説明

シンチグラフィー法

本発明は、式(I)
【化1】


で示される化合物またはそれらの薬学的に許容される塩の薬学的に許容される製剤およびガリウムを含む組合せならびに診断におけるその使用に関する。本発明はまたヒトまたは動物身体の鉄過剰負荷の処置をするための薬剤を製造するための、式Iの化合物またはそれらの薬学的に許容される塩に関する(ここで、該身体はガリウムシンチグラフィーを受けるものであり、そして、過剰の鉄を除去する処置をガリウムシンチグラフィー前の2から10日間は中断し、ガリウムシンチグラフィー記録後に再開する)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、式Iの化合物またはそれらの薬学的に許容される塩の処置を受けている患者に適用するときの、ガリウムを使用する診断法に関する。本発明は、また、患者がシンチグラフィー、とりわけガリウム67に基づくシンチグラフィーを受けているときに鉄過剰の処置を中断しなければならないことを特徴とする、該処置のための薬剤を製造するための式Iの化合物またはそれらの薬学的に許容される塩の使用に関する。さらに、本発明は、ガリウム摂取促進剤、例えば、式Iの化合物またはそれらの薬学的に許容される塩およびガリウムを含む組合せ、ならびにその使用に関する。本発明は、診断および/または治療目的のために、臓器、とりわけ高度にかん流された臓器、例えば、肝臓、肺、心臓、腎臓および脳へのガリウムの摂取を増加する方法に関する。本発明は、また、ガリウム錯体およびガリウム摂取促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
鉄過剰の処置は、特に鉄関連罹患率および死亡率を減少させるための、輸血依存性貧血、特に重症型サラセミア、中間型サラセミアおよび鎌状赤血球病、ならびにヘモクロマトーシスの処置を示す。
【0003】
臨床的なサラセミア(重症型および中間型)は、赤血球の減少した産生および増加した分解を引き起こす、ヘモグロビンの不完全な産生により特徴付けられる遺伝性の疾患である。
【0004】
鎌状赤血球病は、異常ヘモグロビンSの産生を引き起こすヘモグロビン−β遺伝子における変異により引き起こされる。正常赤血球は120日で死ぬが、鎌状細胞(ヘモグロビンSを有する赤血球)はより速やかに破壊され(10から20日)、貧血を引き起こす。この貧血は、その名前が一般に知られている疾患−鎌状赤血球貧血−をもたらすものである。
【0005】
鉄過剰疾患の最も一般的な形態であるヘモクロマトーシスは、体に非常に多量の鉄を吸収し、蓄積させる遺伝病である。過剰の鉄は臓器で増加し、それらを損傷する。処置をしないと、該疾患はこれらの臓器に障害を与え得る。
【0006】
非常に多量の血液輸血を受けた鎌状赤血球病またはサラセミアを有する患者、およびヘモクロマトーシスを有する患者は、キレート療法と呼ばれる体から鉄を除去するための治療が必要である。
【0007】
国際特許出願 WO 97/49395(出典明示により本明細書に包含させる)は、鉄過剰を処置するために有用な遊離酸形、それらの塩およびその結晶形の置換3,5−ジフェニル−1,2,4−トリアゾールを記載している。国際特許出願 WO 2004/035026およびWO2005/097062(これらを出典明示により本明細書に包含させる)は、特に有利な分散性錠剤の形態の医薬製剤を記載している。
【0008】
Illa族遷移金属であるガリウム(Ga)は、多くのアイソトープを有し、同時に多数の医薬用途を有する。数十年間、ガンマ−放出体であるガリウム−67は、ガンマ放射シンチグラフィーによる腫瘍画像化のために核医学において使用されている。他のガリウムのアイソトープは腫瘍学において利用可能性を有する。陽電子放射体であるガリウム−68は、陽電子放出断層撮影(PET)による腫瘍画像化のために使用できる。ベータ−放出体であるガリウム−72を、局所放射線照射によりガリウムを濃縮する組織を破壊できる。この処置は骨格転移により引き起こされる骨痛を緩和することが、例えば、Andrews GA et al. Radiology 61: 570-588, 1953で提案されている。
【0009】
“ガリウム化合物”または“ガリウム”または“Ga”は、例えば、硝酸ガリウム、クエン酸ガリウムまたは塩化ガリウムであり得る。金属ガリウムまたはアイソトープの例は、Ga−67、Ga−68、Ga−69、Ga−71およびGa−72である(ここで、Ga−69および71は安定なアイソトープであり、そして他は不安定な放射性アイソトープである)。
【0010】
安定な、例えば、非放射性ガリウムは、悪性物の高カルシウム血症を減少させるため、および骨のパジェット病を処置するために使用されている。それはまた直接的な抗腫瘍効果を有すると信じられており、現在は慣用の化学療法に対する補助剤として研究中である。例えば、Chitambar CR et al. Cancer Research 54: 3224-3228,1994;Seligman PA et al. Blood 82: 1608-1617,1993;Chitambar CR et al. Am J Clin Oncol 20: 173-178,1997。
【0011】
腫瘍画像化のためのGa−67の限界は、例えば、Tzen KY et al. J Nucl Med 5: 327-332,1980, Tsan, MF. J. Nucl. Med. 26: 89-92,1985, Merz T et al. Cancer Res. 34: 2495-2499,1974, Anghileri LJ et al. Oncology 34: 74-77,1977において十分に認識されている。
【0012】
多数の腫瘍はほとんどGaを蓄積しない。肝腫瘍およびリンパ腫のような他のものは、非常にGa親和力が強いが、摂取の強度および濃度が変化し得る。Ga−67がゆっくり局在化するため、バックグラウンド組織からの腫瘍の線引きはしばしば注入時から画像化までに3−7日間またはそれ以上の長い時間が必要であり、そして腹部の初期の画像は腸運動のためにしばしば判断が難しい。腫瘍画像化のために長時間必要なため、比較的高い用量のGa−67、例えば、一般的に成体に対して10mCiが必要である。
【0013】
長年Ga−67で画像化してきたにもかかわらず、Ga−67が正常組織および腫瘍で蓄積するメカニズムについては議論が続いている。
シンチグラフィー、特にガリウム67に基づくシンチグラフィーは、疾患を検出するための有用な診断技術である。
【0014】
特に、クエン酸ガリウム 67はまた商品名Neoscan(登録商標)、Medi-Physics, Inc., Amersham Healthcareの下に既知であり、そして、例えば、原発および転移腫瘍を検出する、例えば、該疾患の存在および/または程度を立証する、新生物疾患の診断において使用される。クエン酸ガリウム 67はまた腫瘍および/または感染の病巣部位の診断において使用される。シンチグラフィーに使用するNeoscan(登録商標)はまたガリウム造影剤と呼ばれる。クエン酸ガリウム 67を静脈内に投与し、体内濃度の記録を、通常注入後6から120の間、好ましくは48時間実施する。
【0015】
“シンチグラフィー”は、投与される物質を投与し、そして該物質の体内濃度を記録することを包含することを意味する。
【発明の開示】
【0016】
今回、驚くべきことに、下記に定義のとおりの、置換3,5−ジフェニル−1,2,4−トリアゾールの同時摂取またはヒト体内での同時存在が、シンチグラフィー、例えば、ガリウムシンチグラフィーを実施するときにガリウムの分散パターンを妨害することを見いだした。
【0017】
したがって、本発明は、ヒトまたは動物身体の過剰の鉄を除去する治療処置(ここで、該身体は、シンチグラフィー、とりわけガリウムに基づくシンチグラフィー、例えば、ガリウム67シンチグラフィーを受けるものであり、そして過剰の鉄を除去する治療処置をシンチグラフィー前の2から15日間、例えば、2から10日間は中断し、シンチグラフィー記録後に再開する)を対象とする。
【0018】
好ましくは、過剰の鉄を除去する治療処置はシンチグラフィー前の2から15日、2から10日、2から8日、最も好ましくは2、3、4、5、6、7または8日間は中断する。これは、例えば、過剰の鉄を除去する治療処置は物質、例えば、ガリウム67の投与前の2から8日間は中断し、記録ができる該物質、例えば、ガリウム67の体内濃度の記録後に投与することを意味する。
【0019】
本発明の1つの局面は、ヒトまたは動物身体の過剰の鉄に引き起こされる疾患、またはそれにより引き起こされる疾患の処置における、特にヒトの治療処置法における、好ましくは薬学的に許容される製剤の形態での、式I
【化1】

〔式中、
およびRは同時にまたは互いに独立して水素、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−7アルキル、ハロ−C1−7アルキル、低級アルコキシ、ハロ−C1−7アルコキシ、カルボキシル、カルバモイル、N−C1−7アルキルカルバモイル、N,N−ジ−C1−7アルキルカルバモイルまたはニトリルであり;
およびRは同時にまたは互いに独立して水素、非置換もしくは置換C1−7アルカノイルまたはアロイル、または生理学的条件下で除去できるラジカルであり;
は水素、C1−7アルキル、ヒドロキシ−C1−7アルキル、ハロ−C1−7アルキル、カルボキシ−C1−7アルキル、C1−7アルコキシカルボニル−C1−7アルキル、RN−C(O)−C1−7アルキル、非置換もしくは置換アリールまたはアリール−C1−7アルキル、または非置換もしくは置換ヘテロアリールまたはヘテロアラルキルであり;
およびRは同時にまたは互いに独立して水素、C1−7アルキル、ヒドロキシ−C1−7アルキル、アルコキシ−C1−7アルキル、ヒドロキシアルコキシ−C1−7アルキル、アミノ−C1−7アルキル、N−C1−7アルキルアミノ−C1−7アルキル、N,N−ジ−C1−7アルキルアミノ−C1−7アルキル、N−(ヒドロキシ−C1−7アルキル)アミノ−C1−7アルキル、N,N−ジ(ヒドロキシ−C1−7アルキル)アミノ−C1−7アルキルであるか、または、これらが結合している窒素原子と一緒にアザ脂環式環;例えば、4−[3,5−ビス(2−ヒドロキシフェニル)−[1,2,4]トリアゾール−1−イル]安息香酸またはそれらの塩を形成する〕
で示される化合物またはそれらの塩の使用(ここで、該身体はシンチグラフィーとりわけガリウム67に基づくシンチグラフィーを受けるものである)、ならびにこのタイプの処置法に関する。
【0020】
式Iの化合物の置換基、ハロゲン、アルキル、ハロ−C1−7アルキル、C1−7アルコキシ、ハロ−C1−7アルコキシ、カルバモイル、C1−7アルカノイル、C1−7アルコキシカルボニル、アリール、アロイル、アリールC1−7アルキル、ヘテロシクロアルキル、アザ脂環式ヘテロアリール、ヘテロアリール−C1−7アルキル、N−C1−7アルキルアミノ、生理学的条件下で除去できるラジカルおよび式Iの化合物の塩の定義は、国際特許出願 WO97/49395に記載されている(出典明示により本明細書に包含させる)。
【0021】
好ましくは、本発明は少なくとも1種の
およびRが同時にまたは互いに独立して水素、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−7アルキル、ハロ−C1−7アルキル、C1−7アルコキシ、ハロ−C1−7アルコキシであり;RおよびRが同時にまたは互いに独立して水素または生理学的条件下で除去できるラジカルであり;
がC1−7アルキル、ヒドロキシ−C1−7アルキル、ハロ−C1−7アルキル、カルボキシ−C1−7アルキル、C1−7アルコキシカルボニル−C1−7アルキル、RN−C(O)−C1−7アルキル、N−C1−7アルキルアミノN,N−ジC1−7アルキルアミノまたはピロリジノにより置換されている、置換アリールまたはアリール−C1−7アルキル、または非置換もしくは置換ヘテロアリールまたはヘテロアラルキルであり;
およびRは同時にまたは互いに独立して水素、C1−7アルキル、ヒドロキシ−C1−7アルキル、アルコキシ−C1−7アルキル、ヒドロキシアルコキシ−C1−7アルキル、アミノ−C1−7アルキル、N−C1−7アルキルアミノ−C1−7アルキル、N,N−ジ−C1−7アルキルアミノ−C1−7アルキル、N−(ヒドロキシ−C1−7アルキル)アミノ−C1−7アルキル、N,N−ジ(ヒドロキシ−C1−7アルキル)アミノ−C1−7アルキルであるか、または、これらが結合している窒素原子と一緒にアザ脂環式環またはそれらの塩を形成する式Iの化合物;および少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含む上記使用ならびにそれらを製造するための方法に関する。
【0022】
さらに特に好ましい式Iの化合物は4−[3,5−ビス(2−ヒドロキシフェニル)−[1,2,4]トリアゾール−1−イル]安息香酸またはそれらの薬学的に許容される塩である。本発明のなんらかの態様にしたがって、好ましい式Iの化合物は4−[3,5−ビス(2−ヒドロキシフェニル)−[1,2,4]トリアゾール−1−イル]安息香酸またはそれらの薬学的に許容される塩である。
【0023】
特定の局面において、本発明は、ヒトまたは動物身体の過剰の鉄の処置をするための薬学的に許容される製剤を製造するための、上記式Iの化合物、例えば、4−[3,5−ビス(2−ヒドロキシフェニル)−[1,2,4]トリアゾール−1−イル]安息香酸、例えば、それらの薬学的に許容される塩の使用に関する(ここで、該身体はシンチグラフィー、とりわけガリウム67に基づくシンチグラフィーを受けるものであり、そして過剰の鉄を除去する治療処置をシンチグラフィー前の2から10日間は中断し、シンチグラフィー記録後に再開する)。
【0024】
本発明は、シンチグラフィーを受けており、過剰の鉄を除去する治療処置をシンチグラフィー前の2から10日間は中断し、シンチグラフィー記録後に再開する、ヒトまたは動物身体の過剰の鉄の処置をするための、上記式Iの化合物またはそれらの薬学的に許容される塩を含む薬学的に許容される組成物に関する。
【0025】
本発明は、式Iの化合物、例えば、4−[3,5−ビス(2−ヒドロキシフェニル)−[1,2,4]トリアゾール−1−イル]安息香酸またはそれらの薬学的に許容される塩の処置を受けているときに、シンチグラフィー、例えば、ガリウムシンチグラフィーを使用する診断法であって、式Iの化合物、例えば、4−[3,5−ビス(2−ヒドロキシフェニル)−[1,2,4]トリアゾール−1−イル]安息香酸またはそれらの薬学的に許容される塩の処置をガリウムシンチグラフィーを使用する該診断法前の2から10日間は中断し、該診断法実施後または記録後に再開することを特徴とする診断法に関する。
【0026】
本発明は
(a)式Iの化合物、例えば、4−[3,5−ビス(2−ヒドロキシフェニル)−[1,2,4]トリアゾール−1−イル]安息香酸またはそれらの薬学的に許容される塩を含む医薬組成物、および
(b)式Iの化合物、例えば、4−[3,5−ビス(2−ヒドロキシフェニル)−[1,2,4]トリアゾール−1−イル]安息香酸またはそれらの薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を患者にガリウムシンチグラフィー前の2から10日間は投与せず、式Iの化合物、例えば、4−[3,5−ビス(2−ヒドロキシフェニル)−[1,2,4]トリアゾール−1−イル]安息香酸またはそれらの薬学的に許容される塩の投与をガリウムシンチグラフィー記録後に再開することを指示する指示書
を含む、薬剤パッケージに関する。
【0027】
本発明は、また、式Iの化合物、例えば、4−[3,5−ビス(2−ヒドロキシフェニル)−[1,2,4]トリアゾール−1−イル]安息香酸またはそれらの薬学的に許容される塩をガリウムシンチグラフィー前の2から10日間は中断し、該シンチグラフィー後に再開することを特徴とする鉄過剰を処置するための薬剤を製造するための、式Iの化合物、例えば、4−[3,5−ビス(2−ヒドロキシフェニル)−[1,2,4]トリアゾール−1−イル]安息香酸またはそれらの薬学的に許容される塩の使用に関する。
【0028】
1つの態様において、本発明は鉄過剰を処置するための薬剤を製造するための式Iの化合物の使用であって、患者がシンチグラフィー、例えば、ガリウムシンチグラフィーを受けるべきとき、該化合物の投与がシンチグラフィー、例えば、ガリウムシンチグラフィー前の2から10日間は中断し、該シンチグラフィー後に再開することを特徴とする、該化合物を患者に毎日または製造業者の指示に従って投与する使用に関する。
【0029】
“式Iの化合物”は上記式Iの化合物またはそれらの薬学的に許容される塩を意味する。
2004年4月29日に出願された特許出願 WO2004/035026は、活性成分として約5から40%の量である式Iの化合物またはそれらの薬学的に許容される塩を含む、医薬製剤、例えば、分散性錠剤の形態の記載を提供する。
【0030】
その使用に関連して上記式Iの化合物に対する好ましいとの記載は、医薬製剤、例えば、分散性錠剤中に存在するときの好ましい式Iの化合物に等しく適用される。
【0031】
また驚くべきことに、該置換されている3,5−ジフェニル−1,2,4−トリアゾール、例えば、式Iの化合物I、例えば、4−[3,5−ビス(2−ヒドロキシフェニル)−[1,2,4]トリアゾール−1−イル]安息香酸は、高度にかん流された臓器、例えば、肝臓、肺、心臓、腎臓および脳におけるガリウムの蓄積を増加させることを見いだした。
【0032】
本発明はまた、ガリウムおよびガリウム摂取促進剤、例えば、置換されている3,5−ジフェニル−1,2,4−トリアゾール、例えば、式Iの化合物、例えば、4−[3,5−ビス(2−ヒドロキシフェニル)−[1,2,4]トリアゾール−1−イル]安息香酸、またはそれらの薬学的に許容される塩の:
1)腫瘍の画像化を改善するため;
2)腫瘍の放射線療法を改善するため;および
3)例えば、癌の処置、例えば、肝臓癌の処置における化学療法に対する補助剤としてのガリウムの使用を改善するため、
4)ガリウム治療に応答する疾患を処置するため、
5)化合物I治療に応答する疾患を処置するため、
6)ガリウム治療および化合物I治療に応答する疾患を処置するため
の使用を対象とする。
【0033】
本発明の1つの態様において、該方法は腫瘍細胞へのガリウム、例えば、ガリウムのアイソトープの摂取を改善し、ラジオアイソトープの全診断または治療用量を減少させ、成体に投与する用量が標準5−10mCi成体用量よりも少ない用量でできるようになる。
【0034】
本発明の1つの局面は、上記定義のとおりの式Iの化合物、例えば、4−[3,5−ビス(2−ヒドロキシフェニル)−[1,2,4]トリアゾール−1−イル]安息香酸またはそれらの塩;およびガリウムを含む組合せに関する。
【0035】
本発明のさらなる局面において、該組合せは、ガリウム治療および/または式Iの化合物、例えば、4−[3,5−ビス(2−ヒドロキシフェニル)−[1,2,4]トリアゾール−1−イル]安息香酸治療に応答する疾患の処置における、同時に、個別にまたは連続して使用するための組合せ製剤である。
【0036】
本発明の1つの局面は、特にヒト身体の診断または治療処置のための方法における、高度にかん流された臓器によるガリウム摂取を増加させるための、好ましくは薬学的に許容される製剤の形態の、上記定義のとおりの式Iの化合物、例えば、4−[3,5−ビス(2−ヒドロキシフェニル)−[1,2,4]トリアゾール−1−イル]安息香酸、またはそれらの塩の使用;およびこのタイプの診断または処置法に関する。
【0037】
臓器を、例えば、同時にまたは実質的に同時に、式Iのガリウム摂取促進剤化合物、例えば、4−[3,5−ビス(2−ヒドロキシフェニル)−[1,2,4]トリアゾール−1−イル]安息香酸、および安定なまたは不安定なアイソトープを含むガリウム化合物、例えば、塩に暴露する。
【0038】
ガリウム摂取促進剤および安定なまたは不安定なアイソトープを含むガリウム化合物、例えば、塩を、ガリウム摂取促進剤とガリウム化合物の錯体の形態で投与できる。
【0039】
得られるGa錯体の構造は、式II:
【化2】

〔式中、R1からR5は上記式Iの化合物に定義のとおりの同じ意味を有する〕に記載のとおりである。Gaは下記定義のとおりの“ガリウム”、すなわちガリウムのアイソトープ、例えば、Ga−67、Ga−68、Ga−69、Ga−71、またはGa−72、(ここで、Ga−69および71は安定であり、そしてGa−67、68,70および72は不安定である)、および硝酸ガリウム、クエン酸ガリウム、または塩化ガリウム塩のような化合物である。矢印は共有結合ではない結合を示す。
【0040】
ガリウムおよび式Iの促進剤化合物に暴露される臓器は、腫瘍への化学療法の用量のガリウムおよび/または式Iの化合物の摂取が非腫瘍細胞と比較して有意に増加するような腫瘍細胞を有し得る。
【0041】
ガリウムおよび/または式Iの化合物に応答できる疾患またはガリウムおよびガリウム摂取促進剤に暴露できる腫瘍細胞もしくは腫瘍タイプの特定の例は:肝臓癌、例えば、肝臓腺癌、肝細胞性癌腫;肉腫、骨髄腫、腎臓腺癌、精巣ライディク細胞腫瘍、甲状腺髄様癌、神経芽腫、黒色腫、大腸腺癌、肺腺癌、または乳管内癌である。
【0042】
記載されている方法は、インビトロまたはインビボのいずれかで細胞ガリウム摂取を増加させるために使用できる。インビボ適用のために、ガリウムおよびガリウム摂取促進剤は対象、例えば、腫瘍を有すると診断されたものに投与される。ガリウムがガリウム摂取促進剤と組合せられているとき、治療的に有効な抗新生物量で投与できる。
【0043】
あるいは、ガリウムがガリウム摂取促進剤と組合せられているとき、ガリウムはガリウムスキャンにおいて腫瘍を画像化するために有効な量で投与できる。腫瘍またはガリウム処置に応答する疾患の画像化のために、ガリウムおよびガリウム摂取促進剤をガリウム−ガリウム摂取促進剤の錯体、例えば、式IIの錯体として投与できる。ガリウム処置および/または式Iの化合物または式IIの錯体の処置に応答する疾患の処置のために、式Iの化合物は全ての式Iの化合物がガリウムとの錯体またはガリウムと結合している化合物ではないような量で投与できる。
【0044】
組合せ投与は同時の投与を必要とせず、同時の、実質的に同時のまたは別々の投与を意味することができる。特定の態様において、目的の組織、例えば、腫瘍の摂取を増加するために十分な時間間隔内で、ガリウム摂取促進剤をガリウムの前に投与する。
【0045】
方法の特定の態様は、対象に十分な量の腫瘍によるガリウムの摂取を増加させるガリウム摂取促進剤、例えば、式(I)の化合物を投与することによるガリウムスキャンを有する腫瘍の画像化を含む。十分な量のガリウムはまた対象にガリウムスキャンを実施するために投与される(ここで、ガリウムの十分な量はガリウム摂取促進剤の非存在下でガリウムスキャンを実施するために必要な量よりも少ない量である)。該方法が腫瘍の画像化を改善するために使用されるとき、Ga−67が特に適当なアイソトープであり、スキャンするために通常用量である10ミリキュリーのガリウムの50%またはそれ未満を投与できる。したがって、約5ミリキュリー未満の用量のGa−67で使用できる。該摂取促進剤はまた腫瘍を促進剤の非存在下よりもはるかに迅速に画像化できる。したがって、画像を得るために36−72時間待つ代わりに、該診断方法はガリウムの投与後24時間またはそれ未満で実施できる。
【0046】
下記定義は本明細書で使用される用語の理解の助けとする。
“ガリウム摂取促進剤”は、このようなガリウム摂取促進剤の非存在下で存在する量より細胞または臓器におけるガリウムの量を増加する薬剤である。
【0047】
“ガリウム”は、ガリウムのアイソトープ、例えば、Ga−67、Ga−68、Ga−69、Ga−71、またはGa−72、(ここで、Ga−69および71は安定であり、そしてGa−67、68、70および72は不安定である)、およびガリウム化合物、例えば、硝酸ガリウム、クエン酸ガリウム、または塩化ガリウム塩を含む。
【0048】
“ガリウムスキャン”は、ガリウムの放射性アイソトープ、例えば、Ga−67を患者へ静脈内にまたは投与に適当な他の手段により投与する核医学画像化技術である。投与後、ガンマ放射を画像の黒い組織摂取の強度を相関する画像を作製するガンマカメラで測定する。該画像は診断および治療評価に対して有用である情報を提供する。
【0049】
“PETスキャン”は、陽電子、例えば、Ga−68を放出するガリウムの放射性アイソトープを患者へ静脈内に投与する核医学画像化技術である。投与後、陽電子放射を測定し、情報は診断および治療評価に対して使用する。
【0050】
“腫瘍”は新生物であり、良性および悪性腫瘍の両方を含む。この語は特に固形、例えば、乳、肝臓、または前立腺癌、または非固形、例えば、白血病のいずれかであり得る悪性腫瘍を含む。腫瘍はまた、腺癌、例えば、乳、前立腺、肺、または肝臓癌、例えば、肝臓腺癌、肝細胞癌腫;肉腫、骨髄腫、腎臓腺癌、精巣ライディク細胞腫瘍、甲状腺髄様癌、神経芽腫、黒色腫、大腸腺癌、肺腺癌、または乳管内癌のような下位群に分けることができる。
【0051】
“治療有効用量”は、疾患の発達を防ぐか、または後退させるか、または疾患により引き起こされる症状を緩和することができる十分な用量である。
“哺乳動物”はヒトおよび非ヒト哺乳動物の両方を含む。同様に、“対象”なる用語はヒトおよび獣医学の対象の両方を含む。
動物は、例えば、哺乳動物および鳥を含むカテゴリーである生きている多細胞脊椎動物である。
【0052】
本発明は、上記式(I)の化合物またはそれらの薬学的に許容される塩、好ましくは、4−[3,5−ビス(2−ヒドロキシフェニル)−[1,2,4]トリアゾール−1−イル]安息香酸またはそれらの薬学的に許容される塩の薬学的に許容される製剤およびガリウムを含む組合せであって、例えば、ガリウム治療および/または式Iの化合物治療に応答する疾患の処置において、同時に、個別にまたは連続して使用するための組合せ製剤である組合せに関する。ガリウムは好ましくはGa−67である。
【0053】
本発明は、式Iの化合物が4−[3,5−ビス(2−ヒドロキシフェニル)−[1,2,4]トリアゾール−1−イル]安息香酸またはそれらの薬学的に許容される塩である該組合せに関する。
本発明はさらにヒトまたは動物身体を処置するための該組合せの使用に関する。
【0054】
本発明の1つの態様は、高度にかん流された臓器におけるガリウムの摂取の増加に置いて使用するための医薬製剤を製造するための該組合せの使用に関する。
本発明はまた、ガリウムスキャン、例えば、肝臓シンチグラフィーにおいて使用するための医薬製剤を製造するための、上記組合せの使用に関する。
【0055】
他の態様において、本発明は、ガリウム処置および/または式Iの化合物処置に応答する疾患を処置するための薬剤を製造するための、上記組合せの使用に関する。
【0056】
本発明は、式II
【化3】

〔式中、R1、R3およびR5は式Iの化合物の意味を有し、例えば、R1はヒドロキシルであり、R3はカルボキシルにより置換されているフェニルであり、そしてR5はヒドロキシルである〕で示される錯体に関する。
【0057】
本発明はさらにヒトまたは動物身体を処置するための式IIの該錯体の使用に関する。
本発明はガリウムスキャン、例えば、肝臓シンチグラフィーにおいて使用するための薬剤を製造するための、式IIの該錯体の使用に関する。
【0058】
さらなる態様において、本発明はガリウム治療および/または式Iの化合物治療に応答する疾患を処置するための薬剤を製造するための該錯体の使用に関する。
本発明はまた本明細書の上記組合せまたは式IIの錯体の投与により特徴付けられる、高度にかん流された臓器におけるガリウム摂取を増加する診断処置法に関する。
【0059】
下記実施例は式Iの化合物が培養細胞でガリウム摂取を改善することを示すが、説明を意図するものであり、本発明を制限しない。
【0060】
我々の発明の原理が適用できる考えられる態様を考慮し、説明された態様は本発明の好ましい例のみであり、本発明の範囲を限定すべきでないと理解すべきである。むしろ、本発明の範囲は特許請求の範囲により定義される。したがって我々は特許請求の範囲および精神から逸脱しない全ての発明を主張する。
【実施例】
【0061】
実施例I:
式Iの化合物、例えば、4−[3,5−ビス(2−ヒドロキシフェニル)−[1,2,4]トリアゾール−1−イル]安息香酸とのガリウム錯体の製造
このような錯体は下記のとおりに製造できる:10mmolの式(I)の化合物および5mmolのガリウム(III)アセチルアセトネートを50mlのメタノールに懸濁する。2mol/Lの水溶液としての15mmolの水酸化ナトリウムを撹拌下で一度に加える。透明なわずかに黄色の溶液を、例えば、Rotavapを使用して濃縮する。残渣を希釈し、30mlのエタノールの一部の添加により数回再結晶する。エタノールの最後の添加後、懸濁液を濾過し、白色固体錯体を100℃/100Torrで16時間乾燥させる。
【0062】
実施例II:
4−[3,5−ビス(2−ヒドロキシフェニル)−[1,2,4]トリアゾール−1−イル]安息香酸の親和定数の測定
ガリウムに対する4−[3,5−ビス(2−ヒドロキシフェニル)−[1,2,4]トリアゾール−1−イル]安息香酸の親和定数は水中でlogβ120=33.8(1)(イオン強度 0.1MのKCL、温度25℃)であり、Steinhauser et al., Eur. J. Inorg. Chem. 2004, pp 4177-4192にしたがう電位差測定により測定する。Steinhauser et al., Eur. J. Inorg. Chem. 2004, pp 4177-4192の他の金属イオンに対する4−[3,5−ビス(2−ヒドロキシフェニル)−[1,2,4]トリアゾール−1−イル]安息香酸の親和定数を考慮すると、親和定数による順位はFe(III)(もっとも強い親和性)>Ga(III)>Al(III)>>Cu(II)>>Zn(II)>>Mg(II)>Ca(II)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトまたは動物身体の鉄過剰負荷の処置をするための薬剤を製造するための、式I
【化1】

〔式中、
およびRは同時にまたは互いに独立して水素、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−7アルキル、ハロ−C1−7アルキル、低級アルコキシ、ハロ−C1−7アルコキシ、カルボキシル、カルバモイル、N−C1−7アルキルカルバモイル、N,N−ジ−C1−7アルキルカルバモイルまたはニトリルであり;
およびRは同時にまたは互いに独立して水素、非置換もしくは置換C1−7アルカノイルまたはアロイル、または生理学的条件下で除去できるラジカルであり;
は水素、C1−7アルキル、ヒドロキシ−C1−7アルキル、ハロ−C1−7アルキル、カルボキシ−C1−7アルキル、C1−7アルコキシカルボニル−C1−7アルキル、RN−C(O)−C1−7アルキル、非置換もしくは置換アリールまたはアリール−C1−7アルキル、または非置換もしくは置換ヘテロアリールまたはヘテロアラルキルであり;
およびRは同時にまたは互いに独立して水素、C1−7アルキル、ヒドロキシ−C1−7アルキル、アルコキシ−C1−7アルキル、ヒドロキシアルコキシ−C1−7アルキル、アミノ−C1−7アルキル、N−C1−7アルキルアミノ−C1−7アルキル、N,N−ジ−C1−7アルキルアミノ−C1−7アルキル、N−(ヒドロキシ−C1−7アルキル)アミノ−C1−7アルキル、N,N−ジ(ヒドロキシ−C1−7アルキル)アミノ−C1−7アルキルであるか、または、これらが結合している窒素原子と一緒にアザ脂環式環を形成する〕で示される化合物;例えば、4−[3,5−ビス(2−ヒドロキシフェニル)−[1,2,4]トリアゾール−1−イル]安息香酸またはそれらの塩の使用(ここで、該身体はガリウムシンチグラフィーを受けるものであり、そして過剰の鉄を除去する処置をガリウムシンチグラフィー前の2から10日間は中断し、ガリウムシンチグラフィー記録後に再開する)。
【請求項2】
ヒトまたは動物身体の鉄過剰の処置をするための、請求項1に記載の式Iの化合物またはそれらの薬学的に許容される塩を含む薬学的に許容される組成物(ここで、該身体はシンチグラフィーを受けるものであり、そして過剰の鉄を除去する治療処置をシンチグラフィー前の2から10日間は中断し、シンチグラフィー記録後に再開する)。
【請求項3】
(a)式Iの化合物またはそれらの薬学的に許容される塩を含む医薬組成物、および
(b)式Iの化合物またはそれらの薬学的に許容される塩の投与をガリウムシンチグラフィー前の2から10日間は患者に投与せず、ガリウムシンチグラフィー記録後に再開することを指示する指示書
を含む薬剤パッケージ。
【請求項4】
請求項1に記載の式(I)の化合物の薬学的に許容される製剤;またはそれらの薬学的に許容される塩、およびガリウムを含む、組合せ。
【請求項5】
組合せが、ガリウム治療および/または式Iの化合物治療に応答する疾患の処置において、同時に、個別にまたは連続して使用するための組合せ製剤である、請求項4に記載の組合せ。
【請求項6】
式Iの化合物が4−[3,5−ビス(2−ヒドロキシフェニル)−[1,2,4]トリアゾール−1−イル]安息香酸またはそれらの薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の使用、請求項2に記載の医薬組成物、請求項3に記載の薬剤パッケージまたは請求項4もしくは5に記載の組合せ。
【請求項7】
高度にかん流された臓器におけるガリウム摂取の増加において使用するための医薬製剤を製造するための請求項4から6のいずれかに記載の組合せの使用。
【請求項8】
式II
【化2】

〔式中、R1、R3およびR5は請求項1に記載の意味を有する〕
で示される錯体。
【請求項9】
R1がヒドロキシルであり、R3がカルボキシルにより置換されているフェニルであり、そしてR5がヒドロキシルである、請求項8に記載の錯体。
【請求項10】
ヒトまたは動物身体の処置をするための、請求項4から6のいずれかに記載の組合せまたは請求項8もしくは9に記載の錯体の使用。
【請求項11】
ガリウムスキャン、例えば、肝臓シンチグラフィーにおいて使用するための医薬製剤を製造するための、請求項4から6のいずれかに記載の組合せの使用。
【請求項12】
ガリウム治療および/または式Iの化合物治療に応答する疾患を処置するための薬剤を製造するための請求項8または9に記載の錯体の使用。
【請求項13】
請求項4から6のいずれかに記載の組合せまたは請求項8もしくは9に記載の式IIの錯体の投与により特徴付けられる、高度にかん流された臓器におけるガリウム摂取を増加する診断処置法。
【請求項14】
式Iの化合物処置を受けている患者に対してガリウムを使用する診断法であって、式Iの化合物での処置をガリウムを使用する該診断法前の2から10日間は中断し、該診断法実施後または記録後に再開することを特徴とする診断法。

【公表番号】特表2009−513688(P2009−513688A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538348(P2008−538348)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【国際出願番号】PCT/EP2006/067916
【国際公開番号】WO2007/051773
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】