説明

シートベルト装置

【課題】乗員がウエビングを装着する際の使用性を向上させることができると共に、簡単な構成にすることができる。
【解決手段】本シートベルト装置10では、乗員がウエビング18の装着を解除した状態で、巻取軸22が軸線周り一方へ回転されると、ウエビング18の長手方向一端側が巻取軸22に巻き取られる。このとき、ワイヤ巻取装置48がワイヤ40を介してウエビング18の長手方向一端側をシートクッション20の前端側へ引っ張ることで、ウエビング18の長手方向一端側が巻取軸12に螺旋状に巻き取られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに適用されるシートベルト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートベルト装置(例えば、特許文献1参照)では、車両用シートのシートクッションの側方に設けられ、ウエビング(ベルト)の先端が固定されたスライドアンカと、このスライドアンカをシートクッションの前後方向にスライドさせる駆動装置とを備えたものが知られている。このシートベルト装置では、乗員のウエビング装着前にスライドアンカをシートクッションの前方側へとスライドさせることで、乗員がウエビングを装着する際にウエビングを掴みやすくするようにしている。
【特許文献1】特開2005−239091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記構成のシートベルト装置では、車両の急減速時に乗員に作用する過大な慣性力がウエビングを介してスライドアンカに入力されるため、スライドアンカが不要に前方側へスライドしてウエビングの拘束力が低下しないようにする必要がある。このため、駆動装置(スライド機構)には、スライドアンカの不要なスライドを防止でき、且つスライドアンカに入力される過大な荷重を支持し得る構造が要求される。このため、駆動装置の構成が複雑になる可能性がある。
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、乗員がウエビングを装着する際の使用性を向上させることができると共に、簡単な構成にすることができるシートベルト装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明に係るシートベルト装置は、車両用シートのシートクッションの左右方向一側に設けられ、前記シートクッションの前後方向に沿った軸線周りに回転可能に支持された長尺な巻取軸と、長手方向一端部が前記巻取軸に係止され、長手方向他端側が前記巻取軸の車両上方側で車体又は前記車両用シートに支持されると共に、当該支持部と前記巻取軸との間の長手方向中間部が前記シートクッションの左右方向他側でバックル装置に係止されることにより前記車両用シートに着座した乗員を拘束するウエビングと、前記巻取軸を軸線周りに回転させる駆動源と、前記巻取軸の軸線周り一方への回転に連動して前記ウエビングの長手方向一端側を前記シートクッションの前端側へ移動させることで前記ウエビングを前記巻取軸に螺旋状に巻き取らせるウエビング移動手段と、を備えたことを特徴としている。
【0006】
請求項1に記載のシートベルト装置では、ウエビングの長手方向一端部はシートクッションの左右方向一側に設けられた巻取軸に係止されている。このため、車両の急減速時にウエビングに過大な荷重が入力された場合でも、ウエビングの長手方向一端部が不要にシートクッションの前端側へ移動することがなく、ウエビングによる乗員の拘束力を十分に確保することができる。
【0007】
一方、ウエビングの長手方向中間部がバックル装置への係止を解除された状態(乗員のウエビング非装着状態)で、駆動源が巻取軸を軸線周り一方へ回転させると、ウエビング移動手段が巻取軸の回転に連動してウエビングの長手方向一端側をシートクッションの前端側へと移動させる。これにより、ウエビングの長手方向一端側が巻取軸に螺旋状に巻き取られ、ウエビングの長手方向一端側の巻取軸からの引出部分がシートクッションの前端側へと移動する。このウエビングは、長手方向他端側が巻取軸の上方側で車体又は車両用シートに支持されているため、当該支持部と巻取軸との間のウエビングの長手方向中間部がシートクッションの前方側へと移動する。これにより、乗員がウエビングを掴みやすくなるため、乗員がウエビングを装着する際の使用性を向上させることができる。
【0008】
しかも、このシートベルト装置では、駆動源は、単に巻取軸を回転させるだけでよく、また、ウエビング移動手段は、単にウエビングの長手方向一端側をシートクッションの前端側へと移動させるだけでよいため、これらの構成要素を簡単な構成にすることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明に係るシートベルト装置は、請求項1に記載のシートベルト装置において、前記ウエビング移動手段は、前記ウエビングの長手方向一端側が挿通される挿通部を有する移動部材と、前記巻取軸の軸線周り一方への回転に連動して前記移動部材を前記シートクッションの前端側へと移動させる移動装置とを備えたことを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載のシートベルト装置では、駆動源が巻取軸を軸線周り一方へ回転させると、ウエビングの長手方向一端側が挿通された移動部材が移動装置によってシートクッションの前端側へと移動される。これにより、ウエビングの長手方向一端側が巻取軸に螺旋状に巻き取られる。このように、ウエビングの長手方向一端側が挿通された移動部材を移動装置によって移動させることで、ウエビングの長手方向一端側を巻取軸に螺旋状に巻き取ることができるため、簡単な構成でウエビング移動手段を成立させることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明に係るシートベルト装置は、請求項2に記載のシートベルト装置において、前記移動部材は、先端側に前記挿通部が設けられたワイヤとされ、前記移動装置は、前記ワイヤをその基端側から巻き取るワイヤ巻取装置とされていることを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載のシートベルト装置では、駆動源が巻取軸を軸線周り一方へ回転させると、先端側の挿通孔にウエビングの長手方向一端側が挿通されたワイヤが基端側からワイヤ巻取装置に巻き取られる。これにより、ウエビングの長手方向一端側がシートクッションの前端側へと引っ張られて巻取軸に螺旋状に巻き取られる。このように、ウエビング移動手段がワイヤ及び巻取装置によって構成されているため、ウエビング移動手段の構成を簡素化することができると共に、ウエビング移動手段の設置スペースを小さくすることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明に係るシートベルト装置では、乗員がウエビングを装着する際の使用性を向上させることができると共に、簡単な構成にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<第1の実施形態>
図1及び図2には、本発明の第1の実施形態に係る車両用シートベルト装置10が搭載された車両11の部分的な構成が概略的な側面図にて示されている。なお、図中矢印UPは車両上方向を示し、矢印FRは車両前方向を示し、矢印INは車幅内側方向を示している。
【0015】
シートベルト装置10は、所謂3点式シートベルト装置であり、車両用シート14に着座した乗員16を拘束するためのウエビング18を備えている。ウエビング18は、長尺帯状に形成されており、長手方向一端部が車両用シート14のシートクッション20の右側部(左右方向一側)に設けられた巻取軸22に係止されている。また、ウエビング18の長手方向他端側は、車体12のセンターピラー24の上部に取り付けられたスリップジョイント26に巻き掛けられて車体12に支持されており、ウエビング18の長手方向他端部は、センターピラー24の下端部に固定されたリトラクタ28の巻取軸(図示省略)に係止されている。このリトラクタ28の巻取軸は付勢部材(図示省略)の付勢力によって常にウエビング18の巻取方向に付勢されている。
【0016】
また、スリップジョイント26と巻取軸22との間におけるウエビング18の長手方向中間部には、タングプレート30が摺動可能に取り付けられている。タングプレート30は、シートクッション20に対して巻取軸22と反対側で車体12又はシートクッション20に連結されたバックル装置32(図1参照。図2では図示省略)に連結されるようになっている。これにより、ウエビング18の長手方向中間部がバックル装置32に係止される。
【0017】
車両用シート14に着座した乗員16がタングプレート30をバックル装置32に連結させると、ウエビング18のうちタングプレート30と巻取軸22との間の部位が乗員16の腰部を拘束するラップウエビング18Aとなり、ウエビング18のうちスリップジョイント26とタングプレート30との間の部位が乗員16の上体を拘束するショルダウエビング18Bとなる。
【0018】
一方、上述した巻取軸22は、シートクッション20の右側部に取り付けられたシートサイドカバー34(図3参照)の内側に収容されている。この巻取軸22は、シートクッション20の前後方向(図1及び図2の矢印FR方向)に沿って長尺な円柱状に形成されており、軸線方向両端部が軸受部材35(図3参照)を介して図示しないシートクッションフレーム(シートクッション20の骨格部材)に支持されている。これにより、巻取軸22は、シートクッション20の前後方向に沿った軸線周りに回転可能とされており、駆動源としてのモータ36の駆動力によって回転される構成になっている。
【0019】
このモータ36は、車両11に搭載された制御装置38に電気的に接続されている。この制御装置38には、車両用シート14に乗員16が着座していることを検出する着座センサ、車両11のドアの開閉状態を検出するドアセンサ、バックル装置32にタングプレート30が連結しているか否かを検出するバックルセンサ、リトラクタ28へのウエビング18の巻取量を検出する巻取量センサなどの各種のセンサ(いずれも図示省略)が電気的に接続されており、制御装置38は、これらのセンサからの電気信号に基づいてモータ36を作動させるようになっている。
【0020】
なお、図1及び図2では、説明の都合上、モータ36及び制御装置38が概略的に記載されているが、モータ36はシートクッション20の内部に搭載することが好ましく、また、制御装置38は車両11の適宜位置に搭載することができる。
【0021】
また、シートクッション20の後端側(シートバック21の下方)に配置された巻取軸22の軸線方向一端部には、図3に示されるように径方向に貫通するウエビング係止孔40が形成されている。このウエビング係止孔40にはウエビング18の長手方向一端部が挿入されている。ウエビング18の長手方向一端部は折り返されて縫い合わされており、この折り返し部分には円柱状の抜止ピン42が挿入されている。これにより、ウエビング18の長手方向一端部が巻取軸22に係止されており、ウエビング18の長手方向一端側はシートサイドカバー34の上部に形成されたスリット44を貫通してシートクッション20の上部側へ延出されている。このスリット44は、シートクッション20の後端側から前端側にかけて形成されている。
【0022】
さらに、シートサイドカバー34の内側には、ワイヤ46及びワイヤ巻取装置48が設けられている。ワイヤ巻取装置48は、シートクッション20の前端部に配置されており、図示しないシートクッションフレームに固定されている。このワイヤ巻取装置48は、ハウジング50を備えており、このハウジング50には、スプール52が回転可能に支持されている。
【0023】
一方、ワイヤ46は、先端部(長手方向一端部)がループ状に折り返されて係止されており、ワイヤ46の先端部には挿通孔54が形成されている。この挿通孔54には、ウエビング18の長手方向一端側が摺動可能に挿通されている。ワイヤ46の基端部(長手方向他端部)は、ワイヤ巻取装置48のスプール52に係止されており、スプール52が巻取方向(図1の矢印A方向)へ回転されることで、ワイヤ46が基端側からスプール52に巻き取られる。
【0024】
また、ワイヤ巻取装置48のハウジング50の内部には、スプール52に連結された付勢部材(ここではスプリング)が設けられており、図1に示されるようにワイヤ46がスプール52から引き出された状態では、このスプリングによってスプール52が巻取方向へ付勢される構成になっている。
【0025】
次に、本第1の実施形態の作用について説明する。
【0026】
上記構成のシートベルト装置10では、車両用シート14に着座した乗員16が、ウエビング18に設けられたタングプレート30をバックル装置32に連結させると、乗員16がウエビング18を装着した状態になる(図1図示状態)。
【0027】
この状態で、例えば車両11が急減速すると、乗員16の慣性力がウエビング18に入力されるが、ウエビング18(ラップウエビング18A)の長手方向一端部は、図示しないシートクッションフレームに支持された巻取軸22の軸線方向一端部(車両後方側の端部)に係止されているため、ラップウエビング18Aによる乗員16の腰部の拘束力を十分に確保することができる。
【0028】
一方、乗員16がタングプレート30とバックル装置32との連結を解除し、ウエビング18の装着を解除した状態で、制御装置38がモータ36によって巻取軸22を軸線周り一方へ回転させると、ウエビング18の長手方向一端側が巻取軸22に巻き取られる。
【0029】
ここで、ウエビング18の長手方向一端側は、ワイヤ40の先端部に形成された挿通孔54に挿通されている。また、このワイヤ40の基端部は、シートクッション20の前端部に配置されたワイヤ巻取装置48のスプール52に係止されており、このスプール52はワイヤ40を巻き取る方向(図1の矢印A方向)に付勢されている。
【0030】
このため、上述の如くウエビング18の長手方向一端側が巻取軸22に巻き取られる際には、ウエビング18の長手方向一端側はワイヤ40を介してワイヤ巻取装置48に引っ張られつつ巻取軸22に巻き取られる。これにより、図2に示されるように、ウエビング18の長手方向一端側が巻取軸12に螺旋状に巻き取られ、ウエビング18の長手方向一端側の巻取軸22からの引出部分がシートクッション20の前端側へと移動する。
【0031】
このウエビング18の長手方向他端側は、センターピラー24の上部に設けられたスリップジョイント26に支持されているため、上述の如くウエビング18の長手方向一端側の巻取軸22からの引出部分がシートクッション20の前端側へと移動すると、スリップジョイント26と巻取軸22との間におけるウエビング18の長手方向中間部がシートクッション20の前方側へと移動する。これにより、乗員16が再びウエビング18を装着する際にウエビング18を掴みやすくなるため、乗員16の使用性が向上する。
【0032】
一方、このシートベルト装置10では、例えば、乗員16がウエビング18を装着するためにリトラクタ28からウエビング18を引き出している最中、或いは乗員16がタングプレート30をバックル装置32に連結してウエビング18を装着した後で、制御装置38がモータ36を作動させて巻取軸22を軸線周り他方へ回転させる。これにより、ウエビング18は、リトラクタ28の巻取軸に付与される付勢部材の付勢力(又はリトラクタ22が巻取軸回転用のモータを搭載している場合にはこのモータの駆動力)によって、巻取軸22から引き出され、乗員16の身体に密着される。またこの場合、巻取軸22からのウエビング18の引出部分がシートクッション20の後端側へ移動することで、ワイヤ40がワイヤ巻取装置48から引き出される(図1図示状態)。
【0033】
ここで、このシートベルト装置10では、モータ36(駆動源)は、単に巻取軸22を回転させるだけでよく、また、ワイヤ40及びワイヤ巻取装置48(ウエビング移動手段)は、単にウエビング18の長手方向一端側をシートクッション20の前端側へ引っ張るだけでよいため、これらの構成要素を簡単な構成にすることができる。
【0034】
また、このシートベルト装置10では、ウエビングの長手方向一端側が挿通されたワイヤ40をワイヤ巻取装置48によって巻き取ることで、ウエビング18の長手方向一端側をシートクッション20の前端側へと移動させることができる。したがって、簡単な構成でウエビング移動手段を成立させることができる。
【0035】
さらに、このシートベルト装置10では、ウエビング移動手段がワイヤ40及びその巻取装置48によって構成されているため、ウエビング移動手段の構成を簡素化することができると共に、ウエビング移動手段の設置スペースを小さくすることができる。
【0036】
なお、上記第1の実施形態では、ワイヤ巻取装置48のスプール52が図示しないスプリングによって巻取方向へ付勢される構成にしたが、本発明はこれに限らず、スプール52がモータによって巻取方向へ回転される構成にしてもよい。この場合、スプール52を回転させるモータの作動を制御装置38によって制御することで、スプール52の回転を巻取軸22の回転に連動させることができる。
【0037】
また、上述の如くワイヤ巻取装置48がモータによってスプール52を回転させる構成の場合には、例えば、車両11の急減速時に、制御装置38がワイヤ巻取装置48のモータを作動させずに、モータ36だけを作動させれば、ウエビング18の長手方向一端側は螺旋状にならずに巻取軸22の軸線方向一端部(後端部)に層状に巻き取られる。これにより、ラップウエビング18Aによる乗員腰部の拘束力を向上させることができるので、所謂ラッププリテンショナーとして利用することができる。
【0038】
また、上記第1の実施形態では、ウエビング18の長手方向他端側がスリップジョイント26を介して車体12に支持された構成にしたが、本発明はこれに限らず、リトラクタ28が車両用シート14に搭載され、ウエビング18の長手方向他端側がシートバック21の上部から引き出される場合には、ウエビング18の長手方向他端側がシートバック21(車両用シート14)に支持された構成になる。
【0039】
また、上記第1の実施形態では、巻取軸22、ワイヤ40、及びワイヤ巻取装置48がシートクッション20の右側部に設けられた構成にしたが、本発明はこれに限らず、リトラクタ28及びバックル装置32がシートクッション20の左側に設けられる場合には、巻取軸22、ワイヤ40、及びワイヤ巻取装置48がシートクッション20の左側部に設けられる構成になる。
【0040】
さらに、上記第1の実施形態では、巻取軸22、ワイヤ40、及びワイヤ巻取装置48がシートクッション20に設けられた構成にしたが、本発明はこれに限らず、巻取軸22、ワイヤ40、及びワイヤ巻取装置48がシートクッション20の左右方向一側で車体12の床部に設けられる構成にしてもよい。
【0041】
また、上記第1の実施形態では、ウエビング移動手段が、移動部材としてのワイヤ40と、移動装置としてのワイヤ巻取装置48とによって構成された場合について説明したが、本発明はこれに限らず、移動装置は移動部材をシートクッション20の後端側から前端側へと移動させることができるものであればよく、移動部材はウエビング40の長手方向一端側が挿通される挿通孔が設けられたものであればよい。また、ウエビング移動手段は、巻取軸22の回転に連動してウエビング40の長手方向一端側をシートクッション20の前端側へと移動させることができるものであればよく、その構成は適宜変更することができる。
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、前記第1の実施形態と基本的に同様の構成・作用については、前記第1の実施形態と同符号を付与し、その説明を省略する。
【0042】
図4には、本発明の第2の実施形態に係る車両用シートベルト装置60が搭載された車両11の部分的な構成が概略的な側面図にて示されている。
【0043】
このシートベルト装置60は、前記第1の実施形態に係るシートベルト装置10と基本的に同様の構成とされているが、前記第1の実施形態に係るワイヤ40(移動部材)及びワイヤ巻取装置48(移動装置)の代わりに、スライド部材62(移動部材)及びワイヤ駆動装置64(移動装置)を備えている。
【0044】
スライド部材62は、略ブロック状に形成されており、図5に示されるように、シートサイドカバー34の上部に形成されたスリット64に嵌め込まれている。このスリット64は、シートクッション20の後端側から前端側にかけて形成されており、このスリット64の車幅方向両側の溝縁部には、断面L字状の屈曲部66が設けられている。また、スライド部材62の車幅方向両側部には溝68が形成されており、これらの溝68に屈曲部66の先端部が嵌入している。これにより、スライド部材62は、スリット64に沿って移動可能にシートサイドカバー34に支持されており、シートクッション20に対して前後方向に相対移動可能とされている。
【0045】
また、このスライド部材62の中央部には、シートクッション20の上下方向に貫通する長孔70(挿通部)が形成されており、この長孔70にはウエビング18の長手方向一端側が挿通されている。なお、図4では、説明の都合上、巻取軸22の軸線方向両端部の図示を省略してある。
【0046】
一方、ワイヤ駆動装置64は、シートクッション20の前端部に配置された前プーリ72と、シートクッション20の後端部に配置された後プーリ74とを備えている。前プーリ72及び後プーリ74は、シートクッション20の左右方向(図4では紙面に垂直な方向)に沿った軸周りに回転可能にシートクッション20に支持されている。これらの前プーリ72及び後プーリ74には、ワイヤ76が巻き掛けられている。
【0047】
ワイヤ76は、長手方向一端部がスライド部材62の前端部に連結されており、長手方向他端部がスライド部材62の後端部に連結されている。このため、前プーリ72又は後プーリ74が回転されると、ワイヤ76が駆動されてスライド部材62がシートクッション20に対し前後方向に相対移動するようになっている。なお、後プーリ74には、図示しないモータが接続されており、後プーリ74はこのモータの駆動力によって図4の矢印B方向及び矢印C方向へ回転される構成になっている。このモータは、制御装置38(図4では図示省略)に電気的に接続されている。
【0048】
上記構成のシートベルト装置60では、制御装置38はモータ36(図4では図示省略)によって巻取軸22を軸線周り一方へ回転させる際には、後プーリ74に接続されたモータを作動させて後プーリ74を図4の矢印B方向へ回転させる。このため、巻取軸22の軸線周り一方への回転に連動してスライド部材62がシートクッション20の前端側へと移動され、スライド部材62の長孔70に挿通されたウエビング18の長手方向一端側がスライド部材62によってシートクッション20の前端側へと移動される。これにより、ウエビング18の長手方向一端側が巻取軸12に螺旋状に巻き取られ、ウエビング18の長手方向一端側の巻取軸22からの引出部分がシートクッション20の前端側へと移動する。
【0049】
一方、制御装置38はモータ36によって巻取軸22を軸線周り他方へ回転させる際には、後プーリ74に接続されたモータを作動させて後プーリ74を図4の矢印C方向へ回転させる。このため、巻取軸22の軸線周り他方への回転に連動してスライド部材62がシートクッション20の後端側へと移動され、スライド部材62の長孔70に挿通されたウエビング18の長手方向一端側がスライド部材62によってシートクッション20の後端側へと移動される。これにより、これにより、ウエビング18は、リトラクタ28の巻取軸に付与される付勢部材の付勢力(又はリトラクタ22が巻取軸回転用のモータを搭載している場合にはこのモータの駆動力)によって、巻取軸22から引き出される。
【0050】
この実施形態においても、前記第1の実施形態と基本的に同様の作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るシートベルト装置が搭載された車両の部分的な構成を示す概略的な側面図である。
【図2】ウエビングの長手方向一端側が巻取軸に螺旋状に巻き取られた状態を説明するための図1に対応する側面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る車両用シートの部分的な構成を示す縦断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るシートベルト装置が搭載された車両の部分的な構成を示す概略的な側面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る車両用シートの部分的な構成を示す縦
【符号の説明】
【0052】
10 シートベルト装置
12 車体
14 車両用シート
16 乗員
18 ウエビング
20 シートクッション
22 巻取軸
32 バックル装置
36 モータ(駆動源)
46 ワイヤ(移動部材、ウエビング移動手段)
48 ワイヤ巻取装置(移動装置、ウエビング移動手段)
54 挿通部
60 シートベルト装置
62 スライド部材(移動部材)
64 ワイヤ駆動装置(移動装置)
70 長孔(挿通部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートのシートクッションの左右方向一側に設けられ、前記シートクッションの前後方向に沿った軸線周りに回転可能に支持された長尺な巻取軸と、
長手方向一端部が前記巻取軸に係止され、長手方向他端側が前記巻取軸の車両上方側で車体又は前記車両用シートに支持されると共に、当該支持部と前記巻取軸との間の長手方向中間部が前記シートクッションの左右方向他側でバックル装置に係止されることにより前記車両用シートに着座した乗員を拘束するウエビングと、
前記巻取軸を軸線周りに回転させる駆動源と、
前記巻取軸の軸線周り一方への回転に連動して前記ウエビングの長手方向一端側を前記シートクッションの前端側へ移動させることで前記ウエビングを前記巻取軸に螺旋状に巻き取らせるウエビング移動手段と、
を備えたシートベルト装置。
【請求項2】
前記ウエビング移動手段は、前記ウエビングの長手方向一端側が挿通された挿通部を有する移動部材と、前記巻取軸の軸線周り一方への回転に連動して前記移動部材を前記シートクッションの前端側へと移動させる移動装置とを備えたことを特徴とする請求項1に記載のシートベルト装置。
【請求項3】
前記移動部材は、先端側に前記挿通部が設けられたワイヤとされ、前記移動装置は、前記ワイヤをその基端側から巻き取るワイヤ巻取装置とされていることを特徴とする請求項2に記載のシートベルト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−100157(P2010−100157A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−272972(P2008−272972)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】