説明

シリンジ搬送装置

【課題】シリンジの他の部材に対する摩擦を最小化しつつ、シリンジを搬送する。
【解決手段】シリンジの重量を受け止めるための重量保持平面と、重量保持平面に直角な方向に延びてシリンジに接触してシリンジの長手方向に直角な方向おけるシリンジの移動を防止するための溝であり溝の長手方向両端のうちの一方は重量保持表面に開口して中央円筒部を収容するための溝と、を備える保持部材を、支持案内部材により支持案内して保持部材を移動軸線に沿って移動可能にし、更に、保持部材駆動部材により保持部材を駆動して保持部材に保持されるシリンジを移動軸線に沿って搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直方向下方への気体流中で、注射針が取付けられるべき先端部と、中央筒部と、中央筒部から半径方向外方に延びる後端部とを備える注射器用シリンジを、先端部を後端部の下方に保持した状態で、搬送するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
注射針が取付けられるべき先端部と、中央筒部と、中央筒部から半径方向外方に延びる後端部とを備える注射用シリンジを、先端部を後端部の下方に保持した状態で、搬送する従来の装置においては、搬送方向に延びる溝内に中央筒部を収容し、更に溝の上端から溝の深さ方向に直角に延びる支持表面上に後端部を接触させてシリンジの重量を負担した状態で、中央筒部に接触して中央筒部を搬送方向に付勢する搬送部材により、溝に沿って案内されるシリンジを溝と支持表面とに対して滑り移動させて、搬送方向に搬送する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、シリンジの他の部材に対する摩擦を最小化しつつ、シリンジを搬送することである。更に、シリンジの搬送に際し、注射針まで連通可能なようにシリンジの長手方向においてシリンジを貫通する内部孔(注射用薬剤を収容可能な)内に、異物が進入することを効果的に抑制することである。
【課題を解決するための手段とそれによる効果】
【0004】
本発明によれば、垂直方向下方への気体流中で、注射針が取付けられるべき先端部と、中央筒部と、中央筒部から半径方向外方に延びる後端部とを備える注射器用シリンジを保持搬送するための装置は、
後端部に接触してシリンジの重量を受け止めてシリンジの長手方向におけるシリンジの移動を防止するための重量保持平面と、重量保持平面に直角な方向に延びてシリンジに接触してシリンジの長手方向に直角な方向おけるシリンジの移動を防止するための溝であり溝の長手方向両端のうちの一方は重量保持表面に開口して中央円筒部を収容するための溝と、を備える保持部材と、
溝の長手方向に平行な方向において保持部材に対して移動可能である開閉部材であり、開閉部材の一部は、溝内にシリンジが保持される時に溝からシリンジが離脱することを防止するための重量保持平面に対して比較的近い位置と、溝に対してのシリンジの出入りを可能にするための重量保持平面に対して比較的離れた位置との間で、移動可能な開閉部材と、
保持部材を支持案内して保持部材を移動軸線に沿って移動可能にする支持案内部材と、
保持部材を駆動して保持部材に保持されるシリンジを移動軸線に沿って搬送するための保持部材駆動部材と、
開閉部材を駆動して保持部材に対して移動させるための開閉部材駆動部材と、を有する。
保持部材が、支持案内部材により支持案内され、保持部材駆動部材により駆動されて、搬送されるので、シリンジの他の部材に対する摩擦を防止しつつ、シリンジを搬送することが可能となる。
【0005】
保持部材は、貫通孔を有し、貫通孔は、重量保持平面に隣り合って開口しつつその全長に渡って重量保持平面に直角に直線的に延びるならば、貫通孔は、保持部材の剛性(断面二次モーメント)の低下を伴わずに保持部材を軽量化するのに有効(穴開き構造=高剛性軽量構造)であると共に、シリンジ周囲の保持部材の部分に気体が衝突した後にシリンジを貫通する内部孔に侵入することを抑制し、シリンジの内部孔内に、異物が進入することを効果的に抑制する。
【0006】
開閉部材は、保持部材により回転軸線回りに回転可能に支持され、回転軸線は、重量保持平面より空気流下流側に配置されるならば、開閉部材の回転に伴い発生する可能性がある異物が、シリンジの内部孔内に進入することを効果的に抑制する。
【0007】
保持部材は、支持案内部材に接触して支持案内部材に対して移動する接触部分を有し、接触部分は、重量保持平面より空気流下流側に配置されるならば、接触部分と支持案内部材との間の接触移動に伴い発生する可能性がある異物が、シリンジの内部孔内に進入することを効果的に抑制する。
【0008】
保持部材は、保持部材駆動部材に接触して保持部材駆動部材に対して移動する被駆動部分を有し、被駆動部分は、重量保持平面より空気流下流側に配置されるならば、被駆動部分と保持部材駆動部材との間の接触に伴い発生する可能性がある異物が、シリンジの内部孔内に進入することを効果的に抑制する。
【0009】
開閉部材は、開閉部材駆動部材に接触して開閉部材駆動部材により付勢される被付勢部分を有し、被付勢部分は、重量保持平面より空気流下流側に配置されるならば、被付勢部分と開閉部材駆動部材との間の接触に伴い発生する可能性がある異物が、シリンジの内部孔内に進入することを効果的に抑制する。
【0010】
保持部材駆動部材が、支持案内部材より空気流下流側に配置されるならば、比較的大きな接触応力が生じる保持部材駆動部材と保持部材との間の接触に伴い発生する可能性がある異物が、空気流上流側へ移動することが支持案内部材により妨げられ、シリンジの内部孔内に進入することを効果的に抑制する。
【0011】
溝は、前記開閉部材の一部が前記重量保持平面に対して比較的近い位置にある時、溝の長手方向における前記開閉部材の一部の両側に存在するよう配置されるならば、溝からのシリンジの離脱や溝内でのシリンジの移動が、開閉部材の一部により効果的に抑制される。
【0012】
保持部材は、長穴を有し、長穴の長手方向に延びる長穴内壁平面は移動軸線に直角であり、長穴は長穴の長手方向と移動軸線とに直角な方向において保持部材を貫通して、保持部材駆動部材に対して静止する位置から発射され移動軸線に直角な方向に進行する光線が(長穴内壁平面のみ(長穴内壁湾曲面以外の)に沿って)保持部材を通過することを許容し、光線の長穴通過の可否に基づき保持部材の移動軸線に沿った方向における位置を検出するならば、保持部材の軸線方向における位置測定が、光線の位置や方向の誤差を大きく許容しつつ、精度良く行なわれる。
【0013】
開閉部材は、移動軸線方向において保持部材と共に移動するならば、開閉部材とシリンジとの接触による異物発生の可能性を低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明による注射用シリンジ搬送装置の実施例を、図1と図2とを参照しつつ説明する。シリンジ搬送装置は、シリンジ10(注射針(図示されない)が取付けられるべき先端部10aと、中央筒部10bと、中央筒部10bから半径方向外方に延びる後端部10cとを備える)に接触してシリンジ10を保持しつつ移動軸線に沿って移動可能な保持部材と、保持部材からのシリンジの離脱を防止するための移動可能な開閉部材2と、保持部材を移動軸線に沿って移動するよう案内する三次元において相互に平行な円筒シャフトである支持案内部材3と、保持部材を移動軸線に沿って移動するよう駆動する保持部材駆動部材4と、開閉部材2を駆動して保持部材に対して移動させるための開閉部材駆動器5とを備える。
【0015】
保持部材は、後端部10bに接触してシリンジ10の重量を受け止めてシリンジ10の長手方向におけるシリンジ10の移動を防止するための重量保持平面1aと、重量保持平面1aに直角な方向に延びてシリンジ10に接触してシリンジ10の長手方向に直角な方向おけるシリンジの移動を防止するための溝1bであり溝の長手方向両端のうちの一方は重量保持表面1aに開口して中央円筒部10bを収容するための溝1bと、を備える保持部材本体1と、保持部材本体1がスペーサー11を介して取付けられるベースプレート12とを備える。
保持部材は更に、ピニオンギア(図示しないモーターにより駆動される)である保持部材駆動部材4と係合して駆動されベースプレート12及びスペーサー11を介して保持部材本体1を移動させるラック13と、ベースプレート12に固定されるピン14a及びピン14a上で回転可能に支持され支持案内部材3の円筒形外面を挟み込むV溝を有するローラー14bとを有するガイドローラー14とを更に有している。各支持案内部材3には移動軸線方向に離れた二つのローラー14bが係合し、一方の支持案内部材3に係合するローラー14bともう一方の支持案内部材3に係合するローラー14bとの間の支持案内部材3の長手方向軸線に直角な方向における間隔は、保持部材が支持案内部材3に沿ってガタ無く移動できるよう調整されている。なお、支持案内部材3は、図示しない装置本体に固定されている。
【0016】
保持部材本体1は、重量保持平面1aに隣り合って開口する貫通孔1cを有し、貫通孔1cはその全長に渡って重量保持平面1aに直角に直線的に延び、保持部材本体1を貫通している。
開閉部材2は、アーム20と枢動軸21とを介して、ベースプレート12に固定されるブロック22上に取付けられ、枢動軸21はブロック22により回転可能に支持され、アーム20は枢動軸21に固定されて、開閉部材2が保持部材本体1に対して回転移動可能となる。枢動軸21上には更に、接続部材23が固定され、接続部材23上にはボール24が固定されている。更に接続部材23には図示されないスプリングの一端が接続されそのスプリングの他の一端はプレート12に接続され、開閉部材2を上方に向けて付勢するよう接続部材23を弾性的に付勢している。接続部材23の回転動作範囲は、開閉部材2がシリンジ10に過大な力を加えないよう、更に、開閉部材2が過大に下方へ移動しないよう、プレート12に固定された図示しない制限部材により限定されている。
【0017】
図示されない装置本体に固定されている開閉部材駆動器5は、リニアアクチュエーター(例えば空気圧シリンダ)5aと、移動軸線に平行な押圧平面を備えリニアアクチュエーター5aにより移動軸線に直角な方向に移動される開閉部材駆動部材5bを備え、保持部材本体1の移動に伴いボール24が、押圧平面とボール24との間の接触可能領域内に在る所定位置に達すると、それまで移動軸線に直角な方向においてボール24から押圧平面が離隔される位置に存在した開閉部材駆動部材5bが、リニアアクチュエーター5aにより駆動されて、ボール24を押して開閉部材2を下方に移動させ、開閉部材2はシリンジ10の保持部材への装着やシリンジ10の保持部材からの取り外しを可能にするように下方位置に静止して保持される。シリンジ10の保持部材への装着やシリンジ10の保持部材からの取り外しが完了すると、開閉部材駆動部材5bはリニアアクチュエーター5aにより駆動されてボール24から押圧平面が離隔される位置に戻り、開閉部材2はシリンジ10の保持部材本体1からの離脱を防止するよう水平方向においてシリンジ10に対面しかつ溝1bの垂直方向領域内となる上方位置に静止して保持される。
開閉部材駆動器5は開閉部材駆動部材としてのカム部材であっても良く、カム部材は、移動軸線方向に平行に延びる位置決め面と、位置決め面に隣接する斜面とを備え、保持部材本体1の移動に伴いボール24が斜面に達すると、ボール24は斜面に沿って移動して開閉部材2を下方に移動させ、位置決め面上にボール24が在る時は開閉部材2はシリンジ10の保持部材への装着やシリンジ10の保持部材からの取り外しを可能にするように下方位置に静止して保持され、保持部材本体1が移動軸線に沿って更に移動してボール24とカム部材とが離隔すると、開閉部材2はシリンジ10の保持部材本体1からの離脱を防止するよう水平方向においてシリンジ10に対面しかつ溝1bの垂直方向領域内となる上方位置に静止して保持されても良い。
【0018】
プレート12は、長穴12aを備え、長穴12aの長手方向に延びる長穴内壁平面は移動軸線に直角であり、長穴12aは長穴12aの長手方向と移動軸線とに直角な方向においてプレート12を貫通して、図示されない装置本体に対して固定された発光器から発射され移動軸線に直角な方向に進行し受光器31により検知される光線がプレート12を通過することを許容し、光線の長穴プレート12a通過の可否に基づき保持部材の移動軸線に沿った方向における位置を検出することを可能にする。長穴12aの移動軸線におけるピッチを、溝1bの移動軸線におけるピッチと一致させることにより、シリンジの所要測定地点通過を効率良く検知することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明により、シリンジの内部孔(注射用薬剤を収容可能な)内への異物の進入の可能性を減少させるための垂直方向上方から下方への気体流下において使用されるのに最適な、注射器用シリンジ搬送装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による注射器用シリンジ搬送装置の実施例を示す部分断面斜視図。
【図2】本発明による注射器用シリンジ搬送装置の実施例を示す展開斜視図。
【符号の説明】
【0021】
1 保持部材本体
2 開閉部材
3 支持案内部材
4 保持部材駆動部材
5 開閉部材駆動器
10 シリンジ
11 スペーサー
12 プレート
12a 長穴
13 ラック
14 ガイドローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直方向下方への気体流中で、注射針が取付けられるべき先端部と、中央筒部と、中央筒部から半径方向外方に延びる後端部とを備える注射器用シリンジを保持搬送するための装置であり、
後端部に接触してシリンジの重量を受け止めてシリンジの長手方向におけるシリンジの移動を防止するための重量保持平面と、重量保持平面に直角な方向に延びてシリンジに接触してシリンジの長手方向に直角な方向おけるシリンジの移動を防止するための溝であり溝の長手方向両端のうちの一方は重量保持表面に開口して中央円筒部を収容するための溝と、を備える保持部材と、
溝の長手方向に平行な方向において保持部材に対して移動可能である開閉部材であり、開閉部材の一部は、溝内にシリンジが保持される時に溝からシリンジが離脱することを防止するための重量保持平面に対して比較的近い位置と、溝に対してのシリンジの出入りを可能にするための重量保持平面に対して比較的離れた位置との間で、移動可能な開閉部材と、
保持部材を支持案内して保持部材を移動軸線に沿って移動可能にする支持案内部材と、
保持部材を駆動して保持部材に保持されるシリンジを移動軸線に沿って搬送するための保持部材駆動部材と、
開閉部材を駆動して保持部材に対して移動させるための開閉部材駆動部材と、
を有する装置。
【請求項2】
保持部材は、重量保持平面に隣り合って開口する貫通孔を有し、貫通孔はその全長に渡って重量保持平面に直角に直線的に延びる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
開閉部材は、保持部材により回転軸線回りに回転可能に支持され、回転軸線は、重量保持平面より空気流下流側に配置される、請求項1又は請求項2に記載の装置。
【請求項4】
保持部材は、支持案内部材に接触して支持案内部材に対して移動する接触部分を有し、接触部分は、重量保持平面より空気流下流側に配置される、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
保持部材は、保持部材駆動部材に接触して保持部材駆動部材に対して移動する被駆動部分を有し、被駆動部分は、重量保持平面より空気流下流側に配置される、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
開閉部材は、開閉部材駆動部材に接触して開閉部材駆動部材により付勢される被付勢部分を有し、被付勢部分は、重量保持平面より空気流下流側に配置される、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
保持部材駆動部材は、支持案内部材より空気流下流側に配置される、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
溝は、前記開閉部材の一部が前記重量保持平面に対して比較的近い位置にある時、溝の長手方向における前記開閉部材の一部の両側に存在するよう配置される、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
保持部材は、長穴を有し、長穴の長手方向に延びる長穴内壁平面は移動軸線に直角であり、長穴は長穴の長手方向と移動軸線とに直角な方向において保持部材を貫通して、保持部材駆動部材に対して静止する位置から発射され移動軸線に直角な方向に進行する光線が保持部材を通過することを許容し、光線の長穴通過の可否に基づき保持部材の移動軸線に沿った方向における位置を検出する、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
開閉部材は、移動軸線方向において保持部材と共に移動する、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−18879(P2009−18879A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−180708(P2007−180708)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(595092673)株式会社ケーテー製作所 (1)
【Fターム(参考)】