説明

シートベルト装置の配設構造

【課題】部品点数を減らすことができ、かつ、組付け作業性を高めることができるシートベルト装置の配設構造を提供すること。
【解決手段】シートベルト装置の配設構造90は、ウェビング32が引き出し・巻き戻し可能に巻きつけられたウェビングリール37を収納するリトラクタ91と、このリトラクタ91から引き出されたウェビング32を車両のルーフ13に沿って案内するためにルーフ13に設けられたガイド部材33と、を備え、ガイド部材33でウェビング32をシート16に向けて案内する。リトラクタ91を車体に取付けるためのフレーム92がリトラクタ91に一体的に形成され、フレーム92は、ボルト52によって車体に取り付けられている。フレーム92には、ウェビング32を案内するガイド98が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リトラクタから引き出されたウェビングを案内するガイド部材をルーフに設け、このガイド部材を用いてルーフからシートに向けてウェビングを案内可能なシートベルト装置の配設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
シートベルト装置の配設構造のなかには、後列シートの車幅方向中央席(以下、「後列中央シート」という)に用いることで、後列中央シートに着座した乗員をウェビングで拘束するものが知られている。
このシートベルト装置の配設構造は、リヤピラーの下部に巻取り装置(以下、「リトラクタ」という)が設けられ、リトラクタから引き出されたウェビングが第1、第2のガイド部材を経てルーフに沿って後列中央シートの上方まで案内可能に構成されている。
そして、後列中央シートの上方まで案内されたウェビングを後列中央シートのバックルに係止することで、後列中央シートに着座した乗員をウェビングで拘束することが可能である。
【0003】
ここで、第1ガイド部材をリヤピラーの上端部、すなわちリヤピラーおよびルーフが交差する交差部の近傍に設けることで、ウェビングをリヤピラーに沿って交差部の近傍まで案内することができる。
さらに、第2ガイド部材をルーフの後列中央シート近傍に設けることで、ルーフに沿って後列中央シートの上方まで案内することができる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−178875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のシートベルト装置の配設構造は、リトラクタから引き出したウェビングを後列中央シートの上方までルーフに沿って案内するために第1、第2のガイド部材(すなわち、2つのガイド部材)を設ける必要がある。
このため、シートベルト装置の配設構造の部品点数が多くなり、さらに、シートベルト装置の配設構造を組み付ける際の作業性を高める妨げになっていた。
【0006】
本発明は、部品点数を減らすことができ、かつ、組付け作業性を高めることができるシートベルト装置の配設構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、ウェビングが引き出し・巻き戻し可能に巻きつけられたウェビングリールを収納するリトラクタと、
このリトラクタから引き出された前記ウェビングを車両のルーフに沿って案内するために前記ルーフに設けられたガイド部材と、を備え、
前記ガイド部材で前記ウェビングをシートに向けて案内するシートベルト装置の配設構造であって、
前記リトラクタの上部を車体に取付けるボルトを有し、
前記ボルトによって締結されるフレームに前記ウェビングを案内するガイドが設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記ガイドが、前記ウェビングの引出し方向を基準として、前記ウェビングリールと前記ボルトとの間に配置されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、ウェビングを引き出し・巻き戻し可能なリトラクタと、
このリトラクタから引き出された前記ウェビングを車両のルーフに沿って案内するために前記ルーフに設けられたガイド部材と、を備え、
前記ガイド部材で前記ウェビングをシートに向けて案内するシートベルト装置の配設構造であって、
前記リトラクタを支持するフレームは、ボルトによって車体に取り付けられ、
前記フレームには、前記ウェビングを案内するガイドが設けられ、
このガイドが、前記ウェビングの引出し方向を基準として、前記ウェビングリールと前記ボルトとの間に配置されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、前記フレームは、前記車体に対して略直交する方向に屈曲して車体内側に延出するガイド屈曲部を有し、
このガイド屈曲部に前記ガイドが設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、前記ガイド屈曲部が前記車体内側に延出する長さは、前記リトラクタの前記車体の内側に向う方向の長さよりも短いことを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明は、前記ウェビングが前記ウェビングリールによって巻き取られ始める位置と、前記ガイド部材とを直線で結んだ場合に、この直線よりも上方に、前記ガイドが配置されていることを特徴とする。
【0013】
請求項7に係る発明は、前記リトラクタは、前記車体の側壁及び前記ルーフが交差する交差部の近傍に取り付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、リトラクタのフレームにガイドを有する。
これにより、従来技術で説明した第1ガイド部材を除去できるので、部品点数を減らすことができ、かつ、組付け作業性を高めることができる。
【0015】
さらに、従来技術で説明した第1ガイド部材を除去することで、第1ガイド部材を締め付ける締結部材(例えば、ボルト)を削減でき、締結部材の本数を減らすことができる。
加えて、リトラクタのフレームにガイドを有することで、ガイドをリトラクタに対して精度よく位置決めすることができる。
これにより、リトラクタから引き出されたウェビングをガイドで安定的に案内することができる。
【0016】
さらに、ガイド屈曲部にガイドを形成することで、ガイドの剛性をガイド屈曲部で高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るシートベルト装置の配設構造(実施例1)を示す斜視図である。
【図2】実施例1に係るシートベルト装置の配設構造で乗員を拘束した状態を示す正面図である。
【図3】図2の3部拡大図である。
【図4】図3のリトラクタを示す断面図である。
【図5】実施例1に係るリトラクタのフレームで荷重を支える例を説明する図である。
【図6】本発明に係るシートベルト装置の配設構造(実施例2)を示す正面図である。
【図7】本発明に係るシートベルト装置の配設構造(実施例3)を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は運転者から見た方向にしたがう。
【実施例1】
【0019】
実施例1に係るシートベルト装置の配設構造20について説明する。
図1、図2に示すように、車体後部構造10は、車体後部11に設けられた車両の側壁としての左右のリヤピラー12(左リヤピラー12のみを図示する)と、左右のリヤピラー12の上端部12aに設けられたルーフ(車両のルーフ)13と、左右のリヤピラー12間に設けられた第3列シート(後列シート)15と、第3列シート15のうち車幅方向の中央席(以下、「後列中央シート」という)16用のシートベルト装置の配設構造20とを備えている。
【0020】
さらに、車体後部構造10は、左リヤピラー12およびルーフ13が交差する左交差部(交差部)22と、右リヤピラーおよびルーフ13が交差する右交差部(図示せず)と、ルーフ13を覆うルーフライニング24と、左右のリヤピラー12を覆うピラーライニング25とを備えている。
【0021】
シートベルト装置の配設構造20は、左リヤピラー12の上端部12aおよび左交差部22に設けられたリトラクタ31と、リトラクタ31から引き出されたウェビング32と、ウェビング32を後列中央シート(シート)16の上方まで案内するガイド部材33と、ガイド部材33で案内されたウェビング32を後列中央シート16に係止する係止手段34とを備えている。
【0022】
図3、図4に示すように、リトラクタ31は、ウェビング32を引出し・巻戻し可能な巻取装置である。
このリトラクタ31は、左リヤピラー12の上端部12aおよび左交差部22に設けられたフレーム(ハウジング)36と、フレーム36に回転自在に設けられたウェビングリール37とを備えている。
【0023】
フレーム36は、ウェビングリール37のうち車内側の部位(以下、「車内側部位」という)37aを覆う略矩形状の基部41(図1も参照)と、基部41の上端41aから車外側へ向けて略直交するように屈曲された上延出部(延出部)42と、基部41の下端41bから車外側へ向けて略直交するように屈曲された下延出部43と、基部41の前端41cおよび後端41d(図1も参照)から車外側へ向けて屈曲された前後のウェビングリール支え部44とを備えている。
【0024】
さらに、フレーム36は、上延出部42および基部41が交差する部位に屈曲部46が形成され、屈曲部46に貫通孔47が形成されている。
この貫通孔47の周囲に樹脂製のガイド部48(図1、図5も参照)を設けることにより、ガイド部48で第1ガイド孔(ガイド孔)49が形成されている。
屈曲部46に第1ガイド孔49を設けることで、第1ガイド孔49の剛性を屈曲部46で高めることができる。
【0025】
この第1ガイド孔49は、ウェビングリール37から引き出されたウェビング32をガイド部材33に向けて案内可能な孔である。
第1ガイド孔49の剛性を高めることで、ウェビング32をガイド部材33に向けて安定的に案内することができる。
【0026】
基部41は、ウェビングリール37に対して車室38側(すなわち、車内側)に設けられることで、ウェビングリール37の車内側部位37aを覆うように車内側部位37aの近傍に設けられている。
さらに、基部41は、上端41aから下端41bに向けて(すなわち、車幅方向外側に向けて)下り勾配に設けられることで、左交差部22や左リヤピラー12の上端部12aに沿った状態に設けられている。
【0027】
上延出部42は、外端42aに上取付片51が設けられている。この上取付片51が、左リヤピラー12およびルーフ13が交差する左交差部22の近傍にボルト52・溶接ナット53で取り付けられている。
よって、上延出部42および第1ガイド孔49が左交差部22の近傍に配置されている(設けられている)。
【0028】
下延出部43は、外端43aに下取付片55が設けられている。この下取付片55が、左リヤピラー12の上端部12aにボルト52・溶接ナット53で取り付けられている。
このように、上取付片51が左交差部22の近傍にボルト止めされ、下取付片55が左リヤピラー12の上端部12aにボルト止めされることで、左交差部22および左リヤピラー12の上端部12aにフレーム36(すなわち、リトラクタ31)が設けられている。
このリトラクタ31は、ピラーライニング25の上部25aで覆われることで車室38から仕切られた空間56に収納されている。
【0029】
ここで、リトラクタ31が左交差部22および左リヤピラー12の上端部12aに設けられることで、フレーム36の第1ガイド孔49を左交差部22の近傍に配置することができる。
よって、第1ガイド孔49でウェビング32を左交差部22の近傍まで案内することができる。
これにより、従来技術で説明した第1ガイド部材を除去できるので、部品点数を減らすことができ、かつ、組付け作業性を高めることができる。
【0030】
さらに、従来技術で説明した第1ガイド部材を除去することで、第1ガイド部材を締め付ける締結部材(例えば、ボルト)を削減でき、締結部材の本数を減らすことができる。
加えて、リトラクタ31のフレーム36に第1ガイド孔49を有することで、第1ガイド孔49をリトラクタ31(ウェビングリール37)に対して精度よく位置決めすることができる。
これにより、リトラクタ31(ウェビングリール37)から引き出されたウェビング32を第1ガイド孔49で安定的に案内することができる。
【0031】
ところで、フレーム36に備えた前後のウェビングリール支え部44は、車体前後方向に所定間隔をおいて設けられている。
そして、前後のウェビングリール支え部44間にウェビングリール37が設けられている。このウェビングリール37は、車体前後方向を向いて略水平に設けられている。
さらに、前後のウェビングリール支え部44は、上端部44aが上延出部42に対して斜め下方に所定間隔H1だけ離れた位置に設けられている。
【0032】
ウェビングリール37は、前後のウェビングリール支え部44に回転軸57を軸にして回転自在に支持されている。
この状態において、ウェビングリール37の上端部37bが、前後のウェビングリール支え部44の上端部44aより僅かに下方に配置されている。
よって、ウェビングリール37の上端部37bは、上延出部42に対して斜め下方に所定間隔H2だけ離れた位置に設けられている。
【0033】
ウェビングリール37の巻取り芯58が回転軸57に対して同軸上に設けられている。
この巻取り芯58にウェビング32の基端部32aが連結され、ウェビング32が巻取り芯58に巻き付けられている。
具体的には、ウェビング32は、車体前方から見た状態で時計回り方向に引出し・巻戻し可能に巻取り芯58に巻き付けられている。
【0034】
ウェビング32は、ウェビングリール37の車内側部位37aから基部41に沿って第1ガイド孔49まで引き出される。
この第1ガイド孔49は、基部41および上延出部42が交差する部位、すなわち屈曲部46(図3、図5参照)に設けられている。
【0035】
よって、ウェビングリール37の車内側部位37aから引き出されたウェビング32を基部41に沿わせて、かつ、基部41の近傍に配置することができる。
これにより、ウェビング32は、左交差部22に対して車室38側に向けて斜め下方に所定間隔Sだけ離れた状態で引き出される。
【0036】
このように、ウェビングリール37の上端部37bが上延出部42に対して斜め下方に所定間隔H2だけ離れた位置に設けられ、ウェビング32が左交差部22に対して車室38側(車内側)に向けて斜め下方に所定間隔Sだけ離れた状態で引き出される。
【0037】
これにより、上延出部42、ウェビングリール37、左交差部22およびウェビング32で、リトラクタ31内に配置空間(空間)61が形成される(確保される)。
すなわち、ウェビング32に対して車幅方向外側(車外側)で、かつ、ウェビングリール37および上延出部42間に配置空間61が備えられている。
【0038】
ここで、ウェビングリール37の上端部37bは、前後のウェビングリール支え部44の上端部44aに対して僅かに下方に形成されている。よって、配置空間61は、前後のウェビングリール支え部44の上端部44aで規制される。
しかし、ウェビングリール37の上端部37bは、前後のウェビングリール支え部44の上端部44aに対して僅かに下方に配置されているだけである。
そこで、実施例では構成の理解を容易にするために便宜上、ウェビングリール37の上端部37b(すなわち、ウェビングリール37)で配置空間61を規制することにした。
【0039】
この配置空間61に車両装備部品63が配置(収容)されている。
車両装備部品63としては、電装品に電圧(電流)を供給するハーネス、エアバッグに圧縮ガスを供給するインフレータ、空調用の空気を導くダクトなどが該当する。
このように、車両装備部品63の配置空間61をリトラクタ31内に確保することで、リトラクタ31の周囲に配置空間を確保する必要がなく、設計の自由度を高めることができる。
【0040】
さらに、車両装備部品63の配置空間61をウェビング32に対して車幅方向外側(車外側)に備えることで、この配置空間61を基部41で覆うことができる。
これにより、配置空間61に配置した車両装備部品63を基部41で覆うことが可能になり、車両装備部品63を保護することができる。
【0041】
フレーム36の第1ガイド孔49から引き出されたウェビング32は、ガイド部材33で後列中央シート16(図2参照)の上方まで案内されている。
ガイド部材33は、ルーフ13のうち後列中央シート16の左側上方部位13aに取り付けられた取付ブラケット65と、取付ブラケット65に設けられたリング66とを備えている。
【0042】
取付ブラケット65は、ルーフ13の左側上方部位13aにボルト67・溶接ナット68で締結されている。
このガイド部材33は、ルーフライニング24で覆われることで車室38から仕切られた空間71に収納されている。
【0043】
リング66の第2ガイド孔73は、フレーム36の第1ガイド孔49に対して略同じ高さに配置されている。
よって、フレーム36の第1ガイド孔49で案内されたウェビング32は、ルーフ13に沿ってリング66の第2ガイド孔73まで案内される。
【0044】
フレーム36の第1ガイド孔49からリング66の第2ガイド孔73まで案内されたウェビング32は、ガイド部材33と同様に、ルーフライニング24で覆われることで車室38から仕切られた空間71に収納されている。
そして、リング66の第2ガイド孔73まで導かれたウェビング32は、ルーフライニング24の挿通孔75から車室38側に引き出されている。
車室38側に引き出されたウェビング32は、図2に示す後列中央シート16に着座した乗員77に向けて案内され、後列中央シート16に係止手段34で係止されている。
【0045】
図2に示すように、係止手段34は、後列中央シート16の左側に設けられたアンカー用のバックル81と、後列中央シート16の右側に設けられた乗員拘束用のバックル82と、ウェビング32の先端部32bに設けられたアンカー用のタングプレート83(図1も参照)と、ウェビング32に摺動自在に設けられた乗員拘束用のタングプレート84(図1も参照)とを備えている。
【0046】
アンカー用のバックル81にアンカー用のタングプレート83が係止されるとともに、乗員拘束用のバックル82に乗員拘束用のタングプレート84が係止される。
これにより、後列中央シート16に着座した乗員77をウェビング32で拘束することが可能である。
【0047】
つぎに、シートベルト装置の配設構造20のウェビング32に作用した荷重をリトラクタ31のフレーム36で支える例を図5に基づいて説明する。
図5に示すように、ウェビング32に荷重F1が作用した場合に、荷重F1の一部がフレーム36(特に、基部41の上端41a)に荷重F2として伝わる。
【0048】
ここで、上延出部42および基部41が交差する部位に屈曲部46を形成し、屈曲部46に第1ガイド孔49が設けられている。よって、第1ガイド孔49の剛性が屈曲部46で高められている。
よって、基部41の上端41aに作用した荷重F2を、屈曲部46を経て上延出部42に効率よく伝えることができる。
【0049】
この上延出部42に上取付片51が設けられ、上取付片51は左交差部22の近傍(すなわち、車両)にボルト52・溶接ナット53(図4参照)で締結されている。
これにより、上取付片51を介して上延出部42を車両に強固に取り付けることができるので、上延出部42に伝えられた荷重F2を確実に支えることができる。
【0050】
つぎに、実施例2〜3のシートベルト装置の配設構造90,110を図6〜図7に基づいて説明する。なお、実施例2〜3において実施例1のシートベルト装置の配設構造20と同一・類似部材については同じ符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0051】
実施例2に係るシートベルト装置の配設構造90について説明する。
図6に示すように、シートベルト装置の配設構造90は、実施例1のリトラクタ31をリトラクタ91に代えたもので、その他の構成は実施例1のシートベルト装置の配設構造20と同様である。
【0052】
リトラクタ91は、左リヤピラー12の上端部12aおよび左交差部22に設けられたフレーム(ハウジング)92と、フレーム92に回転自在に設けられたウェビングリール37とを備えている。
【0053】
フレーム92は、ウェビングリール37のうち車外側の部位(以下、「車外側部位」という)37cを覆う略矩形状の基部94と、基部94の上端94a近傍から車内側へ向けて略直交するように屈曲されたガイド屈曲部95と、基部94の前端94cおよび後端94dから車内側へ向けて屈曲された前後のウェビングリール支え部44とを備えている。
【0054】
基部94は、上端94aが左交差部22の近傍にボルト52・溶接ナット53で取り付けられ、下端94bが左リヤピラー12の上端部12aにボルト52・溶接ナット53で取り付けられている。
【0055】
ガイド屈曲部95は、貫通孔96が形成され、貫通孔96の周囲に樹脂製のガイド部97が設けられている。貫通孔96の周囲にガイド部97を設けることで、ガイド部97で第1ガイド孔(ガイド孔)98が形成されている。
この第1ガイド孔98は、左交差部22の近傍に配置され(設けられ)、ウェビングリール37から引き出されたウェビング32をガイド部材33(図3参照)に向けて案内可能な孔である。
【0056】
ウェビングリール37は、巻取り芯58(図4参照)にウェビング32が車体前方から見た状態で反時計回り方向に引出し・巻戻し可能に巻き付けられている。
ウェビング32は、ウェビングリール37の車外側部位37cから基部94に沿って第1ガイド孔98まで引き出される。
【0057】
第1ガイド孔98まで引き出されたウェビング32は、ガイド部材33(図3参照)に向けて案内される。
ここで、前述したように、第1ガイド孔98は、左交差部22の近傍に配置されている(設けられている)。
【0058】
このように、フレーム92の第1ガイド孔98を左交差部22の近傍に配置することで、第1ガイド孔98でウェビング32を左交差部22の近傍まで案内することができる。
これにより、従来技術で説明した第1ガイド部材を除去できるので、部品点数を減らすことができ、かつ、組付け作業性を高めることができる。
【0059】
さらに、従来技術で説明した第1ガイド部材を除去することで、第1ガイド部材を締め付ける締結部材(例えば、ボルト)を削減でき、締結部材の本数を減らすことができる。
加えて、リトラクタ91のフレーム92に第1ガイド孔98を有することで、第1ガイド孔98をリトラクタ91(ウェビングリール37)に対して精度よく位置決めすることができる。
これにより、リトラクタ91(ウェビングリール37)から引き出されたウェビング32を第1ガイド孔98で安定的に案内することができる。
【0060】
つぎに、シートベルト装置の配設構造90のウェビング32に作用した荷重をリトラクタ91のフレーム92で支える例を説明する。
ウェビング32に荷重F3が作用した場合に、荷重F3の一部がガイド屈曲部95に荷重F4として伝わる。
【0061】
ここで、ガイド屈曲部95は、基部94の上端94a近傍から車内側へ向けて略直交するように屈曲されている。
よって、ガイド屈曲部95に伝わった荷重F4を、基部94の上端94a近傍に効率よく伝えることができる。
【0062】
この基部94の上端94aは、左交差部22の近傍(すなわち、車両)にボルト52・溶接ナット53で締結されている。
これにより、基部94の上端94aを車両に強固に取り付けることができるので、基部94の上端94a近傍に伝えられた荷重F4を確実に支えることができる。
【0063】
すなわち、実施例2のシートベルト装置の配設構造90によれば、実施例1のシートベルト装置の配設構造20と同様の効果を得ることができる。
【実施例3】
【0064】
実施例3に係るシートベルト装置の配設構造110について説明する。
図7に示すように、シートベルト装置の配設構造110は、実施例1のリトラクタ31をリトラクタ111に代えたもので、その他の構成は実施例1のシートベルト装置の配設構造20と同様である。
【0065】
リトラクタ111は、左リヤピラー12の上端部12aおよび左交差部22に設けられたフレーム(ハウジング)112と、フレーム112に回転自在に設けられたウェビングリール37とを備えている。
【0066】
フレーム112は、ウェビングリール37のうち車外側の部位(以下、「車外側部位」という)37cを覆う略矩形状の基部114と、基部114の上端114aが車内側へ向けて略直交するように屈曲されたガイド屈曲部115と、基部114の前端114cおよび後端114dから車内側へ向けて屈曲された前後のウェビングリール支え部44とを備えている。
【0067】
基部114は、上端114aの近傍が左交差部22の近傍にボルト52・溶接ナット53で取り付けられ、下端114bが左リヤピラー12の上端部12aにボルト52・溶接ナット53で取り付けられている。
【0068】
ガイド屈曲部115は、貫通孔116が形成され、貫通孔116の周囲に樹脂製のガイド部117が設けられている。貫通孔116の周囲にガイド部117を設けることで、ガイド部117で第1ガイド孔(ガイド孔)118が形成されている。
この第1ガイド孔118は、左交差部22の近傍に配置され(設けられ)、ウェビングリール37から引き出されたウェビング32をガイド部材33(図3参照)に向けて案内可能な孔である。
【0069】
ウェビングリール37は、巻取り芯58(図4参照)にウェビング32が車体前方から見た状態で反時計回り方向に引出し・巻戻し可能に巻き付けられている。
ウェビング32は、ウェビングリール37の車外側部位37cから基部114に沿って第1ガイド孔118まで引き出される。
【0070】
第1ガイド孔118まで引き出されたウェビング32は、ガイド部材33(図3参照)に向けて案内される。
ここで、前述したように、第1ガイド孔118は、左交差部22の近傍に配置されている(設けられている)。
【0071】
このように、フレーム112の第1ガイド孔118を左交差部22の近傍に配置することで、第1ガイド孔118でウェビング32を左交差部22の近傍まで案内することができる。
これにより、従来技術で説明した第1ガイド部材を除去できるので、部品点数を減らすことができ、かつ、組付け作業性を高めることができる。
【0072】
さらに、従来技術で説明した第1ガイド部材を除去することで、第1ガイド部材を締め付ける締結部材(例えば、ボルト)を削減でき、締結部材の本数を減らすことができる。
加えて、リトラクタ111のフレーム112に第1ガイド孔118を有することで、第1ガイド孔118をリトラクタ111(ウェビングリール37)に対して精度よく位置決めすることができる。
これにより、リトラクタ111(ウェビングリール37)から引き出されたウェビング32を第1ガイド孔118で安定的に案内することができる。
【0073】
つぎに、シートベルト装置の配設構造110のウェビング32に作用した荷重をリトラクタ111のフレーム112で支える例を説明する。
ウェビング32に荷重F5が作用した場合に、荷重F5の一部がガイド屈曲部115に荷重F6として伝わる。
【0074】
ここで、ガイド屈曲部115は、基部114の上端114aから車内側へ向けて略直交するように屈曲されている。
よって、ガイド屈曲部115に伝わった荷重F6を、基部114の上端114aに効率よく伝えることができる。
【0075】
この基部114の上端114aは、左交差部22の近傍(すなわち、車両)にボルト52・溶接ナット53で締結されている。
これにより、基部114の上端114aを車両に強固に取り付けることができるので、基部114の上端114aに伝えられた荷重F5を確実に支えることができる。
【0076】
すなわち、実施例3のシートベルト装置の配設構造110によれば、実施例1のシートベルト装置の配設構造20と同様の効果を得ることができる。
【0077】
なお、本発明に係るシートベルト装置の配設構造20,90,110は、前述した実施例1〜3に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例1〜3では、シートベルト装置の配設構造20,90,110を第3列シート15の後列中央シート16に適用した例について説明したが、これに限らないで、例えば第2列シートなどの他の後列シートに適用することも可能である。
【0078】
また、前記実施例1〜3では、シートベルト装置の配設構造20,90,110を車体後部11の左側に設けた例について説明したが、これに限らないで、車体後部11の右側に設けることも可能である。
【0079】
さらに、前記実施例1では、リトラクタ31の配置空間61に配置する車両装備部品63としてハーネス、インフレータやダクトを例示したが、これに限定するものではなく、例えば、エアバッグを支えるストラップなどの他の車両装備部品を配置空間61に配置することも可能である。
【0080】
また、前記実施例1〜3では、リトラクタ31,91,111を取り付ける車両の側壁として左リヤピラー12を例示したが、これに限らないで、左センタピラーなどの他の側壁にリトラクタ31,91,111を取り付けることも可能である。
【0081】
さらに、前記実施例1〜3で示した左リヤピラー12、ルーフ13、後列中央シート16、左交差部22、リトラクタ31,91,111、ウェビング32、ガイド部材33、フレーム36,92,112、ウェビングリール37、基部41,94,114、上延出部42、屈曲部46、第1ガイド孔49,98,118、配置空間61および車両装備部品63などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、リトラクタから引き出されたウェビングをルーフに設けたガイド部材でシートまで案内可能なシートベルト装置の配設構造を備えた自動車への適用に好適である。
【符号の説明】
【0083】
10…車体後部構造、12…左リヤピラー(車両の側壁)、13…ルーフ(車両のルーフ)、16…後列中央シート(シート)、22…左交差部(交差部)、32…ウェビング、33…ガイド部材、37…ウェビングリール、52…ボルト、90…シートベルト装置の配設構造、91…リトラクタ、92…フレーム、95…ガイド屈曲部、98…第1ガイド孔(ガイド)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェビング(32)が引き出し・巻き戻し可能に巻きつけられたウェビングリール(37)を収納するリトラクタ(91)と、
このリトラクタ(91)から引き出された前記ウェビング(32)を車両のルーフ(13)に沿って案内するために前記ルーフ(13)に設けられたガイド部材(33)と、を備え、
前記ガイド部材(33)で前記ウェビング(32)をシート(16)に向けて案内するシートベルト装置の配設構造(90)であって、
前記リトラクタ(91)の上部を車体に取付けるボルト(52)を有し、
前記ボルト(52)によって締結されるフレーム(92)に前記ウェビング(32)を案内するガイド(98)が設けられていることを特徴とするシートベルト装置の配設構造。
【請求項2】
前記ガイド(98)が、前記ウェビング(32)の引出し方向を基準として、前記ウェビングリール(37)と前記ボルト(52)との間に配置されていることを特徴とする請求項1記載のシートベルト装置の配設構造(90)。
【請求項3】
ウェビング(32)を引き出し・巻き戻し可能なリトラクタ(91)と、
このリトラクタ(91)から引き出された前記ウェビング(32)を車両のルーフ(13)に沿って案内するために前記ルーフ(13)に設けられたガイド部材(33)と、を備え、
前記ガイド部材(33)で前記ウェビング(32)をシート(16)に向けて案内するシートベルト装置の配設構造(90)であって、
前記リトラクタ(91)を支持するフレーム(92)は、ボルト(52)によって車体に取り付けられ、
前記フレーム(92)には、前記ウェビング(32)を案内するガイド(98)が設けられ、
このガイド(98)が、前記ウェビング(32)の引出し方向を基準として、前記ウェビングリール(37)と前記ボルト(52)との間に配置されていることを特徴とするシートベルト装置の配設構造。
【請求項4】
前記フレーム(92)は、前記車体に対して略直交する方向に屈曲して車体内側に延出するガイド屈曲部(95)を有し、
このガイド屈曲部(95)に前記ガイド(98)が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項記載のシートベルト装置の配設構造(90)。
【請求項5】
前記ガイド屈曲部(95)が前記車体内側に延出する長さは、前記リトラクタ(91)の前記車体の内側に向う方向の長さよりも短いことを特徴とする請求項4記載のシートベルト装置の配設構造(90)。
【請求項6】
前記ウェビング(32)が前記ウェビングリール(37)によって巻き取られ始める位置と、前記ガイド部材(33)とを直線で結んだ場合に、この直線よりも上方に、前記ガイド(98)が配置されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項記載のシートベルト装置の配設構造(90)。
【請求項7】
前記リトラクタ(91)は、前記車体の側壁(12)及び前記ルーフ(13)が交差する交差部(22)の近傍に取り付けられることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項記載のシートベルト装置の配設構造(90)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−18490(P2013−18490A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−241552(P2012−241552)
【出願日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【分割の表示】特願2009−162945(P2009−162945)の分割
【原出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】