説明

シルクスクリーンインキ組成物

【課題】従来のシルクスクリーンインキは、ポリオレフィン樹脂(塩素化PP,塩素化PE,EVA等)にてポリオレフィン基材への接着性の向上を図っているが、バインダー樹脂の溶剤への溶解性、或いはバインダー樹脂を2種以上用いた場合の相溶性、各種印刷用基材に対する接着の汎用性、インキ経時安定性に課題があった。このため印刷物の光沢や耐摩擦性、耐油性(動植物油)等が劣り、実用上問題があった。本発明において、ポリオレフィン基材、特に未処理のポリオレフィンフイルムに対して安定した接着性を有し、且つ高光沢で優れた耐摩擦性・耐油性を発現するシルクスクリーンインキの提供を行う。
【解決手段】バインダー樹脂、溶剤および顔料を含有してなるポリオレフィン基材用シルクスクリーンインキにおいて、バインダー樹脂が、環化ゴムおよび塩素化ポリオレフィン
を含むことを特徴とするポリオレフィン基材用シルクスクリーンインキ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン基材に対して接着性が良好で、また印刷物の光沢、耐摩擦性に優れたシルクスクリーンインキ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム基材用のシルクスクリーンインキとして塩酢ビ・アクリル・ポリエステル樹脂などをバインダー樹脂とするインキは従来から知られているが、この種のインキを用いてポリオレフィン基材にスクリーン印刷を行った場合、印刷物としての接着性が劣ると共に、光沢が低下するという問題があり、実用上、安定した製品を得ることが困難であった。
そのため、接着性が良好で、且つ高光沢で耐摩擦性の優れたシルクスクリーンインキが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−82255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来のシルクスクリーンインキを未処理ポリオレフィン基材(PP,PE)に
スクリーン印刷を行った場合、印刷物としての接着性が劣ると共に、光沢や耐摩擦性に
問題が生じた。
【0005】
また、従来のシルクスクリーンインキは、ポリオレフィン樹脂(塩素化PP,塩素化PE,EVA等)にてポリオレフィン基材への接着性の向上を図っているが、バインダー樹脂の溶剤への溶解性、或いはバインダー樹脂を2種以上用いた場合の相溶性、各種印刷用基材に対する接着の汎用性、インキ経時安定性に課題があった。
このため印刷物の光沢や耐摩擦性、耐油性(動植物油)等が劣り、実用上問題があった。
本発明はこのような従来事情に鑑みてなされたもので、その主たる目的とする処は、ポリオレフィン基材、特に未処理のポリオレフィンフイルムに対して安定した接着性を有し、且つ高光沢で優れた耐摩擦性・耐油性を発現するシルクスクリーンインキを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の目的を達成するために、本願発明者は、環化ゴムに着目して鋭意研究を重ね、一定の塩素化PP樹脂を併用することで前述の課題に対し極めて有効であることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の第一の発明はバインダー樹脂、溶剤および顔料を含有してなるポリオレフィン基材用シルクスクリーンインキにおいて、
バインダー樹脂が、
環化ゴム
および
塩素化ポリオレフィン
を含むことを特徴とするポリオレフィン基材用シルクスクリーンインキに関するものである。
【0008】
さらに、本発明の第二の発明は、前記溶剤が、芳香族系溶剤であって、
前記環化ゴム、前記塩素化ポリオレフィンおよび前記芳香族系溶剤を、重量比で、1:1:2で混合させた混合物が、60℃で1時間、加熱攪拌され、溶解後、25℃に3日間放置された場合において、
前記混合物が、バインダー樹脂の析出がなく、溶解性
を維持するものであることを特徴とする請求項1記載のポリオレフィン基材用シルクスクリーンインキに関するものである。
【0009】
また、本発明の第三の発明は、環化ゴムと塩素化ポリオレフィンとが、
重量比率50/50〜90/10
であることを特徴とする請求項1または2記載のポリオレフィン基材用シルクスクリーンインキに関するものである。
【0010】
さらに、本発明の第四の発明は、上記のポリオレフィン基材用シルクスクリーンインキにおいて、
印刷する基材が、
ポリオレフィン基材
であり、
ポリオレフィン基材が、
ポリエチレン基材
または、
ポリプロピレン基材
であることを特徴とする上記のポリオレフィン基材用シルクスクリーンインキに関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るシルクスクリーンインキは以上説明したようにポリオレフィン基材、とりわけ未処理ポリオレフィンフイルムに対して優れた密着性、光沢を発現できる。
【0012】
また、本発明に係るシルクスクリーンインキを用いてポリエチレン、ポリプロピレンなどの透明又は半透明のフィルムやシート等に印刷を施し、加工することにより、例えば書類用のクリアファイル、プラスチック段ボール、ワンウェイ容器が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のスクリーン印刷インキは、バインダー樹脂として、環化ゴムおよび塩素化ポリオレフィンを同時に使用する。本発明に使用される環化ゴムは、天然又は合成ゴムを酸処理することによって得られる。本発明で用い得る環化ゴムは、種々の方法によって得られる。例えば、濃硫酸,p−トルエンスルホン酸のような有機スルホン酸類,クロロスルホン酸等を直接生ゴムに作用させるか、或いはゴム溶液に作用させることにより、ゴム分子中の鎖状分子の一部を環化して2重結合を減少させる方法等で製造される。この環化ゴムの化学構造について、各種のものが提案されているが、本発明での環化ゴムはその何れかに特定されるものではない。使用される環化ゴムの重量平均分子量(GPCで測定し、標準ポリスチレン換算、以下同じ)は5,000〜50,000が好ましく、より好ましくは重量平均分子量8,000〜30,000である。環化ゴムの重量平均分子量が5,000以下だと充分な皮膜強度が得られにくく、耐摩擦性、耐油性が低下する。重量平均分子量が50,000を超えると溶剤に対する溶解性、他の樹脂との相溶性が悪くなる。また、使用される環化ゴムの軟化点は80〜150℃が好ましく、より好ましくは100〜130℃である。軟化点が80℃より低いと充分な皮膜強度が得られにくく、150℃より高いと溶剤に対する溶解性、他の樹脂との相溶性がわるくなる。
【0014】
環化ゴムの印刷インキへの使用量は10〜80重量%である。好ましくは30〜60重量%である。環化ゴムが10重量%よりも少ないと原反への接着不良を起こし、80重量%より多いとインキの状態不良がある。
【0015】
本発明でバインダー樹脂として使用する塩素化ポリオレフィンとしては、塩素含有量が5〜60質量%の範囲のものが好ましく、さらに好ましくは10〜50質量%の範囲のものである。塩素含有量が5質量%未満では溶剤に対する溶解性、他の樹脂との相溶性が悪く、また、塩素含有量が60質量%を超えるとインキ化した際に、ポリプロピレンフィルム等に対する十分な接着性が得られない。塩素化ポリオレフィンの分子量は特に限定されないが、重量平均分子量は、通常7,000〜200,000のものが使用でき、特に、20,000〜110,000の範囲のものが好ましい。重量平均分子量が7,000未満ではインキ化した際に、ポリオレフィン基材に対する十分な接着性が得られない。重量平均分子量が200,000を超えると溶剤に対する溶解性、他の樹脂との相溶性が悪くなる。
【0016】
塩素化ポリオレフィンの印刷インキへの使用量は5〜60重量%が好ましい。更に好ましくは10~30重量%である。塩素化ポリオレフィンが5重量%よりも少ないと皮膜強度が劣り、60重量%より多いと光沢低下やインキ状態不良となる。
【0017】
環化ゴムと塩素化ポリオレフィンの重量比率として50/50〜90/10であることが好ましい。更に好ましくは60/40〜80/20である。環化ゴムと塩素化ポリオレフィンの混合比率50/50より環化ゴムの比率が低いと皮膜の光沢低下やインキ状態不良となり、混合比率が90/10より環化ゴムの比率が高いと耐摩擦性や耐油性が低下する。
【0018】
本発明においてはバインダー樹脂として環化ゴム、塩素化ポリオレフィンの他にエチレン酢ビ共重合体樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、セルロース・アセテート・アルキレート樹脂、アクリル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリビニルブチラール、ロジン系樹脂、塩素化オレフィン樹脂、繊維素系樹脂等を併用することが出来る。特にエチレン酢ビ共重合体樹脂を併用するとポリエチレン基材への接着や柔軟性が付与である。
【0019】
本発明のスクリーンインキに使用する溶媒としては、バインダー樹脂をよく溶解する溶剤が必要で、例えば、グリコールエーテル系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、脂肪族系溶剤、芳香族系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤が挙げられ、必要であればこれらの2種類以上を混合して使用することもできる。グリコールエーテル系溶剤としては、メチルイソブチルカルビノール、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノメトキシメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3-メチル-3-メトキシ-1-ブタノール、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルなどが挙げられる。
【0020】
上記エステル系溶剤としては、例えば、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸(イソ)アミル、酢酸シクロヘキシル、乳酸エチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸sec−ヘキシル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソアミル、γ−ブチロラクトン等が挙げられ、ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルn−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、アセトニルアセトン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等が挙げられる。
【0021】
脂肪族系溶剤としては、ノルマルパラフィン系溶剤、イソパラフィン系溶剤、シクロパラフィン系溶剤などが挙げられるが、例えば、ノルマルパラフィン系溶剤としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ドデカン、0号ソルベントL、M、H(新日本石油株式会社製)、ノルマルパラフィンSL、L、M(新日本石油株式会社製)などが、イソパラフィン系溶剤としては、イソヘキサン、2,2,3−トリメチルペンタン、イソオクタン、2,2,5−トリメチルヘキサン、アイソゾール200、300、400(新日本石油株式会社製)、スーパゾルFP2、25、30、38(出光興産株式会社製)などが、シクロパラフィン系溶剤としては、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ナフテゾール160、200、220(新日本石油株式会社製)、AFソルベント4号、5号、6号、7号(新日本石油株式会社製)などが挙げられる。
【0022】
芳香族系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ナフタレン、テトラリン、ソルベントナフサの他、芳香族系に富む溶媒としてスワゾール(コスモ石油社製、丸善石油化学社製)ソルベッソ(エクソンモービル社製)、カクタスファイン(ジャパンエナジー社製)等が挙げられる。
【0023】
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、sec−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、イソアミルアルコール、t−アミルアルコール、sec−イソアミルアルコール、ネオアミルアルコール、ヘキシルアルコール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、ベンジルアルコール、α−テルピネオール、シクロヘキサノール、3−メトキシブタノール、ジアセトンアルコールなどが挙げられる。
【0024】
エーテル系溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソランなどの環状エーテルが挙げられる。また、その他の液状媒体として、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジ−n−ブチルカーボネートが挙げられる。
【0025】
溶媒としてはバインダー樹脂の溶解性の他にインキ化適性、印刷適性の点から、インキの粘度、溶剤の蒸発速度(沸点)、等も考慮する必要があり、例えば低沸点の低い溶剤を用いると、印刷作業中の時間経過に伴いインキ粘度が上昇し、印刷版に詰まりが発生する場合がある。
【0026】
本発明においては溶剤として芳香族系溶剤を使用することが好ましく、更に150℃以上の沸点を持つ芳香族系溶剤が好ましい。150℃以上の沸点を持つ芳香族系溶剤としてはスワゾール1000、1500、1800(コスモ石油社製、丸善石油化学社製)、ソルベッソ100、150、200(エクソンモービル社製)カクタスファインSF01、02(ジャパンエナジー社製)等が挙げられる。150℃以上の沸点を持つ芳香族系溶剤を使用すると、特に樹脂の溶解性、印刷適性が良好で表面状態の優れた印刷物が得られる。また、引火点が高いため取り扱い上、安全性が高いという利点がある。本発明においては、150℃以上の沸点を持つ芳香族系溶剤単独、もしくは150℃以上の沸点を持つ芳香族系溶剤と相溶性の高い溶剤で、環化ゴム及び塩素化ポリオレフィンに対して溶解性の高いものを併用することができる。例えば、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル等が使用できる。
【0027】
本発明に用いる環化ゴム、塩素化ポリオレフィンについては、特にインキに使用する溶媒への溶解性、及びインキ皮膜中での環化ゴムと塩素化ポリオレフィンの相溶性が重要である。印刷を経てインキ皮膜を形成する過程で、両樹脂と溶媒の溶解性、両樹脂の相溶性が低下するとインキ皮膜の表面状態、皮膜の強度が低下し、耐摩耗性、耐油性等が低下する。
【0028】
本発明に使用する環化ゴム、塩素化ポリオレフィンとしては、使用する環化ゴム、塩素化ポリオレフィン、及び芳香族系溶剤が重量比で1:1:2である混合物を60℃で1時間加熱攪拌した後、該混合物を25℃で3日間静置した時、溶解しているものが特に優れた皮膜物性を示すことを見出した。溶解性試験において環化ゴム、塩素化ポリオレフィンの混合比率は、1:1に限定されるものではないが、一つの基準として有効である。また、温度に関しては、60℃は環化ゴム、塩素化ポリオレフィンの溶解を早めることと、溶媒の揮発を抑制する一つの目安である。25℃で3日間静置することで、溶解性、相溶性に優れた樹脂を選択でき、インキに使用した場合、分離、沈殿がなく、また、インキとしても優れた耐摩耗性、耐油性等を示すことが分かった。
【0029】
これらの溶解性を満足する環化ゴムと塩素化ポリオレフィンは、インキ皮膜中で微細状態で混和し、より均一なインキ皮膜を形成している為、優れた耐摩耗性、耐油性等を発現するものと推定される。
【0030】
本発明のシルクスクリーンインキには、必要に応じて、レベリング剤、消泡剤、沈降防止剤、粘度調整剤、光沢調整剤、耐摩擦補強剤等の添加剤を使用することができる。レベリング剤としては、例えばシリコンがある。添加剤の含有量は、インキ全体量の5%以下であることが望ましい。
【0031】
本発明に係るシルクスクリーンインキの粘度は、10〜1000dPa・S(測定温度25度においてE型回転粘度計により回転数12r.p.mで測定)であることが好ましい。10dPa・Sより低いいとニジミの欠陥、10000dPa・Sより高いと転移不良の欠陥が発生する場合がある。
【0032】
また、本発明のシルクスクリーンインキが適用できるポリオレフィン基材としては、ポリオレフィンフイルム、ポリオレフィンシート、ポリオレフィン成型品等がある。ポリオレフィンとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等が好適に使用できる。本発明のシルクスクリーンインキはポリオレフィン基材の表面が処理されていても、処理されていなくても優れた密着性を示すところに特徴がある。表面処理したポリオレフィン基材は、公知の方法により、例えばコロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理で処理したものが適用できる。
【0033】
本発明に用いられる顔料としては、一般に印刷インキや塗料で使用できる無機顔料、有機顔料、あるいは体質顔料が使用できる。無機顔料として、酸化チタン、ベンガラ、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛などの有色顔料、および炭酸カルシウム、カオリン、クレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク等の体質顔料を挙げることができる。有機顔料としては、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、アゾキレート顔料、縮合アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、縮合多環顔料などを挙げることができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例として本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例により何等限定されるものではない。本発明において、特に断らない限り、部は重量部を示し、%は、重量%を示す。
なお、本発明において、重量平均分子量は、東ソー(株)製ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(HLC−8020。以下GPCと称す。)で測定した。検量線は標準ポリスチレンサンプルにより作成した。溶離液はテトラヒドロフランを、カラムにはTSKgel SuperHM-M(東ソー(株)製)3本を用いた。測定は流速0.6ml/分、注入量10μl、カラム温度40℃で行った。
【0035】
〔実施例1〕
藍顔料(LIONOL BLUE FG-7330(P:B 15:3)、東洋インキ製造(株)製7重量部に対し、バインダー樹脂として環化ゴム(1)(日本サイテックインダストリーズ製アルペックスCK514、重量平均分子量8000、軟化点118℃)35重量部、塩素化ポリプロピレン(1)(東洋紡績製ハードレン523P、重量平均分子量、90,000〜110,000、塩素含有率23%)15重量部、また溶剤(1):(丸善石油化学製C9芳香族炭化水素スワゾール1000、沸点150℃以上)43重量部、レベリング剤として信越シリコンKF-96-1000CS0.1重量部の混合物を三本ロールミル機分散によりインキ化し、インキAを得た。
固形分:57%、粘度:90dPa・S/25℃

【0036】
次にポリオレフィン基材として、表面処理された透明ポリプロピレンシート(出光製ピュアレイ)に270メッシュナイロン版でスクリーン印刷を行った。
【0037】
得られた印刷物は、高光沢を有すると共に、基材に対する接着性も良好であり、且つ印刷面にギザ、カスレ、ピンホールのないものであった。
【0038】
〔実施例2〜15、比較例1〜4〕
実施例1と同様な方法により、表1の配合に従いシルクスクリーンインキ(インキB〜S)を製造し、実施例1と同様の基材にスクリーン印刷を行った。なお、実施例2〜15、比較例1〜4で用いた原料は下記の通りである。
【0039】
環化ゴム(2):(日本サイテックインダストリーズ製アルペックスCK450、重量平均分子量23,000、軟化点130℃)
塩素化ポリプロピレン(2):(日本製紙ケミカル製スーパークロン814H、重量平均分子量20,000、塩素含有率41%)
塩素化ポリプロピレン(3):(東洋紡績製ハードレン526P、重量平均分子量、90,000〜110,000、塩素含有率26%)
塩素化ポリプロピレン(4):(日本製紙ケミカル製スーパークロン803M、重量平均分子量200,000〜250,000、塩素含有量30%)
塩酢ビ:(日信化学製ソルバインC、重量平均分子量31,000、塩ビ/酢ビ比率=87/13)
溶剤(2):トルエン(沸点110℃)
溶剤(3):キシレン(沸点140℃)
溶剤(4):ソルベッソ150(エクソンモービル社製C10芳香族炭化水素、沸点180℃以上)
溶剤(5):カクタスファインSF−01(ジャパンエナジー社製C9〜11芳香族炭化水素、沸点170℃以上)
なお、藍顔料、レベリング剤、ポリオレフィン基材は、実施例1と同じものを用いた。
【0040】
評価方法として、下記評価を行い、それぞれの評価基準で、評価を行った。
【0041】
<相溶性>
環化ゴム10部と塩素化ポリオレフィン10部をスワゾール1000(丸善石油社製)、20部と混合し(固形分50%)60℃で1時間、加熱攪拌した。その後室温で3日間静置し、分離の有無を判定した。
評価基準は以下の通りである。
○:分離なし
△:わずかに分離あり
×:分離あり
【0042】
<接着性>
印刷物にセロハンテープ(ニチバン社製)を貼った後、引き剥がし剥離の有無を確認した。
評価基準は以下の通りである。
○:剥離なし
△:わずかに剥離あり
×:剥離あり
【0043】
<光沢>
印刷物の光沢を目視判定した。
評価基準は以下の通りである。
○:非常によい(60°光沢計で光沢値70以上)
△:良い(60°光沢計で光沢値30以上70以下)
×:悪い(60°光沢計で光沢値30未満)
【0044】
<耐摩擦性>
学振型耐摩擦試験機(荷重500g、回数100回、対上質紙)にて試験しインキ皮膜の取られを判定した。
評価基準は以下の通りである。
○:取られなし
△:わずかに取られあり
×:取られあり
【0045】
<耐油性>
サラダ油を含浸させた脱脂綿で印刷物を100回擦り、インキ皮膜の取られを判定した。
評価基準は以下の通りである。
○:取られなし
△:わずかに取られあり
×:取られあり
【0046】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂、溶剤および顔料を含有してなるポリオレフィン基材用シルクスクリーンインキにおいて、
バインダー樹脂が、
環化ゴム
および
塩素化ポリオレフィン
を含むことを特徴とするポリオレフィン基材用シルクスクリーンインキ。
【請求項2】
前記溶剤が、芳香族系溶剤であって、
前記環化ゴム、前記塩素化ポリオレフィンおよび前記芳香族系溶剤を、重量比で、1:1:2で混合させた混合物が、60℃で1時間、加熱攪拌され、溶解後、25℃に3日間放置された場合において、
前記混合物が、バインダー樹脂の析出がなく、溶解性
を維持するものであることを特徴とする請求項1記載のポリオレフィン基材用シルクスクリーンインキ。
【請求項3】
環化ゴムと塩素化ポリオレフィンとが、
重量比率50/50〜90/10
であることを特徴とする請求項1または2記載のポリオレフィン基材用シルクスクリーンインキ。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項に記載のポリオレフィン基材用シルクスクリーンインキにおいて、
印刷する基材が、
ポリオレフィン基材
であり、
ポリオレフィン基材が、
ポリエチレン基材
または、
ポリプロピレン基材
であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載のポリオレフィン基材用シルクスクリーンインキ。

【公開番号】特開2012−153793(P2012−153793A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13822(P2011−13822)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】