説明

シルの防凍結装置およびエレベータ

【課題】電力の消費を抑制しつつ、エレベータのシルの凍結を防止できるようにする。
【解決手段】エレベータのかご室1のドア2の開閉を案内するかごシル3および乗り場ドア12の開閉を案内する乗り場シル13の凍結を防止する防凍結装置は、かごドア2および乗り場ドア13の開閉を妨げないように、かごシル3および乗り場シル13の上面にそれぞれ取り付けられた水感知センサ4と、かごシル3および乗り場シル13を加熱するヒータと、水感知センサ4が水を感知するとヒータを電源に接続させるスイッチとを有する。水感知センサ4とスイッチの間にタイマーを設け、所定の時間が経過するとヒータを電源から切り離させてもよい。また、ヒータはかご室1も加熱するようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータのかご、または乗り場のドアの開閉を案内するシルの凍結を防止するシルの防凍結装置およびそれを用いたエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、エレベータのかご、または乗り場の床面出入口部にはシルが設けられていて、エレベータのドアは、シルの溝に沿って移動して開閉される。このシルに水滴などが入り、シルの近傍の温度が低下すると、その水分がシル内で凍結してドアの開閉を妨げるおそれがある。
【0003】
そこで、たとえば特許文献1には、ドアの開閉を検知してシルを加熱する方法が開示されている。
【特許文献1】特開平10−279241号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ドアの開閉に基づいてシルを加熱する方法では、シルに水分がない場合などの加熱する必要がない場合であっても、シルを加熱することになる。このため、不要な電力を消費し、また、シルを加熱するヒータの寿命を短くするおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、電力の消費を抑制しつつ、エレベータのシルの凍結を防止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するため、本発明は、シルの防凍結装置が、エレベータのドアを案内するシルに、そのドアの開閉を妨げないように取り付けられた水感知センサと、前記シルを加熱するヒータと、前記水感知センサが水を感知すると前記ヒータを電源に接続させるスイッチと、を有することを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、エレベータが、ドアと、前記ドアの開閉を案内するシルと、前記ドアの開閉を妨げないように前記シルに取り付けられた水感知センサと、前記シルを加熱するヒータと、前記水感知センサが水を感知すると前記ヒータを電源に接続させるスイッチと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電力の消費を抑制しつつ、エレベータのシルの凍結を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係るエレベータのシルの防凍結装置の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、本発明に係る一実施の形態のエレベータの水平断面図である。
【0011】
エレベータは、直方体のかご室1を有している。かご室1の少なくとも一つの鉛直な面には、かごドア2が取り付けられている。かごドア2は、かご室1の床9に形成されたかごシル3に沿って開閉可能なようになっている。かごシル3の上面中央には、その長手方向に延びる溝10が形成されていて、かごドア2は、その溝10の上を移動する。
【0012】
エレベータの乗り場19の壁21には、乗り場ドア12が取り付けられている。乗り場ドア12も、乗り場シル13に沿って開閉可能なようになっている。乗り場シル13の上面中央にも、その長手方向に延びる溝10が形成されていて、乗り場ドア12は、その溝10の上を移動する。
【0013】
かごシル3および乗り場シル13の溝10には、たとえば3個の水感知センサ4がそれぞれ取り付けられている。なお、図1は、かごドア2および乗り場ドア12がいずれも開いた状態を示している。
【0014】
図2は、本実施の形態のシル近傍の図1および図3におけるII−II矢視断面図である。図3は、本実施の形態のシル近傍の図1および図2におけるIII−III矢視断面図である。なお、図2および図3には、ドア2などの図示を省略している。
【0015】
かごシル3および乗り場シル13の溝10には、窪みが形成されていて、水感知センサ4は、かごドア2および乗り場ドア12の開閉を妨げないように、その窪みに埋め込まれている。かごシル3の下面とかご室1の底板11の間には、板状のヒータ5が設置されている。また、乗り場シル13の下面に接触するように、板状のヒータ5が設置されている。
【0016】
図4は、本実施の形態のシルの防凍結装置の結線図である。
【0017】
ヒータ5は、スイッチ6を介して電源7に接続されている。スイッチ6には、タイマー8を介して水感知センサ4が接続されている。かごシル3を加熱するヒータ5および乗り場シル13を加熱するヒータ5と、かごシル3に取り付けられた水感知センサ4および乗り場シル13に取り付けられた水感知センサ4とは、それぞれ独立して接続されている。
【0018】
水感知センサ4が水を検知すると、スイッチ6を閉とする信号が伝達される。この信号により、スイッチ6は閉となり、ヒータ5には電流が供給され、ヒータ5は発熱する。ヒータ5の発熱により、シル3は加熱され、付着した水は蒸発する。スイッチ6が閉となってから所定の時間が経過したことがタイマー8によって判定されると、シル3に付着した水が蒸発したと判断され、スイッチ6が開となる。所定の時間が経過する前に、再び水感知センサ4が水を検知した場合には、その時点から所定の時間が経過するまでスイッチ6は閉となる。
【0019】
なお、水感知センサ4の位置での水の付着がなくなれば、シル3の全体にわたって水の付着がないと考えることができる場合などには、タイマー8を組み込まずに、水感知センサ4から直接スイッチ6に信号が伝達するようにしてもよい。
【0020】
このようなシルを用いることにより、凍結のおそれがある場合のみ、すなわち、シルに水が付着した場合のみ、ヒータ5は加熱されるため、不要な電力を消費することがない。また、ヒータ5の寿命が長くなる。
【0021】
また、エレベータの周囲の気温が高い場合などに、ヒータ5に電流が供給されないようにする主スイッチを取り付けてもよい。この主スイッチは手動で開閉するようにしてもよいが、周囲の気温を検知して自動的に開閉するようにしてもよい。
【0022】
シル3に付着した水が蒸発するために必要な熱量は、シル3の周囲の温度に依存するため、タイマー8がスイッチ6を閉としている時間も、エレベータの周囲の気温に応じて手動または自動で変更できるようにしておいてもよい。
【0023】
また、シル3を加熱するヒータ5は、かご室1の床面を加熱するように、かご室1の床面の下に広がっているものでもよい。かご室1の床面に水が付着している場合には、シル3にも水が付着している場合が多いため、シル3に付着した水を蒸発させる際に、かご室1の水も併せて蒸発させることができる。かご室1の床面に付着した水を蒸発させることにより、かご室の床の劣化や、カビの発生を防止することができる。
【0024】
なお、本実施の形態では、かごシル3および乗り場シル13の両方にシルの防凍結装置を設置しているが、いずれか一方だけに設置してもよい。また、乗り場シル13の防凍結装置は、エレベータが停止する各階に設置してもよいが、シルが凍結する可能性がある場所だけに設置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る一実施の形態のエレベータの横断面図である。
【図2】本発明に係る一実施の形態のシル近傍の図1および図3におけるII−II矢視断面図である。
【図3】本発明に係る一実施の形態のシル近傍の図1および図2におけるIII−III矢視断面図である。
【図4】本発明に係る一実施の形態のヒータの結線図である。
【符号の説明】
【0026】
1…かご室、2…かごドア、3…かごシル、4…水感知センサ、5…ヒータ、6…スイッチ、7…電源、8…タイマー、9…床、10…溝、11…底板、12…乗り場ドア、13…乗り場シル、19…乗り場、21…壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータのドアを案内するシルに、そのドアの開閉を妨げないように取り付けられた水感知センサと、
前記シルを加熱するヒータと、
前記水感知センサが水を感知すると前記ヒータを電源に接続させるスイッチと、
を有することを特徴とするシルの防凍結装置。
【請求項2】
前記水感知センサが水を感知してから所定の時間が経過すると前記スイッチに前記ヒータを前記電源から切り離させるタイマーを有することを特徴とする請求項1記載のシルの防凍結装置。
【請求項3】
前記ヒータは、前記エレベータのかご室も加熱するものであることを特徴とする請求項1または請求項2記載のシルの防凍結装置。
【請求項4】
前記ヒータは、前記エレベータのかご室のドアを案内するシルおよび前記エレベータの乗り場のドアを案内するシルの少なくとも一方を加熱するものであることを特徴とする請求項1ないし請求項3いずれか記載のシルの防凍結装置。
【請求項5】
ドアと、
前記ドアの開閉を案内するシルと、
前記ドアの開閉を妨げないように前記シルに取り付けられた水感知センサと、
前記シルを加熱するヒータと、
前記水感知センサが水を感知すると前記ヒータを電源に接続させるスイッチと、
を有することを特徴とするエレベータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−302378(P2007−302378A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−130959(P2006−130959)
【出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】