ハーフナットを非歯合位置に回動可能とするために、支持部材を支持位置と退避位置との間で移動可能となるように構成した。そして、支持部材を退避位置に移動させるための動作と、ハーフナットを非歯合位置に回動させるための動作とを、1つの部材(非歯合化部材)によって実現させる構成とした。この結果、従来のシリンジポンプの操作と同様の操作で、ハーフナットを非歯合位置と歯合位置との間で回動させることが可能となった。
【0049】
また、送液中に何らかの事象によって送液路が閉塞し、スライダ組立体130に負荷が作用した場合でも非歯合化部材がハーフナットを支持しているため、送りねじと安定した歯合状態を維持できるという効果が得られる。更に、容易な操作により非歯合状態にすることができる。
【0050】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態では、ハーフナットを回動させるために回動シャフトを設け、非歯合化部材の当接面を当接させる構成としたが、本発明はこれに限定されず、例えば、ハーフナットに保持凹部を設け、当該保持凹部内に非歯合化部材を配し、非歯合化部材が回動した際に、当該保持凹部の側壁の一部に非歯合化部材の当接面を当接させるように構成してもよい。
【0051】
また、上記第1の実施形態では、非歯合化部材の当接面が支持部材の第3の面に当接することで、支持部材を退避位置方向に押圧する構成としたが、本発明はこれに限定されず、例えば、支持部材に突起部を設け、当該突起部に非歯合化部材の当接面を当接させる構成としてもよい。
【0052】
更に、上記第1の実施形態では、非歯合化部材の当接面が、回動シャフトと支持部材の第3の面とを押圧する構成としたが、本発明はこれに限定されず、ハーフナットを非歯合位置方向に回動させるために当接する面と、支持部材を退避位置方向に移動させるために当接する面とを別々に設けるように構成してもよい。
【0053】
図7(a)〜(c)は、ハーフナット701に保持凹部707を設け、当該保持凹部707内に非歯合化部材710を配し、当該保持凹部707の側壁の一部に非歯合化部材710の第1の当接面711が当接するように構成するとともに、支持部材720に突起部722を設け、非歯合化部材710の第1の当接面711とは異なる第2の当接面712が、当該突起部722に当接するように構成した機構の一例を示す図である。
【0054】
図7(a)〜(c)の例によれば、インナークラッチシャフト202の回動に伴って、非歯合化部材710が回動した場合、第2の当接面712が突起部722に当接し、支持部材720が退避位置方向に移動する。これにより、支持部材720の第1の面521がハーフナット701の押圧面505から離れ、ハーフナット701は支持部材720によって支持されていない状態となる(図7(b))。この状態で、非歯合化部材710が更に回動することで、非歯合化部材710の第1の当接面711が、ハーフナット701の保持凹部707の側壁704の一部に当接する。
【0055】
非歯合化部材710の第1の当接面711がハーフナット701の保持凹部707の側壁704の一部に当接することで、ハーフナット701は、インナークラッチシャフト202周りに非歯合位置方向に回動する。このとき、非歯合化部材710の第2の当接面712は、支持部材720の突起部722を押圧しているため、支持部材720は、更に、退避位置方向に移動する。この結果、ハーフナット701は非歯合位置まで回動することとなる(図7(c))。
【0056】
以上の説明から明らかなように、上述した機構を用いた場合であっても、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0057】
100:シリンジポンプ、110:操作パネル、120:シリンジ固定部、121:クランプ、122:支持台、123:凹部、130:スライダ組立体、131:クラッチレバー、132:左フック、133:右フック、134:ランプ、136:当接部、201:パイプシャフト、202:インナークラッチシャフト、300:スライダ送り機構、301:ステッピングモータ、302:ギア、303:送りねじ、304:案内部材、305:案内部材、306:ナットホルダ、307:平行軸部材、401:貫通穴、402:摺動穴、501:ハーフナット、502:ねじ部、503:回動穴、504:回動シャフト、505:押圧面、510:非歯合化部材、511:当接面、520:支持部材、521:第1の面、522:第2の面、523:第3の面、530:弾性部材、701:ハーフナット、704:側壁、707:保持凹部、710:非歯合化部材、711:第1の当接面、712:第2の当接面、720:支持部材、722:突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジ押子に当接されるスライダ組立体と、該スライダ組立体と連結され、該スライダ組立体を該シリンジ押子の押圧方向にスライドさせるスライダ送り機構と、を備え、該スライダ組立体により該シリンジ押子を押圧することで、シリンジ内に充填された薬剤を送り出すシリンジポンプであって、
前記スライダ送り機構は、
送りねじに歯合し、該送りねじの回転に伴って前記シリンジ押子の押圧方向に動作するハーフナットと、
前記スライダ組立体に配されたレバーの操作に伴って回動し、前記ハーフナットを、前記送りねじと歯合する歯合位置から前記送りねじと歯合しない非歯合位置まで回動させる非歯合化部材と、
前記ハーフナットが前記歯合位置にある場合に、該ハーフナットを前記送りねじの回転軸方向に支持することで該ハーフナットの前記送りねじの回転軸方向の動きを規制するとともに、前記非歯合化部材が回動した場合に、該ハーフナットを前記送りねじの回転軸方向に支持する支持位置から、支持しない退避位置へと移動する支持部材と
を備えることを特徴とするシリンジポンプ。
【請求項2】
前記支持部材を、前記退避位置から前記支持位置の方向へと付勢する付勢部材を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のシリンジポンプ。
【請求項3】
前記ハーフナットは、前記非歯合化部材が回動し、該非歯合化部材の一部が、該ハーフナットの一部に当接することで、前記非歯合位置へと回動するよう構成され、
前記支持部材は、前記非歯合化部材が回動し、該非歯合化部材の一部が、該支持部材の一部に当接することで、前記退避位置へと移動するよう構成され、
前記非歯合化部材は、前記レバーの操作に伴って回動した場合に、前記支持部材の一部に当接した後に、前記ハーフナットの一部に当接するよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシリンジポンプ。
【請求項4】
前記ハーフナットの前記歯合位置から前記非歯合位置への回動方向と、前記支持部材の前記支持位置から前記退避位置への移動方向とは、略直交するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシリンジポンプ。
【請求項5】
前記送りねじは金属材料を転造加工することにより形成され、前記ハーフナットは樹脂成型品として形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシリンジポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−206376(P2011−206376A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78610(P2010−78610)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】