説明

シルクタンパク質を利用した人工鼓膜及びその製造方法

【課題】疾患や急な事故によって穿孔された鼓膜の再生を促進し、且つ、使用が容易な人工鼓膜素材として、シルクタンパク質又はその複合体で人工鼓膜及びその製造方法の提供。
【解決手段】シルクタンパク質を利用した人工鼓膜は、繭又は絹繊維などからセリシンを除去した後、得られたシルクタンパク質(又はシルクフィブロイン)又はシルクタンパク質複合体溶液を脱塩及び乾燥することにより、シルク膜形態の構造を有する。疾患や急な事故によって穿孔された鼓膜の再生を促進し、復元された鼓膜の境界部位がきれいであり、生体適合性、透明性などに優れ、且つ、使用が容易な効果がある。また、人工鼓膜は、繭から得られたシルクタンパク質又はシルクタンパク質複合体溶液をそれ自体で又はコラーゲン、アルギン酸、PEG(Polyethylene glycol)又はプルロニック127などと混合して製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シルクタンパク質を利用した人工鼓膜及びその製造方法に関し、より詳細には、疾患や急な事故によって穿孔された鼓膜の再生を促進し、復元された鼓膜の境界部位がきれいであり、生体適合性、透明性などに優れ、且つ、使用が容易な人工鼓膜素材として繭からセリシンを除去して得られたシルクタンパク質又はその複合体で製造したシルク膜形態のシルクタンパク質を利用した人工鼓膜及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、シルクは、桑の葉を食べて成長する蚕が作った繭から製造した繊維を言い、独特の光沢、優秀な染色性、高い引張強度、そして柔らかい感触と絹擦れの音などによって数千年間高級繊維用素材として使用されてきた。
【0003】
前記シルクは、2本のフィブロインとこれを囲むセリシンとで構成されており、一般的に、シルクというのは、セリシンを除去した後に残っているフィブロインを称する。シルクフィブロインは、生体親和性に優れていて、周辺のいずれの組織にも悪影響を及ぼさないので、粉末、ゲル、水溶液などの形態で製造され、食品、化粧品など多様な分野において使用されている。
【0004】
また、シルクフィブロインは、人体由来の表皮細胞の増殖及び活性化効果があるものとして知られており、化粧品素材(特許文献1)、創傷被覆材(特許文献2、特許文献3)、電気放射ナノ繊維不織布(特許文献4、特許文献5)として活用が検討されているが、人工鼓膜用シルク素材に対する内容は開示されていない。
【0005】
一方、従来の鼓膜成形術及びパッチ術は、外傷によって鼓膜が穿孔された場合や炎症などの原因によって鼓膜穿孔がある場合に、鼓膜再生を促進するために施行される手術方法である。鼓膜成形術は、自家筋膜やその他軟組織を利用し、穿孔された部位で鼓膜上皮が増殖するように助ける方法で手術を施行している。
【0006】
しかしながら、自家筋膜及び軟組織を採取するためには、ドナー部位手術が必要であり、これによる炎症及び傷あとが発生する可能性があり、手術時間が増加するという問題点がある。
【0007】
鼓膜パッチ術は、鼓膜穿孔の辺縁部がすべて接触するようにパッチをつけることによって、扁平上皮層がパッチに沿ってよく再生されるように誘導し、短期間内に合併症なしに治療成功率を高めることができる方法である。1887年にBlakeが初めて提案して以来、現在まで外傷性鼓膜穿孔に対して頻繁に使用されてきた治療法である。
【0008】
これは、人工鼓膜とは異なるもので、鼓膜を新たに装着するものではなく、鼓膜が穿孔された部位にパッチをつけることによって、自然に塞がることを助けるものである。新たに成長する鼓膜は、パッチ部位に沿って成長するようになる。
【0009】
しかしながら、従来の鼓膜パッチ素材は、大抵、紙パッチを利用しているが、これは、鼓膜再生時間が長く、再生された鼓膜の厚さなどで効率性や適合性が劣化するという問題点を有している。
【0010】
鼓膜穿孔を長期間放置する場合、慢性中耳炎などが発生することがある。大抵、急性鼓膜穿孔の場合、紙パッチを使用しているが、炎症などの問題点があることが知られている。また、今後高齢化による高齢者人口の増加に伴って鼓膜穿孔に関連した疾患が増加すると予想されるので、これに対する研究開発及び商品の市販が至急必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】韓国特許公開公報第2001−52075号
【特許文献2】韓国特許公開公報第1999−7001234号
【特許文献3】韓国特許公開公報第2000−51938号
【特許文献4】韓国特許公開公報第2004−0011786号
【特許文献5】米国特許公開公報第6,110,590号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前述のような問題点を解決するためになされたもので、その目的は、疾患や急な事故によって穿孔された鼓膜の再生を促進し、復元された鼓膜の境界部位がきれいであり、生体適合性、透明性などに優れ、且つ、使用が容易な人工鼓膜素材として繭からセリシンを除去して得られたシルクタンパク質又はその複合体で製造したシルク膜形態のシルクタンパク質を利用した人工鼓膜及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の第1態様は、繭又は絹繊維からセリシンを除去した後に得られたシルクタンパク質又はシルクタンパク質複合体溶液を脱塩及び乾燥することによりシルク膜形態の構造を有するシルクタンパク質を利用した人工鼓膜を提供する。
【0014】
ここで、前記シルク膜は、0.8%乃至20%濃度のシルクタンパク質又はシルクタンパク質複合体溶液を用いて室温乃至90℃の温度条件で製造されることが好ましい。
【0015】
好ましくは、前記シルクタンパク質又はシルクタンパク質複合体溶液は、ブロム化リチウム(LiBr)、塩化リチウム(LiCl)、塩化亜鉛(ZnCl)又は塩化カルシウム(CaCl)のうち少なくともいずれか1つの化合物又はこれを含むエタノール水溶液からなるカオトロピック塩を使用して溶解することができる。
【0016】
好ましくは、前記シルク膜は、ゼラチン、コラーゲン、キトサン、アルギン酸、ヒアルロン酸、プルロニック127又はPEG(Polyethylene glycol)のうち少なくともいずれか1つの添加剤をさらに含むことができる。
【0017】
好ましくは、前記シルク膜は、適用部位の追加感染を防止するために、可塑剤、柔軟剤、抗生剤、抗微生物剤、細胞、酵素、抗体又は顔料のうち少なくともいずれか1つの添加剤又はこれらの混合物よりなる群から選択されたいずれか1つの添加剤をさらに含むことができる。
【0018】
また、本発明の第2態様は、(a)繭又は絹繊維からセリシンを除去した後、シルクタンパク質又はシルクタンパク質複合体溶液を獲得する段階と、(b)前記獲得されたシルクタンパク質又はシルクタンパク質複合体溶液を、脱塩及び乾燥し、シルク膜形態の構造で形成する段階と、を含むシルクタンパク質を利用した人工鼓膜の製造方法を提供する。
【0019】
ここで、前記段階(a)の後に、前記シルクタンパク質又はシルクタンパク質複合体溶液を、ブロム化リチウム(LiBr)、塩化リチウム(LiCl)、塩化亜鉛(ZnCl)又は塩化カルシウム(CaCl)のうち少なくともいずれか1つの化合物又はこれを含むエタノール水溶液からなるカオトロピック塩を使用して溶解する段階をさらに含むことが好ましい。
【0020】
好ましくは、前記段階(b)の後に、水に対する溶解度を減少させるために、前記シルク膜を熱処理又は溶媒処理を利用して再結晶化する段階をさらに含むことができる。
【0021】
好ましくは、前記溶媒は、メタノール、エタノール又はプロパノールのうち選択されるいずれか1つのアルコール又はその水溶液を使用することができる。
【0022】
好ましくは、前記段階(a)で獲得されたシルクタンパク質又はシルクタンパク質複合体溶液の濃度を調節するために、PEG(Polyethylene glycol)を使用するか、又は、乾燥器もしくは真空乾燥器を用いた減圧乾燥を行うことができる。
【0023】
好ましくは、前記段階(b)で形成されたシルク膜は、ゼラチン、コラーゲン、キトサン、アルギン酸、ヒアルロン酸、プルロニック127又はPEG(Polyethylene glycol)のうち少なくともいずれか1つの添加剤を含むことができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したような本発明のシルクタンパク質を利用した人工鼓膜及びその製造方法によれば、繭又は絹繊維からセリシンを除去した後に得られたシルクタンパク質又はシルクタンパク質複合体溶液を脱塩及び乾燥してシルク膜形態の構造を有する人工鼓膜を製造することによって、疾患や急な事故によって穿孔された鼓膜の再生を促進し、復元された鼓膜の境界部位がきれいであり、生体適合性、透明性など使用が容易であるという利点がある。
【0025】
また、本発明によれば、自家移植時に発生する可能性があるドナー部位手術を低減することができ、これに対する合併症が避けられると共に、以前の人工物に比べて生体適合性に優れており、合併症が少ないという利点がある。
【0026】
また、本発明によれば、大量生産が可能であり、加工が容易であると共に、多様な形状で加工が可能であるという利点がある。
【0027】
また、本発明によれば、患者の手術時間を短縮し、手術後の回復を促進することができ、且つ、患者及び医者の両方に有用であるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施例によるシルクタンパク質を利用した人工鼓膜用シルク膜とその破断面を示す図である。
【図2】本発明の一実施例によるシルクタンパク質を利用した人工鼓膜用シルク膜の代表的な引張強度曲線である。
【図3】動物モデルの鼓膜穿孔に本発明のシルクタンパク質を利用して製造された膜パッチを適用した写真である。
【図4】本発明のシルクタンパク質を利用して製造された膜を、鼓膜穿孔を有する動物の実験に用いて得た組織学的結果を示す図である。
【図5】本発明のシルクタンパク質を利用して製造された膜を、鼓膜穿孔を有する動物の実験に用いて得た組織学的結果を示すグラフ及び図表である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。しかしながら、下記に例示する本発明の実施例は、様々な他の形態に変形可能であり、本発明の範囲は下記に説明する実施例に限定されるものではない。本発明の実施例は、当業界における通常の知識を有する者に本発明をさらに完全に説明するために提供されるものである。
【0030】
まず、本発明のシルクタンパク質を利用した人工鼓膜は、シルク素材を加工した膜形態で急性鼓膜穿孔及び慢性鼓膜穿孔時に利用することができる人工生体膜であって、これは、鼓膜用パッチのみならず、シルクを利用した人工生体膜を含む。
【0031】
図1は、本発明の一実施例によるシルクタンパク質を利用した人工鼓膜用シルク膜とその破断面を示す図であり、図2は、本発明の一実施例によるシルクタンパク質を利用した人工鼓膜用シルク膜の代表的な引張強度曲線である。
【0032】
図1及び図2を参照すれば、本発明の一実施例によるシルクタンパク質を利用した人工鼓膜は、例えば、繭又は絹繊維などからセリシンを除去した後に得られたシルクタンパク質(又はシルクフィブロイン)又はシルクタンパク質複合体を利用しており、シルク膜形態の構造を有する。
【0033】
ここで、前記人工鼓膜用シルク膜は、シルクタンパク質の濃度と膜製造温度などを適切に調節することによって、約30μm乃至200μmの範囲の厚さを有するシルク膜を製造することができる。穿孔鼓膜との接触性、人工鼓膜の機械的強度などを考慮すれば、約80μm乃至120μmの範囲の厚さを有するシルク人工鼓膜が好ましい。
【0034】
特に、本発明の人工鼓膜は、透明で、細胞親和性及び生体適合性に優れており、且つ、外部から細菌の侵入を防止することができるので、損傷された人工鼓膜を効率的に再生することができる。損傷された組織の鼓膜再生においてその効果が優秀である。さらに、本発明の具体的な例によれば、シルクタンパク質で製造された人工鼓膜は、手術3日後から有意な人工鼓膜回復率を示している。
【0035】
また、本発明の人工鼓膜は、乾燥状態で扱いやすくするために、例えば、ゼラチン、コラーゲン、キトサン、アルギン酸、ヒアルロン酸、プルロニック127又はPEG(Polyethylene glycol)のうち少なくともいずれか1つの添加剤をさらに含むことができる。
【0036】
また、本発明の人工鼓膜は、穿孔部位の追加感染を防止するために、例えば、可塑剤、柔軟剤、抗生剤、抗微生物剤、細胞、酵素、抗体又は顔料のうち少なくともいずれか1つの添加剤又はこれらの混合物よりなる群から選択されるいずれか1つの添加剤をさらに含むことができる。
【0037】
以下、本発明の一実施例によるシルクタンパク質を利用した人工鼓膜の製造方法について詳細に説明する。
【0038】
まず、本発明の一実施例によるシルクタンパク質を利用した人工鼓膜は、例えば、繭又は絹繊維などからセリシンを除去した後に得られた0.8%乃至20%濃度のシルクタンパク質又はシルクタンパク質複合体溶液を用いて室温乃至90℃の温度条件で製造したシルク膜である。
【0039】
この時、本発明の一実施例によって製造されたシルク膜には、水に対する溶解度を減少させるために、再結晶化処理を行うことができる。前記再結晶化処理に使用される方法は、例えば、熱処理又は溶媒処理法が利用でき、前記溶媒の例としては、メタノール、エタノール、プロパノールのようなC1〜C3のアルコール又はその水溶液を挙げることができる。
【0040】
一方、前記繭又は生糸からセリシンを除去する工程を精練と言う。このような精練工程は、当該分野における通常の知識を有する者に広く公知である。例えば、マルセイユ石鹸と炭酸ナトリウムなどをアルカリ性水溶液に入れて加熱する方式、アスペルギルス(Aspergillus)などのタンパク質分解酵素を使用する精練方法、高温高圧窯を利用する高温高圧法などがある。前記セリシンを除去せずに、後続工程を進行する場合、多量の気泡が発生するおそれがあるので、後続工程に多くの問題を惹起する可能性がある。
【0041】
前記セリシンが除去されたシルクタンパク質(又はシルクフィブロイン)は、タンパク質を溶解するものとして知られたカオトロピック塩に溶解することにより製造する。前記シルクタンパク質溶液を製造する時に使用できる中性塩類も広く知られており、例えば、ブロム化リチウム(LiBr)、塩化リチウム(LiCl)、塩化亜鉛(ZnCl)又は塩化カルシウム(CaCl)などを含むエタノール水溶液に、精練した繭又は精練した繊維や織物を付加して溶解した後、この溶液をセロハンのような透析膜で透析し、前記中性塩を完全に除去する。
【0042】
前記シルクタンパク質溶液は、シルクタンパク質を溶解する条件、濃度、乾燥温度などを適切に調節することによって、人工鼓膜用シルク膜の厚さを約30μm乃至200μmの範囲内で適切に調節することができる。
【0043】
追加的に、前記シルクタンパク質又はシルクタンパク質複合体溶液の濃度を調節するために、例えば、PEG(Polyethylene glycol)を使用するか、又は、乾燥器もしくは真空乾燥器などを用いた減圧乾燥を行うことができる。
【0044】
さらに、前記製造されたシルク膜に、例えば、ゼラチン、コラーゲン、キトサン、アルギン酸、ヒアルロン酸、プルロニック127又はPEG(Polyethylene glycol)のうち少なくともいずれか1つの添加剤を含むこともできる。
【0045】
図3は、動物モデルの穿孔された鼓膜に本発明のシルクタンパク質を利用して製造された膜パッチを適用した写真であり、図4は、本発明のシルクタンパク質を利用して製造された膜を、鼓膜穿孔を有する動物の実験に用いて得た組織学的結果を示す図であり、図5は、本発明のシルクタンパク質を利用して製造された膜を、鼓膜穿孔を有する動物の実験に用いて得た組織学的結果を示すグラフ及び図表である。
【0046】
図3乃至図5を参照すれば、蚕尿など汚染された部分を除去して繭を精選した後、重量の100倍に該当する水に浸漬させる。前記繭に対して繊維重さ当たり0.2%のマルセイユ石鹸と繊維重さ当たり0.2%の炭酸ナトリウムを使用して沸点で約50分間2回処理した後、熱水で数回水洗してセリシンを除去する。
【0047】
前記セリシンを除去した繭を、塩化カルシウム、水、エタノールのモル比が1:8:2である混合溶媒に入れて、沸点で約3時間溶解させた後、遠心分離し、残存の不純物を除去した。溶解した繭溶液から塩を除去するために、セルロース透析膜で約4日間透析し、純粋なシルクタンパク質溶液を製造した。
【0048】
前記シルクタンパク質溶液を約60℃恒温条件で乾燥し、シルク膜を製造した。製造したシルク膜を走査電子顕微鏡で観察した結果、図1に示されるように、空隙がない透明で且つ滑らかなシルク膜が製造されたことを確認した。
【0049】
この時、前記シルク膜の機械的強度は、標準条件である室温で相対湿度約65%で約48時間コンディショニングした後、約10回以上繰り返し測定して求めた。前記シルク膜の平均切断強度は、約10MPaであり、これは、通常使用される紙パッチの切断強度である約12.5MPaと類似していた。
【0050】
また、前記シルク膜の表面特性を調べるために、接触角測定器(Kruss easydrop)を使用し、蒸留水を落としてから約5秒後の接触角を測定した結果、約45゜〜55゜の範囲の接触角を示し、鼓膜の再生効果に有利に作用した。
【0051】
以上、本発明によるシルクタンパク質を利用した人工鼓膜及びその製造方法の好ましい実施例を説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明及び添付の図面の範囲内で様々に変形して実施することが可能であり、これも本発明に属する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シルクタンパク質を利用した人工鼓膜であって、
繭又は絹繊維からセリシンを除去した後に得られたシルクタンパク質又はシルクタンパク質複合体溶液を脱塩及び乾燥することによりシルク膜形態の構造を有することを特徴とする人工鼓膜
【請求項2】
前記シルク膜が、0.8%乃至20%濃度のシルクタンパク質又はシルクタンパク質複合体溶液を用いて室温乃至90℃の温度条件で製造されることを特徴とする請求項1に記載の人工鼓膜。
【請求項3】
前記シルクタンパク質又はシルクタンパク質複合体溶液が、ブロム化リチウム(LiBr)、塩化リチウム(LiCl)、塩化亜鉛(ZnCl)又は塩化カルシウム(CaCl)のうち少なくともいずれか1つの化合物又はこれを含むエタノール水溶液からなるカオトロピック塩を使用して溶解されることを特徴とする請求項1に記載の人工鼓膜。
【請求項4】
前記シルク膜が、ゼラチン、コラーゲン、キトサン、アルギン酸、ヒアルロン酸、プルロニック127又はPEG(Polyethylene glycol)のうち少なくともいずれか1つの添加剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の人工鼓膜。
【請求項5】
前記シルク膜が、適用部位の追加感染を防止するために、可塑剤、柔軟剤、抗生剤、抗微生物剤、細胞、酵素、抗体又は顔料のうち少なくともいずれか1つの添加剤又はこれらの混合物よりなる群から選択されるいずれか1つの添加剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の人工鼓膜。
【請求項6】
シルクタンパク質を利用した人工鼓膜の製造方法であって、
(a)繭又は絹繊維からセリシンを除去した後、シルクタンパク質又はシルクタンパク質複合体溶液を獲得する段階と、
(b)前記獲得されたシルクタンパク質又はシルクタンパク質複合体溶液を、脱塩及び乾燥し、シルク膜形態の構造で形成する段階と、を含む人工鼓膜の製造方法。
【請求項7】
前記段階(a)の後に、前記シルクタンパク質又はシルクタンパク質複合体溶液を、ブロム化リチウム(LiBr)、塩化リチウム(LiCl)、塩化亜鉛(ZnCl)又は塩化カルシウム(CaCl)のうち少なくともいずれか1つの化合物又はこれを含むエタノール水溶液からなるカオトロピック塩を使用して溶解する段階をさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の人工鼓膜の製造方法。
【請求項8】
前記段階(b)の後に、水に対する溶解度を減少させるために、前記シルク膜を熱処理又は溶媒処理を利用して再結晶化する段階をさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の人工鼓膜の製造方法。
【請求項9】
前記溶媒が、メタノール、エタノール又はプロパノールのうち選択されるいずれか1つのアルコール又はその水溶液を使用することを特徴とする請求項8に記載の人工鼓膜の製造方法。
【請求項10】
前記段階(a)で獲得されたシルクタンパク質又はシルクタンパク質複合体溶液の濃度を調節するために、PEG(Polyethylene glycol)を使用するか、又は、乾燥器もしくは真空乾燥器を用いた減圧乾燥を行うことを特徴とする請求項6に記載の人工鼓膜の製造方法。
【請求項11】
前記段階(b)で形成されたシルク膜が、ゼラチン、コラーゲン、キトサン、アルギン酸、ヒアルロン酸、プルロニック127又はPEG(Polyethylene glycol)のうち少なくともいずれか1つの添加剤を含むことを特徴とする請求項6に記載の人工鼓膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−259767(P2010−259767A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154428(P2009−154428)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(509183659)翰林大学校 産学協力團 (2)
【出願人】(595109845)大韓民国 (1)
【Fターム(参考)】