説明

シートフレーム及び車両用シート

【課題】十分な強度を確保しつつ軽量化を図ることができるシートフレーム及びシートを提供する。
【解決手段】本発明は、シート1の背もたれ部を構成するシートフレーム10であって、シート1のヘッドレスト部Hが取り付けられるヘッドレスト取付部12と、シート1の背もたれ部2と着座部3とを連結する連結部Rが取り付けられる連結部取付部13と、ヘッドレスト取付部12と連結部取付部13とを直線的に結ぶ第1の梁22と、を備える。このシートフレーム10によれば、ヘッドレスト取付部12と連結部取付部13との間を直線的に結ぶ第1の梁22を設けることで、少ない材料で非常に効率良くシートフレーム10の強度を確保することができる。また、材料の削減により、シートフレーム10の軽量化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの背もたれ部を構成するシートフレーム及びそのシートフレームを用いた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
シートフレームは、シートの形状を保つ基盤となる構造物である。シートフレームは、シートに着座する人間及びシート自体の荷重を受けるため、適切な強度,剛性が必要であり、鉄など金属から形成されることが一般的である。下記の非特許文献1には、パイプフレーム構造やロールフレーム構造等、矩形状の枠をベースとする従来形状のシートフレームが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】自動車技術会編,新編自動車工学ハンドブック,日本,図書出版社,1989年7月25日発行,第10版,第9編,第56項
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では市場の要求によりシートの更なる軽量化が求められている。前述した従来形状のシートフレームには軽量化について未だ改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明は、十分な強度を確保しつつ軽量化を図ることができるシートフレーム及び車両用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のシートフレームは、車両用シートの背もたれ部を構成するシートフレームであって、シートのヘッドレスト部が取り付けられるヘッドレスト取付部と、シートの着座部と背もたれ部とを連結する連結部が取り付けられる連結部取付部と、ヘッドレスト取付部と連結部取付部とを直線的に結ぶ第1の梁と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明のシートフレームは、シートのアームレスト部が取り付けられるアームレスト取付部と、ヘッドレスト取付部とアームレスト取付部とを直線的に結ぶ第2の梁と、を更に備えてもよい。また、本発明のシートフレームは、背もたれ部を着座部に対して折り畳み自在に支持する回転軸部が取り付けられる回転軸取付部と、ヘッドレスト取付部と回転軸取付部とを直線的に結ぶ第3の梁と、を更に備えてもよい。
【0008】
また、本発明のシートフレームは、第1の梁と一体的に形成され、シートのクッション材を支持するクッション材支持部を備えてもよい。また、第1の梁は、ヘッドレスト取付部と連結部取付部とを直線的に結ぶ複数の主梁と、複数の主梁の間を連結する複数の副梁と、を有してもよい。
【0009】
また、第1の梁は、23℃における引張破壊応力が70MPa以上かつ23℃における引張弾性率が2500MPa以上である所定の材料で形成されてもよい。また、第1の梁は、温度80℃における引張破壊応力が70MPa以上かつ温度80℃における曲げ弾性率が2500MPa以上である所定の材料で形成されてもよい。
【0010】
また、上記所定の材料は、金属であってもよい。また、上記所定の材料が、樹脂成分を含むこととしてもよい。
【0011】
また、本発明の車両用シートは、上述の何れかのシートフレームを備える車両用シートである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るシートフレーム及び車両用シートによれば、十分な強度を確保しつつ軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るシートフレームを実線で示すと共にシートを仮想線で表した正面図である。
【図2】本発明に係るシートフレームを示す正面図である。
【図3】シートフレームを示す背面図である。
【図4】シートフレームを示す平面図である。
【図5】シートフレームを示す斜視図である。
【図6】シートフレームを示す右側面図である。
【図7】シートフレームを示す斜視図である。
【図8】シートフレームを示す左側面図である。
【図9】評価試験に係るシートフレームの形状を示す斜視図である。
【図10】評価試験について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図面における寸法、形状、構成要素間の大小関係は実際のものとは必ずしも同一ではない。
【0015】
図1に示されるように、本発明に係るシートとして、本実施形態では自動車の後部座席に備えられる車両用リアシート1を例に説明を行う。図1に向かってシート1の右側(シート1に着座した乗員から見て左側)には他のリアシートが配置されており、図1に向かってシート1の左側(シート1に着座した乗員から見て右側)には車両のボディが位置している。以後、左右については図1を基準として説明する。
【0016】
シート1は、乗員の背中を支える背もたれ部2と乗員が着座する着座部3とから構成されている。背もたれ部2には、着座した乗員の頭部を支えるヘッドレスト4及び乗員の腕を支えるアームレスト5が取り付けられている。このシート1は、背もたれ部2が着座部3に対して折り畳み自在に構成された折り畳み式シートである。背もたれ部2は、連結部材6及び回転軸7によって折り畳み自在に支持されている。
【0017】
連結部材6は、右側から背もたれ部2を支持する部材である。連結部材6は、背もたれ部2側に連結される第1連結部6Aと、着座部3側に連結される第2連結部6Bと、第1連結部6A及び第2連結部6Bを回転自在に連結する回転機構8と、から構成されている。連結部材6は、回転機構8を備えることで背もたれ部2を折り畳み自在に支持している。
【0018】
回転軸7は、左側から背もたれ部2を支持する部材である。回転軸7の基端側は、車両のボディに固定されている。回転軸7は、先端側が背もたれ部2に回転自在に取り付けられることで、背もたれ部2を折り畳み自在に支持している。また、背もたれ部2には、乗員の着座時に折り畳みを防止するためのストッパ機構(図示せず)が設けられている。
【0019】
背もたれ部2は、主要骨格となるシートフレーム10に、クッション材やシートカバーなどが配置されて構成される。以下、シートフレーム10の構造について詳細に説明する。
【0020】
図2に示されるように、シートフレーム10は、クッション材支持部11、ヘッドレスト取付部12、連結部取付部13、アームレスト取付部14、及び回転軸取付部15を有する部材である。
【0021】
図2及び図3に示されるように、シートフレーム10は、板状のクッション材支持部11を有している。クッション材支持部11は、背もたれ部2のクッション材を支持するための部材である。クッション材支持部11は、略矩形板状に形成されている。本実施形態に係るクッション材支持部11の厚みは約2mmである。
【0022】
クッション材支持部11は、ヘッドレスト4側に位置する上部支持部11aと、着座部3側に位置する下部支持部11bと、上部支持部11a及び下部支持部11bの間に形成された段差部11cと、から構成されている。上部支持部11aは、段差部11cを介して下部支持部11bより車両後側に位置している。
【0023】
上部支持部11aの右肩には、車両前方に突出したボックス部11dが形成されている。上部支持部11aの上端には、ヘッドレスト取付部12からボックス部11dにかけて壁部11eが形成されている。壁部11eは、上部支持部11aの上縁に沿って形成されている。下部支持部11bの下端には、連結部取付部13と回転軸取付部15との間で連続する壁部11fが形成されている。
【0024】
図1〜図5に示されるように、ヘッドレスト取付部12は、クッション材支持部11と一体に形成された中空柱状の部位である。ヘッドレスト取付部12は、クッション材支持部11の上部支持部11aに設けられており、ヘッドレスト部Hが取り付けられる。ヘッドレスト部Hは、ヘッドレスト4とヘッドレスト4の二本の脚を保持する脚保持部材16A,16Bとから構成される部位である。
【0025】
ヘッドレスト取付部12は、二つの脚保持部材16A,16Bに対応する二つの部位12A,12Bから構成されている。また、ヘッドレスト取付部12の背面には、開口部12a、12bが設けられている。ヘッドレスト取付部12とボックス部11dとの間には横方向に延びる横梁11gが形成されている。
【0026】
脚保持部材16A,16Bは、例えば樹脂からなる筒状部材である。脚保持部材16A,16Bは、拡大された頭頂部を有しており、頭頂部以外の部分は中空のヘッドレスト取付部12内に入り込んでいる。脚保持部材16A,16Bの頭頂部には、ヘッドレスト4の脚が差し込まれる差し込み穴16a,16bが形成されている。
【0027】
図1,図2,図5,及び図6に示されるように、連結部取付部13は、クッション材支持部11と一体に形成された部位である。連結部取付部13は、クッション材支持部11の下部支持部11bの右側に設けられており、連結部Rが取り付けられる。連結部Rは、連結部材6と連結部材6をボルト止めするための金属製のボルト止め部17とから構成される部位である。この連結部Rによってシート1の着座部3と背もたれ部2とが連結されている。
【0028】
ボルト止め部17には、二つのボルト穴17a,17bが形成されており、連結部材6は二本のボルトによってボルト止め部17に確実に固定される。このボルト止め部17は、連結部取付部13の内部に固定されている。
【0029】
図2,図5,図7に示されるように、ヘッドレスト取付部12と連結部取付部13との間には、シートフレーム10の強度を確保するための第1の梁22が形成されている。第1の梁22は、ヘッドレスト取付部12及び連結部取付部13を直線的に結ぶ帯状の部位である。第1の梁22はクッション材支持部11と一体に形成されている。第1の梁22は、クッション材支持部11の前面から隆起した突条部位として形成されている。
【0030】
第1の梁22は、直線状の梁を複数有する略格子状の梁として形成されている。第1の梁22は、主梁23〜26、第1の副梁27〜29、及び第2の副梁30を有している。
【0031】
主梁23〜26は、ヘッドレスト取付部12及び連結部取付部13を直線的に結ぶ直線梁である。主梁23〜26は、シートフレーム10に設けられる直線梁の中でも厚く形成される。本実施形態に係る主梁23〜26の厚さは約5mmである。主梁23〜26の厚さはクッション材支持部11の厚さよりも大きく形成されている。主梁23〜26は、ヘッドレスト取付部12の上側と連結部取付部13とを結ぶように形成されている。具体的には、主梁23〜26のうち最も右側に位置する主梁23は、ヘッドレスト取付部12Bと連結部取付部13とを直線的に結んでいる。主梁23以外の主梁24〜26は、ヘッドレスト取付部12Aと連結部取付部13とを直線的に結んでいる。
【0032】
第1の副梁27〜29は、主梁23〜26の間を連結する直線梁である。第1の副梁27〜29は、主梁23〜26との連結箇所が集中するように形成されている。第1の副梁27〜29は、ヘッドレスト取付部12から連結部取付部13に近づくほど、厚くなるように形成されている。本実施形態に係る第1の副梁27〜29の厚さは2mm〜5mmである。第1の副梁27〜29の厚さは主梁23〜26の厚さよりも小さく形成されている。
【0033】
第2の副梁30は、シートフレーム10の中心付近を覆うように設けられた直線梁である。第2の副梁30は、主梁23〜26のうち最も左側に位置する主梁26に沿って形成されている。
【0034】
図1,図2,図7,図8に示されるように、アームレスト取付部14は、クッション材支持部11と一体に形成された部位である。アームレスト取付部14は、クッション材支持部11の下部支持部11bの左側に設けられており、アームレスト部Wが取り付けられる。アームレスト部Wは、アームレスト5とアームレスト5をボルト止めするための金属製のボルト止め部31とから構成される部位である。ボルト止め部31には、アームレスト5を固定するためのボルト穴31a及び係合突起31bが形成されている。
【0035】
回転軸取付部15は、クッション材支持部11と一体に形成された部位である。回転軸取付部15は、クッション材支持部11の下部支持部11bの左側でアームレスト取付部14bの下に設けられており、回転軸部Tが取り付けられる。回転軸部Tは、折り畳み用の回転軸7と回転軸7を回転自在に支持する金属製の軸支持部33とから構成される部位である。軸支持部33の取付穴15aには、回転軸7を支持する軸受けが設けられており、回転軸7は軸支持部33に対して回動自在に支持される。この回転軸部Tは、シート1の背もたれ部2を着座部3に対して折り畳み自在に支持している。
【0036】
図2,図5,図7に示されるように、ヘッドレスト取付部12とアームレスト取付部14との間には、第2の梁35が形成されている。第2の梁35は、アームレスト取付部14に加わる加重に対して強度を確保するためのものである。第2の梁35は、ヘッドレスト取付部12及びアームレスト取付部14を直線的に結ぶ帯状の部位である。第2の梁35は、クッション材支持部11と一体に形成されている。第2の梁35は、クッション材支持部11の前面から隆起した突条部位として形成されている。本実施形態に係る第2の梁35の厚さは2mm〜3mmである。第2の梁35の厚さは第1の梁22主梁23〜26の厚さよりも小さく形成されている。
【0037】
第2の梁35は、主梁36、副梁37、及びL字梁38から構成されている。主梁36は、ヘッドレスト取付部12Aとアームレスト取付部14とを結ぶ直線梁である。
【0038】
副梁37は、主梁36を補強するように設けられている。副梁37は、第1の梁22の主梁26とアームレスト取付部14の上端と直線的に結んでいる。副梁37は、主梁36の中央付近と交差している。L字梁38は、クッション材支持部11の左肩部を補強するように設けられている。L字梁38は、ヘッドレスト取付部12Aから左側に突出する横梁38aと、横梁38aから下方に屈曲して副梁37に接続する縦梁38bと、から構成されている。
【0039】
第2の梁35の下方には、アームレスト取付部14と回転軸取付部15とを連結する連結梁39が形成されている。連結梁39は、複数の直線梁から構成されている。連結梁39は、クッション材支持部11と一体に形成されている。連結梁39の一部は、アームレスト取付部14及び回転軸取付部15の右側面を囲うように形成されている。連結梁39は、クッション材支持部11の前面から隆起した突条部位として形成されている。本実施形態に係る連結梁39の厚さは約2mmである。
【0040】
この連結梁39と第2の梁35とは、ヘッドレスト取付部12と回転軸取付部15とを直線的に結ぶ第3の梁40を構成する。第3の梁40は、シートフレーム10に加わる荷重を回転軸取付部15の回転軸7に伝達しやすくする。
【0041】
以上説明した本実施形態に係るシートフレーム10によれば、ヘッドレスト4に加わる荷重を支えるヘッドレスト取付部12と着座部側に荷重を伝達する連結部取付部13との間を直線的に結ぶ第1の梁22を設けることで、少ない材料で非常に効率良くシートフレーム10の強度を確保することができる。しかも、このシートフレーム10では、第1の梁22により効率的に強度を確保できるので、補強部材の数を少なくすることができ、シートフレーム10の軽量化が図られる。従って、このシートフレーム10によれば、十分な強度を確保しつつ大幅な軽量化を図ることができる。
【0042】
また、シートフレーム10では、クッション材支持部11と第1の梁22と一体的に形成されており、このような場合には、別々に形成する場合と比べてシートフレーム10の強度向上が図られる。同様に、このシートフレーム10では、第2の梁35及び第3の梁40もクッション材支持部11と一体的に形成されており、シートフレーム10の強度向上に有利である。
【0043】
このシートフレーム10では、ヘッドレスト取付部12とアームレスト取付部14とを直線的に結ぶ第2の梁35を備えているので、少ない材料でアームレスト5に対する十分な強度を確保することができる。
【0044】
このシートフレーム10では、ヘッドレスト取付部12と回転軸取付部15とを直線的に結ぶ第3の梁40を備えることで、シートフレーム10の荷重を効率良く回転軸7に伝達することができ、荷重の分散によるシートフレーム10の強度向上を図ることができる。
【0045】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0046】
第1〜第3の梁22,35,40の形状は上述したものに限られない。第1の梁22は必ずしも複数の直線梁から構成する必要はなく、また第1の梁22を複数の直線梁から構成した場合であっても上述した本数や連結状態に限られない。また、第1〜第3の梁が曲線状の梁を備えることを妨げない。
【0047】
第2の梁35及び第3の梁40は必ずしも設ける必要はなく、アームレスト5の有無や背もたれ部2の支持状態などにより必要な場合に設けられる。また、第3の梁40は、必ずしも第2の梁35を兼用する必要はなく、別々に設けられていても良い。
【0048】
クッション材支持部11は、必ずしも略矩形板状に形成される必要はない。クッション材支持部11は、軽量化のための穴が複数形成されていても良く、多数の穴を有する網状に構成されていても良い。
【0049】
本実施形態に係る車両用シート1は、以上説明したシートフレーム10を備えているので、十分な強度を確保しつつ大幅な軽量化を図ることができる。
【0050】
シートフレーム10は、全体を金属製としてもよい。また、シートフレーム10は、特に強度が要求される第1の梁22のみを金属製とし、他部を金属よりも軽量な材料とすることもできる。この構成によれば、シートフレーム10の軽量化を図ることができる。また、シートフレーム10全体を樹脂製とすることは好ましい態様である。この構成によれば、シートフレーム10の軽量化とともに、一体成形による生産性の向上をも図ることができる。
【0051】
第1の梁22の材料は、ISO527の引張試験において23℃における引張破壊応力が70MPa以上であることが好ましい。この構成により、ヘッドレスト4に特定の耐用荷重を加えた際に破壊しないシートフレーム10を得ることができる。更に加えて、第1の梁22の材料は、ISO527の引張試験において23℃における引張弾性率が2500MPa以上であることが好ましい。この構成により、ヘッドレスト4に特定の耐用荷重を加えた際のシートフレーム10の変形量を所望範囲内に抑えることができる。第1の梁22の材料がこれらの引張破壊応力と引張弾性率との特性を満足することで、常温(23℃)におけるシートフレーム10の必要な強度及び剛性が確保される。
【0052】
更に、第1の梁22を形成する材料は、ISO527の引張試験において80℃における引張破壊応力が70MPa以上であり、ISO527の引張試験において80℃における引張弾性率が2500MPa以上であることが好ましい。第1の梁22の材料がこれらの特性を更に満足することで、80℃の高温環境下においてもシートフレーム10の必要な強度及び剛性が更に確保される。よってこの場合、シートフレーム10は、高温時の強度及び剛性も要求される車両用シートフレームとして好適に用いることができる。
【0053】
なお、第1の梁22が金属製であれば、上述の23℃及び80℃における引張破壊応力及び引張弾性率の特性は、比較的容易に満足される。第1の梁22を樹脂製とする場合には、前述の引張破壊応力及び引張弾性率の特性を満足する樹脂材料を選択すればよい。
【0054】
第1の梁22の材料となる樹脂材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、熱可塑性エラストマー等様々な樹脂が挙げられる。特にポリアミド66が望ましい。
【0055】
また、耐熱性、機械的強度等をアップする目的で、必要に応じて無機または有機の充填材を樹脂に配合することができる。好適な充填材としては、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、アラミド繊維、チタン酸カリウム、アスベスト、炭化ケイ素、セラミック、窒化ケイ素、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、セリサイト、ゼオライト、マイカ、雲母、ネフェリンシナイト、タルク、アタルパルジャイト、ウオラストナイト、PMF、フェライト、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化鉄、二流化モリブデン、黒鉛、石膏、ガラスビーズ、ガラスバルーン、石英、石英ガラス等の強化充填材を挙げることができる。また、これらの強化充填材は2種以上を併用することが可能であり、必要によりシラン系、チタン系等のカップリング剤で予備処理して使用する事ができる。特にガラス繊維又は炭素繊維を充填材として用いることが好ましい。
【0056】
また、望ましい樹脂材料と充填材の組み合わせとしては、ポリアミド66にガラス繊維30〜50重量%含有させたものが挙げられる。
【0057】
上述のような樹脂材料及び充填材から、前述の引張破壊応力及び引張弾性率の特性を満足する樹脂材料を、第1の梁22の材料として選択すればよい。また、第2の梁35及び第3の梁40を形成する材料についても、第1の梁22と同様に材料を選択することができる。
【0058】
なお、非特許文献1に示すような構造の従来のシートフレームの材料を樹脂化しようとすれば、必要な強度及び剛性を確保するために、大量の樹脂が必要となるところ、シートフレーム10の形状によれば、少量の樹脂によって強度及び剛性を確保することができる。
【0059】
また、樹脂成形において部材の厚肉化は好ましくないことから、特に、第1の梁22を樹脂製とする場合には、第1の梁22を圧肉化する代わりに複数の主梁23〜26及び副梁27〜29からなる略格子状の構成とすることで、各梁の厚みを一定値以下に抑えつつシートフレーム10の強度向上を実現することができる。
【0060】
本発明は、自動車用のリアシートに限定されるものではなく、あらゆる座席シートに対して適用することができる。具体的には、本発明は自動車用であれば運転席シートや助手席シートなどにも適用できる。更には、本発明は列車やパーソナルモビリティなどの自動車以外の車両の座席シートにも適用できる。
【実施例1】
【0061】
以下、本実施形態に係るシートフレームに関する実施例について説明する。実施例では、図9に示す形状のシートフレーム50について評価試験を行った。
【0062】
まず、シートフレーム50について説明する。シートフレーム50は、上述したシートフレーム10を簡素化したモデルである。図9に示されるように、シートフレーム50は、多数の丸穴メッシュを有するクッション材支持部51、ヘッドレスト4が取り付けられるヘッドレスト取付部52、連結部材6が取り付けられる連結部取付部53、アームレスト5が取り付けられるアームレスト取付部54、及び回転軸7が取り付けられる回転軸取付部55を有している。各部材の機能は、上述したシートフレーム10の各部と同様であるため説明を省略する。クッション材支持部51の厚さは0.7mmである。
【0063】
シートフレーム50のクッション材支持部51上には、ヘッドレスト取付部52と連結部取付部53とを直線的に結ぶ第1の梁56、ヘッドレスト取付部52とアームレスト取付部54とを直線的に結ぶ第2の梁57、ヘッドレスト取付部52と回転軸取付部55とを直線的に結ぶ第3の梁58が形成されている。第1の梁56、第2の梁57、及び第3の梁58は、上述したシートフレーム10における第1の梁22、第2の梁35、及び第3の梁40に対応する。
【0064】
第1の梁56、第2の梁57、及び第3の梁58は、断面矩形状の中空管により構成されている。第1の梁56の断面は、高さ45mm、幅55mm、厚さ1mmの矩形状である。また、第2の梁57及び第3の梁58の断面は、高さ20mm、幅20mm、厚さ1mmの矩形状である。シートフレーム50の全体寸法は、高さ50cm、幅45cm、厚さ100mmである。
【0065】
(実施例1)
実施例1では、シートフレーム50のクッション材支持部51、第1の梁56、第2の梁57、及び第3の梁58の材料として鉄を採用した。第1の梁56、第2の梁57、及び第3の梁58は鉄パイプにより形成した。
【0066】
(実施例2)
実施例2では、シートフレーム50のクッション材支持部51、第1の梁56、第2の梁57、及び第3の梁58の材料として樹脂を採用した。樹脂材料には、ガラスファイバーを30%含有したPA(ポリアミド)66を使用した。
【0067】
(実施例3)
実施例3では、シートフレーム50のクッション材支持部51、第1の梁56、第2の梁57、及び第3の梁58の材料として樹脂を採用した。樹脂材料には、ガラスファイバーを30%含有したPP(ポリプロピレン)を使用した。
【0068】
(比較例)
比較例として、クッション材支持部51に相当する鉄プレートの外縁を鉄パイプで囲った従来形状のシートフレームを作成した。
【0069】
以上の実施例1〜3及び比較例について、図10に示すように、シートフレーム50にヘッドレスト4を取り付けた状態で、矢印Nが示すヘッドレスト4の中心に荷重を加えた。この荷重を加える試験は、23℃(常温)の環境下と、80℃の環境下においてそれぞれ行った。矢印Nの位置はシートフレーム10の上端から上方に150mmである。荷重はシートフレーム10に平行な線Vに対して垂直に加えている。ヘッドレスト4に加えた荷重は800Nである。表1に評価結果を示す。
【表1】

【0070】
以下、表1に示す評価について説明する。常温破壊については、破壊した場合を「×」、破壊しなかった場合を「○」として評価した。常温変形については、ヘッドレスト4の移動量が90mmを超えた場合を「×」、90mm以下の場合を「○」として評価した。なお、移動量とは、ヘッドレスト4が後方にたわんだ変位の量であって、線Vと同方向についてのヘッドレストの移動距離を指す。
【0071】
80℃環境下における破壊ついても、破壊した場合を「×」、破壊しなかった場合を「○」として評価した。80℃環境下における変形についても、ヘッドレスト4の移動量が90mmを超えた場合を「×」、90mm以下の場合を「○」として評価した。
【0072】
製品質量については、比較例より5%以上の軽量化が図られた場合を「○」、15%以上の軽量化が図られた場合を「◎」として評価した。
【0073】
以上の通り、本発明相当形状のシートフレームによれば、従来形状のシートフレームに比較して軽量化が図られ、かつ、破壊強度及び剛性も維持される。
【符号の説明】
【0074】
1…シート 2…背もたれ部 3…着座部 4…ヘッドレスト 5…アームレスト 6…連結部材 7…回転軸 8…回転機構 10…シートフレーム 11…クッション材支持部 12…ヘッドレスト取付部 13…連結部取付部 14…アームレスト取付部 15…回転軸取付部 16,17…脚保持部材 18,19…保持部材固定部 22…第1の梁 23-26…主梁 27-29…第1の副梁 30…第2の副梁 35…第2の梁 36…主梁 37…副梁 38…L字梁 39…連結梁 40…第3の梁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートの背もたれ部を構成するシートフレームであって、
前記シートのヘッドレスト部が取り付けられるヘッドレスト取付部と、
前記シートの着座部と前記背もたれ部とを連結する連結部が取り付けられる連結部取付部と、
前記ヘッドレスト取付部と前記連結部取付部とを直線的に結ぶ第1の梁と、
を備えることを特徴とするシートフレーム。
【請求項2】
前記シートのアームレスト部が取り付けられるアームレスト取付部と、
前記ヘッドレスト取付部と前記アームレスト取付部とを直線的に結ぶ第2の梁と、
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のシートフレーム。
【請求項3】
前記背もたれ部を前記着座部に対して折り畳み自在に支持する回転軸部が取り付けられる回転軸取付部と、
前記ヘッドレスト取付部と前記回転軸取付部とを直線的に結ぶ第3の梁と、
を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のシートフレーム。
【請求項4】
前記第1の梁と一体的に形成され、前記シートのクッション材を支持するクッション材支持部を備えていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のシートフレーム。
【請求項5】
前記第1の梁は、
前記ヘッドレスト取付部と前記連結部取付部とを直線的に結ぶ複数の主梁と、
前記複数の主梁の間を連結する複数の副梁と、を有していることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のシートフレーム。
【請求項6】
前記第1の梁は、
23℃における引張破壊応力が70MPa以上かつ23℃における引張弾性率が2500MPa以上である所定の材料で形成されることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のシートフレーム。
【請求項7】
前記第1の梁は、
温度80℃における引張破壊応力が70MPa以上かつ温度80℃における曲げ弾性率が2500MPa以上である所定の材料で形成されることを特徴とする請求項6の何れか1項に記載のシートフレーム。
【請求項8】
前記所定の材料が、金属であることを特徴とする請求項6又は7に記載のシートフレーム。
【請求項9】
前記所定の材料が、樹脂成分を含むことを特徴とする請求項6又は7に記載のシートフレーム。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか1項に記載のシートフレームを備えることを特徴とする車両用シート。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate