説明

シート体の高速搬送装置に於ける押えロールの作動方法及び作動装置

【課題】ベニヤ単板・厚紙等のシート体の高速搬送装置に於て、複数個の押えロールの当接時期に差異が生じたとしても、シート体の搬送姿勢や搬送速度の正確性を保障する。
【解決手段】ベニヤ単板7を高速で搬送するロールコンベヤ1の上部に、空転可能な複数個の押えロール2を、揺動可能な揺動アーム3で枢支し、ベニヤ単板7の厚さ方向へ昇降自在に配設すると共に、揺動アーム3に作動機構4を係止し、該作動機構4を介して、強制的に下降させた押えロール2によって、ベニヤ単板7をロールコンベヤ1に押圧しつつ高速搬送する搬送装置に於て、圧縮空気の噴射部材5を介して、適時、押えロール2に付設した風車状の風受け部材2aに向けて、圧縮空気を噴射することにより、ベニヤ単板7に向けて下降させる際の押えロール2を、予め、押えロール2を空転させるに足る程度の微弱な駆動力を以って、ロールコンベヤ1の搬送速度に準ずる周速で空転させておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート体の高速搬送装置に於ける押えロールの作動方法及び作動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ロールコンベヤ・ベルトコンベヤ等から成る搬送装置を用いて、ベニヤ単板・厚紙・金属薄板等のシート体を搬送するに際し、搬送姿勢や搬送速度の正確性を保障する為に、押えロールを用いることは常套手段であり、一般的には、従動回転自在な複数個の押えロールを、前記搬送装置の上部へ昇降自在に載置して、シート体が通過していない場合には、複数個の押えロールが、自重の作用によって、直接前記搬送装置に接して従動回転し、また、シート体が通過する場合には、各押えロールが、シート体の厚さに応じて上昇し、従動回転するように構成することで、特に問題なく、所望通りの搬送が行い得るが、例えばシート体が、前段(前工程)から前記搬送装置に搬入される際に、搬入高さが異なる(搬入高さが高い)場合、或は例えばシート体の先端部が上向きに反り返っている場合等には、シート体の先端部が、押えロールに衝突したり、押えロールを乗越えたりするなどの不具合が発生し、円滑な搬送が行い得なくなる。
【0003】
そこで、搬送装置に搬入されるシート体の搬入高さが、搬送装置の搬送高さと異なる場合等には、特許文献1に開示される如く、従動回転自在な複数個の押えロールを、搬送装置の上部へ昇降自在に備えると共に、流体シリンダ等から成る作動機構を、前記押えロールに係止し(各種のアーム等を介した、間接的な係止形態が一般的である)、押えロールを、適時、強制的に昇降させるように構成することによって、搬送の適正化を図る改良技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−75242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
而して、前記改良技術の構成によると、各押えロールは、下降時にシート体に当接することにより、シート体を介して、搬送装置の搬送速度と同じ周速に達するまで加速させられることが必須要件となるが、例えばシート体の搬送速度が比較的低速である場合には、比較的緩やかに加速させれば支障なく、時間的に余裕があるので、また、シート体が、金属薄板等の如く比較的重くて、搬送装置との結合性に富む場合(比較的大きな摩擦搬送力が発生する場合)にあっては、押えロールの従動抵抗が、シート体の搬送力に比べて甚だ小さく、動力的に余裕があるので、いずれも問題なく円滑な搬送が行い得る。
【0006】
ところが、シート体の搬送速度が比較的高速である場合、又は/及び、例えばベニヤ単板・厚紙の如く、シート体が比較的軽くて、搬送装置との結合性に欠ける場合(比較的小さな摩擦搬送力しか発生しない場合)等にあっては、シート体が、各押えロールを、搬送装置の搬送速度と同じ周速に達するまで加速させる際に、シート体のあばれ(非平坦性)などに起因して、シート体の搬送方向と直交方向の左右に於ける押えロールの当接時期に差異が生じ、従動回転が不均衡となったり(複数個の押えロールが、各別に従動回転自在に備えられている場合には、先にシート体に接触した押えロールと、後でシート体に接触した押えロールとの間に、周速の差異が発生する)、或は不均衡な制動力が作用するので(複数個の押えロールが、回転軸を介して連結されている場合には、シート体の搬送方向と直交方向の左右いずれか片側に偏って、全部の押えロールの従動抵抗が加わる)、結果的に、シート体の搬送姿勢を歪める不具合を誘発する欠陥があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記従来技術の欠陥を払拭すべく開発したものであって、具体的には、基礎的な発明として、シート体を高速で搬送する搬送装置の上部に、空転可能な複数個の押えロールを、シート体の厚さ方向に対して昇降自在に配設すると共に、前記押えロールを、適時、強制的に昇降させるべく、流体シリンダ等から成る作動機構を、前記押えロールに係止し、前記作動機構を介して下降させた押えロールによって、シート体を搬送装置に押圧しつつ高速搬送するように構成した搬送装置に於て、適宜の駆動機構を用いて、少なくともシート体に向けて下降させる際の押えロールを、該押えロールを空転させるに足る程度の微弱な駆動力を以って、搬送装置の搬送速度に準ずる周速で空転させることを特徴とするシート体の高速搬送装置に於ける押えロールの作動方法(請求項1)を提案し、加えて、該請求項1に係る発明の実施に用いる押えロールの作動装置として、少なくともシート体に向けて下降させる際の押えロールを、該押えロールを空転させるに足る程度の微弱な駆動力を以って、搬送装置の搬送速度に準ずる周速で空転させる駆動機構を備えたことを特徴とする押えロールの作動装置(請求項2)を提案する。
【0008】
また、前記駆動機構のより具体的な形態として、押えロールに付設した風受け部材と、少なくともシート体に向けて押えロールを下降させる際に、該押えロールを単に空転させるに足る程度の微弱な駆動力を以って、搬送装置の搬送速度に準ずる周速で空転させるべく、前記風受け部材に向けて圧縮空気を噴射する圧縮空気の噴射部材とを具備する駆動機構(請求項3)、押えロールが最上昇位置近辺にある場合に、押えロールの外面に接触して、押えロールの回転方向に摩擦力を付与することにより、押えロールを、搬送装置の搬送速度に準ずる周速で空転させる摩擦力付与部材を具備する駆動機構(請求項4)、押えロールに配設された磁石又は磁性体と、押えロールが最上昇位置近辺にある場合に、押えロールの近傍に位置して、押えロールに回転方向へ回転変位する磁場を付与することにより、押えロールを、搬送装置の搬送速度に準ずる周速で空転させる回転磁場付与部材とを具備する駆動機構(請求項5)などを夫々提案する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1に係る押えロールの作動方法によれば、シート体に向けて下降させる際の押えロールを、予め、押えロールを空転させるに足る程度の微弱な駆動力を以って、搬送装置の搬送速度に準ずる周速で空転させているので、たとえ、比較的軽いシート体を比較的高速で搬送する場合に於て、シート体のあばれなどに起因して、シート体の搬送方向と直交方向の左右に於ける押えロールの当接時期に差異が生じても、従前の如く、押えロールの従動回転が不均衡となったり、或はシート体に不均衡な制動力が作用したりする虞はなく、結果的に、シート体の搬送姿勢を歪める不具合の誘発が抑止される。
【0010】
而して、本発明の請求項2に係る押えロールの作動装置を用いれば、本発明の請求項1に係る押えロールの作動方法を実施することが可能であり、而も、押えロールを常に駆動する構成を採らないので、搬送装置の搬送速度に対する押えロールの周速の過剰な同調が無用であるなど、総じて、構成が簡単で済む。また、本発明の請求項2に係る押えロールの作動装置に用いる駆動機構の具体的な形態としては、本発明の請求項3〜請求項5に係る駆動機構の形態が、代表的な形態として挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の請求項2に係る押えロールの作動装置の概略側面説明図である。
【図2】図1に例示した押えロールの作動装置の一部破断平面説明図である。
【図3】図1・図2に例示した押えロールの駆動機構の斜視説明図である。
【図4】図1〜図3に例示した押えロールの作動装置の作動説明図である。
【図5】図1〜図3に例示した押えロールの作動装置の作動説明図である。
【図6】押えロールの駆動機構の異なる実例の側面説明図である。
【図7】押えロールの駆動機構の異なる実例の斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を図面に例示した実施の一例と共に更に詳述するが、図示した実施例に於ては、シート体の一例として、ベニヤ単板(以下、単に単板と称す)を例示した。また、図示した実施例の作動装置を構成する各部材類・機器類を作動させる為には、適当な制御機構が必要であるが、該制御機構が奏すべき機能は、格別に特殊なものではなく、単に各機器類・部材類を入り切り作動(或は切替作動)させる程度の簡単な制御で足り、制御態様の構成には困難性がないので、図面を単純化して見易くする便宜上、制御機構及び制御系統(配管類・配線類)の図示は省略した。
【実施例】
【0013】
図1〜図3に於て、1は、モータ等の駆動源(図示省略)を介して、図示矢印方向に高速で回転させられる複数本の送りロール1aを有するロールコンベヤであって、後述する前工程の送り出し機構8を介して、図示矢印方向に高速で搬入される単板7を、引続き同方向に同速度(乃至は一段と高速度)で搬送する。
【0014】
2は、側方に風車状の風受け部材2aを付設して成る押えロールであって、後述するように実線で示した待機位置と点線で示した作動位置との間を交互に揺動する複数個の揺動アーム3の一方端に空転可能に枢着されており、実線で示した待機位置に於ては、後述する圧縮空気の噴射部材5を介する圧縮空気の噴射作用を得て、前記ロールコンベヤ1の搬送速度に準ずる周速で空転せしめられると共に、適時、揺動アーム3の揺動作用を得て、点線で示した作動位置に下降することにより、搬送される単板7を、ロールコンベヤ1に押圧し、単板7の搬送姿勢や搬送速度の正確性を保障する。
【0015】
尚、従動抵抗の軽減化を図る点からして、押えロールは、前記風受け部材等の付属部品を含めて、軽量である方が望ましく、例えば合成樹脂製が最も適当であるが、アルミニュウム等の軽金属製としても、実用的には問題ない。また、ボールベアリング等のころがり軸受等を介して枢支することにより、従動抵抗の一層の軽減化を図るのが望ましい。
【0016】
3は、機枠(図示省略)に固着された左右二対の逆L形フレーム6の夫々に揺動可能に枢支された複数個の揺動アームであって、各揺動アーム3の一方端には、前記押えロール2が空転可能に枢着されており、また、他方端には、後述する作動機構4が連結されていて、常態に於ては、実線で示した待機位置に於て待機すると共に、適時、作動機構4の往動作用を得て、点線で示した作動位置に揺動(往動)し、更に、所定時間経過後は、作動機構4の復動作用を得て、再び、実線で示した待機位置に揺動(復動)し、次位の単板7の搬入を待機する。
【0017】
4は、流体シリンダ(或は同様の機能を奏するクランク機構・カム機構)等から成る作動機構であって、図示しない制御機構の制御に基づき、常態に於ては、前記各揺動アーム3を、実線で示した待機位置に待機させると共に、後述する送り出し機構8を介して搬入された単板7が、ロールコンベヤ1に移乗される都度、各揺動アーム3を、点線で示した作動位置に往動させ、更に、単板7が、押えロール2の位置を通過した後は、各揺動アーム3を、再び、実線で示した待機位置に復動させる。
【0018】
5は、L字状のアーム5aを介して、逆L形フレーム6に固着された複数個の圧縮空気の噴射部材であって、図示しない制御機構の制御に基づき、実線で示した待機位置に待機している各揺動アーム3の夫々に枢着された押えロール2の風受け部材2aに圧縮空気を噴射し、各押えロール2を、ロールコンベヤ1の搬送速度に準ずる周速で空転させる。
【0019】
尚、圧縮空気は、搬送装置の稼働中は、常に噴出する態様でも差支えないが、必要に応じては、各揺動アーム3が、実線で示した待機位置から、点線で示した作動位置へ往動し始める前の限定的な期間に限って、詳細には、各揺動アーム3が往動し始める際に、各押えロール2を、ロールコンベヤ1の搬送速度に準ずる周速に達するまで空転させ得るに足る期間に限って、間歇的に噴出させる制御態様を採っても差支えない。
【0020】
8は、モータ等の駆動源(図示省略)を介して、図示矢印方向に高速で回転させられる上下一対のピンチロール8a・8bを有する送り出し機構であって、単板7を、繊維方向と同方向に高速度で搬出し、同速度(乃至は一段と高速度)で回動するロールコンベヤ1の上に移乗させる。
【0021】
本発明に係る押えロールの作動装置は、例えば述上の如く構成するものであって、その作動態様を、図4・図5の作動説明図を併用して詳述すると、図4に例示する如く、単板7が、送り出し機構8によって拘束されながら搬出されている間は、図示しない制御機構の制御に基づき、各揺動アーム3を、図4に示した待機位置に待機させると共に、少なくとも各揺動アーム3を、作動位置へ往動させ始める前には、圧縮空気の噴射部材5を介して、押えロール2の風受け部材2aに圧縮空気を噴射し、各押えロール2を、予め、ロールコンベヤ1の搬送速度に準ずる周速で空転させる。
【0022】
然る後に、図5に例示する如く、単板7の全体が、ロールコンベヤ1の上に移乗されたら、図示しない制御機構の制御に基づき、作動機構4を介して、速やかに各揺動アーム3を、図5に示した作動位置に往動させ、各押えロール2によって、単板7を、ロールコンベヤ1に押圧する。
【0023】
そして、単板7が、押えロール2の位置を通過した後は、図示しない制御機構の制御に基づき、作動機構4を介して、各揺動アーム3を、再び、図4に示した待機位置に復動させ、次位の単板7の搬入を待機させる。
【0024】
尚、、図示は省略したが、必要に応じては、ロールコンベヤ1の搬送方向の上手側から下手側にかけて、複数列状に押えロール2を備えても差支えなく、斯様に複数列状に押えロール2を備える場合には、全ての押えロール2を一斉に待機位置へ復動させる態様の外に、必要に応じては、単板が通過した上手側の列から下手側の列へ順々に待機位置へ復動させる態様を採っても差支えない。
【0025】
述上の如き押えロールの作動装置の作動態様によれば、単板7に向けて下降させる際の押えロール2を、予め、押えロール2を空転させるに足る程度の微弱な駆動力を以って、ロールコンベヤ1の搬送速度に準ずる周速で空転させているので、たとえ、比較的軽い単板7を比較的高速で搬送する場合に於て、単板7のあばれなどに起因して、単板7の搬送方向と直交方向の左右に於ける押えロール2の当接時期に差異が生じても、従前の如く、押えロール2の従動回転が不均衡となったり、或は単板7に不均衡な制動力が作用したりする虞はなく、結果的に、単板7の搬送姿勢を歪める不具合の誘発が抑止される。また、押えロールを常に駆動する構成を採らないので、搬送装置の搬送速度に対する押えロールの周速の過剰な同調が無用であるなど、総じて、構成が簡単で済む。
【0026】
尚、前記実施例に於ては、押えロールの駆動機構として、押えロールに付設した風受け部材と、該風受け部材に向けて圧縮空気を噴射する圧縮空気の噴射部材とを組合わせて成る駆動機構を用いたが、押えロールの駆動機構としては、後述する如き態様の駆動機構の採用も可能である。
【0027】
即ち、図6に例示した押えロールの駆動機構は、好ましくは外周部にゴム・軟質合成樹脂等の弾性体を被覆した駆動ロール9を、該駆動ロール9の左右を互に連結する連結軸9a、及び逆L形フレーム6に固着された支持アーム10を介して、前記駆動ロール9の外周面が、実線で示した待機位置に位置する押えロール2(風受け部材を有しないもの)の外周面に接触し得る位置に枢支すると共に、モータ等の駆動源11、及び前記連結軸9aを介して、前記駆動ロール9を、ロールコンベヤ1の搬送速度に準ずる周速で、図示矢印方向に空転させるよう構成したものであり、待機位置に於て、駆動ロール9の外周面に、外周面が接触している押えロール2は、点線で示した作動位置へ往動し始めるまで、ロールコンベヤ1の搬送速度に準ずる周速で空転させられているので、前記実施例と同様に、たとえ、比較的軽い単板7を比較的高速で搬送する場合に於て、単板7のあばれなどに起因して、単板7の搬送方向と直交方向の左右に於ける押えロール2の当接時期に差異が生じても、押えロール2の従動回転が不均衡となったり、或は単板7に不均衡な制動力が作用したりする虞はなく、単板7の搬送姿勢を歪める不具合の誘発が抑止される。
【0028】
尚、前記駆動源11は、搬送装置の稼働中は、常に駆動させる態様でも差支えないが、必要に応じては、各揺動アーム3が往動し始める際に、各押えロール2を、ロールコンベヤ1の搬送速度に準ずる周速に達するまで空転させ得るに足る期間に限って、間歇的に駆動させる制御態様を採っても差支えない。
【0029】
次に、図7に例示した押えロールの駆動機構は、押えロール2(風受け部材を有しないもの)に適数個の永久磁石又は磁性体2bを付設すると共に、好ましくは同数の永久磁石12aを対称状に具備して成り、而も、永久磁石12aの磁力による誘導作用により、前記押えロール2を、ロールコンベヤ1の搬送速度に準ずる周速を以って、誘導回転させるように、モータ等の駆動源13を介して、適宜の回転数で回転せしめられるロール状の回転磁場付与部材12を、待機位置に位置する押えロール2の側方の近隣に、駆動源13の支持部材を兼用する案内部材15を介して、押えロール2に対して離隔・接近自在に配設し、更に、流体シリンダ(或は同様の機能を奏するクランク機構・カム機構)等から成る作動機構14を、前記案内部材15に付設して構成したものである。
【0030】
斯様な構成で成る駆動機構の作動態様について説明すると、少なくとも各揺動アーム3を、作動位置へ往動させ始める前には、図示しない制御機構の制御に基づき、作動機構14を介して、回転磁場付与部材12を、押えロール2に接近させておくと共に、駆動源13を介して、回転磁場付与部材12を、適宜の回転数で回転させることにより、予め、押えロール2を、ロールコンベヤ1の搬送速度に準ずる周速で、図示矢印方向に空転させておき、次いで、各揺動アーム3を、作動位置へ往動させる際には、図示しない制御機構の制御に基づき、作動機構14を介して、回転磁場付与部材12を、押えロール2から離隔させることにより、永久磁石12aの磁力による誘導作用を速やかに断って、単に空転しているだけの押えロール2を単板7に押圧すれば、やはり、単板7の搬送方向と直交方向の左右に於ける押えロール2の当接時期に差異が生じても、押えロール2の従動回転が不均衡となったり、或は単板7に不均衡な制動力が作用したりする虞はなく、単板7の搬送姿勢を歪める不具合の誘発が抑止される。
【0031】
尚、図示は省略したが、必要に応じては、前記実例に於ける永久磁石を具備した回転磁場付与部材に代えて、電磁石を具備する回転磁場付与部材や、或は電気の通電による電磁誘導式の回転磁場付与部材等を用いても差支えなく、更に、いずれの形式の回転磁場付与部材を用いるにせよ、該回転磁場付与部材を、搬送装置の稼働中は、常に稼働させる態様でも差支えないが、必要に応じては、各揺動アーム3が往動し始める際に、各押えロール2を、ロールコンベヤ1の搬送速度に準ずる周速に達するまで空転させ得るに足る期間に限って、間歇的に稼働させる制御態様を採っても差支えない。また、電気式の回転磁場付与部材を用いる場合には、電気の通電を断つことによって、磁場の付与作用が消滅するので、回転磁場付与部材を押えロールから離隔させる構成・操作は無用となる。
【0032】
以上、押えロールの駆動機構について、代表的な態様を図示例と共に挙げたが、要は、少なくともシート体に向けて下降させる際の押えロールを、該押えロールを空転させるに足る程度の微弱な駆動力を以って、搬送装置の搬送速度に準ずる周速で空転させる機能を奏する駆動機構であれば、態様に格別制約なく採用することができ、前記代表的な態様にこだわらずに、適宜設計変更して差支えない。
【0033】
また、前記各実施例に於ては、押えロールに対する作動機構の係止形態を、間接的な係止形態(揺動アームを介する一般的な係止形態)としたが、作動機構として、例えばクランク機構を用いる場合等に於ては、押えロールを、クランクバーの一端に直に枢着する、直接的な係止形態を採っても差支えなく、間接的な係止形態に限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上明らかな如く、本発明によれば、たとえ、比較的軽いシート体を比較的高速で搬送する場合に於て、シート体のあばれなどに起因して、シート体の搬送方向と直交方向の左右に於ける押えロールの当接時期に差異が生じても、押えロールの従動回転が不均衡となったり、或はシート体に不均衡な制動力が作用したりする虞はなく、シート体の搬送姿勢を歪める不具合の誘発が抑止され、シート体の搬送姿勢や搬送速度の正確性が保障できるので有益であり、搬送速度の高速化が望まれる斯界に於て、本発明の実施効果は著大である。
【符号の説明】
【0035】
1 :ロールコンベヤ
2 :押えロール
3 :揺動アーム
4、14 :作動機構
5 :圧縮空気の噴射部材
7 :単板
8 :送り出し機構
9 :駆動ロール
10 :支持アーム
11、13 :駆動源
12 :回転磁場付与部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート体を高速で搬送する搬送装置の上部に、空転可能な複数個の押えロールを、シート体の厚さ方向に対して昇降自在に配設すると共に、前記押えロールを、適時、強制的に昇降させるべく、流体シリンダ等から成る作動機構を、前記押えロールに係止し、前記作動機構を介して下降させた押えロールによって、シート体を搬送装置に押圧しつつ高速搬送するように構成した搬送装置に於て、適宜の駆動機構を用いて、少なくともシート体に向けて下降させる際の押えロールを、該押えロールを空転させるに足る程度の微弱な駆動力を以って、搬送装置の搬送速度に準ずる周速で空転させることを特徴とするシート体の高速搬送装置に於ける押えロールの作動方法。
【請求項2】
シート体を高速で搬送する搬送装置の上部に、空転可能な複数個の押えロールを、シート体の厚さ方向に対して昇降自在に配設すると共に、前記押えロールを、適時、強制的に昇降させるべく、流体シリンダ等から成る作動機構を、前記押えロールに係止し、前記作動機構を介して下降させた押えロールによって、シート体を搬送装置に押圧しつつ高速搬送するように構成した搬送装置に於て、少なくともシート体に向けて下降させる際の押えロールを、該押えロールを空転させるに足る程度の微弱な駆動力を以って、搬送装置の搬送速度に準ずる周速で空転させる駆動機構を備えたことを特徴とするシート体の高速搬送装置に於ける押えロールの作動装置。
【請求項3】
押えロールに付設した風受け部材と、少なくともシート体に向けて押えロールを下降させる際に、該押えロールを単に空転させるに足る程度の微弱な駆動力を以って、搬送装置の搬送速度に準ずる周速で空転させるべく、前記風受け部材に向けて圧縮空気を噴射する圧縮空気の噴射部材とを具備する駆動機構を用いて成る請求項2記載のシート体の高速搬送装置に於ける押えロールの作動装置。
【請求項4】
押えロールが最上昇位置乃至は最上昇位置近辺にある場合に限り、押えロールの外面に接触して、押えロールの回転方向に摩擦力を付与することにより、押えロールを、搬送装置の搬送速度に準ずる周速で空転させる摩擦力付与部材を具備する駆動機構を用いて成る請求項2記載のシート体の高速搬送装置に於ける押えロールの作動装置。
【請求項5】
押えロールに配設された磁石又は磁性体と、押えロールが最上昇位置乃至は最上昇位置近辺にある場合に限り、押えロールの近傍に位置して、押えロールに回転方向へ回転変位する磁場を付与することにより、押えロールを、搬送装置の搬送速度に準ずる周速で空転させる回転磁場付与部材とを具備する駆動機構を用いて成る請求項2記載のシート体の高速搬送装置に於ける押えロールの作動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−71824(P2013−71824A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212826(P2011−212826)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000155182)株式会社名南製作所 (77)
【Fターム(参考)】