説明

シートベルト装置

【課題】角度検出部における内部構成の簡潔化が達成可能なシートベルト装置を提供する。
【解決手段】シートベルト装置100は、リトラクタ108と、角度検出部124と、角度検出部124とリトラクタ108とを接続するワイヤ132およびワイヤケーシング136を備える。角度検出部124は、ワイヤケーシング136が接続され回転するケース部130、ワイヤ132の端部140が固定されるカム部144を有し、カム部144は、回転半径r1の長い長径部146、回転半径r2の短い短径部148、長径部146から短径部148に向かって、カム部144の回転中心P1の方向から離れて長径部146が在る方向へ延びるよう形成された平面部150、ワイヤ132が巻かれる溝部154を有し、ワイヤ132はワイヤ132を溝部154に固定する固定部142を有し、固定部142はワイヤ132の幅方向W1へ広がる端面158で平面部150に接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の座席に設置され、帯状のウェビングで乗員を拘束するシートベルト装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シートベルト装置は、急停止や衝突などによって車両に大きな減速度が作用した際に、慣性力による乗員の前方への飛出しを防ぐための安全装置である。シートベルト装置は、帯状のウェビングを利用して乗員を座席に拘束する。ウェビングは、その根元側がリトラクタに巻かれて収納されていて、その先端側に設けられたタングプレートを引っ張ることでリトラクタから引き出して装着する構成になっている。近年では、リトラクタは、座席の上部、具体的には背もたれであるシートバックの側部上側に内蔵されるタイプのものが普及している。
【0003】
リトラクタの多くは加速度センサを有している。この加速度センサは、車両に急激に生じた加速度を検知するものであって、衝突等の緊急事態に備えるために設けられている。リトラクタは、衝突時に生じるほどの大きな加速度(減速度)を加速度センサが検知するとスピンドル(ウェビングを巻き取る軸部材)を固定し、これによってウェビングによる乗員の拘束を行う構成となっている。
【0004】
一般的な加速度センサは、内蔵されているボールの移動によって加速度を検知する構造となっている。このような構造の加速度センサは、正常に機能するために、初期状態として設定された姿勢をシートバックの傾斜角度にかかわらず常に一定に保つ必要がある。そのために、例えば特許文献1に記載されているリトラクタでは、シートバックの傾斜動作の中心となる軸部材に角度検知手段を設けていて、この角度検知手段の回転を伝達手段(ワイヤ)でリトラクタに伝えることで、加速度センサを含んだリトラクタの姿勢をシートバックの角度に合わせて調節している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−326362号公報
【発明の概要】
【0006】
特許文献1に記載のリトラクタでは、伝達手段であるワイヤは、その端部が角度検知手段の内部に設けられているカムに固定されている。詳細には、ワイヤの端部には棒状の端末部材が取り付けられていて、この端末部材がカムの回転中心側に設けられている孔部に挿し込まれて固定されている。しかし、近年では車両の製造時における作業労力の低減およびコスト削減の見地から、リトラクタの構造に対してもさらなる簡潔化が望まれている。
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような課題に鑑み、加速度センサを有してシートバックに設けられるリトラクタと、シートバックと共に回転する角度検出部、さらに角度検出部の回転にリトラクタの加速度センサの姿勢を連動させるワイヤを備えるシートベルト装置であって、主に角度検出部における内部構成の簡潔化および耐久性向上が達成可能なシートベルト装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかるシートベルト装置の代表的な構成は、車両前後方向へ傾斜可能なシートバックに設けられ加速度センサを有するリトラクタと、シートバックを傾斜可能に支える軸部材にシートバックと同心に設けられてシートバックの傾斜動作に連動して回転する角度検出部と、角度検出部とリトラクタとを接続して角度検出部の回転に加速度センサの姿勢を連動させるワイヤと、ワイヤのうち角度検出部に接続される部分を覆うワイヤケーシングと、を備え、角度検出部は、外装であってワイヤケーシングが接続されて回転するケース部と、ケース部に覆われるカム部であってワイヤケーシングの先から露出したワイヤの端部が固定されてケース部とは別個に回転または停止するカム部と、を有し、カム部は、回転半径の長い長径部と、回転半径の短い短径部と、長径部の外縁から短径部の外縁に向かって、カム部の回転中心の方向から離れて長径部が在る方向へ向かって延びるよう形成された平面部と、長径部の外縁から平面部の外縁にかけてカム部の回転方向に沿って設けられワイヤが巻かれる溝部と、を有し、ワイヤは、ワイヤの端部に設けられ平面部に接してワイヤを溝部に固定する固定部を有し、固定部は、ワイヤの幅方向へ広がる端面を有し、端面で平面部に接していることを特徴とする。
【0009】
まず、上記構成では、カム部へのワイヤの固定構造が簡潔になっている。しかしそれだけでなく、上記平面部と固定部の端面との構成によって、主に長径部によって描かれるカム部の回転軌道に対してワイヤの末端は内側へ位置することができる。したがってケース部が回転する際に、ワイヤの末端はケース部の内側に接触するおそれがなくなる。これによってケース部の円滑な回転が維持でき、かつケース部の内部における粉じんの発生を防いでその機能低下を防止することができるため耐久性が向上する。なお、平面部は、厳密な平坦である必要はない。例えば、平面部は、若干の曲面であってもよく、また、多少の凹凸があってもよい。すなわち、平面部は、固定部が設置でき、その結果としてワイヤの末端がカム部の回転軌道の内側に位置できればよい。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明にかかるシートベルト装置の他の代表的な構成は、車両前後方向へ傾斜可能なシートバックに設けられ加速度センサを有するリトラクタと、シートバックを傾斜可能に支える軸部材にシートバックと同心に設けられてシートバックの傾斜動作に連動して回転する角度検出部と、角度検出部とリトラクタとを接続して角度検出部の回転に加速度センサの姿勢を連動させるワイヤと、ワイヤのうち角度検出部に接続される部分を覆うワイヤケーシングと、を備え、角度検出部は、外装であってワイヤケーシングが接続されて回転するケース部と、ケース部に覆われるカム部であってワイヤケーシングの先から露出したワイヤの端部が固定されてケース部とは別個に回転または停止するカム部と、を有し、カム部は、回転半径の長い長径部と、回転半径の短い短径部と、長径部の外縁から短径部の外縁へかけて形成されている平面部と、を有し、平面部は、平面部上における長径部側の端である第1端部と平面部上における短径部側の端である第2端部とを有し、第1端部とカム部の回転中心とを結んだ第1仮想線分に対して、第2端部とカム部の回転中心とを結んだ第2仮想線分が、長径部が在る方向へ所定の角度をなすように、平面部は形成され、カム部はさらに、長径部の外縁から平面部にかけてカム部の回転方向に沿って設けられワイヤが巻かれる溝部を有し、ワイヤは、ワイヤの端部に設けられ平面部に接してワイヤを溝部に固定する固定部を有し、固定部は、ワイヤの幅方向へ広がる端面を有し、端面で平面部に接していることを特徴とする。
【0011】
上記構成によっても、ワイヤの末端は、カム部の回転軌道に対して内側へ位置する。したがって、ワイヤの末端は、ケース部が回転する際、その内側に接触するおそれがなくなる。これによってケース部の円滑な回転が維持でき、かつケース部の内部における粉じんの発生を防いでその機能低下を防止することができるため、シートベルト装置の耐久性が向上する。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明にかかるシートベルト装置の他の代表的な構成は、車両前後方向へ傾斜可能なシートバックに設けられ加速度センサを有するリトラクタと、シートバックを傾斜可能に支える軸部材にシートバックと同心に設けられてシートバックの傾斜動作に連動して回転する角度検出部と、角度検出部とリトラクタとを接続して角度検出部の回転に加速度センサの姿勢を連動させるワイヤと、ワイヤのうち角度検出部に接続される部分を覆うワイヤケーシングと、を備え、角度検出部は、外装であってワイヤケーシングが接続されて回転するケース部と、ケース部に覆われるカム部であってワイヤケーシングの先から露出したワイヤの端部が固定されてケース部とは別個に回転または停止するカム部と、を有し、カム部は、回転半径の長い長径部と、回転半径の短い短径部と、長径部の外縁から短径部の外縁へかけて形成されている平面部と、を有し、平面部は、平面部上における長径部側の端である第1端部と平面部上における短径部側の端である第2端部とを結んだ第3仮想線分が、第2端部の位置での短径部の接線に対して、平面部と短径部が形成する空間側において鋭角をなすよう形成されていて、カム部はさらに、長径部の外縁から平面部にかけてカム部の回転方向に沿って設けられワイヤが巻かれる溝部を有し、ワイヤは、ワイヤの端部に設けられ平面部に接してワイヤを溝部に固定する固定部を有し、固定部は、ワイヤの幅方向へ広がる端面を有し、端面で平面部に接していることを特徴とする。
【0013】
上記構成によっても、ワイヤの末端は、カム部の回転軌道に対して内側へ位置する。したがって、ワイヤの末端は、ケース部が回転する際、その内側に接触するおそれがなくなる。これによってケース部の円滑な回転が維持でき、かつケース部の内部における粉じんの発生を防いでその機能低下を防止することができるため、シートベルト装置の耐久性が向上する。
【0014】
上記固定部は、金属製であってカシメによってワイヤに取り付けるカシメ部材であるとよい。これによれば、構成が簡潔であるため、ワイヤのカム部への固定作業をより短時間で終えることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、主に角度検出部における内部構成の簡潔化が達成可能なシートベルト装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるシートベルト装置を例示した図である。
【図2】図1のリトラクタを単独で例示した図である。
【図3】図1の角度検出部の分解図である。
【図4】図3のカム部を単独で例示する図である。
【図5】図3のワイヤおよび固定部を拡大して例示する図である。
【図6】図4(a)と同様にカム部を単独で例示した図である。
【図7】シートバックの傾斜に伴う角度検出部の回転過程を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態にかかるシートベルト装置100を例示した図である。当該シートベルト装置100を構成する要素の一部は、座席102の内部に設置されている。座席102は車両の前部座席を想定したものであって、シートクッション104とシートバック106とを含んでいる。特にシートバック106は、車両前後方向へ向かって傾斜可能な構成となっている。
【0019】
シートバック106には、シートベルト装置100に含まれるリトラクタ108が内蔵されている。リトラクタ108は、帯状のウェビング110を巻き取って収納する部位である。リトラクタ108は、シートバック106に内蔵されているために、シートバック106の傾斜動作と共に位置および姿勢が変化する。
【0020】
図2は、図1のリトラクタ108を単独で例示した図である。図2(b)がリトラクタ108を図1と同じ方向から表わした図であって、図2(a)は図2(b)のリトラクタ108を車両前方から見た状態で表わしている。
【0021】
図2(a)に例示するように、リトラクタ108には骨格となるフレーム112が含まれていて、このフレーム112にスピンドル114が回転可能に設置されている。スピンドル114は、ウェビング110(図1参照)を巻き取る際にその軸となる部位である。
【0022】
リトラクタ108の内部には、加速度センサ116が備えられている。加速度センサ116は、衝突等の緊急事態に生じる加速度(減速度)の検知を行う。加速度センサ116は主に、ボール状のウェイト118と、ウェイト118を収容するハウジング120、およびレバー122を含んで構成されている。リトラクタ108は、ウェイト118が加速度によって動いた場合にレバー122等を通じてスピンドル114を固定する構成となっていて、これによってウェビング110の引き出しを停止させて乗員を拘束している。
【0023】
上記構造の加速度センサ116は、正常に機能するために、初期状態として設定された姿勢を常に一定に保つ必要がある。しかし、加速度センサ116はシートバック106(図1参照)の内部に設けられているために、通常であればシートバック106の傾斜動作と共に姿勢が変ってしまう。そこで、図1に例示したシートベルト装置100には角度検出部124が備えられていて、この角度検出部124の働きによって加速度センサ116の姿勢を一定に保っている。
【0024】
図1に例示するように、角度検出部124は、シートバック106を傾斜可能に支えている軸部材126に取り付けられている。角度検出部124のうち、レバー部128はシートクッション104に固定されているが、外装であるケース部130はシートバック106に固定されている。ケース部130は軸部材126に対してシートバック106と同心に設けられていて、シートバック106の傾斜動作に連動して回転する。ケース部130とリトラクタ108とはワイヤ132で接続されていて、ケース部130の回転はワイヤ132を通じてリトラクタ108へと伝えられ、この回転に連動して加速度センサ116の姿勢が制御される仕組みとなっている。なお、ワイヤ132のほとんどの領域はアウタチューブ133(図3参照)に内包されている。
【0025】
図3は、図1の角度検出部124の分解図である。図3に例示する角度検出部124のうち、プレート部134とレバー部128は固定具の役割をしている。プレート部134はシートバック106(図1参照)に固定され、レバー部128は上述したようにシートクッション104に固定され、これらによって角度検出部124はシートバック106の傾斜動作と共に回転することが可能になっている。
【0026】
ワイヤ132のうちケース部130に接続される部分はワイヤケーシング136によって覆われている。このワイヤケーシング136は、ケース部130に設けられた溝形状の取付部138にはめ込まれる。ワイヤケーシング136の先からはワイヤの端部140が露出していて、この端部140は固定部142を利用してカム部144へ固定される。
【0027】
カム部144はワイヤ132を巻き取る部材であって、ケース部130に覆われて設置されるがケース部130とは別個に回転または停止する。シートバック106(図1参照)を車両後方へ傾斜させていくと、所定の角度範囲内においてカム部144はケース部130と共に回転する。しかし、カム部144はある角度範囲以上には回転できず停止する。
【0028】
カム部144にはワイヤ132が固定部142を利用して固定されているため、カム部144が止まった後もケース部130が回転を続けると、ワイヤ132は次第にカム部144に巻かれるようにワイヤケーシング136から引き出される。このようにしてワイヤ132がカム部144に巻かれると、角度検出部124はリトラクタ108(図1参照)に対してワイヤ132を引っ張っている状態となる。
【0029】
一方、図2のリトラクタ108の内部は、ワイヤ132が引っ張られることに連動して加速度センサ116の姿勢が変わる構造になっている。特に、加速度センサ116の姿勢がシートバック106(図1参照)の傾斜角度にかかわらず常に一定に保たれるよう、加速度センサ116の姿勢変更の度合いとシートバック106の所定の傾斜角度におけるワイヤ132の引っ張りの度合いとは互いに調節されている。このようにして、加速度センサ116の姿勢は一定に保たれている。
【0030】
図4は、図3のカム部144を単独で例示する図である。図4(a)は、カム部144を側方から見て平面的に例示した図である。図4(a)に例示するように、カム部144は、回転中心P1からの回転半径r1の長い長径部146と、回転半径r2の短い短径部148とを含んでいる(回転半径r1>回転半径r2)。そして、長径部146と短径部148との間には、平面部150が形成されている。特に本実施形態では、この平面部150は、長径部146の外縁から短径部148の外縁に向かって、カム部144の回転中心P1の方向から離れて長径部146が在る方向へ向かって延びるよう形成されている。言い換えれば、平面部150は、短径部148の回転半径r2を半径とする円の弦Gの延長線上に形成されている。
【0031】
図4(b)は、カム部144のうち主に長径部146を例示する斜視図である。図4(b)に例示するように、長径部146の外縁から平面部150の外縁にかけての端面152には溝部154が設けられている。溝部154はワイヤ(図3参照)を巻き取るための部位であって、カム部144の回転方向に沿って設けられている。なお溝部154は、ワイヤ132の幅よりも深く形成されていると、ケース部130が回転する際にワイヤ132のケース部130への接触を避けることができるため好適である。
【0032】
図5は、図3のワイヤ132および固定部142を拡大して例示する図である。図5(a)に例示する固定部142は、本実施形態では金属性のカシメ部材によって実現されている。固定部142は、ワイヤ132の幅方向W1へ広がるよう端面158を有している。
【0033】
図5(b)は、図4(a)のカム部144に取り付けた状態のワイヤ132および固定部142を例示する図である。図5(b)に例示するように、ワイヤ132は、固定部142の端面158がカム部144の平面部150に接するようにして溝部154(図4(b)参照)へ固定される。ワイヤ132の接続方法の一例としては、ワイヤ132を、テンションゲージやロードセル(共に図示省略)などで張力を所定の値に調整しながらクランプ等で引っ張る。そして、固定部142をその端面158がカム部144の平面部150に接触する位置にまで移動させ、固定部142にクランプ等で荷重をかけてかしめることで、ワイヤ132を溝部154へ固定することができる。このように固定部142がカシメ部材であることで、ワイヤ132のカム部144への固定作業はより短時間で終えることが可能になる。
【0034】
本実施形態の特徴として、図4(a)を挙げて説明したように、カム部144の平面部150が、長径部146から短径部148へ向かって回転中心P1よりも長径部146側(図中右側)へ伸びるよう形成されている。加えて、図5(a)のように、固定部142の端面158がワイヤ132の幅方向W1へ広がるよう形成されていて、さらに図5(b)のように端面158を平面部150へ接触させるようにワイヤ132をカム部144に接続させている。これら構成によって、ワイヤ132の末端156(固定部142より先の部分)は、平面部150の垂線方向に伸びるように配置される。すなわち、ワイヤ132の末端156は、主に長径部146によって描かれるカム部144の回転軌道C1に対してその内側へ位置するように配置される。
【0035】
本実施形態の特徴である平面部150の形状を、さらに説明する。図6は、図4(a)と同じくカム部144を単独で例示した図である。まず、図6(a)の平面部150のうち、平面部150上における長径部146側の端を第1端部D1とし、この第1端部D1と回転中心P1とを結んだ第1仮想線分I1とする。次に、平面部150上における短径部148側の端を第2端部D2とし、この第2端部D2と回転中心P1とを結んだ線分を第2仮想線分I2とする。このとき、本実施形態の平面部150は、第1仮想線分I1に対して、第2仮想線分I2が、長径部146が在る方向へ所定の角度α1(0°<α1)をなす形状に形成されている。
【0036】
図6(b)を参照して、上記とは異なる表現で、平面部150の形状をさらに説明する。本実施形態の平面部150の形状は、第1端部D1と第2端部D2とを結んだ第3仮想線分I3が、第2端部D2の位置での短径部148の接線L2に対して短径部148が形成する空間S側において描く角度α2が、鋭角(0°<α2<90°)となるよう形成されている。これら説明した形状の平面部150によって、以下に記載する作用および効果が得られる。
【0037】
図7は、シートバック106(図1参照)の傾斜に伴う角度検出部124の回転過程を例示した図である。図7(a)は、通常時の傾斜角度のシートバック106における角度検出部124を例示している。上記説明した構成により、図7(a)に例示するようにワイヤ132の末端156はカム部144の回転軌道C1よりも内側へ位置している。ここで、ケース部130の内側は、カム部144の回転を許容するようその回転軌道C1に応じて形成されている。これらの構成によって、図7(a)の状態から図7(b)の状態へとケース部130が回転した際、ワイヤ132の末端156はケース部130の内側に接触するおそれが低くなっている。したがって、ケース部130の円滑な回転が維持でき、かつケース部130の内部における粉じんの発生を防いでその機能低下を防止することができるため耐久性が向上している。
【0038】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、以上に述べた実施形態は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施態様も、各種の方法で実施または遂行できる。特に本願明細書中に限定される主旨の記載がない限り、この発明は、添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさ、および構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書の中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨の記載がない限り、それに限定されるものではない。
【0039】
したがって、当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、車両の座席に設置され、帯状のウェビングで乗員を拘束するシートベルト装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
D1 …平面部の第1端部、D2 …平面部の第2端部、I1〜I3 …第1〜第3仮想線分、P1 …回転中心、L1 …線分、L2 …短径部の接線、C1 …回転軌道、r1 …長径部の回転半径、W1 …幅方向、r2 …短径部の回転半径、100 …シートベルト装置、102 …座席、104 …シートクッション、106 …シートバック、108 …リトラクタ、110 …ウェビング、112 …フレーム、114 …スピンドル、116 …加速度センサ、118 …ウェイト、120 …ハウジング、122 …レバー、124 …角度検出部、126 …軸部材、128 …軸部材、130 …ケース部、132 …ワイヤ、133 …アウタチューブ、134 …プレート部、136 …ワイヤケーシング、138 …取付部、140 …端部、142 …固定部、144 …カム部、146 …長径部、148 …短径部、150 …平面部、152 …端面、154 …溝部、156 …末端、158 …末端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向へ傾斜可能なシートバックに設けられ加速度センサを有するリトラクタと、
前記シートバックを傾斜可能に支える軸部材に該シートバックと同心に設けられて該シートバックの傾斜動作に連動して回転する角度検出部と、
前記角度検出部とリトラクタとを接続して該角度検出部の回転に前記加速度センサの姿勢を連動させるワイヤと、
前記ワイヤのうち前記角度検出部に接続される部分を覆うワイヤケーシングと、を備え、
前記角度検出部は、
外装であって前記ワイヤケーシングが接続されて前記回転するケース部と、
前記ケース部に覆われるカム部であって前記ワイヤケーシングの先から露出した前記ワイヤの端部が固定されて該ケース部とは別個に回転または停止するカム部と、を有し、
前記カム部は、
回転半径の長い長径部と、
回転半径の短い短径部と、
前記長径部の外縁から短径部の外縁に向かって、該カム部の回転中心の方向から離れて該長径部が在る方向へ向かって延びるよう形成された平面部と、
前記長径部の外縁から前記平面部の外縁にかけて該カム部の回転方向に沿って設けられ前記ワイヤが巻かれる溝部と、を有し、
前記ワイヤは、該ワイヤの端部に設けられ前記平面部に接して該ワイヤを前記溝部に固定する固定部を有し、
前記固定部は、前記ワイヤの幅方向へ広がる端面を有し、該端面で前記平面部に接していることを特徴とするシートベルト装置。
【請求項2】
車両前後方向へ傾斜可能なシートバックに設けられ加速度センサを有するリトラクタと、
前記シートバックを傾斜可能に支える軸部材に該シートバックと同心に設けられて該シートバックの傾斜動作に連動して回転する角度検出部と、
前記角度検出部とリトラクタとを接続して該角度検出部の回転に前記加速度センサの姿勢を連動させるワイヤと、
前記ワイヤのうち前記角度検出部に接続される部分を覆うワイヤケーシングと、を備え、
前記角度検出部は、
外装であって前記ワイヤケーシングが接続されて前記回転するケース部と、
前記ケース部に覆われるカム部であって前記ワイヤケーシングの先から露出した前記ワイヤの端部が固定されて該ケース部とは別個に回転または停止するカム部と、を有し、
前記カム部は、
回転半径の長い長径部と、
回転半径の短い短径部と、
前記長径部の外縁から短径部の外縁へかけて形成されている平面部と、を有し、
前記平面部は、該平面部上における前記長径部側の端である第1端部と該平面部上における前記短径部側の端である第2端部とを有し、
前記第1端部と前記カム部の回転中心とを結んだ第1仮想線分に対して、前記第2端部と前記カム部の回転中心とを結んだ第2仮想線分が、該長径部が在る方向へ所定の角度をなすように、前記平面部は形成され、
前記カム部はさらに、前記長径部の外縁から前記平面部にかけて該カム部の回転方向に沿って設けられ前記ワイヤが巻かれる溝部を有し、
前記ワイヤは、該ワイヤの端部に設けられ前記平面部に接して該ワイヤを前記溝部に固定する固定部を有し、
前記固定部は、前記ワイヤの幅方向へ広がる端面を有し、該端面で前記平面部に接していることを特徴とするシートベルト装置。
【請求項3】
車両前後方向へ傾斜可能なシートバックに設けられ加速度センサを有するリトラクタと、
前記シートバックを傾斜可能に支える軸部材に該シートバックと同心に設けられて該シートバックの傾斜動作に連動して回転する角度検出部と、
前記角度検出部とリトラクタとを接続して該角度検出部の回転に前記加速度センサの姿勢を連動させるワイヤと、
前記ワイヤのうち前記角度検出部に接続される部分を覆うワイヤケーシングと、を備え、
前記角度検出部は、
外装であって前記ワイヤケーシングが接続されて前記回転するケース部と、
前記ケース部に覆われるカム部であって前記ワイヤケーシングの先から露出した前記ワイヤの端部が固定されて該ケース部とは別個に回転または停止するカム部と、を有し、
前記カム部は、
回転半径の長い長径部と、
回転半径の短い短径部と、
前記長径部の外縁から短径部の外縁へかけて形成されている平面部と、を有し、
前記平面部は、該平面部上における前記長径部側の端である第1端部と該平面部上における前記短径部側の端である第2端部とを結んだ第3仮想線分が、該第2端部の位置での該短径部の接線に対して、該平面部と該短径部が形成する空間側において鋭角をなすよう形成されていて、
前記カム部はさらに、前記長径部の外縁から前記平面部にかけて該カム部の回転方向に沿って設けられ前記ワイヤが巻かれる溝部を有し、
前記ワイヤは、該ワイヤの端部に設けられ前記平面部に接して該ワイヤを前記溝部に固定する固定部を有し、
前記固定部は、前記ワイヤの幅方向へ広がる端面を有し、該端面で前記平面部に接していることを特徴とするシートベルト装置。
【請求項4】
前記固定部は、金属製であってカシメによって前記ワイヤに取り付けるカシメ部材であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のシートベルト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−75658(P2013−75658A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−166406(P2012−166406)
【出願日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【出願人】(503358097)オートリブ ディベロップメント エービー (402)
【復代理人】
【識別番号】110000349
【氏名又は名称】特許業務法人 アクア特許事務所
【Fターム(参考)】