説明

シースダイレータ

【課題】互いに螺合する螺合部が設けられたシースとダイレータとを有し、螺合部に所定以上の螺進を規制する規制手段を設けたシースダイレータを提供する。
【解決手段】バルーンカテーテル80等のカテーテルの挿入作業を補助するシースダイレータ100を、長手方向に引き裂き可能な筒状のシース10と、このシース10に挿通されるダイレータ30と、を含んで構成する。シース10およびダイレータ30は、近位端部CEに、互いに螺合する螺合部24、32がそれぞれ設けられ、の螺合部24、32に、当該螺合部24、32が所定の締込み以上に螺進することを規制する規制手段50として、ダイレータ30に第一、第二係合部51a、51bが形成され、これらを係合する第一、第二係合受部52a、52bがシース10に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シースダイレータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、腹壁と胃壁とを貫通して形成された瘻孔内に留置されて、栄養液または薬液を体外から胃内へ導入するための胃瘻カテーテル等が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1記載のような胃瘻カテーテルを瘻孔内に留置する作業を行う際には、シースダイレータを補助具として使用する。それには、シースダイレータを、腹壁と胃壁とに挿入して瘻孔を形成し、シースからダイレータを抜去する。次に、瘻孔内に留置されたシース内に、胃瘻カテーテルを挿通し、その後、シースを破断して除去することにより、瘻孔にはカテーテルのみが留置される。特許文献1記載のシースには、長手方向にスリットからなる脆弱部が設けられ、シース上端の短手方向に一対のハブが突出形成されている。シースの抜去のときは、ハブを両手で保持し、互いの手を反対方向に引っ張ることで、スリットに沿ってシースを容易に引き裂き、瘻孔内から抜去することができる。特許文献1記載のシースダイレータでは、ダイレータをシース内に挿入することで取付けている。しかし、ダイレータの基端側がシースの内径よりも大径に形成されて、シース上端に係合しているため、遠位端部側への過度な移動や脱落は防止されるが、シースからのダイレータの抜去は可能となっている。
【0003】
一方、特許文献2および3記載のシースダイレータのように、ダイレータにキャップを設け、このキャップ内周とシースの近位端部の外周に螺旋状の溝(螺溝)を形成したものが一般的に普及している。これらは、キャップの螺溝とシースの螺溝とを螺着することで、シースにダイレータを取付けて固定する。特許文献2および3記載のシースダイレータは、血管へのカテーテルの挿入補助用に用いられるものであるが、胃瘻カテーテルの補助具としても、このような構成のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−72344号公報
【特許文献2】特開2000−167062号公報
【特許文献3】特開2007−202615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載のシースダイレータでは、小径の瘻孔を拡開しながら挿入する際に、挿入抵抗によりシースからダイレータが不測に抜け出ないように、ダイレータの上端(近位端部)を強く押圧することなどがある。これにより、ダイレータがシース内に強く押し込まれるため、シースには拡径方向に力が作用する。この力により、瘻孔への挿入が完了する前に、シースの脆弱部が不測に裂けてしまう可能性が考えられる。
【0006】
これに対して、特許文献2または3記載のようなシースダイレータでは、螺着によりダイレータとシースとを固定している。そのため、血管等への挿入抵抗による、ダイレータとシースとの不測の分離は防止できる。しかしながら、螺着の規制手段がないため、必要以上に螺進させた場合、その回転力によってシースに対して剪断力が作用し、使用前に不測にシースが裂けてしまう可能性もある。また、製造においても、シース等の外周に螺溝を形成するのは容易であるが、キャップ等の内周に螺溝を形成するのは、型枠成型では容易ではない。特に、シースダイレータのように比較的小径な製品では、内側への螺溝の形成は、より困難である。そのため、コスト高となる、製造工程に手間がかかる、などの問題を生じる可能性があった。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、シースとダイレータとの螺合の際に、過剰な螺進を規制することが可能なシースダイレータを、簡易な構成で低コストに提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のシースダイレータは、長手方向に引き裂き可能な筒状のシースと、シースに挿通されるダイレータと、を含むシースダイレータであって、シースおよびダイレータは、近位端部に、互いに螺合する螺合部がそれぞれ設けられ、螺合部の少なくとも一方に、当該螺合部が所定の締込み以上に螺進することを規制する規制手段が形成されていることを特徴とする。
【0009】
また本発明のシースダイレータにおいては、より具体的な実施の態様として、規制手段は、シースの螺合部およびダイレータの螺合部の相対的な回転を規制するものであってもよい。
【0010】
また本発明のシースダイレータにおいては、より具体的な実施の態様として、規制手段は、シースおよびダイレータの一方の近位端部であって螺合部の回転方向の前方側に形成された係合受部と、他方の近位端部であって螺合部の回転方向の後方側に形成された係合部との係合により、螺合部の螺進を規制するものであってもよい。
【0011】
また本発明のシースダイレータにおいては、より具体的な実施の態様として、規制手段は、係合部および係合受部の少なくとも一方が、回転方向に対して垂直な平面であるものであってもよい。
【0012】
また本発明のシースダイレータにおいては、より具体的な実施の態様として、係合部は、ダイレータの近位端部に、対向して形成された一対の第一係合部と、第二係合部とからなり、係合受部は、シースの近位端部に、対向して形成された一対の第一係合受部と、第二係合受部とからなり、ダイレータとシースとの互いの螺合部を螺合したとき、第一係合部および第二係合部が、第一係合受部および第二係合受部にそれぞれ係合することで、シースの長手方向と交差する短手方向の同一線上に、ダイレータの第一係合部および第二係合部が配置されるものであってもよい。
【0013】
また本発明のシースダイレータにおいては、より具体的な実施の態様として、第一係合受部および第二係合受部は、第一係合部および第二係合部の回転方向の前方に、当該第一係合部および当該第二係合部がそれぞれ当接する、垂直な平面からなる第一当接面と第二当接面とを有するとともに、第一当接面と第二当接面に連続して、回転方向の前方に、近位端部方向に次第に傾斜する第一傾斜部と第二傾斜部とを有し、規制手段による螺合部の螺進の規制のときは、ダイレータの第一係合部は、第二当接面および第二傾斜部を乗り越えて螺進するが、第一当接面は乗り越えずに、当該第一当接面に当接することで第一係合受部との係合が行われ、第二係合部は、第一当接面および第一傾斜部を乗り越えて螺進するが、第二当接面は乗り越えずに、当該第二当接面に当接することで第二係合受部との係合が行われるものであってもよい。
【0014】
また本発明のシースダイレータにおいては、より具体的な実施の態様として、係合受部が形成されたシースまたはダイレータは、係合受部と同一周回に、係合部の配置間隙を介して突設された戻り防止部を、さらに有し、係合部は、螺合部の締込み方向への進行および戻り方向への進行のときに、戻り防止部と接触しながら通過するものであってもよい。
【0015】
また本発明のシースダイレータにおいては、より具体的な実施の態様として、シースは、ダイレータを挿入する円筒状のシース本体と、当該シース本体の近位端部に円筒状に設けられ、内部に螺合部を有するとともにダイレータをシース本体内に挿入する挿入口と、螺合部の外周であって、シース本体の長手方向と交差する短手方向両側に、延出して形成されたハブ部と、を備えるものであってもよい。
【0016】
また本発明のシースダイレータにおいては、より具体的な実施の態様として、シース本体とハブ部とは、それぞれ別体に形成され、シース本体は、近位端部側であって、短手方向にそれぞれ延出して形成された一対のフランジ部を有し、挿入口は、ハブ部に一体に形成され、ハブ部は、少なくともいずれか一方および他方にそれぞれ対向して設けられた係合爪と爪受部との嵌合により一体となる第一ハブ部と第二ハブ部とから構成され、第一ハブ部および第二ハブ部のいずれか一方には、他方への対向面に、全周に亘って周回突条が設けられ、他方には、一方への対向面に、全周に亘って周回突条を係合する周回凹溝が設けられ、係合爪と爪受部との嵌合により、第一ハブ部および第二ハブ部が一体化し、当該第一ハブ部および当該第二ハブ部の互いの対向面で、一対のフランジ部が挟持固定されるとともに周回突条および周回凹溝が嵌合するものであってもよい。
【0017】
また本発明のシースダイレータにおいては、より具体的な実施の態様として、第一ハブ部または第二ハブ部のいずれかの対向面であって、周回突条および周回凹溝の内側の少なくとも一方に、シース本体のフランジ部に嵌入する嵌入突部が少なくとも1個形成されているものであってもよい。
【0018】
また本発明のシースダイレータにおいては、より具体的な実施の態様として、ハブ部は、シース本体よりも硬質な材料で形成され、シース本体の長手方向と平行に、溝状の脆弱部が少なくとも1本、設けられているものであってもよい。
【0019】
また本発明のシースダイレータにおいては、より具体的な実施の態様として、規制手段が、所定以上の締付けを行うと、互いの螺合が解除されるような位置関係で形成されたシースの螺合部とダイレータの螺合部とにより構成され、所定以上の締付けにより、シースの螺合部と、ダイレータの螺合部との螺合が解除されて、互いに空転することにより螺進方向への進行が規制されるものであってもよい。
【0020】
なお、本発明の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等でもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、シースとダイレータとに設けられた螺合部の少なくとも一方に、螺合部が所定締込み以上に螺進することを規制する規制手段が形成されている。そのため、螺合部の過剰な螺進によるシースへの過剰な剪断力が付与されることがなく、シースの不測の破損を良好に防止することが可能となる。そのため、カテーテルの挿入作業を効率的に補助することが可能なシースダイレータを提供することができる。また、このような破損の防止効果に優れたシースダイレータを、簡易な構成で低コストに提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第一実施形態にかかるシースダイレータのシースとダイレータとの構成を示す一部分解斜視図である。
【図2】第一実施形態にかかるシースダイレータにおいて、シースとダイレータとを螺合した状態を示す斜視図であり、(a)は全体を示す斜視図であり、(b)は規制手段付近の拡大斜視図である。
【図3】第一実施形態にかかるシースダイレータにおいて、ダイレータの係合部がシースの戻り防止部を通過した状態を示す斜視図であり、(a)は全体を示す斜視図であり、(b)は規制手段付近の拡大斜視図である。
【図4】第一実施形態に係るシースダイレータの使用例を説明するための工程図であり、縫合糸にて胃壁と腹壁とを固定するため、縫合針を突き刺した状態を示す概略図である。
【図5】第一実施形態に係るシースダイレータの使用例を説明するための工程図であり、縫合糸で固定されて密着した腹壁と胃壁とに、穿刺針を突き刺した状態を示す概略図である。
【図6】第一実施形態に係るシースダイレータの使用例を説明するための工程図であり、穿刺針の外筒のみを穿孔内に留置して、内針を抜去した状態を示す概略図である。
【図7】第一実施形態に係るシースダイレータの使用例を説明するための工程図であり、外筒内に、ガイドワイヤを挿入した状態を示す概略図である。
【図8】第一実施形態に係るシースダイレータの使用例を説明するための工程図であり、外筒を抜去して、ガイドワイヤのみを穿孔に留置した状態を示す概略図である。
【図9】第一実施形態に係るシースダイレータの使用例を説明するための工程図であり、ガイドワイヤに沿ってシースダイレータを穿孔内に挿入しようとしている状態を示す概略図である。
【図10】第一実施形態に係るシースダイレータの使用例を説明するための工程図であり、シースダイレータの挿入が完了し、穿孔を拡開して瘻孔を形成した状態を示す概略図である。
【図11】第一実施形態に係るシースダイレータの使用例を説明するための工程図であり、シースからダイレータとガイドワイヤとを抜去し、シースのみを瘻孔に留置した状態を示す概略図である。
【図12】第一実施形態に係るシースダイレータの使用例を説明する概略図であり、シース内に、バルーンカテーテルを挿入した状態を示す概略図である。
【図13】第一実施形態に係るシースダイレータの使用例を説明するための工程図であり、胃内部のバルーンを膨らませた後、シースを引き裂いて胃瘻から抜去している状態を示す概略図である。
【図14】第一実施形態に係るシースダイレータの使用例を説明するための工程図であり、胃瘻へのバルーンカテーテルの造設が完了した状態を示す概略図である。
【図15】本発明の第二実施形態にかかるシースダイレータのシースの螺合部付近の断面と、ダイレータの螺合部付近の側面を示す概略図であり、(a)は螺進前を示す概略図であり、(b)は空回りにより、螺進が規制された状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のシースダイレータの実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0024】
<第一実施形態>
〔シースダイレータの構成〕
本実施形態のシースダイレータは、瘻孔内に留置される胃瘻カテーテル(バルーンカテーテル)を、当該瘻孔内に挿入する作業を補助するために用いられる。図1に示すように、本実施形態にかかるシースダイレータ100は、筒状のシース10と、当該シース内に挿通されるダイレータ30と、から構成されている。シース10およびダイレータ30は、近位端部CEに、互いに螺合する螺合部24(24a、24b)、32がそれぞれ設けられている。また、シースダイレータ100には、当該螺合部24、32が所定の締込み以上に螺進することを規制する規制手段50が設けられている。
【0025】
なお、本明細書では、「螺合」には、螺溝による「螺着(締込み)」は勿論、傾斜した凹凸をねじ込んで嵌め込むか、または一方の凸部が他方の凸部をねじ込みにより乗り越えて互いが嵌まる「嵌合」なども含む。また、「螺進」とは、分離した螺合部24、32同士が螺着や嵌合する方向に進むことであり、螺着や嵌合後も、同方向に進むことも含む。なお、シース10に対するダイレータ30の螺合部24、32の螺進のときの回転方向(進行方向)を「前方」と呼び、その反対方向、すなわち、螺合の解除のときの回転方向を「後方」と呼ぶ。また、「所定締込み」には、締込み量や締込み力は勿論、螺進の深さ(長さ)なども含む。また、「螺進の規制」とは、螺合部24、32が固定されて回転などにより動かすことができず、それ以上進まないことは勿論、所定締込みとなった場合に、固定はされずに回転方向や上下方向に動かすことはできるが、螺合は解除されず、かつ、それ以上螺進しないことをも含む。例えば、後述の第二実施形態の螺合部224、232のように、所定深さで螺合が完了すると空転(空回り)して、それ以上螺進しない構成のものなどが挙げられる。また、「対向」とは、周回方向に180度間隔で位置していること、点対称または線対称に位置していること、基準点を通る一直線状に位置していること、などを言う。また、シースダイレータ100の瘻孔への挿入側である遠位端部DE方向を、「下方」または「下端」と呼ぶことがあり、シース10内にダイレータ30を挿入するシースダイレータ100の近位端部CE方向を、「上方」または「上端」と呼ぶことがある。
【0026】
シース10は、図1等に示すように、ダイレータ30を挿入する長尺な円筒状であって、長手方向に引き裂き可能なシース本体11と、シース本体11の長手方向と直交する方向、すなわち、シース本体11を長手方向に引き裂く際の当該長手方向と交差する短手方向両側に、それぞれ第一把持部21aと第二把持部21bとが延出するよう形成されたハブ部20と、を備えている。この第一、第二把持部21a、21bをシース本体11の長手方向と交差する短手方向の左右にそれぞれ引っ張ることにより、シース本体11を長手方向に引き裂くことができる。以下、長手方向を「引き裂き方向」と、長手方向と交差する短手方向(左右方向)を「引っ張り方向」と呼ぶことがある。シース本体11とハブ部20とは、異なる樹脂材料で別体に形成され、後述するように後工程で一体に組立てられる。シース本体11は、近位端部CE側であって、引っ張り方向にそれぞれ延出して形成された一対のフランジ部12a、12bと、フランジ部12a、12bの延出方向とは周回方向に90度の位置であって、シース本体11中央部に対向して、切り裂き方向にV字状に形成された一対の切欠き部13a、13bと、を有している。また、シース本体11の内部通路15は、ダイレータ本体34を気密的に挿入可能な内径で形成され、シース本体11の下端(遠位端部DE)には、後述のダイレータ本体34の拡径部35を突出させる開口部16が設けられている。また、シース本体11の引き裂き方向に交差する方向であって、ハブ部20の引っ張り方向に、それぞれ一対の第一、第二把持部21a、21bが延出形成されている。これらの第一、第二把持部21a、21bの表面には、手指の滑り止め用の凹凸部28a、28bが設けられている。
【0027】
また、ハブ部20は、シース本体11の長手方向すなわち、引き裂き方向に対して交差方向に設置されている。ハブ部20は、さらに水平方向(近位端部CE側と遠位端部DE側)に分離する第一ハブ部20aと第二ハブ部20bとから構成されている。図1に示すように、第一ハブ部20aの中央には、ダイレータ30の挿入口22を設けた第一円筒部23aを有している。この第一円筒部23aの内壁面であって、左右の引っ張り方向に、螺旋の一部である突条からなる螺合部24が対向して形成されている。第二ハブ部20bは、シース本体11を挟持しながら第一ハブ部20aの第一円筒部23aを挿入係合するための第二円筒部23bを中央に有している。この第二円筒部23bは、第一円筒部23aの係合側は大径部(23b1)で、遠位端部DE側がシース本体11外周に気密的に密着可能に小径部(23b2)となっている。大径部(23b1)と小径部(23b2)とは、逆円錐台状のテーパー面(23b3)で連結されている。また、第一ハブ部20aは、第二ハブ部20bとの対向面に、全周囲に亘って周回突条25aが設けられている。この周回突条25aを嵌合する周回凹溝25bが、第二ハブ部20bの第一ハブ部20aとの対向面に、全周に亘って凹設されている。後述するように第一ハブ部20aと第二ハブ部20bとを一体化し、周回突条25aと周回凹溝25bとを嵌合することにより、ハブ部20とシース本体11との気密性を保持することができる。そのため、シース本体11の内部通路15を上昇してきたガスが、フランジ部12a、12bを挟持する第一ハブ部20aと第二ハブ部20bとの間から、外部に漏れるのを良好に防止することができる。
【0028】
さらに、第一ハブ部20aの外周には、4つの係合爪26aが突出形成され、第二ハブ部20bの外周に、これらの係合爪26aを嵌合する4つの爪受部26bが形成されている。また、第二ハブ部20bは、第一ハブ部20aへの対向面であって周回凹溝25bの内側に、第二円筒部23bを介して対象に、シース本体11の一対のフランジ部12a、12bに嵌入する嵌入突部27b1、27b2を突設している。この嵌入突部27b1、27b2を嵌合する嵌入孔27a1、27a2を、第一ハブ部20aの対向面であって周回突条25aの内側に、一対開口している。この嵌合には、まず、図1に示すように、シース本体11を第二ハブ部20bの第二円筒部23b内に挿入し、フランジ部12a、12bを第二ハブ部20bの周回凹溝25b内に配置する。次に、第一ハブ部20aの第一円筒部23aを第二円筒部23bに挿入し、周回突条25aを周回凹溝25bに嵌合する。そして、4つの係合爪26aを4つの爪受部26bに嵌合することにより、図2(a)等に示すように、第一ハブ部20aと第二ハブ部20bとが一体となる。このときに、嵌入突部27b1、27b2が一対のフランジ部12a、12bの表面をエンボス状に突設しながら嵌入孔27a1、27a2に嵌合する。これにより、第一、第二ハブ部20a、20bの互いの対向面でフランジ部12a、12bを挟持するだけでなく、嵌入突部27b1、27b2の楔効果により、フランジ部12a、12bを強い摩擦力で挟持する。よって、ハブ部20からシース本体11が不測に分離するのを良好に防止することができる。
【0029】
また、第一、第二ハブ部20a、20bは、第一円筒部23aおよび第二円筒部23bに、第一、第二把持部21a、21bとは90度方向に、シース本体11の長手方向に平行なV字溝状の第一、第二スリット部29a、29b(脆弱部)を各々一対ずつ対向して形成している。第一スリット部29aは、第一円筒部23aの内周壁面に形成され、かつ、外周壁面に貫通しないよう設けられ、第二スリット部29bは、第二円筒部23bの外周壁面に形成され、かつ、内周壁面に貫通しないよう設けられている。さらに、第二円筒部23bの外周壁面には、切り裂きが容易なように、V字状の切欠き部29b1、29b2が形成されている。したがって、第一、第二円筒部23a、23bの壁面は、第一、第二スリット部29a、29bが設けられた部分が脆弱な状態となっている。しかし、ダイレータ30の挿抜のときは、破断しない強度を有し、バルーンカテーテル80を挿入してシース10の抜去のときは、ハブ部20の第一、第二把持部21a、21bを把持して左右に引っ張ることにより、第一、第二スリット部29a、29bによってハブ部20を容易に切り裂くことができる。これに追随して、V字状に形成された一対の切欠き部13a、13bから、長手方向にシース本体11を容易に引き裂いて、シース10を抜去することができる(図13参照)。
【0030】
ダイレータ30は、後述の瘻孔65の寸法(内径)を決定するためのものであり、図2(a)等に示すように、シース10の挿入口22を介してシース本体11の内部通路15内に挿入されて用いられる。ダイレータ30は、ハブ部20の近位端CEに係合するキャップ部31と、シース本体11の螺合部24に螺合するための螺旋状の螺合部32と、シース本体11内に挿入し、円筒状のダイレータ本体34と、ダイレータ本体34の遠位端部DE側に設けられ、シース本体11の開口部16から突出し、遠位端部DE側に次第に小径となるテーパー面からなる拡径部35と、拡径部35の先端からガイドワイヤ75を挿通路37内に挿通するための挿通孔36と、ダイレータ30の内部全体に貫通形成され、ガイドワイヤ75を挿通するための挿通路37と、を有して構成されている。
【0031】
キャップ部31は、螺合部32の螺着のための回転を行い易くするため、長手方向に長尺な保持突部33を、周回方向に複数有している。また、拡径部35は、ガイドワイヤ75に沿って、小径な穿孔64内に突き刺され、体内に深く挿入されることにより、当該穿孔64を次第に拡径するものであり、最終的にダイレータ本体34が穿孔64内に到達することにより、大径な瘻孔65が形成される。なお、瘻孔65の寸法は、後述のバルーンカテーテル80のチューブ部82の外径と略同一寸法、または1mm〜2mm程度大きい寸法が好ましい。そのため、瘻孔65が当該寸法となるような寸法で、ダイレータ本体34の外径を決定する。また、ダイレータ30またはシース10の表面には、瘻孔65内への挿入のときに胃壁61と腹壁62との合計厚さなどを測定するための目盛りを設けてもよい。
【0032】
また、本実施形態では、シース10のハブ部20に第一、第二スリット部29a、29bを設けているが、シース本体11には、スリットを設けていない。シース本体11が薄肉な円筒状に形成されているため、ハブ部20の引き裂きに追随して、V字状の切欠き部13a、13bから長手方向に裂け易いからである。しかし、本願がこれに限定されるものではない。例えば、シース本体11を頑強にするため、厚肉に形成したとき等、壁面全体を貫通しない程度に、内周壁面または外周壁面に切欠き部13a、13bから長手方向に少なくとも1本、スリットを形成して、より引き裂き易くしてもよい。また、シース本体11を、長手方向に切り裂き易い分子構造や性質を有する材料で形成してもよい。
【0033】
次に、本実施形態の規制手段50について詳細に説明する。規制手段50は、図1または、図2(a)、(b)に示すように、ダイレータ30の近位端部CEであってキャップ部31の下端の外周縁から突設された一対の第一係合部51aと第二係合部51b、および、シース10の近位端部CEであって、螺合部24を設けた第一円筒部23aの挿入口22の基端縁に設けられた一対の第一係合受部52aと第二係合受部52b(キャップ部31の背面側に隠れて不図示となっている)により構成されている。第一係合部51aおよび第一係合受部52a、ならびに、第二係合部51bおよび第二係合受部52bが係合することにより、螺合部24、32同士の螺進が規制される。なお、本実施形態では、図1に示すように、ダイレータ30のキャップ部31の外周に突設した保持突部33のうち、対向する一対を遠位端部DE側(下端側)に突出させることで、保持突部33を兼ねた第一係合部51aと第二係合部51bとを形成し、簡易な構成を実現している。一方、シース10の第一、第二係合受部52a、52bは、ハブ部20の突出方向(引っ張り方向)、具体的には、第一円筒部23a内であって、第一、第二把持部21a、21bの幅の中心に、近位端部CE方向に突出して形成している。したがって、図2(a)、(b)に示すように、ダイレータ30の螺合部32を、シース10の螺合部24に螺合したとき、第一、第二係合部51a、51bが、シース10の第一、第二係合受部52a、52bに係合することで、当該シース10の螺合部24の外周(挿入口22の基端縁)であって、ハブ部20の長手方向の中心線上に、ダイレータ30の一対の第一、第二係合部51a、51bが対向して配置される。
【0034】
このように、第一、第二係合部51aと第一、第二係合受部52a、52bとがハブ部20の長手方向の中心線上で係合することにより、シース10の引き裂き方向と係合方向とが直交し、不測の引き裂きを良好に防止することができる。また、シース10の引き裂きも容易となる。なお、必ずしもこれらの係合位置が中心線上に位置しなくとも、上述のような効果が得られるため、中心線上から周回方向に多少ずれた位置で係合するよう構成してもよい。したがって、第一、第二係合部51aや第一、第二係合受部52a、52bを厳密な位置合わせにより形成するなどの手間がなく、シースダイレータ100を効率的かつ容易に製作することも可能となる。
【0035】
さらに、本実施形態の規制手段50は、シース10の螺合部24およびダイレータ30の螺合部32の相対的な回転を規制するものである。具体的には、図2(b)、図3(b)の拡大図に示すように、シース10とダイレータ30の螺合部24、32同士の螺進が、ダイレータ30の周回方向への回転により行われる。また、図3(b)に示すように、ダイレータ30の回転のときの第一、第二係合部51a、51bの前方に、第一、第二係合受部52a、52bが配置されている。第一、第二係合部51a、51bと第一、第二係合受部52a、52bとが、互いに面接触して係合することにより、螺合部24、32の螺進が規制される。このような面接触での係合により、螺進の規制を良好に行うことができる。
【0036】
より詳細には、第一、第二係合受部52a、52bは、第一、第二係合部51a、51bの回転方向の前方に、当該第一、第二係合部51a、51bの外面に面接触し、回転方向に対して垂直に突出する平面からなる第一当接面54aと第二当接面54bとを有している。この第一当接面54aと第二当接面54bに連続して、回転方向の前方に、近位端部CE方向に次第に傾斜する第一傾斜部53aと第二傾斜部53bとを有している。このように、本実施形態では、第一係合受部52aは、第一傾斜部53aと第一当接面54aとから構成され、第二係合受部52bは、第二傾斜部53bと第二当接面54bとから構成されている。しかし、本願がこれに限定されることはなく、変形例として、第一、第二係合受部52a、52bを、板状、または突起状等に形成してもよい。しかしながら、本実施形態のように第一、第二当接面54a、54bと第一、第二傾斜部53a、53bとで構成することで、第一、第二係合受部52a、52bを厚肉で頑強なものに形成することができるため好ましい。さらに、規制手段50による規制がされるまでは、第一、第二係合部51a、51bが第一、第二当接面54a、54bや第一、第二傾斜部53a、53bには接触しないため、回転による螺合部24、32の螺進が妨げられない。一方、規制手段50が作用して、螺進の規制が行われた際、すなわち、第一、第二係合部51a、51bが第一、第二係合受部52a、52bの第一、第二当接面54a、54bに当接して回転が規制されたときには、強い締付け力が作用する。しかし、第一、第二当接面54a、54bが強い締付け力に屈することがなく、螺進の規制を確実に行うことができる。
【0037】
また、第一円筒部23aの挿入口22の基端縁に設けられた第一、第二係合受部52a、52bは、当該第一円筒部23aの第二スリット部29a、29b近傍ではなく、第一、第二把持部21a、21b側に設けられている。これにより、強い締付け力が作用しても、第一、第二スリット部29a、29bに強い剪断力が作用することがない。そのため、シース10が不測に引き裂かれることを良好に防止することが可能となる。また、周回方向への回転によるダイレータ30の螺合部32の螺進が完了するとき、ダイレータ30の第一係合部51aが、第二係合受け部52bの第二当接部54bおよび第二傾斜部53bを乗り越えて螺進する。しかし、第一係合部51aは、第一係合受け部52aの第一当接部54aは乗り越えずに、当該第一当接面54aに当接することで、第一係合部51aが第一係合受部52aに係合する。一方、第二係合部51bは、第一係合受け部52aの第一当接部54aおよび第一傾斜部53aを乗り越えて螺進する。しかし、第二係合部51bは、第二係合受け部52bの第二当接部54bは乗り越えずに、当該第二当接面54bに当接することで、第二係合部51bが第二係合受部52bに係合する。その結果、螺進が規制される。これにより、点同士の係合に比べ、位置ズレによる係合不良や、厳密な位置合わせなどが不要で、より簡易で確実な係合が可能となる。また、確実な係合により、螺合が完了した手応えを操作者に与えるとともに、無理に螺進させようとしても平面により螺進が阻止される。また、締付け力を平面で分散して、シース10への負荷を少なくし、破損等を良好に防止することができる。
【0038】
また、図2(b)に示すように、第一、第二係合受部52a、52bが形成されたシース10には、これらと同一周回に、第一、第二係合部51a、51bの配置間隙を介して、第一戻り防止部55aと第二戻り防止部55b(図示せず)とが、第一円筒部23aの内側に突設されている。この第一、第二戻り防止部55a、55bと、第一、第二係合部51a、51bとは、操作者による締め込み方向(螺合方向)への進行および戻り方向(螺合解除方向)への進行のときに、互いに接触する。このような接触をしながら、図3(a)、(b)に示すように、第一、第二係合部51a、51bが第一、第二戻り防止部55a、55bを通過し、第一、第二係合受部52a、52bに係合する。したがって、操作者には、接触時のクリック感が与えられ、操作者は、係合が行われたこと、係合が解除されたことを感覚的に認識することができる。そのため、それ以上の締付けを行うことがなく、過剰な締付け力の作用によるシース10の不測の切り裂きを良好に防止することができる。また、この第一、第二戻り防止部55a、55bにより、シースダイレータ100を用いた手技中に、係合解除方向への不測の戻りを防止することも可能となる。なお、シース10からダイレータ30を抜去する際には、キャップ231を保持して戻り方向に第一、第二戻り防止部54a、54bを乗り越えられる程度の力で回転させることで、第一、第二係合部51a、51bが第一、第二戻り防止部54a、54bと接触しながら通過することにより、係合を容易に解除することができる。また、クリック感により、係合が解除されたことを操作者が認識することができる。なお、本実施形態では、第一戻り防止部55aと第二戻り防止部55bとが、第一円筒部23aの内側に突設されている。しかし、本願がこれに限定されるものではない。第一戻り防止部55aと第二戻り防止部55bとが、第一、第二係合部51a、51bと接触しながら通過させることができるものであれば、変形例として、たとえば、上方または下方に向けて形成されていてもよい。または、斜め方向などに形成されていてもよい。
【0039】
また、シース本体11の形成材料としては、特に限定されないが、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、軟質塩化ビニル、などを用いるのが好ましい。また、これらの中でも、シース本体11は、摩擦抵抗が低いPTFE,FEP、ETFEなどのフッ素樹脂により形成するのが特に好ましい。これにより、ダイレータ30やバルーンカテーテル80、その他のカテーテルを挿入する際に、内部通路15を通過する際の摩擦抵抗を低減させ、カテーテル等の挿入を容易かつ円滑に行うことが可能となる。
【0040】
また、ダイレータ30やハブ部20の形成材料としては、特に限定されないが、硬質塩化ビニル樹脂、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)等で形成するのが好ましい。これらの材料で形成することにより、シース本体11に比べてハブ部20が強固となり、シース本体11のフランジ部12a、12bを第一、第二ハブ部20a、20bで強固に挟持固定することができる。また、シース本体11の引き裂きのときには、第一、第二把持部21a、21bを左右の引っ張り方向に強く引いても、ハブ部20からシース本体11が抜け出て、シース本体11が瘻孔65に残留するようなことがない。ここで、硬質塩化ビニル樹脂とは、一般的に、可塑剤がまったく含まれていないか、含まれていても少量である塩化ビニル樹脂をいう。これに対して、シース本体11に使用される軟質塩化ビニル樹脂とは、可塑剤が多く含まれている塩化ビニル樹脂を、より具体的には、塩化ビニル樹脂100重量部に対して、可塑剤が30重量部以上含まれる塩化ビニル樹脂をいう。
【0041】
〔シースダイレータを用いたバルーンカテーテルの挿入手順〕
次に、図4〜図14を用いて、本実施形態のシースダイレータ100の補助により、胃内部にバルーンカテーテル80を挿入し、留置する手順を説明する。なお、以下の作業は、患者の胃内部60に内視鏡を挿入して、状況を観察しながら行う。まず、患者の胃内部60に内視鏡によりガス(空気、二酸化炭素など)を供給し、内視鏡の視野を確保する。その後、内視鏡により胃の位置を確認し、腹壁62の表面側から触診を行って、胃壁61と腹壁62との固定部位を決定し(図4参照)、腹部の皮膚を消毒した後、局所麻酔を行う。
【0042】
次に、図4に示すように、縫合糸71付きの縫合針70を用いて、胃壁61と腹壁62とが密着するよう縫合して固定し、図5に示すような縫合部63を形成する。以後のバルーンカテーテル80の挿入のための瘻孔65を形成するために、胃壁61と腹壁62とは、縫合糸71により最低2箇所を縫合固定し、縫合部63を形成することが好ましい。
【0043】
縫合糸71による縫合により、胃壁61と腹壁62との固定を行ったら、図5に示すように、腹壁62の表面側から、当該腹壁62および胃壁に61に、外筒72と内針73とからなる穿刺針74を突き刺して胃内部60に貫通させ、穿孔64を形成する。次に、図6に示すように、穿刺針74の内針73のみを抜去し、穿孔64に外筒72のみ留置する。この外筒72内に、図7に示すように、ガイドワイヤ75を挿通するが、ガイドワイヤ75が胃内部60に到達するよう挿通する。次に、図8に示すように、外筒72のみを穿孔64から抜去すると、胃壁61と腹壁62とを貫通して形成された小径な穿孔64内に、ガイドワイヤ75のみが留置される。
【0044】
次に、螺合により良好に接続固定されたシース10とダイレータと30とからなる本実施形態のシースダイレータ100を用いて、胃壁61と腹壁62との穿孔64を拡開して瘻孔65を形成する。それには、図9に示すように、ダイレータ30の挿通孔36から挿通路37内に、ガイドワイヤ75を挿通する。このガイドワイヤ75に沿って、内視鏡で確認しながら、ダイレータ30を腹壁62表面側から、腹壁62および胃壁61の穿孔64内に徐々に挿入していく。このとき、テーパー状の拡径部35により穿孔64の内径が次第に拡開されることにより、ダイレータ30とシース本体11とが円滑に腹壁62および胃壁61を貫通し、胃内部60に到達する。また、穿孔64の拡開も円滑に行われ、図10に示すように、大径な瘻孔65が形成される。このとき、シース10とダイレータ30とが良好に接続固定されているので、強い挿入力が負荷されても、これらが分離することや、不測に破損することを良好に防止することができる。
【0045】
次に、ダイレータ30とシース10との螺合を解除して、シース10からダイレータ30を抜去し、図11に示すように、瘻孔65にシース10のみを留置する。このとき、前述のように、第一、第二係合部51a、51bと第一、第二戻り防止部55a、55bとの係合により、ダイレータ30の不測の戻りは防止されている。しかし、第一、第二戻り防止部54a、54bを乗り越えられる程度の力で螺合の解除方向にキャップ部31を回転させることにより、第一、第二係合部51bが第一、第二戻り防止部55a、55bを乗り越えて、螺合を解除することができ、シース10からダイレータ30を容易に抜去することができる。
【0046】
そして、図12に示すように、バルーンカテーテル80のチューブ部82をシース10の挿入口22から内部通路15内に挿通する。そして、内視鏡で観察しながら、チューブ部82を体内に挿入し、チューブ部82の先端の拡開部(バルーン)81をシース10の開口部16から胃内部60に突出させる。その後、図13に示すように、拡開部81を拡開させ、図14に示すように拡開部81の上端を胃壁61の内壁面に当接するとともに、腹壁62の外表面に、押さえ部83を当接させる。最後に、栄養の注入口84を蓋体85で被覆することにより、胃壁61と腹壁62に形成された瘻孔65へのバルーンカテーテル80の造設が完了する。
【0047】
以上のように、本実施形態のシースダイレータ100では、シース10とダイレータ30との過剰な螺進を防止して、シース10の不測の引裂きや気密性の低下を良好に防止することができる。そのため、シースダイレータ100によるバルーンカテーテル80その他のカテーテルの体腔内への挿入作業を、容易に行うことができる。また、このように作業性に優れたシースダイレータ100を、規制手段50を設けただけで簡易な構成で、廉価に提供することができる。
【0048】
なお、挿入口22には、ダイレータ30やバルーンカテーテル80の挿抜は許容するが、胃内部60からのガスの漏れは防止可能な逆止弁を設けてもよい。これにより、ダイレータ30の抜去のときの、シース10の内部通路15からの胃内部60からのガスの漏れを、より良好に防止することができる。
【0049】
また、他の異なる実施形態として、同一の樹脂材料で、シース本体11とハブ部20とを一体に形成してもよい。このときは、例えば、シース本体11を薄肉に、ハブ部20を厚肉に形成することで、カテーテルの挿入作業のときはシース10の破損を防止し得る。そして、ハブ部20も第一、第二ハブ部20a、20bに分離可能にすることなく、すべて一体化して形成してもよい。
【0050】
<第二実施形態>
次に、図15を用いて、第二実施形態のシースダイレータ200について説明する。第二実施形態にかかるシースダイレータ200は、シース210とダイレータ230とから構成され、シース210とダイレータ230との螺合手段よび規制手段250が異なること以外は、第一実施形態と同様であるため、当該同様部分の説明を省略する。また、カテーテルの挿入作業についても、第一実施形態と同様であるため、挿入作業工程の説明を省略する。図15に示すように、本実施形態のシースダイレータ200のシース210の螺合部224(224a、224b)は、第一実施形態と同様に、螺旋の一部である突条が対向して形成されている。この螺合部224に螺着するダイレータ230の螺合部232も、第一実施形態と同様に、一本の螺旋状に形成されている(図15参照)。しかし、螺合部224、232同士の長手方向の位置関係が異なる点で、第一実施形態と相違する。すなわち、上記第一実施形態では、螺合完了のとき、螺合部224、231同士が螺着した状態で、螺進が規制される。これに対して、本実施形態では、図15(b)に示すように、螺合完了のときには、シース210の螺合部224が近位端部CE側に、ダイレータ230の螺合部232が遠位端部DE側に位置し、螺合が解除される位置関係で形成されている。
【0051】
まず、螺進のときは、図15(a)に示すように、ダイレータ230のキャップ231を保持して螺進方向に回転させることにより、螺合部232がシース210の螺合部224に螺合し、遠位端部DE側に螺進していく。そして、所定長さの螺進が行われると、螺合部232が螺合部224を乗り越え、互いの螺合が解除されるため、その後に回転力を与えても、螺進が行われず、ダイレータ230が空転(空回り)する。そのため、操作者の手には、回転の抵抗感が感じられなくなるため、螺進動作が終了したことがわかる。このとき、図15(b)に示すように、シース210の螺合部224が、近位端部CE側に位置し、ダイレータ230の螺合部232は、それよりも遠位端部DE側に位置して、双方が分離している。なお、シース210の第一円筒部223の上端が、ダイレータ230の下端に当接するように構成することで、過剰な螺進や押圧により、空回りしながら螺進方向に移動することがなく、シース210の不測の破損を良好に防止する。さらに、空回り状態でも、シース210の突条状の螺合部224がダイレータ230の外周に当接し、ダイレータ230の螺旋条の螺合部232が第一円筒部223の内周に当接するため、気密性は保持される。なお、より気密性を向上させたい場合は、パッキン等を配置してもよい。
【0052】
一方、ダイレータ230での瘻孔の拡開が終了し、シース210からダイレータ230を抜去するときは、ダイレータ230を近位端部CE方向に持ち上げることにより、ダイレータ230の螺合部232とシース210の螺合部224とが当接する。この状態で、螺合の解除方向にダイレータ230を回転させることで、螺合部224、232同士が螺合して、ダイレータ230を解除方向に螺進させることができる。そして、螺合が解除されることにより、ダイレータ230を容易に抜去することができる。なお、本実施形態では、螺合解除の際に、螺合部224、232同士が離間するが、離間せずに、螺合解除でちょうど空転するように構成してもよい。
【0053】
また、ダイレータ230の空回りによる螺進の規制を、さらに防止するため、ダイレータ230のキャップ231の下端が当接して螺進が規制される、リング状の突起をシース210の第一円筒部223の外周に突設してもよい。
【0054】
<変形例>
シース10とダイレータ30との螺合部または螺進手段は、上記第一、第二実施形態に限定されるものではない。シース10とダイレータ30とを、気密性を保持して接続可能であれば、いずれの構造で螺合部または螺進手段を設けてもよい。例えば、変形例として、前述したような嵌合等による螺合であってもよい。
【0055】
また、例えば、第一実施形態では、シース本体11のフランジ部12a、12bに嵌入突部27b1、27b2が嵌入する際に、フランジ部12a、12bをエンボス状に突設させながら嵌入孔27a1、27a2に嵌合している。しかし、本願がこれに限定されるものではなく、嵌入突部27b1、27b2がフランジ部12a、12bを貫通して嵌入孔27a1、27a2に嵌合するものであってもよい。また、予め、フランジ部12a、12bに貫通孔(図示せず)を設けて、この貫通孔に嵌入突部27b1、27b2を貫通させ、嵌入孔27a1、27a2に嵌合させることで、フランジ部12a、12bを挟持するものであってもよい。または、フランジ部12a、12bを第一、第二ハブ部20a、20bの対向面で挟持するだけで、充分に抜け防止効果が発揮できるなら、嵌入突部27b1、27b2や嵌入孔27a2、27a2を設けなくてもよい。以上、シースダイレータ100のサイズ、シース本体11やハブ部20の強度や使用目的等に応じて、好適な構成でシース本体11やハブ部20を形成することが好ましい。
【0056】
また、第一、第二実施形態では、フランジ部12a、12bおよびハブ部20は、図10、図11等の側面から観察した形状が、シース本体11の長手方向に垂直な直線形状である。しかし、本願がこれに限定されるものではなく、気密性が良好に保持できるのであれば、当該側面から観察した形状が、V字状、U字状などであってもよい。また、両端がL字状に突出した側面形状としてもよい。また、各実施形態では、シース本体11とハブ部とを別個に形成して組み立てている。しかし、変形例として、シース本体11とハブ部20とを一体成型してもよい。この際も、シースダイレータ100のサイズ、シース本体11とハブ部20の強度や構成の複雑さ、使用目的等に応じて、好適な構成でシースダイレータ100を形成するのが好ましい。また、上記各実施形態では、バルーンカテーテル80などの胃瘻カテーテルの挿入作業の補助にシースダイレータを使用している。しかし、本願のシースダイレータが胃瘻カテーテルの挿入作業の補助に用いられるものに限定されることはなく、血管その他の体腔内に挿入するカテーテルや内視鏡カテーテルなど、様々なカテーテルの挿入作業の補助に用いることができる。
【符号の説明】
【0057】
10、210 シース
11、211 シース本体
12 係合受部
12a、212a フランジ部
12b、212b フランジ部
15、215 内部通路
16 開口部
20、220 ハブ部
20a、220a 第一ハブ部
20b、220b 第二ハブ部
21a、221a 第一把持部
21b、221b 第二把持部
22、222 挿入口
24(24a、24b)、224(224a、224b) 螺合部(シース)
24a、224a 第一螺合部
24a、224a 第二螺合部
25a、225b 周回突条
25b、225a 周回凹溝
27a1、27a2、227a1、227a2 嵌入孔
27b1、27b2、227b1、227b2 嵌入突部
26a 係合爪
26b 爪受部
29a 第一スリット部(脆弱部)
29b 第二スリット部(脆弱部)
29b1、29b2 切欠き部(脆弱部)
30、230 ダイレータ
31、231 キャップ部
32、232 螺合部(ダイレータ)
33、233 保持突部
34、234 ダイレータ本体
35 拡径部
36 挿通孔
37 挿通路
50、250 規制手段
51a 第一係合部
51b 第二係合部
52a 第一係合受部
52b 第二係合受部
53a 第一傾斜部
53b 第二傾斜部
54a 第一当接面
54b 第二当接面
55a 第一戻り防止部
55b 第二戻り防止部
100、200 シースダイレータ
CE 近位端部
DE 遠位端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に引き裂き可能な筒状のシースと、前記シースに挿通されるダイレータと、を含むシースダイレータであって、
前記シースおよび前記ダイレータは、近位端部に、互いに螺合する螺合部がそれぞれ設けられ、
前記螺合部の少なくとも一方に、当該螺合部が所定の締込み以上に螺進することを規制する規制手段が形成されていることを特徴とするシースダイレータ。
【請求項2】
前記規制手段は、前記シースの前記螺合部および前記ダイレータの前記螺合部の相対的な回転を規制する請求項1に記載のシースダイレータ。
【請求項3】
前記規制手段は、前記シースおよび前記ダイレータの一方の近位端部であって前記螺合部の回転方向の前方側に形成された係合受部と、他方の近位端部であって前記螺合部の回転方向の後方側に形成された係合部との係合により、前記螺合部の螺進を規制する請求項2に記載のシースダイレータ。
【請求項4】
前記規制手段は、前記係合部および前記係合受部の少なくとも一方が、回転方向に対して垂直な平面である請求項3に記載のシースダイレータ。
【請求項5】
前記係合部は、前記ダイレータの前記近位端部に、対向して形成された一対の第一係合部と、第二係合部とからなり、
前記係合受部は、前記シースの前記近位端部に、対向して形成された一対の第一係合受部と、第二係合受部とからなり、
前記ダイレータと前記シースとの互いの前記螺合部を螺合したとき、前記第一係合部および前記第二係合部が、前記第一係合受部および前記第二係合受部にそれぞれ係合することで、前記シースの長手方向と交差する短手方向の同一線上に、前記ダイレータの前記第一係合部および第二係合部が配置される請求項3または4に記載のシースダイレータ。
【請求項6】
前記第一係合受部および前記第二係合受部は、前記第一係合部および前記第二係合部の回転方向の前方に、当該第一係合部および当該第二係合部がそれぞれ当接する、垂直な平面からなる第一当接面と第二当接面とを有するとともに、前記第一当接面と前記第二当接面に連続して、前記回転方向の前方に、前記近位端部方向に次第に傾斜する第一傾斜部と第二傾斜部とを有し、
前記規制手段による前記螺合部の螺進の規制のときは、
前記ダイレータの前記第一係合部は、前記第二当接面および前記第二傾斜部を乗り越えて螺進するが、前記第一当接面は乗り越えずに、当該第一当接面に当接することで前記第一係合受部との係合が行われ、
前記第二係合部は、前記第一当接面および前記第一傾斜部を乗り越えて螺進するが、前記第二当接面は乗り越えずに、当該第二当接面に当接することで前記第二係合受部との係合が行われる請求項5に記載のシースダイレータ。
【請求項7】
前記係合受部が形成された前記シースまたは前記ダイレータは、前記係合受部と同一周回に、前記係合部の配置間隙を介して突設された戻り防止部を、さらに有し、
前記係合部は、前記螺合部の締込み方向への進行および戻り方向への進行のときに、前記戻り防止部と接触しながら通過する請求項3から6のいずれか一項に記載のシースダイレータ。
【請求項8】
前記シースは、
前記ダイレータを挿入する円筒状のシース本体と、
当該シース本体の近位端部に円筒状に設けられ、内部に前記螺合部を有するとともに前記ダイレータを前記シース本体内に挿入する挿入口と、
前記螺合部の外周であって、前記シース本体の長手方向と交差する短手方向両側に、延出して形成されたハブ部と、
を備える請求項2から4のいずれか一項に記載のシースダイレータ。
【請求項9】
前記シース本体と前記ハブ部とは、それぞれ別体に形成され、
前記シース本体は、前記近位端部側であって、短手方向にそれぞれ延出して形成された一対のフランジ部を有し、
前記挿入口は、前記ハブ部に一体に形成され、
前記ハブ部は、少なくともいずれか一方および他方にそれぞれ対向して設けられた係合爪と爪受部との嵌合により一体となる第一ハブ部と第二ハブ部とから構成され、
前記第一ハブ部および前記第二ハブ部のいずれか一方には、他方への対向面に、全周に亘って周回突条が設けられ、他方には、一方への対向面に、全周に亘って前記周回突条を係合する周回凹溝が設けられ、
前記係合爪と前記爪受部との嵌合により、前記第一ハブ部および前記第二ハブ部が一体化し、当該第一ハブ部および当該第二ハブ部の互いの対向面で、一対の前記フランジ部が挟持固定されるとともに前記周回突条および前記周回凹溝が嵌合する請求項8に記載のシースダイレータ。
【請求項10】
前記第一ハブ部または前記第二ハブ部のいずれかの対向面であって、前記周回突条および前記周回凹溝の内側の少なくとも一方に、前記シース本体の前記フランジ部に嵌入する嵌入突部が少なくとも1個形成されている請求項9に記載のシースダイレータ。
【請求項11】
前記ハブ部は、前記シース本体よりも硬質な材料で形成され、前記シース本体の長手方向と平行に、溝状の脆弱部が少なくとも1本、設けられている請求項9または10に記載のシースダイレータ。
【請求項12】
前記規制手段が、所定以上の締付けを行うと、互いの螺合が解除されるような位置関係で形成された前記シースの前記螺合部と前記ダイレータの前記螺合部とにより構成され、
所定以上の締付けにより、前記シースの前記螺合部と、前記ダイレータの前記螺合部との螺合が解除されて、互いに空転することにより螺進方向への進行が規制される請求項1に記載のシースダイレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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