説明

シリンジ組立装置

【課題】バレルの中のガスケットにプランジャロッドをねじ込むに際し、ねじ込みを最後まで確実に遂行することができるシリンジ組立装置を提供する。
【解決手段】バレル支持装置22は、バレル101を、軸線を垂直にし、且つプランジャロッド106が挿入される開口部を上に向けた状態で回転可能に支持する。プランジャロッド支持装置26のチャック29は、プランジャロッド106を、当該プランジャロッドの軸線まわり回転と軸線方向の滑りの両方を止める第1挟み付け態勢で挟んでバレル101に挿入した後、当該プランジャロッドの軸線回り回転は止めるが軸線方向の滑りは止めない第2挟み付け態勢に転ずる。荷重付与装置35の質量でプランジャロッド106に軸線方向下向きの荷重をかけておいて、回転付与装置60により、ガスケット104とプランジャロッド106のねじ込みが行われる方向の回転をバレル101に与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療行為に用いるシリンジの組立装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薬液を注射するシリンジは、近年、予め薬液を充填したプレフィルドシリンジの形で出荷されることが多くなっている。バレルとプランジャからなるシリンジの構造例を図14から図16に示す。
【0003】
バレル101は円筒形の合成樹脂製部品であり、一端には注射針を取り付けるためのルアーテーパ部が形成される。ルアーテーパ部はゴムあるいは軟質合成樹脂からなる密封部材102で栓をされる。ルアーテーパ部の太さに絞り込まれる途中の下向きの段部はテーパ部101aとなっている。バレル101の他端にはフランジ103が形成される。フランジ103は人差指と中指を掛けるグリップ部材(図示せず)を取り付けるためのものであり、それは円形ではなく、長軸と短軸を有する形状となっている。図15(a)にはフランジ103を隅丸長方形とした例を示したが、それ以外の形状、例えば楕円形であってもよい。
【0004】
バレル101の中にはゴムまたは軟質合成樹脂製のガスケット104が挿入される。ガスケット104の、ルアーテーパ部の方を向いている端面と反対側の端面には、バレル101の軸線中心と重なる位置に、ねじ部105が形成される。ねじ部105は右ねじの雌ねじである。
【0005】
ガスケット104にはプランジャロッド106が組み合わせられる。プランジャロッド106は断面形状十字形の合成樹脂製部品で、一端には親指の腹を受けるノブ107が形成される。プランジャロッド106の他端には、軸線中心の位置に、ガスケット104のねじ部105にねじ込まれるねじ部108が形成される。ねじ部108は右ねじの雄ねじである。ねじ部108をバレル101の中のガスケット104のねじ部105にねじ込んで締め付けることにより、ガスケット104とプランジャロッド106は一体的に連結されてプランジャ109(図16参照)を構成し、バレル101とプランジャ109はシリンジ100を構成する。
【0006】
シリンジ100が組み立てられた後、図17に示すようにバレル101の外周面にラベル110が貼付される。ラベル110には、シリンジ100の内容物である薬液についての情報と、薬液量の目盛り111が表示されている。
【0007】
シリンジ100の製造には自動化ラインが用いられる。自動化ラインの中には、バレルの中のガスケットにプランジャロッドをねじ込むという作業を行う組立装置が含まれる。このような組立装置の例を特許文献1、2に見ることができる。
【0008】
特許文献1記載のシリンジ組立装置では、プランジャロッドを一定高さのところに回転不能に支持しておき、バレルの方を回転させることで、プランジャロッドのねじ込みが行われる。バレルは、その側壁に斜め状態に設けたベルト機構によって回転せしめられる。また、バレルが配列盤(ホイール)で搬送される間にラベル貼りが行われる。
【0009】
特許文献2記載のシリンジ組立装置では、立体カムのカム形状により上下するスライダでプランジャロッドを回転不能に支持し、バレルの方を回転させることで、プランジャロッドのねじ込みが行われる。バレルはベルトによって回転せしめられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−95746号公報
【特許文献2】特開2004−195556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
バレルに摩擦接触して回転を伝えるベルトは、バレルの自由な上下動を阻害するものでもある。特許文献1記載の装置の場合、ベルトの斜め配置角度とねじのリード角は正確に一致している必要がある。そうでないと、ねじ込みによるバレルの上昇にベルトが追随しないことから、ねじ込みの回転角度が不足したままねじ込みステーションを通過してしまうことになりかねない。言い方を変えると、シリンジの種類の違いによりねじのリード角が変化する度にベルトの斜め配置角度を調整しなければならない。
【0012】
特許文献2記載の装置では、バレルの回転に合わせてプランジャロッドを下げる必要があるが、ガスケットの位置に狂いがあったりすると、ガスケットのねじ部がリード角でプランジャロッドを引き下げる動きと、立体カムでスライダを下げる動きの間に齟齬が生じ、これまたねじ込みの回転角度が不足したままねじ込みステーションを通過してしまうことになりかねない。
【0013】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、バレルの中のガスケットにプランジャロッドをねじ込むに際し、ねじ込みを最後まで確実に遂行することができるシリンジ組立装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明によるシリンジ組立装置は、バレル内のガスケットにプランジャロッドをねじ込むにあたり、バレルを、軸線を垂直にし、且つプランジャロッドが挿入される開口部を上に向けた状態で、所定の高さ位置に回転可能に支持するバレル支持装置と、前記プランジャロッドを挟み、軸線を垂直にした状態で、前記バレルの開口部の上に整列させるチャックと、前記チャックに挟まれた前記プランジャロッドに対し、自身の質量で荷重をかける荷重付与装置を備えたプランジャロッド支持装置と、前記バレルを軸線まわりに回転させる回転付与装置を備え、前記チャックに挟まれて先端を前記バレル内に挿入された前記プランジャロッドに対し、前記荷重付与装置が軸線方向下向きの荷重をかけ、この状態で、前記回転付与装置が、前記ガスケットとプランジャロッドのねじ込みが行われる方向の回転を前記バレルに与えることを特徴としている。
【0015】
この構成によると、自身の質量で荷重をかける荷重付与装置でプランジャロッドに軸線方向下向きの荷重をかけつつ回転付与装置でバレルを回転させてガスケットとプランジャロッドのねじ込みを行うものであるから、ねじ込みの進行につれてプランジャロッドは自然に下がり、ガスケットのねじ部がリード角でプランジャロッドを引き下げる動きと、プランジャロッドの実際の動きの間に齟齬が生じることがなく、ねじ込みを最後まで確実に遂行することができる。
【0016】
また本発明は、上記シリンジ組立装置において、前記チャックは、前記プランジャロッドの軸線まわり回転と軸線方向の滑りの両方を止める第1挟み付け態勢と、前記プランジャロッドの軸線回り回転は止めるが軸線方向の滑りは止めない第2挟み付け態勢をとり得るものであり、前記プランジャロッド支持装置は、前記第1挟み付け態勢で前記プランジャロッドを挟んだ前記チャックを下降させてプランジャロッド先端を前記バレル内に挿入する第1動作と、前記チャックを前記第2挟み付け態勢にして前記荷重付与装置でプランジャロッドに軸線方向下向きの荷重をかける第2動作を遂行し、前記回転付与装置は、前記プランジャロッド支持装置が前記第2動作を遂行するとき、前記バレルに回転を与えることを特徴としている。
【0017】
この構成によると、チャックがプランジャロッドの軸線回り回転は止めるがプランジャロッドの軸線方向の滑りは止めないという第2挟み付け態勢にあるとき、荷重付与装置でプランジャロッドに軸線方向下向きの荷重をかけつつ回転付与装置でバレルを回転させてガスケットとプランジャロッドのねじ込みを行うものであるから、プランジャロッドの下降が妨げられることなくねじ込みが進行する。
【0018】
また本発明は、上記シリンジ組立装置において、前記バレル支持装置とプランジャロッド支持装置は、垂直軸線まわりに回転するタレットの周縁に複数個ずつ等角度間隔で配置され、前記チャック上下装置は、前記プランジャロッド支持装置の周回軌跡に沿って配置された立体カムと、前記タレットに上下可能に支持され、前記立体カムのカム形状に沿って上下するチャック支持シャフトを含み、前記回転付与装置は、前記タレットと中心を同じくする円弧軌道上を往復運動するロータリーシャトルに支持されるものであり、前記タレット、ロータリーシャトル、及び回転付与装置は、それぞれ独立のモータで駆動されることを特徴としている。
【0019】
この構成によると、ねじ込みを最後まで遂行するのに必要なバレルの回転角度やバレルの外径などのパラメータが変化したときは、回転付与装置のモータの制御プログラムを変えることで簡単に対処でき、使い勝手が良い。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、バレル内のガスケット位置に誤差が生じていたとしても、ガスケットとプランジャロッドに所期のねじ込みを達成させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るシリンジ組立装置の概略構成を模式的に示す平面図である。
【図2】バレル支持装置及びプランジャロッド支持装置の部分の垂直断面図である。
【図3】全開態勢のチャックの平面図である。
【図4】第1挟み付け態勢のチャックの平面図である。
【図5】第2挟み付け態勢のチャックの平面図である。
【図6】回転付与装置の概略構成を示す水平断面図である。
【図7】シリンジ組立工程の第1の説明図である。
【図8】シリンジ組立工程の第2の説明図である。
【図9】シリンジ組立工程の第3の説明図である。
【図10】組立後のシリンジをラベル貼付工程に運ぶコンベアの構成を説明する垂直断面図である。
【図11】図10のコンベアを構成するバケットの断面図である。
【図12】ラベル貼付工程を平面図の形で示す説明図である。
【図13】ラベル貼付工程を正面図の形で示す説明図である。
【図14】シリンジの構造例を示す図で、(a)はバレルの垂直断面図、(b)はプランジャロッドの側面図である。
【図15】シリンジの構造例を示す図で、(a)はバレルの端面図、(b)はプランジャロッドの端面図である。
【図16】組立状態のシリンジの垂直断面図である。
【図17】ラベルを貼付したシリンジの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。図1に概略を示すシリンジ組立装置1は、一般にスターホイールと称される3個のタレットを備える。3個のタレットはいずれも、垂直軸まわりに回転する回転体として構成されており、周速度が互いに等しくなるように設定されている。3個のタレットのうち、1番目のものは部品受取タレット10、2番目のものはシリンジ組立タレット20、3番目のものは中継タレット40である。シリンジ組立タレット20には、それと中心を同じくする円弧軌道上を往復運動するロータリーシャトル50が組み合わせられている。
【0023】
部品受取タレット10は図14〜図16に示したプランジャロッド106をリニアフィーダ11から受け取り、またバレル101をリニアフィーダ12から受け取り、それらを垂直軸線上で整列する形にしてシリンジ組立タレット20に供給する。シリンジ組立タレット20がバレル101とプランジャロッド106を中継タレット40まで運ぶ間に、シリンジ組立タレット20に併走するロータリーシャトル50に搭載された回転付与装置60がバレル101に回転を与え、ガスケット104へのプランジャロッド106のねじ込みを行わせてシリンジ100を組み立てる。この仕組みは後で詳しく説明する。組み立てられたシリンジ100はシリンジ組立タレット20から中継タレット40に引き渡され、さらに、中継タレット40からラベル貼付ラインのコンベア70へと引き渡される。
【0024】
部品受取タレット10はモータ13で駆動され、シリンジ組立タレット20はモータ21で駆動され、ロータリーシャトル50はモータ51で駆動され、回転付与装置60はモータ61で駆動され、中継タレット40はモータ41で駆動され、コンベア70の一端に設けられたスプロケット71はモータ72で駆動される。モータ51、61はサーボモータである。モータ13、21、41、72は通常の誘導モータであってもよい。モータ13、21、41、72の全てあるいはいくつかの組み合わせを単一のモータに置き換え、その単一のモータの回転を歯車列やタイミングベルト等の動力伝達手段でタレットやコンベアに分配するようにしてもよい。
【0025】
モータ13は部品受取タレット10を、モータ21はシリンジ組立タレット20を、モータ41は中継タレット40を、モータ72はスプロケット71を、それぞれ連続回転させる。モータ51はロータリーシャトル50を円弧軌道に沿って往復運動させる。モータ51がロータリーシャトル50に往復運動の動力を与える仕組みについては、ロータリーシャトル50に円弧状のラックを固定し、このラックにかみ合うピニオンをモータ51で駆動する構成を一例として挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0026】
シリンジ組立タレット20の周縁には、図2に示すバレル支持装置22が計18個、等角度間隔で配置される。バレル支持装置22は1個のバレル101を、軸線を垂直にし、且つプランジャロッド106が挿入される開口部を上に向けた状態で、所定の高さ位置に、軸線回り回転が可能となるように支持する。
【0027】
バレル支持装置22はバレル101の側面を支えるバックアップローラ23を含む。バックアップローラ23は垂直軸線まわりに回転できるように支持され、図6に示すように2本で一組をなす。バックアップローラ23の下端に形成されたフランジ24がバレル101のテーパ部101aを受け止めることにより、バレル101はその高さに保持される。
【0028】
バレル101において、ルアーテーパ部の太さに移行する段部がバレル軸線方向に直角な面をなしていれば、それがフランジ24で受け止められたとき、バレル101の高さが一定になると言えるのであるが、実施形態のようにテーパ部101aとなっていると、テーパ面のどの箇所にフランジ部24が当たるかが確定しない。すなわちバレル101の高さがばらつくことを与件とせざるを得なくなる。従って、仮に特許文献1にならってシリンジ組立タレット20がバレル101を搬送する間にラベル110を貼付することとすると、ラベル110の貼付位置がばらつくことが不可避となってしまう。そこで、シリンジ組立タレット20にはラベル貼付手段を設けず、後で説明する箇所にラベル貼付手段を配置することとしている。
【0029】
シリンジ組立タレット20の外側には円弧状の固定ガイド25が設けられ、この固定ガイド25が、バックアップローラ23からバレル101が脱落するのを防ぐ。固定ガイド25とバレル101の間には0.5mm程度のクリアランスを設ける。
【0030】
シリンジ組立タレット20には、バレル支持装置22と対をなす形でプランジャロッド支持装置26が配置される。プランジャロッド支持装置26は、シリンジ組立タレット20を垂直に、且つ上下スライド可能に貫通する2本のチャック支持シャフト27a、27bと、チャック支持シャフト27a、27bの上端に支持されたデッキ28と、デッキ28に支持されたチャック29を備える。チャック29はプランジャロッド106を軸線垂直状態で保持し、バレル支持装置22に支持されたバレル101の開口部の上に整列させる。
【0031】
図3から図5に示すように、チャック29は1対のフィンガー30a、30bを備え、このフィンガー30a、30bを閉じることにより、プランジャロッド106を両側から挟む。フィンガー30a、30bの対向面には、プランジャロッド106の十字形断面に合わせた窪みが形成されており、図4または図5に示すように窪みに十字形断面が入り込むと、プランジャロッド106の軸線回り回転は止められる。
【0032】
図示しない動力源により、チャック29は3通りの開き角度をとる。その1は図3に示す全開態勢であり、この時はフィンガー30a、30bはプランジャロッド106から離れていて、プランジャロッド106はチャック29に対し、軸線回り回転も軸線方向移動も自由に行うことができる。その2は図4に示す第1挟み付け態勢であって、フィンガー30a、30bはプランジャロッド106を両側からしっかり挟む。この時のプランジャロッド106は、軸線回り回転が止められることはもちろん、チャック29に対し軸線方向に滑ることもできない。その3は図5に示す第2挟み付け態勢であって、第1挟み付け態勢からフィンガー30a、30bが少し開き、プランジャロッド106は相変わらず軸線回り回転はできないものの、チャック29に対し軸線方向に滑ることは可能となる。
【0033】
プランジャロッド支持装置26は、その周回軌跡に沿って配置された立体カム31によって上下動を与えられる。立体カム31はシリンジ組立タレット20の図示しない回転シャフトと同軸に配置された環状部材であって、シリンジ組立タレット20を支持する図示しないテーブルに取り付けられている。立体カム31の外周面はカム溝32が刻まれ、このカム溝32に、チャック支持シャフト27aの下端に取り付けられたカムフォロワローラ33が係合している。チャック支持シャフト27aにはカム溝32のカム形状に従った上下動が与えられる。立体カム31と支持シャフト27aにより、チャック上下装置34が構成される。
【0034】
プランジャロッド支持装置26は荷重付与装置35を含む。荷重付与装置35は、プランジャロッド支持装置26のデッキ29を垂直に、且つ上下スライド可能に貫通する押圧シャフト36と、押圧シャフト36の下端に固定された円板形の押圧ヘッド37と、押圧シャフト36の上端に取り付けられたカムフォロワローラ38を備える。荷重付与装置35の周回軌跡の一部に、カムフォロワローラ38が乗り上げる立体カム39(図7参照)が設けられており、押圧シャフト36には立体カム39のカム面(立体カム39の上面)の起伏に従った上下動が与えられる。
【0035】
ロータリーシャトル50に搭載される回転付与装置60は、モータ61とそれによって回転せしめられるローラ62の組み合わせを3組備える。ローラ62同士の角度間隔はバレル支持装置22同士の角度間隔に等しい。ローラ62はバレル支持装置22に支持されたバレル101の外周面に接触し、バレル101に回転を与える。
【0036】
シリンジ組立作業は次のように進行する。シリンジ組立タレット20の周縁に配置された、一組のバレル支持装置22とプランジャロッド支持装置26は、等角度間隔で設定された計18箇所の角度位置(A0〜A17)を順次通過する。角度位置A0はシリンジ組立タレット20と部品受取タレット10の接点となり、角度位置A15と角度位置A16の間はシリンジ組立タレット20と中継タレット40の接点となる。固定ガイド25は角度位置A0から角度位置A15にわたる区間をカバーするように配置されている。
【0037】
図7に示すように、角度位置A0ではプランジャロッド支持装置26のチャック29はカム溝32によって高く持ち上げられている。角度位置A16の手前でカムフォロワローラ38を立体カム39に乗り上げさせた荷重付与装置35も、角度位置A0では立体カム39によって高く持ち上げられている。この位置で、バレル支持装置22は部品受取タレット10からバレル101を引き渡され、プランジャロッド支持装置26は部品受取タレット10からプランジャロッド106を引き渡される。チャック29は当初は図3の全開態勢にあるが、プランジャロッド106が入るや否や図4の第1挟み付け態勢をとり、プランジャロッド106をしっかりと挟む。
【0038】
第1挟み付け態勢でプランジャロッド106を挟んだチャック29は、角度位置A0→A1→A2→A3と移動するにつれ高さが下がり、その過程でプランジャロッド106は先端(下端)がバレル101内に挿入される。これがプランジャ支持装置26の第1動作である。角度位置A2で、チャック29は第1挟み付け態勢から第2挟み付け態勢に態勢を変える。その結果プランジャロッド106は、軸線回り回転はできないが、チャック29から滑り落ちることは可能になる。チャック29から滑り落ちることが可能になったとしても、多くの場合、プランジャロッド106はねじ部108がガスケット104のねじ部105に接触するところまで一気に降下することはなく、そこに至るまでの高さに留まっている。
【0039】
ここで、チャック29に合わせて高さを下げていた荷重付与装置35が、角度位置A2とA3の間で立体カム39から外れ、自己の質量による軸線方向下向きの荷重をプランジャロッド106にかける。その結果プランジャロッド106は、ねじ部108がねじ部105に接触するところまで強制的に押し下げられる。これがプランジャ支持装置26の第2動作である。第2動作後、プランジャロッド106のノブ107の下面とチャック29の上面との間には間隔h1が生じている。
【0040】
バレル支持装置22は元からの高さのまま、チャック29は角度位置A3でチャック上下装置34により与えられた高さのまま、角度位置A9まで移動する。回転付与装置60は角度位置A3、A4、A5に存在する3個のバレル101に向けそれぞれローラ62を前進させ、図示しないばねによりローラ62を弾力的にバレル101に押し付ける。回転付与装置60はこの状態でシリンジ組立タレット20に併走しつつ、モータ61によりローラ62を駆動してバレル101を回転させる。回転方向は、ガスケット104のねじ部105がプランジャロッド106のねじ部108にねじ込まれる方向である。
【0041】
ねじ込みが進むにつれ、チャック29により軸線回り回転を止められたプランジャロッド106は降下して行く。その状況を図8に示す。3個のバレル101のそれぞれにおいて、ねじ部105がねじ部108に最後までねじ込まれると、ねじ込みトルクは設定トルク値に達する。設定トルク値に達したモータ61は、個々に回転を停止する。モータ61が回転を停止するときのトルク、すなわち設定トルク値は、バレル101とガスケット104との間に相対回転を生じさせない範囲の最大値に設定されている。そのため、ガスケット104が無理に回転させられ、バレル101の内面との摩擦により外周面が損耗するといった事態には進展しない。
【0042】
このように、自身の質量で荷重をかける荷重付与装置35でプランジャロッド106に軸線方向下向きの荷重をかけつつ回転付与装置60でバレル101を回転させてガスケット104とプランジャロッド106のねじ込みを行うものであるから、ねじ込みの進行につれてプランジャロッド106は自然に下がり、ガスケット104のねじ部105がリード角でプランジャロッド106を引き下げる動きと、プランジャロッド106の実際の動きの間に齟齬が生じることがなく、ねじ込みを最後まで確実に遂行することができる。
【0043】
また、チャック29がプランジャロッド106の軸線回り回転は止めるがプランジャロッド106の軸線方向の滑りは止めないという第2挟み付け態勢状態にあるとき、荷重付与装置35でプランジャロッド106に軸線方向下向きの荷重をかけつつ回転付与装置60でバレル101を回転させてガスケット104とプランジャロッド106のねじ込みを行うものであるから、プランジャロッド106の下降が妨げられることなくねじ込みが進行する。
【0044】
ねじ部105がねじ部108に最後までねじ込まれると、バレル101、ガスケット104、及びプランジャロッド106は組立状態のシリンジ100となる。ノブ107の下面とチャック29の上面との間隔はh2(図8参照)にまで縮まっているが、ノブ107は未だチャック29には接触しない。この間隔h2がゆとりとなって、バレル101に対するガスケット104の挿入深さのばらつきを吸収することができる。
【0045】
当初角度位置A3、A4、A5に位置していた3個のバレル101が、それぞれ角度位置を3区間ずつ進めてA6、A7、A8に達する手前で、ロータリーシャトル50は動きを反転し、新たに角度位置A3、A4、A5に到着するバレル101を迎える位置に復帰する。この時ローラ62はばねの力に抗して後退位置に引き戻されており、復帰途中でバレル101に接触してそれを回転させることはない。
【0046】
ねじ込みを最後まで遂行するのに必要なバレル101の回転角度やバレル101の外径などのパラメータが変化したときは、回転付与装置60のモータ61の制御プログラムを変えることで簡単に対処できる。
【0047】
図9に示すように、チャック29は、角度位置A10に至ると全開態勢となる。角度位置A10→A11→A12→A13と進むにつれチャック29は持ち上がり、シリンジ100から離れる。全開態勢となったチャック29は、プランジャロッド106のノブ107は通過を許すが押圧ヘッド37の通過は許さず、荷重付与装置35はチャック29によって持ち上げられる。チャック29は角度位置A13で最高の高さに達し、そのまま高さを変えないで角度位置A14→A15と進み、角度位置A16でカムフォロワローラ38を立体カム39に乗り上げさせる。
【0048】
シリンジ100は角度位置A15を過ぎたところで中継タレット40に乗り移る。固定ガイド25と同様の固定ガイドによって、中継タレット40からのシリンジ100の脱落が防がれる。中継タレット40はシリンジ受取地点から半回転ほどの地点でシリンジ100をコンベア70に引き渡す。
【0049】
コンベア70は、図10及び図11に示すバケット73を複数個、一定間隔で連ねたものである。バレル支持装置22と同様、バケット73も2本のバックアップローラ74を備え、シリンジ100を回転可能に支持する。
【0050】
コンベア70のスプロケット71は軸が45°傾いており、バケット73は、中継タレット40からシリンジ100を受け取る時点では図10の左側に示すようにバックアップローラ74の軸線が垂直になっているが、スプロケット71の周囲を巡るにつれ姿勢が変わり、スプロケット71を離れる時点では図10の右側に示すようにバックアップローラ74の軸線が水平になる。すなわちバケット73は、シリンジ100を垂直状態で受け取り、それを水平状態に姿勢変更して、後述するラベル貼付作業部へ運ぶ。シリンジ100が水平状態になるまでは、シリンジ100がバケット73から脱落するおそれがあるので、スプロケット71の周囲にシリンジ組立タレット20の固定ガイド25と同様の固定ガイド75を設け、シリンジ100が水平かそれに近くなるまで、シリンジ100がバケット73から落ちないようにしておく。
【0051】
図13に示すように、バケット73の一方の側面にはバレル101のフランジ103を受け入れる窪み76が形成されている。窪み76は、水平状態となったシリンジ100のフランジ103を、フランジ103の長軸が水平となった状態で受け入れるように設計されており、窪み76にフランジ103を入れたシリンジ100は、軸線回りの回転を阻止されて、すなわち角度が変わらないようにして運搬される。これは、シリンジ100におけるラベルの貼付位置(角度)を一定にするためである。中継タレット40からシリンジ100を受け入れる時点では、バケット73は窪み76を設けた側の側面を上にしており、シリンジ100はフランジ103を窪み76の中に落ち着かせた状態で垂直状態から水平状態へと姿勢を変える。
【0052】
スプロケット71を離れたバケット73は、図12及び図13に示すラベル貼付作業部77までを含む、コンベア70の一部の区間を、水平に進行する。この一部の区間では、バケット73は、バレル101内のガスケット104にプランジャロッド106をねじ込んだ状態のシリンジ100を、軸線が水平且つコンベア70の進行方向に直交する形で、軸線回りに回転可能に支持する。もっともシリンジ100の軸線回り回転は、フランジ103が窪み76の中に入っている間は止められている。
【0053】
ラベル貼付作業部77には作業位置S1〜S4が設定されており、作業位置S1〜S4の区間をカバーする固定ガイド板78がバケット73と横並びになる形で配置されている。固定ガイド板78及びコンベア70と、後述するラベル貼付手段81とが、シリンジ100へのラベル貼付装置83を構成する。
【0054】
固定ガイド板78は窪み76が存在する側のバケット73の傍らに位置する。固定ガイド板78は、長手方向がバケット73の進行経路と平行になる形で、水平に配置されている。
【0055】
バケット73に載せられてラベル貼付作業部77に到着したシリンジ100は、作業位置S1の手前でバケット73に対する位置を変更せしめられる。すなわち固定ガイド板78の先端にはシリンジ100の進行方向に対し斜めに交わる案内面79が形成されており、これにプランジャロッド106のノブ107が係合する。バケット73が図12の左方に進行すると、シリンジ100は軸線方向に(図12では下方に)移動せしめられ、フランジ103は窪み76から引き出される。これは、シリンジ100がバケット73に対し回転可能になったということを意味する。
【0056】
作業位置S1から作業位置S2に向かう途中で、固定ガイド板78に形成した案内溝80にフランジ103が誘い込まれる。案内溝80はバケット73の進行方向と平行に延び、入口部はフランジ103を迎え入れるためテーパ状に広がっている。奥へ進むにつれ案内溝80の幅は狭くなって行き、作業位置S3のあたりではフランジ103の幅より僅かに広い程度にまで狭まっている。これによりシリンジ100は、作業位置S3以降、案内溝80の対向内壁にフランジ103を挟まれて軸線方向位置を規制される。
【0057】
装置架台などの不動部材に固定された固定ガイド板78の案内溝80にシリンジ100のフランジ103を誘い込むので、搬送に伴う振動によりシリンジ100の位置がふらつくということが少なく、ラベル110の位置決め精度を高めることができる。
【0058】
図13に示すように案内溝80の深さは一様ではなく、作業位置S2のあたりでは浅溝部80aとなっている。浅溝部80aの深さは、長軸を水平にしたフランジ103がその底に触れるか触れないかといった深さである。このためシリンジ100は、フランジ100の長軸を水平にしたまま作業位置S2を通過する。
【0059】
フランジ103が案内溝80に入り、浅溝部でフランジの長軸を水平に維持しつつ進行させる態勢が整うまでは、バケット73の窪み76でシリンジ100の軸線回り回転を止めておけるから、バケット73が移動する際の振動でシリンジ100が回転してしまうようなことがなく、フランジ103を角度一定状態で案内溝80に送り込むことができる。
【0060】
案内溝80は作業位置S3の手前から深くなって行き、作業位置S3で深溝部80bとなる。深溝部80bの深さは、フランジ103がバレル軸線回りに回転してもその底に触れない程度の深さである。
【0061】
作業位置S3から、ラベル貼付手段81がラベル110の貼付を開始する。ラベル貼付手段81はコンベア70と平行して走るラベル吸着ベルト82を主たる構成要素とするものであり、ラベル吸着ベルト82にラベル110を、粘着面を外側にして吸着させている。作業位置S3でラベル110の一端がバレル101の外周面に接触する。それまでフランジ103の長軸が案内溝80の浅溝部80aによって水平に維持されていたため、バレル101の外周の一定位置からラベル110の貼付が開始される。これにより、使用者の見やすい角度に安定してラベル110を貼付することができる。
【0062】
シリンジ100はバケット73の上で転がりつつラベル110を巻き付けて行く。図では作業位置S4でラベル110の巻き付けが終了する設定となっている。その時、フランジ103は長軸を垂直にした状態となる。この設定は一例であり、これに限定されるものではない。
【0063】
バケット73は2本のバックアップローラ74でシリンジ100を支持しているから、シリンジ100を抵抗少なく軸線回りに回転させることができ、ラベル110をきれいに巻き付けることができる。
【0064】
幅の狭い案内溝80にフランジ103を誘い込んでおいてラベル110を貼付するので、バレル101を軸線方向に位置決めした形でラベル110の貼付が行われる。その結果、バレル101に対するラベル110の貼付位置は、角度的にも軸線方向位置でも正確なものとなる。ラベル110には薬液量の目盛りを形成することが多いので、バレル101の軸線方向における貼付位置が正確であればそれだけ正確に薬液量を知ることができ、適正な施薬を行う上で有用である。
【0065】
ラベル貼付手段81の主たる構成要素はラベル吸着ベルト82に限定されない。ドラム状のものであってもよい。要は、作業位置S3において、バレル101の外周の一定位置からラベル110の貼付を開始できるものでありさえすればよい。
【0066】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。また、本明細書に登場する数量や数値はあくまでも一例であり、発明を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、プレフィルドシリンジの組立装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 シリンジ組立装置
20 シリンジ組立タレット
21 モータ
22 バレル支持装置
26 プランジャロッド支持装置
27a、27b チャック支持シャフト
29 チャック
31 立体カム
34 チャック上下装置
35 荷重付与装置
50 ロータリーシャトル
51 モータ
60 回転付与装置
61 モータ
100 シリンジ
101 バレル
103 フランジ
104 ガスケット
105 ねじ部
106 プランジャロッド
107 ノブ
108 ねじ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バレル内のガスケットにプランジャロッドをねじ込むシリンジ組立装置において、
前記バレルを、軸線を垂直にし、且つ前記プランジャロッドが挿入される開口部を上に向けた状態で、所定の高さ位置に回転可能に支持するバレル支持装置と、
前記プランジャロッドを挟み、軸線を垂直にした状態で、前記バレルの開口部の上に整列させるチャックと、前記チャックに挟まれた前記プランジャロッドに対し、自身の質量で荷重をかける荷重付与装置を備えたプランジャロッド支持装置と、
前記バレルを軸線まわりに回転させる回転付与装置を備え、
前記チャックに挟まれて先端を前記バレル内に挿入された前記プランジャロッドに対し、前記荷重付与装置が軸線方向下向きの荷重をかけ、この状態で、前記回転付与装置が、前記ガスケットとプランジャロッドのねじ込みが行われる方向の回転を前記バレルに与えることを特徴とするシリンジ組立装置。
【請求項2】
前記チャックは、前記プランジャロッドの軸線まわり回転と軸線方向の滑りの両方を止める第1挟み付け態勢と、前記プランジャロッドの軸線回り回転は止めるが軸線方向の滑りは止めない第2挟み付け態勢をとり得るものであり、
前記プランジャロッド支持装置は、前記第1挟み付け態勢で前記プランジャロッドを挟んだ前記チャックを下降させてプランジャロッド先端を前記バレル内に挿入する第1動作と、前記チャックを前記第2挟み付け態勢にして前記荷重付与装置でプランジャロッドに軸線方向下向きの荷重をかける第2動作を遂行し、
前記回転付与装置は、前記プランジャロッド支持装置が前記第2動作を遂行するとき、前記バレルに回転を与えることを特徴とする請求項1に記載のシリンジ組立装置。
【請求項3】
前記バレル支持装置とプランジャロッド支持装置は、垂直軸線まわりに回転するタレットの周縁に複数個ずつ等角度間隔で配置され、
前記チャック上下装置は、前記プランジャロッド支持装置の周回軌跡に沿って配置された立体カムと、前記タレットに上下可能に支持され、前記立体カムのカム形状に沿って上下するチャック支持シャフトを含み、
前記回転付与装置は、前記タレットと中心を同じくする円弧軌道上を往復運動するロータリーシャトルに支持されるものであり、
前記タレット、ロータリーシャトル、及び回転付与装置は、それぞれ独立のモータで駆動されることを特徴とする請求項1または2に記載のシリンジ組立装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2010−178871(P2010−178871A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24509(P2009−24509)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(000141886)株式会社京都製作所 (83)
【Fターム(参考)】