説明

シリンダ前後サポート型トラニオン

【課題】トラニオンを備え、長さを要するシリンダ装置で、傾斜の際の安定性や精度面等に影響を及ぼさず、傾斜を必要とし、かつ精度を要する搬送又は長い距離の搬送に対応する。
【解決手段】シリンダ2の外周にピン軸を要し、アーム6とピン軸を連結させ、アーム6の両端部からなるアダプター7、8を、シリンダ2の前方部及び後方部に各々装着させシリンダ2を支持する装置である。さらに、シリンダ2がピン軸方向に微動可能な移動代を設けている。シリンダ2の前後2箇所を支持する為、従来のトラニオンとの比較では安定性が大幅に増した装置となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダの前方部及び後方部を同時に保持するトラニオンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリンダ装置は、ロッド軸に接続された搬送部等を直線駆動するものであるが、同装置を角度調整して直線駆動させる事で、様々な用途に使用される。例えば、パンタグラフ式の昇降装置や、鋼材・梱包物品の反転装置等に応用出来る。この角度調整法にはトラニオンが使用されおり、トラニオンに関しては幾つかの発明や考案が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、「トラニオン型油圧シリンダ」という名称で、トラニオンに関する発明が記載されている。特許文献1に記載されたトラニオンは、シリンダチューブ外周にリング状のトラニオンガイドを設け、このトラニオンガイド外周に、シリンダチューブの軸線に直交する一対のトラニオンピン軸を対向する外側面に有するトラニオンを装着した構造となっている。また、従来のトラニオン型油圧シリンダの構造においては、シリンダチューブとトラニオン本体とをボルト締めによって固定する構成としているものであった。
【0004】
このような構造によれば、ロッド軸が軸方向に直線駆動する際、ロッド軸端部に連結される搬送部の動作機構に基づき、シリンダ及びロッド軸が傾斜するという作用を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−82422号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記特許文献1の装置は、シリンダ装置を一対のピン軸のみで支持している為、例えばシリンダの全長が長くなる場合、傾斜の際の安定性や精度面等に影響を及ぼしてしまう。その為、通常のトラニオンの方式では、より精度を要する搬送や、長い距離の搬送には対処出来ていないのが現状である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、シリンダ装置の傾斜を必要とし、かつ精度を要する搬送又は長距離の搬送に対応可能なトラニオンを提供することを目的とする。
【0008】
上記目的達成の為に、請求項1に記載の発明は、ロッド軸を貫通させたシリンダの外周にピン軸を要し、ロッド軸方向に対し平行に伸ばしたアームとピン軸を連結させる。さらに、アーム両端部からなるアダプターをシリンダの前方部及び後方部に各々装着させることで、シリンダ装置を支持することを特徴とするものである。
【0009】
このような構造においては、ロッド軸端部に連結される搬送部の動作機構に基づき、シリンダ及びロッド軸が傾斜すると共に、アームとアダプターもシリンダを支持しつつ傾斜するという作用を有する。
【0010】
また、請求項2の発明は、ピン軸とアームの連結部の構造について記載されたものであり、スタンドに設置されたブラケットに、支点となるピン軸ならびにブッシュを貫通させて設置、さらにピン軸とアームを連結させることで成し得るトラニオン機構であるが、ピン軸を被い設置されているブッシュと、アーム間に若干の隙間を設けている。これにより、アームに連結されるシリンダ装置が、ピン軸方向に微動可能になることを特徴とするものになる。なお、この隙間には取り外し可能なライナーを取り付け、シリンダを固定させることも可能で、状況に応じてシリンダの微動・固定を選択出来る。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、従来の一対のピン軸支持のみならず、シリンダ装置を支持するサポート部が前後2箇所に配置されている為、従来のトラニオンとの比較では、安定性が大幅に増加した装置となる。本発明の方式をとれば、シリンダ自体の長さに関係なく安定性が保たれる。従って、ロッド軸端部に連結される搬送部の動作機構に基づき、シリンダ装置の傾斜を必要とし、かつ精度を要する搬送又は長い距離の搬送にも対応出来るという効果が得られる。
【0012】
また、シリンダ装置を支点軸方向へ微動可能な装置にすることで、ロッド軸の直進移動の際、軸心のズレ等を吸収できるという効果が得られる。また、上記より説明した隙間にライナーを取り付け、シリンダの微動を防ぐことも出来る。現地組立時にシリンダの軸を合せる際等は、ライナーを取り付けることで固定させ、調整が容易になる。
【0013】
また、ロッド軸の周方向へ90℃回転させてシリンダ装置を使用する場合、対称に設置された2つの支点軸が上下の関係になり、上の支点軸側の隙間が倍増され、シリンダ装置の軸が下がる。この場合、下の支点軸側の隙間に上記ライナーを装着させることで軸心を維持することも可能。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下本考案の形態を図1〜図4に基づき、説明する。
【0015】
図1は、本発明のトラニオンを要したシリンダ装置を示す側面図である。
【0016】
図2は、図1内に記載したA−A正面断面図である。図1に記載したロッド軸1を貫通して設置したシリンダ2の外周に、支点軸(ブラケット3に、ブッシュ4とピン軸5を貫通させたもの)を設け、シリンダ2の軸方向(図1記載の矢印X方向)に伸ばしたアーム6をピン軸5と連結させる。その際、ブッシュ4と、アーム6間に隙間aを設ける。
【0017】
図3は、図1内に記載したB−B正面断面図である。アーム6の先端部にアダプター7を設け、シリンダ2の前方部に設置、同様にシリンダ2の後方部にもアダプター8を設置し、シリンダ2を支持する。
【0018】
図4は、図2で示したブッシュ4と、アーム6間の隙間aに、ライナー9を装着させた際の断面正面図である。上からピン軸3に引っ掛け固定させる構造の為、必要に応じてライナー9は取り外すことが可能である。
【0019】
上記0015〜0018の装置(総称:トラニオン)をシリンダ2に設置する事により、ロッド軸1が矢印X方向に移動する際、ロッド軸1端部に連結される搬送部の動作機構に基づき、シリンダ2及びロッド軸1、さらにアーム6及びアダプター7、8が矢印Y方向に傾く。さらに、隙間aの存在により、シリンダ装置がピン軸方向へ微動することを可能としている。また、隙間aにライナー9を装着させることで、シリンダ2の微動を防ぐことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のトラニオンを要すシリンダ装置を示す側面図
【図2】図1内A−A正面断面図
【図3】図1内B−B正面断面図
【図4】ライナー9装着時の正面断面図
【符号の説明】
【0021】
1.ロッド軸
2.シリンダ(本体=国際公開番号WO2009/125585A1に記載の図面参照)
3.ブラケット
4.ブッシュ
5.ピン軸
6.アーム
7.アダプター(前)
8.アダプター(後)
9.ライナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロッド軸を貫通させたシリンダ装置において、シリンダの前方部及び後方部を継ぎ保持し、ピン軸を介してブラケットに回転可能に装着されるシリンダを、角度自在に傾斜可能なるトラニオン機構。
【請求項2】
請求項1の機構において、ピン軸と、シリンダを保持するサポート部との連結箇所に、シリンダがピン軸方向に移動代(隙間)を設ける構造。
【請求項3】
請求項2の移動代(隙間)に、取り外し自在なライナーを設置する構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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