説明

シリンダ装置

【課題】ガスの封入を容易化できるとともにガスの漏出を抑制することができるシリンダ装置の提供。
【解決手段】ガスが封入されるシリンダ13と、シリンダ13の一端から一端が突出するロッド15と、シリンダ13の前記一端側に設けられる外側シール72と、外側シール72の内側に設けられロッド15の前記一端側に向かって内径が拡径する拡径部80を有する内側シール73とからなり、ロッド15は、ロッド15をシリンダ13内に最大限挿入した最大挿入状態において外側シール72とシリンダ13外とを連通する連通部90と、最大挿入状態において内側シール73と全周に渡り接触する接触部43とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリンダ装置において、ロッドがシリンダ内に最大限挿入されると、シリンダの内外に連通する連通路が開く構造とし、ガスの封入を容易化するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭61−135034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のシリンダ装置では、ロッドをシリンダから所定長さ以上引き出した状態とすることで連通路を閉じてシリンダを密封するようになっている。このため、取り扱い中に、誤ってロッドをシリンダ内に最大限近くまで挿入してしまうと、連通路が開いてガスが漏れてしまうことになる。
【0005】
したがって、本発明は、ガスの封入を容易化できるとともにガスの漏出を抑制することができるシリンダ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、ロッドが、これをシリンダ内に最大限挿入した最大挿入状態において外側シールとシリンダ外とを連通する連通部と、前記最大挿入状態において内側シールと全周に渡り接触する接触部とを有する構成とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ガスの封入を容易化できるとともにガスの漏出を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係るシリンダ装置の第1実施形態である油圧緩衝器を示す全体断面図である。
【図2】本発明に係るシリンダ装置の第1実施形態である油圧緩衝器の要部を示す部分拡大断面図である。
【図3】本発明に係るシリンダ装置の第2実施形態である油圧緩衝器の要部を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係るシリンダ装置の第1実施形態である油圧緩衝器を図1および図2を参照して以下に説明する。
【0010】
図1に示すように、第1実施形態の油圧緩衝器11は、複筒式のもので、例えば自動車のサスペンション装置に用いられるものである。油圧緩衝器11は、油液が封入される内側シリンダ12と、内側シリンダ12より大径で内側シリンダ12と同軸状に配置される外側シリンダ(シリンダ)13と、内側シリンダ12の中心軸線上に配置されるとともに一端側が内側シリンダ12の内部に挿入され他端側が内側シリンダ12および外側シリンダ13から外部に突出するロッド15と、このロッド15に取り付けられて内側シリンダ12内に摺動可能に嵌合され内側シリンダ12内を二つの油室16,17に画成するピストン18とを有している。
【0011】
外側シリンダ13は、円筒状の外筒部21と、この外筒部21におけるロッド15の突出側とは反対の一端側を閉塞させる底部22と、外筒部21におけるロッド15の突出側の端部から径方向内方に突出する係止部23とを有する略有底円筒状をなしている。
【0012】
内側シリンダ12は、外側シリンダ13の底部22の内側に配置されるベースボディ26と、円筒状をなし外筒部21の内側に同軸に配置された状態で一端側がベースボディ26に嵌合される内筒27と、ロッド15を摺動可能に挿通させるとともに内筒27の他端側および外筒部21の底部22とは反対側に嵌合されるロッドガイド28とを有している。
【0013】
ベースボディ26には、内側シリンダ12内の油室17と、外側シリンダ13と内側シリンダ12との間のリザーバ室30とを連通可能な油通路31が形成されており、同様に油室17とリザーバ室30とを連通可能な油通路32が油通路31よりも外径側に形成されている。また、ベースボディ26には内側の油通路31を開閉可能な縮み側減衰バルブとしてのディスクバルブ36が底部22側に配置されるとともに、外側の油通路32を開閉可能なチェックバルブとしてのディスクバルブ37が底部22とは反対側に配置されている。
【0014】
これらディスクバルブ36,37は、ベースボディ26に底部22側から挿入されるリベット40の一端の頭部41と他端の加締部42とでベースボディ26に取り付けられている。ディスクバルブ36は、ディスクバルブ37の図示略の通路穴および油通路31を介して油室17からリザーバ室30側への油液の流れを許容して減衰力を発生する一方で逆方向の油液の流れを規制し、これとは反対に、ディスクバルブ37は油通路32を介してリザーバ室30から油室17側への油液の流れを抵抗無く許容する一方で逆方向の油液の流れを規制する。
【0015】
ロッド15は、軸方向中間の一定径の主軸部(接触部)43と、内側シリンダ12に挿入される側の端部の、主軸部43よりも小径の内端軸部44とを有している。この内端軸部44にはナット45が螺合されており、このナット45によってピストン18およびその両側のディスクバルブ46,47がロッド15に取り付けられている。
【0016】
ピストン18には、内側シリンダ12の底部22側の油室17と底部22とは反対側の油室16とを連通可能な油通路50と、油通路50よりも内径側で油室17と油室16とを連通可能な油通路51とが形成されている。また、ピストン18には、油通路50を開閉可能な縮み側減衰バルブである上記したディスクバルブ46が底部22とは反対側に配置されるとともに、油通路51を開閉可能な伸び側減衰バルブとしての上記したディスクバルブ47が底部22側に配置されている。
【0017】
ディスクバルブ46は油室17から油室16側への油液の流れを許容する一方で逆方向の油液の流れを規制し、これとは反対に、ディスクバルブ47は油室16側から油室17への油液の流れを許容する一方で逆方向の油液の流れを規制する。
【0018】
ロッド15の主軸部43の中間所定位置には、ロッドガイド28に当接することでロッド15の限界以上の外側シリンダ13からの突出を規制するストッパ52が固定されている。
【0019】
なお、ロッド15が伸び側に移動して内側シリンダ12からの突出量が増大すると、その分の油液がリザーバ室30からディスクバルブ37を開きつつ油通路32を介して油室17に流れることになり、逆にロッド15が縮み側に移動して内側シリンダ12への挿入量が増大すると、その分の油液が油室17からディスクバルブ36を開きつつ油通路31を介してリザーバ室30に流れることになる。このような油液の給排に対応するため、リザーバ室30には、下部となるベースボディ26側に油液が貯留されており、この油液の上側となるロッドガイド28側に油液の量変化を吸収するガスが封入されている。
【0020】
図2に示すように、ロッドガイド28は、軸方向一側に大径外径部54が形成され、軸方向他側に大径外径部54よりも小径の小径外径部55が形成された略段付き円筒状をなしており、大径外径部54において外側シリンダ13の外筒部21の内周部に嵌合し、小径外径部55において内側シリンダ12の内筒27の内周部に嵌合する。ロッドガイド28の径方向の中央には、軸方向の大径外径部54側に大径穴部56が、軸方向の小径外径部55側に大径穴部56よりも小径の小径穴部57が、それぞれ形成されている。
【0021】
ロッドガイド28の軸方向の外端側には、径方向の中間位置に大径穴部56よりも大径の環状溝59が、径方向の外端位置に面取部60がそれぞれ形成されている。環状溝59が形成されることにより、ロッドガイド28の軸方向の外端側には、大径穴部56と環状溝59との間に軸方向に突出する内側環状凸部61が、環状溝59の径方向外側に軸方向に突出する外側環状凸部62が、それぞれ形成されている。外側環状凸部62は、内側環状凸部61よりもロッドガイド28の軸方向の外側に位置している。ロッドガイド28には、環状溝59と外側環状凸部62との境界位置に、軸方向に沿って貫通する連通穴64が形成されている。連通穴64は、外側シリンダ13と内側シリンダ12との間のリザーバ室30に連通している。なお、ロッドガイド28の小径穴部57内には、フッ素樹脂からなる円筒状のカラー65が嵌合されており、このカラー65にロッド15が主軸部43において摺接するように挿通される。
【0022】
ロッドガイド28の軸方向外側には、ロッドガイド28とカラー65との隙間およびカラー65とロッド15の主軸部43との隙間等から漏れ出る油液の外側への漏れ出しを規制するオイルシール68が配置されている。
【0023】
オイルシール68は、ゴム製のシール本体69と、このシール本体69内に埋設された金属製の環状部材70とからなる一体成形品である。オイルシール68は、シール本体69の外周部が外側シリンダ13の外筒部21の内周部に密着することになり、この状態で環状部材70の位置がロッドガイド28の外側環状凸部62と外側シリンダ13の係止部23とに挟持される。
【0024】
シール本体69の径方向内側位置は、環状部材70の内径側に配置される円環状の中間環状部71と、中間環状部71からロッドガイド28とは反対側に延出する円環状のダストリップ部(外側シール)72と、中間環状部71からロッドガイド28側に延出する円環状のメインリップ部(内側シール)73とからなっており、これら中間環状部71、ダストリップ部72およびメインリップ部73も一体となっている。中間環状部71の内径はロッド15の主軸部43の外径よりも大径となっている。
【0025】
ダストリップ部72は、中間環状部71から離れるほど外径および内径が共に小さくなる先細筒状部75と、先細筒状部75の中間環状部71とは反対側にあって一定内径の先端筒状部76とを有している。このダストリップ部72は、その内側に挿通されるロッド15の主軸部43の外周面に先端筒状部76が、所定の締め代をもって全周に渡り密封接触することになり、外部からのダストの進入を規制する。ダストリップ部72の先端筒状部76の径方向外側には、ロッド15への密着方向への締付力を調整する円環状のスプリング77が配置されている。
【0026】
メインリップ部73は、中間環状部71から離れるほど外径および内径が共に小さくなる先細筒状部(拡径部)80と、先細筒状部80の中間環状部71とは反対側にあって一定内径の先端筒状部81とを有している。このメインリップ部73は、その内側に挿通されるロッド15の主軸部43の外周面に先端筒状部81が、所定の締め代をもって全周に渡り密封接触することになり、内部からの油液の外側への漏れ出しを規制する。メインリップ部73の先端筒状部81の径方向外側には、ロッド15への密着方向への締付力を調整する円環状のスプリング82が配置されている。メインリップ部73およびその外側のスプリング82は、ロッドガイド28の大径穴部56内に配置される。
【0027】
ここで、メインリップ部73の先細筒状部80は、言い換えれば、内外径がダストリップ部72側ほど拡径する形状をなしており、ダストリップ部72の先細筒状部75も、内外径がメインリップ部73側ほど拡径する形状をなしている。また、ロッド15の主軸部43の外周面が、ダストリップ部72およびメインリップ部73を摺動する摺動面となっている。
【0028】
シール本体69のロッドガイド28側の径方向中間位置には、円環状のチェックリップ部84が形成されている。このチェックリップ部84は、ロッドガイド28の環状溝59内に配置されていて、内側環状凸部61に所定の締め代を持って全周に渡り密封接触可能となっている。また、シール本体69のロッドガイド28側の径方向外端位置には、ロッドガイド28側に突出する円環状のシールリップ部85が形成されている。このシールリップ部85は、ロッドガイド28の面取部60と外側シリンダ13の外筒部21との間に嵌合されて、これらに密封接触する。
【0029】
なお、ロッドガイド28とカラー65との隙間およびカラー65とロッド15との隙間から漏れ出た油液は、ロッドガイド28の大径穴部56とメインリップ部73との間の室87に溜まることになり、チェックリップ部84は、この室87の圧力が、リザーバ室30の圧力よりも所定量高くなった時のみ開く。よって、チェックリップ部84は、室87からリザーバ室30への方向のみ油液およびガスの流通を許容し逆方向の流通を規制する逆止弁として機能する。
【0030】
ここで、外側シリンダ13の一端からロッド15は一端つまり外端が突出することになるが、ダストリップ部72は、外側シリンダ13のロッド15が突出する一端側に設けられ、メインリップ部73は、ダストリップ部72の内側に設けられることになる。また、メインリップ部73の先細筒状部80は、ロッド15の外側シリンダ13から突出する一端側に向かって内径が拡径する形状をなしている。
【0031】
そして、第1実施形態においては、ロッド15の外側シリンダ13から突出する外側の端部には、主軸部43よりも小径の外端軸部(連通部,小径部)90が形成されており、主軸部43と外端軸部90との軸方向の間には面取部91が形成されている。外端軸部90は、その外径が、ダストリップ部72の先端筒状部76の主軸部43が嵌合しない自然状態における内径(言い換えれば、主軸部43の外径からダストリップ部72の先端筒状部76の締め代を減算した値)よりも小径となっている。なお、外端軸部90の外周部には車両への取付用のオネジ92が形成されている。
【0032】
ここで、ロッド15が内側シリンダ12および外側シリンダ13内の奥側に移動すると、図1に示すようにロッド15の内端軸部44がベースボディ26に設けられたリベット40の加締部42に当接してそれ以上の奥側への移動が規制されることになる。つまり、ロッド15が内側シリンダ12および外側シリンダ13内に最大限挿入された図1に示す最大挿入状態にあるとき、ロッド15の内端軸部44がベースボディ26に設けられたリベット40の加締部42に当接する。
【0033】
ロッド15が、図2に実線で示すように上記した最大挿入状態にあるとき、オイルシール68は、外側のダストリップ部72が軸方向位置をロッド15の外端軸部90に合わせることになる。また、ロッド15が、最大挿入状態にあるとき、中間環状部71もそのダストリップ部72側の一部が軸方向位置をロッド15の外端軸部90に合わせることになる。外端軸部90は、その外径がダストリップ部72の先端筒状部76の自然状態における内径よりも小径となっていることから、外端軸部90は、ロッド15の最大挿入状態においてダストリップ部72の径方向内側と外側シリンダ13の外側とを連通する。より具体的に、外端軸部90は、ダストリップ部72の先細筒状部75および先端筒状部76の径方向内側と、中間環状部71の径方向内側と、メインリップ部73の先細筒状部80の径方向内側とを、外側シリンダ13の外側つまり外気に連通させる。
【0034】
また、ロッド15が最大挿入状態にあるとき、内側のメインリップ部73は軸方向位置をロッド15の外端軸部90よりも大径の主軸部43に合わせることになる。つまり、ロッド15が最大挿入状態となっても、その主軸部43の外周面が内側のメインリップ部73の先端筒状部81と全周に渡り密封接触する状態を維持する。
【0035】
以上の構成の油圧緩衝器11は、組み立て工程において、外側シリンダ13の係止部23を、外筒部21に沿う形状のまま上記したすべての部品を組み付けることになり、その後、オイルシール68をロッドガイド28の外側環状凸部62とで挟持するように外側シリンダ13の係止部23を径方向内側に加締めて折り曲げる。
【0036】
そして、外側シリンダ13内の部品を全て組み上げ油液を必要量注入した状態で、ロッド15を最大挿入状態とする。この状態で、外側シリンダ13の外側に連通する、ダストリップ部72、中間環状部71およびメインリップ部73の先細筒状部80のそれぞれの径方向内側と、ロッド15の外端軸部90、面取部91および主軸部43のそれぞれの径方向外側との隙間を介して、外側シリンダ13の外側から図2に矢印で示すように加圧状態のガス(空気、窒素ガス等)を導入する。すると、ガスの圧力は、メインリップ部73の先細筒状部80の内周面の傾斜によりメインリップ部73に拡径方向の力を加えることになり、よって、ガスは、先端筒状部81を径方向外側に開きロッド15の主軸部43から離間させながら、室87に導入され、チェックリップ部84を径方向外側に開きロッドガイド28の内側環状凸部61から離間させながら連通穴64を介してリザーバ室30に導入されることになる。その後、外側からのガスの導入を停止させると、メインリップ部73の先端筒状部81が縮径してロッド15の主軸部43に全周に渡って密封接触する状態となり、チェックリップ部84が縮径してロッドガイド28の内側環状凸部61に全周に渡って密封接触する状態となる。これにより、ガスが抜けることなく封入された状態になる。
【0037】
なお、第1実施形態の油圧緩衝器11は、車両に取り付けられた状態では、最も縮んだ状態となっても、オイルシール68のダストリップ部72が主軸部43よりも面取部91および外端軸部90側に位置することがないように、車両への取付位置関係が設定されるようになっている。
【0038】
以上に述べた第1実施形態の油圧緩衝器11によれば、ロッド15を外側シリンダ13内に最大限挿入した最大挿入状態とすると、ロッド15の外端軸部90がダストリップ部72と外側シリンダ13の外とを連通することになるため、外側シリンダ13の外からガスをダストリップ部72内に導入することができ、この導入されたガスは、メインリップ部73の内側ほど内径が縮径する先細筒状部80に作用して、メインリップ部73を開いて外側シリンダ13内に導入されることになる。したがって、ガスの封入を容易化することができる。
【0039】
また、ガスの封入後は、ロッド15を最大挿入状態としても、主軸部43がメインリップ部73の先端筒状部81と全周に渡り接触することになるため、ガスの漏出を抑制することができる。
【0040】
また、メインリップ部73をロッド15から全周に渡って離間させて外側シリンダ13内にガスを導入できるため、ガスの流路面積を大きくでき、短時間でガスを封入できる。
但し、封入性及び製造性が劣るが、周方向に部分的に離間させても良い。
【0041】
また、外側シリンダ13内へ部品を組み付け係止部23を形成した後にガスを封入するため、例えば特開2000−74124号公報に開示されるガスを封入した後に係止部を加締める場合と比べて製造が容易となる。つまり、ガスを封入した後に係止部を加締める方法では、オイルシールを押さえてその抜けを規制しつつ、シリンダ側部の穴からシリンダ内にガスを導入し、導入後、オイルシールをガスの圧力に抗してシリンダ側部の穴を封止可能な位置まで押し込んでから、係止部を加締めることになるが、このような製造方法と比べて製造が容易で、製造効率が約30%程度向上できる。
【0042】
また、外側シリンダ13内へ部品を組み付け係止部23を形成した後にガスを封入するため、封入ガスの圧力の影響を受けることなく、内側シリンダ12への軸力を与えることができる。つまり、ガスを封入した後に係止部を加締める場合は、封入ガスの圧力の影響を受けながら内側シリンダ12への軸力を与えることことなるが、このような製造方法と比べて内側シリンダ12への軸力を安定的に与えることができる。
【0043】
また、外側シリンダ13内へ部品を組み付け係止部23を形成した後にガスを封入するため、外側シリンダ13内の容積が一定の状態でガスを封入できることになり、安定した封入圧力を得ることができる。つまり、ガスを封入した後に係止部を加締める場合は、外側シリンダ13内の容積が変動する不安定な状況の中で必要な封入圧力を得ることになり、封入圧力が不安定となってしまうが、このような製造方法と比べて安定した封入圧力を得ることができる。
【0044】
また、外側シリンダ13内へ部品を組み付け係止部23を形成した後にガスを封入するため、係止部23の加工に制約がなくなり、係止部23を加締め加工ではなくカール加工に変更すること等が可能となる。
【0045】
本発明に係るシリンダ装置の第2実施形態である油圧緩衝器を主に図3を参照して第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
【0046】
第2実施形態においては、ロッド15の面取部91と外端軸部90との間に、主軸部43より小径で外端軸部90よりも大径の中間軸部(連通部,小径部)95が形成されている。中間軸部95も、その外径が、ダストリップ部72の先端筒状部76のロッド15が嵌合しない自然状態における内径(言い換えれば、主軸部43の外径からダストリップ部72の先端筒状部76の締め代を減算した値)よりも小径となっている。
【0047】
そして、ロッド15が、図3に示すように最大挿入状態にあるとき、オイルシール68は、外側のダストリップ部72が軸方向位置をロッド15の中間軸部95に合わせることになる。また、ロッド15が、最大挿入状態にあるとき、中間環状部71もダストリップ部72側の一部が軸方向位置をロッド15の中間軸部95に合わせることになる。よって、中間軸部95は、ロッド15の最大挿入状態においてダストリップ部72の径方向内側と外側シリンダ13の外側とを連通する。より具体的に、中間軸部95は、ダストリップ部72の径方向内側と、中間環状部71の径方向内側と、メインリップ部73の先細筒状部80の径方向内側とを、外側シリンダ13の外側つまり外気に連通させる。
【0048】
また、ロッド15が最大挿入状態にあるとき、内側のメインリップ部73は、軸方向位置をロッド15の中間軸部95よりも大径の主軸部43に合わせることになる。つまり、ロッド15が最大挿入状態となっても、その主軸部43の外周面が内側のメインリップ部73の先端筒状部81と全周に渡り密封接触する状態を維持する。
【0049】
なお、第2実施形態の油圧緩衝器11は、車両に取り付けられた状態では、最も縮んだ状態となっても、オイルシール68のダストリップ部72が主軸部43よりも面取部91および中間軸部95側に位置することがないように、車両への取付位置関係が設定されるようになっている。
【0050】
このような第2実施形態によれば、ストッパ52(図1参照)からピストン18(図1参照)までの長さ(ベアリング長)を減らす必要がなくなる。
なお、上記各実施形態では、ロッド15の最大挿入状態をロッド15の内端軸部44がベースボディ26に設けられたリベット40の加締部42に当接する構成により得るものとしたが、これに限らず、例えば、内筒27の内周面にピストン18と当接する突起を設けても良く、また、ロッド15の突出端側に係止部23と当接するフランジ部を設けてもよい。
また、上記各実施形態では、ダストリップ部(外側シール)72とメインリップ部(内側シール)73と一体としたが、別体としてもよい。この場合、メインリップ部をロッドガイドより油室16側に設けてもよい。
なお、上記実施形態では複筒式の油圧緩衝器を示したが、シリンダ内にガスを封入するシリンダであればよく、例えば、単筒式のガススプリング、ロック付きガススプリングなどであってもよい。
【符号の説明】
【0051】
11 油圧緩衝器(シリンダ装置)
13 外側シリンダ(シリンダ)
15 ロッド
43 主軸部(接触部)
72 ダストリップ部(外側シール)
73 メインリップ部(内側シール)
80 先細筒状部(拡径部)
90 外端軸部(連通部,小径部)
95 中間軸部(連通部,小径部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスが封入されるシリンダと、
前記シリンダの一端から一端が突出するロッドと、
前記シリンダの前記一端側に設けられる外側シールと、
前記外側シールの内側に設けられ前記ロッドの前記一端側に向かって内径が拡径する拡径部を有する内側シールとからなり、
前記ロッドは、
前記ロッドを前記シリンダ内に最大限挿入した最大挿入状態において前記外側シールと前記シリンダ外とを連通する連通部と、
前記最大挿入状態において前記内側シールと全周に渡り接触する接触部とを有することを特徴とするシリンダ装置。
【請求項2】
前記外側シールと前記内側シールとは一体であることを特徴とする請求項1に記載のシリンダ装置。
【請求項3】
前記連通部を前記ロッドの前記一端側に設けられた小径部とし、前記接触部は前記小径部より大径の前記ロッドの摺動面であることを特徴とする請求項1または2に記載のシリンダ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−13131(P2012−13131A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149238(P2010−149238)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】