説明

シートベルト用リトラクタ

【課題】パイロットレバーの十分な強度を確保しつつ、小型化を図ることができるシートベルト用リトラクタを提供する。
【解決手段】パウルを作動させるクラッチは、取付ボスに嵌挿されたパイロットレバーの軸部の係合爪部に対して径方向反対側の外周面と所定隙間を形成して対向するように突設されたパイロットレバー支持部を有し、前記パイロットレバーは、通常時には前記取付ボスに嵌挿された前記軸部の外周面が、前記パイロットレバー支持部と所定隙間を形成して前記係合爪部が自重により回動し、緊急時にセンサレバーの揺動によって前記係合爪部がロッキングギヤに係合して、前記ロッキングギヤのウエビング引出方向への回転により押圧されて前記取付ボスが撓んだ際には、前記軸部の外周面が前記パイロットレバー支持部に当接された状態で、該ロッキングギヤの回動に従って前記クラッチを回動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急時にウエビングの引き出しを防止するシートベルト用リトラクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、緊急時にウエビングの引き出しを防止するシートベルト用リトラクタに関して種々提案されている。
例えば、センサギヤ128の本体部130の下端部には、Vギヤ126側へ向けて突設された押圧部168のVギヤ126とは反対側の端部に、シャフト129が突出形成されている。また、シャフト129には、連結部材としての係合爪140が回動可能に軸支されている。また、係合爪140の下方には、加速度センサ142が設けられ、車両が急減速状態になり、当該加速度センサ142のセンサ爪152が硬球148によって押し上げられることによって、係合爪140を上方へ回動させる。
【0003】
また、センサ爪152によって上方へ回動された係合爪142の回動方向側には、外周部にラチェット歯が形成されたVギヤ126が位置しており、これにより、係合爪142がVギヤ126に係合する。そして、係合爪142がVギヤ126に係合することによって、Vギヤ126のウエビング引出方向への回転力がセンサギヤ128に伝えられ、押圧部168がロックパウル160を回動させる。このロックパウル160が回動されると、パウル部166がロックベース170のラチェット部172に噛み合い、スプール24のウエビング引出方向への回転が阻止されるように構成されたウエビング巻取装置がある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−188148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記した特許文献1に記載されたウエビング巻取装置では、Vギヤ126に係合した係合爪140には、Vギヤ126のウエビング引出方向への回転力によってシャフト129方向への大きな押圧荷重が作用する。このため、センサギヤ128の本体部130には、シャフト129に軸支される係合爪140が、当該Vギヤ126から受ける押圧荷重に耐えるために、Vギヤ126に係合した係合爪140の爪部と軸部との間に嵌り込み、爪部を介して押圧荷重を受ける略L字形の荷重支持部が突設されている。
【0006】
しかしながら、加速度センサ142の感度向上のためには、係合爪140を小型化して質量を小さくする必要があるが、当該係合爪140は、爪部と軸部との間に、略L字形の荷重支持部が嵌り込む必要があるため、爪部の全長を短くして小型化することが難しいという問題がある。また、全長が長い係合爪140の質量を小さくするために、当該係合爪140は全体的に薄肉形状に形成され、十分な強度を確保しつつ、小型化することが難しいという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、パイロットレバーの十分な強度を確保しつつ、小型化を図ることができるシートベルト用リトラクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため請求項1に係るシートベルト用リトラクタは、ハウジングと、前記ハウジングに回転可能に収納されてウエビングを巻回収納する巻取ドラムと、前記巻取ドラムと一体に回転するラチェットギヤと、緊急時に該巻取ドラムのウエビング引出方向への回転を阻止するロック機構と、車両の所定値以上の加速度に反応して揺動する慣性質量体と、前記慣性質量体に押動されて揺動して前記ロック機構を起動させるセンサレバーと、を備え、前記ロック機構は、前記巻取ドラムと同軸に回動可能に配置されて、回動により、前記ラチェットギヤに係合して該巻取ドラムのウエビング引出方向への回転を阻止するパウルを誘導するクラッチと、前記クラッチに立設された取付ボスに回動可能に軸支されて、揺動した前記センサレバーに押圧されて回動されるパイロットレバーと、前記巻取ドラムに一体、且つ、同軸に取り付けられて、前記パイロットレバーが回動により係合するロッキングギヤと、を有し、前記パイロットレバーは、前記取付ボスに回動可能に嵌挿される円筒状の軸部と、前記軸部の外周面から突設されて前記ロッキングギヤに係合する係合爪部と、を有し、前記クラッチは、前記取付ボスに嵌挿された前記軸部の前記係合爪部に対して径方向反対側の外周面と所定隙間を形成して対向するように突設されたパイロットレバー支持部を有し、前記パイロットレバーは、通常時には前記取付ボスに嵌挿された前記軸部の外周面が、前記パイロットレバー支持部と所定隙間を形成して前記係合爪部が自重により回動し、緊急時に前記センサレバーの揺動によって前記係合爪部が前記ロッキングギヤに係合して、前記ロッキングギヤのウエビング引出方向への回転により押圧されて前記取付ボスが撓んだ際には、前記軸部の外周面が前記パイロットレバー支持部に当接された状態で、該ロッキングギヤの回動に従って前記クラッチを回動させることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に係るシートベルト用リトラクタは、請求項1に記載のシートベルト用リトラクタにおいて、前記パイロットレバー支持部は、前記取付ボスと同軸に円弧状に窪むように形成された荷重受け面を有し、前記荷重受け面は、通常時には前記取付ボスに嵌挿された前記軸部の外周面と前記所定隙間を形成して対向し、緊急時に前記係合爪部が前記ロッキングギヤに係合して、前記取付ボスが撓んだ際には、前記軸部の外周面が前記荷重受け面に当接されることを特徴とする。
【0010】
更に、請求項3に係るシートベルト用リトラクタは、請求項1又は請求項2に記載のシートベルト用リトラクタにおいて、前記パイロットレバー支持部は、前記取付ボスに嵌挿された前記軸部とほぼ同じ高さになるように突設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係るシートベルト用リトラクタでは、パイロットレバーは、円筒状の軸部がクラッチに立設された取付ボスに回動可能に嵌挿されている。そして、パイロットレバーは、通常時には取付ボスに嵌挿された軸部の外周面が、クラッチに突設されたパイロットレバー支持部と所定隙間を形成して係合爪部が自重により回動している。また、パイロットレバーは、緊急時にセンサレバーの揺動によって係合爪部がロッキングギヤに係合して、ロッキングギヤのウエビング引出方向への回転により押圧されて取付ボスが撓んだ際には、軸部の外周面がパイロットレバー支持部に当接される。
【0012】
これにより、パイロットレバーは、係合爪部がロッキングギヤに係合して、軸部側へ押圧荷重を受けて取付ボスが撓んでも、軸部の外周面が、所定隙間を形成して対向するパイロットレバー支持部に当接するため、ロッキングギヤによって大きな押圧荷重が作用しても、簡易な構成で取付ボス及び軸部の変形や破損を防止することができる。また、クラッチに突設されたパイロットレバー支持部の断面形状を大きくすることによって、当該パイロットレバー支持部の機械的強度を大きくすることができ、取付ボス及び軸部の変形や破損を確実に防止することができる。
【0013】
また、ロッキングギヤから押圧荷重を受けたパイロットレバーは、軸部の外周面がパイロットレバー支持部に当接するため、係合爪部の先端と軸部との間に当接して押圧荷重を支持する部材を設ける必要がない。このため、係合爪部の全長を短くして小型化することができ、当該係合爪部を厚肉形状に形成しても、パイロットレバーの機械的強度の向上を図ると共に質量の軽量化を図ることができる。
【0014】
また、通常時には取付ボスに嵌挿された軸部の外周面が、パイロットレバー支持部と所定隙間を形成して係合爪部が自重により回動しているため、このパイロットレバーの小型化を図ることによって、ロック機構を起動させるセンサレバーの揺動感度の向上を図ることができる。更に、取付ボスに嵌挿された軸部の外周面とパイロットレバー支持部との間には所定隙間が形成されるため、当該軸部を取付ボスに容易に嵌挿することができ、組立作業の効率化を図ることができる。
【0015】
また、請求項2に係るシートベルト用リトラクタでは、クラッチに突設されたパイロットレバー支持部の荷重受け面は、取付ボスと同軸に円弧状に窪むように形成されているため、緊急時に係合爪部がロッキングギヤに係合して、取付ボスが撓んだ際には、軸部の外周面が当該荷重受け面に当接される。これにより、パイロットレバーが受けた押圧荷重を円筒状の軸部の外周面を介して円弧状に窪んだ荷重受け面で受けることができ、当該押圧荷重を荷重受け面の全面で分散して受けることが可能となり、取付ボス及び軸部の変形や破損を確実に防止することができる。
【0016】
また、パイロットレバー支持部は、円弧状に窪んだ荷重受け面で押圧荷重を分散して支持することが可能となり、当該パイロットレバー支持部の小型化を図ることができ、引いてはクラッチの小型化を図ることができる。また、パイロットレバー支持部の荷重受け面は、通常時には取付ボスに嵌挿された軸部の外周面と所定隙間を形成するため、当該軸部を取付ボスに嵌挿する際の案内面を構成し、組立作業の更なる効率化を図ることができる。
【0017】
更に、請求項3に係るシートベルト用リトラクタでは、クラッチに突設されたパイロットレバー支持部は、取付ボスに嵌挿されたパイロットレバーの軸部とほぼ同じ高さになるように突設されているため、当該パイロットレバー支持部にパイロットレバーの軸部をほぼ全長に渡って当接させることが可能となり、取付ボス及び軸部の変形や破損を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係るシートベルト用リトラクタの外観斜視図である。
【図2】シートベルト用リトラクタをユニット別に分解した斜視図である。
【図3】シートベルト用リトラクタをユニット別に分解した斜視図である。
【図4】ハウジングユニットの分解斜視図である。
【図5】パウルの取り付け状態を示す斜視図である。
【図6】図5の内側から見たパウルの取り付け状態を示す斜視図である。
【図7】図5のX1−X1矢視断面図である。
【図8】巻取バネユニット及びロックユニットの分解斜視図である。
【図9】巻取バネユニット及びロックユニットの分解斜視図である。
【図10】ロックユニットのロックアームを含む組立断面図である。
【図11】ロックユニットのメカニズムカバーを外した状態を示す一部切り欠き断面図である。
【図12】シートベルト用リトラクタの巻取バネユニット及びロックユニットを含む要部拡大断面図である。
【図13】パイロットレバーの取り付けを示す図である。
【図14】パイロットレバーの取り付け状態を示す図である。
【図15】パイロットレバーの通常時の状態を示す要部拡大図である。
【図16】パイロットレバーがロッキングギヤに係合した状態を示す要部拡大図である。
【図17】ロックユニットのウエビングの引出加速度による動作説明図(作動前)である。
【図18】ロックユニットのウエビングの引出加速度による動作説明図(作動開始時)である。
【図19】ロックユニットのウエビングの引出加速度による動作説明図(ロック状態への移行時)である。
【図20】ロックユニットのウエビングの引出加速度による動作説明図(ロック状態)である。
【図21】ロックユニットの車体加速度による動作説明図(作動前)である。
【図22】ロックユニットの車体加速度による動作説明図(作動開始時)である。
【図23】ロックユニットの車体加速度による動作説明図(ロック状態への移行時)である。
【図24】ロックユニットの車体加速度による動作説明図(ロック状態)である。
【図25】巻取ドラムユニットの軸心を含む断面図である。
【図26】巻取ドラムユニットの分解斜視図である。
【図27】巻取ドラムをラチェットギヤの取り付け側から見た正面図である。
【図28】ラチェットギヤの斜視図である。
【図29】図25のX2−X2矢視断面図である。
【図30】プリテンショナユニットの分解斜視図である。
【図31】プリテンショナユニットの内部構造を示す断面図である。
【図32】車両衝突時のパウルの動作を示す説明図である。
【図33】ワイヤを引き出す動作説明図である。
【図34】ワイヤを引き出す動作説明図である。
【図35】ワイヤを引き出す動作説明図である。
【図36】ワイヤを引き出す動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るシートベルト用リトラクタについて具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0020】
[概略構成]
先ず、本実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1の概略構成について図1乃至図3に基づき説明する。図1は本実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1の外観斜視図である。図2及び図3はシートベルト用リトラクタ1をユニット別に分解した斜視図である。
図1乃至図3に示すように、シートベルト用リトラクタ1は、車両のウエビング3を巻き取るための装置であって、ハウジングユニット5と、巻取ドラムユニット6と、プリテンショナユニット7と、巻取バネユニット8と、ロックユニット9とから構成されている。
【0021】
また、ロックユニット9は、メカニズムカバー71(図8参照)に一体に形成された各ナイラッチ9A及び各係止フック9Bによって、ハウジングユニット5を構成するハウジング11の一方の側壁部12に固設されている。そして、ロックユニット9は、後述のようにウエビング3の急激な引き出しや車両の急激な加速度の変化に反応してウエビング3の引き出しを停止するロック機構10を構成する(図11等参照)。また、巻取バネユニット8は、バネケース67(図8参照)に一体に形成された各係止フック8Aによってロックユニット9の巻取ドラムユニット6の回転軸方向外側に固設されている。
【0022】
また、プリテンショナユニット7は、平面視略コの字状に形成されたハウジング11の側壁部12に相対向する他方の側壁部13に、プリテンショナユニット7の巻取ドラムユニット6の回転軸方向外側から挿通される各ネジ15によってネジ止めされる。また、プリテンショナユニット7は、プリテンショナユニット7の巻取ドラムユニット6の回転軸方向外側から側壁部13に挿通されるストッパーピン16と、該ストッパーピン16に側壁部13の巻取ドラムユニット6の回転軸方向内側から挿入されるプッシュナット18によって固定される。
【0023】
そして、ウエビング3が巻装される巻取ドラムユニット6は、ハウジングユニット5の側壁部12に固設されたロックユニット9と、側壁部13に固定されたプリテンショナユニット7との間に回転自在に支持される。また、巻取ドラムユニット6は、ロックユニット9の外側に固設された巻取バネユニット8によって、ウエビング3の巻取方向に常時付勢されている。
【0024】
[ハウジングユニットの概略構成]
次に、ハウジングユニット5の概略構成について図2乃至図7に基づいて説明する。
図4はハウジングユニット5の分解斜視図である。図5及び図6は、パウルの取り付け状態を示す斜視図である。図7は図5のX1−X1矢視断面図である。
図2乃至図4に示すように、ハウジングユニット5は、ハウジング11と、ブラケット21と、プロテクタ22と、パウル23と、パウルリベット25と、捩りコイルバネ26と、センサカバー27と、車両加速度センサ28と、連結部材32、33と、リベット61とから構成されている。
【0025】
また、ハウジング11は、車体に固定される背板部31と、その背板部31の両側縁部から相対向する各側壁部12、13が延出されて、平面視略コの字状にスチール材等で形成されている。また、各側壁部12、13は、巻取ドラムユニット6の回転軸方向に長い横長細板状の各連結部材32、33によって互いに連結されている。また、背板部31の中央部には、開口部が形成され、軽量化及びウエビング3の収容量の規制等が図られている。
【0026】
また、図4乃至図7に示すように、側壁部12には巻取ドラムユニット6のラチェットギヤ35が、所定隙間(例えば、約0.5mmの隙間である。)を形成しつつ挿入される貫通孔36が形成されている。この貫通孔36の内側周縁部は、巻取ドラムユニット6側へ中心軸方向内側に所定深さ窪んで、巻取ドラムユニット6のラチェットギヤ35に対向するように構成されている。
【0027】
また、この貫通孔36の斜め下側(図4中、斜め左下側である。)のパウル23の各係合歯23A、23Bを含む先端(他方の端部)側の部分37に対向する周縁部から、該パウル23の回動方向外側へ(パウル23のラチェットギヤ35から離反する回動方向である。)、この先端側の部分37が収容される深さに切り欠かれた切欠部38が形成されている。この切欠部38の背板部31側の横側には、パウル23を回転可能に取り付けるための貫通孔41が形成されている。また、切欠部38の貫通孔41側のパウル23が当接する部分には、該貫通孔41と同軸に円弧状の案内部38Aが形成されている。
【0028】
一方、スチール材等で形成されたパウル23の案内部38Aに当接して摺動する部分には、側壁部12の厚さ寸法にほぼ等しい高さで、この案内部38Aと同じ曲率半径の円弧状に窪んだ段差部37Aが形成されている。また、パウル23の回動軸方向外側(図4中、手前側である。)の側面の先端部には、ロックユニット9を構成するクラッチ85のガイド孔116(図9、図10参照)に挿入される案内ピン42が立設されている。
【0029】
また、パウル23の基端部(一方の端部)にはパウルリベット25が挿通される貫通孔43が形成されると共に、この貫通孔43の周縁部から側壁部12の貫通孔41に回動可能に挿通される円筒状のボス部45が、側壁部12の厚さ寸法にほぼ等しい高さで立設されている。そして、パウル23は、ボス部45が側壁部12の貫通孔41にハウジング11の内側から挿通された状態で、側壁部12の外側から貫通孔43に嵌入されたパウルリベット25によって、回動可能に固定される。これにより、パウル23の各係合歯23A、23Bとラチェットギヤ35の外周面に形成されたラチェットギヤ部35Aとが、側壁部12の外側面(図5中、側壁部12の上側の面である。)とほぼ同一面になるように配置される。
【0030】
また、パウルリベット25の頭部は、貫通孔41よりも大きい外径で所定厚さ(例えば、厚さ約1.5mmである。)の円板状に形成されている。そして、リターンスプリングの一例として機能する捩りコイルバネ26は、巻き数が1巻きでパウルリベット25の頭部の周囲を囲むように配置され、一端側26Aがパウル23の案内ピン42に取り付けられている。また、捩りコイルバネ26の線径は、パウルリベット25の頭部の高さのほぼ半分の寸法である(例えば、線径約0.6mmである。)。従って、捩りコイルバネ26の1巻き分のバネ高さは、パウルリベット25の頭部の高さとほぼ同じ高さに設定されている。
【0031】
また、捩りコイルバネ26の他端側26Bは、側壁部12上を摺接可能に一端側26Aの側壁部12側を通った後、側壁部12の内側方向(図5中、側壁部12の裏側方向である。)へ略直角に折り曲げられて、側壁部12に形成された取付孔46に挿通されている。また、この他端側26Bの端部は、略U字形に折り曲げられて側壁部12の内側面(図6中、側壁部12の上側面である。)に当接され、抜け止め部を構成している。これにより、パウル23は、捩りコイルバネ26によって切欠部38の奥側方向へ(図5中、反時計方向である。)回動するように付勢され、各係合歯23A、23Bを含む先端側の部分37が切欠部38の奥側に当接される。従って、パウル23は、捩りコイルバネ26によってラチェットギヤ35から離反する方向へ回動付勢されている。
【0032】
また、図2乃至図4に示すように、側壁部12の貫通孔36の下方(図4中、下方向である。)には、貫通孔36の中心軸の下方(図4中、下方向である。)から背板部31側の部分に、略四角形の開口部47が形成されている。また、この開口部47には、開口部47とほぼ同じ断面略四角形の浅い略箱体状のセンサカバー27が外側(図4中、手前側である。)から嵌入される。そして、樹脂製のセンサカバー27は、開口側周縁部に形成された鍔部が開口部47の外側周縁部(図4中、手前側周縁部である。)に当接されると共に、センサカバー27の図4中、上下方向両端面に突設された一対の係止爪27Aが開口部47の図4中、上下方向両端部の奥側に嵌入されて弾性的に係止される。
【0033】
また、車両加速度センサ28は、鉛直方向上側(図4中、上側である。)に開放される略箱形で底面部にすり鉢状の載置部が形成された樹脂製のセンサーホルダ51と、スチール等の金属で球状体に形成されて載置部上に移動可能に載置された慣性質量体52と、慣性質量体52の鉛直方向上側に載置されてパウル23に対して反対側の端縁部(図4中、右端縁部である。)をセンサーホルダ51によって鉛直方向上下(図4中、上下方向である。)に揺動可能に支持される樹脂製のセンサレバー53とから構成されている。
【0034】
そして、車両加速度センサ28をセンサカバー27へ嵌入して、センサーホルダ51のセンサカバー27内の両側壁部に対向する両側面部に設けられた一対の係止爪51A(図4中、一方の係止爪51Aを図示している。)をセンサカバー27の各係止孔27Bに嵌入して係止することによって、車両加速度センサ28がセンサカバー27を介してハウジング11に取り付けられる。
【0035】
また、側壁部12には、上端縁部(図4中、上側端縁部である。)の両隅と、貫通孔36の下方(図4中、下方向である。)との3箇所に、ロックユニット9の各ナイラッチ9Aが嵌入されて取り付けられる各取付孔55が形成されている。また、側壁部12の左右側縁部の中央部(図4中、上下方向中央部である。)には、ロックユニット9の各係止フック9Bが弾性的に係止される各係止片56が、巻取ドラムユニット6の回転軸に直交するように張り出して形成されている。
【0036】
また、側壁部13には、巻取ドラムユニット6が挿通される貫通孔57が中央部に形成されている。また、側壁部13には、下端縁部(図2中、下側端縁部である。)の略中央及び連結部材33側の角部と、上端縁部(図2中、上側端縁部である。)の背板部31側の角部に、各ネジ15がネジ止めされる各ネジ孔58がプリテンショナユニット7側方向へのバーリングによって形成されている。また、側壁部13には、上端縁部(図2中、上側端縁部である。)の連結部材32側の角部にストッパーピン16が挿通される貫通孔59が形成されている。
【0037】
また、背板部31の上端縁部(図2中、上側端縁部である。)に各リベット61によって取り付けられるブラケット21は、スチール材等で形成されて、背板部31の上端縁部から略直角に連結部材32側方向に延出された延出部に、ウエビング3が引き出される背板部31の幅方向に長い横長の貫通孔62が形成され、ナイロン等の合成樹脂で形成された横長枠状のプロテクタ22が嵌め込まれている。また、背板部31の下端部(図2中、下端部である。)には、車両の締結片(不図示)に取り付ける際に、ボルトが挿通されるボルト挿通孔63が形成されている。
【0038】
[巻取バネユニットの概略構成]
次に、巻取バネユニット8の概略構成について図2、図3、図8、図9及び図12に基づいて説明する。
図8及び図9は、巻取バネユニット8及びロックユニット9の分解斜視図である。図12はシートベルト用リトラクタ1の巻取バネユニット8及びロックユニット9を含む要部拡大断面図である。
【0039】
図2、図3、図8、図9及び図12に示すように、巻取バネユニット8は、渦巻バネ65と、この渦巻バネ65の外側端65Aが内側周縁部の底面から立設されたリブ66に固定されると共にこの渦巻バネ65を収容するバネケース67と、渦巻バネ65の内側端65Bが連結されてバネ力が付勢されるバネシャフト68とから構成されている。また、バネケース67は、ロックユニット9を構成するメカニズムカバー71側の端縁部に、ほぼ全周に渡って所定深さ(例えば、深さ約2.5mmである。)の溝部67Aが形成されている。
【0040】
そして、メカニズムカバー71の外周部の3箇所から巻取バネユニット8側に突設された各弾性係止片72を、バネケース67の外周部の3箇所に設けられた各係止フック8Aに嵌入して弾性的に係止することによって、巻取バネユニット8がロックユニット9の巻取ドラムユニット6の回転軸方向外側に当接された状態で固定される。また、メカニズムカバー71の巻取ドラムユニット6の回転軸方向外側の周縁部に沿って所定高さ(例えば、高さ約2mmである。)で立設された略リング状のリブ部71Aが、バネケース67の溝部67Aに嵌入されて、バネケース67内への粉塵や埃等の侵入が防止される。
【0041】
また、バネシャフト68は、バネケース67の底面部の略中心位置に立設されたピン69が、底面部の貫通孔68Aに挿入されて、底面部側がピン69の周縁部に回転可能に当接されている。また、バネシャフト68のロックユニット9側の端部は、メカニズムカバー71の略中央部に形成された貫通孔73の背面側周縁部に回転可能に当接されている。
【0042】
また、ラチェットギヤ35の回転軸方向外側の側面(図3中、左側の側面である。)の中央部には、外周面にスプラインが形成されると共に、先端部が断面略矩形に形成された軸部76が立設されている。そして、軸部76の断面略矩形状に形成された先端部が、メカニズムカバー71の貫通孔73からバネシャフト68の断面矩形状に形成された筒孔68B内に嵌入されて、当該バネシャフト68に対して相対回転不能に連結される(図12参照)。これにより、軸部76はバネシャフト68を介して渦巻バネ65に結合され、渦巻バネ65の付勢力によって巻取ドラムユニット6をウエビング3の巻取方向へ回動するように常時付勢する構造とされている。
【0043】
[ロック機構の概略構成]
次に、ウエビング3の急激な引き出しや車両の急激な加速度の変化に反応してウエビング3の引き出しを停止するロック機構10を構成するロックユニット9の概略構成について図8乃至図16に基づいて説明する。図10はロックユニット9のロックアームを含む組立断面図である。図11はロックユニット9のメカニズムカバーを外した状態を示す一部切り欠き断面図である。図13はパイロットレバーの取り付けを示す図である。図14はパイロットレバーの取り付け状態を示す図である。図15はパイロットレバーの通常時の状態を示す要部拡大図である。図16はパイロットレバーがロッキングギヤに係合した状態を示す要部拡大図である。
【0044】
図8乃至図12に示すように、ロックユニット9は、メカニズムカバー71、ロッキングギヤ81、ロックアーム82、センサスプリング83、クラッチ85及びパイロットレバー86で構成されている。尚、ロックユニット9を構成する各部材のうち、センサスプリング83を除いた部材は、合成樹脂で成形されており、互いに接触した場合の部材間の摩擦係数は小さなものである。
【0045】
メカニズムカバー71は、ハウジング11の側壁部12側が開口された略円形の底面部を有する略箱体状のメカニズム収容部87が形成され、ロッキングギヤ81やクラッチ85等を収容するように構成されている。また、メカニズムカバー71は、ハウジング11にセンサカバー27を介して取り付けられた車両加速度センサ28に対向する角部(図9中、左下角部である。)に、断面略四角形の凹形状に形成されたセンサ収容部88が設けられている。
【0046】
そして、メカニズムカバー71を各ナイラッチ9A及び各係止フック9Bによって側壁部12に取り付けた場合には、車両加速度センサ28のセンサーホルダ51がセンサ収容部88に嵌入されて、センサレバー53が鉛直方向上下(図9中、上下方向である。)に揺動可能に収納されるように構成されている。また、メカニズムカバー71のメカニズム収容部87の下端部略中央部(図9中、下端部略中央部である。)には、メカニズム収容部87とセンサ収容部88とが連通するように開設された開口部89が形成されている。
【0047】
この開口部89は、車両加速度センサ28のセンサレバー53の先端縁部から上方向(図9中、上方向である。)に向けて突設されたロック爪53Aの先端部が鉛直方向上下(図9中、上下方向である。)に進退可能に形成され、通常時には、ロック爪53Aの先端部は、パイロットレバー86の受け板部122(図11参照)の近傍に位置している。そして、後述のように、所定値を超える加速度によって慣性質量体52が移動してセンサレバー53が鉛直方向上側へ回動された場合には、ロック爪53Aは開口部89を介してパイロットレバー86の受け板部122に当接して、パイロットレバー86を鉛直方向上側へ回動させるように構成されている(図22参照)。
【0048】
また、メカニズム収容部87の略円形の底面部には、中央部に形成された貫通孔73の周縁部から円筒状の支持ボス91が立設されている。この支持ボス91のロッキングギヤ81側の先端部の外周は、全周に渡って先端側へ所定角度(例えば、約30°の傾斜角である。)で傾斜した先細りの面取り部91Aが形成されている。また、この支持ボス91には、ロッキングギヤ81の円板状の底面部92の中央部に、前面側から背面側に貫通するように立設された円筒状の固定ボス93が嵌入され、摺動回転可能に支持される。
【0049】
ロッキングギヤ81は、円板状の底面部92の全周からクラッチ85側へ円環状に立設されて、外周部にパイロットレバー86に係合するロッキングギヤ歯81Aが形成されている。このロッキングギヤ歯81Aは、ロッキングギヤ81がウエビング引出方向へ回転した時のみ、パイロットレバー86の係合爪部86Aと係合するように形成されている(図16参照)。
【0050】
また、図8及び図12に示すように、ロッキングギヤ81のメカニズムカバー71に対向する背面側から突出する固定ボス93の基端部の周囲には、全周に渡ってメカニズムカバー71の支持ボス91が、ほぼ全高さに渡って挿入される挿入溝95が、固定ボス93と同軸に形成されている。この挿入溝95の半径方向外側の内側周壁部は、支持ボス91の先端部の傾斜角よりも大きい角度(例えば、約45°の傾斜角である。)で半径方向外側へ傾斜している。
【0051】
また、ロッキングギヤ81のメカニズムカバー71に対向する背面側から突出する固定ボス93の高さは、メカニズムカバー71の支持ボス91の先端部から該メカニズムカバー71の背面部までの距離にほぼ等しく形成されている。これにより、ロッキングギヤ81の背面側から突出する固定ボス93をメカニズムカバー71の支持ボス91に挿通して、挿入溝95内に支持ボス91の先端部を当接させることによって、ロッキングギヤ81の背面側から突出する固定ボス93がほぼ全高さに渡って支持ボス91に対して同軸に取り付けられて軸支される。
【0052】
また、ロッキングギヤ81の固定ボス93の内周面には、ラチェットギヤ35の軸部76の外周面に形成されたスプライン76A(図3参照)が嵌入されるスプライン溝が形成されている。これにより、ラチェットギヤ35の軸部76をロッキングギヤ81の固定ボス93に嵌入することによって、巻取ドラムユニット6のラチェットギヤ35とロッキングギヤ81とが同軸に相対回転不能に圧入固定されると共に、ラチェットギヤ35の軸部76が固定ボス93を介してメカニズムカバー71の支持ボス91によって軸支される。
【0053】
図8乃至図12示すように、ロッキングギヤ81の底面部92のクラッチ85側の面には、固定ボス93に隣接して円筒状の支持ボス96が、ロッキングギヤ歯81Aよりも低い高さで立設されている。そして、固定ボス93を囲むように略弓形に形成された合成樹脂製のロックアーム82は、長手方向略中央部の固定ボス93側の端縁部に立設されたピボット軸97が、この支持ボス96に回転可能に嵌挿され、回動可能に軸支される。
【0054】
また、ロックアーム82は、ピボット軸97の横側に断面逆L字形の弾性係止片98が、ロッキングギヤ81の底面部92側へ立設されている。この弾性係止片98は、ロッキングギヤ81の支持ボス96の基端部に形成された略扇形で段差部を有する窓部99に挿入され、支持ボス96の軸心回りに回動可能に弾性的に係止される。
【0055】
また、図10及び図11に示すように、ロッキングギヤ81は、固定ボス93の外周面から半径方向外側へ延出されたリブ部に、センサスプリング83の一端側が嵌め込まれるバネ支持ピン101が、該固定ボス93の軸心に対して直交するウエビング引出方向へ立設されている。また、ロックアーム82のバネ支持ピン101に対向する側壁には、センサスプリング83の他端側が嵌め込まれるバネ支持ピン102が立設されている。
【0056】
従って、図10及び図11に示すように、各バネ支持ピン101、102にセンサスプリング83の両端を嵌め込むことによって、ロックアーム82は固定ボス93の軸心に対してウエビング引出方向側へ(図10中、矢印103方向である)回動するように所定荷重で付勢される。そして、ロックアーム82は、クラッチ85のクラッチギヤ106に係合する係合爪105側の端縁部が、ロッキングギヤ81の底面部92に立設されたストッパ107に当接されている。
【0057】
一方、後述のようにロックアーム82がセンサスプリング83の付勢力に抗してウエビング巻取方向(図10中、矢印103に対して反対方向である)へ回動されてクラッチギヤ106に係合した場合には、係合爪105の係合部とは反対側の端縁部が、ロッキングギヤ81の底面部92に立設された断面紡錘形の回り止め108に当接可能に構成されている(図18参照)。
【0058】
また、図8乃至図12に示すように、ロッキングギヤ81の固定ボス93は、クラッチ85側の先端部に外径が細くなった段差部93Aが形成されている。この段差部93Aの軸方向の高さ寸法は、クラッチ85の略円板状の板部111の厚さ寸法よりも少し大きくなるように形成されている。そして、クラッチ85の板部111の中央部に形成された貫通孔112が、固定ボス93の段差部93Aに回転可能に嵌入されて、当該クラッチ85はメカニズムカバー71のメカ収容部87に一定の回転範囲内で回転可能に収容される。
【0059】
また、図12に示すように、クラッチ85の貫通孔112に嵌入されたロッキングギヤ81の固定ボス93の段差部93Aは、ラチェットギヤ35の軸部76の基端部に当接される。これにより、ラチェットギヤ35は、軸部76の基端部に固定ボス93の段差部93Aが当接された状態で、該固定ボス93を介してメカニズムカバー71の支持ボス91に軸支されて、ロッキングギヤ81と一体的に回転可能に軸支される。
【0060】
また、図8乃至図12に示すように、クラッチ85のメカニズムカバー71側には、貫通孔112に対して同軸に、ロッキングギヤ81のロッキングギヤ歯81Aが形成された円環状のリブの内周径よりも少し小さい外径を有する円環状のリブ部113が立設されている。このリブ部113の内周面には、後述のようにロックアーム82の係合爪105が係合するクラッチギヤ106が形成されている(図18参照)。このクラッチギヤ106は、後述のようにロッキングギヤ81が、貫通孔112の軸心に対してウエビング引出方向への回転した時のみ、ロックアーム82の係合爪105と係合するように形成されている(図18参照)。
【0061】
また、クラッチ85の板部111の外周部には、リブ部113を囲むように略円環状の外側リブ部115が立設されている。この外側リブ部115のパウル23に対向する角部(図10中、左下角部である。)は、半径方向外側へ延出されて、パウル23の係合歯23Aを含む先端部の側面に立設された案内ピン42がラチェットギヤ35側から遊嵌される略細長状のガイド孔116が形成されている。
【0062】
このガイド孔116は、図11に示すように、外側リブ部115のパウル23に対向する角部に、ウエビング引出方向(図11中、上下方向である。)とほぼ平行な長溝状に形成されている。これにより、後述のようにクラッチ85がウエビング引出方向(図10中、矢印103方向である。)へ回動された場合には、案内ピン42がガイド孔116に沿って移動され、パウル23の各係合歯23A、23Bがラチェットギヤ35のラチェットギヤ部35Aへ近づくように回動される(図18〜図20参照)。
【0063】
また、パウル23は捩りコイルバネ26の付勢力によってラチェットギヤ35から離反する方向へ回動付勢されており、クラッチ85は、ガイド孔116に遊嵌されたパウル23の案内ピン42により付勢されている。この付勢力によってクラッチ85は、ガイド孔116において、クラッチ85の回転半径方向で最もラチェットギヤ35から離反する位置にある端縁部(図10中、ガイド孔116の下側端縁部である。)に、パウル23の案内ピン42が当接する状態の回転姿勢になるように付勢されることで、ウエビング引出方向とは反対方向に回転付勢されている。そして同時にパウル23は、通常時には、ガイド孔116において、クラッチ85の半径方向で最もラチェットギヤ35から離反する位置にある端縁部(図10中、ガイド孔116の下側端縁部である。)に、パウル23の案内ピン42が当接して回動を規制されるため、切欠部38の奥側近傍に位置するように保持されている。
【0064】
また、図8乃至図12に示すように、クラッチ85の外側リブ部115の下端縁部(図8中、下端縁部である。)には、ガイド孔116の近傍位置からセンサ収容部88の上方(図8中、上方向である。)に対向する部分において、巻取ドラムユニット6の回転軸方向にメカニズム収容部87の底面部近傍まで延出された板状の延出部117が形成されている。また、延出部117のガイド孔116に対して反対側の端縁部の近傍位置には、パイロットレバー86の円筒状の軸部118に嵌挿される細い円柱状の取付ボス121が、延出部117の延出方向の高さとほぼ同じ高さでメカニズムカバー71側へ立設されている。
【0065】
ここで、パイロットレバー86は、円筒状の軸部118と、係合爪部86Aと、薄板状の受け板部122と、薄板状の連結板部123とから構成されている。軸部118の軸方向長さは、延出部117の延出方向の高さとほぼ同じ寸法に形成されている。また、係合爪部86Aは、軸部118のリブ部113に対向する外周面から接線方向ガイド孔116側へ、該軸部118の外径のほぼ半分の寸法の幅と厚さで、所定長さ突設されている。
【0066】
また、受け板部122は、係合爪部86Aに対向するように軸部118の延出部117に対向する外周面の軸方向中央部から係合爪部86Aの幅寸法とほぼ同じ幅寸法で接線方向ガイド孔116側へ突設されて、先端部が係合爪部86の先端側へ斜めに曲げられている。また、連結板部123は、係合爪部86Aと受け板部122の先端部を連結するように形成されている。
【0067】
また、図8、図13及び図14に示すように、延出部117の取付ボス121に対向する端縁部には、パイロットレバー支持ブロック125が延出部117の延出方向の高さと同じ高さでメカニズムカバー71側へ突設されている。このパイロットレバー支持ブロック125の取付ボス121に対向する内側には、延出部117の端縁部から取付ボス121側へ少し斜めに延出され、更に、取付ボス121と同軸で、且つ、パイロットレバー86の軸部118の外周面の半径よりも少し大きい(例えば、約0.1mm大きい。)曲率半径の正面視略半円形状の滑らかな曲面に形成された荷重受け面126が設けられている。
【0068】
また、延出部117のパイロットレバー支持ブロック125側の端縁部には、取付ボス121のほぼ鉛直方向下側の位置からガイド孔116側へ平面視長方形の開口部127が形成されている。この開口部127は、図10、図13及び図14に示すように、軸部118が取付ボス121に嵌挿されたパイロットレバー86が、自重により鉛直方向下側(図14中、下方向である。)へ回動した場合には、受け板部122及び連結板部123が当該開口部127内へ進入可能に形成されている。
【0069】
また、図9及び図11に示すように、クラッチ85の開口部127は、メカニズムカバー71の開口部89に対向するように設けられており、センサ収容部88に配置された車両加速度センサ28のセンサレバー53が鉛直方向上側へ回動した場合には、ロック爪53Aが進入可能に構成されている。
【0070】
そして、図13に示すように、パイロットレバー86の軸部118をクラッチ85の取付ボス121に嵌挿しつつ、係合爪部86Aの先端をリブ部113の外周面に当接させた場合には、受け板部122と延出部117との間には、狭い隙間124(例えば、約1mmの隙間である。)が形成される。
【0071】
これにより、パイロットレバー86の軸部118をクラッチ85の板部111に当接するまで嵌挿して、当該パイロットレバー86を取付ボス121に回動可能に取り付けることができる。また、軸部118の外周面とパイロットレバー支持ブロック125の荷重受け面126との間には、所定隙間128(例えば、約0.1mmの隙間である。)が形成されているため、パイロットレバー86は鉛直方向上下にスムーズに回動する。
【0072】
その後、図14に示すように、パイロットレバー86が、自重により鉛直方向下側(図14中、下方向である。)へ回動した場合には、受け板部122が、開口部127のパイロットレバー支持ブロック125側の端縁部に当接して、鉛直方向下側(図14中、下方向である。)への回転角度が規制される。また、受け板部122の鉛直方向下端部が、当該開口部127のほぼ鉛直方向下端部に位置すると共に、係合爪部86Aがクラッチ85のリブ部113の接線方向に対してほぼ平行な状態となる。つまり、クラッチ85のリブ部113の外周面と係合爪部86Aとの間に、ロッキングギヤ81のロッキングギヤ歯81Aを挿入することが可能な隙間129が形成される。
【0073】
続いて、図15に示すように、パイロットレバー86が鉛直方向下側(図15中、下方向である。)に回動した状態で、クラッチ85の貫通孔112にロッキングギヤ81の固定ボス93の段差部93Aを嵌挿することによって、クラッチ85のリブ部113の外周面と係合爪部86Aとの間に、ロッキングギヤ歯81Aが回転可能に配置される。
【0074】
従って、パイロットレバー86が鉛直方向上側(図15中、上方向である。)へ回動しても、係合爪部86Aがロッキングギヤ歯81Aに当接するため、パイロットレバー86の受け板部122は、開口部127内に位置している。これにより、クラッチ85にロッキングギヤ81を取り付けることによって、パイロットレバー86が取付ボス121から抜けることを防止できる。
【0075】
また、図16に示すように、センサレバー53が鉛直方向上側(図16中、上方向である。)へ回動されて、ロック爪53Aによって係合爪部86Aがロッキングギヤ歯81Aに係合された状態で、ロッキングギヤ81がウエビング引出方向(矢印131方向である。)へ回転した場合には(図22参照)、係合爪部86Aには、取付ボス121側方向(矢印132方向である。)の大きな荷重が加わる。
【0076】
そして、係合爪部86Aに加わった荷重によって取付ボス121が撓んだ場合には、軸部118の外周面が、パイロットレバー支持ブロック125の荷重受け面126に当接するため、当該押圧荷重を軸部118を介して荷重受け面126で支持することができる。これにより、パイロットレバー86及び取付ボス121を小さくしても、押圧荷重を支持する軸部118及び取付ボス121の変形や破損を防止できる。
【0077】
次に、ロック機構10の動作について図17乃至図24に基づいて説明する。各図においてウエビング3の引き出し方向は矢印135方向である。また、各図において、反時計方向の回転方向がウエビング3が引き出される時の巻取ドラムユニット6の回転方向(ウエビング引出方向)である。また、ロック機構10の動作の説明上、必要に応じて図面の一部を切り欠いて表示している。
【0078】
ここで、ロック機構10は、ウエビング3の急な引き出しに対して作動する「ウエビング感応式ロック機構」と、車両の揺れや傾きなどに起因して生ずる加速度に感応して作動する「車体感応式ロック機構」との2種類のロック機構として動作する。また、「ウエビング感応式ロック機構」および「車体感応式ロック機構」では、共にパウル23の動作は共通である。このため、図17乃至図24において、パウル23とラチェットギヤ35との関係を示す部分については、その一部を切り欠いた状態として表示している。
【0079】
[ウエビング感応式ロック機構の動作説明]
先ず、「ウエビング感応式ロック機構」の動作について図17乃至図20に基づいて説明する。図17乃至図20は、「ウエビング感応式ロック機構」の動作を説明する説明図である。「ウエビング感応式ロック機構」では、パウル23とラチェットギヤ35との関係を示す部分に加えて、ロックアーム82とクラッチギヤ106との関係を示す部分、及びセンサスプリング83の動きを示す部分を切り欠いて示している。
【0080】
図17及び図18に示すように、ロックアーム82は、ロッキングギヤ81の支持ボス96によってピボット軸97が回動自在に支持されているため、ウエビング3の引出加速度が所定加速度(例えば、約2.0Gである。尚、1G≒9.8m/s2とする。)を超えた場合には、ロッキングギヤ81のウエビング引出方向(矢印136方向である。)への回転に対してロックアーム82に慣性遅れが生じる。
【0081】
このため、ストッパ107に当接していたロックアーム82は、センサスプリング83の付勢力に抗して初期位置を維持するため、当該ロッキングギヤ81に対してピボット軸97を中心に時計方向に回動され、回り止め108に当接するまで回動される。そのため、ロックアーム82の係合爪105は、ロッキングギヤ81の回転軸に対して半径方向外側へ回動されて、クラッチ85のクラッチギヤ106に係合する。
【0082】
そして、図18及び図19に示すように、ウエビング3の引き出しが所定加速度を超えて継続された場合には、ロッキングギヤ81が更にウエビング引出方向へ回転されるため、ロックアーム82の係合爪105は、クラッチギヤ106に係合した状態で、回り止め108によってウエビング引出方向(矢印136方向である。)へ回動される。従って、ロックアーム82によってクラッチギヤ106がウエビング引出方向へ回動されるため、クラッチ85は、捩りコイルバネ26によってラチェットギヤ35から離反する方向へ回動付勢されているパウル23の案内ピン42による付勢力に抗して、ロッキングギヤ81の固定ボス93の軸心回りにウエビング引出方向へ回動される。
【0083】
これにより、クラッチ85のウエビング引出方向への回動に伴って、パウル23の案内ピン42は、当該クラッチ85のガイド孔116によって案内されるため、当該パウル23は捩りコイルバネ26の付勢力に抗して、ラチェットギヤ35側へ回動される(矢印137方向である。)。
【0084】
そして、図20に示すように、ウエビング3の引き出しが所定加速度を超えて更に継続された場合には、クラッチ85は捩りコイルバネ26によってラチェットギヤ35から離反する方向へ回動付勢されているパウル23の案内ピン42による付勢力に抗して、ウエビング引出方向(矢印136方向である。)へ更に回動される。このため、パウル23の案内ピン42は、当該クラッチ85のガイド孔116によって更に案内されて、当該パウル23は捩りコイルバネ26の付勢力に抗して、ラチェットギヤ35のラチェットギヤ部35Aに係合される。これにより、巻取ドラムユニット6の回転がロックされてウエビング3の引き出しがロックされる。
【0085】
その後、ウエビング3に加わる引き出し方向の引張力が緩められた場合には、巻取バネユニット8の付勢力によって、巻取ドラムユニット6がウエビング巻取方向(矢印136に対して反対方向である。)に回転される。これにより、ラチェットギヤ35とパウル23との係合が解除されて、パウル23は捩りコイルバネ26によってラチェットギヤ35から離反する方向へ回動される。
【0086】
従って、ウエビング3に加わる引き出し方向の引張力が緩められて通常時に戻った場合には、パウル23は捩りコイルバネ26の回動付勢力によってラチェットギヤ35から離間し、パウル23による巻取ドラムユニット6のロック状態が解除される(図17参照)。また、パウル23の捩りコイルバネ26の付勢力による回動に伴って、パウル23の案内ピン42がガイド孔116を逆方向に移動するため、クラッチ85はウエビング巻取方向(図20中、時計方向である。)へ回動されて、案内ピン42がガイド孔116の最もラチェットギヤ35から離反する位置にある端縁部(図17中、ガイド孔116の下側端縁部である。)に当接した通常状態の回転姿勢に戻る(図17参照)。
【0087】
また、ロックアーム82は、センサスプリング83の付勢力によってウエビング引出方向(図20中、反時計方向である。)へ回動されて、ストッパ107に当接され、当該ロックアーム82の係合爪105とクラッチギヤ106との係合が解除される(図17参照)。
【0088】
[車体感応式ロック機構の動作説明]
次に、「車体感応式ロック機構」の動作について図21乃至図24に基づいて説明する。図21乃至図24は、「車体感応式ロック機構」の動作を説明する説明図である。「車体感応式ロック機構」では、パウル23とラチェットギヤ35との関係を示す部分に加えて、車両加速度センサ28のセンサーホルダ51及びセンサレバー53の部分を切り欠いて示している。
【0089】
図21及び図22に示すように、車両加速度センサ28の球状体の慣性質量体52は、センサーホルダ51のすり鉢状の底面部に載置されているため、車体の揺れや傾きなどによる加速度が所定加速度(例えば、約2.0Gである。)を超えた場合には、センサーホルダ51の底面部を移動してセンサレバー53を鉛直方向上側へ回動させる。
【0090】
このため、センサレバー53のロック爪53Aが、クラッチ85の延出部117に設けられた開口部127内に進入し、クラッチ85の取付ボス121に回転自在に取り付けられているパイロットレバー86の受け板部122に当接して、当該パイロットレバー86を鉛直方向上側へ回動させる。従って、パイロットレバー86は取付ボス121の軸心回りに時計方向(矢印138方向である。)に回動され、当該パイロットレバー86の係合爪部86Aの先端部は、ロッキングギヤ81の外周部に形成されたロッキングギヤ歯81Aに係合する。
【0091】
そして、図22及び図23に示すように、パイロットレバー86がロッキングギヤ81のロッキングギヤ歯81Aに係合した状態で、ウエビング3が引き出された場合には、当該ロッキングギヤ81がウエビング引出方向(矢印141方向である。)へ回動される。また、ロッキングギヤ81のウエビング引出方向への回転は、パイロットレバー86、取付ボス121及びパイロットレバー支持ブロック125を介してクラッチ85へ伝達される。
【0092】
このため、ロッキングギヤ81のウエビング引出方向への回転に伴って、当該クラッチ85は、捩りコイルバネ26によってラチェットギヤ35から離反する方向へ回動付勢されているパウル23の案内ピン42による付勢力に抗して、ロッキングギヤ81の固定ボス93の軸心回りにウエビング引出方向へ回動される。これにより、クラッチ85のウエビング引出方向への回動に伴って、パウル23の案内ピン42は、当該クラッチ85のガイド孔116に案内されるため、当該パウル23はラチェットギヤ35側へ回動される(矢印142方向である。)。
【0093】
そして、図24に示すように、ウエビング3の引き出しが更に継続された場合には、クラッチ85は、捩りコイルバネ26によってラチェットギヤ35から離反する方向へ回動付勢されているパウル23の案内ピン42による付勢力に抗して、ウエビング引出方向(矢印141方向である。)へ更に回動される。このため、パウル23の案内ピン42は、当該クラッチ85のガイド孔116に案内されて、当該パウル23はラチェットギヤ35のラチェットギヤ部35Aに係合される。これにより、巻取ドラムユニット6の回転がロックされてウエビング3の引き出しがロックされる。
【0094】
その後、ウエビング3に加わる引き出し方向の引張力が緩められた場合には、巻取バネユニット8の付勢力によって、巻取ドラムユニット6がウエビング巻取方向(矢印141に対して反対方向である。)に回転される。これにより、ラチェットギヤ35とパウル23との係合が解除されて、パウル23は捩りコイルバネ26によってラチェットギヤ35から離反する方向へ回動される。また、パイロットレバー86とロッキングギヤ歯81Aとの係合が解除されて、パイロットレバー86は開口部127内方向へ自重により回動される。
【0095】
従って、ウエビング3に加わる引き出し方向の引張力が緩められて通常時に戻ると共に、車両加速度センサ28の慣性質量体52が、センサーホルダ51のすり鉢状の底面中央部に位置する通常時に戻った場合には、パウル23は捩りコイルバネ26の回動付勢力によってラチェットギヤ35から離間し、パウル23による巻取ドラムユニット6のロック状態が解除される(図21参照)。
【0096】
また、パウル23の捩りコイルバネ26の付勢力による回動に伴って、パウル23の案内ピン42がガイド孔116を逆方向に移動するため、クラッチ85はウエビング巻取り方向(図24中、時計方向である。)へ回動されて、案内ピン42がガイド孔116の最もラチェットギヤ35から離反する位置にある端縁部(図21中、ガイド孔116の下側端縁部である。)に当接した通常状態の回転姿勢に戻る(図21参照)。また、パイロットレバー86は自重により車両加速度センサ28側へ回動され、受け板部122が開口部127内に入って、センサレバー53のロック爪53Aの近傍に位置する(図21参照)。
【0097】
[巻取ドラムユニットの概略構成]
次に、巻取ドラムユニット6の概略構成について図2、図3、図25乃至図29に基づいて説明する。図25は巻取ドラムユニット6の軸心を含む断面図である。図26は巻取ドラムユニット6の分解斜視図である。図27は巻取ドラム151をラチェットギヤ35の取り付け側から見た正面図である。図28はラチェットギヤ35の斜視図である。図29は図25のX2−X2矢視断面図である。
図25及び図26に示すように、巻取ドラムユニット6は、巻取ドラム151と、トーションバー152と、ワイヤ153と、ラチェットギヤ35とから構成されている。
【0098】
図2、図3、図25及び図26に示すように、巻取ドラム151は、アルミダイカストや亜鉛ダイカスト等により形成されて、プリテンショナユニット7側の端面部が閉塞された略円筒状に形成されている。また、巻取ドラム151の軸心方向のプリテンショナユニット7側の端縁部には、外周部から径方向に延出され、更に略直角外側方向(図25中、左側方向である。)に延出されたフランジ部155が形成されている。また、このフランジ部155の内周面には、後述のように車両衝突時に各クラッチパウル202(図30参照)が係合してピニオンギヤ185(図30参照)の回転が伝達される内歯ギヤ156が形成されている。
【0099】
また、巻取ドラム151のプリテンショナユニット7側の端面部中央位置には、円筒状のボス157が立設されている。このボス157は、後述のポリアセタール等の合成樹脂材により形成されたベアリング205(図30参照)に嵌入され、ボス157の基端部がベアリング205に当接される。これにより、巻取ドラムユニット6の一端側は、ベアリング205を介してプリテンショナユニット7を構成するピニオンギヤ185のボス部185D(図30参照)に回転可能に支持される。従って、巻取ドラムユニット6は、プリテンショナユニット7とロックユニット9とによって回転軸方向のガタツキを防止して回転可能に支持される。
【0100】
また、巻取ドラム151の内側には、中心軸に沿って徐々に細くなるように抜き勾配が形成された軸孔151Aが形成されている。また、図25及び図27に示すように、この軸孔151A内のフランジ部155側端部の内周面には、断面略台形状の5個の突出部158A〜158Eが、周方向一定間隔で半径方向内側へリブ状に突設されている。また、トーションバー152は、スチール材等により形成され、断面円形の棒状をした軸部152Cと、この軸部152Cの両端部に形成された各スプライン152A、152Bとから構成されている。
【0101】
また、各突出部158A〜158Eは、スチール材等により形成されるトーションバー152の一端部に形成されたスプライン152Aの各突起部の間に嵌合可能に突設されている。これにより、図25及び図26に示すように、トーションバー152のスプライン152A側をスプール151の軸孔151Aに挿入して各突出部158A〜158E間へ圧入することによって、トーションバー152は巻取ドラム151内に相対回転不能に圧入固定される。
【0102】
また、図25乃至図27に示すように、巻取ドラム151の軸心方向のロックユニット9側の端縁部には、外周部から径方向に延出され、更に略直角外側方向(図25中、右側方向である。)に延出された正面視略卵形のフランジ部161が形成されている。このフランジ部161のラチェットギヤ35の外周部よりも半径方向外側に突出する部分の内側面には、ラチェットギヤ35から半径方向外側に突出するワイヤ153が嵌め込まれる正面視略山形の凸部162が形成されている。
【0103】
また、この凸部162の外周部には、ワイヤ153が摺動案内されて引き出される略V字状の屈曲路163が形成されている(図29参照)。従って、ワイヤ153が当該屈曲路163を通過する際には、少なくともV字状の頂点で屈曲変形され、引き出し抵抗が発生する。また、フランジ部161の外周部には、装着されたワイヤ153が視認可能なように、2箇所に各窓部164が形成されている(図29参照)。
【0104】
また、巻取ドラム151の軸心方向のロックユニット9側の端面には、軸孔151Aの開口部の周縁部から軸方向外側に円筒状の筒部165が突設されている。この筒部165は軸孔151A内に圧入されたトーションバー152の他端側のスプライン152Bを所定隙間を形成して囲むように設けられている。
【0105】
また、ラチェットギヤ35は、図25、図26及び図28に示すように、アルミダイカストや亜鉛ダイカスト等により形成され、軸断面略リング状で外周部にラチェットギヤ部35Aが形成され、その内側中央位置に円筒状の固定ボス166が立設されている。固定ボス166の内周面には、トーションバー152の他端側に形成されるスプライン152Bが圧入されるスプライン溝166Aが形成されている。また、ラチェットギヤ部35Aの内周部は、巻取ドラム151の筒部165が嵌挿可能な内径に形成されている。
【0106】
尚、トーションバー152の他端側に形成されるスプライン152Bの外径は、該トーションバー152の一端側に形成されるスプライン152Aの外径よりも少し小さい径に形成されている。
【0107】
また、図28及び図29に示すように、ラチェットギヤ35は、ラチェットギヤ部35Aの巻取ドラム151側の端面部から全周に渡って半径方向外側に延出された正面視リング状のフランジ部167が形成されている。そして、このフランジ部167の巻取ドラム151側に対向する面には、ワイヤ固定部168が設けられている。
【0108】
ワイヤ固定部168は、フランジ部167の内側周縁から正面視C形に突出した半径方向の幅が狭い幅狭の凸部171と、この凸部171の相対向する端縁部のうち、ウエビング3の巻取方向側の端縁部171A(図29中、右下側の端縁部171Aである。)とワイヤ153の外径とほぼ同じ幅の溝部172を形成するように突出した正面視略山形の凸部173と、この凸部173とワイヤ153の外径とほぼ同じ幅の溝部175を形成すると共に、凸部171のウエビング3の引出方向側の端縁部171B(図29中、右上側の端縁部171Bである。)とワイヤ153の外径とほぼ同じ幅の溝部177を形成するように突出した正面視半径方向内側向きの略台形状の凸部176とから構成されている。この凸部171は正面視、固定ボス166と同軸の正面視C形の円弧状の外周面を有するように形成されている。
【0109】
また、各凸部171、173、各凸部173、176、及び各凸部176、171のそれぞれの対向面には、各溝部172、175、177の深さ方向にそって突条の各リブ179が形成されている。また、各溝部172、175、177の対向する各リブ179間の距離は、ワイヤ153の外径よりも小さくなるように形成されている。
【0110】
ここで、ワイヤ153のラチェットギヤ35及び巻取ドラム151への取り付けについて図25、図26及び図29に基づいて説明する。
図26及び図29に示すように、先ず、ワイヤ153の一端側の略S字状に屈曲されている屈曲部153Aを、ラチェットギヤ35の各凸部171、173、各凸部173、176、及び各凸部176、171とによって形成された各溝部172、175、177内に、各リブ179を潰しながら嵌入する。また、ワイヤ153の屈曲部153Aに連続して形成される正面視くの字状の屈曲部153Bを、フランジ部167の外周よりも外側に突出させる。
【0111】
また、ワイヤ153の屈曲部153Bに連続して形成される円弧状の屈曲部153Cを、凸部171の外周面に沿って配置する。これにより、ワイヤ153の一端側の屈曲部153Aが、ラチェットギヤ35のフランジ部167に形成された各溝部172、175、177に嵌入されて固定保持されると共に、ワイヤ153の屈曲部153Cがフランジ部167に対向した状態で配置される。
【0112】
続いて、ワイヤ153及びラチェットギヤ35の巻取ドラム151への取り付けは、先ず、ラチェットギヤ35のフランジ部167の外周よりも外側に突出しているワイヤ153の正面視くの字状の屈曲部153Bを、巻取ドラム151のフランジ部161に設けられた凸部162の外周部に形成された屈曲路163内に挿入する。
【0113】
また、同時に、ラチェットギヤ35の固定ボス166を巻取ドラム151の筒部165内に挿入して、トーションバー152の他端側に形成されたスプライン152Bを当該固定ボス166のスプライン溝166Aに圧入する。これにより、巻取ドラム151のフランジ部161とラチェットギヤ35のフランジ部167との間に、ワイヤ153が配置されると共に、ラチェットギヤ35が巻取ドラム151に装着される。
【0114】
[プリテンショナユニットの概略構成]
次に、プリテンショナユニット7の概略構成について図2、図3、図30及び図31に基づいて説明する。図30はプリテンショナユニット7の分解斜視図である。図31はプリテンショナユニット7の内部構造を示す断面図である。
プリテンショナユニット7は、車両衝突時等の緊急時に巻取ドラム151をウエビング巻取方向に回転させて、ウエビング3の弛みを除去し、乗員を座席にしっかりと拘束するように構成されている。
【0115】
図30及び図31に示すように、プリテンショナユニット7は、ガス発生部材181と、パイプシリンダ182と、ピストン183と、ピニオンギヤ185と、クラッチ機構186と、ベアリング205を備えている。
ガス発生部材181は、火薬等のガス発生剤を含んでおり、図示省略の制御部からの着火信号によりガス発生剤を着火させて当該ガス発生剤の燃焼でガスを発生させるように構成されている。
【0116】
また、パイプシリンダ182は、直線状のピストン案内筒部182Aの一端部にガス導入部182Bが連接されたL字状の筒部材に形成されている。このガス導入部182Bにはガス発生部材181が収納される。従って、ガス発生部材181により発生したガスは、ガス導入部182Bからピストン案内筒部182A内に導入される。また、ピストン案内筒部182Aの一側部における長手方向中間部には、開口部187が形成され、後述のようにピニオンギヤ185のピニオンギヤ歯185Aの一部が配設される。
【0117】
このパイプシリンダ182は、ハウジング11の側壁部13側のベースプレート188と、外側のカバープレート191とによって挟持されると共に、これらの間でベースブロック192とカバープレート191とによって挟持された状態で、各ネジ15によって側壁部13の外面に取り付け固定される。
【0118】
また、ピストン案内筒部182Aの上端部には、プリテンショナユニット7を側壁部13に取り付けると共に、ピストン183の抜け止め及びパイプシリンダ182の抜け止め、回転止めとして機能するストッパーピン16を挿通可能な一対の貫通孔182Cが相対向して形成されている。
【0119】
ピストン183は、スチール材等の金属部材で形成されて、ピストン案内筒部182Aの上端側から挿入可能な断面略長方形で、全体として長尺状の形状を有している。また、ピストン183のピニオンギヤ185側の側面には、ピニオンギヤ歯185Aに噛合するラック183Aが形成されている。また、ピストン183のガス発生部材181側の端面は、ピストン案内筒部182Aの断面形状に応じた円形端面183Bに形成されている。この円形端面183Bには、ゴム材等によって形成されたシールプレート193が取り付けられている。
【0120】
このピストン183は、その長手方向に沿って長い断面矩形状の貫通孔183Cが形成され、両側面部が連通されている。また、シールプレート193のガスを受圧する受圧側面から貫通孔183Cに連通するガス抜き孔195が、ピストン183とシールプレート193に形成されている。このピストン183は、図31に示すように、プリテンショナユニット7が動作する前、つまり、ガス発生部材181によりガスが発生しない通常時の待機状態の場合には、ラック183Aがピニオンギヤ歯185Aと非噛合状態となる位置まで、ピストン案内筒部182Aの奥側に挿入配置される。
【0121】
ピニオンギヤ185は、スチール材等で形成された円柱状部材であり、その外周部にはラック183Aに噛合可能なピニオンギヤ歯185Aが形成されている。また、ピニオンギヤ歯185Aよりカバープレート191側へ延出された円筒状の支持部185Bが形成されている。この支持部185Bが側壁部13に取り付けられるカバープレート191に形成された支持孔196に回転可能に嵌入される。
【0122】
そして、支持部185Bが支持孔196に回転可能に嵌入された状態では、ピニオンギヤ歯185Aの一部が、ピストン案内筒部182Aの開口部187内に配設されている。そして、図31に示すように、ピストン183が通常時の待機状態よりピストン案内筒部182Aの先端側に移動すると、ラック183Aがピニオンギヤ歯185Aに噛合して、ピニオンギヤ185がウエビング巻取方向へ回転する。
【0123】
また、このピニオンギヤ185の回転は、クラッチ機構186を介して巻取ドラム151に伝達される。
即ち、ピニオンギヤ185の軸心方向の側壁部13側の端部には、軸心方向に沿って突出する円筒状のボス部185Dが形成されている。ボス部185Dの外周面には、基端部の外径を有する3個ずつのスプラインが中心角約120度間隔で形成されている。このボス部185Dはベースプレート188に形成された貫通孔197に回転可能に嵌入されて、巻取ドラム151側に突出配置される。
【0124】
また、クラッチ機構186は、通常時においてピニオンギヤ185に対して巻取ドラム151を自由回転させる状態(クラッチパウル202が収納された状態)から、プリテンショナユニット7の作動時において、ピニオンギヤ185の回転を巻取ドラム151に伝達する状態(クラッチパウル202が突出した状態)へ切り替え可能に構成されている。
【0125】
クラッチ機構186は、スチール材等で形成されたパウルベース201と、スチール材等で形成された3個のクラッチパウル202と、ポリアセタール等の合成樹脂で形成されて、パウルベース201と共に各クラッチパウル202を支持する略円環状のパウルガイド203とから構成されている。
【0126】
パウルベース201の中央部には、ピニオンギヤ185のボス部185Dが嵌め込まれるようにスプライン溝が中心角約120度間隔で3個ずつ形成された嵌合孔206が設けられ、この嵌合孔206にボス部185Dが圧入されることによって、パウルベース201がピニオンギヤ185に対して相対回転不能に取り付けられる。つまり、パウルベース201とピニオンギヤ185とは一体回転するように構成されている。
【0127】
そして、ボス部185Dがパウルベース201の嵌合孔206に圧入された状態で、円筒状に形成されたボス部185Dにポリアセタール等の合成樹脂材により形成されたベアリング205が嵌め込まれる。また、ベアリング205には、巻取ドラム151のプリテンショナユニット7側の端面部中央位置に立設されたボス157が回転可能に嵌入される。このパウルベース201には、各クラッチパウル202が収容姿勢で支持されている。収容姿勢は、各クラッチパウル202の全体をパウルベース201の外周縁部内に収めた姿勢である。
【0128】
パウルガイド203は、略円環状の部材であり、パウルベース201及び各クラッチパウル202に対向する位置に配設されている。このパウルガイド203のベースプレート188側の側面には3個の位置決突起(不図示)が突設されており、各位置決突起がベースプレート188の各位置決め孔188Aに嵌入されて、待機状態において、パウルガイド203がベースプレート188に回転不能な状態で取付固定される。
【0129】
また、パウルガイド203のパウルベース201側の面には、各クラッチパウル202に対応して各姿勢変更用突起部203Aが突設されている。そして、プリテンショナユニット7の作動によってパウルベース201とパウルガイド203とが相対回転すると、各クラッチパウル202が姿勢変更用突起部203Aにそれぞれ当接して、収容姿勢から係止姿勢に姿勢変更されるようになっている。係止姿勢は、クラッチパウル202の先端部をパウルベース201の外周縁部外方へ突出させた姿勢である。
【0130】
また、各クラッチパウル202が係止姿勢に姿勢変更すると、巻取ドラム151に係合する。具体的には、ベアリング205を介してクラッチ機構186は、巻取ドラム151のボス157に嵌入され、巻取ドラム151を回転可能に支持しており、各クラッチパウル202がパウルベース201の外周縁部外方へ突出した場合には、フランジ部155の内周面に形成された内歯ギヤ156に係合可能とされている。
【0131】
そして、各クラッチパウル202が係止姿勢に姿勢変更すると、各クラッチパウル202の先端部が内歯ギヤ156に係合し、これにより、パウルベース201が巻取ドラム151を回転させるようになる。尚、クラッチパウル202と内歯ギヤ156との係合は、巻取ドラム151をウエビング3の巻取方向へ回転させる、一方向のみへの係合構造である。
【0132】
また、一度係合すると各クラッチパウル202が互いに変形を伴って内歯ギヤ156に噛み込むので、係合後、巻取ドラム151がウエビング引出方向へ回転すると、ピニオンギヤ185を、プリテンショナユニット7が作動する際とは逆の方向に、クラッチ機構186を介して回転させて、ピストン183を作動方向とは逆方向に押し戻す。そして、ピストン183のラック183Aと、ピニオンギヤ185のピニオンギヤ歯185Aとの噛み合いが外れる位置までピストン183が押し戻されると、ピニオンギヤ185はピストン183から外れるので、巻取ドラム151はピストン183に対して自由回転できるようになる。
【0133】
次に、上記のように構成されたプリテンショナユニット7が作動してウエビング3を巻き取る動作について図31及び図32に基づいて説明する。図32は車両衝突時のパウル23の動作を示す説明図である。
図31に示すように、車両衝突時等において、プリテンショナユニット7のガス発生部材181が作動した場合には、発生したガスの圧力によりピストン183がピストン案内筒部182Aの先端側に向けて移動すると共に、ラック183Aと噛み合ったピニオンギヤ歯185Aを有するピニオンギヤ185が回転する(図31中、左回転する。)。
【0134】
また、車両衝突時等において、車両加速度センサ28の慣性質量体52が、センサーホルダの底面部を移動してセンサレバー53を鉛直方向上側へ回動させるため、上記の通り、センサレバー53のロック爪53Aが、パイロットレバー86を鉛直方向上側へ回動させる。そして、パイロットレバー86の係合爪部86Aが、ロッキングギヤ81の外周部に形成されたロッキングギヤ歯81Aに当接される。
【0135】
尚、パイロットレバー86の係合爪部86Aとロッキングギヤ歯81Aとの係合は、巻取ドラム151をウエビング3の引出方向へ回転させない方向に作動する、一方向のみへの係合構造である。従って、プリテンショナユニット7が作動している際に、パイロットレバー86の係合爪部86Aがロッキングギヤ歯81Aに当接しても、巻取ドラム151は、ウエビング3の巻取方向へスムーズに回転する。
【0136】
そして、図31に示すように、ピニオンギヤ185が回転すると、当該ピニオンギヤ185と一緒にパウルベース201が回転する。この際、パウルガイド203に対してパウルベース201が相対回転することになるため、パウルガイド203に形成された各姿勢変更用突起203Aがクラッチパウル202に当接して、各クラッチパウル202が係止姿勢に変更される。
【0137】
これにより、各クラッチパウル202の先端部が、巻取ドラム151の内歯ギヤ156に係合して、ピストン183がピストン案内筒部182Aの先端側へ移動しようとする力が、ピニオンギヤ185、パウルベース201、各クラッチパウル202及び内歯ギヤ156を介して巻取ドラム151に伝達されて、巻取ドラム151がウエビング3の巻取方向へ回転駆動され、ウエビング3が巻取ドラム151に巻き取られる。
【0138】
また、車両衝突時等において、プリテンショナユニット7の作動後、引き続いて、ウエビング3が引き出され、巻取ドラム151がウエビング引出方向へ回転された場合には、パイロットレバー86の係合爪部86Aが、ロッキングギヤ81の外周部に形成されたロッキングギヤ歯81Aに係合して、クラッチ85が回動され、当該クラッチ85のガイド孔116に案内されたパウル23がラチェットギヤ35のラチェットギヤ部35Aに係合される。
【0139】
従って、車両衝突時等において、プリテンショナユニット7の作動後、引き続いて、ウエビング3が引き出された場合には、パウル23とラチェットギヤ歯35Aとの係合によって、巻取ドラムユニット6のラチェットギヤ35は、ウエビング3の引き出し方向へ回転するのが抑止される。尚、パウル23とラチェットギヤ歯35Aとの係合は、巻取ドラム151をウエビング3の引出方向へ回転させる、一方向のみへの係合構造である。
【0140】
[エネルギー吸収]
次に、車両衝突時等でプリテンショナユニット7の作動後、パウル23とラチェットギヤ35のラチェットギヤ部35Aとの係合が未だ維持されている状態で、乗員が車両に対して相対的に前側へ移動した場合には、ウエビング3に大きな引き出し力が作用する。そして、ウエビング3に作用する引出力が予め設定された所定値を超えて引き出された場合には、巻取ドラム151にウエビング引出方向への回転トルクが作用する。
【0141】
そして、巻取ドラム151に作用するウエビング引出方向への回転トルクによって、トーションバー152の巻取ドラム151の軸孔151Aの奥側に圧入固定されたスプライン152A側が回転され、トーションバー152の軸部152Cの捻れ変形が開始される。このトーションバー152の軸部152Cの捻れ変形に伴って巻取ドラム151がウエビング3の引出方向に回転し、「第1のエネルギー吸収機構」としてのトーションバー152の捻れ変形による衝撃エネルギーの吸収がなされる。
【0142】
また同時に、巻取ドラム151が回転された場合には、パウル23とラチェットギヤ35とは係合されているため、このラチェットギヤ35と巻取ドラム151との相互間においても相対回転が生じる。それにより、巻取ドラム151の回転に伴ってワイヤ153とラチェットギヤ35との相互間においても相対回転が生じ、「第2のエネルギー吸収機構」としてのワイヤ153による衝撃エネルギーの吸収がなされる。
【0143】
[ワイヤの引き出し動作]
ここで、ワイヤ153によって衝撃エネルギーを吸収する際の、当該ワイヤ153の動作について図29、図33乃至図36に基づいて説明する。図33乃至図36はワイヤ153を引き出す動作説明図である。
図29に示されるように、ラチェットギヤ35とフランジ部161との初期状態においては、ラチェットギヤ35のワイヤ固定部168を構成する凸部176と凸部171の端縁部171Bとによって形成された溝部177の一端側が、フランジ部161の凸部162の外周部に形成された屈曲路163の引き出し側端部の近くに位置し、溝部177と屈曲路163の各端部が一直線状になるように対向している。
【0144】
また、ワイヤ153の屈曲部153Aは、ラチェットギヤ35の各凸部171、173、176によって構成されたワイヤ固定部168の各溝部172、175、177内に固定保持されている。また、ワイヤ153の屈曲部153Aに連続するくの字状の屈曲部153Bは、フランジ部161の凸部162の外周部に形成された屈曲路163内に挿入されている。
【0145】
そして、図33乃至図36に示すように、ウエビング3の引き出しによって巻取ドラム151がウエビング3の引出方向に回転した場合には、ラチェットギヤ35はパウル23によって回転が阻止され、巻取ドラム151の回転に伴ってフランジ部161の凸部162が、ウエビング3の引出方向X3へ相対回転されていく。
【0146】
これにより、ラチェットギヤ35の各凸部171、173、176によって構成されたワイヤ固定部168の各溝部172、175、177内に屈曲部153Aが固定保持されたワイヤ153が、フランジ部161の凸部162の外周部に形成された正面視略V字形の屈曲路163から順次しごかれながら、矢印X5方向に引き出されて、凸部171の外周面に巻き取られる。尚、この際には、ワイヤ153の引き出しと同時に、巻取ドラム151の回転に伴ってトーションバー152も捻れ変形している。
【0147】
また、正面視略V字形の屈曲路163をワイヤ153が変形しながら通過する際に、凸部162とワイヤ153との相互間に摺動抵抗が生じると共に、ワイヤ153自体による屈曲抵抗が生じ、これら摺動抵抗と屈曲抵抗による引出抵抗とによってワイヤ153による衝撃エネルギーの吸収がなされる。
【0148】
そして、図36に示すように、巻取ドラム151の回転に伴って、ワイヤ153の他端部が屈曲路163から離脱した時点で、このワイヤ153による衝撃エネルギーの吸収作用は終了し、以降は巻取ドラム151の回転に伴ってトーションバー152の捻れ変形による衝撃エネルギーの吸収のみとなる。
【0149】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1では、パイロットレバー86は、円筒状の軸部118がクラッチ85の下端縁部に立設された取付ボス121に回動可能に嵌挿されている。そして、パイロットレバー86は、通常時には取付ボス121に嵌挿された軸部118の外周面が、クラッチ85に突設されたパイロットレバー支持ブロック125の荷重受け面126と所定隙間128を形成して係合爪部86Aが下方向に回動している。また、パイロットレバー86は、緊急時にセンサレバー53の上方向への揺動によって係合爪部86Aがロッキングギヤ歯81Aに係合して、ロッキングギヤ81のウエビング引出方向への回転により軸部118側へ押圧されて取付ボス121が撓んだ際には、軸部118の外周面がパイロットレバー支持ブロック125の荷重受け面126に当接される。
【0150】
これにより、パイロットレバー86は、係合爪部86Aがロッキングギヤ歯81Aに係合して、軸部118側へ押圧荷重を受けて取付ボス121が撓んでも、軸部118の外周面が、所定隙間128を形成して対向するパイロットレバー支持ブロック125の荷重受け面126に当接するため、ロッキングギヤ81によって大きな押圧荷重が作用しても、簡易な構成で取付ボス121及び軸部118の変形や破損を防止することができる。また、パイロットレバー支持ブロック125の断面形状を大きくすることによって、当該パイロットレバー支持ブロック125の機械的強度を大きくすることができ、取付ボス121及び軸部118の変形や破損を確実に防止することができる。
【0151】
また、ロッキングギヤ81から押圧荷重を受けたパイロットレバー86は、軸部118の外周面がパイロットレバー支持ブロック125の荷重受け面126に当接するため、係合爪部86Aの先端と軸部118との間に当接して押圧荷重を支持する部材を設ける必要がない。このため、係合爪部86Aの全長を短くして小型化することができ、当該係合爪部86Aを厚肉形状に形成しても、パイロットレバー86の機械的強度の向上を図ると共に質量の軽量化を図ることができる。
【0152】
また、通常時には取付ボス121に嵌挿された軸部118の外周面が、パイロットレバー支持ブロック125の荷重受け面126と所定隙間を形成して係合爪部86Aが自重により下方向に回動しているため、パイロットレバー86の小型化を図ることによって、車両加速度センサ28のセンサレバー53の上方向への揺動感度の向上を図ることができ、車両加速度センサ28の感度の向上を図ることができる。更に、取付ボス121に嵌挿された軸部118の外周面とパイロットレバー支持ブロック125の荷重受け面126との間には所定隙間128が形成されるため、当該軸部118を取付ボス121に容易に嵌挿することができ、組立作業の効率化を図ることができる。
【0153】
また、パイロットレバー支持ブロック125の荷重受け面126は、取付ボス121と同軸に円弧状に窪むように形成されているため、緊急時に係合爪部86Aがロッキングギヤ歯81Aに係合して、取付ボス121が撓んだ際には、軸部118の外周面が当該荷重受け面126に当接される。これにより、パイロットレバー86が受けた押圧荷重を円筒状の軸部118の外周面を介して円弧状に窪んだ荷重受け面126で受けることができ、当該押圧荷重を荷重受け面126の全面で分散して受けることが可能となり、取付ボス121及び軸部118の変形や破損を確実に防止することができる。
【0154】
また、パイロットレバー支持ブロック125は、円弧状に窪んだ荷重受け面126で押圧荷重を分散して支持することが可能となり、当該パイロットレバー支持ブロック125の小型化を図ることができ、引いてはクラッチ85の小型化を図ることができる。また、パイロットレバー支持ブロック125の荷重受け面126は、通常時には取付ボス121に嵌挿された軸部118の外周面と所定隙間128を形成するため、当該軸部118を取付ボス121に嵌挿する際の案内面を構成し、組立作業の更なる効率化を図ることができる。
【0155】
更に、パイロットレバー支持ブロック125は、取付ボス121とほぼ同じ高さになるように突設されているため、当該パイロットレバー支持ブロック125にパイロットレバー86の軸部118をほぼ全長に渡って当接させることが可能となり、取付ボス121及び軸部118の変形や破損を確実に防止することができる。
【0156】
尚、本発明は前記実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0157】
1 シートベルト用リトラクタ
3 ウエビング
5 ハウジングユニット
6 巻取ドラムユニット
9 ロックユニット
10 ロック機構
11 ハウジング
23 パウル
28 車両加速度センサ
53 センサレバー
81 ロッキングギヤ
81A ロッキングギヤ歯
85 クラッチ
86 パイロットレバー
86A 係合爪部
118 軸部
121 取付ボス
125 パイロットレバー支持ブロック
126 荷重受け面
128 所定隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに回転可能に収納されてウエビングを巻回収納する巻取ドラムと、
前記巻取ドラムと一体に回転するラチェットギヤと、
緊急時に該巻取ドラムのウエビング引出方向への回転を阻止するロック機構と、
車両の所定値以上の加速度に反応して揺動する慣性質量体と、
前記慣性質量体に押動されて揺動して前記ロック機構を起動させるセンサレバーと、
を備え、
前記ロック機構は、
前記巻取ドラムと同軸に回動可能に配置されて、回動により、前記ラチェットギヤに係合して該巻取ドラムのウエビング引出方向への回転を阻止するパウルを誘導するクラッチと、
前記クラッチに立設された取付ボスに回動可能に軸支されて、揺動した前記センサレバーに押圧されて回動されるパイロットレバーと、
前記巻取ドラムに一体、且つ、同軸に取り付けられて、前記パイロットレバーが回動により係合するロッキングギヤと、
を有し、
前記パイロットレバーは、
前記取付ボスに回動可能に嵌挿される円筒状の軸部と、
前記軸部の外周面から突設されて前記ロッキングギヤに係合する係合爪部と、
を有し、
前記クラッチは、前記取付ボスに嵌挿された前記軸部の前記係合爪部に対して径方向反対側の外周面と所定隙間を形成して対向するように突設されたパイロットレバー支持部を有し、
前記パイロットレバーは、通常時には前記取付ボスに嵌挿された前記軸部の外周面が、前記パイロットレバー支持部と所定隙間を形成して前記係合爪部が自重により回動し、緊急時に前記センサレバーの揺動によって前記係合爪部が前記ロッキングギヤに係合して、前記ロッキングギヤのウエビング引出方向への回転により押圧されて前記取付ボスが撓んだ際には、前記軸部の外周面が前記パイロットレバー支持部に当接された状態で、該ロッキングギヤの回動に従って前記クラッチを回動させることを特徴とするシートベルト用リトラクタ。
【請求項2】
前記パイロットレバー支持部は、前記取付ボスと同軸に円弧状に窪むように形成された荷重受け面を有し、
前記荷重受け面は、通常時には前記取付ボスに嵌挿された前記軸部の外周面と前記所定隙間を形成して対向し、緊急時に前記係合爪部が前記ロッキングギヤに係合して、前記取付ボスが撓んだ際には、前記軸部の外周面が前記荷重受け面に当接されることを特徴とする請求項1に記載のシートベルト用リトラクタ。
【請求項3】
前記パイロットレバー支持部は、前記取付ボスに嵌挿された前記軸部とほぼ同じ高さになるように突設されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシートベルト用リトラクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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