説明

シートベルトのタングプレートの収納構造

【課題】第1タングプレートと第2タングプレートを確実に保持することができる構造でありながら、部品点数を少なくすることができ、構造を簡素化することができるシートベルトのタングプレートの収納構造を提供する。
【解決手段】リトラクタ10にシートベルト20が巻き取られ、シートベルト20の先端側の第1タングプレート22と、シートベルト20のウェビング21に摺動可能に外挿された第2タングプレート33とが車室内の内装材5側の収納凹部11に収納されるシートベルトのタングプレートの収納構造であって、収納凹部11に形成された係合部50に第1タングプレート22の先端部が係合し、巻き取り力で緊張したシートベルト20のウェビング21が収納凹部11の周壁の第1壁部11Nとの間に第2タングプレート33を挟み込んで保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
車体に支持されたリトラクタにシートベルトが巻き取られ、前記シートベルトの先端側の第1タングプレートと、前記シートベルトのウェビングに摺動可能に外挿されて前記第1タングプレート側に寄せられた第2タングプレートとが車室内の内装材側の収納凹部に収納されるシートベルトのタングプレートの収納構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記のシートベルトのタングプレートの収納構造では、特許文献1に開示されているように、内装材としてのルーフライニング内にタングプレートの収納空間を設け、この収納空間内で板ばねを下部フレーム部材に取り付け、板ばねと上部フレーム部材の間に第1タングプレートと第2タングプレートを挟み込んで保持するよう構成してあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−331909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の構造によれば、板ばねの弾性力を利用して第1タングプレートと第2タングプレートを保持することができるものの、ルーフライニング内の収納空間に板ばねを別途設けなければならない為、部品点数が増加するとともに、タングプレートの収納構造が複雑になっていた。
本発明の目的は、第1タングプレートと第2タングプレートを確実に保持することができる構造でありながら、部品点数を少なくすることができ、構造を簡素化することができるシートベルトのタングプレートの収納構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特徴は、
車体に支持されたリトラクタにシートベルトが巻き取られ、前記シートベルトの先端側の第1タングプレートと、前記シートベルトのウェビングに摺動可能に外挿されて前記第1タングプレート側に寄せられた第2タングプレートとが車室内の内装材側の収納凹部に収納されるシートベルトのタングプレートの収納構造であって、
前記収納凹部に形成された係合部に前記第1タングプレートの先端部が前記リトラクタの巻き取り力に抗して係合し、
前記巻き取り力によって前記シートベルトのウェビングが緊張した状態で、前記ウェビング又は前記第1タングプレートが前記収納凹部の周壁の第1壁部との間に前記第2タングプレートを挟み込んで保持する点にある。(請求項1)
【0006】
上記の構成により、前記収納凹部に形成された係合部に第1タングプレートの先端部がリトラクタの巻き取り力に抗して係合し、前記巻き取り力によってシートベルトのウェビングが緊張した状態で、ウェビング又は第1タングプレートが収納凹部の周壁の第1壁部との間に第2タングプレートを挟み込んで保持する。
つまり、リトラクタの巻取り力を利用して、第1タングプレートと第2タングプレートをシートベルトのウェビング又は第1タングプレートと収納凹部の周壁の第1壁部とで挟み込んで保持することで、第1タングプレートと第2タングプレートを確実に保持することができる。
このようにして第1タングプレートと第2タングプレートを保持するから、第1タングプレートと第2タングプレートを保持するための板ばねや鉄クリップ、磁石などを不要にできるとともに、フェルト等のラトル音防止部品の追加を不要にすることができて部品点数を少なくすることができ、収納構造を簡素化することができる。(請求項1)
【0007】
本発明において、
前記内装材はルーフライニングであり、
前記ルーフライニングにタングプレート収納カバーが取り付けられ、
前記タングプレート収納カバーに前記収納凹部が上方に凹む状態に形成されていると、ルーフライニングに収納凹部を形成しなくても済み、前記収納凹部を形成するためのルーフライニングの大幅な改造が不要になって、製作コストを低廉化することができる(請求項2)。
【0008】
本発明において、
前記第1タングプレートの先端部に係合孔が形成され、
前記係合部は、前記収納凹部の上側収納壁部に形成されたタングプレート差し込み孔と、前記タングプレート差し込み孔への前記第1タングプレートの先端部の差し込み状態で前記係合孔に弾性係合する係合突起とから成ると、第1タングプレートの先端部の係合状態をより安定化することができる。しかも、係合突起は係合孔に弾性係合するから、係合部に対する第1タングプレートの先端部の係脱作業を簡単化することができる(請求項3)。
【0009】
本発明において、
前記収納凹部は前記第1壁部に対向する第2壁部を備え、
前記第1壁部と第2壁部は上端部同士が前記上側収納壁部を介して連結され、
前記タングプレート差し込み孔よりも前記第2壁部側の上側収納壁部部分に前記係合突起が設けられていると、次の作用を奏することができる。(請求項4)
【0010】
第1タングプレートの先端部がタングプレート差し込み孔に差し込まれるとともに、係合突起が第1タングプレートの先端部の係合孔に弾性係合し、リトラクタの巻き取り力がシートベルトのウェビングに加わる。そして、前記巻き取り力によってシートベルトのウェビングが緊張した状態で、ウェビング又は第1タングプレートが収納凹部の周壁の第1壁部との間に第2タングプレートを挟み込んで保持する。
この場合、第1タングプレートの先端部は前記巻き取り力によって、前記第2壁部側の上側収納壁部部分に圧接させられる。本発明の上記構成によれば、前記第2壁部側の上側収納壁部部分に前記係合突起が設けられているから、第1タングプレートの先端部が前記巻き取り力によって、前記第2壁部側の上側収納壁部部分に圧接させられることで、係合突起の前記係合孔への係合力を強くすることができ、係合突起と係合孔の係合状態を安定化することができる。(請求項4)
【0011】
本発明において、
前記タングプレート差し込み孔は前記第1壁部の幅方向に長い長方形状に形成され、
前記タングプレート差し込み孔の周部から前記上側収納壁部の上方に突出する長方形環状のフランジが前記上側収納壁部に設けられ、
前記第1壁部の幅方向に沿う一対のフランジ部分のうち、前記第2壁部側のフランジ部分に前記係合突起が設けられていると、次の作用を奏することができる。(請求項5)
【0012】
前記上側収納壁部に設けられたフランジで第1タングプレートの先端部を支持することで、第1タングプレートの姿勢を安定化することができる。そして、前記第1壁部の幅方向に沿う一対のフランジ部分のうち、前記第2壁部側のフランジ部分に前記係合突起が設けられているから、係合突起を支持するための支持部を新たに設ける必要がなくなって構造を簡素化することができる。(請求項5)
【0013】
本発明において、
前記第1壁部の幅方向に沿う一対のフランジ部分のうち、前記第1壁部側のフランジ部分の両側部に上側に開放するスリットがそれぞれ形成されていると、第1タングプレートの先端部のタングプレート差し込み孔への挿脱の際に、前記第1壁部側のフランジ部分を変形しやすくすることができ、挿脱作業の作業性を向上させることができる。(請求項6)。
【0014】
本発明において、
前記スリットは、前記タングプレート差し込み孔よりも前記第1壁部側の上側収納壁部部分を経由して前記第1壁部の下部側まで延びていると、一対のスリット(フランジ部分の両側部側から下方に延びる一対のスリット)間に位置するカバー部分を撓みやすくすることができ、第1タングプレートの先端部のタングプレート差し込み孔への挿脱の際に、前記第1壁部側のフランジ部分をより変形しやすくすることができ、挿脱作業の作業性を向上させることができる。(請求項7)
【0015】
本発明において、
前記シートベルトのウェビングは、先端部が前記第1タングプレートのベルト挿通孔に挿通されるとともに折り返され、前記ウェビングの被縫着部に縫着されて前記第1タングプレートに連結し、
前記第1タングプレートに連結する前記ウェビングのループ状の先端部が、前記収納凹部の周壁の第1壁部との間に前記第2タングプレートを挟み込んで保持すると、次の作用を奏することができる。(請求項8)
【0016】
前記ウェビングのループ状の先端部はウェビングを2重に折り曲げた状態になっていることから適度な弾性を有し、第2タングプレートの押し付け時に適度に撓んで緩衝材の役割を果たす。従って、走行時の第1タングプレートと第2タングプレートの振動を防止することができ、異音の発生を防止することができる。(請求項8)
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、
第1タングプレートと第2タングプレートを確実に保持することができる構造でありながら、部品点数を少なくすることができ、構造を簡素化することができるシートベルトのタングプレートの収納構造を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】リアシート1とシートベルト装置の斜視図
【図2】中央シート用のシートベルトのタングプレートの収納構造の斜視図
【図3】図2のX視図
【図4】図3のA−A断面図
【図5】(a)はシートベルトの第1タングプレートの正面図(b)はシートベルトの第1タングプレートの側面図
【図6】タングプレート収納カバーを斜め上方から見た斜視図
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に、自動車のリアシート1とその周りの車体構造を右前方から見た斜視図を示してある。リアシート1は左側シート1A・中央シート1B・右側シート(図示せず)から成る3人掛けのシートに構成されている。図1における符号7はルーフである。いずれのシートにも同様の構造の3点式のシートベルト装置100が設けられている。以下、中央シート1B用のシートベルト装置100を例に挙げてシートベルト装置100の構造について説明する。
【0020】
[中央シート1B用のシートベルト装置100の構造]
シートベルト装置100は、車体に支持されたリトラクタ10とリトラクタ10に巻き取られるシートベルト20とを備えている。リトラクタ10は中央シート1Bに着座した乗員の右斜め上方に位置するようにルーフエンドメンバに取り付けボルトで固定されている。
【0021】
シートベルト20は、リトラクタ10に連結するウェビング21と、ウェビング21の先端部に連結する第1タングプレート22と、ウェビング21の長手方向中間部に摺動可能に外挿された第2タングプレート33(ウェビング21が摺動可能に挿通された第2タングプレート33)とから成る。
【0022】
図4,図5(a),図5(b)に示すように、第1タングプレート22は、孔部がベルト挿通孔23Hに構成された第1リング部23と、第1リング部23から突出し、シートクッション3の着座面の右側の第1バックル25(図1参照)に係合する第1係合金具27とを備えている。第1係合金具27の先端部(第1タングプレート22の先端部)には、第1バックル25の被係合部に係合する切り欠き孔27H(係合孔に相当)が、前記先端部の幅方向外側に開放する状態に形成されている。
【0023】
シートベルト20のウェビング21は、先端部21Sが第1リング部23のベルト挿通孔23Hに挿通されるとともに折り返され、ウェビング21の被縫着部21Tに縫着されて第1タングプレート22に連結している。
【0024】
ウェビング21の被縫着部21Tを挟んでウェビング21の先端部21Sとは反対側にはウェビング21と同一材質から成る長方形状の補強片30が重ね合わされて、前記先端部21Sと被縫着部21Tと補強片30との三者が一体に縫着されている。これにより前記三者21S,21T,30を強固に連結固定することができる。
【0025】
第2タングプレート33は、ウェビング21に摺動可能に外挿される第2リング部24(ウェビング21が摺動可能に挿通された第2リング部24)と、この第2リング部24から突出し、シートクッション3の着座面の左側の第2バックル26(図1参照)に係合する第2係合金具28とを備えている。第2係合金具28の先端部(第2タングプレート33の先端部)には、第2バックル26の被係合部に係合する角孔28Hが形成されている。
【0026】
上記の構造により、第1タングプレート22の第1係合金具27の切り欠き孔27Hを第1バックル25の被係合部に係合させ、第2タングプレート33の第2係合金具28の角孔28Hを第2バックル26の被係合部に係合させる。これにより、乗員の胸部および腰部の両方にウェビング21を架け渡して乗員を中央シート1Bに拘束する。このようにして乗員を拘束することで乗員を確実に保護することができる。
【0027】
[中央シート1B用のシートベルト20のタングプレートの収納構造]
図2〜図4に示すように、前記リトラクタ10にシートベルト20が巻き取られ、シートベルト20の先端側の第1タングプレート22と、第1タングプレート22側に寄せられた第2タングプレート33とが車室内のルーフライニング5(内装材に相当)側の収納凹部11に収納されている。図2における符号9はクォータアッパートリムである。次に、この収納構造、すなわち、シートベルト20のタングプレートの収納構造について説明する。
【0028】
中央シート1Bに着座した乗員の右斜め上方のルーフライニング5に開口5Hが形成され、この開口5Hとリトラクタ10を下方の車室内側から覆う樹脂製のタングプレート収納カバー12がルーフライニング5に取り付けられている。
【0029】
図2,図3,図6に示すように、タングプレート収納カバー12は上方に開放した平面視略長方形の箱形に形成されている。前記長方形の長辺に対応する互いに対向したカバー左側壁41S1とカバー右側壁41S2は車両前方側Frほど車幅方向内側W1に位置するように傾斜し、カバー左側壁41S1とカバー右側壁41S2の前端同士を連結するカバー前壁41Mはカバー左側壁41S1とカバー右側壁41S2に直交し、カバー左側壁41S1とカバー右側壁41S2の後端同士を連結するカバー後壁41Nは、タングプレート収納カバー12の外側に凸の「く」の字状に屈曲している。符号Rrは車両後方側、W2は車幅方向外側を示している。
【0030】
図3,図4に示すように、タングプレート収納カバー12のカバー底壁43は、カバー後壁41N側の後ろ側底壁部43Nと、カバー前壁41M側の前側底壁部43Mと、これら両者43N,43Mの間に位置し、前記収納凹部11を備えた中間部側底壁部43Lとから成る。
【0031】
後ろ側底壁部43Nは略水平に形成されてリトラクタ10を下側から覆っている(図3参照)。また、前側底壁部43Mはカバー前壁41M側ほど上方に位置するように傾斜している(図4参照)。
【0032】
後ろ側底壁部43Nの前端部は上方に屈曲した縦壁部43Dに構成され、この縦壁部43Dの上端部に中間部側底壁部43Lの後端部が接続している。つまり、中間部側底壁部43Lと後ろ側底壁部43Nの間は段差状に形成されて、中間部側底壁部43Lが後ろ側底壁部43Nの前端部よりも上方に位置している。また、前記中間部側底壁部43Lの中央部に前記収納凹部11が上方に凹む状態に形成されている。
【0033】
そして、前記縦壁部43Dと、この縦壁部43Dに連続する中間部側底壁部43Lの後端部とに横長の長方形状のウェビング巻き取り繰り出し口43Hが形成されている。ウェビング巻き取り繰り出し口43Hの内側(タングプレート収納カバー12の内側)には、リトラクタ10の断面L字形のウェビングガイド部13が位置している。図4の二点鎖線の符号21は、前記収納凹部11から取り出されて乗員に装着された使用状態のシートベルト20のウェビングを示している。
【0034】
図3,図4,図6に示すように、前記収納凹部11は、横断面において、タングプレート収納カバー12の幅方向に長い長方形状に形成され、カバー前壁41M側の前側収納壁部11M(第2壁部に相当)と、カバー後壁41N側の後ろ側収納壁部11N(第1壁部に相当)と、前側収納壁部11Mと後ろ側収納壁部11Nの左側の側部同士を連結する左側収納壁部11S1と、前側収納壁部11Mと後ろ側収納壁部11Nの右側の側部同士を連結する右側収納壁部11S2と、これらの収納壁部11M,11N,11S1,11S2の上端部同士を連結する上側収納壁部11Jとを備えている。
【0035】
前記前側収納壁部11Mは上方側ほどカバー前壁41Mから離間するように傾斜し、後ろ側収納壁部11Nは、上方側ほどカバー後壁41Nから離間するように傾斜している。つまり、収納凹部11は後ろ側収納壁部11Nに対向する前側収納壁部11Mを備え、前側収納壁部11Mと後ろ側収納壁部11Nは、収納凹部11の幅方向から見て上窄まりに傾斜している。
【0036】
さらに、前側収納壁部11Mの上端部が後ろ側収納壁部11N側に屈曲し、後ろ側収納壁部11Nの上端部が前側収納壁部11M側に屈曲している。前述のように、後ろ側収納壁部11Nと前側収納壁部11Mは上端部同士が上側収納壁部11Jを介して連結されている。上側収納壁部11Jは略水平な面に形成されている。
【0037】
前記左側収納壁部11S1はカバー左側壁41S1に対して間隔を空けて対向し、右側収納壁部11S2はカバー右側壁41S2に対して間隔を空けて対向している(図6参照)。
【0038】
そして、前記収納凹部11の上側収納壁部11Jに形成された係合部50に第1タングプレート22の第1係合金具27の先端部の切り欠き孔27Hがリトラクタ10の巻き取り力に抗して係合し、前記巻き取り力によってシートベルト20のウェビング21が緊張した状態で、前記ウェビング21が前記収納凹部11の周壁の後ろ側収納壁部11Nとの間に第2タングプレート33を挟み込んで保持している。
【0039】
これにより、第2タングプレート33を保持するためのスプリングや鉄クリップ、磁石などを不要にでき、フェルト等のラトル音防止部品の追加を不要にすることができて部品点数を少なくすることができ、収納構造を簡素化することができる。
【0040】
詳しくは、第1タングプレート22に連結するウェビング21のループ状の先端部(以下、「ループ部21R」と称する)が、前記後ろ側収納壁部11Nの下端部との間に第2タングプレート33の第2リング部24を挟み込んで保持している。第2タングプレート33の第2係合金具28は第2リング部24よりも上方に位置して収納凹部11内に収納されている。
【0041】
前記ループ部21Rはウェビング21を2重に折り曲げた状態になっていることから、適度な弾性を有し、第2タングプレート33の押し付け時に適度に撓んで緩衝材の役割を果たす。従って、走行時の第1タングプレート22と第2タングプレート33の振動を防止することができ、異音の発生を防止することができる。
【0042】
前記係合部50は、前記収納凹部11の上側収納壁部11Jの略中央部に形成されたタングプレート差し込み孔51と、タングプレート差し込み孔51への第1係合金具27の先端部(第1タングプレート22の先端部)の差し込み状態で前記第1係合金具27の先端部の切り欠き孔27Hに弾性係合する係合突起52とから成る。
【0043】
図6に示すように、前記タングプレート差し込み孔51は後ろ側収納壁部11Nの幅方向に長い長方形状に形成され、第1係合金具27の板厚方向に対応する方向のタングプレート差し込み孔51の内面同士の間隔は、第1係合金具27の板厚よりも僅かに短く設定されている(図4参照)。これにより、第1係合金具27がタングプレート差し込み孔51に嵌合(密嵌)する。
【0044】
そして、タングプレート差し込み孔51の周部から前記上側収納壁部11Jの上方に突出する長方形環状のフランジ45が上側収納壁部11Jに設けられている。タングプレート収納カバー12のルーフライニング5への取り付け状態で、フランジ45はルーフライニング5の開口5Hよりも上方に位置している(図4参照)。
【0045】
また、後ろ側収納壁部11Nの幅方向に沿う一対のフランジ部分45M,45Nのうち、前側収納壁部11M側のフランジ部分45Mの一側部がフランジ部分45Mの残部(前記一側部以外の部分)よりも上方に突出し、前記係合突起52が前記フランジ部分45Mの一側部に設けられている。
【0046】
係合突起52は、タングプレート差し込み孔51への差し込み状態の第1係合金具27の切り欠き孔27H側に凸の断面円弧状に形成されている。これにより、係合突起52をタングプレート差し込み孔51から抜き出す(係合解除する)際の抜き出し作業を円滑に行うことができる。
【0047】
係合突起52の上端は前記フランジ部分45Mの残部(前記一側部以外の部分)の上端よりも上方に位置し、係合突起52の下端は前記フランジ部分45Mの残部の上端よりも下方に位置している。このように、係合突起52はタングプレート差し込み孔51よりも前側収納壁部11M側の上側収納壁部部分11J1(図6参照)に設けられている。
【0048】
また、後ろ側収納壁部11Nの幅方向に沿う一対のフランジ部分45M,45Nのうち、後ろ側収納壁部11N側のフランジ部分45Nの両側部に上側に開放するスリット11Rがそれぞれ形成されている。このスリット11Rは、タングプレート差し込み孔51よりも後ろ側収納壁部11N側の上側収納壁部部分11J2を経由して後ろ側収納壁部11Nの下部側(詳しくは下端部側)まで延びている。
【0049】
一対のスリット11Rは下側になるにつれて互いの間隔が広がっており、一対のスリット11R間に位置するカバー部分11N1(後ろ側収納壁部11N側のフランジ部分45Nと上側収納壁部部分11J2と後ろ側収納壁部11Nから成るカバー部分11N1)が下側になるにつれて幅広になっている。これにより、前記カバー部分11N1をタングプレート収納カバー12の前後方向(前側収納壁部11Mと後ろ側収納壁部11Nが対向する方向)に撓みやすくすることができる。
【0050】
その結果、シートベルト20の取り出しの際、すなわち、収納凹部11の係合部50から第1タングプレート22の第1係合金具27を係合解除する際に容易に係合解除することができ、第1タングプレート22と第2タングプレート33の取り外し時において、第1タングプレート22と第2タングプレート33による収納凹部11の係合部50の削れや磨耗を防止できる。
シートベルト20を取り出す場合、第2タングプレート33を手前(車室内側の下方)に引くと、図4における符号(矢印)G1,G2,G3,G4の順に荷重が生じる。
【0051】
前述のように、前記係合突起52は前記第1係合金具27の先端部(第1タングプレート22の先端部)の切り欠き孔27Hに弾性係合する。つまり、前記第1係合金具27の先端部が、前記係合突起52及び前記フランジ部分45Mの一側部と、前記後ろ側収納壁部11N側のフランジ部分45Nとを押し退けながらタングプレート差し込み孔51に入り込む。そして、前記係合突起52及び前記フランジ部分45Mの一側部と、前記後ろ側収納壁部11N側のフランジ部分45Nとが弾性復元し、係合突起52が切り欠き孔27Hに弾性係合して、第1係合金具27の先端部がタングプレート差し込み孔51に嵌合(密嵌)する。
【0052】
図4に示すように、リトラクタ10からシートベルト20に巻取り力F1が加わることで、第2タングプレート33がタングプレート収納カバー12の収納凹部11の後ろ側収納壁部11Nと接触し、後ろ側収納壁部11Nの壁面上の回転中心F2を中心に第2タングプレート33を回転させる力F3が発生する。
この力F3により第2タングプレート33が第1タングプレート22の下側のウェビング21のループ部21R(第1タングプレート22に連結するウェビング21のループ状の先端部)に押し当てられる。
これにより、前記ループ部21Rと第1タングプレート22に力F4が加わって、前記ループ部21Rと第1タングプレート22が収納凹部11の前側収納壁部11Mに押し当てられる。その結果、第1タングプレート22の第1係合金具27の先端部の切り欠き孔27Hがタングプレート差し込み孔51と係合突起52にしっかりと引っ掛かり、第1タングプレート22が安定して保持される。
【0053】
タングプレート差し込み孔51よりも前側収納壁部11M側の上側収納壁部部分11J1は後ろ側収納壁部11N側の上側収納壁部部分11J2よりも変形しにくい構造になっており、係合突起52は前記前側収納壁部11M側の上側収納壁部部分11J1に設けられているから、係合突起52とその周りの部分の熱変形や経年劣化の変形を防止することができ、熱変形や経年劣化の変形によるタング保持性能低下を防止することができる。
【0054】
以上の構造によれば、部品点数を増やすことなく、第1タングプレート22と第2タングプレート33をしっかりと収納凹部11に収納保持することができ、且つ、走行時の異音の発生を防止し、さらに使用時の取り出しの使い勝手を向上させることができる。
【0055】
[別実施形態]
上記の実施形態では、前記リトラクタ10の巻き取り力によってシートベルト20のウェビング21が緊張した状態で、ウェビング21が収納凹部11の周壁の後ろ側収納壁部11Nとの間に第2タングプレート33を挟み込んで保持しているが、この構造に換えて、前記巻き取り力によってシートベルト20のウェビング21が緊張した状態で、前記第1タングプレート22が前記収納凹部11の周壁の後ろ側収納壁部11Nとの間に第2タングプレート33を挟み込んで保持する構造であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
5 内装材(ルーフライニング)
10 リトラクタ
11 収納凹部
11J 上側収納壁部
11J1 上側収納壁部部分(第2壁部側の上側収納壁部部分)
11J2 上側収納壁部部分(第1壁部側の上側収納壁部部分)
11M 第2壁部(前側収納壁部)
11N 第1壁部(後ろ側収納壁部)
11R スリット
12 タングプレート収納カバー
20 シートベルト
21 ウェビング
21R ウェビングのループ状の先端部(ループ部)
21T 被縫着部
22 第1タングプレート
23H ベルト挿通孔
27H 切り欠き孔(係合孔)
33 第2タングプレート
45 フランジ
45M フランジ部分(第2壁部側のフランジ部分)
45N フランジ部分(第1壁部側のフランジ部分)
50 係合部
51 タングプレート差し込み孔
52 係合突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に支持されたリトラクタにシートベルトが巻き取られ、前記シートベルトの先端側の第1タングプレートと、前記シートベルトのウェビングに摺動可能に外挿されて前記第1タングプレート側に寄せられた第2タングプレートとが車室内の内装材側の収納凹部に収納されるシートベルトのタングプレートの収納構造であって、
前記収納凹部に形成された係合部に前記第1タングプレートの先端部が前記リトラクタの巻き取り力に抗して係合し、
前記巻き取り力によって前記シートベルトのウェビングが緊張した状態で、前記ウェビング又は前記第1タングプレートが前記収納凹部の周壁の第1壁部との間に前記第2タングプレートを挟み込んで保持するシートベルトのタングプレートの収納構造。
【請求項2】
前記内装材はルーフライニングであり、
前記ルーフライニングにタングプレート収納カバーが取り付けられ、
前記タングプレート収納カバーに前記収納凹部が上方に凹む状態に形成されている請求項1記載のシートベルトのタングプレートの収納構造。
【請求項3】
前記第1タングプレートの先端部に係合孔が形成され、
前記係合部は、前記収納凹部の上側収納壁部に形成されたタングプレート差し込み孔と、前記タングプレート差し込み孔への前記第1タングプレートの先端部の差し込み状態で前記係合孔に弾性係合する係合突起とから成る請求項2記載のシートベルトのタングプレートの収納構造。
【請求項4】
前記収納凹部は前記第1壁部に対向する第2壁部を備え、
前記第1壁部と第2壁部は上端部同士が前記上側収納壁部を介して連結され、
前記タングプレート差し込み孔よりも前記第2壁部側の上側収納壁部部分に前記係合突起が設けられている請求項3記載のシートベルトのタングプレートの収納構造。
【請求項5】
前記タングプレート差し込み孔は前記第1壁部の幅方向に長い長方形状に形成され、
前記タングプレート差し込み孔の周部から前記上側収納壁部の上方に突出する長方形環状のフランジが前記上側収納壁部に設けられ、
前記第1壁部の幅方向に沿う一対のフランジ部分のうち、前記第2壁部側のフランジ部分に前記係合突起が設けられている請求項4記載のシートベルトのタングプレートの収納構造。
【請求項6】
前記第1壁部の幅方向に沿う一対のフランジ部分のうち、前記第1壁部側のフランジ部分の両側部に上側に開放するスリットがそれぞれ形成されている請求項5記載のシートベルトのタングプレートの収納構造。
【請求項7】
前記スリットは、前記タングプレート差し込み孔よりも前記第1壁部側の上側収納壁部部分を経由して前記第1壁部の下部側まで延びている請求項6記載のシートベルトのタングプレートの収納構造。
【請求項8】
前記シートベルトのウェビングは、先端部が前記第1タングプレートのベルト挿通孔に挿通されるとともに折り返され、前記ウェビングの被縫着部に縫着されて前記第1タングプレートに連結し、
前記第1タングプレートに連結する前記ウェビングのループ状の先端部が、前記収納凹部の周壁の第1壁部との間に前記第2タングプレートを挟み込んで保持する請求項1〜7のいずれか一つに記載のシートベルトのタングプレートの収納構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−143738(P2011−143738A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3724(P2010−3724)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】