説明

シート・トラック

【課題】溶接部位の形状変更により部品バラツキを吸収できてその部品バラツキによる隙間に影響されずにライザーを可動レールに確実にレーザー溶接可能にする。
【解決手段】可動レール11が、それの上面12を溶接面13になし、そして、その溶接面13にレール幅方向に段差付けしてその溶接面13をレール長さ方向に伸ばし、そして、ライザー15、16が、それの下端面をその可動レール11のその段差付き溶接面13の低い面14にそのレール長さ方向に伸びて突き合わせ、そして、その低い面14の側からレーザー溶接されてその可動レール11に一体的に接合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車シートに用いるシート・トラックに関し、詳細には、可動レールとライザーとが部品バラツキによる隙間に影響されずにレーザー溶接可能にするところのシート・トラックに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、自動車シートに用いるシート・トラックでは、レーザー溶接が活用される傾向にある。
ライザーがフランジなしでそれの下端面を可動レールの上面に突き合わせてレーザー溶接される場合、部品バラツキによる隙間がその可動レールのその上面とそのライザーのその下端面との間に発生し、レーザーがその隙間に通過してしまいレーザー溶接が出来なくなってしまった。それで部品精度を上げて対応したところコスト・アップを招いてしまった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特開2009−202814公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の課題は、溶接部位の形状変更により部品バラツキを吸収できてその部品バラツキによる隙間に影響されずにライザーを可動レールに確実にレーザー溶接可能にするところのシート・トラックを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明のシート・トラックは、可動レールが、それの上面を溶接面になし、そして、その溶接面にレール幅方向に段差付けしてその溶接面をレール長さ方向に伸ばし、そして、ライザーが、それの下端面をその可動レールのその段差付き溶接面の低い面にそのレール長さ方向に伸びて突き合わせ、そして、その低い面の側からレーザー溶接されてその可動レールに一体的に接合される。
【0006】
また、この発明のシート・トラックは、可動レールが、それの上面を溶接面になし、そして、その溶接面に段差付け溝をレール長さ方向に伸ばして形成し、そして、ライザーが、その可動レールのその溶接面のその段差付け溝にはめ込まれてそれの下端面をその段差付き溝の底面に突き合わせ、そして、一方のライザー側面の側からレーザー溶接されてその可動レールに一体的に接合される。
【発明の効果】
【0007】
この発明のシート・トラックでは、その可動レールが、溶接部位を段差付き溶接面に形状変更するので、そのライザーが、それの下端面をその可動レールのその段差付き溶接面の低い面にレール長さ方向に伸びて突き合わせられて部品バラツキによる隙間がその可動レールとそのライザーとの間に発生されてもその隙間がその段差に吸収され、その隙間にレーザーの通過がその段差で阻止され、そのようにライザーが部品バラツキによる隙間に影響されずにその可動レールに突き合わせ状態に確実にレーザー溶接可能になり、そして、部品精度を上げることもコストを上げることも避けられる。
【0008】
また、この発明のシート・トラックでは、その可動レールが、溶接部位を段差付け溝付
きき溶接面に形状変更するので、そのライザーがその可動レールのその溶接面の段差付け溝にはめ込まれてそれの下端面をその段差付け溝の底面にレール長さ方向に伸びて突き合わせられて部品バラツキによる隙間がその可動レールとそのライザーとの間に発生されてもその隙間がその段差付け溝の片側の側面に吸収され、その隙間にレーザーの通過がその段差付け溝で阻止され、そのようにライザーが部品バラツキによる隙間に影響されずにその可動レールに突き合わせ状態に確実にレーザー溶接可能になり、そして、部品精度を上げることもコストを上げることも避けられる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】乗用車のドライバー・シートに活用されるところのこの発明のシート・トラックの具体例を部分的に示した部分斜視図である。
【図2】図1の2−2線に沿って示した横断面図である。
【図3】乗用車のドライバー・シートに活用されるところのこの発明のシート・トラックの別の具体例を部分的に示した部分斜視図である。
【図4】図3の4−4線に沿って示した横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明のシート・トラックは、可動レールが、それの上面を溶接面になし、そして、その溶接面にレール幅方向に段差付けしてその溶接面をレール長さ方向に伸ばし、そして、ライザーが、それの下端面をその可動レールのその段差付き溶接面の低い面にそのレール長さ方向に伸びて突き合わせ、そして、その低い面の側からレーザー溶接されてその可動レールに一体的に接合される。
【0011】
また、この発明のシート・トラックは、可動レールが、それの上面を溶接面になし、そして、その溶接面に段差付け溝をレール長さ方向に伸ばして形成し、そして、ライザーが、その可動レールのその溶接面のその段差付け溝にはめ込まれてそれの下端面をその段差付き溝の底面に突き合わせ、そして、一方のライザー側面の側からレーザー溶接されてその可動レールに一体的に接合される。
【実施例1】
【0012】
以下、特定されて図示された具体例に基づいて、この発明のシート・トラックを説明するに、図1および図2は、乗用車のドライバー・シートに活用されるところのこの発明の
シート・トラックの具体例10を示し、そして、このシート・トラック10は、左右の固定レール、右の可動レール、および右のフロントおよびリア・ライザーを省いて左の可動レール11および左のフロントおよびリア・ライザー15、16の状態で示された。勿論、このシート・トラック10は、その左右の固定レール(図示せず)が、左右方向に所定の間隔を置いて左右のフロント・フロア・ブラケット(図示せず)および左右のリア・フロア・ブラケット(図示せず)でその乗用車のフロアに固定的に据え付けられ、また、その左の可動レール11および右の可動レール(図示せず)が、その左右の固定レールに対応的にはめ合わせられて摺動可能に支持され、そしてさらに、その左のフロントおよびリア・ライザー15、16が、下端面17、18をその左の可動レール11の上面12に、その右のフロントおよびリア・ライザー(図示せず)が、下端面(図示せず)をその右の可動レールの上面(図示せず)にそれぞれ突き合わせてレーザー溶接する構造を採り、そして、その左のフロントおよびリア・ライザー15、16とその右のフロントおよびリア・ライザーとの間にシート・リフター(図示せず)を取付け、そのシート・リフターにそのドライバー・シート(図示せず)を組み付けてそのドライバー・シートを支持し、そして、そのドライバー・シートを前後調整可能にする。また、そのシート・リフターには、そのシート・トラック10上でそのドライバー・シートを上下調整させる。
【0013】
さらに詳細に説明するに、このシート・トラック10では、その左の可動レール11が
、それの上面12を溶接面13に活用し、その溶接面13にレール幅方向に段差付けしてその溶接面13をレール長さ方向に伸ばして成形し、その右の可動レールもその左の可動レール同様に、それの上面(図示せず)を溶接面(図示せず)に活用し、その溶接面にレール幅方向に段差付けしてその溶接面をレール長さ方向に伸ばして成形し、また、その左のフロントおよびリア・ライザー15、16が、それらの下端面17、18をその左の可動レール11のその段差付き溶接面13の低い面14にレール長さ方向に伸びて突き合わせ、そして、その低い面14の側からレーザー溶接されてその左の可動レール11に一体的に接合され、一方、その右のフロントおよびリア・ライザーもその左のフロントおよびリア・ライザー15、16同様にそれらの下端面(図示せず)にレール長さ方向に伸びて突き合わせ、そして、その低い面の側からレーザー溶接されてその右の可動レールに一体的に接合される。
【0014】
このレーザー溶接では、レーザー19の入射角がその左の可動レール11のその段差付き溶接面13のその低い面14から5度ないし10度の範囲に設定され、そして、部品バラツキによってその左の可動レール11とその左のフロントおよびリア・ライザー15、16との間に発生された隙間が0.3mm以上でもその隙間がその段差付き溶接面13の段差に吸収され、その隙間にそのレーザー19の通過がその段差で阻止されてその左の可動レール11に突き合わせ状態に確実にレーザー溶接される。
そして、その右の可動レールとその右のフロントおよびリア・ライザーもその左の可動レール11およびその左のフロントおよびリア・ライザー15、16同様にレーザー溶接される。
【0015】
したがって、このシート・トラック10では、その左右の可動レール11が溶接部位を段差付き溶接面13に形状変更するので、その左右のフロントおよびリア・ライザー15、16がそれの下端面17、18をその左右の可動レール11のその段差付き溶接面13のその低い面14にレール長さ方向に伸びて突き合わせて部品バラツキによる隙間がその左右の可動レール11とその左右のフロントおよびリア・ライザー15、16との間に発生されてもその隙間がその段差に吸収され、その隙間にそのレーザー19の通過がその段差で阻止され、そのようにその左右のフロントおよびリア・ライザー15、16が部品バラツキによる隙間に影響されずにその左右の可動レール11に突き合わせ状態に確実にレーザー溶接可能になり、そして、部品精度を上げることもコストが上がることも避けられる。
【実施例2】
【0016】
図3および図4は、乗用車のドライバー・シートに活用されるところのこの発明のシート・トラックの別の具体例20を示し、そして、このシート・トラック20は、左右の固定レール、右の可動レール、および右のフロントおよびリア・ライザーを省いて左の可動レール21および左のフロントおよびリア・ライザー28、29の状態で示された。勿論、このシート・トラック20は、その左右の固定レール(図示せず)が、左右方向に所定の間隔を置いて左右のフロント・フロア・ブラケット(図示せず)および左右のリア・フロア・ブラケット(図示せず)でその乗用車のフロアに固定的に据え付けられ、また、その左の可動レール21および右の可動レール(図示せず)が、その左右の固定レールに対応的にはめ合わせられて摺動可能に支持され、そしてさらに、その左のフロントおよびリア・ライザー28、29が、下端面30、31をその左の可動レール21の上面22に、その右のフロントおよびリア・ライザー(図示せず)が、下端面(図示せず)をその右の可動レールの上面(図示せず)にそれぞれ突き合わせてレーザー溶接する構造を採り、そして、その左のフロントおよびリア・ライザー28、29とその右のフロントおよびリア・ライザーとの間にシート・リフター(図示せず)を取付け、そのシート・リフターにそのドライバー・シート(図示せず)を組み付けてそのドライバー・シートを支持し、そして、そのドライバー・シートを前後調整可能にする。また、そのシート・リフターには、
そのシート・トラック20上でそのドライバー・シートを上下調整させる。
【0017】
さらに詳細に説明するに、このシート・トラック20では、その左の可動レール21が、それの上面22を溶接面23に活用し、その溶接面23に段差付け溝24をレール長さ方向に伸ばして成形し、その右の可動レールもその左の可動レール21同様に、それの上面(図示せず)を溶接面(図示せず)に活用し、その溶接面に段差付け溝(図示せず)をレール長さ方向に伸ばして成形し、また、その左のフロントおよびリア・ライザー28、29が、その左の可動レール21のその溶接面23のその段差付け溝24にはめ込まれてそれらの下端面30、31をその段差付け溝24の底面25に突き合わせ、そして、外側のライザー側面の側からレーザー溶接されてその左の可動レール21に一体的に接合され、一方、その右のフロントおよびリア・ライザーもその左のフロントおよびリア・ライザー28、29同様にその右の可動レールのその溶接面のその段差付け溝にはめ込まれてそれらの下端面をその段差付け溝の底面(図示せず)突き合わせ、そして、外側のライザー側面からレーザー溶接されてその右の可動レールに一体的に接合される。
【0018】
このレーザー溶接では、レーザー32の入射角が溶接面23から5度ないし15度の範囲に設定され、そして、部品バラツキによってその左の可動レール21のその段差付け溝24のその底面25とその左のフロントおよびリア・ライザー28、29のその下端面30、31との間に発生される隙間が0.3mm以上でもその隙間がその段差付け溝24の他側の側面27に吸収され、その隙間にそのレーザー32の通過がその他側の側面27で阻止されてその左の可動レール21に突き合わせ状態に確実にレーザー溶接される。
そして、その右の可動レールとその右のフロントおよびリア・ライザーもその左の可動レール21およびその左のフロントおよびリア・ライザー28、29同様にレーザー溶接される。
【0019】
したがって、このシート・トラック20では、その左右の可動レール21が溶接部位を段差付け溝付き溶接面23に形状変更するので、その左右のフロントおよびリア・ライザー28、29がその左右の可動レール21のその溶接面23の段差付け溝24にはめ込まれてその下端面30、31をその段差付け溝24のその底面25にレール長さ方向に伸びて突き合わせて部品バラツキによる隙間がその左右の可動レール21のその段差付け溝24のその底面25と左右のフロントおよびリア・ライザー28、29のその下端面30、31との間に発生されてもその隙間がその段差付け溝24の他側の側面27に吸収され、その隙間にレーザー32の通過がその段差付け溝24で阻止され、そのようにその左右のフロントおよびリア・ライザー28、29が部品バラツキによる隙間に影響されずにその左右の可動レール21に突き合わせ状態に確実にレーザー溶接可能になり、そして、部品精度を上げることもコストが上がることも避けられる。
【0020】
先に図面を参照して説明されたところのこの発明の特定された具体例から明らかであるように、この発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者にとって、この発明の内容は、その発明の性質(nature)および本質(substance)に由来し、そして、それらを内在させると客観的に認められる別の態様に容易に具体化される。勿論、この発明の内容は、その発明の課題に相応し(be commensurate with)、そして、その発明の成立に必須である。
【産業上の利用可能性】
【0021】
上述から理解されるように、この発明のシート・トラックでは、可動レールが、それの上面を溶接面になし、そして、その溶接面にレール幅方向に段差付けしてその溶接面をレール長さ方向に伸ばし、そして、ライザーが、それの下端面をその可動レールのその段差付き溶接面の低い面にそのレール長さ方向に伸びて突き合わせ、そして、その低い面の側からレーザー溶接されてその可動レールに一体的に接合されるので、この発明のシート・
トラックでは、その可動レールが、溶接部位を段差付き溶接面に形状変更することで、そのライザーが、それの下端面をその可動レールのその段差付き溶接面の低い面にレール長さ方向に伸びて突き合わせられて部品バラツキによる隙間がその可動レールとそのライザーとの間に発生されてもその隙間がその段差に吸収され、その隙間にレーザーの通過がその段差で防止され、そのようにライザーが部品バラツキによる隙間に影響されずにその可動レールに突き合わせ状態に確実にレーザー溶接可能になり、そして、部品精度を上げることもコストを上げることも避けられ、その結果、自動車シートにとって非常に有用で実用的である。
【符号の説明】
【0022】
10 シート・トラック
11 左の可動レール
12 上面
13 溶接面/段差付き溶接面
14 低い面
15 左のフロント・ライザー
16 左のリア・ライザー
17 下端面
18 下端面
19 レーザー
20 シート・トラック
21 左の可動レール
22 上面
23 溶接面
24 段差付け溝
25 底面
26 側面
27 側面
28 左のフロント・ライザー
29 左のリア・ライザー
30 下端面
31 下端面
32 レーザー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動レールが、それの上面を溶接面になし、そして、その溶接面にレール幅方向に段差付けしてその溶接面をレール長さ方向に伸ばし、そして、ライザーが、それの下端面をその可動レールのその段差付き溶接面の低い面にそのレール長さ方向に伸びて突き合わせ、そして、その低い面の側からレーザー溶接されてその可動レールに一体的に接合されるところのシート・トラック。
【請求項2】
可動レールが、それの上面を溶接面になし、そして、その溶接面に段差付け溝をレール長さ方向に伸ばして形成し、そして、ライザーが、その可動レールのその溶接面のその段差付け溝にはめ込まれてそれの下端面をその段差付き溝の底面に突き合わせ、そして、一方のライザー側面の側からレーザー溶接されてその可動レールに一体的に接合されるところのシート・トラック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−112085(P2013−112085A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258362(P2011−258362)
【出願日】平成23年11月26日(2011.11.26)
【出願人】(000133098)株式会社タチエス (454)
【Fターム(参考)】