説明

シルカゲル、その製造方法、シリカゲル担持ペーパー及びシリカゲル素子

【課題】低湿度及び高湿度での吸湿量が共に顕著に高いシリカゲル、シリカゲル担持ペーパー及びシリカゲル素子を提供することにあり、また合成が容易なシリカゲルの製造方法を提供すること。
【解決手段】細孔直径2.5nm以下の領域において細孔分布のピーク(最大値)が存在し、細孔直径10〜25nmの合計細孔容積(V)と細孔直径2〜25nmの合計細孔容積(V)の比(V)/(V)が、0.15〜0.4であるシリカゲル、その製造方法、これを担持してなるシリカゲル担持ペーパー及びシリカゲル素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除湿性能が格段に優れる新規な細孔構造を有するシルカゲル、その製造方法、シリカゲル担持ペーパー及びシリカゲル素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、シリカゲルやゼオライト等の吸湿剤を担持させたハニカム構造体が、除湿素子として広く使用されている。シリカゲルとゼオライトとを比較すると、一般的には相対湿度が低い場合にはゼオライトの方が吸湿量は多く、相対湿度が高い場合にはシリカゲルの方が吸湿量は多くなる。また、シリカゲルの中でも、A形シリカゲルは相対湿度が低い場合の吸湿量は比較的多いものの、相対湿度が高くなるに従って吸湿量は頭打ちとなり、B形シリカゲルは概ね相対湿度90%以下では、吸湿量が非常に低く、相対湿度90%を越えるような高相対湿度の場合に非常に高い吸湿量を示す。
【0003】
JIS Z0701(包装用シリカゲル乾燥剤)には、A形は「低湿度において湿気を吸着する力が強いもの」と、B形は「高湿度において多量の湿気を吸い、吸着容量が大きいもの」と規定され、A形の相対湿度20%、50%及び90%における吸湿率が、それぞれ、「8.0以上、20.0以上、30.0以上」と、B形の相対湿度20%、50%及び90%における吸湿率が、それぞれ、「3.0以上、10.0以上、50.0以上」と規定されている。
【0004】
一方、特開2001−9231号公報には、シリカゲルとしての酸化ケイ素90.0〜99.9質量部に対し、酸化鉄もしくは酸化鉄と他の金属酸化物との混合物0.1〜10.0質量部が配合された除湿剤が開示されている。この除湿剤は湿度環境にかかわらず、高い吸湿性能を有する。
【特許文献1】特開2001−9231号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、A形シリカゲルは高湿度における吸湿率が小さく、B形シリカゲルは低湿度における吸湿率が小さいという問題がある。このため、A形シリカゲルやB形シリカゲルを除湿剤として使用するには、これらの除湿剤を湿度環境に応じて使い分けているのが現状である。また、特開2001−9231号公報記載の吸湿剤は、上記のような優れた吸湿性能を有するものの、依然としてシリカゲル本来の特徴である高湿度での吸湿量が低いという問題があった。
【0006】
従って、低湿度及び高湿度での吸湿量が共に高いシリカゲルが得られれば、低湿度条件下、及び高湿度条件下での繰り返し使用ができるため、極めて有用な素子を提供することができる。また、シリカゲルは、ゼオライトに比べて合成が容易で、且つ再生温度が低いため、製造コストとランニングコストを共に、低減できるなど利点が多い。
【0007】
従って、本発明の目的は、低湿度及び高湿度での吸湿量が共に顕著に高いシリカゲル、シリカゲル担持ペーパー及びシリカゲル素子を提供することにあり、また合成が容易なシリカゲルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる実情において、本発明者らは鋭意検討を行った結果、ゲル化の対象となる合成原料を、珪酸ナトリウム水溶液からなる液滴を乾燥して得られる半固形状の液滴乾燥物とすれば、その後のゲル化工程において、液滴乾燥物の表面近傍からゲル化が生じるため、表層部には小さな細孔を、中心部には大きな細孔を形成でき、その結果、表層部と中心部の細孔分布が異なる新規な細孔構造のシリカゲルが得られること等を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、細孔直径2.5nm以下の領域において細孔分布のピーク(最大値)が存在し、細孔直径10〜25nmの合計細孔容積(V)と細孔直径2〜25nmの合計細孔容積(V)の比(V)/(V)が、0.15〜0.4あることを特徴とするシリカゲルを提供するものである。
【0010】
また、本発明は、珪酸ナトリウム水溶液からなる液滴を乾燥して半固形状の液滴乾燥物を得るI工程、I工程で得られた液滴乾燥物をゲル化するII工程、II工程で得られたシリカヒドロゲル中に残存するナトリウムを洗浄除去するIII工程を行なうことを特徴とするシリカゲルの製造方法を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、前記シリカゲルを繊維質ペーパーに担持してなることを特徴とするシリカゲル担持ペーパーを提供するものである。
【0012】
また、本発明は、前記シリカゲル担持ペーパーを成形して得られることを特徴とするシリカゲル素子を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のシリカゲルは、表層部には小さな細孔を、中心部には大きな細孔を有する新規な細孔構造を有するものであるか又はその粉砕物であり、これを担持するシリカゲル担持ペーパーやシリカゲル素子を吸湿素子として使用すれば、大きい細孔を有するため、高湿度での吸着量が多く、低湿度で脱着し易い特性が、小さい細孔を有するため、低湿度で吸着し易く脱着し難い特性が発現できる。このため、低湿度及び高湿度での吸湿量が共に顕著に高く、また、低湿度条件下及び高湿度条件下での繰り返し使用ができる。また、本発明のシリカゲルの製造方法によれば、新規な細孔構造のシリカゲルを簡易な方法で合成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のシリカゲルは、細孔直径2.5nm以下の領域において細孔分布のピーク(最大値)が存在し、細孔直径10〜25nmの合計細孔容積(V)と細孔直径2〜25nmの合計細孔容積(V)の比(V)/(V)が、0.15〜0.4、好ましくは0.15〜0.35である。これにより、本発明のシリカゲルは低相対湿度及び高相対湿度での吸湿量が共に顕著に高いものとなる。(V)/(V)が小さ過ぎると、高湿度での吸湿量が少なくなり、(V)/(V)が大き過ぎると、低湿度での吸湿量が少なくなる。
【0015】
合計細孔容積(V)及び(V)は、公知のBJH法による細孔分布計算結果から得られる細孔容積の積算値を言う。ここでの合計全細孔体積は、細孔分布計算を行った範囲の細孔が対象となる。また、細孔の測定は、窒素吸着等温線測定方法であり、解析は細孔形状が円筒形であるという仮定に基づいている。なお、細孔直径2nm未満の細孔は測定不能であり、また、細孔直径50nmを越える細孔は無視できるほど少ない。また、(V)及び(V)は細孔分布曲線から手計算又は自動計算により求めることができる。なお、本明細書中、合成途中で得られる中間シリカゲルを含めたシリカゲルの細孔分布は、全て日本ベル社製ベルソープMiniIIを使用し、150℃で3時間真空加熱脱気による前処理を行なうBJH法により求めたものである。
【0016】
本発明のシリカゲルの細孔分布曲線の一例を図1を参照して説明する。図1の細孔分布で示されるシリカゲルはモノモーダルで、細孔直径2.5nm以下の領域、図1では2.0nmにおいて細孔分布のピークP(最大値)が存在するものである。すなわち、細孔直径が2nm前後の小さい細孔が多く分布し、また細孔直径が10nm以上の大きな細孔も存在するブロードなものである。B形シリカゲルは例えば細孔直径4.0〜8.0nmの領域において細孔分布のピークが存在する。また、従来の合成方法で得られるA形シリカゲルは細孔直径2.5nm以下の領域に細孔分布のピーク(最大値)が存在するが、この細孔分布曲線において、細孔直径10〜25nmの細孔がほとんど存在しない。
【0017】
また、本発明のシリカゲルは、表層部の細孔分布と中心部の細孔分布が異なる。すなわち、相対的に表層部の細孔径が小さく、中心部の細孔径が大きいものである。中心部と表層部は明確な層を成しているものではなく、シリカゲル粒子の表面から中心に向けて小さな細孔を有する細孔分布が大きな細孔を有する細孔分布へと連続的に変化をしているものと考えられる。
【0018】
本発明の他のシリカゲルは、上記の細孔分布が不均一なシリカゲルを粉砕して得られるものである。粉砕装置及び粉砕条件は公知の方法が使用できる。粉砕で得られたシリカゲルは、粉砕前のシリカゲル構造を有するものと有さないものの混合物であり、上記の所定の(V)/(V)比を有する。
【0019】
本発明のシリカゲルは、遷移金属又は卑金属がドープされたものでもよい。これにより吸脱着性能に優れたものを得ることができる。すなわち、本発明の好適なシリカゲルは、シリカゲルとしての酸化珪素に対して、遷移金属又は卑金属の酸化物が配合されている。遷移金属又は卑金属の酸化物の配合量としては、概ね酸化珪素100質量部中、0.1〜10.0質量部である。遷移金属及び卑金属としては、鉄、チタン、アルミニウム、ジルコニウムが挙げられ、この中、鉄が吸脱着性能に優れる点で好ましい。
【0020】
本発明のシリカゲルは、JIS Z0701(包装用シリカゲル乾燥剤)のA形シリカゲルに属し、JIS規定の相対湿度20%、50%及び90%における吸湿率が、それぞれ8.0以上、20.0以上、30.0以上であって、且つ90%における吸湿率が40以上と高いものである。また、本発明のシリカゲルは、B形シリカゲルのように、例えば細孔直径4.0〜8.0nmの領域に細孔分布のピークが存在するものではない。
【0021】
次に、本発明のシリカゲルの製造方法を説明する。本発明のシリカゲルの製造方法は、次ぎのI〜III工程を有する。
【0022】
I工程は、珪酸ナトリウム水溶液からなる液滴を、好ましくは保水率50〜150%、特に好ましくは70〜120%となるように乾燥して半固形状の液滴乾燥物を得る工程である。なお、保水率100%は珪酸ナトリウムの質量と水の質量が同じであることを意味する。保水率が少な過ぎると細孔直径が全体的に小さくなり、比表面積が小さくなる点で好ましくなく、保水率が多過ぎるとゲル化させるときに溶解してしまい、大きな細孔が形成され難い点で好ましくない。珪酸ナトリウム水溶液は従来のシリカゲルの合成において使用されるものが、同様に使用できる。
【0023】
液滴乾燥物は、フッソ樹脂シートなどの撥水性シート上に珪酸ナトリウム水溶液を滴下することで得られる。例えば、図2に示すように撥水性シート1上に珪酸ナトリウム水溶液の液滴2を多数形成したものであれば、多量のシリカゲルを得ることができる点で好適である。乾燥条件は、液滴の保水率が上記の範囲となるような条件であり、具体的には、70〜110℃の乾燥機中、1〜5分である。液滴乾燥物の保水率が上記範囲であれば、相対的に表層部の保水率が低く、内部の保水率が高い半固体又は固体に近いものとすることができ、これをゲル化させることで、相対的に表層部の細孔径が小さく、中心部の細孔径が大きいシリカゲルが得られ、これにより相対湿度が高い場合と低い場合の双方の場合の吸湿量が共に優れたものとなる。
【0024】
半固形状の液滴乾燥物中の水分量は、例えば乾燥前後の重量測定結果から求めることができる。半固形状の液滴乾燥物は、最大長さが0.5〜10mm程度である。最大長さが小さ過ぎると、求める細孔分布が得られない点で好ましくなく、直径が大き過ぎると、内部までゲル化させることができない点で好ましくない。半固形状の液滴乾燥物の最大長さは、液滴乾燥物を上から見た場合の(平面視)最大長さを言う。
【0025】
半固形状とは流動性がない状態を言い、撥水性シートを傾斜させても流れ出すことがない。また、液滴乾燥物は撥水性シートに付着しているため、ゲル化液中へ撥水性シートごと浸漬すればよく、浸漬方法も容易である。このように、ゲル化させる前の珪酸ナトリウム原料を溶液として使用しない点で従来の合成法とは大きく相違する。
【0026】
II工程はI工程で得られた液滴乾燥物をゲル化する工程である。すなわち、II工程は、液滴乾燥物を酸水溶液に浸漬することで珪酸ナトリウムから脱ナトリウムし、シリカヒドロゲルとする工程である。酸水溶液としては、硫酸水溶液又は塩酸水溶液が挙げられ、pHは0.5〜1.8、好適には0.8〜1.3である。酸水溶液には硫酸アンモニウム等のpH調整剤が含まれていてもよい。
【0027】
酸水溶液として硫酸−アンモニア溶液を使用した場合の好適な浸漬条件は、pH0.5〜1.8において浸漬温度が20〜45℃、15分以上、特にpH0.7〜1.5において浸漬温度が25〜43℃、15〜50分、更にpH0.8〜1.3において浸漬温度が30〜42℃、15〜50分である。上記範囲内であれば、最終的に得られるシリカゲルの比表面積が550m/g以上のものとなる点で好ましい。
【0028】
II工程は、上記のゲル化処理により、10nm以上の大きな細孔が多く存在するシリカヒドロゲルを得ることができる。このような大きな細孔を含むシリカヒドロゲルが形成される理由は、pH値が高い珪酸ナトリウムの液滴乾燥物の表面からpH0.5〜1.8の酸水溶液が内部に浸透し、表面から脱ナトリウムしてゲル化が進行するという特有のゲル化作用によるものと思われる。II工程で得られるシリカヒドロゲルの細孔分布は、細孔径が2〜50nm、(V)/(V)が概ね0.3〜0.5であり、平均細孔直径5〜9nm、比表面積が100〜350m/gのブロードな細孔分布を有する。
【0029】
III工程は、II工程で得られたシリカヒドロゲル中に残存するナトリウムを洗浄除去する工程である。洗浄は酸洗浄および水洗浄の2工程を行なうことが、前工程でシリカヒドロゲル中に残存するナトリウム分を、後工程でゲル内の硫酸ナトリウム及び過剰な酸を確実に除去できる点で好ましい。酸洗浄は、pH0.7〜0.8の硫酸水溶液を、15〜25℃の温度下、10分程度行うことが好適である。III工程で得られるシリカヒドロゲルの細孔分布は、細孔径が2〜50nm、(V)/(V)値が概ね0.25〜0.45であり、平均細孔直径3.5〜7nm、比表面積が200〜450m/gのブロードな細孔分布を有する。III工程で得られるシリカヒドロゲルは、平均細孔直径及び(V)/(V)値のいずれも、II工程で得られるシリカヒドロゲルよりも小さく、比表面積は大きくなる。
【0030】
本発明のシリカゲルの製造方法は、更にIV工程及びV工程を行ってもよい。
【0031】
IV工程は、III工程で得られた洗浄シリカヒドロゲルを、遷移金属塩又は卑金属塩を含む溶液に浸漬する工程である。遷移金属又は卑金属をシリカゲルヒドロゲルに導入することで、残存ナトリウム分を除去すると共に、ゲル内に大きな細孔を残しつつ小さな細孔を形成することができる。また、残存ナトリウム分が少なくなるため、例えば、105℃×100%、0.12MPa、48時間での水蒸気処理での劣化を抑制することができる。
【0032】
遷移金属又は卑金属としては、前記シリカゲルの遷移金属又は卑金属と同様のものが挙げられる。また、遷移金属塩又は卑金属塩は、硫酸の遷移金属塩又は卑金属塩が好ましく、特に硫酸鉄、硫酸アルミニウムが好ましい。また、遷移金属塩又は卑金属塩は1種又は2種の組み合わせであってもよい。
【0033】
V工程は、IV工程で得られた遷移金属又は卑金属ドープシリカヒドロゲルを水洗する工程である。この工程により、遷移金属又は卑金属ドープシリカヒドロゲル内に残存する余分な塩及びナトリウムを除去することができる。水洗工程後のシリカヒドロゲルは、公知の乾燥方法により乾燥され、本発明のシリカゲルとなる。
【0034】
本発明のシリカゲルの製造方法によれば、pHの高い珪酸ナトリウムの液滴乾燥物をpHの低い酸溶液に浸漬してシリカヒドロゲルを得るため、シリカヒドロゲル内部に大きな細孔を形成できる。そして、内部に大きな細孔を有するシリカヒドロゲルに遷移金属又は卑金属をドープするため、大きな細孔を内部に有したまま、表面部に小さな細孔を形成できる。このため、当該方法で得られたシリカゲル又はその粉砕物は、従来にないユニークな細孔構造を有するため、低湿度及び高湿度での吸湿量が共に顕著に高いものとなる。
【0035】
本発明のシリカゲル担持ペーパーは、シリカゲル粉末を繊維質ペーパーに担持してなるものである。本発明のシリカゲル担持ペーパーで使用するシリカゲル粉末は、好適な粒径に粉砕した以外は、前記本発明のシリカゲルと同様であるので、その説明を省略する。
【0036】
本発明のシリカゲル担持ペーパーにおいて、シリカゲル粉末の平均粒径は1.0〜10μm、好ましくは2〜8μmである。該シリカゲル粉末の平均粒径が、小さ過ぎると、該繊維間空隙に対する該シリカゲル粉末の大きさが、小さくなり過ぎるため、該シリカゲル粉末が、該繊維間空隙から抜け易くなり、該繊維質ペーパーから脱落し易くなり、また、該シリカゲル粉末の平均粒径が大き過ぎると、該シリカゲル粉末が大き過ぎるので、シリカゲルペーパー粉末をペーパーに担持するとき、むらになり易く、均一に担持できない。
【0037】
該繊維質ペーパーは、ペーパー用繊維を抄紙し又は乾式成形し得られる織布又は不繊布である。
【0038】
該繊維質ペーパーに用いる繊維としては、除湿素子に通常使用されるものであれば、特に制限されず、例えば、シリカ・アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、ムライト繊維、ガラス繊維、ロックウール繊維、炭素繊維等の無機繊維;ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、アラミド繊維、パルプ繊維、レーヨン繊維等の有機繊維が挙げられる。また、これらの繊維は、1種単独又は2種以上の組合わせであっても良い。
【0039】
該繊維質ペーパーに用いる繊維の平均繊維径は、特に制限されないが、好ましくは0.1〜25μm、特に好ましくは0.5〜10μmであり、該繊維質ペーパーに用いる繊維の平均繊維長は、好ましくは0.1〜50mm、特に好ましくは10〜20mmである。該平均繊維径及び該平均繊維長が該範囲内にあることにより、該繊維質ペーパーの機械的強度が高くなる。
【0040】
該繊維により形成される該織布又は該不織布の繊維間空隙率は、特に制限されないが、好ましくは50〜95%、特に好ましくは70〜95%である。該繊維間空隙率とは、該織布又は該不織布の見かけ体積から、該織布又は該不織布中の繊維の体積を引いた部分(以下、繊維間空隙とも記載する。)が、該織布又は該不織布中の見かけ体積中に占める割合をいう。該繊維間空隙率が該範囲内にあることにより、該シリカゲル粉末が繊維質ペーパーの外側表面だけでなく繊維間空隙にも担持されるので、該シリカゲル粉末の担持量が多くなる。また、該織布又は該不織布の厚さは、特に制限されないが、好ましくは0.05〜0.5mm、特に好ましくは0.1〜0.3mmである。該厚さが該範囲内にあることにより、該繊維質ペーパーの機械的強度が増すと共に、シリカゲル素子とした際の圧力損失を低く抑えることができ、また、該繊維質ペーパーの繊維間空隙に担持される該シリカゲル粉末の担持量が多くなる。
【0041】
シリカゲル粉末を繊維質ペーパーに担持する方法としては、シリカゲル粉末を無機繊維又は有機繊維と共に抄き込む方法、あるいはシリカゲル粉末を繊維質ペーパーに塗工する方法、繊維質ペーパーを成形加工後にシリカゲル粉末を含むスラリーに含浸する方法などが挙げられる。シリカゲル粉末を無機繊維又は有機繊維と共に抄き込む方法としては、シリカゲル粉末、無機繊維及び有機繊維から選ばれる1種以上の繊維を含むスラリーを作製し、該スラリーを抄造し、乾燥してシリカゲル担持ペーパーを得る方法である。スラリーには、必要により、さらに無機粒子、無機増粘材、凝集剤及び凝集補助材等を適宜配合してもよい。無機粒子としては、例えば、アルミナ、ムライト、シリカ及びジルコニア等の粒子が挙げられる。無機粒子は、平均粒径が通常0.5〜60μm、好ましくは3〜15μmである。平均粒径が該範囲内にあると成形性が良いため好ましい。凝集剤としては、例えば、カチオン澱粉が挙げられる。また、凝集補助材としては、例えば、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、白土、アルミナゾル、コロイダルシリカ等が挙げられる。無機粒子、無機増粘材、凝集剤及び凝集補助材は、上記のうち1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0042】
スラリーの調製は、上記成形体原料を水に混合し分散させることにより行う。成形体原料の各原料の混合順序は特に限定されるものでなく、適宜行えばよい。混合方法としては公知の方法を採用することができ、例えば、羽根型攪拌機、パルパー等を用いて水と原料とを混合する方法が挙げられる。
【0043】
スラリー中における無機繊維又は有機繊維の配合量は、スラリー中にある成形体原料の合計量を100質量%として、通常30〜70質量%である。無機繊維又は有機繊維の配合量が該範囲内にあると、低密度の構造体を得ることができるため好ましい。
【0044】
スラリー中におけるシリカゲル粉末の配合量は、スラリー中にある成形体原料の合計量を100質量%として、通常10〜80質量%、好ましくは30〜70質量%である。シリカゲル粉末の配合量が上記範囲内にあると、低密度でも高強度であるため好ましい。
【0045】
スラリー濃度、すなわち、スラリー中の成形体原料全体の含有量は、通常0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%である。スラリー濃度が該範囲内にあると、成形性が良いため好ましい。
【0046】
シリカゲル粉末を繊維質ペーパーに塗工する方法は、シリカゲル粉末、有機バインダーおよび無機バインダーを主成分として混合して得たスラリーを繊維質ペーパーに塗工する方法が挙げられる。
【0047】
バインダーはシリカゲル粉末を繊維質ペーパーに固定するものである。当該有機バインダーとしては、アクリル系バインダー、PVA系バインダー等の有機バインダーが適当である。その理由は、バインダーによる固定後の繊維質ペーパーに柔軟性を与え、シリカゲル粉末の脱落を防ぐことにより、ハニカム構造体を成形するためのコルゲート加工(波形加工)を可能にするからである。
【0048】
スラリー全質量に対する有機バインダー添加量は不揮発分で1〜20%としたものがよく、有機バインダーには、除湿の効果がなく、ハニカム成形後不必要であるため、シリカゲル粉末を充分固定できるための最小量にとどめておく。
【0049】
本発明のシリカゲル素子は、前記シリカゲル粉末担持ペーパー(以下、単に「担持ペーパー」とも言う。)を成形して得られる。シリカゲル素子の形状としては、特に制限されず、例えば、コルゲート状の担持ペーパーと平坦状の担持ペーパーとを交互に積層して得られるコルゲート状ハニカム構造、波折りに加工したプリーツ形状の担持ペーパーと平坦状の担持ペーパーとを、通気方向に対して直角に順に積層して得られる構造等が挙げられ、これらのうち、コルゲート状ハニカム構造が、被処理ガスの流路が通気方向に対して平行流となるため、圧力損失が低い点で、好ましい。
【0050】
該コルゲート状ハニカム構造について、図3及び図4を参照して説明する。図3は、該コルゲート状ハニカム構造を有するシリカゲル素子2の模式的な斜視図である。シリカゲル素子2は、該平坦状担持ペーパー3及びコルゲート状担持ペーパー4が交互に積層されている。該平坦状担持ペーパー3及び該コルゲート状担持ペーパー4の間には、該コルゲート状担持ペーパー4の山部5が連続する方向に延びた略半円柱状の空洞6が形成される。そして、被処理ガスが空洞6を通過することができるようになっている。
【0051】
該平坦状担持ペーパー3は、該ペーパー用繊維により形成される織布又は不繊布の平坦状物であり、該コルゲート状担持ペーパー4は、該織布又は該不繊布の平坦状物を、コルゲート加工して波形に成形したものである。該コルゲート加工とは、該平坦状担持ペーパー3等の平坦状物を上下一対の波形段ロールの間に通して波形状に成形する加工方法をいう。
【0052】
そして、平坦状担持ペーパー3及びコルゲート状担持ペーパー4が、該コルゲート状担持ペーパー4を中芯として交互に積層され、該シリカゲル素子2が形成される。この場合、該平坦状担持ペーパー3及び中芯である該コルゲート状担持ペーパー4は、該コルゲート状担持ペーパー4(中芯)の上下の山部5、5及び該平坦状担持ペーパー3を接着剤等で接着して一体化したものであってもよいし、接着等を行わずにこれらを単に積層し、積層したものを枠体等に収めて固定しただけのものであってもよい。該平坦状担持ペーパー3及びコルゲート状担持ペーパー4の接着に用いられる該接着剤としては、例えば、シリカゾル等が挙げられる。
【0053】
図4は、該シリカゲル素子2において開口部7に平行な面で切った模式的な断面図である。図4において、該コルゲート状担持ペーパー4の該山部5が平坦状担持ペーパー3と接着されている。該シリカゲル素子2の山高さ(図4中、符号h)は、特に制限されないが、好ましくは0.5〜10mm、特に好ましくは0.6〜5mm、更に好ましくは0.7〜2mmである。また、該シリカゲル素子2のピッチ(図4中、符号p)は、特に制限されないが、好ましくは1〜20mm、特に好ましくは1〜5mm、更に好ましくは1.5〜4mmである。該山高さ及び該ピッチが該範囲内であることにより、被処理ガス中の水分の除去効率と、圧力損失とのバランスがよくなる。
【0054】
繊維質ペーパーを成形加工後にシリカゲル粉末を含むスラリーに含浸する方法において、繊維質ペーパーを成形加工する方法は、前記シリカゲル粉末担持ペーパーを成形加工する方法と同様である。また、スラリーは固形分濃度が20〜40重量%になるように配合し、繊維質ペーパーの成形体を含浸してシリカゲル粉末を担持する。スラリー中におけるシリカゲル粉末の配合量は、スラリー中の固形分濃度を100重量部として、通常50〜95重量部、好ましくは70〜90重量部である。シリカゲル粉末の配合量が上記範囲より少ないとバインダー等の比率が高いので成形体の強度は高くなるが、シリカゲル粉末の絶対量が少ないため除湿性能が低くなり、上記範囲より多いとバインダー等の量が少なくなり、シリカゲル粉末の脱落等が生じ、実用に耐えられない。
【0055】
該本発明のシリカゲル素子は、低湿度及び高湿度での吸湿量が共に顕著に高い。従って、該本発明のシリカゲル素子は、回転再生式除湿機用として、優れた性能を発揮する。
【0056】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【実施例1】
【0057】
(シリカゲルの合成)
SiO/NaO(モル比)=3の珪酸ナトリウム(JIS 3号)水溶液を、フッ素樹脂のシート上に、ノズルから30μLづつ滴下して、多数の液滴を形成した。液滴は適宜の間隔で形成した。次いで、110℃の乾燥機中、2分間保持して保水率100%の半固形状の液滴乾燥物を得た(I工程)。
【0058】
I工程で得られたフッ素樹脂シート上の液滴乾燥物を、フッ素樹脂シートから分離し、pH1の10%硫酸−アンモニア溶液中に35℃、60分間浸漬した(II工程)。II工程により、液滴乾燥物の珪酸ソーダは脱ナトリウムされ、シリカヒドロゲルとなった。
【0059】
次いで、II工程で得られたシリカヒドロゲルを、2%硫酸溶液中に20℃、10分浸漬し酸洗浄した。次いで、酸洗浄済みのシリカヒドロゲルをさらに水洗した(III工程)。水洗条件は、シリカヒドロゲルを水に20℃、10分浸漬した。
【0060】
次いで、III工程で得られた洗浄シリカヒドロゲルをpH1.2の10%硫酸鉄溶液に35℃、30分浸漬した(IV工程)。また、得られた硫酸鉄処理シリカヒドロゲルは、更に水洗した。その後、110℃、3時間乾燥処理を行い本発明の鉄含有シリカゲルを得た。得られたシリカゲルの比表面積、細孔分布及び吸湿試験を測定した。シリカゲルの吸湿試験はJIS Z0701に準拠して行った。その結果を表1及び表2に、細孔分布曲線を図6にそれぞれ示した。図6の細孔分布曲線から、得られたシリカゲルは、細孔直径約2.0nmにおいて細孔分布のピーク(最大値)が存在し、細孔直径が概ね2nmの小さな細孔と、細孔直径が10nm以上の大きな細孔の両方を含むユニークな細孔構造を有するものであった。また、表2から、実施例1のシリカゲルは低湿度(たとえばRH20%)においてA形シリカゲルのように吸湿率が高く、高湿度(例えばRH90%)においては、B形シリカゲルのように吸湿率が高いという特徴を有するものであった。
【0061】
実施例2及び3
II工程における10%硫酸−アンモニア溶液中に35℃、60分間の浸漬条件に代えて、10%硫酸−アンモニア溶液中に35℃、90分間の浸漬条件(実施例2)、10%硫酸−アンモニア溶液中に35℃、30分間の浸漬条件(実施例3)とした以外は、実施例1と同様の方法で鉄含有シリカゲルを合成し、同様の評価を行なった。その結果を表1及び表2に、細孔分布曲線を図6にそれぞれ示した。実施例2及び3の細孔分布曲線は実施例1と同様に、細孔直径約2.0nmにおいて細孔分布のピーク(最大値)が存在し、細孔直径が概ね2nmの小さな細孔と、細孔直径が10nm以上の大きな細孔の両方を含むユニークな細孔構造を有するものであった。なお、図6において、実施例2及び3の細孔分布曲線は実施例1の細孔分布曲線と極めて近似しており、両者はほぼ重なっている。また、表2から、実施例2及び3のシリカゲルは低湿度(たとえばRH20%)においてA形シリカゲルのように吸湿率が高く、高湿度(例えばRH90%)においては、B形シリカゲルのように吸湿率が高いという特徴を有するものであった。
【0062】
また、実施例3においては、II工程後のシリカゲルの比表面積及び細孔分布を測定した。その結果、比表面積は136m/g、平均細孔直径は8.4nm、(V)/(V)は0.46であった。また、細孔分布曲線を図5に示した。なお、図5には、比較のため実施例3のシリカゲルの細孔分布曲線を併記した。II工程後のシリカゲルは、細孔直径が10nm以上の大きな細孔を多く含むブロードな細孔分布を有するものであった。このことから、本発明のシリカゲル中の大きな細孔は、II工程のヒドロゲル化において生成したものが一部、そのまま最終工程まで保持されたものである。
【0063】
実施例4
IV工程における10%硫酸鉄溶液に代えて、10%硫酸アルミニウム溶液とした以外は、実施例1と同様の方法でアルミニウム含有シリカゲルを合成し、同様の評価を行なった。その結果を表1及び表2に、細孔分布曲線を図6にそれぞれ示した。実施例2及び3の細孔分布曲線は実施例1と同様に、細孔直径約2.0nmにおいて細孔分布のピーク(最大値)が存在し、細孔直径が概ね2nmの小さな細孔と、細孔直径が10nm以上の大きな細孔の両方を含むユニークな細孔構造を有するものであった。なお、図6において、実施例4の細孔分布曲線は実施例1の細孔分布曲線と極めて近似しており、両者はほぼ重なっている。また、表2から、実施例4のシリカゲルは低湿度(たとえばRH20%)においてA形シリカゲルのように吸湿率が高く、高湿度(例えばRH90%)においては、B形シリカゲルのように吸湿率が高いという特徴を有するものであった。
【0064】
実施例5
(シリカゲル素子の製造)
実施例1で得られたシリカゲルを粉砕、平均粒径が1〜10μmの粉末状シリカゲルを得た。この粉末状シリカゲルをアクリル系バインダーと混合しスラリーとし、該スラリーを無機繊維ペーパーに塗布し、乾燥してシリカゲル担持ペーパーを作製した。なお、シリカゲル担持量は、シリカゲル担持ペーパーの80重量%となるよう調整した。次いで、シリカゲル担持ペーパーをコルゲート加工して、図4の構造体となし、この構造体を接着してハニカム構造の素子を作製した。
【0065】
実施例5で得られたシリカゲル素子の吸湿試験をJIS Z0701に準拠しておこなった。その結果を表3に示す。
【0066】
比較例1
従来から知られている珪酸ソーダ溶液と硫酸溶液を混合して反応させる手法で、鉄含有シリカゲルを合成した。すなわち、硫酸12%水溶液95部と硫酸鉄10%5部の溶液を攪拌混合し、この混合溶液にSiO/NaO(モル比)=3の珪酸ソーダ(JIS 3号)のSiO濃度10%水溶液を滴下し、pH1.7に調整してシリカゾルとした。次いでこれを60℃、4時間、加温してゲル化し、シリカヒドロゲルとした。これを細かく砕いたのち、0.5%希硫酸で洗浄し、さらに水洗し、次にアンモニア水を添加してpH5.3とし、60℃×1時間、加温熟成を行った。次いで、水洗後、110℃×12時間の乾燥処理を行い、次いで、水洗後、110℃×12時間の乾燥処理を行いシリカゲルAを得た。得られたシリカゲルAの物性を表1に、細孔分布曲線を図6にそれぞれ示す。図6の細孔分布曲線から、細孔直径が10nm以上の大きな細孔はほとんど0であった。
【0067】
比較例2
加温熟成条件pH5.3、60℃×1時間に代えて、pH6.5、60℃×1時間とした以外は、比較例1と同様の方法で行い、シリカゲルBを得た。得られたシリカゲルBの物性を表1に、細孔分布曲線を図6にそれぞれ示す。図6の細孔分布曲線から、細孔直径が10nm以上の大きな細孔はほとんど0であった。
【0068】
比較例3
加温熟成条件pH5.3、60℃×1時間に代えて、pH6.5、60℃×3時間とした以外は、比較例1と同様の方法で行い、シリカゲルCを得た。得られたシリカゲルCの物性を表1に、細孔分布曲線を図6にそれぞれ示す。図6の細孔分布曲線から、細孔直径が10nm以上の大きな細孔はほとんど0であった。
【0069】
比較例4
加温熟成条件pH5.3、60℃×1時間に代えて、pH9.8、60℃×1時間とした以外は、比較例1と同様の方法で行い、シリカゲルDを得た。得られたシリカゲルDの物性を表1に、細孔分布曲線を図6にそれぞれ示す。シリカゲルDは図6の細孔分布曲線から細孔直径約6.0nmにおいて細孔分布のピーク(最大値)が存在し、細孔直径10nm以上の大きな細孔が存在するが、吸湿率が相対湿度20%で5.0%、相対湿度50%で13.6%、相対湿度90%で60.4%であるB型シリカゲルであった。このため低湿度(たとえばRH20%)における吸着力が弱いものであった。
【0070】
比較例5〜7
市販のA形シリカゲル3種、すなわちシリカゲルE〜Gの細孔分布を測定した。その結果を図7に実施例1と共に示す。また、シリカゲルE〜Gの物性値を表1に示した。いずれのシリカゲルも、平均細孔径が2.2〜2.3nm、(V)/(V)値はいずれも0.01〜0.07であった。また、細孔分布曲線から、細孔直径約2.0nmにおいて細孔分布のピーク(最大値)が存在し、細孔直径が10nm以上の大きな細孔はほとんど0であった。
【0071】
比較例8及び比較例9
実施例1のシリカゲルに代えて、比較例1のシリカゲルA(比較例8)及び比較例5のシリカゲルE(比較例9)をそれぞれ使用した以外は、実施例5と同様の方法でシリカゲル素子を製造し、吸湿性の評価を行った。その結果を表3に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

【0074】
【表3】

【0075】
表1〜表3及び図5〜7の結果から、実施例1〜4のシリカゲルは、表層部には小さな細孔を、中心部には大きな細孔を有する新規な細孔構造を有し、その粉砕物を担持したシリカゲル担持ペーパーから成形されるシリカゲル素子を吸湿素子として使用すれば、相対湿度20%〜90%の低湿度及び高湿度での吸湿量が共に顕著に高い。一方、比較例1〜3及び5〜7のA型シリカゲルは10nm以上の細孔がほとんど存在しないため、高い相対湿度での吸湿量が低い。比較例4のB型シリカゲルは細孔直径4〜8nmの細孔が多く存在するため、相対湿度90%の高湿度での吸湿量が高いものの、相対湿度20%の低湿度での吸湿量が顕著に低い。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明のシリカゲルの細孔分布曲線の一例を示す図である。
【図2】I工程における液滴乾燥物形成方法を説明するための図である。
【図3】コルゲート状ハニカム構造を有するシリカゲル素子の模式的な斜視図である。
【図4】シリカゲル素子において開口部に平行な面で切った模式的な断面図である。
【図5】実施例3のシリカゲル及びその製造途中で得られるシリカゲルの細孔分布曲線である。
【図6】実施例1〜4及びシリカゲルA〜Dの細孔分布曲線である。
【図7】実施例1及びシリカゲルE〜Gの細孔分布曲線である。
【符号の説明】
【0077】
2 シリカゲル素子
3 平坦状担持ペーパー
4 コルゲート状担持ペーパー
5 山部
6 空洞
7 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細孔直径2.5nm以下の領域において細孔分布のピーク(最大値)が存在し、細孔直径10〜25nmの合計細孔容積(V)と細孔直径2〜25nmの合計細孔容積(V)の比(V)/(V)が、0.15〜0.4あることを特徴とするシリカゲル。
【請求項2】
遷移金属又は卑金属を含有することを特徴とする請求項1記載のシリカゲル。
【請求項3】
珪酸ナトリウム水溶液からなる液滴を乾燥して半固形状の液滴乾燥物を得るI工程、
I工程で得られた液滴乾燥物をゲル化するII工程、
II工程で得られたシリカヒドロゲル中に残存するナトリウムを洗浄除去するIII工程、
を行なうことを特徴とするシリカゲルの製造方法。
【請求項4】
洗浄されたシリカヒドロゲルを遷移金属塩又は卑金属塩を含む溶液に浸漬するIV工程、
IV工程で得られた遷移金属又は卑金属ドープシリカヒドロゲルを水洗するV工程、
を行なうことを特徴とする請求項3記載のシリカゲルの製造方法。
【請求項5】
I工程で得られる半固形状の液滴乾燥物は、保水率50〜150%であることを特徴とする請求項3又は4記載のシリカゲルの製造方法。
【請求項6】
I工程で得られる半固形状の液滴乾燥物の最大長さが、0.5〜10mmであることを特徴とする請求項5に記載のシリカゲルの製造方法。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のシリカゲルを繊維質ペーパーに担持してなることを特徴とするシリカゲル担持ペーパー。
【請求項8】
請求項7記載のシリカゲル担持ペーパーを成形して得られることを特徴とするシリカゲル素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−234878(P2009−234878A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85572(P2008−85572)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】