説明

シートベルト装置

【課題】プリテンショナーの作動時に、モータによるブレーキがスピンドルにかかることがないシートベルト装置を提供する。
【解決手段】制御部3は、衝突が予測された場合、モータ23に回転を指示する。モータ23は、ギア機構24を介してスピンドル22を回転させ、シートベルト13の緩みが巻き取られる。制御部3は、衝突による衝撃が検出された場合、スイッチ5に端子5a、5b間の接続を切断させて、モータ23の給電端子23bを電源装置6の一方の出力端子から切断する。制御部3は、プリテンショナー25に作動信号を出力して作動させる。プリテンショナー25は、モータ23による回生ブレーキが生じることなくモータ23の駆動軸23aと共に、スピンドル22を回転させてシートベルト13を巻取り、乗員を拘束する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリテンショナーの作動時に、モータによるブレーキがスピンドルにかかることがないシートベルト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
衝突の可能性が高いと予測した場合、シートベルトの緩みを無くして衝突前の乗員の移動を抑制し、衝突時にはシートベルトを高速に巻き取って乗員を拘束するシートベルト装置が使われている。このようなシートベルト装置は、モータによりスピンドルを回転させてシートベルトを巻き取り、シートベルトの緩みを無くす。そして、衝突による衝撃を検出した場合、火薬式のプリテンショナーを作動させてスピンドルを回転させ、強いベルト張力を有してシートベルトを高速に巻き取り、乗員を拘束する。
【0003】
プリテンショナーの作動時にスピンドルに接続されているモータが回転した場合、モータ及びモータに給電する電源装置間を回生電流が流れてモータに回生ブレーキが生じる。そして、プリテンショナーによるスピンドルの回転にブレーキがかかり、シートベルトを巻き取る速度が低下する。そこで、オフクラッチ機構を設けることにより、プリテンショナーの作動時にモータの駆動軸をスピンドルから切り離してモータによるブレーキがスピンドルにかからないようにしたシートベルト装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2006/123750号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術のシートベルト装置では、部品点数が増大するオフクラッチ機構を設けずに、モータによるブレーキがスピンドルにかかることがないシートベルト装置を提供することができなかった。
【0006】
本願は、斯かる事情に鑑みてなされたものである。その目的は、プリテンショナーが作動する場合、モータの給電端子及び電源を接続する導体を切断する切断部、又は切断される電源線を備えることにより、モータによるブレーキがスピンドルにかかることがないシートベルト装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に開示するシートベルト装置は、シートベルトを巻き取るモータ及びプリテンショナーを備えるシートベルト装置において、前記モータの給電端子及び該給電端子に給電する電源間を接続する導体に介挿された切断部と、前記プリテンショナーが前記シートベルトを巻き取るための駆動力を前記切断部に伝達する駆動力伝達部とを備え、前記切断部は、前記駆動力伝達部により伝達される駆動力により前記導体を切断するようにしてある。
【0008】
本願にあっては、プリテンショナーが作動した場合、回転駆動力によりシートベルトを巻き取ると共に、当該回転駆動力を用いて切断部にモータの給電端子及び電源を接続する電源線が切断される。
【0009】
本願に開示するシートベルト装置は、前記シートベルトが巻き取られるスピンドルを備え、前記プリテンショナーは、前記スピンドルの回転軸に接続してあり、前記スピンドルを回転駆動させる駆動軸を備え、前記駆動力伝達部は、前記駆動軸に接続してある。
【0010】
本願にあっては、プリテンショナーが作動した場合、スピンドルが回転駆動されてシートベルトが巻き取られると共に、プリテンショナーの駆動軸に接続された駆動力伝達部により切断部に回転駆動力が伝達される。
【0011】
本願に開示するシートベルト装置は、前記駆動力伝達部は、前記駆動軸に接続してあるスピンドルと、前記切断部に接続してあり、前記スピンドルにより巻き取られるベルトとを備え、前記切断部は、前記ベルトにより非作動位置から前記導体を切断する切断位置に移動する移動部を備える。
【0012】
本願にあっては、プリテンショナーの駆動軸に接続してあるスピンドルにベルトの一端が固定されている。プリテンショナーが作動した場合、スピンドルに巻き取られるベルトの他端が切断部を非作動位置から切断位置に移動させる。
【0013】
本願に開示するシートベルト装置は、シートベルトを巻き取るモータ及びプリテンショナーを備えるシートベルト装置において、前記モータの給電端子及び該給電端子に給電する電源間を接続する導体に介挿された切断部と、前記プリテンショナーにより前記シートベルトを巻き取る場合、前記切断部を作動させて前記導体を切断する制御部とを備える。
【0014】
本願にあっては、モータによりシートベルトの緩みが巻き取られる。そして、モータの給電端子及び電源を接続する電源線が切断された後にプリテンショナーが作動する。モータによる回生ブレーキが生じることなく、プリテンショナーによりシートベルトが素早く巻き取られる。
【0015】
本願に開示するシートベルト装置は、シートベルトを巻き取るモータ及びプリテンショナーを備えるシートベルト装置において、前記シートベルトが巻き取られるスピンドルを備え、前記プリテンショナーは、ボールが嵌合する複数の面からなる外周面を有し、回転軸が前記スピンドルの回転軸に接続されたロータと、送出口が前記外周面に向かって設けられており、内包する複数のボールを前記外周面に対して送出し、前記外周面に嵌合するボールにより前記ロータを回転駆動させるボール送出部と、前記モータに給電する電源線とを備え、前記電源線は、前記ボール送出部内を移動するボールにより切断されるようにしてある。
【0016】
本願にあっては、プリテンショナーが作動する場合、ロータに向かって送出された複数のボールがロータの外周面に設けられた複数の面に順次嵌合して、スピンドルに接続されたロータを回転させる。また、移動するボールによりモータに給電する電源線が切断される。
【発明の効果】
【0017】
当該装置の一観点によれば、プリテンショナーが作動する場合、モータの給電端子及び電源を接続する導体を切断する切断部、又は切断される電源線を備えることにより、モータによるブレーキがスピンドルにかかることがない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】座席及び座席の前側夫々に設置されたシートベルト装置及びエアバッグ装置の概要を示す模式図である。
【図2】実施の形態1に係るシートベルトリトラクタ及び制御部の例を示す説明図である。
【図3】シートベルトリトラクタを示す分解斜視図である。
【図4】ハウジングに取り付けられたスピンドル及びプリテンショナーを示す分解斜視図である。
【図5】実施の形態1に係るハウジングに取り付けられたスピンドル及びプリテンショナーの要部を示す縦断面図である。
【図6】図5中のVI−VI断面における作動前のプリテンショナーを示す模式的断面図である。
【図7】図5中のVI−VI断面における作動直後のプリテンショナーを示す模式的断面図である。
【図8】図5中のVI−VI断面における作動完了時のプリテンショナーを示す模式的断面図である。
【図9】実施の形態1に係る制御部の内部ハードウェア及び制御部に接続されるハードウェアを示すブロック図である。
【図10】衝突処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】実施の形態2に係る制御部の内部ハードウェア及び制御部に接続されるハードウェアを示すブロック図である。
【図12】実施の形態3に係るシートベルトリトラクタ及び制御部の例を示す説明図である。
【図13】実施の形態3に係るハウジングに取り付けられたスピンドル及びプリテンショナーの要部を示す縦断面図である。
【図14】実施の形態4に係るシートベルトリトラクタ及び制御部の例を示す説明図である。
【図15】実施の形態4に係るプリテンショナーの模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施の形態1
以下、実施の形態を図面を参照して具体的に説明する。本願に係るシートベルトシステムは、車両の衝突時に発生する衝撃から乗員を保護するために車両に搭載される。シートベルトシステムは、車両の衝突を予測する車両衝突予測部と、衝撃を検出する衝撃検出部と、エアバッグ装置と、乗員を保護するシートベルト装置とを含む。図1は、座席及び座席の前側夫々に設置されたシートベルト装置及びエアバッグ装置の概要を示す模式図である。シートベルト装置10は、乗員11の身体をシート12に拘束するシートベルト13を備える。シートベルト13は、乗員11の上体を拘束するベルト部分13aと、乗員11の腰部を拘束するベルト部分13bとから成る。
【0020】
ベルト部分13bの一端はアンカープレート14により車室下部の車体部分に固定されている。ベルト部分13aは、乗員11の肩近傍の箇所に設けられたスルーアンカー15で折り返され、その端部はシートベルトリトラクタ16のスピンドルに連結されている。シートベルト13の他方の共通端部にはタングプレート17が取り付けられている。タングプレート17は、シート12の下側縁部に固定されたバックル18に着脱自在である。シートベルトリトラクタ16は、後述の制御部により、シートベルト13の引出しが制御される。
【0021】
図2は、実施の形態1に係るシートベルトリトラクタ16及び制御部の例を示す説明図である。シートベルトリトラクタ16は、ハウジング21内に回転自在に設けられたスピンドル22と、スピンドル22を回転駆動するモータ23及びプリテンショナー25と、スピンドル22を巻取り方向に付勢する付勢部26とを備える。スピンドル22にはシートベルト13のベルト部分13aの端部が結合され、ベルト部分13aはスピンドル22で巻き取られる。プリテンショナー25は、ハウジング21の側面に備えられスピンドル22の軸22aが結合されている。
【0022】
プリテンショナー25は、制御部3から作動信号が入力された場合、内蔵する火薬を発火させ、生じるガスにより軸22aを正回転させてスピンドル22を回転駆動する。これにより、プリテンショナー25は、瞬時にシートベルト13をスピンドル22に巻き取り、強いベルト張力を有して乗員11を拘束可能にしてある。プリテンショナー25は、例えば作動信号を受け付けてから数msec内にシートベルト13の巻き取りを完了する。プリテンショナー25には、ギア機構24が取り付けられており、スピンドル22の軸22aは、ギア機構24を介してモータ23の駆動軸23aに接続されている。
【0023】
モータ23は、制御装置3により回転が制御される。ギア機構24は、モータ23の駆動軸23aの回転を減速する減速ギア等を含んでおり、モータ23の駆動力をスピンドル22に伝達する。そして、モータ23によりスピンドル22が巻取り方向に回転駆動されて、シートベルト13(ベルト部分13a)がスピンドル22に巻き取られる。これにより、シートベルト13が引っ張られてベルト張力が高くなり、乗員11の移動を抑制することができる。
【0024】
スイッチ5(切断部)の端子5a及び端子5b夫々には、モータ23の給電端子23b及び電源装置6の一方の出力端子が接続してある。モータの給電端子23cは、電源装置6の他方の出力端子が接続してある。スイッチ5は、端子5a及び端子5bの接続及び開放を切り替える切替スイッチである。また、スイッチ5は、制御部3からスイッチ信号が与えられていない初期状態では、スイッチ位置が端子5a及び端子5bを接続する初期位置(非作動位置)となっており、給電端子23bに電源装置6の一方の出力端子が接続されている。スイッチ5は、制御部3からスイッチ信号が与えられた場合、スイッチ位置を端子5a及び端子5b間を開放する開放位置(切断位置)に切り替えて、給電端子23bから電源装置6の一方の出力端子が切断される。
【0025】
図3は、シートベルトリトラクタ16を示す分解斜視図である。付勢部26は、前部カバー261、巻取りばね262及び隔壁263を備える。スピンドル22の軸22aの一端には、スピンドル22を巻き取り方向に回転付勢するための巻取りばね262が中心に貫通孔を有する略円盤状の隔壁263を挟んで結合されている。巻取りばね262は、ゼンマイばねによって構成され、内周端が軸22aに結合される一方で、外周端がシートベルトリトラクタ16の前部カバー261の内壁に結合されている。前部カバー261には、内部に巻取りばね262及び隔壁263等をセットした後に、前部カバー261がギア機構24にネジ留めにより取り付けられている。
【0026】
図4は、ハウジング21に取り付けられたスピンドル22及びプリテンショナー25を示す分解斜視図である。ハウジング21は、U字状に連結した3つの板部からなるフレーム210と、フレーム210の開口部に覆設される側面カバー211と、スピンドル22から延びるシートベルト13が貫通する矩形状の孔部を有する案内部212とを含む。スピンドル22は、フレーム210の側面に設けられた孔部を介してフレーム210の内側に回転自在に挿入されている。プリテンショナー25に対して突出する軸22aの外周面には、プリテンショナー25が備えるクラッチ板と接触してプリテンショナー25から回転駆動力が伝達されるスリーブ22bが設けられている。
【0027】
プリテンショナー25は、ドライブカバー250及びフレーム210の間に、シンクロリング252と、クラッチ部253と、ロータ254と、プリテンションリング255とを備えると共に、プリテンションリング255の周囲に管ハウジング251とを備える。プリテンションリング255は、ドライブカバー250及びフレーム210の間で回転可能に支持されている。また、プリテンションリング255は、内周面からロータ254の外周面に対して突出可能にしてある複数の係止片255aを備える。シンクロリング252には、周方向に離間した複数のシャッター部252aが内周面に突設されており、シャッター部252aの突出部には、シンクロリング252の回転に伴ってロータ254の外周面に沿って摺動する摺動面を有する。クラッチ部253は、円状の枠と、周方向に離間しており、枠の中心軸に沿って延びる複数のクラッチ板とを含む。
【0028】
管ハウジング251は、フレーム210に取り付けられており、内部に金属等の球体からなる複数の球251aと、スプリング251bとを備え、一端がガス発生器251cにより封じられている。管ハウジング251の他端には、送出口251dが設けられており、送出口251dがプリテンションリング255の外周面に設けられた溝部に向かうよう配置されている。そして、ガス発生器251cの点火によるガス圧上昇により、複数の球251aが押し出され管ハウジング251の送出口251dからプリテンションリング255の溝部に入り込み、プリテンションリング255を回転させる。回転するプリテンションリング255の溝部から抜け出た球251aを受けるボールストップ161がフレーム210に取り付けられている。尚、スプリング251bは、通常時の球251aのがたつきによる異音の発生を防止している。
【0029】
図5は、実施の形態1に係るハウジングに取り付けられたスピンドル22及びプリテンショナー25の要部を示す縦断面図である。プリテンションリング255の係止片255aは、初期状態でプリテンションリング255の内周面から突出し、ロータ254の外周面に設けられた係止溝に係止している。ロータ254の孔部の内周面及びスリーブ22b間でクラッチ部253のクラッチ板が配置されている。ドライブカバー250には、シンクロリング252の外周に設けられた歯部に向かって付勢された係止爪250aを備える。
【0030】
図6は、図5中のVI−VI断面における作動前のプリテンショナー25を示す模式的断面図である。図6中の白抜矢印は、シートベルト13の引出方向及び巻取り方向を示している。初期状態では、クラッチ部253のクラッチ板は、スリーブ22bから離間しているため、スピンドル22の軸22aは、回転自在となっており、付勢部26により巻取り方向に回転付勢されている。この場合、シートベルト13の引出し又は巻取りに応じて、スリーブ22bを有する軸22aのみが回転する。
【0031】
プリテンションリング255の各係止片255aは、基部に回転軸を有し、回転に伴って内周面に設けられた収納部から先端がロータ254の外周面に対して突出するようにしてある。初期状態では、各係止片255aの先端は、ロータ254の外周面に設けられた係止溝に係止しており、シンクロリング252のシャッター部252aによりロータ254の係止溝に向かって押圧されている。これにより、各係止片255aがロータ254の係止溝から外れることを防止している。
【0032】
2つの係止爪250aは、シンクロリング252の外周に設けられたラック歯と歯合することで、シンクロリング252をシートベルト13の巻取り方向に対応する回転方向にのみ回転可能にするラチェット機構となっている。管ハウジング251内には、ガス発生器251cにより封じられた一端からスプリング251bを挟んで、送出口251d近傍に位置するプリテンションリング255の溝部の一部まで複数の球251aが連なっている。
【0033】
図7は、図5中のVI−VI断面における作動直後のプリテンショナー25を示す模式的断面図である。図7中の白抜矢印は、シートベルト13の巻取り方向を示している。プリテンショナー25が制御部3から作動信号を受付けた場合、ガス発生部251cが内蔵する火薬が点火されて生じるガスが複数の球251aを管ハウジング251の送出口251dから押し出す。押し出された球251aは、プリテンションリング255の外周面の溝部に入り込んで、プリテンションリング255を左回転させる。プリテンションリング255の回転により溝部から外れ出した球251aは、ボールストップ161内に収納される。プリテンションリング255は、各係止片255aがカム溝に係止しているロータ254と共に左回転する。
【0034】
ロータ254の内周面は、左回転するにつれ、クラッチ部253のクラッチ板が配置してある位置の内径が短くなるカム面を有する。プリテンションリング255と共にロータ254が左回転するにつれ、カム面がクラッチ部253のクラッチ板に接触し、スリーブ22bに向かって押圧する。クラッチ部253のクラッチ板及びスリーブ22b間の摩擦力により、プリテンションリング255及びロータ254の回転駆動力がスリーブ22bを有する軸22aに伝達される。これにより、スピンドル22の軸22aが左回転されてシートベルト13の巻取りを開始する。
【0035】
図8は、図5中のVI−VI断面における作動完了時のプリテンショナー25を示す模式的断面図である。図8中の白抜矢印は、シートベルト13の引出し方向を示している。ガス発生器251cが生じるガスによる球251aの押出しが終了した場合、プリテンショナー25が作動完了となり、シートベルト13の巻き取りを完了する。そして、衝突により乗員11が前方に移動し、シートベルト13が引き出される。スピンドル22がプリテンションリング255と共に右回転を開始する。
【0036】
プリテンションリング255の右回転により、各係止片255aの先端がシャッター部252aから外れ、各係止片255aが基部を中心として右回転し、プリテンションリング255の内周面に設けられた収納部に収納される。これにより、各係止片255aの先端は、ロータ254の係止溝から外れて、軸22aに接続されているロータ254が回転自在となる。
【0037】
図9は、実施の形態1に係る制御部3の内部ハードウェア及び制御部3に接続されるハードウェアを示すブロック図である。制御部3は、バス30aを介して、ハードウェア内部を制御するCPU( Central Processing Unit)30と、プログラムが記憶してあるROM( Read-Only Memory )31と、プログラムの実行中に生じる変数等を記憶するためのRAM( Random-Access Memory )32とを備える。また、制御部3は、タイマ値として所定時間が予め設定されているタイマ33と、予測信号が入力される予測信号入力部34と、衝撃信号が入力される衝撃信号入力部35とを備える。
【0038】
タイマ33に設定されるタイマ値は、衝突が予測された後に衝突による衝撃を検出するまでの期間を実験的及び経験的に求めて決定するとよい。タイマ値は、例えば、数秒が設定される。タイマ33は、CPU30によりカウントダウンの開始が行われ、タイマ値が0になった時点でタイマ信号をバス30aに出力する。予測信号入力部34には、車体が備える衝突予測部1が衝突を予測した場合に出力する予測信号が入力される。衝突予測部1は、車体に搭載されたレーダ等により自車及び他車の位置関係の時間変化を随時測定して衝突を予測するようにしてある。
【0039】
衝撃信号入力部35には、車体が備える衝撃検出部2から衝撃信号が入力される。衝撃検出部2は、加速度センサであり、衝突等による所定値以上の加速度を検出した場合に衝撃信号を出力する。また、CPU30には、モータ23に回転を指示する駆動信号を出力する駆動信号出力部36と、スイッチ5にスイッチ信号を出力するスイッチ信号出力部37と、プリテンショナー25に作動信号を出力する作動信号出力部38とを備える。
【0040】
図10は、衝突処理の手順を示すフローチャートである。衝突処理は、制御部3のCPU30により実行される。CPU30は、衝突予測部1から予測信号入力部34に予測信号が入力されたか否かを判定する(ステップS11)。CPU30は、予測信号が入力されていないと判定した場合(ステップS11でNO)、予測信号が入力されるまで待機する。CPU30は、予測信号が入力されたと判定した場合(ステップS11でYES)、回転を指示する駆動信号を駆動信号出力部36からモータ23に出力してモータ23を回転させる(ステップS12)。これにより、シートベルト13が巻き取られて乗員11の移動が抑制される。
【0041】
CPU30は、タイマ33に計時開始信号を与えてタイマ33に計時を開始させる(ステップS13)。CPU30は、衝撃検出部2から衝撃信号入力部35に衝撃信号が入力されたか否かを判定する(ステップS14)。CPU30は、衝撃信号が入力されていないと判定した場合(ステップS14でNO)、タイマ33が出力するタイマ信号を検出したか否かを判定する(ステップS15)。CPU30は、タイマ信号を検出していないと判定した場合(ステップS15でNO)、ステップS14に処理を戻す。
【0042】
CPU30は、タイマ信号を検出したと判定した場合(ステップS15でYES)、停止を指示する駆動信号を駆動信号出力部36からモータ23に出力してモータ23を停止する(ステップS16)。そして、CPU30は、タイマ33をリセットして(ステップS17)、ステップS11に処理を戻す。これにより、予測信号の入力時点からタイマ33に設定されている所定時間を経過した場合、予測された衝突が発生しなかったとしてモータ23を停止し、予測信号の待機状態に戻る。
【0043】
CPU30は、ステップS14で衝撃信号が入力されたと判定した場合(ステップS14でYES)、切断を指示するスイッチ信号をスイッチ信号出力部37からスイッチ5に出力してモータ23の給電端子23bから電源装置6の一方の出力端子を切断する(ステップS18)。これにより、モータ23の回転は、停止する。CPU30は、作動信号出力部38から作動信号をプリテンショナー25に出力してプリテンショナー25を作動させて(ステップS19)、衝突処理を終了する。
【0044】
プリテンショナー25の作動によりスピンドル22と共に回転するモータ23には、給電端子23b及び電源装置6の一方の出力端子が切断されているため、回生電流が流れない。これにより、プリテンショナー25は、モータ23によるブレーキが生じることなく、スピンドル22を回転させることが可能となる。また、モータ23がプリテンショナー25に対してブレーキを生じさせないようにするために、プリテンションナー25が作動する場合にモータ23の駆動軸23aをスピンドル22の軸22aから切り離すオフクラッチ機構をギア機構24に設ける必要がない。
【0045】
実施の形態2
図11は、実施の形態2に係る制御部の内部ハードウェア及び制御部に接続されるハードウェアを示すブロック図である。実施の形態2は、実施の形態1がスイッチ信号を受付けたスイッチ5によりモータ23への電源接続を切断するのに対して、プリテンショナー25への作動信号を受け付けたスイッチ5により切断するようにしてある。制御部7は、プリテンショナー25及びスイッチ5に作動信号を出力する作動信号出力部78を備える。スイッチ5は、作動信号出力部78から与えられる作動信号をスイッチ信号として受け付けて、端子5a及び端子5b間を切断する。制御部7の他の内部ハードウェアは、実施の形態1の制御部3と同様であるので符号の相違を記載するに留め、詳細な説明を省略する。
【0046】
制御部7は、バス70aを介してハードウェア内部を制御するCPU70と、ROM71と、RAM72と、タイマ73と、予測信号入力部74と、衝撃信号入力部75と、駆動信号出力部76とを備える。CPU70は、図10に示した衝突処理の手順のステップS14で衝撃信号が入力されたと判定した場合(ステップS14でYES)、ステップS18を実行せずにステップS19を実行して衝突処理を終了する。プリテンショナー25に作動信号が与えられて作動を開始すると共に、当該作動信号がスイッチ5に与えられてモータ23の給電端子23bを電源装置6の一方の出力端子から切断する。これにより、プリテンショナー25は、モータ23によるブレーキが生じることなく、スピンドル22を回転させることが可能となる。
【0047】
本実施の形態2は以上の如きであり、その他は実施の形態1と同様であるので対応する部分には同一の符号及び処理名を付してその詳細な説明を省略する。
【0048】
実施の形態3
図12は、実施の形態3に係るシートベルトリトラクタ及び制御部の例を示す説明図である。図12中の46は、プリテンショナー55を備えるシートベルトリトラクタを示している。シートベルトリトラクタ46の他の部分は、実施の形態1のシートベルトリトラクタ16と同様であるので符号の相違を記載にするに留め、詳細な説明を省略する。シートベルトリトラクタ46は、ハウジング51内に設けられたスピンドル52と、給電端子53b、53c及び駆動軸53aを有するモータ53と、ギア機構54と、プリテンショナー55と、付勢部56とを備える。プリテンショナー55及びモータ53は、電源装置6から給電される制御部7に接続されている。
【0049】
プリテンショナー55は、作動時に巻き取るスイッチベルト(ベルト)556を備えており、スイッチベルト556は、スイッチ(切断部、移動部)8に接続してある。スイッチ8の端子8a及び端子8b夫々は、電源装置6の一方の出力端子及びモータ53の給電端子53bに接続してある。モータ53の給電端子53cは、電源装置6の他方の出力端子に接続してある。スイッチ8は、端子8a、8b間を接続する位置と、端子8b、8c間とを接続する位置との間でスイッチ位置が移動可能にしてある切替スイッチである。プリテンショナー55が作動してスイッチベルト556が白抜矢印で示す方向に巻き取られた場合、スイッチ8が端子8b及び端子8c間を接続する位置にスイッチ位置が移動してモータ53の給電端子53bが電源装置6の一方の出力端子から切断される。
【0050】
図13は、実施の形態3に係るハウジング51に取り付けられたスピンドル52及びプリテンショナー55の要部を示す縦断面図である。プリテンショナー55は、係止片555aと、スイッチベルト556を巻き取るベルトリール555bを有するプリテンションリング555を備える。ベルトリール555b及びスイッチベルト556は、プリテンショショナー55の回転駆動力をスイッチ(切断部)8に伝達する駆動力伝達部として機能する。プリテンショナー55のその他の部分は、実施の形態1のプリテンショナー25と同様であるので、符号の相違を記載するに留め、詳細な説明を省略する。
【0051】
プリテンショナー55は、係止爪550aを有するドライブカバー550と、複数の球551aが充填された管ハウジング551と、シンクロリング552と、クラッチ部553と、ロータ554とを備える。また、プリテンショナー25には、スピンドル22の軸52aが貫通し、軸52aの外周面は、スリーブ52bを備える。CPU70は、図10に示した衝突処理の手順のステップS14で衝撃信号が入力されたと判定した場合(ステップS14でYES)、ステップS18を実行せずにステップS19を実行して衝突処理を終了する。
【0052】
本実施の形態3では、プリテンションリング555の回転駆動力により巻き取られるスイッチベルト556がスイッチ8のスイッチ位置を切り替えて、モータ53の給電端子53bから電源装置6の一方の出力端子を切断する。これにより、プリテンショナー55は、モータ53によるブレーキが生じることなく、スピンドル52を回転させることが可能となる。
【0053】
本実施の形態3は以上の如きであり、その他は実施の形態1と同様であるので対応する部分には同一の符号及び処理名を付してその詳細な説明を省略する。
【0054】
実施の形態4
図14は、実施の形態4に係るシートベルトリトラクタ及び制御部の例を示す説明図である。シートベルトリトラクタ86は、端子95a、95bを有するプリテンショナー95を備える。シートベルトリトラクタ86のその他の部分は、実施の形態1のシートベルトリトラクタ16と同様であるので符号の相違を記載するに留める。プリテンショナー95は、ハウジング91と、軸92aを有するスピンドル92と、駆動軸93a、給電端子93b及び93cを有するモータ93と、ギア機構94と、付勢部96とを備える。また、モータ93及びプリテンショナー95には、制御部7が接続されている。モータ93及び制御部7には、電源装置6が接続されている。プリテンショナー95の端子95a、95b夫々は、電源装置6の一方の出力端子及びモータ93の給電端子93bが接続されている。
【0055】
図15は、実施の形態4に係るプリテンショナー95の模式的断面図である。プリテンショナー95は、端子95a、95bを繋ぐ電源線95cを備える。プリテンショナー95の他の部分は、実施の形態1のプリテンショナー25と同様であるので符号の相違を記載するに留め、詳細な説明を省略する。プリテンショナー95は、係止爪950aと、複数の球951aが充填されており、送出口251dを有する管ハウジング951と、シャッター部952aを有するシンクロリング952と、クラッチ部953と、ロータ954と、係止片955aを有するプリテンションリング955とを備える。クラッチ部953の内側には、スリーブ92bを有する軸92aが挿通している。管ハウジング951から排出された球951aを受けるボールストップ161がハウジング91に設けられている。
【0056】
電源線95cは、管ハウジング951の内部を貫通している。プリテンショナー95が作動開始した場合、ボールストップ161に向けて移動を開始した球951aにより電源線95cが切断される。電源線95cが切断された場合、端子95aに接続されているモータ93の給電端子93bが、端子95bに接続されている電源装置6の一方の出力端子から切断される。CPU70は、図10に示した衝突処理の手順のステップS14で衝撃信号が入力されたと判定した場合(ステップS14でYES)、ステップS18を実行せずにステップS19を実行して衝突処理を終了する。
【0057】
本実施の形態4では、移動する球951aにより電源線95cが切断されて、モータ93の給電端子93bから電源装置6の一方の出力端子を切断する。これにより、プリテンショナー95は、モータ93によるブレーキが生じることなく、スピンドル92を回転させることが可能となる。また、電源線95cが管ハウジング951の内部を貫通している場合を示したが、これに限るものではなくボールストップ161の内部を貫通していてもよく、球951aの移動軌跡上に配置してあればよい。
【0058】
本実施の形態4は以上の如きであり、その他は実施の形態1及び実施の形態2と同様であるので対応する部分には同一の符号及び処理名を付してその詳細な説明を省略する。
【符号の説明】
【0059】
1 衝突予測部
2 衝撃検出部
3、7 制御部
5、8 スイッチ(切断部、移動部)
6 電源装置
10 シートベルト装置
11 乗員
12 シート
13 シートベルト
13a、13b ベルト部分
16、46、86 シートベルトリトラクタ
161 ボールストップ
21、51、91 ハウジング
22、52、92 スピンドル
22a、52a、92a 軸
22b、92b スリーブ
23、53、93 モータ
23a、53a 駆動軸
23b、23c、53b、53c、93b、93c 給電端子
24、54、94 ギア機構
25、55、95 プリテンショナー
250a、550a、950a 係止爪
251、551、951 管ハウジング
251a、551a、951a 球
251d 送出口
252、552、952 シンクロリング
252a、952a シャッター部
253、553、953 クラッチ部
254、554、954 ロータ
255、555、955 プリテンションリング
255a、555a、955a 係止片
555b ベルトリール
556 スイッチベルト(ベルト)
30、70 CPU
33、73 タイマ
95c 電源線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートベルトを巻き取るモータ及びプリテンショナーを備えるシートベルト装置において、
前記モータの給電端子及び該給電端子に給電する電源間を接続する導体に介挿された切断部と、
前記プリテンショナーが前記シートベルトを巻き取るための駆動力を前記切断部に伝達する駆動力伝達部と
を備え、
前記切断部は、前記駆動力伝達部により伝達される駆動力により前記導体を切断するようにしてあるシートベルト装置。
【請求項2】
前記シートベルトが巻き取られるスピンドルを備え、
前記プリテンショナーは、前記スピンドルの回転軸に接続してあり、前記スピンドルを回転駆動させる駆動軸を備え、
前記駆動力伝達部は、前記駆動軸に接続してある
請求項1に記載のシートベルト装置。
【請求項3】
前記駆動力伝達部は、前記駆動軸に接続してあるスピンドルと、
前記切断部に接続してあり、前記スピンドルにより巻き取られるベルトと
を備え、
前記切断部は、前記ベルトにより非作動位置から前記導体を切断する切断位置に移動する移動部を備える請求項2に記載のシートベルト装置。
【請求項4】
シートベルトを巻き取るモータ及びプリテンショナーを備えるシートベルト装置において、
前記モータの給電端子及び該給電端子に給電する電源間を接続する導体に介挿された切断部と、
前記プリテンショナーにより前記シートベルトを巻き取る場合、前記切断部を作動させて前記導体を切断する制御部と
を備えるシートベルト装置。
【請求項5】
シートベルトを巻き取るモータ及びプリテンショナーを備えるシートベルト装置において、
前記シートベルトが巻き取られるスピンドルを備え、
前記プリテンショナーは、
ボールが嵌合する複数の面からなる外周面を有し、回転軸が前記スピンドルの回転軸に接続されたロータと、
送出口が前記外周面に向かって設けられており、内包する複数のボールを前記外周面に対して送出し、前記外周面に嵌合するボールにより前記ロータを回転駆動させるボール送出部と、
前記モータに給電する電源線と
を備え、
前記電源線は、前記ボール送出部内を移動するボールにより切断されるようにしてあるシートベルト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−102099(P2011−102099A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258207(P2009−258207)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(503358097)オートリブ ディベロップメント エービー (402)
【復代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
【復代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
【Fターム(参考)】