説明

シート加湿装置及び画像形成システム

【課題】シートの波打ちを矯正しつつも、印字率(画像面積)の高いシートに対して、不要な水分を与えず、水の消費量を抑えてユーザー又はサービスマンの作業効率を向上させること。
【解決手段】シートPにおける表面と裏面の各々の面に形成された画像の情報(例えば印字率)に基づいて、加湿ローラ対15、16によるシートPへの加湿処理を実行するか否かを決定し、その決定結果に基づいてシート振分け弁11cの動作を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに水を付与する加湿部を備えたシート加湿装置及び画像形成システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式により画像を形成する画像形成装置においては、一般に、微粉末のトナーを用いてシート上にトナー像を形成し、当該トナー像を加熱・加圧することによりシートにトナー像を定着する処理が行われる。
【0003】
この定着処理ではシートが加熱されることによりシートに含まれる多くの水分が蒸発するが、シートの表面と裏面に加わる熱量はしばしば不均一であるため、シートの両面から異なった量の水分が蒸発し、シートにカールが発生するという問題が発生する。
【0004】
この問題を解決するため、カールと逆方向にシートを湾曲させることによりシートに発生したカールを矯正するカール矯正装置が知られている(特許文献1参照)。特許文献1に記載のカール矯正装置は、ローラ対やループ空間などによりシートを湾曲させる矯正機構(所謂デカーラー)を備えており、給紙されたシート自体が有する特性や種別に基づいて当該矯正機構によるカール矯正を行うか否かを切り替えている。
【0005】
また、定着処理を通過したシートは環境に曝されることにより吸湿し、シートに含有される水分は次第に回復する。しかし、シートに含有される水分の回復は一様ではなく、シートの各部分によって異なる割合で回復するため、シートに波打ちが発生する。
【0006】
そこで、水を収納した容器と、該容器に収納された水が付与されるローラ対とを備え、当該ローラ対の間にシートを搬送することによりシートに水を均一に付与するシート加湿装置が提供されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2000−247526号公報
【特許文献2】特開2006−8282号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載のシート加湿装置は、給紙された全てのシートを加湿するため、波打ちが発生しない、あるいは波打ちが発生し難いシートに対しても加湿処理を実行するものである。このため、水の消費量が多くなり、ユーザー又はサービスマンは何度も容器に水を充填する作業をしなければならず、作業が煩雑となっていた。
【0008】
また、波打ちが発生しない、あるいは波打ちが発生し難いシートに対して加湿処理を行うと、当該シートが必要以上に水分を含有してしまい、シートの剛性が低下して搬送不良が発生したり、排紙トレイに積載されたシート同士が張り付いてしまったりする問題も発生する。特に、フルカラーで両面印刷された写真画像のような印字率の高い印刷物の場合は、シート上のトナーによって水分がシートに吸湿されず、シートの表面に余分な水分が残ってしまい、それが機構部品に付着して搬送不良や錆の原因になってしまう。
【0009】
そこで、本発明の目的は、シートの波打ちを矯正しつつも、印字率(画像面積)の高いシートに対して、不要な水分を与えず、水の消費量を抑えてユーザー又はサービスマンの作業効率を向上させることができるシート加湿装置及び画像形成システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成すべく、本発明に係るシート加湿装置は、
画像が形成されたシートに水を付与して加湿する加湿部と、
当該加湿部による前記シートへの加湿処理を実行するか否かを切り替える切り替え部と、
当該切り替え部の動作を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記シートにおける表面と裏面の各々の面に形成された画像の情報に基づいて、前記加湿部による前記シートへの加湿処理を実行するか否かを決定し、その決定結果に基づいて前記切り替え部の動作を制御することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明に係る画像形成システムは、
前記シート加湿装置と、シートに画像を形成する画像形成装置を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るシート加湿装置及び画像形成システムによれば、シートに発生した波打ちを矯正するとともに、水の消費量を抑えてユーザー又はサービスマンの作業効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、本実施形態の説明における記載により、本発明の技術的範囲が限定されることはない。
【0014】
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態に係る画像形成システムの概略断面図である。
【0015】
図1に示す画像形成システムは画像形成装置A、シート加湿装置B及び後処理装置Cを備えている。画像形成装置Aは、自動原稿搬送装置1及び画像読取部2を上部に有し、プリンタ部3を下部に有する。画像読取部2はプラテンガラス21の下方に位置し、光源22、第1ミラーを備えるミラーユニット23、第2ミラーと第3ミラーを備えるVミラーユニット24、レンズ25及びCCDイメージセンサ26を有する。
【0016】
図示しない原稿が自動原稿搬送装置1によってプラテンガラス21上に搬送されると、原稿は光源22によって照射される。そして、原稿からの反射光は、ミラーユニット23、Vミラーユニット24及びレンズ25を経てCCDイメージセンサ26上に結像されて電気信号に変換される。この電気信号は、画像処理部6によって画像処理された後、デジタルの画像データとして後述するRAM302に格納される。
【0017】
プリンタ部3は、シート収納部4、画像形成部5、画像処理部6及び定着部7を有する。シート収納部4は複数枚のシートPを収納している。画像形成部5は帯電、露光及び現像を行う電子写真プロセスにより感光体5b上にトナー像を形成する。定着部7は熱源7cが内蔵された加熱ローラ7aと加圧ローラ7bとでシートPを搬送するニップ部を形成し、シートPを搬送しつつ加熱・加圧してトナーを溶融し、画像をシートPに定着する。
【0018】
シートPはシート収納部4から供給され、画像形成部5の給送部5aにおいて一時停止した後に画像形成部5の給送部5aから給紙される。そして、感光体5b上に形成されたトナー像をシートPに転写して画像形成が行われた後、定着部7によりシートPにトナー像が定着され、排紙ローラ10から排出される。
【0019】
シートPの搬送経路として、シート収納部4から画像形成部5までの給紙路8、画像形成部5から定着部7を介して排紙ローラ10に至る搬送路9、及び反転搬送を行う裏面用搬送路12が設けられている。
【0020】
画像形成モードとして、片面フェースダウン排紙モード、片面フェースアップ排紙モード、及び両面モードがある。片面フェースダウン排紙モードでは、画像形成部5により片面に画像が形成されて定着部7を通過したシートPは、スイッチバック搬送経路9aで反転処理により表裏反転された後に、排紙ローラ10により排出される。片面フェースアップ排紙モードでは、画像形成部5により片面に画像形成されて搬送路9を搬送されたシートPは、そのまま排紙ローラ10により排出される。両面モードでは、画像形成部5により片面に画像形成されて定着部7を通過したシートPは、下方に走行して裏面用搬送路12に進行し、表裏反転した後に、給紙路8に再給紙される。そして、再給紙されたシートPの裏面に対して画像形成部5により画像が形成され、裏面画像が形成されたシートPは定着部7を通過して排紙ローラ10により排出される。
【0021】
画像形成装置Aの上部には操作部14が設けられており、この操作部14により画像形成装置Aにおける各種のモード及び後処理装置Cを用いた出力モードを設定することができる。
【0022】
画像形成装置Aから排出されたシートPはシート加湿装置Bを経て後処理装置Cに搬送される。本発明に関係するシート加湿装置Bについては、後に説明する。
【0023】
後処理装置Cは、ステイプル処理部202、シフト処理部203、中間スタッカ204、及び昇降排紙皿206を有し、導入口201から導入されたシートPに対して公知のステイプル処理又はシフト処理を行って、昇降排紙皿206に排出する。また、後処理装置Cは固定排紙皿205を有し、少量の画像形成を行う場合は、導入口201から導入されたシートPを固定排紙皿205に排紙する。ステイプル処理やシフト処理等の後処理を行わないモードの場合でも、大量の画像形成を行う場合は、昇降排紙皿206にシートPが排出される。
【0024】
図2は、シート加湿装置Bにおける第1および第2の搬送経路の一部を拡大した拡大断面図である。
【0025】
図1及び図2において、シート加湿装置Bは、第1の搬送経路11aと第2の搬送経路11bを有し、第2の搬送経路11bは第1の搬送経路11aの上方に設けられている。第1の搬送経路11aには加湿部としての加湿ローラ対15、16が設けられている。また、第2の搬送経路11bには搬送ローラ13が設けられており、加湿ローラ対15、16を迂回する搬送バイパス用の経路として機能する。
【0026】
第2の搬送経路11bを第1の搬送経路11aの上方に設けることにより、水供給ローラや水供給器等を第1の搬送経路11aの下方に配置できるため、加湿ローラ対15、16への水供給機構を簡略化できる。
【0027】
第1、第2の搬送経路11a、11bの分岐点には、軸Rを支点として不図示のバネとソレノイドからの動力で回動する、切り替え部としてのシート振分け弁11cが設けられている。このシート振分け弁11cは、後述するようにシートPに形成された画像情報に基づいて制御され、排紙ローラ10により画像形成装置Aから排出されたシートPの搬送経路を第1のシート搬送経路11aまたは第2のシート搬送経路11bへと切り替える。
【0028】
なお、ソレノイドへの通電がOFFのときは、シート振分け弁11cは機械的なバネ力で実線で示す状態にあり、第1の搬送経路11aの開放状態を優先にした、所謂デフォルト設定にしてある。また、第1の搬送経路11aと第2の搬送経路11bとの経路は同じ長さにしてあり、シート搬送に関するシーケンスの複雑化を回避している。また、シート加湿装置Bのシート受入口E近傍には、排紙ローラ10により排出されたシートPの先端を検知するシート先端検出センサSが配置されている。
【0029】
加湿ローラ対15、16は、ともに金属、硬質樹脂等の剛性体からなる軸芯15a、16aの上に多孔質ウレタンゴム等からなる多孔質層15b、16bが形成されたものである。多孔質層15b、16bは、その表面から水の供給を受けるとともにそれぞれ矢印M、矢印K方向に回転する。加湿ローラ16は、押圧機構により所定のストッパまで押し下げられた加湿ローラ15とでニップ部Tを形成し、このニップ部TでシートPを狭持、搬送することによりシートPを加湿(水を付与)する。
【0030】
加湿ローラ対15、16は、起動時に迅速な給水を受ける必要があるため、水供給ローラ17を架設した水供給容器18が偏芯カム18aによって押し上げられ(起動時以外は水供給ローラ17と加湿ローラ16とは離間している。)、水供給ローラ17が加湿ローラ16に当接して水を供給する。
【0031】
水供給ローラ17は、多孔質ウレタンゴムの素材から形成され、その一部が水供給容器18の水面下に浸されている。水供給容器18は、貯水タンク19からポンプ19a、送水管19bを介して水が補給され、所定の水面レベルを保っている。
【0032】
また、加湿ローラ16に接触するようにして規制部材17aが設けられている。この規制部材17aは、丸棒状の金属、硬質樹脂等の剛体により構成されており、加湿ローラ16の多孔質層16bに圧接し、多孔質層16bを変形させることにより多孔質層16bに含まれる水をスクイズする。これによって、加湿ローラ16の含水量及びシートPに付与される給水量が規制され、シートPが適度に加湿され、過剰な加湿によるシートPのベタツキ等が防止される。すなわち、規制部材17aの加湿ローラ16への接触圧を調節することにより、シートPへの適度な加湿が可能となる。なお、規制部材17aは、加湿ローラ16に従動して回転してもよいし、回転しないで圧接のみでもよい。
【0033】
図3は、画像形成装置A及びシート加湿装置Bの制御系のブロック図であり、ここでは代表的なものを示す。
【0034】
CPU(Central Processing Unit)300は画像形成装置A全体の動作を制御するものであり、ROM(Read Only Memory)301やRAM(Random Access Memory)302等に接続されている。このCPU300は、ROM301に格納されている各種制御プログラムを読み出してRAM302に展開し、各部の動作を制御する。また、CPU300は、RAM302に展開したプログラムに従って各種処理を実行し、その処理結果をRAM302に格納する。そして、RAM302に格納した処理結果を所定の保存先に保存させる。
【0035】
操作部14は、キーボードやマウスなどの入力機器を備えており、ユーザー又はサービスマンがこの入力機器を操作することにより、画像形成装置Aにおける各種のモード及び後処理装置Cの出力モードを設定することができる。また、本実施形態においては、後述するように、シートPに形成された画像情報に基づいてシート振分け弁11cを制御するように構成されているが、この制御に用いられる閾値を入力してRAM302に格納することもできる。なお、この操作部14に液晶画面などの表示機能を設け、各種設定情報を表示しても良い。また、表示機能と入力機能とを備えたタッチパネルにより構成しても良い。
【0036】
RAM302は、CPU300がROM301から動作毎に読み出した制御プログラムを展開するための一時記憶部として機能する。また、操作部14により入力された各種設定情報や閾値などが格納される。
【0037】
通信部303は、情報を伝送するためのインターフェースであり、USB(Universal Serial Bus)やIEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)1394などによりシート加湿装置Bの通信部403と接続されている。
【0038】
また、シート加湿装置BにおけるCPU400は、ROM401に記憶された制御プログラムに基づいてシート振分け弁11c、加湿ローラ対15、16、水供給ローラ17などを制御するとともに、シート先端検出センサSの検知結果を通信部403、通信部303を介してCPU300に伝送する。なお、本実施の形態では、画像形成装置Aとシート加湿装置Bとにそれぞれ別々のCPU(CPU300、CPU400)を設けているが、一つのCPUにより一括して制御する構成としても良い。また、本実施形態においては、CPU300、CPU400がROM301、401及びRAM302、402と協働することにより制御部を構成する。
【0039】
図4は、シートPに画像を形成し、加湿処理を行うか否かを決定する動作を示すフローチャート図である。
【0040】
まず、自動原稿搬送装置1により原稿を搬送し、光源22により原稿を照射する。原稿からの反射光をCCDイメージセンサ26にて電気信号に変換し、デジタルの画像データとしてRAM302に格納する(ステップS1)。このとき、RAM302に格納された画像データを解析して画像情報を算出する(ステップS2)。例えば、画像情報としては、シートPの面積に対するトナー像の面積の割合、すなわちトナーによるシートPの被覆率(印字率、画像面積率)やシートPに形成されるベタ画像の最大面積値などがあげられる。
【0041】
次に、算出した画像情報が、予めRAM302に格納されている閾値と比較する(ステップS3)。例えば、画像情報として印字率を用いる場合は第1の閾値を90%、第2の閾値を60%とし、ベタ画像の最大面積値を用いる場合は第1の閾値を7cm×7cm、第2の閾値を4cm×4cmとする。なお、この閾値は、画像形成システムが設置される室温や湿度などの環境、定着部7による定着温度、波打ち発生と判断される程度などに応じて適宜設定することが可能であり、ユーザー又はサービスマンが操作部14を通じて設定することが可能である。
【0042】
そして、ステップS3において比較した結果を画像データに対応付けてRAM302に格納する(ステップS4)。例えば、画像情報が第1の閾値以上であれば「10」、第2の閾値以上であれば「01」、第2の閾値未満であれば「00」というようなステータス情報を画像データに対応付けておく。
【0043】
続いて、シートPを給紙するとともに、RAM302に格納された画像データに基づいて感光体5b上にトナー像を形成し、当該トナー像をシートPに転写して画像を形成する(ステップS5)。画像が形成されたシートPは排紙ローラ10から排出され、シート加湿装置Bのシート受入口Eに受け入れられる。シートPの先端がシート先端検出センサSにより検知されると(ステップS6;Yes)、当該検知結果が通信部403及び通信部303を介してCPU300に伝達される。
【0044】
そして、CPU300ではステップS4において画像データに対応付けた比較結果(ステータス情報)を読み出し、この比較結果をCPU400に送信する。
【0045】
比較結果としてシートPの表面と裏面のどちらか一方の画像情報が第2の閾値未満(ステータス「00」)であった場合(ステップS7−1;Yes、S7−2;Yes)、または、比較結果としてシートPの表面と裏面の画像情報が第2の閾値以上で第1の閾値未満(ステータス「01」)となった場合(ステップS7−4;No)は、シートPへの加湿処理を実行するように決定し、シート振分け弁11cを回動させずに、シートPを第1の搬送経路11aに搬送させる(ステップS8)。そして、加湿ローラ対15、16のニップ部TでシートPを狭持、搬送することによりシートPに加湿処理を施し(ステップS9)、フローのエンドとなる。
【0046】
一方、比較結果としてシートPの表面と裏面のどちらか一方の画像情報が第1の閾値以上(ステータス「10」)であった場合(ステップS7−3で;Yes、S7−4;Yes)は、シートPへの加湿処理を実行しないように決定し、シート振分け弁11cを回動させて、シートPを第2の搬送経路11bに搬送させる(ステップS10)。これにより、シートPには加湿処理を施すことなく排紙される。
【0047】
このように、シートPにおける表面と裏面の各々の面に形成された画像の情報(印字率、画像面積率、ベタ画像の最大面積値など)に基づいて、シートPへの加湿処理を実行するか否か決定し、その決定結果に基づいて、加湿機能を有する搬送経路あるいは加湿機能を有さない搬送経路とでシートPの搬送経路を切り替える構成としている。従って、波打ちが発生するシートPに対しては加湿処理を実行して波打ちを矯正するとともに、シートPへの不必要な水を付与しないようにするため、水の消費量を抑えてユーザー又はサービスマンの作業効率を向上させることができる。
【0048】
なお、シート先端検出センサSの検知に基づきシート振分け弁11cを回動させるタイミングを制御したが、例えば、画像形成部5の給送部5aからのシートPの搬送時間に基づいてシート振分け弁11cのタイミングを制御する構成としても構わない。
【0049】
また、上述の実施形態では、搬送経路を切り替えることによりシートの加湿処理の有無を切り替えるようにしたが、同一搬送経路でシートの加湿処理の有無を切り替えることも可能である。以下の実施形態で説明する。
【0050】
[第2の実施形態]
図5は、本発明の第2の実施形態に係る画像形成システムの概略断面図である。
【0051】
図5に示す画像形成システムは画像形成装置A、シート加湿装置B及び後処理装置Cを備える。なお、本実施形態における画像形成装置A及び後処理装置Cは、第1の実施形態と同一の機能を有するため、同一符号を付してその説明を省略する。
【0052】
図6は、図5におけるシート加湿装置Bの加湿ローラ対15、16近傍の拡大図である。
【0053】
図6(a)は加湿ローラ15が最下位にあり、加湿ローラ16に圧着してニップ部Nを形成している状態を示し、図6(b)は加湿ローラ15が最上位にあり、加湿ローラ16から離間して間隙を形成し、当該間隙に紙搬送補助ガイド部材157が移動してシート搬送ガイドを形成している状態を示す。
【0054】
図7は、図6における加湿ローラ対15、16の一方の端部近傍の斜視図である。
【0055】
図5、図6、図7において、シート加湿装置Bの搬送経路11の途中にシートPへの水供給用の多孔質ローラ対である加湿ローラ15、16が設けられている。加湿ローラ15を軸支する回転軸156は、不図示の枠体に支持された、支点軸151を支点として矢印W方向または反W方向に回動する支持枠152の両側にある側面部152bにより不図示の軸受を介して支持されている。
【0056】
支持枠152の上面部152aには、バネ153の一端が固着されており、不図示の動力源から駆動力を得て回転可能な回転軸154と一体の偏芯カム155に抗して当接している。支点軸151、支持枠152、バネ153、回転軸154、及び偏芯カム155の作用により加湿ローラ15は上下方向に変移可能となっており、これらが本発明の切り替え部に該当する。また、加湿ローラ15の回転軸156を支点にして回動する紙搬送補助ガイド部材157(以下、単に補助ガイドという。)が、加湿ローラ15の回転軸156に軸着している。
【0057】
支持枠152の側面部152bにはバネ掛け158が設けられており、バネ159の一方の端部がバネ掛け158に掛止され、他方の端部は回転軸156に対して補助ガイド157のガイド面157cと反対側に掛けられている。バネ159の引張り力により補助ガイド部材157は矢印S方向に回動する力が作用するが、側面部152bに設けられたストッパ160で停止している。加湿ローラ15がカム155によって押し下げられて、加湿ローラ16とニップ部Nを形成するとき(図6(a)参照)は、ガイド面157cはシート搬送方向Vに対して略垂直状態(退避状態)にある。
【0058】
また、不図示の固定枠体にはソレノイド162が配置されており、このソレノイド162は作動部材161を介して、補助ガイド157をS方向と反対の方向に回動させる。加湿ローラ15を加湿ローラ16から離間するときは、図6(b)に示すように、偏芯カム155が回動し、バネ153は支持枠152を矢印W方向に引き上げ、前記加湿ローラ15を加湿ローラ16から離間させて所定の間隙を形成する。この間隙の形成に連動してソレノイド162への通電がONとなり、引張り力が発生し、作動部材161を介して補助ガイド157を反矢印S方向に回動させる。側面部152bにはストッパ163が設けられており、このストッパ163により補助ガイド157の回動を停止させる。これにより、ガイド面157cはシート搬送方向Vと略平行に位置される。
【0059】
また、加湿ローラ16を軸支する回転軸171は、その両端部が不図示の軸受を介して固定枠体に支持されており、不図示の動力源から動力を得て回転する。また、この回転軸171には、回転軸171を支点にして矢印T方向または反矢印T方向に回動する紙搬送補助ガイド部材172(以下、単に補助ガイドという。)が軸着している。
【0060】
回転軸171を支持する不図示の固定枠体にはバネ掛け173が設けられており、バネ174に一方の端部がバネ掛け173に掛止され、他方の端部は回転軸171に対して補助ガイド172のガイド面172cと反対側に掛けられている。バネ174の引張り力により補助ガイド172は矢印T方向に回動する力が作用するが、不図示の固定枠体に設けられたストッパ175で停止している。従って、加湿ローラ16が加湿ローラ15とでニップ部Nを形成しているときは、前記補助ガイド172のガイド面172cはシート搬送方向Vに対し略垂直状態(退避状態)にある。
【0061】
また、不図示の固定枠体にはソレノイド177が配置されており、このソレノイド177は作動部材176を介して、前記補助ガイド172を反矢印T方向に回動させる。図6(b)に示すように、加湿ローラ15が加湿ローラ16からの離間による間隙の形成に連動して、ソレノイド177への通電がONとなり、引張り力が発生し、作動部材176を介して補助ガイド172を反矢印T方向に回動させる。不図示の固定枠体にはストッパ178が設けられており、このストッパ178により補助ガイド172の回動を停止させる。これにより、補助ガイド172のガイド面172cはシート搬送方向Vと略平行に位置される。
【0062】
すなわち、シートPに対して非加湿処理を行う場合は、ソレノイド162、177の通電をONとし、加湿ローラ15の離間により形成された間隙に補助ガイド157、172のガイド面157c、172cを移動させ、シートPの通過可能なシート搬送ガイド(補助搬送路)Dを形成する。この補助ガイド157、172によりシート搬送ガイドDを形成することにより、加湿ローラ対15、16がシートPに接触することがなくなるので、確実に非加湿処理を行うことができる。
【0063】
また、シートPに対して加湿処理を行う場合は、ソレノイド162、177の通電をOFFとし、補助ガイド157、172をバネ159、174によって矢印S、T方向に回動させてシート搬送方向Vに対し略垂直状態(退避状態)に戻されるとともに、カム155を回動させて加湿ローラ15を押し下げ、加湿ローラ15、16とでニップ部Nを形成する。
【0064】
以上の構成により、同一搬送経路でシートへの加湿処理、非加湿処理の切り替えが可能になる。また、加湿処理、非加湿処理の切り替えをするにあたり、シートPの搬送経路は1つで構わないので、コスト抑制およびシート搬送のソフトシーケンスが簡素化でき、給送性能の安定化を向上させることができる。
【0065】
なお、本実施の形態では、加湿ローラ16の回転軸171は固定支持にしているが、加湿ローラ15と同様な機構で、すなわち、加湿ローラ16の回転軸171を偏芯カムにより回動する支持枠で支持することにより、加湿ローラ15に連動して加湿ローラ16も上下方向に変移するように構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像形成システムの概略断面図である。
【図2】シート加湿装置における第1および第2の搬送経路の一部を拡大した拡大断面図である。
【図3】画像形成装置及びシート加湿装置の制御系のブロック図であり、
【図4】シートに画像を形成し、加湿処理を行うか否かを決定する動作を示すフローチャート図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る画像形成システムの概略断面図である。
【図6】図5におけるシート加湿装置Bの加湿ローラ対15、16近傍の拡大図である。
【図7】図6における加湿ローラ対15、16の一方の端部近傍の斜視図である。
【符号の説明】
【0067】
A 画像形成装置
B シート加湿装置
P シート
S シート先端検出センサ
2 画像読取部
3 プリンタ部
5 画像形成部
6 画像処理部
11c シート振分け弁
14 操作部
15、16 加湿ローラ対
17 水供給ローラ
18 水供給容器
19 貯水タンク
19a ポンプ
19b 送水管
151 支点軸
152 支持枠
153、159、174 バネ
154 回転軸
155 偏芯カム
157、172 紙搬送補助ガイド部材(補助ガイド)
157c、172c ガイド面
161、176 作動部材
162、177 ソレノイド
300、400 CPU
301、401 ROM
302、402 RAM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像が形成されたシートに水を付与して加湿する加湿部と、
当該加湿部による前記シートへの加湿処理を実行するか否かを切り替える切り替え部と、
当該切り替え部の動作を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記シートにおける表面と裏面の各々の面に形成された画像の情報に基づいて、前記加湿部による前記シートへの加湿処理を実行するか否かを決定し、その決定結果に基づいて前記切り替え部の動作を制御することを特徴とするシート加湿装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記シートにおける表面と裏面の少なくとも一方の面に形成された画像の情報が第1の閾値以上の場合は、前記加湿部による前記シートへの加湿処理を実行しないように決定する請求項1に記載のシート加湿装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記シートにおける表面と裏面の少なくとも一方の面に形成された画像の情報が第2の閾値未満の場合は、前記加湿部による前記シートへの加湿処理を実行するように決定する請求項1又は2に記載のシート加湿装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記シートにおける表面と裏面の各々の面に形成された画像の情報とも、前記第1の閾値未満で前記第2の閾値以上の場合は、前記加湿部による前記シートへの加湿処理を実行するように決定する請求項2又は3に記載のシート加湿装置。
【請求項5】
前記情報は画像の印字率情報である請求項1乃至4の何れか1項に記載のシート加湿装置。
【請求項6】
前記加湿部は加湿ローラ対により前記シートを挟持し、前記加湿ローラ対から前記シートに水を付与する請求項1乃至5の何れか1項に記載のシート加湿装置。
【請求項7】
請求項1乃至5の何れか1項に記載したシート加湿装置と、シートに画像を形成する画像形成装置を有することを特徴とする画像形成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−173356(P2009−173356A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−11235(P2008−11235)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】