説明

シーソーロッカーキー

【課題】 3種類の通電状態を取ることのでき、部品点数が少なく構造が簡単であるシーソーロッカーキーを提供する。
【解決手段】 シーソーロッカーキー1は、回転支点11に対して揺動可能に支持されたキートップ20と、キートップ20の両端部の各々によって押し下げられる、左右一対の2段式のコンタクトラバースイッチ50とを備える。ラバースイッチ50は、キートップ20の端部によって押圧される押しボタン部55と、押しボタン部55を変位可能に支持する第1裾部57とを有する。押しボタン部55には、下方に突き出た第1突部61と、第1突部61を変位可能に支持する第2裾部63と、下面に可動接点73が形成され、下面が第1突部61の下面より押圧方向において上方に位置する第2突部とが形成されている。このスイッチ1は、キートップ20の揺動状態に応じて、中立、左スイッチオン及び右スイッチオンの3状態を取りうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右一対のスイッチを有し、ニュートラル・右オン・左オンの3状態で静止しうるシーソーロッカーキーに関する。特には、部品点数が少なく構造が簡単であるとともに、3状態の切替動作を確実なクリック感を持って行うことのできるシーソーロッカーキーに関する。
【背景技術】
【0002】
シーソーロッカーキーは、キートップの揺動動作によって、オン状態とオフ状態とを切り換えるもので、電灯のオンオフ動作などに広く使用されている。一方、キートップの揺動角度に応じて2段階のスイッチ動作が行われる2段式のシーソーロッカーキーも種々の用途に使用されている。
【0003】
一方、コンタクトラバースイッチとして2段式(ダブルクリック式)のものも提案されている(例えば、特許文献1参照)。このコンタクトラバースイッチは、2段式の変形部を有し、ストロークに応じて各変形部が順に変形し、2段階のスイッチ動作が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−272477
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、3種類の通電状態を取ることのできるシーソーロッカーキーであって、部品点数が少なく構造が簡単であるとともに、3状態の切替を確実なクリック感を持って行うことのできるシーソーロッカーキーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のシーソーロッカーキーは、 回転支点に対して揺動可能に支持されたキートップと、 前記キートップの両端部の各々によって押し下げられる、左右一対の2段式のコンタクトラバースイッチとを備え、 前記キートップの揺動状態に応じて、中立、左コンタクトラバースイッチオン及び右コンタクトラバースイッチオンの3状態を取りうることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、コンタクトラバースイッチとキートップでシーソーロッカーキーを構成できる。したがって、バネなどを使用した複雑な機械式のものと比べて構造が簡単であり安価である。また、スイッチが3種類の通電状態を取りうることによって用途を広げることができる。例えば、自動車用(サンルーフ、チャイルドロック等)や、特殊車両用向けスイッチ、精密機器、家電製品等に適用できる。
【0008】
本発明においては、 前記コンタクトラバースイッチの荷重−変位特性カーブが2つのピークと2つの谷を有し、 前記中立状態においては、前記左右一対のラバースイッチが、前記2つのピーク間の谷の近傍の特性位置にあり、 前記左オン及び右オン状態においては、オン側の前記ラバースイッチが大変位側の谷の近傍の特性位置にあり、反対側の前記ラバースイッチが小変位側のピークの近傍の特性位置にあり、 このとき、前記オン側のラバースイッチの反力が前記反対側のラバースイッチの反力より小さいことが好ましい。
【0009】
本発明においては、 前記コンタクトラバースイッチが、 ベース部と、 前記キートップの端部によって押圧される押しボタン部と、 前記押しボタン部を前記ベース部に対して変位可能に支持する、弾性変形可能な第1裾部と、 前記押しボタン部から下方に突き出た第1突部と、 前記第1突部を前記押しボタン部に対して変位可能に支持する、弾性変形可能な第2裾部と、 下面に可動接点が形成され、該下面が前記第1突部の下面より押圧方向において上方に位置する第2突部と、を備え、 1段目のストロークによって、前記第1裾部の弾性変形によるクリック感が得られるとともに、前記第1突部が前記基板に当接し、 2段目のストロークによって、前記第2裾部の弾性変形によるクリック感が得られるとともに、前記第2突部が前記基板に当接する構造とすることが好ましい。
【0010】
本発明によれば、各コンタクトラバースイッチが押圧された際、まず第1突部の下面が基板に当接し、次に、第2突部の下面が基板に当接する。このように、基板に当接する部分が、押圧方向に順に並んでいるので、1段目のスイッチ動作と2段目のスイッチ動作とを明確に区切ることができる。さらに各動作は、裾部の弾性変形(座屈)によるクリック感を伴うので、各動作が行われたことを感知しやすい。
【0011】
本発明においては、 前記中立状態においては、前記コンタクトラバースイッチの各々の第1突部が前記基板に当接しているとともに、該ラバースイッチの各々の反力が前記キートップの両端部にかかっており、 前記左オン又は右オン状態においては、オン側ラバースイッチの第1突部とともに第2突部が基板に当接し、反対側ラバースイッチの反力により該反対側ラバースイッチの第1突部が前記基板から離れていることとする。
【0012】
本発明によれば、中立状態、左オン状態及び右オン状態の各々において、コンタクトラバースイッチの反力によってキートップが、水平状態、左側が下方に傾斜した状態及び右側が下方に傾斜した状態に維持される。
【0013】
本発明においては、 前記片側オン状態から、前記キートップの反オン側端部を押圧すると、 押圧側ラバースイッチにおいては、前記押しボタン部が押し下げられて前記第1突部が前記基板に当接し、反押圧側ラバースイッチにおいては、前記第2裾部の反力によって前記押しボタン部が押し上げられて前記第2突部が前記基板から離れ、 これにより前記中立状態に戻り、 続いて前記キートップの反オン側端部を押圧すると、 押圧側ラバースイッチにおいては、前記押しボタン部が押し下げられて前記第2突部が前記基板に当接し、反押圧側ラバースイッチにおいては、前記第1裾部の反力によって前記押しボタン部が押し上げられて前記第1突部が前記基板から離れ、 これにより反対側オン状態となることとできる。
【0014】
本発明においては、 前記押しボタン部の下面(前記基板と向き合う面)の平面形状が円形であるとともに、前記第1裾部が前記ベース部に向かって広がるスカート状であり、 前記第1突部の下面(前記基板と向き合う面)の平面形状が円形であるとともに、前記第2裾部が前記押しボタン部へ向かって広がるスカート状であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、シーソーロッカーキーが3種類の通電状態を取りうるので、シーソーロッカーキーの用途を広げることができる。さらには、部品点数が少なく構造が簡単であり、3状態の切替を確実なクリック感を持って行うことのできるシーソースイッチを提供できる。また、1段目のスイッチ動作と2段目のスイッチ動作において明確なクリック感を伴うように構成すれば、信頼性を向上した2段式のシーソーロッカーキーを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態にかかるシーソーロッカーキーの構造(中立状態)を示す図であり、図1(A)は正面断面図、図1(B)、図1(C)は荷重とストロークの関係を示すグラフである。
【図2】図1のシーソーロッカーキーの右オン状態を示す図であり、図2(A)は正面断面図、図2(B)及び(C)は荷重とストロークの関係を示すグラフである。
【図3】図1のシーソーロッカーキーの左オン状態を示す図であり、図3(A)は正面断面図、図3(B)及び(C)は荷重とストロークとの関係を示すグラフである。
【図4】図1のシーソーロッカーキーの斜視図である。
【図5】コンタクトラバースイッチの構造を示す図であり、図5(A)は平面図、図5(B)は正面断面図、図5(C)は底面図、図5(D)は側断面図である。
【図6】図5のコンタクトラバースイッチの押圧時の姿勢を説明する側断面図である。
【図7】図5のコンタクトラバースイッチの押圧時の姿勢を説明する側断面図である。
【図8】図5のコンタクトラバースイッチのストロークと荷重との関係を示すグラフである。
【図9】コンタクトラバースイッチの第1の変形例を示す図であり、図9(A)は平面図、図9(B)は図9(A)のA−A断面図、図9(C)は底面図である。
【図10】コンタクトラバースイッチの第2の変形例を示す図であり、図10(A)は平面図、図10(B)は図10(A)のA−A断面図、図10(C)は図10(AのB−B断面図、図10(D)は底面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1、図4を参照して、本発明のシーソーロッカーキーの構造を説明する。
シーソーロッカーキー1は、基板90上に取り付けられて、同基板90上に形成されている固定接点91を導通させるように押されるものである。基板90は、例えば、ガラス繊維シートを芯材としたエポキシ樹脂基板である。基板90には回路が形成されており、この回路上の、後述するシーソーロッカーキー1の各コンタクトラバースイッチ50の下方には、2個の固定接点91が形成されている。各固定接点91は、平面形状が円形の一対の接点からなり、導電性インクを用いた印刷などによって形成される。
以下の説明における左側、右側は、図の左側、右側を示す。
【0018】
シーソーロッカーキー1は、基板90に取り付けられた支持部材10と、支持部材10に設けられた回転支点11に対して揺動可能に支持されたキートップ20と、キートップ20の両端部の各々によって押し下げられるアクチュエータ30と、各アクチュエータ30によって操作されるスイッチ部材40と、を備える。
【0019】
支持部材10には、キートップ20が揺動可能に収容される上凹部13と、スイッチ部材40が収容される下凹部14と、上凹部13と下凹部14間を連通する貫通孔15が形成されている。同貫通孔15には、各アクチュエータ30が上下にスライド可能に収容される。貫通孔15は、基板90に対して垂直に形成されている。
【0020】
キートップ20は、支持部材10の上凹部13内に設けられた回動支点11に対して揺動可能に支持されている。キートップ20の左右両端部の下方にはアクチュエータ30L、30Rが配置されている。各アクチュエータ30は、支持部材10の貫通孔15に通される軸部31と、軸部31の下方に形成された平板部32とを有する。平板部32は、後述するスイッチ部材40の押しボタン部55(図5参照)と同様の、楕円形の平面形状であり、基板90と平行な下面を有する。キートップ20の一方の端部が押されると、同端部の下方のアクチュエータ30の軸部31が貫通孔15内を下方にスライドし、平板部32でスイッチ部材40の押しボタン部55を押圧する。軸部31は、基板90に対して垂直方向にスライドするので、押しボタン部55の上面には、アクチュエータ30の平板部32から均一な力がかかる。
【0021】
スイッチ部材40は、キートップ20の揺動動作によって切り替えられる左右一対のコンタクトラバースイッチ50と、両スイッチ50をつなぐベース部51と、を有する。各部は、弾性を有するゴム(例えばシリコーンゴム)やエラストマーで一体成形される。
【0022】
ベース部51は基板90の表面に取り付けられるもので、基板90に形成された各固定接点91が露出する円形の開口52が開けられている。
【0023】
図5を参照してコンタクトラバースイッチ50の構造を説明する。図5(A)は平面図、図5(B)は正面断面図、図5(C)は底面図、図5(D)は側断面図である。
コンタクトラバースイッチ50は、アクチュエータ30L、30Rの各々によって上面が押される押しボタン部55と、押しボタン部55をベース部51に支持する外周(第1)裾部57とを有する。押しボタン部55は、ベース部51の開口52の上方に形成されており、開口52よりも一回り小さい寸法の、平面形状が楕円形の円板形状を有する。ただし、押しボタン部55の平面形状は円形であってもよい。外周裾部57は、押しボタン部55の周囲からベース部51の開口52の周囲へ向かってスカート状に外方向へ張り出すように形成されている。外周裾部57の肉厚は、押しボタン部55やベース部51よりも薄い。
【0024】
押しボタン部55の下面には、一対の第1突部61と一対の第2突部71とが形成されている。図5(C)に示すように、第1突部61は、下面の長手方向中心線上に、中心を挟んで対称に配置されている。第2突部71は、下面の短手方向中心線上に、中心を挟んで対称に配置されている。平面において、各第1突部61及び各第2突部71の中心は、押しボタン部52の下面の中心から等距離に位置している。
【0025】
第1突部61は、図5(B)に示すように、押しボタン部55の厚さとほぼ同じ厚さの円柱状の部位である。押しボタン部55の上面の短手方向中心線上には、中心を挟んで対称に退避孔56が開けられている。第1突部61は、この退避孔56内に内周(第2)裾部63によって押しボタン部55の下面から下方に突き出すように支持されている。内周裾部63は、第1突部61の高さ方向のほぼ中心の周囲から、退避孔56の下側開口の周囲に向かってスカート状に外方向に張り出している。内周裾部63の肉厚は、外周裾部57の肉厚と同程度である。第1突部61の下面は、平面形状が円形の平坦な面である。なお、この例では、第1突部61の下面に接点が形成されていないが、基板90上に前記の固定接点91と別の固定接点を設けて、第1突部61の下面に可動接点を設けてもよい。
【0026】
第2突部71は、押しボタン部55の下面からやや下方に突き出している。第2突部71の下面は、平面形状が円形の平坦な面であり、この面に基板90に形成された固定接点91と導通する可動接点73が形成されている。図5(B)、図5(D)に示すように、第2突部71の下面(固定接点73)は、第1突部61の下面よりも上方に位置する。
【0027】
図6、図7、図8を参照して、このコンタクトラバースイッチ50の押しボタン部55にかけられるストロークと荷重(反力)の関係を説明する。
図6、図7は、図5(C)のA−A断面を示す図である。ただし、内周裾部63の変形形状をわかりやすく示すため、内周裾部63の形状は、実際のA−A断面の形状よりも長く描かれている。
図8のグラフにおいて、縦軸は荷重(反力)、横軸はストロークを示し、実線は押しボタン部55の押圧時を示し、破線は戻り時を示す。
【0028】
図6(A)は、フリー(無負荷)のコンタクトラバースイッチ50を示す。この状態から、押しボタン部55の上面を均一に押圧すると、図6(B)に示すように、押しボタン部55が下降して外周裾部57が外方向へ張り出すように変形し始める。この際、図8の実線グラフのaの部分に示すように反力が上昇する。この反力がピークP1を超えると、図6(C)に示すように、外周裾部57の押しボタン55側の端部がベース部51側の端部よりも下に進んで外周裾部57が座屈し、第1突部61の下面が基板90に当接する。この際、図8の実線グラフのbの部分に示すように反力が減少し、谷P2に達する。この際の外周裾部57の座屈による、反力のピークP1から谷P2への減少によってクリック感が生じる。
【0029】
さらに押しボタン部55を押圧し続けると、押しボタン部55がさらに下降し、図7(A)に示すように、基板90に当接している第1突部61に対して内周裾部63が上に折れるように変形し始める。この際、図8の実線グラフのcの部分に示すように再度反力が上昇し始める。この反力がピークP3を超えると、図7(B)に示すように、内周裾部63の押しボタン部55側の端部が第1突部61側の端部よりも下に進んで内周裾部63が座屈し、第2突部71の下面(可動接点73)が基板90の固定接点91に当接する。また、第1突部61は押しボタン部55の退避孔56内に入り込み、内周裾部63は、第1突部63と退避孔56の側壁との間に引きずり込まれる。この際、図8の実線グラフのdの部分に示すように反力が減少していき、谷P4に達する。この際の内周裾部63の座屈による、反力のピークP3から谷P4への減少によってクリック感が生じる。
その後、さらに押しボタン部55を押圧していくと、押しボタン部55の圧縮変形により、図8の実線グラフのeの部分に示すように反力が上昇し続ける。
【0030】
押しボタン部55の押圧を解放していくと、図8の破線グラフに示すように、前述と逆の作用によって反力が減少して、押しボタン部55は元の位置に戻っていく。押圧を解放していくと、図8の破線グラフのfの部分に示すように、押しボタン部55の圧縮変形による反力が谷P5まで減少する。その後、さらに押圧を解放していくと、破線グラフのgの部分に示すように、座屈した内周裾部63が元の形状に戻り始めて(図7(A)の状態)反力が上昇し始める。反力はピークP6で最大になった後、破線グラフのhの部分に示すように減少し始め、谷P7で内周裾部63が完全に元の形状に戻る(図6(C)の状態)。その後、破線グラフのiの部分に示すように、座屈した外周裾部57が元の形状に戻り始めて(図6(B)の状態)反力が上昇し始める。反力はピークP8で最大になった後、破線グラフのjの部分に示すように減少し始める。
このグラフに示すように、押圧時の曲線(実線)と戻り時の曲線(破線)とは一致しておらず、ヒステリシスを有するグラフとなる。
【0031】
次に、図1を参照してシーソーロッカーキー1の全体構成を説明する。この図1は、キートップ20が水平に維持されている中立状態を示す。
スイッチ部材40は、基板90上に置かれており、支持部材10の下凹部14内に収容されている。そして、ベース部51に開けられた開口52から、基板90の固定接点91が露出している。キートップ20は、支持部材10に回転支点11に対して揺動可能に支持されている。各アクチュエータ30は、軸部31が支持部材10の貫通孔15を貫通している。各アクチュエータ30の平板部32は、スイッチ部材40のコンタクトラバースイッチ50の押しボタン部55の上面に当接している。
【0032】
ここで、各コンタクトラバースイッチ50は図5に示したフリー(無荷重)の状態ではなく、各押しボタン部55の上面に各アクチュエータ30から荷重が掛けられた状態である。つまり、基板90の表面と各コンタクトラバースイッチ50の押しボタン部55の上面との間隔が、フリー状態でのスイッチ部材40のコンタクトラバースイッチ50の高さよりも短くなるように設定されている。詳しくは、各コンタクトラバースイッチ50において、外周裾部57が座屈して第1突部61の下面が基板90に当接し、さらに内周裾部63も外方向に弾性変形し始めている。第2突部71に形成された可動接点73は基板90の固定接点91に当接していない。
【0033】
この状態において、左側コンタクトラバースイッチ50Lに生じる反力は、図1(B)に示すグラフの点Aの付近に相当する。この点Aは、外周裾部57が座屈して第1突部61の下面が基板90に当接した後、内周裾部63が外方向に弾性変形し始めて反力が上昇し生じ始めた状態である。右側コンタクトラバースイッチ50Rも同様であり、反力は図1(C)のグラフの点Aの付近に相当する。この際、両コンタクトラバースイッチ50の反力は等しいので、各アクチュエータ30が等しい力で押し上げられてキートップ20は水平に保たれる。
【0034】
次に、図2を参照して、キートップ20の右側端部を押した状態(右オン状態)を説明する。
右オン状態では、左コンタクトラバースイッチ50Lにおいては、内周裾部63はフリーの姿勢に戻っているが、外周裾部57はやや外方向に張り出すように弾性変形した状態である。第1突部61の下面は基板90から離れている。一方、右コンタクトラバースイッチ50Rにおいては、内周裾部63も座屈して、第2突部71に形成した可動接点73が固定接点91に導通している。
【0035】
次に、左右のコンタクトラバースイッチ50の荷重・変形状態を説明する。
キートップ20の右側端部を押圧すると、キートップ20が図の時計方向に回動し、キートップ20の左側端部が上がる。これによって、左コンタクトラバースイッチ50Lにおいては、アクチュエータ30Lから押しボタン部55にかけられていた荷重が解除され、図2(B)に示すように、反力は中立状態の点Aから点Bへ戻るように変化する。つまり、まず、内周裾部63が元の形状に戻って反力が減少した後、座屈した外周裾部57が元の形状に戻り始めて再度反力が上昇する。この反力はピークを超えた後で減少していく。図2(A)に示す状態では、外周裾部57は外方向に湾曲するようにやや変形しており、反力はピークを超えた後の点Bの付近に相当する。
【0036】
一方、キートップ20が図の時計方向に回動すると、キートップ20の右側端部は下がる。これによって、右コンタクトラバースイッチ50Rにおいては、アクチュエータ30Rから押しボタン部55に荷重がかけられ、図2(C)に示すように、反力は中立状態の点Aから点Cへ向かうように変化する。つまり、まず、外周裾部57が変形し始めて反力がピークまで上昇した後で、外周裾部57が座屈し、反力が谷まで減少していく。この反力の変化によってクリック感が発生する。その後、反力は押しボタン部55の圧縮変形により上昇し始める。図2(A)に示す状態では、図2(C)のグラフの点Cの付近に相当する。点Cは、外周裾部57が完全に座屈して、反力が谷まで減少した後押しボタン部55の圧縮変形による反力が上昇し始めた状態に相当する。
【0037】
図2(B)、図2(C)に示すように、押圧された側の右コンタクトラバースイッチ50Rに生じる反力(図2(C)のグラフの点Cの荷重)は、その反対側の左コンタクトラバースイッチ50Lに生じる反力(図2(B)のグラフの点Bの荷重)よりも小さい。つまり、右アクチュエータ30Rを押し上げる力が、左アクチュエータ30Lを押し上げる力よりも小さいので、キートップ20は、押された側の右側端部が下方に傾斜した状態に維持される。
【0038】
図3は、キートップ20の左側端部を押した状態(左オン状態)を示す。
この状態は、前述の右オン状態の左右を入れ替えた状態であるので、説明を省略する。
【0039】
次に、右オン状態(図2参照)から中立状態(図1参照)を経て左オン状態(図3参照)へ切り替える動作について説明する。
図2に示す右オン状態において、キートップ20の左側端部を押すと、1回目のストロークでクリック感が得られて図1に示す中立状態となり、2回目のストロークでクリック感が得られて図3に示す左オン状態となる。
【0040】
1回目のストロークでは、スイッチ1は図2の状態から図1の状態へ移行する。この際、左コンタクトラバースイッチ50Lにおいては、キートップ20が図の反時計方向に回動する。これによって、アクチュエータ30Lから押しボタン部55に荷重がかけられ、第1突部61が基板90に当接する。この際、外周裾部57は変形し始めて反力が上昇した後で座屈して反力が減少する。この反力の差によって1回目のクリック感が得られる。
【0041】
一方、右コンタクトラバースイッチ50Rにおいては、アクチュエータ30Rから押しボタン部55にかけられていた荷重が解除される。これにより、内周裾部63が元の形状に戻って反力が減少した後、座屈した外周裾部57が元の形状に戻り始めて再度反力が上昇する。この反力は、右アクチュエータ30Rが押し上げてキートップ20を図の反時計方向にさらに回動させようとするが、左コンタクトラバースイッチ50Lに発生している反力と釣り合った時点で相殺される。その結果、左右のアクチュエータ30が等しい力で押し上げられるので、キートップ20は水平状態に維持される。
【0042】
2回目のストロークでは、スイッチ1は、図1の状態から図3の状態へ移行する。この移行時のコンタクトラバースイッチ50の挙動は、前述の右オン状態における挙動と同じであるので説明を省略する。
【0043】
以上の例では、右オン状態→中立状態→左オン状態の移行動作を示したが、左オン状態→中立状態→右オン状態においても同様の移行動作を示すので説明を省略する。
【0044】
次に、図9、図10を参照して、コンタクトラバースイッチ50の変形例を示す。いずれの例のスイッチも、図5で示したコンタクトラバースイッチと同等の作用・効果を有する。以下、図5のスイッチと異なる点を主に説明する。
【0045】
図9を参照してコンタクトラバースイッチ50の第1の変形例を説明する。図9(A)は平面図、図9(B)は図9(A)のA−A断面図、図9(C)は底面図である。
この例のコンタクトラバースイッチ50Aも、押しボタン部55と、押しボタン部55をベース部51に支持する外周(第1)裾部57とを有する。押しボタン部55の平面形状は、図9(A)に示すように円形である。
【0046】
押しボタン部55の下面には第1突部61と第2突部71とが形成されている。この例では、各図に示すように、第1突部61は、下面の中央に配置されており、第2突部71は、第1突部61と同心円状のリング状に配置されている。
【0047】
第1突部61は、図5(B)に示すように、押しボタン部55の厚さとほぼ同じ厚さの円柱状の部位である。押しボタン部55の中央には、退避孔56が開けられている。第1突部61は、この退避孔56内に内周(第2)裾部63によって押しボタン部55の下面から下方に突き出すように支持されている。
【0048】
第2突部71は、第1突部61の周囲の押しボタン部55の下面からやや下方に突き出したリング状の部位である。第2突部71の下面は、平面形状が円形の平坦な面である。図9(B)に示すように、第2突部71の下面は、第1突部61の下面よりも上方に位置する。
第1突部61及び第2突部71の下面には、各々可動接点62、73が形成されている。
【0049】
この例のスイッチは、第1突部61と第2突部71とを同心円状に配置したことによって、図5で示したスイッチに比べて、スイッチの平面寸法(径)を小さくできる。ただし、第2突部71の平面形状をリング状としているので、必要な接点面積は確保できる。
【0050】
図10を参照してコンタクトラバースイッチ50の第2の変形例を説明する。図10(A)は平面図、図10(B)は図10(A)のA−A断面図、図10(C)は図10(AのB−B断面図、図10(D)は底面図である。
この例のコンタクトラバースイッチ50Bも、押しボタン部55と、押しボタン部55をベース部51に支持する外周(第1)裾部57とを有する。押しボタン部の平面形状は円形である。
【0051】
この例では、押しボタン部55の下面に、3個の第1突部61と、1個の第2突部71とが形成されている。
第1突部61は、図10(C)に示すように、押しボタン部55の厚さとほぼ同じ厚さの円柱状の部位である。押しボタン部55には、等しい中心角度で3個の退避孔56が開けられている。第1突部61は、この退避孔56内に内周(第2)裾部63によって押しボタン部55の下面から下方に突き出すように支持されている。
【0052】
第2突部71は、押しボタン部55の下面の中央からやや下方に突き出している。第2突部71の下面は、平面形状が円形の平坦な面である。図10(B)、図10(C)に示すように、第2突部71の下面は、第1突部61の下面よりも上方に位置する。
第1突部61及び第2突部71の下面には、各々可動接点62、73が形成されている。
【0053】
この例のように、可動接点62、73の位置や個数を選択できるので、基板の設計自由度を高めることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 スイッチ
10 支持部材 11 回動支点
13 上凹部 14 下凹部
15 貫通孔
20 キートップ
30 アクチュエータ 31 軸部
32 平板部
40 スイッチ部材
50 コンタクトラバースイッチ 51 ベース部
52 開口 55 押しボタン部
56 退避孔 57 外周(第1)裾部
61 第1突部 62 可動接点
63 内周(第2)裾部
71 第2突部 73 可動接点
90 基板 91 固定接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転支点に対して揺動可能に支持されたキートップと、
前記キートップの両端部の各々によって押し下げられる、左右一対の2段式のコンタクトラバースイッチと、
を備え、
前記キートップの揺動状態に応じて、中立、左コンタクトラバースイッチオン及び右コンタクトラバースイッチオンの3状態を取りうることを特徴とするシーソーロッカーキー。
【請求項2】
前記コンタクトラバースイッチの荷重−変位特性カーブが2つのピークと2つの谷を有し、
前記中立状態においては、前記左右一対のラバースイッチが、前記2つのピーク間の谷の近傍の特性位置にあり、
前記左オン及び右オン状態においては、オン側の前記ラバースイッチが大変位側の谷の近傍の特性位置にあり、反対側の前記ラバースイッチが小変位側のピークの近傍の特性位置にあり、
このとき、前記オン側のラバースイッチの反力が前記反対側のラバースイッチの反力より小さいことを特徴とする請求項1に記載のシーソーロッカーキー。
【請求項3】
前記コンタクトラバースイッチが、
ベース部と、
前記キートップの端部によって押圧される押しボタン部と、
前記押しボタン部を前記ベース部に対して変位可能に支持する、弾性変形可能な第1裾部と、
前記押しボタン部から下方に突き出た第1突部と、
前記第1突部を前記押しボタン部に対して変位可能に支持する、弾性変形可能な第2裾部と、
下面に可動接点が形成され、該下面が前記第1突部の下面より押圧方向において上方に位置する第2突部と、
を備え、
1段目のストロークによって、前記第1裾部の弾性変形によるクリック感が得られるとともに、前記第1突部が前記基板に当接し、
2段目のストロークによって、前記第2裾部の弾性変形によるクリック感が得られるとともに、前記第2突部が前記基板に当接することを特徴とする請求項1又は2に記載のシーソーロッカーキー。
【請求項4】
前記中立状態においては、前記コンタクトラバースイッチの各々の第1突部が前記基板に当接しているとともに、該ラバースイッチの各々の反力が前記キートップの両端部にかかっており、
前記左オン又は右オン状態においては、オン側ラバースイッチの第1突部とともに第2突部が基板に当接し、反対側ラバースイッチの反力により該反対側ラバースイッチの第1突部が前記基板から離れていることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のシーソーロッカーキー。
【請求項5】
前記片側オン状態から、前記キートップの反オン側端部を押圧すると、
押圧側ラバースイッチにおいては、前記押しボタン部が押し下げられて前記第1突部が前記基板に当接し、反押圧側ラバースイッチにおいては、前記第2裾部の反力によって前記押しボタン部が押し上げられて前記第2突部が前記基板から離れ、
これにより前記中立状態に戻り、
続いて前記キートップの反オン側端部を押圧すると、
押圧側ラバースイッチにおいては、前記押しボタン部が押し下げられて前記第2突部が前記基板に当接し、反押圧側ラバースイッチにおいては、前記第1裾部の反力によって前記押しボタン部が押し上げられて前記第1突部が前記基板から離れ、
これにより反対側オン状態となることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシーソーロッカーキー。
【請求項6】
前記押しボタン部の下面(前記基板と向き合う面)の平面形状が円形であるとともに、前記第1裾部が前記ベース部に向かって広がるスカート状であり、
前記第1突部の下面(前記基板と向き合う面)の平面形状が円形であるとともに、前記第2裾部が前記押しボタン部へ向かって広がるスカート状であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のシーソーロッカーキー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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