説明

シースヒータのリード線接続端子

【課題】加熱−冷却を繰り返すときのシースとリード線の端部との間に発生する熱応力に伴う熱歪みを緩和し、接続部分の早期の破断、断線を防止する。発熱線で発生した熱がリード線へと放熱されるのを防止し、効率的に熱を供給すると共に、リード線の高温化を防ぐ。
【解決手段】シースヒータ3の発熱線10の端部をリード線12に接続するに当たり、シースヒータ3の発熱線10の端部とリード線12の端部とをバネ性を有する接続用導体13を介して接続する。アルミニウムシース9とリード線12の端部との熱応力に伴う歪みの緩和という観点から、特にバネ性を有する接続用導体13、13’は、帯状導体からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シースヒータの発熱線とリード線とを接続するシースヒータのリード線接続端子に関し、加熱と冷却を繰り返すときのシースヒータに生じる熱応力を緩和することで、熱歪みを抑え、もって接続部分の早期破損を防止すると共に、シースヒータからリード線側へ放熱するのを防止し、効率的な熱利用が可能なシースヒータのリード線接続端子に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、シースヒータを使用した加熱手段としてホットプレートがあり、このホットプレートは、金属製の熱板の中にシースヒータを埋め込んだものである。熱板には、その表面の温度分布の均一性を確保するため、熱伝導良好な金属板が使用され、例えばステンレス板やアルミニウム板が使用される。特にアルミニウム製の熱板は均熱性に優れるため好適である。このようなホットプレートは、例えば工業用には半導体基板の処理プロセスにおける基板の加熱等のために使用される。
【0003】
熱板にシースヒータを埋め込んだ形態としては、例えば熱板に溝を設け、この溝の中にシースヒータを収納し、さらにこの溝を閉じるため、熱板の溝を設けた面側にカバープレートを張り重ねた構造が一般的である。例えばこのようなシースヒータを使用したホットプレートとしては、下記特許文献1〜5に記載されたものが既に知られている。他の形態としては、熱板の材料にアルミニウムやニッケルを使用し、2枚の溝付き金属板の中にシースヒータを挟み込み、熱融着したものなどを挙げることが出来る。
【0004】
前述のようなホットプレートにおいて、熱板の溝に埋め込むシースヒータとしては、ステンレス製のシースを用いたシースヒータが使用されていた。しかし、ステンレス製シースよりさらに熱伝導が良好なアルミニウム製のシースを使用した、いわゆるアルミニウムシースヒータが用いられるようになっている。
【0005】
アルミニウムシースヒータの発熱線には、Ni−Cr合金線(ニクロム線)が使用され、この発熱線と接続するリード線には、ステンレスシースヒータと同様にステンレス、ニッケル、Cu−Ni合金(キュプロニッケル、白銅)等からなる細い棒状体が使用される。特にこのリード線としては、放熱防止の観点から熱伝導率が低く、しかも発熱線との溶接が容易なSUS304等のオーステナイト系ステンレス鋼からなる細い棒状体が使用される。
【0006】
図6にホットプレートの熱源として使用されるアルミニウムシースヒータの発熱線とその電源接続用のリード線とを接続したシースヒータのリード線接続端子の従来例を示す。アルミニウムシースヒータ103は、アルミニウム製の保護管であるシース109の中に発熱線110を収納し、シース109と発熱線110との間にマグネシア粉末等の無機絶縁材111を充填したものである。図示していないパネルヒータの熱板に埋め込まれたアルミニウムシースヒータ103は、その端部がカバープレート7から引き出され、シース109内部で発熱線110がリード線112に接続される。この接続部分は、溶接等の手段で固定される。
【0007】
アルミニウムシースヒータ103のアルミニウムシース109は、リード線112として使用されるオーステナイト系ステンレス鋼に比べて熱膨張係数が大きい。このため、非加熱部分であるリード線112の端部までホットプレートの内部に埋め込まれ、高熱に晒される状態下にあると、加熱−冷却時における発熱線110とリード線112との熱膨張の差により発熱線110とリード線112との接続部、特にその溶接部に大きな熱応力が発生する。この状態でホットプレートの加熱−冷却を繰り返すと、前記熱応力に伴う熱歪により発熱線110とリード線112との接続部が早期に破断し、断線に至ることがある。
【0008】
さらに、発熱線110とリード線112とが直接接続されていることにより、発熱線110で発生した熱がリード線112へと容易に放熱されてしまい、十分な熱をホットプレートに供給出来ず、熱効率が悪いという課題もある。加えて、リード線112が高温化し、リードケーブル5等の電源機器にも悪い影響を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−110881号公報
【特許文献2】特開2002−324655号公報
【特許文献3】特開2002−8835号公報
【特許文献4】特開平08−106973号公報
【特許文献5】特開平05−152060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明では、シースヒータの発熱線とリード線とを接続する従来のシースヒータのリード線接続端子における課題に鑑み、加熱と冷却を繰り返すときのシースとリード線との接続部に発生する熱応力に伴う熱歪みを緩和することにより、熱歪みを抑えて接続端子の早期の破断、断線を防止することを目的とする。加えて、発熱線で発生した熱がとリード線へと放熱されるのを防ぎ、目的の個所へ効率的に熱を供給出来るのに加え、リード線が高温になり難いシースヒータのリード線接続端子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するため、本発明によるシースヒータのリード線接続端子では、シースヒータの発熱線の端部とリード線の端部とをバネ性を有する接続用導体を介して接続する。これにより、接続用導体で加熱−冷却を繰り返すときのアルミニウムシースとリード線との間に発生する熱応力に伴う熱歪みを緩和し、併せて発熱線で発生した熱をリード線へと逃がさないようにした。
【0012】
すなわち、本発明によるシースヒータのリード線接続端子の構成を図面の符合を引用しながらより具体的に説明すると、このシースヒータのリード線接続端子は、シースヒータ3の発熱線10の端部をリード線12に接続するものである。そしてシースヒータ3の発熱線10の端部とリード線12の端部とをバネ性を有し、発熱線10より断面積を大きくして電気抵抗を小さくした接続用導体13を介して接続する。
【0013】
このような本発明によるシースヒータのリード線接続端子では、シースヒータ3の発熱線10の端部とリード線12の端部とがバネ性を有し電気抵抗を小さくした接続用導体13、13’を介して接続されているため、発熱線10が加熱と加熱停止を繰り返すときに、アルミニウムシース9とリード線12の端部との間に発生する熱応力による歪みがバネ性を有する前記接続用導体13、13’で緩和される。このため、シースヒータ3の発熱線10の端部とリード線12の端部との早期の破断、断線が防止出来て、さらにリード線12側への放熱を少なくすることができる。
【0014】
アルミニウムシース9とリード線12の端部との熱応力に伴う歪みの緩和とシースヒータ3を太くしないという観点から、特にバネ性を有する接続用導体13、13’は、帯状導体からなるものがよい。この帯状導体をコイル状或いは蛇行状の導体とした接続用導体13、13’を使用することにより、アルミニウムシース9とリード線12の端部との熱応力に伴う歪みを確実に緩和することが出来る。さらに、このような接続用導体13、13’は、発熱線10からリード線12へと熱が逃げるのを抑えることが出来る。このため、発熱線10で発生した熱を効率よく熱板1に供給することが出来るのに加え、リード線12が高温化するのを防止することが出来る。また、シースヒータ3が太い場合は、接続用導体13、13’は発熱線10より太くして電気抵抗を小さくしたコイル状或いは蛇行状の丸状導体でもよい。
【発明の効果】
【0015】
以上の説明の通り、本発明によれば、発熱線10による加熱と冷却を繰り返すときのアルミニウムシース9とリード線12の端部との間に発生する熱応力に伴う熱歪みを緩和することが出来ることにより、その部分の早期の破断、断線がしにくいシースヒータのリード線接続端子を提供することが出来る。また、発熱線10からリード線12への放熱を抑え、発熱線10から目的の個所へ効率良く熱を伝えることが出来ると共に、リード線12が高温化するのを防止することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】シースヒータが用いられるホットプレートの例を示す平面図である。
【図2】同ホットプレートの縦断側面図である、
【図3】同ホットプレートの要部縦断側面図である。
【図4】本発明によるシースヒータのリード線接続端子の一実施例を示す要部縦断側面図である。
【図5】本発明によるシースヒータのリード線接続端子の他の実施例を示す要部縦断側面図である。
【図6】シースヒータのリード線接続端子の従来例を示す要部縦断側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明では、シースヒータの発熱線の端部とリード線の端部とをバネ性を有する接続用導体を介して接続し、この接続用導体で加熱と冷却を繰り返すときの熱応力に伴う熱歪みを緩和し、併せて発熱線からリード線に熱が逃げるのを防止するものである。
以下、このような本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体例を挙げて詳細に説明する。
【0018】
図1は、シースヒータが用いられるホットプレートの一例を示す平面図であり、図2はその縦断側面図であり、図3はその要部拡大図である。
これらの図に示すように、ホットプレートは、熱板1の下面に溝2を設け、その中に線状のシースヒータ3を埋め込んだものである。例えば、熱板1はシースヒータ3の熱を均一に面方向に伝熱し、熱板1の表面を均一な温度にするためのものである。そのため、熱板1は熱伝導良好なアルミニウム等の金属からなり、図示の例では円板形であるが、その形状は加熱する対象物はその配置等に応じて適宜の形状が選択される。
【0019】
熱板1の表面に基板等の加熱物を載せて加熱したとき、熱板1を形成する金属材料と加熱物とが反応しないように、熱板1の表面にコーティングを施すこともある。このようなコーティングは、耐熱性を有し、高温で化学的に安定していることが必要であり、例えばアルミナや窒化ホウ素等のセラミックコーティングが最適である。コーティングの膜厚は100μm程度がよい。
【0020】
図3に示すように、溝2の中に収納されるヒータには、シースヒータ3が使用される。このシースヒータ3は、アルミニウムからなるチューブ状の保護管であるシース9の中にニッケル−クロム合金線やタングステン線等の耐熱導電線からなるコイル状の発熱線10を収納し、さらにシース9と発熱線10との間にマグネシア粉末等の無機絶縁材11を充填し、発熱線10とシース9との間を絶縁したものである。
【0021】
熱板1の溝2に前記シースヒータ3が埋め込まれ、固定されている。この溝2の開口部を覆うように熱板1の下面に、熱板1と同じ寸法のカバープレート7が取り付けられる。図示の例では、このカバープレート7がネジ8により熱板1の下面に固定されている。シースヒータ3の端末は、カバープレート7の中央の孔から導出される。
【0022】
図2に示すように、熱板1の溝2に埋め込まれたシースヒータ3の端末は、カバープレート7を通して熱板1の溝2の中から引き出され、セラミック端子4を介してリード線を含むリードケーブル5に接続され、このリードケーブル5を介してシースヒータ3が図示してない電源に接続される。なお図2では、片側のシースヒータ3の端末のみが示されているが、シースヒータ3の両端末共に同様の接続がなされる。
【0023】
図4は、シースヒータ3の発熱線10の端部を前記リードケーブル5のリード線12に接続した本発明によるシースヒータのリード線接続端子の一実施例を示している。シースヒータ3の発熱線10の端部は、まず耐熱性導電材料からなる中間端子14に接続され、この中間端子14とリード線12の端部とがバネ性を有するコイル状の接続用導体13を介して接続されている。このコイル状の接続用導体13は、帯状導体をコイル状に形成したものであり、リード線12と同様のオーステナイト系ステンレス鋼等の耐熱性導電材料からなる。
【0024】
より具体的には、中間端子14は、リード線12と同様のオーステナイト系ステンレス鋼等の耐熱性導電材料からなる円柱形のものであるが、両端が一段細くなった段付き円柱形となっている。この中間端子14の一端の段付き部分にシースヒータ3のコイル状の発熱線10の端部が嵌め込まれ、溶接等の手段で固定されている。さらに、この中間端子14の他端の段付き部分に帯状導体をコイル状に形成した接続用導体13の一端部が嵌め込まれ、やはり溶接等の手段で固定されている。リード線12の端部も一段細くなった段付き部分となっており、この部分に前記接続用導体13の他端部が嵌め込まれ、やはり溶接等の手段で固定されている。
【0025】
接続用導体13を帯状導体とすることで、コイルの中心軸方向への圧縮−延伸方向の歪とコイルの中心軸と直交する方向の撓み方向の歪みの双方を吸収しやすい。しかも導体としての断面積を広く取れるので、発熱線10への通電時の電流密度を小さくすることも出来る。発熱線10への通電時及びその停止時の加熱−冷却を繰り返すときのシース9とリード線12の端部との間に発生する熱応力に伴う発熱線10とリード線12との間の熱歪みを前記接続用導体13が吸収するため、発熱線10やリード線12に大きな熱歪が生じない。さらに、この接続用導体13は、発熱線10からリード線12へと熱が逃げるのを抑える。このため、発熱線10で発生した熱を効率よく熱板1に供給することが出来ると共に、リード線12が高温になるのを防ぐことが出来る。
【0026】
また、図示はしていないがシースヒータ3が太い場合は、接続用導体13、13’は発熱線10より太くして電気抵抗を小さくしたコイル状或いは蛇行状の丸状導体でもよい。シースヒータ3があまり太くないような場合には、線材を潰して帯状導体に近づけた接続用導体13、13’を用いても良い。
【0027】
図5は、シースヒータ3の発熱線10の端部を前記リードケーブル5のリード線12に接続した本発明によるシースヒータのリード線接続端子の他の実施例を示している。シースヒータ3の発熱線10の端部は、まず耐熱性導電材料からなる中間端子14’に接続され、この中間端子14’とリード線12の端部とがバネ性を有する接続用導体13’を介して接続されていることは前述した実施例と基本的に同じである。但しこの実施例では、接続用導体13’がオーステナイト系ステンレス鋼等の耐熱性導電材料からなる帯状導体を蛇行状(ジグザグ状)に屈曲したものである。
【0028】
リード線12と同様のオーステナイト系ステンレス鋼等の耐熱性導電材料からなる中間端子14’は、円柱形のものであるが、その一端のみが一段細くなった段付き円柱形の導電部材となっている。この中間端子14’の一端の段付き部分にシースヒータ3のコイル状の発熱線10の端部が嵌め込まれ、溶接等の手段で固定されている。さらに、この中間端子14’の他端の段部が無い端面に帯状導体を蛇行状に成形した接続用導体13’の一端部が当てられ、溶接等の手段で固定されている。リード線12の端部も段部が無く、その端面に前記接続用導体13’の他端部が当てられ、やはり溶接等の手段で固定されている。
【0029】
接続用導体13’を帯状導体とすることで、歪みを吸収しやすく、なお且つ導体としての断面積を広く取れるので、発熱線10への通電時の電流密度を小さくすることも出来る。発熱線10への通電時及びその停止時の加熱−冷却を繰り返すときのシース9とリード線12の端部との間に発生する熱応力に伴う発熱線10とリード線12との間の熱歪みを前記接続用導体13’が吸収するため、発熱線10やリード線12に大きな熱歪が生じない。また発熱線10からリード線12へと直接熱が伝達されないので、発熱線10で発生した熱を効率よく熱板1に供給することが出来るのに加え、発熱線10からリード線12への放熱により、リード線12が高温化しない。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明によるシースヒータのリード線接続端子は、例えば金属製の熱板にシースヒータを埋め込んで固定したホットプレートにおいて、シースヒータの発熱線とリード線とを接続するシースヒータのリード線接続端子として適用することが出来る。
【符号の説明】
【0031】
3 シースヒータ
10 シースヒータの発熱線
12 リード線
13 接続用導体
13’ 接続用導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シースヒータ(3)の発熱線(10)の端部をリード線(12)に接続したシースヒータのリード線接続端子において、シースヒータ(3)の発熱線(10)の端部とリード線(12)の端部とをバネ性を有し発熱線(10)より電気抵抗を低くした接続用導体(13)を介して接続したことを特徴とするシースヒータのリード線接続端子。
【請求項2】
バネ性を有する接続用導体(13)が帯状導体もしくは丸状導体からなることを特徴とする請求項1に記載のシースヒータのリード線接続端子。
【請求項3】
バネ性を有する接続用導体(13)がコイル状の導体からなることを特徴とする請求項1または2に記載のシースヒータのリード線接続端子。
【請求項4】
バネ性を有する接続用導体(13)が蛇行状の導体からなることを特徴とする請求項1または2に記載のシースヒータのリード線接続端子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−253691(P2011−253691A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126380(P2010−126380)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000183945)助川電気工業株式会社 (79)
【Fターム(参考)】