説明

シングルモード光ファイバ

【課題】減衰が低減されたシングルモード光ファイバを提供する。
【解決手段】シングルモード光ファイバが、中心から周囲に、半径(a)及び−0.5x10−3〜0.5x10−3の外側クラッド(Dncl)との屈折率差(Dn1)を有するコアと、半径(rring1)及び外側クラッドとの屈折率差(Dninner)を有する内側陥没クラッドと、21μm〜35μmの内径(rring1)、外径(rring2)及び−0.5x10−3〜0.5x10−3の外側クラッドとの屈折率差(Dnring)を有するリングと、半径(rout)及び外側クラッドとの屈折率差(Dnout)を有する外側陥没クラッドとを有する。ファイバは、0.12μm〜0.2μmのリングの幅(Wring)に対するコアの体積の比率を有し、外側陥没クラッドは、15μm2〜30μm2の体積を有する。大容量の低コスト・プリフォームを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ伝送、より具体的にはシングルモード光ファイバ(SMF)の分野に関する。本発明は、減衰が低減されたシングルモード光ファイバ、及び大容量を有するそのようなファイバを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバは、屈折率分布が、一般に、屈折率を光ファイバの半径と関連付ける関数のグラフの形によって分類される。標準的な方法では、光ファイバの中心までの距離rが、x軸上に示され、y軸上に、光ファイバ・クラッドの屈折率差が示される。これらの曲線は、一般に、光ファイバの理論的分布又は規定分布を表すが、光ファイバの製造上の制約によって、分布に僅かな差が生じることがある。光ファイバは、従来、光信号を伝達し場合によっては増幅する機能を有する光学コアと、コア内に光信号を閉じ込める機能を有する光学クラッドとからなる。この目的のため、コアの屈折率ncと外側クラッドの屈折率ngは、nc>ngのようになる。
【0003】
ステップ型屈折率ファイバは、SMF(「シングルモードファイバ」)とも呼ばれ、典型的には、光ファイバ伝送システムの線ファイバとして使用される。そのような光ファイバは、特定の電気通信規格に準拠した波長分散及び波長分散勾配と、標準化された遮断波長値と実効面積値とを有する。
【0004】
様々なメーカーからの光学システム間の互換性の必要性に応じて、国際電気通信連合(ITU)は、SSMF(標準シングルモードファイバ)と呼ばれる標準光伝送ファイバが従うべき規格(基準ITU−T G.652)を定義した。
【0005】
例えば、G.652規格は、伝送ファイバに関して、波長1310nmでのモード・フィールド径(MFD)に関しては範囲[8.6〜9.5μm]、ケーブル遮断波長の値に関しては最大1260nmと、λ0と示されたゼロ分散波長の値に関しては範囲[1300〜1324nm]、及び波長分散勾配の値に関しては最大0.092ps/nm2−kmを推奨する。標準的な方法では、ケーブル遮断波長は、国際電気標準会議の小委員会86Aにより規格IEC 60793−1−44で定義されたように、光信号が22メートルの光ファイバを伝搬した後でシングルモードでなくなる波長として測定される。
【0006】
国際電気通信連合(ITU)は、更に、光ファイバの様々な用途に関する規格を定義している。ITU−T G.654.B規格は、特に、1530nm未満のケーブル遮断波長λcc、1550nmで9.5μm〜13.0μmのモード径、1550nmにおいて22ps/nm−km未満の波長分散と0.070ps/nm2−km未満の分散勾配、及び1625nmにおいて曲率半径30mmの100巻で0.5dB未満の曲げ損失を推奨する。ITU−T G.654.C規格は、特に、1530nm未満のケーブル遮断波長λcc、1550nmで9.5μm〜10.5μmのモード径、1550nmで20ps/nm−km未満の波長分散と0.070ps/nm2−km未満の分散勾配、及び1625nmで曲率半径30mmの100巻で0.5dB未満の曲げ損失を推奨する。
【0007】
純粋シリカ・コアを有するファイバも既知であり、純粋シリカ・コア・ファイバ(PSCF)と呼ばれる。PSCFのコア内にドーパントがないので、光損失を制限し、特に波長1550nmでの減衰を制限することができる。したがって、PSCFは、慣例的に、屈折率を低くするためにフッ素がドープされたシリカのクラッドを有する。
【0008】
既知の方法では、実質的に、光ファイバは、ファイバ線引きタワーでプリフォームから線引きすることによって作成される。例えば、プリフォームは、光ファイバのクラッドとコアの部分を作成するきわめて高品質のガラス管からなる一次プリフォームを含む。次に、この一次プリフォームは、その直径を大きくしかつ線引きタワーで使用されるプリフォームを形成するために、オーバークラッド化またはスリーブ化される。大きさ調整された線引き操作は、プリフォームをタワー内に垂直方向に配置する段階と、プリフォームの端からファイバ素線を引き出す段階とからなる。この目的のため、シリカが軟化するまでプリフォームの一端を局部的に加熱し、次に、線引き速度と温度は、光ファイバの直径を決定するので、線引きしている間ずっと監視される。プリフォームの形状は、線引きされたファイバが必要な分布を有するように、光ファイバのコア径とクラッド径の及び屈折率の比率に完全に従わなければならない。
【0009】
一次プリフォームは、1層又は複数層のドープ/非ドープ・シリカを付着させて光ファイバのコアと内側クラッドを形成した基材管(一般に石英)で構成されることがある。基材管の内側の付着技術には、MCVD(改良化学蒸着法)、FCVD(炉化学蒸着法)、又はPCVD(プラズマ化学蒸着)が挙げられる。コアと内側クラッドに対応する層を付着させた後で、崩壊(collapsing)と呼ばれる操作中に管自体が閉じ込められる。
【0010】
成分の付着は、一般に、「ドーピング」という表現で呼ばれ、即ち、シリカの屈折率を変化させるためにシリカに「ドーパント」が添加される。例えば、ゲルマニウム(Ge)又はリン(P)は、シリカの屈折率を高め、多くの場合、光ファイバの中心コアをドープするために使用される。更に、フッ素(F)又はホウ素(B)は、シリカの屈折率を低下させ、フッ素は、多くの場合、陥没クラッド(depressed cladding)を形成するために使用される。
【0011】
一次プリフォームにきわめて大きく陥没したクラッドを作成するには、慎重を要する。実際において、例えば、特定の温度より高い温度の加熱シリカにはフッ素はあまり導入されず、一方で、ガラスの作成には高い温度が必要である。PCVD法を効率的に使用して、付着管の内側に陥没クラッドを作成することができる。そのような製造法は、特許文献1と特許文献2に記載されており、この製造法によって、フッ素をシリカに大量に導入して大きく陥没したクラッドを形成することができる。純粋シリカまたはフッ素ドープ・シリカで作成された付着管を用意し、ガラス作業タワー内に取り付ける。次に、管が回転され、シリカとドーパントのガス混合物を管に注入する。管は、マイクロ波キャビティを横切り、マイクロ波キャビティ内ではガス混合物が局所的に加熱される。マイクロ波加熱によって、管に注入されたガスのイオン化によってプラズマが生じ、イオン化ドーパントが、シリカ粒子と激しく反応し、その結果、管内側にドープ・シリカ層が付着する。マイクロ波加熱によって生成されたドーパントの反応性が高いため、高濃度のドーパントをシリカ層に導入することができる。
【0012】
図1は、従来のPSCFの規定屈折率分布を示す。図1の屈折率分布は、半径a及びシリカの屈折率に対応する屈折率Dn1の中心コアと、外径routと屈折率Dninnerの陥没クラッドとを示す。「陥没クラッド」という表現は、屈折率Dninnerが、一次プリフォームのオーバークラッド化またはスリーブ化によって得られた外側クラッドの屈折率Dnclより低い屈折率を有するので使用される。この外側クラッドは、一般に、純粋シリカ・ガラスのものであり、PSCFの中心コアと実質的に同じ屈折率を有する。典型的には、コアと内側クラッドは、基材管の内側に付着させることによって作成され、外側クラッドは、一次プリフォームを作成するために使用された基材管と、必要な直径比にするために使用されたオーバークラッドまたはスリーブとで作成される。
【0013】
前述の構造では、中心コアと実質的に同じ屈折率を有する外側クラッドを有し、基本モードLP01は、完全には導かれず、漏れと呼ばれる追加損失を示す。そのような漏れ損失を最小にするには、外側の純粋シリカ・クラッド内を伝搬するエネルギーの割合を小さくしなければならない。したがって、フッ素ドープ内側クラッドの外径とコアの半径との比率(rout/a)が、十分に大きくなければならず、即ち、内側陥没クラッド・シリカが、コア半径と、コア屈折率Dn1と内側クラッドの屈折率Dncl1の屈折率差とに依存する値を有する臨界半径routまで少なくとも延在していなければならず、SMFに関しては、陥没クラッドの半径とコアの半径との比率が8以上(rout/a>8)ならば、中心コア内の光信号の良好な閉じ込めと許容レベルの漏れ損失が保証されると考えられる。
【0014】
特許文献3は、LPOIモードの漏れ損失を制限しかつ基材管を中心コアに近付けるために陥没クラッドにトレンチを提供することを提案している。この解決策は、図1に点線で示されている。陥没クラッド内に、内径b、外径c及び屈折率Dn3のトレンチが提供される。この場合、陥没クラッドは、コアに隣接し外径bと屈折率Dn2を有する第1の部分と、基板管に隣接し内径cと屈折率Dninnerを有する第2の部分とを有する。しかし、基材管の内径routは、伝搬特性を損なうことなく、ファイバから30μm以上小さくすることは容易ではない。
【0015】
MCVD法、FCVD法及びPCVD法は、高品質のコアと大きく陥没した内側クラッドを得るには十分であるが、大容量のプリフォームが求められるときは高コストである。特に、CVD法を使用すると、減衰、特にOHピークによる1383nmでの減衰を制限することができる。
【0016】
プリフォームの容量は、そのプリフォームから線引きできる光ファイバの長さの量と定義される。プリフォームの直径が大きいほど、この容量が大きい。製造コストを削減するには、同一のプリフォームから長い線形ファイバを線引きすることが望ましい。したがって、中心コアと陥没内側クラッドの直径に関する前述の制約に従いつつ大きい直径のプリフォームを製造することが求められる。
【0017】
特許文献4又は特許文献5は、フッ素ドープ付着管を使用した一次プリフォームの作成を開示している。この解決策により、管の内側に付着されるフッ素ドープ層の量を制限することができる。特許文献6は、POD(プラズマ外部蒸着)又はOVDによるフッ素ドープ管の製作を開示している。
【0018】
フッ素ドープ付着管を使用するとき、一次プリフォームの陥没クラッドは、内側付着クラッドと管自体とからなる。それにより、管の内側の付着量を制限しながら、陥没クラッドの半径とコアの半径との比率を高めることができる。しかしながら、この解決策は、非ドープ・シリカ管の代わりにフッ素ドープ管を使用するときは付着条件が変化するので、使いこなすのが難しい。
【0019】
特許文献7は、VAD又はOVDによってGeドープ・コア領域となるロッドを作成し、MCVDによって管の内側にクラッド領域を付着させる複合的方法を開示している。次に、コア・ロッドとMCVDクラッド管が、ロッド・イン・チューブ法を使用して組み立てられる。しかしながら、この文献に開示されたファイバは、純粋シリカ・コアを有しておらず、VADまたはOVD法と関連した1383nmでの固有の減衰問題を示していない。
【0020】
特許文献8は、リングの屈折率が中心コアの屈折率に近いリング支援分布を開示している。この文献は、リングが、そのモードを中心コアの高次モードと共鳴的に結合するように設計されることを教示している。そのようなファイバ分布は、中心コアの高次モードが伝搬するのを妨げ、最終的に基本モードの曲げ損失を改善する。そのような分布は、純粋シリカ・コア・ファイバには最適化されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】米国再発行特許発明第30,635号明細書
【特許文献2】米国特許第4,314,833号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第2 312 350号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2008/0031582号明細書
【特許文献5】米国特許第5,044 724号明細書
【特許文献6】国際公開第2010/003856号
【特許文献7】米国特許出願公開第2007/0003198号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第2 003 476号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、LP01モードの漏れ損失を高めることなくかつ光ファイバの他の伝搬特性を損なうことなく、基材管の内側に付着されるフッ素ドープ内側クラッドを減少させることを目的とする。
【0023】
この目的は、中心から周囲に向かって、コア、内側陥没クラッド、リング、外側陥没クラッド及び外側クラッドを有するシングルモード光ファイバにより達成され、
コアが、半径と、−0.5x10−3〜0.5x10−3の外側クラッドとの屈折率差とを有し、
内側陥没クラッドが、半径と、外側クラッドとの屈折率差とを有し、
リングが、21μm〜35μm、より好ましくは24μm〜35μmの内径、外径、及び−0.5x10−3〜0.5x10−3の外側クラッドとの屈折率差を有し、
外側陥没クラッドが、半径と、外側クラッドとの屈折率差とを有し、
リングの幅に対するコアの体積の比率が、0.12μm〜0.2μmであり、
外側陥没クラッドが、15μm〜30μmの体積を有する。
【0024】
実施形態によれば、本発明のファイバは、
コアが、3.5μm〜7.5μmの半径を有し、
内側陥没クラッドが、−6x10−3〜−2.7x10−3の外側クラッドとの屈折率差を有し、
外側陥没クラッドが、−6x10−3〜−2x10−3の外側クラッドとの屈折率差を有し、
外側陥没クラッドが、−2x10−3〜2x10−3の内側陥没クラッドとの屈折率差を有し、
リングの内径とコアの半径との比率が、2.5〜8であり、
外側陥没クラッドが、17μm〜25μmの体積を有し、
ファイバが、更に、内側陥没内側クラッド内に設けられたトレンチを更に有し、前記トレンチが、外側クラッドとの屈折率差を有し、内径と外径が、内側陥没クラッドの半径より小さく、
コア及び/又はリングが、純粋シリカで作成され、
漏れ損失が、1550nmで0.005dB/km未満であり、
ケーブル遮断波長が、1550nm未満、好ましくは1530nm未満、より好ましくは1260nm未満であり、
半径10mmでの曲げ損失が、1550nmで5dB/m未満と1625nmで10dB/m未満であることのうちの1つ以上を有することができる。
【0025】
本発明は、また、本発明による光ファイバを製造する方法に関し、この方法は、
付着管を提供する段階と、
リングを構成する付着管の内側に層付着を行って、コアと内側陥没クラッドを構成する段階と、
第2の陥没クラッドを提供する段階と、
外側クラッドを提供して、それにより光学プリフォームを提供する段階と、
プリフォームの第1端を加熱することによってファイバを線引きする段階とを含む。
一実施形態によれば、方法は、更に、付着管を部分的に取り除く段階を含む。
一実施形態によれば、第2の陥没クラッドは、ドープ管によるスリーブ化、ドープ・シリカによるオーバークラッド化、ドープ・シリカによる外部蒸着のうちの1つによって作成される。
【0026】
本発明の他の特性と利点は、添付図面に関して例として示された本発明の実施形態の以下の説明を読むことにより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】既に述べた先行技術によるPSCFの規定屈折率分布の図である。
【図2】本発明の第1の実施形態によるファイバの規定屈折率分布の図である。
【図3】本発明の第2の実施形態によるファイバの規定屈折率分布の図である。
【図4】本発明のファイバを得る製造方法の図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、低い伝送損失を有し、伝播特性を損なうことがなく低コストで製造することができるシングルモード・ファイバに関する。
【0029】
この目的のため、減衰を制限し、特にゲルマニウム・ドーピングを伴うときに1550nmでの減衰を制限する純粋シリカ・コア・ファイバ又は少量ドープ・シリカ・コアを有するファイバを提案する。本発明は、減衰を制限し、特にOHピークによる1383nmでの減衰を制限するために付着管の内側にCVDによってコアと内側陥没クラッドを作成することを提案する。外側陥没クラッドが、リングとして働く基材管のまわりに追加される。そのような構成により、基材管の内側に付着された陥没内側クラッドの厚さを小さくでき、またこの基材管を中心コアに近づけることができ、それにより製造コストが削減される。リングの位置と寸法は、G.654に準拠するケーブル遮断波長を保証するようにより高次のLP11モードの漏れ損失を十分に高く維持しながら、基本LP01モードの漏れ損失を最小にする(<0.005dB/km)ように注意深く選択される。また、リングは、他の伝搬特性を変化させないまま曲げ損失を少なくすることができる。
【0030】
図2は、本発明によるファイバの屈折率分布を示す。本発明のシングルモード・ファイバは、中心から周囲に向かって、コア、内側陥没クラッド、リング、外側陥没クラッド及び外側クラッドを有する。外側クラッドは、屈折率Dnclを有する。外側クラッドは、純粋(非ドープ)シリカ又は少量ドープ・シリカでよい。
【0031】
コアは、3.5μm〜7.5μmの半径と、−0.5x10−3〜0.5x10−3の外側クラッドとの屈折率差Dn1を有する。コアが少量ドーピング、或いは非ドーピングなので、1550nmでの減衰が確実に制限される。コアの屈折率値は、水素耐性を改善し、特にOHピークによる1383nmでの減衰を小さくするように、共ドーピングによって得られる。
【0032】
内側陥没クラッドは、21μm〜35μm、好ましくは24μm〜35μmの半径rring1と、−6x10−3〜−2.7x10−3の外側クラッドDnclとの屈折率差Dninnerとを有する。内側陥没クラッドの半径が、図1の先行技術の内側陥没クラッドの半径より小さいので、CVDによる制限された付着と原価管理が保証される。更に、この半径は、漏れ損失が重要な場合以外は小さ過ぎることはない。特に、コアの半径に対する内側陥没クラッドの半径の比率(rring1/a)は、2.5〜8、さらに好ましくは3.5〜7でよく、これは、中心コア内の光信号の良好な閉じ込めと許容レベルの漏れ損失とを保証するSMFの典型要件(rout/a>8)より小さい。
【0033】
リングは、21μm〜35μmの内径rring1(内側陥没クラッドの端)、外径rring2、及び−0.5x10−3〜0.5x10−3の外側クラッドDnclとの屈折率差Dnringを有する。
【0034】
外側陥没クラッドは、内径rring2(リングの端)、外径rout、及び−6x10−3〜−2x10−3の外側クラッドDnclとの屈折率差Dnoutを有する。
【0035】
図3に示された一実施形態によれば、内側陥没内側クラッド内にトレンチを設けてLPO1モードの漏れ損失を更に制限することができる。トレンチは、内径b、外径c、および外側クラッドDnclとの屈折率差Dn3を有する。次に、陥没内側クラッドは、コアと隣接し外径bと屈折率Dn2を有する第1の部分と、リングと隣接し内径cと屈折率Dninnerを有する第2の部分とを有する。
【0036】
リングの位置と寸法は、所定のモード・フィールド径に関して、低い漏れ損失と低い遮断波長と小さい陥没内側クラッドの間で最良トレードオフを保証するように注意深く選択される。ファイバがG.652又はG.654規格のほとんどの要件に従うように、リングの位置と寸法を注意深く選択することができる。
【0037】
特に、リングの幅(wring=Rring2−Rring1)に対するコアの体積
【数1】

の比率は、0.12μm〜0.2μmである。
【0038】
外側陥没クラッドの位置と寸法は、また、所定のモード・フィールド径で低い漏れ損失と低い遮断波長と小さい陥没内側クラッドの間で最良トレードオフを保証するように注意深く選択される。ファイバがG.652又はG.654規格のほとんどの要件に確実に準拠するように、リングの位置と寸法を注意深く選択することができる。
【0039】
特に、外側陥没クラッドの体積
【数2】

は、15μm3〜30μm3、より好ましくは17μm3〜25μm3である。
【0040】
外側陥没クラッドの体積Voutと、リングの幅に対するコアの体積の比率(Vcore/Wring)との組み合わせ条件によって、伝搬特性が低下しないこと、特に、漏れ損失が1550nmで0.005dB/km未満、ケーブル遮断波長λccが1550nm未満、及び曲げ損失が許容可能であることが保証される。本発明の光ファイバは、モード径、波長分散、分散勾配及び曲げ損失に関してはG.652又はG.654規格の要件に完全に準拠しており、一方、本発明の光ファイバは、ケーブル遮断波長λccに関してはG.652又はG.654規格の要件に準拠しておらず、1530nmより僅かに高く1550nm以下でよい。
【0041】
下の表1は、本発明による光ファイバの規定分布の例と、本発明の範囲に含まれない比較例を示す。
【0042】
実施例1、2、4、5、8、11及び12は、本発明によるものである。比較例1b、3、4b、6、7、8b、9及び10は、本発明の範囲に含まれず、比較のために示される。
【0043】
【表1】

【0044】
表2は、前述の実施例と比較例の光ファイバの光学特性を示す。
【0045】
【表2】

【0046】
表2から、本発明の光ファイバのほとんどが、前述のG.652又はG.654規格に完全準拠していることが分かる。
【0047】
特に、本発明の範囲内にある実施例1、2、4、5、8、11および12は、22ps/nm/km未満の分散、0.070ps/nm2/km未満の分散勾配、70μm2を超える有効面積Aeff、0.005dB/km未満の漏れ損失、及び半径10mmにおいて1550nmで5dB/m未満で1625nmで10dB/m未満の曲げ損失を有する。実施例5は、本発明の範囲内にあるが、G.652又はG.654規格の要件を僅かに超えるケーブル遮断波長を示す。本発明の光ファイバは、G.654規格に準拠するように1550nm未満、より好ましくは1530nm未満、さらに好ましくは更にG.652規格に従うように1260nm未満のケーブル遮断波長を有する。
【0048】
比較例1b、3、4b、6、7、8b、9及び10は、本発明の範囲に含まれず、比較のために示された。
【0049】
比較例1bは、実施例1と同じ中心コアと陥没クラッド(同じ半径、同じDn1及びDninner)を有するが、リングがない。外側クラッドは、漏れ損失と付着区分との最良トレードオフを得るように位置決めされた。伝搬特性は、半径10mmの曲げ損失が、1550nmと1625nmの両方で2倍以上であること以外は全て実施例1のものと同等である。基材管をリングとして使用する実施例1と比較した場合、付着区分半径は、17μm超大きく、製造コストがはるかに高くなる。
【0050】
比較例3は、実施例1のものと同じコア寸法、同じリング幅、及び同じ外側クラッド幅を有する。但し、リングは、コアに近づけられた。外側クラッドは、リングがコアに近いにもかかわらず低い漏れ損失と低い曲げ損失を維持するようにより大きく陥没される。但し、高次モードの漏れ損失も大幅に減少し、それにより、ケーブル遮断波長が1600nmより大きくなる。他の伝搬特性は不変である。
【0051】
比較例4bは、実施例4のものと同じ中心コア及び同じトレンチ特性(同じa、b、c、Dn1、Dn2、Dn3、Dinner)を有するが、リングがない。外側クラッドは、漏れ損失と遮断波長と付着区分間の最良トレードオフを得るように位置決めされた。伝搬特性は全て、実施例4のものと同等である。但し、付着区分半径は、14μm大きくされ、その結果、製造コストが高くなる。
【0052】
比較例6は、実施例4のものと同じ中心コア及び同じトレンチ特性(同じa、b、c、Dn1、Dn2、Dn3、Dinner)を有するが、リング寸法が最適化されていない。その結果、ケーブル遮断波長が、1600nmよりかなり大きくなる。
【0053】
比較例7は、実施例4のものと同じ中心コア及び同じトレンチ特性(同じa、b、c、Dn1、Dn2、Dn3、Dinner)を有するが、リングと外側クラッドの寸法が最適化されていない。その結果、大きすぎるリングが小さすぎる外側クラッド体積と組み合わされているので、許容できないレベルの漏れ損失が生じる。
【0054】
比較例8bは、実施例8のものと同じ中心コア特性(同じ半径、同じDn1及びDinner)を有するが、リングがない。外側クラッドは、漏れ損失と付着区分の最良トレードオフを得るように位置決めされた。分散、傾斜及びモードフィールド径は、実施例8のものと同等である。但し、曲げ損失とケーブル遮断波長は両方とも増大した。基材管をリングとして使用する実施例8と比較すると、付着区分半径は、12μm超え大きくなり、その結果、製造コストが高くなる。
【0055】
比較例9は、リングが薄くコアに近いことを除き、実施例8のものと同じ屈折率分布を有する。その結果、漏れ損失は、増加しない。但し、分布は最適化されず、曲げ損失が大幅に増える。
【0056】
比較例10は、リングがコアに近いことを除き、実施例2のものと同じ屈折率分布を有する。その結果、漏れ損失が増大しない。但し、分布は最適化されず、曲げ損失が大幅に増える。
【0057】
図4は、本発明のファイバを少ない製造コストで得るために使用することができる製造方法を示す。
【0058】
一実施形態によれば、付着工程に使用される基材管は、規定分布のリングになることができる。コア、第1の陥没クラッド及び陥没トレンチは、必要に応じて、付着管の内側の付着によって得られる。PCVD、MCVD、FCVDなどの任意のCVD法を検討することができる。必要に応じて、蒸発又はエッチング処理によって基材管を部分的に除去して、リングの最適化された寸法を実現することができる。
【0059】
外側陥没クラッドは、標準外側クラッド(管またはクラッド材料)に取り囲まれたダウンドープ・ジャケット管またはスリーブ管からなってもよい。そのような場合、化学蒸着区分の外径は、rring1である(図4を参照)。CVD蒸着の量が制限され、プリフォームのコストが削減され、同時に大きな陥没領域が得られる。
【0060】
リングのない分布と比較すると(本発明の範囲に含まれない比較例1b、4b、8b)、本発明の光ファイバは、基材管の内側に付着されたフッ素ドープ・クラッドを少なくし、かつその基材管を中心コアに近づけることを可能にし、その結果、コア・ロッド径が大きくなり、製造コストが減少する。
【0061】
特に、本発明による光ファイバは、同じ中心コアを有しリングのないファイバと比較して、ファイバ上の約10μm超えがリングとして働く基材管の内側に付着されたフッ素ドープ・クラッドの半径を減少させることを可能にする。陥没内側クラッドに追加されたトレンチを有する解決策(特許文献3に開示されような)と比較して、本発明の光ファイバは、付着されたフッ素ドープ・クラッドの半径をファイバ上で約5μm超え減少させることを可能にする。
【0062】
最後に、リングのない分布のものと比べて曲げ損失を減少させ、同時に他の伝搬特性を不変に維持することができる。特に、ケーブル遮断波長を損なうことなく曲げ損失を2分の1より少なくすることができる。
【0063】
本発明が例として述べた実施形態に限定されないことに注意されたい。詳細には、図2又は図3に示された規定分布は、例として示され、本発明による光ファイバを得るために図4の実例以外の他の製造方法を使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心から周囲に向かって、コアと、内側陥没クラッドと、リングと、外側陥没クラッドと、外側クラッドと、を有するシングルモード光ファイバであって、
前記コアは、半径(a)と、−0.5x10−3〜0.5x10−3の外側クラッド(Dncl)との屈折率差(Dn1)とを有し、
前記内側陥没クラッドは、半径(rring1)と、外側クラッド(Dncl)との屈折率差(Dninner)とを有し、
前記リングは、21μm〜35μm、好ましくは24μm〜35μmの内径(rring1)、外径(rinner2)、及び−0.5x10−3〜0.5x10−3の外側クラッド(Dncl)との屈折率差(Dnring)を有し、
前記外側陥没クラッドは、半径(rout)と、外側クラッド(Dncl)との屈折率差(Dnout)とを有し、
前記リングの幅(Wring)に対するコアの体積(Vcore)の比率は、0.12μm〜0.2μmであって、
【数1】

かつ、(Wring=Rring2−Rring1)であり、
前記外側陥没クラッドは、15μm3〜30μm3の体積(Vout)を有し、
【数2】

であるシングルモード光ファイバ。
【請求項2】
前記コアは、3.5μm〜7.5μmの半径(a)を有する、請求項1に記載のシングルモード光ファイバ。
【請求項3】
前記内側陥没クラッドは、−6x10−3〜−2.7x10−3の外側クラッド(Dncl)との屈折率差(Dninner)を有する、請求項1または2に記載のシングルモード光ファイバ。
【請求項4】
前記外側陥没クラッドが、−6x10−3〜−2x10−3の外側クラッド(Dncl)との屈折率差(Dnout)を有する、請求項1〜3のいずれかに記載のシングルモード光ファイバ。
【請求項5】
前記外側陥没クラッドが、−2x10−3〜2x10−3の内側陥没クラッド(Dninner)との屈折率差(Dnout)を有する、請求項1〜4のいずれかに記載のシングルモード光ファイバ。
【請求項6】
前記リングの前記内径と前記コアの前記半径との比率(rring1/a)は、2.5〜8である、請求項1〜5のいずれかに記載のシングルモード光ファイバ。
【請求項7】
前記外側陥没クラッドが、17μm3〜25μm3の体積(Vout)を有する、請求項1〜6のいずれかに記載のシングルモード光ファイバ。
【請求項8】
前記内側陥没内側クラッド内に提供されたトレンチを更に有し、前記トレンチは、前記外側クラッド(Dncl)との屈折率差(Dn3)を有し、内径(b)と外径(c)は、前記内側陥没クラッドの半径(rring1)より小さい、請求項1〜7のいずれかに記載のシングルモード光ファイバ。
【請求項9】
前記コア及び/又は前記リングは、純粋シリカで作成された、請求項1〜8のいずれかに記載のシングルモード光ファイバ。
【請求項10】
1550nmで0.005dB/km未満の漏れ損失を有する、請求項1〜9のいずれかに記載のシングルモード光ファイバ。
【請求項11】
1550nm未満、好ましくは1530nm未満で、より好ましくは1260nm未満のケーブル遮断波長を有する、請求項1〜10のいずれかに記載のシングルモード光ファイバ。
【請求項12】
10mmの半径で、1550nmで5dB/m未満と1625nmで10dB/m未満の曲げ損失を有する、請求項1〜11のいずれかに記載のシングルモード光ファイバ。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の特徴を有する光ファイバを製造する方法であって、
付着管を提供する段階と、
前記リングを構成する前記付着管の内側に層付着を行って、前記コアと前記内側陥没クラッドを構成する段階と、
前記第2の陥没クラッドを提供する段階と、
前記外側クラッドを提供して、光学プリフォームを提供する段階と、
前記プリフォームの第1端を加熱することによって前記ファイバを線引きする段階と、
を含む方法。
【請求項14】
前記付着管を部分的に取り除く段階を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の陥没クラッドは、ドープ管によるスリーブ化、ドープト・シリカによるオーバークラッド化、ドープ・シリカによる外部蒸着のうちの1つによって形成される、請求項13又は14に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−256049(P2012−256049A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−130459(P2012−130459)
【出願日】平成24年6月8日(2012.6.8)
【出願人】(507112468)ドラカ・コムテツク・ベー・ベー (39)
【Fターム(参考)】