説明

シート分離装置、定着装置、および画像形成装置

【課題】シート部材と定着部材とを分離させる圧縮気体の噴射条件を所望の条件に合致するよう調整する。
【解決手段】定着ベルト61と、加圧ローラ62とで形成されるニップ部Nで未定着トナーを担持したシート部材Pを搬送して定着する定着装置に配置され、圧縮空気を噴射するノズル部材72からから圧縮空気をシート部材Pの搬送上流方向からニップ部Nに向けて噴射することにより、前記定着部材と前記シート部材の分離を補助するシート分離装置において、ノズル部材72に導入する圧縮空気を2つの電磁弁88、89を設け、電磁弁のうち少なくとも1つの電磁弁88に圧縮空気の圧力および流量の少なくとも一方を減じる流体制御弁87を設け、電磁弁制御装置91で1つの電磁弁を選択して、シート部材の搬送タイミングと同期をとって駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート分離装置、定着装置、および画像形成装置に係り、特に圧縮気体を吐出してシートを定着部材から分離するシート分離装置、定着装置、および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、トナー像が転写された用紙等のシート部材を加熱加圧して定着する定着装置を備える。この定着装置としてハロゲンヒータ等の熱源を内蔵した定着ローラと、この定着ローラに接触する加圧ローラでニップ部を形成し、このニップ部に未定着トナー像が転写されたシート部材を挟んで搬送して、未定着トナー像をシート部材に定着する熱ローラ定着方式のものがある。
【0003】
また、輪状の定着ベルトを、ハロゲンヒータ等を内蔵した加熱ローラと、この加熱ローラに隣接して配置した定着ローラとの間に掛けわたし、この定着ベルトを介して定着ローラを接触する加圧ローラと前記定着ベルトとニップ部を形成し、このニップ部に未定着トナー像が転写されたシート部材を挟んで搬送して、未定着トナー像をシート部材に定着するベルト定着方式のものも採用される。
【0004】
このような定着ベルト方式の定着装置は、定着ベルトの熱容量が小さいため、ウオーミングアップタイムを短縮でき、省電力化を図ることができるという利点を有している。
【0005】
そして、定着装置では、シート部材に融着したトナー画像が定着ローラや定着ベルトに接触するため、定着ローラや定着ベルトに離型性に優れたフッ素系樹脂を表面にコーティングされるとともに、分離爪を用いてシート部材の分離を図っている。
【0006】
分離爪を用いることの大きな欠点は、分離爪が定着ローラや定着ベルトに接触するため、定着ローラや定着ベルトの表面に爪跡(爪傷)をつけやすく、定着ローラ等を損傷した場合には、出力されたシート部材の画像にスジがついてしまうことである。
【0007】
一般的にモノクロ画像形成装置の場合、定着ローラは金属製のローラの表面をシリコーン樹脂でコーティングしたものが使用され、分離爪が接触しても傷がつきにくく、その寿命も長くできた。しかし、カラー画像形成装置の場合には、発色性をよくするために、表層をシリコーンゴムにフッ素コートしたもの(一般的には数十ミクロン程度のPFAチューブを使用する)か、シリコーンゴムの表面にオイルを塗布したものを使用する。
【0008】
このような構成の定着ローラは、表層が軟らかく傷がつきやすいという問題がある。表層に傷がつくと、定着画像にスジ状の傷が生じることから、今ではカラー画像形成装置では分離爪のような接触手段をほとんど用いず、大半は非接触分離を行っている。
【0009】
非接触分離では、トナーと定着ローラとの粘着力が高いと定着後のシート部材がローラに巻きつくため、容易に巻きつきジャムが発生するようになる。特にカラー画像形成では何層ものトナー層が形成されており、粘着力が高まるために巻きつきジャムが発生しやすい。
【0010】
そこで、現在カラー画像形成装置におけるシートの分離には主に次の(1)〜(3)が採用されている。
(1)定着ローラや定着ベルトとの間に微小なギャップ(約0.2mm〜1.0mm)を開け定着ローラや定着ベルトの長手方向および幅方向に並行に配置された分離板を用いる非接触分離板方式。
(2)定着ローラや定着ベルトとの間に微小なギャップ(約0.2mm〜1.0mm)を開け、所定間隔に配された分離爪を用いる非接触分離爪方式。
(3)シート部材の腰の強さと定着ローラ、定着ベルトの湾曲部弾性とで自然に剥離させるようにしたセルフストリッピング方式。
【0011】
しかし、前記(1)〜(3)のいずれの方式でも、定着出口への用紙案内板との隙間が開いているため、薄紙や先端余白が少ないシート部材を通紙するとき、あるいは写真等のベタ画像を形成したシート部材通紙するときは、シート部材が定着ローラや定着ベルトに密着したまま隙間を通過して、用紙巻きつきジャムが発生したり、分離板や分離爪に突き当たってジャムが発生したりすることがある。
【0012】
そこで、非接触でシート部材を確実に分離させるため、空気等の圧縮気体を用紙分離位置に吹き付ける技術が提案され、使用に供されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6参照)。これらは、圧縮空気を、シート部材の定着後トナー像と定着部材の間に吹き付け、シート部材を強制的に定着部材から剥離するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、シート部材の定着後トナー像と定着部材の間に圧縮空気を吹き付けてシート部材を分離させる分離するに際して次の問題がある。図5は圧縮気体によるシート部材の分離状態を示す写真である。図5は、シート部材Pが圧縮空気流Aによって定着部材130から離れる状態を示している。なお、符号140は加圧ローラ、150は圧縮空気流Aを吹き出すノズル部材を示している。なお、図中シート部材Pの輪郭に破線を加入してある。
【0014】
図5に示すように、トナーが熱圧着されたシート部材Pに圧縮空気流Aが当たると、圧縮空気流Aが当たったところから優先的に分離され、圧縮空気流Aが当たっていないところは、遅れて分離される。このため、シート部材Pの端部が波打っていることが分かる。このような現象は、近年のカラー電子写真用トナーに代表される、多量のトナーが付着した場合特に顕著となる。
【0015】
また、シート部材Pのうち、圧縮空気流Aが当たったトナー像は冷却されることとなる。このような両作用により、圧縮空気を使用したシート分離装置を使用すると、トナー像に付与される熱量に差異が生じ、圧縮空気の当たったところと、当たらないところではトナー像に光沢差が生じ、画像障害となることがある。
【0016】
図6はトナー像に光沢差が生じた画像の模式図である。図6中シート部材Pのトナー像には、圧縮空気流Aが作用し先に分離した領域T1と、圧縮空気流120が作用せず後から分離した領域T2とでは、トナー像に光沢差が生じている。
【0017】
このように分離を行うに際しては、圧縮空気の圧力および流量共に大きいほうが、分離に作用する力も多く、例えばより薄いシート部材、またはトナー量が多い画像、または先端余白の少ない画像を分離させることが可能である。
【0018】
このため概していえば、圧縮気体を用いたシート部材の分離に際しては、画像の先端余白を少なくすることおよび多量のトナーを付着させることの2つの要求と、画像の光沢ムラを良好にすること、とは相反する関係となる。このため、印刷対象となるシート部材の種類や画像面積に応じた圧縮空気の圧力、流量を設定して分離を行うことが望ましい。
【0019】
そこで、本発明は、シート部材と定着部材とを分離させる圧縮気体の噴射条件を所望の条件に合致するよう調整することができるシート分離装置、定着装置、および画像形成装置を提供することを目的とする。
【0020】
そこで本発明は、
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記の課題を解決する請求項1の発明は、加熱手段を有する回転体である定着部材と、前記定着部材に加圧されてなる加圧部材とを設け、前記2部材により形成されるニップ部で未定着トナーを担持したシート部材を搬送して、前記トナー画像を前記シート部材に定着させる定着装置に配置され、圧縮気体発生手段と圧縮気体を噴射するノズル部材とを具備し、ノズル部材からから圧縮気体をシート部材の搬送上流方向からニップ部に向けて噴射することにより、前記定着部材と前記シート部材の分離を補助するシート分離装置において、前記圧縮気体発生手段は複数個の電磁弁と、前記電磁弁の少なくとも1つの電磁弁に接続され前記圧縮気体の圧力および流量の少なくとも一方を減じる流体制御弁と、前記複数の電磁弁から1つの電磁弁を選択して、シート部材の搬送タイミングと同期をとって駆動する制御手段と、を備えることを特徴とするシート分離装置である。
【0022】
同じく請求項2の発明は、請求項1に記載のシート分離装置において、前記流体制御弁が、流量制御弁であることを特徴とする。
【0023】
同じく請求項3の発明は、請求項2に記載のシート分離装置において、前記流量制御弁が、絞り弁であることを特徴とする。
【0024】
同じく請求項4の発明は、請求項1に記載のシート分離装置において、前記流体制御弁が、減圧弁であることを特徴とする。
【0025】
同じく請求項5の発明は、請求項4に記載のシート分離装置において、前記減圧弁が、リリーフ付減圧弁であることを特徴とする。
【0026】
同じく請求項6の発明は、請求項1に記載のシート分離装置において、前記流体制御弁には、減圧弁を直列に配置していることを特徴とする。
【0027】
同じく請求項7の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載のシート分離装置と、加熱手段を有する回転体である定着部材と、前記定着部材に加圧されてなる加圧部材とを備えることを特徴とする定着装置である。
【0028】
同じく請求項8の発明は、請求項7に記載の定着装置と、この定着装置に搬入するシートにトナー像を形成する画像形成手段とを備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、圧縮気体の噴射条件を複数個の電磁弁のうち少なくとも1つの電磁弁に流体制御弁を接続し、これらの電磁弁を制御手段で選択して駆動するようにしたので、印刷対象となるシート部材の種類や画像面積に応じた圧縮空気の圧力、流量を最適なものに設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例に係る画像形成装置の構造を示す概略断面図である。
【図2】実施例に係る定着装置を示す模式図である。
【図3】実施例に係る圧縮空気供給回路を示す回路図である。
【図4】実施例に係るシート分離装置の制御系を示すブロック図である。
【図5】圧縮気体によるシート部材の分離状態を示す写真である。
【図6】トナー像に光沢差が生じた画像の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
実施形態に係るシート分離装置は、複数個の電磁弁のうち少なくとも1つに流体制御弁を接続して、使用する電磁弁を制御手段で選択して圧縮気体の噴射条件を変更できるようにした。これにより、駆動させる電磁弁を選択して、シート部材の分離に使用する圧縮気体の強さ、すなわち圧縮気体がシート部材の分離に及ぼす力の大きさを選択できる。
【0032】
また、実施形態に係るシート分離装置は、電磁弁に流量制御弁を接続するものである。これにより、圧縮空気の圧力低下を招くことなく流量を減少させることができる。
【0033】
また、実施形態に係るシート分離装置は、電磁弁に絞り弁を接続するものである。これにより、圧縮空気の圧力低下を招くことなく流量を減少させることができ安価に実現できる。
【0034】
また、実施形態に係るシート分離装置は、電磁弁に減圧弁を接続するものである。これにより、圧力を減少させることが可能であり、圧力と同時に流量も減少させることができる。
【0035】
また、実施形態に係るシート分離装置は、電磁弁にリリーフ付減圧弁を接続したものである。これにより、圧力を減少させることができ、圧力と同時に流量も減少させることが安価にできる。
【0036】
また、実施形態に係るシート分離装置は、電磁弁とノズルの間に、流量制御弁と減圧弁を直列に用いるものである。これにより、圧縮気体の流量、圧力共に所望の値に制御することができる。
【0037】
さらに、実施形態に係るシート分離装置は、画像形成装置が取得しているシート部材の紙種、画像面積の印刷情報に基づいて制御する電磁弁を選択することができる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の実施例(以下では単に実施例と記載する)に係る定着装置および画像毛性装置について説明する。図1は実施例に係る画像形成装置の概略断面図である。図中100は複写装置本体、200は給紙テーブル、300はスキャナー、400は原稿自動搬送装置(ADF)、500は露光装置である。複写装置本体100を給紙テーブル200上に載せ、複写装置本体100上にスキャナー300を取り付け、さらにその上にADF400を取り付けてある。
【0039】
複写装置本体100には、中央に無端ベルト状の中間転写体10を設けて3つの支持ローラ14、15、16に掛け回し、図中時計回りに回転搬送可能としてある。なおこの例では、3つの支持ローラのうちの第2の支持ローラ15の左に、画像転写後に中間転写体10上に残留する残留トナーを除去する中間転写体クリーニング装置17が設けてある。
【0040】
また、3つの支持ローラのうちの第1の支持ローラ14と第2の支持ローラ15の間に、中間転写体10上に位置するように、中間転写体10の搬送方向に沿ってイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4つの画像形成手段18を横に並べて配置してタンデム作像装置20を構成してある。このタンデム作像装置20の上方には、図示のように露光装置21が設けてある。
【0041】
一方、中間転写体10を挟んでタンデム作像装置20の反対側には、2次転写装置22を備えている。2次転写装置22は、図示の例では、2つのローラ23間に無端ベルトである2次転写ベルト24を掛けわたして構成してあり、中間転写体10を介して第3の支持ローラ16に2次転写ベルト24を押し当てるように配置し、中間転写体10上の画像を転写材であるシートに転写するようになっている。
【0042】
2次転写装置22の横には、シート上の転写画像を定着する定着装置60が設けてある。定着装置60は、無端ベルトである定着ベルト61に加圧ローラ62を押し当てて構成してある。上述した2次転写装置22は、画像転写後のシートをこの定着装置25へと搬送するシート搬送機能を備えている。もちろん、2次転写装置22として、転写ローラや非接触のチャージャを配置してもよいが、そのような場合は、このシート搬送機能を併せて備えることは難しくなる。
【0043】
なお図示の例では、このような2次転写装置22および定着装置25の下側に、上述したタンデム作像装置20と平行にして、シートの両面に画像を記録するためにシートを反転させるシート反転装置28を備えている。
【0044】
このカラー電子写真装置を用いてコピーをとる際の動作を説明する。原稿自動搬送装置400の原稿台30上に原稿をセットするか、または原稿自動搬送装置400を開いてスキャナー300のコンタクトガラス32上に原稿をセットし、原稿自動搬送装置400を閉じてそれで押さえる。
【0045】
そして、図示していないスタートスイッチを押すと、原稿自動搬送装置400に原稿をセットしたときは、原稿を搬送してコンタクトガラス32上へと移動させた後、他方コンタクトガラス32上に原稿をセットしたときは、直ちにスキャナー300を駆動し、第1走行体33および第2走行体34を走行させる。そして、第1走行体33で光源から光を発射するとともに原稿面からの反射光をさらに反射して第2走行体34に向け、第2走行体34のミラーで反射して結像レンズ35を通して読み取りセンサー36に入れ、原稿内容を読み取る。
【0046】
また、図示していないスタートスイッチを押すと、これも図示していない駆動モータで支持ローラ14、15、16の1つを回転駆動して他の2つの支持ローラを従動回転させ、中間転写体10を回転搬送する。同時に、個々の画像形成手段18で感光体40K、40Y、40Cを回転させ、露光装置500で露光され潜像が形成された各感光体40K、40Y、40C、40M上にそれぞれブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの単色画像を形成する。そして、中間転写体10の搬送とともに、それらの単色画像を順次転写して中間転写体10上に合成カラー画像を形成する。
【0047】
一方、図示していないスタートスイッチを押すと、給紙テーブル200の給紙ローラ42の1つが選択されて回転し、ペーパーバンク43に多段に備える給紙カセット44の1つからシートを繰り出し、分離ローラ45で1枚ずつ分離して給紙路46に入れ、搬送ローラ47で搬送して複写装置本体100内の給紙路48に導き、レジストローラ49に突き当てて止める。手差しトレイ51から給紙するときは、給紙ローラ50を回転して手差しトレイ51上のシートを繰り出し、分離ローラ52で1枚ずつ分離して手差し給紙路53に入れ、同じくレジストローラ49に突き当てて止める。
【0048】
そして、中間転写体10上の合成カラー画像にタイミングを合わせてレジストローラ49を回転させ、中間転写体10と2次転写装置22との間にシートを送り込み、2次転写装置22で転写してシート上にカラー画像を記録する。
【0049】
画像転写後のシートは、2次転写装置22で搬送して定着装置60へと送り込み、定着装置60で熱と圧力とを加えて転写画像を定着させた後、切換爪55で切り換えて排出ローラ56で排出し、排紙トレイ57上にスタックする。または、切換爪55で切り換えてシート反転装置28に入れ、そこで反転させて再び転写位置へと導き、裏面にも画像を記録した後、排出ローラ56で排紙トレイ57上に排出する。
【0050】
一方、画像転写後の中間転写体10は、中間転写体クリーニング装置17で、画像転写後に中間転写体10上に残留する残留トナーを除去し、タンデム作像装置20による再度の画像形成に備える。
【0051】
次に実施例に係る定着装置について説明する。図2は実施例に係る定着装置を示す模式図である。実施例に係る定着装置60はベルト定着装置である。定着装置60において、定着部材としての定着ベルト61は、駆動ローラである定着ローラ64、従動ローラである加熱ローラ65に掛けわたされ、回転走行する。
【0052】
加圧ローラ62は、定着ベルト61を介して、定着ローラ64に相対して設けられており、加圧ローラ62は図示しない加圧機構により定着ベルト61を介して定着ローラ64に加圧される。加熱ローラ65の内部には熱源としての定着ヒータ66が設けられ、この定着ヒータ66により加熱ローラ65が加熱されて定着ベルト61が加熱ローラ65により加熱される。定着ベルト61は、定着ローラ64が図示しない駆動機構で回転駆動されることにより回転し、加圧ローラ62は定着ベルト61に連れ回りする。加圧ローラ62には駆動力を与えてもよい。
【0053】
定着ベルト61の表面温度は図示しない温度検知素子により検知され、図示しない温度制御部がその温度検知素子の出力値に基づいて定着ヒータ66を定着ベルト61の表面温度が所定の設定温度になるように制御する。
【0054】
未定着のシート部材Pは定着装置60に搬入されて定着ベルト61と加圧ローラ62とのニップ部Nを通過し、所定の温度に制御されている定着ベルト61と加圧ローラ62とで形成されるニップ部Nでトナー像Tが溶融定着され、装置本体外に送り出される。なお、加圧部材は、加圧ローラ62を用いたが、加圧ベルトなどを用いてもよい。
【0055】
また、実施例では、ベルトのテンションを保持するためのテンションローラ63を定着ベルト61の外側に設置している。なお、テンションローラ63の位置は、定着ベルト61の内側でもよい。
【0056】
実施例に係る定着装置60おいて、ニップ部Nの出口近傍には、ノズル部材72が配置されている。なお、図3中に描いたノズル部材72は、その先端部のみ略図で示している。また、ノズル部材72は、非接触分離爪(分離板と呼ぶことある)と並列させることができる。
【0057】
不図示の圧縮気体供手段と電磁弁により制御された圧縮空気流Aが、ノズル部材72中の管路72aを通り、ニップ部Nに向けて噴射される。シート部材Pの先端はこの圧縮空気の流れにより強制的に定着ベルト61と分離される。
【0058】
次に実施例に係るシート分離装置の圧縮気体供給手段である圧縮空気供給回路について説明する。図3は実施例に係る圧縮空気供給回路を示す回路図である。図3中、定着装置60以外の各部材は、JIS B 0125に準拠して描いてある。
【0059】
実施例では、圧縮空気供給回路は、コンプレッサー81と、エアーフィルター83と、第1の電磁弁84と、圧力調整弁85と、流体制御弁87と、第3の電磁弁89とを備える。圧縮空気の発生源であるコンプレッサー81の下流には、ドレン抜きのため、エアーフィルター83が配置されている。なお、コンプレッサー81から下流への配管82は下向きにするのが望ましい。エアーフィルター83は、圧縮空気中に存在する異物(埃)を除去し、かつ、配管内で発生した水分も除去する。ここで、容量の大きいエアーフィルターを用いれば、圧縮空気噴射のバッファの役割も果たし、安定した圧縮空気噴射が可能となる。また、非図示であるが、エアーフィルター83の下流にバッファ機能専用のエアータンクを配置してもよい。
【0060】
エアーフィルター83には、第1の電磁弁84が接続されている。この第1の電磁弁84は、回路中の排圧とドレンを排出する機能を有し、機械の運転が停止すると、第1の電磁弁84が開くことにより、回路内を排圧すると共に、エアーフィルターにたまったドレンも排出する。ドレンは、蒸発皿90で受ける。
【0061】
エアーフィルター83には、圧力調整弁(リリーフ弁)85と、第2の電磁弁88と、第3の電磁弁89とが接続されている。圧力調整弁85を調整することにより、圧縮気体噴射時の圧力を制御できる。圧力調整弁85を調整して、コンプレッサー81が運転時にエアーフィルター83が所定の圧力になるように制御される。
【0062】
圧力調整弁85には、圧力調整弁85から抜ける圧縮空気の音を軽減させるためのサイレンサ86が接続されている。第2の電磁弁88の下流には、流体制御弁87が配置され、この流体制御弁87からの圧縮空気がノズル部材72に供給される。この流体制御弁としては各流体制御弁を配設することができる。流体制御弁の種類については後述する。
【0063】
実施例では、第2の電磁弁88と、第3の電磁弁89とが並列に接続され、この第3の電磁弁89からもノズル部材72に圧縮空気が供給される。なお、第2の電磁弁88と、第3の電磁弁89とは排他的に制御される。
【0064】
実施例に係るシート分離装置において、第3の電磁弁89には、流体調整弁等が接続されていない。第3の電磁弁89を駆動させたときの圧縮気体噴出条件を、ここでは「第1の噴射条件」という。第2の電磁弁88が駆動されれば、流体制御弁87にて調整された圧縮気体で、ノズル部材72から噴射される。流体制御弁87からの圧縮気体噴出条件を「第2の噴射条件」という。
【0065】
第3の電磁弁89には、流体調整弁が接続されていないため、第2の電磁弁88が選択されたときよりも、ノズル部材72から噴射される気体の圧力、流量いずれかが大きい。すなわち、「第2の噴射条件」に比べて「第1の噴射条件」のほうが、圧縮気体の圧力、流量のいずれかが大きいといる。
【0066】
次に実施例に係るシート分離装置の制御系について説明する。図4は実施例に係るシート分離装置の制御系を示すブロック図である。
【0067】
第1の電磁弁84、第2の電磁弁88、第2の電磁弁88には、制御手段である電磁弁制御装置91が接続されている。電磁弁制御装置91は、第2の電磁弁88、第3の電磁弁89のうちから1つの電磁弁を選択して、シート部材の搬送タイミングと同期をとって駆動する。電磁弁制御装置91は、複写装置本体100の制御を行う画像形成装置制御部110および入力パネルなどの入力手段圧111に接続されており、画像形成装置制御部110から取得した印刷条件や、入力手段圧111からのオペレーターの指示に基づいて第2の電磁弁88および第3の電磁弁89の動作を切り換える。すなわち、電磁弁制御装置91は、印刷時のシート部材の種類や画像面積に応じた圧縮空気の圧力、流量を選定すし、「第1の噴射条件」と「第2の噴射条件」とを選択する。
【0068】
次に、流体制御弁87について説明する。圧縮気体の圧力や流量の条件については、この圧力や流量と、シート部材の分離の模様との相関の関係が周囲の遮蔽物等により交互作用があり一概には対応つられないため、最終的には実際の分離時におけるシート部材の挙動をみて決定する必要がある。しかし、おおよそ圧と流量の用紙挙動に与える傾向があるため、圧と流量の設計はシート部材の挙動と、光沢ムラをみて決定することができる。
【0069】
図2中矢印Bはシート部材が分離する方向を示している。この分離方向に、速くシート部材を運動させたい場合は圧力を高くする。一方遅くシート部材を運動させたい場合は、圧力を低くする。圧力が高いと、シート部材に働く力が大きくなるからである。また圧力が高い場合は、圧縮気体の作用部と非作用部の分離時間差も大きくなる。シート部材の、B方向への分離方向への運動量を大きくしたい場合は、流量を大きくする。運動量を小さくさせたい場合は、流量を小さくする。流量が多いと圧縮気体の流れの層が大きくなり、シート部材は期待の流れに沿って運動するため、流れの層が大きいと、シート部材の運動量も大きくなる。
【0070】
前述した流体制御弁87には、流量を一定にする流量制御弁と、圧力を一定にする圧力制御弁とがある。ここで、流量制御弁は、速度制御弁(スピードコントローラ)と絞り弁に分類される。速度制御弁は、圧縮気体の圧力変動を伴わず流量を一定に制御することができる(JIS B 8376参照)。
【0071】
また、減圧弁は、圧力制御弁であり、圧力を減少させることが可能であるが、同時に流量も低下する。リリーフ付減圧弁は、圧縮気体を逃がして減圧するので、圧縮気体の節約にはつながらないが、構造が単純のため安価である(減圧弁、およびリリーフ付減圧弁の詳細は、JIS B 8372 1を参照)。
【0072】
流体制御弁87として、速度制御弁を用いた場合、圧力低下がなく、流量のみ低下するため、シート部材の分離方向への運動速度を下げることなく、運動距離を小さくすることができ、シート部材の過剰な運動を避けることができる。
【0073】
一方流体制御弁87に絞り弁を用いた場合、速度制御弁を用いた場合よりも圧力が上がる場合がある。しかし、流量は一定に減少させることができるため、シート部材の分離方向への運動距離を小さくすることができる。
【0074】
絞り弁は、配管内の有効断面を一部絞っている単純な構造(オリフィス構造)のため、安価である。また、上記2種の流量制御弁は、電磁弁より上流の符号90で示した箇所に配置してもよい。87に、減圧弁を用いた場合は、圧力が低下し同時に流量も低下する。よって、シート部材の運動速度、運動距離共に小さくすることができる。流体制御弁87としてリリーフ付減圧弁を用いた場合の効果も、同じである。
【0075】
減圧弁に関しては、第2の電磁弁88の上流側の符号90の位置に配置すると、第2の電磁弁88の前の圧力が減圧弁にて減圧されてしまうため、第2の電磁弁88が開いたときのみ、減圧弁が作用する。
【0076】
減圧弁は第3の電磁弁89の位置に配設することが望ましい。第3の電磁弁89の位置に、流量制御弁と減圧弁を直列に配設する場合、流量、圧力共に所望の値にすることが可能である。ただし、流量制御弁と減圧弁の両方が必要となりコスト高となる。
【0077】
なお、上記実施例は定着装置として、ベルト定着装置を例に説明したが、定着装置は、ベルト定着装置に限らず、加熱源を有する定着部材と、それに押圧される加圧部材の、2本のローラ対で構成されるいわゆるローラ定着装置であってもよい。
【0078】
また、前記実施例では、ノズル部材72に圧縮空気を送る電磁弁が2つの場合について説明したが、ノズル部材72に圧縮空気を送る電磁弁の数を3以上とし、各電磁弁からの圧縮空気の流量、圧力を異なるようにすることができる。電磁弁の数を増すことにより印刷条件に合わせて細かい調整ができる。
【符号の説明】
【0079】
10 中間転写体
14 第1の支持ローラ
15 第2の支持ローラ
16 第3の支持ローラ
17 中間転写体クリーニング装置
18 画像形成手段
20 タンデム作像装置
21 露光装置
22 2次転写装置
23 ローラ
24 2次転写ベルト
25 定着装置
28 シート反転装置
30 原稿台
32 コンタクトガラス
33 第1走行体
34 第2走行体
35 結像レンズ
36 センサー
40K、40Y、40C 感光体
42 給紙ローラ
43 ペーパーバンク
44 給紙カセット
45 分離ローラ
46 給紙路
47 搬送ローラ
48 給紙路
49 レジストローラ
50 給紙ローラ
51 トレイ
52 分離ローラ
53 給紙路
55 切換爪
56 排出ローラ
57 排紙トレイ
60 定着装置
61 定着ベルト
62 加圧ローラ
63 テンションローラ
72 ノズル部材
72a 管路
81 コンプレッサー
82 配管
83 エアーフィルター
84 第1の電磁弁
85 圧力調整弁(リリーフ弁)
86 サイレンサ
87 流体制御弁
88 第2の電磁弁
89 第3の電磁弁
90 蒸発皿
91 電磁弁制御装置(制御手段)
100 複写装置本体
64 定着ローラ
65 加熱ローラ
66 定着ヒータ
120 圧縮空気流
130 定着部材
140 符号
200 給紙テーブル
300 スキャナー
400 原稿自動搬送装置
500 露光装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0080】
【特許文献1】特開昭51−104350号公報
【特許文献2】特許第2876217号公報
【特許文献3】特開平6434191号公報
【特許文献4】特開2007−187715号公報
【特許文献5】特開2007−240920号公報
【特許文献6】特開2008−102408号公報
【特許文献7】特開2009−31759号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱手段を有する回転体である定着部材と、前記定着部材に加圧されてなる加圧部材とを設け、前記2部材により形成されるニップ部で未定着トナーを担持したシート部材を搬送して、前記トナー画像を前記シート部材に定着させる定着装置に配置され、圧縮気体発生手段と圧縮気体を噴射するノズル部材とを具備し、ノズル部材からから圧縮気体をシート部材の搬送上流方向からニップ部に向けて噴射することにより、前記定着部材と前記シート部材の分離を補助するシート分離装置において、
前記圧縮気体発生手段は複数個の電磁弁と、
前記電磁弁の少なくとも1つの電磁弁に接続され前記圧縮気体の圧力および流量の少なくとも一方を減じる流体制御弁と、
前記複数の電磁弁から1つの電磁弁を選択して、シート部材の搬送タイミングと同期をとって駆動する制御手段と、
を備えることを特徴としたシート分離装置。
【請求項2】
前記流体制御弁が、流量制御弁であることを特徴とする請求項1に記載のシート分離装置。
【請求項3】
前記流量制御弁が、絞り弁であることを特徴とする請求項2に記載のシート分離装置。
【請求項4】
前記流体制御弁が、減圧弁であることを特徴とする請求項1に記載のシート分離装置。
【請求項5】
前記減圧弁が、リリーフ付減圧弁であることを特徴とする請求項4に記載のシート分離装置。
【請求項6】
前記流体制御弁には、減圧弁を直列に配置していることを特徴とした請求項1に記載のシート分離装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載のシート分離装置と、加熱手段を有する回転体である定着部材と、前記定着部材に加圧されてなる加圧部材とを備えることを特徴とする定着装置。
【請求項8】
請求項7に記載の定着装置と、この定着装置に搬入するシートにトナー像を形成する画像形成手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−194342(P2012−194342A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57931(P2011−57931)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】