説明

シート成形材料ロービングのためのサイジング組成物

ポリマーフィルム形成用成分、少なくとも1種のシランカップリング剤、及び1種以上の潤滑剤を含む水性ガラス繊維サイジング組成物が提供される。該サイジング組成物のポリマーフィルム形成用成分は、シラン化ポリビニルアセテート、エポキシド化ポリビニルアセテート、及び修飾エポキシエマルジョンを含む。好ましい実施態様では、該フィルム形成剤は、各シラン化ポリビニルアセテート、エポキシド化ポリビニルアセテート、及び修飾エポキシエマルジョンの比が70:25:5、50:25:25、又は63:18:18でサイジング組成物に存在する。シート成形材料方法におけるサイジング組成物でサイジングされた繊維は、改良された湿潤特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にガラス繊維のためのサイズ組成物、及びさらに詳細には、シラン化ポリビニルアセテート、エポキシド化ポリビニルアセテート、及び修飾エポキシエマルジョンから形成されるフィルム形成用ポリマー成分を含むサイズ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス繊維は、種々の技術に有用である。例えば、ガラス繊維は、ポリマーマトリックスにおける強化材として用いられ、ガラス繊維で強化されたプラスチック又はコンポジットを形成する。ガラス繊維は、連続又は細断フィラメント、ストランド、ロービング、織物、不織物、メッシュ、及びポリマーを強化するためのスクリムの形状で用いられる。ガラス繊維が、一般的にポリマーマトリックスにおける強化材として使用され、ガラス繊維で強化されたプラスチック又はコンポジットを形成するのは、それらが大気条件の変化に応じて縮んだり伸びたりしないような寸法安定性を提供するためである。さらに、ガラス繊維は、高い引張強さ、耐熱性、防湿性、及び高い熱伝導性を有する。
【0003】
典型的に、ガラス繊維は、ブッシュ又はオリフィスからの溶融ガラス材料の流れを細くすることによって形成される。フィルム形成用ポリマー、カップリング剤、及び潤滑剤を含有する水性サイジング組成物は、それらがブッシュから引き出された後に繊維に適用され、その後の処理中に繊維を破損から保護し、及び強化されるマトリックス樹脂を有する繊維の適合性を改善する。サイジング組成物が適用された後、サイジングされた繊維を別々のストランドに集め、及び巻き付けてガラス繊維パッケージを製造してもよい。続いて、ガラス繊維パッケージを加熱して、水を除去し、及びガラス繊維の表面を軽くコーティングする残留物として該サイズ剤を沈積させてもよい。複数の得られた乾燥ガラス繊維パッケージは固められ、及びロービングドフ(doff)又はパッケージと呼ばれるスプールに巻き付けてもよい。ロービングパッケージは、複数の束のガラス繊維を有するガラスストランドからなる。
【0004】
強化ロービングは、シート成形材料(SMC)方法に用いられ得る。SMC製造方法では、ポリマーフィルムの層、例えば不飽和ポリエステル樹脂又はビニルエステル樹脂プレミックスを、非接着性表面を有するプラスチックキャリアシート上に計量しながら供給する。細断されたガラス繊維ロービングの束を、続いてポリマーフィルム上に沈着させ、及びポリマーフィルムの第二の層を含有する第二の非接着性キャリアシートを、該第二のポリマーフィルムが該細断されたガラス束と接触させ、及びサンドイッチされた材料を形成するように第一のシート上に置く。このサンドイッチされた材料を、続いて混練し、生じるSMC材料中にポリマー樹脂マトリックス及びガラス繊維の束を分散させ、続いてこれを後の成形方法に使用するために丸めてもよい。
【0005】
SMC材料の製造では、細断されたガラス繊維の束がポリマーマトリックス材料に接触するのが望ましい。この接触の一つの指標は濡れと呼ばれ、いかにガラスの束がマトリックスSMC樹脂材料によって包まれているかを示す指標である。乾燥ガラスを全く有さない完全に濡れたガラスの束が望ましい。この最初の処理中の不完全な濡れは、最終的なコンポジットの表面特性と同様にその後の処理に悪影響を及ぼし得る。例えば、乏しい濡れは、SMCの成形特性を乏しくし得、最終的に成形される部品に低いコンポジット強度及び表面欠損を与える。SMC製造方法処理量、例えばラインスピード及び生産力は、いかによく及びいかに早くロービングの細断された束を完全に濡らすことができるかによって制限される。
【0006】
従って、当技術分野では、濡れ、及び対応するSMC生産速度及び成形されたコンポジット部品の物理的特性を改良するサイジング組成物が必要とされる。
【発明の開示】
【0007】
本発明の目的は、フィルム形成用ポリマー成分、シランカップリング剤、及び潤滑剤を含有するサイジング組成物を提供することである。フィルム形成用ポリマー成分は、シラン化ポリビニルアセテート、エポキシド化ポリビニルアセテート、及び修飾エポキシエマルジョンから形成される。修飾エポキシエマルジョンの非限定例は、アミン修飾エマルジョン及びエポキシエステルエマルジョンを含む。該フィルム形成剤は、好ましくは各シラン化ポリビニルアセテート、エポキシド化ポリビニルアセテート、及び修飾エポキシエマルジョンの比が70:25:5、50:25:25、又は63:18:18でサイジング組成物に存在する。該サイジング組成物は、酢酸、クエン酸、硫酸、又はリン酸などのpH調整剤を含むことで、pHを調整してもよい。好ましくは、該サイジング組成物は3.0〜7.0のpHを有する。
【0008】
本発明の別の目的は、シラン化ポリビニルアセテート、エポキシド化ポリビニルアセテート、修飾エポキシエマルジョン、シランカップリング剤、及び潤滑剤を含有するサイジング組成物で少なくとも部分的にコーティングされている強化用繊維材料の1種以上のストランドを含有する強化用繊維製品を提供することである。好ましくは、シラン化ポリビニルアセテート、エポキシド化ポリビニルアセテート、及び修飾エポキシエマルジョンは、各シラン化ポリビニルアセテート、エポキシド化ポリビニルアセテート、及び修飾エポキシエマルジョンの比が70:25:5、50:25:25、又は63:18:18でサイズ組成物に存在する。修飾エポキシエマルジョンの好適な例は、アミン修飾エマルジョン及びエポキシエステルエマルジョンを含む。強化された繊維製品は、ロービングの形状でもよい。
【0009】
本発明のさらなる目的は、シラン化ポリビニルアセテート、エポキシド化ポリビニルアセテート、修飾エポキシエマルジョン、シランカップリング剤、及び潤滑剤を含有するサイジング組成物でサイジングされた多数のガラス繊維から形成される強化されたコンポジット物品を提供することである。シラン化ポリビニルアセテート、エポキシド化ポリビニルアセテート、及び修飾エポキシエマルジョンは、好ましくは各シラン化ポリビニルアセテート、エポキシド化ポリビニルアセテート、及び修飾エポキシエマルジョンの比が70:25:5、50:25:25、又は63:18:18でサイジング組成物に存在する。修飾エポキシエマルジョンの非排他例は、アミン修飾エマルジョン及びエポキシエステルエマルジョンを含む。強化されたコンポジットは、自動車の外部車体部品又は構造体部品の形状でもよい。
【0010】
本発明のさらなる別の目的は、第一のポリマーフィルム上にシラン化ポリビニルアセテート、エポキシド化ポリビニルアセテート、修飾エポキシエマルジョン、シランカップリング剤、及び潤滑剤を含有するサイジング組成物で少なくとも部分的にコーティングされている細断されたガラス繊維を沈着すること、該細断されたガラス繊維上に第二のポリマーフィルムを配置してサンドイッチされた材料を形成すること、及び該サンドイッチされた材料を成形コンポジット部品に成形することを含む、細断ガラス繊維を含む強化されたコンポジット物品を形成する方法を提供することである。好ましくは、シラン化ポリビニルアセテート、エポキシド化ポリビニルアセテート、及び修飾エポキシエマルジョンは、各シラン化ポリビニルアセテート、エポキシド化ポリビニルアセテート、及び修飾エポキシエマルジョンの比が70:25:5、50:25:25、又は63:18:18でサイズ組成物に存在する。修飾エポキシエマルジョンの好適な例は、限定はしないが、アミン修飾エマルジョン及びエポキシエステルエマルジョンを含む。
【0011】
該サイジング組成物の利点は、該サイジング組成物が、改良された濡れ特性、及び従ってシート成形材料により少ない乾燥繊維を提供することである。改良された濡れ特性は、より高いインラインの生産力、コンポジット部品の成形中の欠損数の減少、及び製造コストの減少を生じる。
本発明の前述及び他の目的、特徴、及び利点は、続く詳細な記載を考慮することで、以下においてさらに十分に明らかとなる。
【0012】
特に明記しない限り、ここで用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本発明の属する技術分野の当業者によって一般的に理解される同様の意味を有する。ここに記載されているものと同様又は等価な任意の方法及び材料を、本発明の実施又は試験に用いることができるが、好ましい方法及び材料はここに記載されている。“サイズ組成物”、“サイジング組成物”、及び“サイズ剤”という用語は、ここで互換的に用いられることに注目すべきである。
【0013】
本発明は、シート成形材料(SMC)方法に用いられ得る繊維のための改良されたサイジング組成物に関する。該サイジング組成物は、フィルム形成用ポリマー成分、少なくとも1種のカップリング剤、及び1種以上の潤滑剤を含有する。従来の添加剤も、該サイジング組成物に存在してよい。
【0014】
該サイジング組成物のフィルム形成用ポリマー成分は、シラン化ポリビニルアセテート、エポキシド化ポリビニルアセテート、及び修飾エポキシエマルジョンの組み合わせを含有する。好適なシラン化ポリビニルアセテートの例は、限定はしないが、National Starch 25-1037 (Vinamul Polymers)及びFranklin Duracet 660 (Franklin International)を含む。該サイジング組成物に使用するための好適なエポキシド化ポリビニルアセテートの非限定例は、HB Fuller PD-166 (HB Fuller Company)及びNational Starch 25-1971 (Vinamul Polymers)を含む。該サイズ組成物に含まれ得る修飾エポキシエマルジョンの非排他例は、AOC EE-732 (AOC)、アミン修飾エポキシエマルジョン、及びNeoxil 961 (DSM Italia)、エポキシエステルエマルジョンを含む。フィルム形成剤は、好ましくは各シラン化ポリビニルアセテート、エポキシド化ポリビニルアセテート、及び修飾エポキシエマルジョンの比が70:25:5、50:25:25、又は63:18:18でサイジング組成物に存在する。
【0015】
サイジング組成物は、少なくとも1種のカップリング剤も含む。好ましくは、少なくとも1種のカップリング剤がシランカップリング剤である。シランカップリング剤は、ガラス繊維に対するフィルム形成用ポリマーの接着を強め、及びその後の処理中の綿毛のレベル、又は破損した繊維フィラメントを減少させるよう機能する。本サイズ組成物に用いられ得るシランカップリング剤の例は、アミノ基、エポキシ基、ビニル基、メタクリルオキシ基、アジド基、ウレイド基、及びイソシアナト基などの官能基によって特徴付けられ得る。
【0016】
該サイズ剤に使用するための好適なシランカップリング剤は、限定はしないが、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(A-I100)、n-トリメトキシ-シリル-プロピル-エチレン-ジアミン(A-1120)、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(A-174)、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(A-187)、メチル-トリクロロシラン(ArI 54)、メチル-トリメトキシシラン(A-163)、γ-メルカプトプロピル-トリメトキシ-シラン(A-189)、ビス-(3-[トリエトキシシリル]プロピル)テトラスルファン(A-1289)、γ-クロロプロピル-トリメトキシ-シラン(A-143)、ビニル-トリエトキシ-シラン(A-151)、ビニル-トリス-(2-メトキシエトキシ)シラン(A-172)、ビニルメチルジメトキシシラン(A-2171)、ビニル-トリアセトキシシラン(A-188)、オクチルトリエトキシシラン(A-137)、メチルトリエトキシシラン(A-162)、及びメチルトリメトキシシラン(A-1630)を含む。ここに記載されている全てのシランカップリング剤は、GE Siliconesから入手可能である。該カップリング剤は、約0.05%〜約0.20%の量の活性固体、及びさらに好ましくは約0.08%〜約0.15%の量の活性固体でサイジング組成物に存在し得る。
【0017】
サイジング組成物は、製造を容易にするために少なくとも1種の潤滑剤も含む。任意の従来の潤滑剤を、サイズ組成物に組み込んでよい。サイズ組成物に使用するのに好適な潤滑剤の非排他例は、限定はしないが、Emery 6760L (Cognis)などの部分的にアミド化された長鎖ポリアルキレンイミン、エチレングリコールオレアート、エトキシル化脂肪アミン、グリセリン、乳化鉱油、有機ポリシロキサンエマルジョン、Lubesize K-12 (AOC)などのステアリン酸エタノールアミド及び水溶性エチレングリコールステアレート、例えばポリエチレングリコールモノステアレート、ブトキシエチルステアレート、及びポリエチレングリコールモノオレアートを含む。潤滑剤は、約0.025%〜約0.010%の量の活性固体で存在し得る。
【0018】
さらに、サイズ組成物は、pH調整剤、例えば酢酸、クエン酸、硫酸、又はリン酸を任意に含み、該組成物のpHレベルを調整してもよい。pHは、意図される用途に依存して調整されるか、又はサイズ組成物の成分の相溶性を促進するために調整され得る。好ましくは、サイジング組成物は、3.0〜7.0のpH、及びさらに好ましくは3.5〜4.5のpHを有する。
【0019】
本発明のサイジング組成物は、従来の添加剤、例えば帯電防止剤、染料、オイル、充填剤、熱安定化剤、殺虫剤、抗発泡剤、抗酸化剤、粉塵抑制剤、湿潤剤、及び/又は任意の他の従来の添加剤を任意に含み得る。サイズ組成物に存在する添加剤の量は、好ましくはサイズ剤の全質量の約5%を超えない。
【0020】
サイズ組成物の残りは、水からなる。特に、水が加えられ、その用途がガラス繊維に好適である粘度まで水性サイジング組成物を希釈してよい。該サイジング組成物は、水を約95%まで含み得る。
本発明の3種の典型的なサイジング組成物を、表1に記載する。
【0021】
表1

(1) γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(GE Silicones)
(2) シラン化ポリビニルアセテート(Vinamul Polymers)
(3) エポキシド化ポリビニルアセテート(HB Fuller Company)
(4) 修飾エポキシ樹脂エマルジョン(AOC)
(5) 部分的にアミド化されている長鎖ポリアルキレンイミン(Cognis)
【0022】
サイズ組成物は、まずカップリング剤、酸、及びフィルム形成剤を攪拌しながら混合し、主要な混合物を形成することから製造され得る。必要に応じて、該主要な混合物は、約3.5〜7.0のpHに調整される。潤滑剤は水で希釈され、潤滑剤プレミックスを形成し、これを攪拌しながら該主要な混合物に加える。続いて、水を、適切な濃度を達成し且つ固体の混合を制御する量で加える。
【0023】
該サイズ組成物を、従来の技術、例えば加熱されたブッシュを介して溶融ガラスを引き出し、実質的に連続なガラス繊維を形成することによって形成されるガラスのストランドに適用され得る。任意のタイプのガラス、例えばA-タイプガラス、C-タイプガラス、E-タイプガラス、S-タイプガラス、E-CRガラス、又はそれらの改良が、繊維材料として使用するのに好適である。例えば、E-タイプガラスの一つの改良では、酸化ホウ素が酸化マグネシウムで置換される。そのようなガラスは、商品名Advantex(登録商標)でOwens Corning Fiberglass Corporationから市場で入手可能である。あるいは、サイジング組成物は、ポリエステル、ポリアミド、アラミド、及びそれらの混合物などの1種以上の合成ポリマーのストランドに適用され得る。ポリマーストランドは、強化用繊維材料として単独で用いられ得るか、又はそれらは上記のようなガラスストランドと組み合わせて用いることができる。炭素繊維も用いられ得る。
【0024】
サイズ組成物は、好ましくは該繊維に適用され、及びサイズ剤が繊維上に該繊維の全質量を基準として約1.0%〜約2.25%の量で存在するように乾燥される。これは、繊維ロービングの発火時の損失(LOI)によって測定することができ、これはそれらを繊維からサイズ剤を燃やすか又は熱分解するのに十分な温度まで加熱した後に繊維によって経験される質量の減少である。繊維における所望の固体含有量を達成するために、サイズ混合物を希釈するために加えられる水の量を変化させてもよい。サイズ組成物は、約11〜約20μmの直径を有する繊維に適用され得、直径が約13〜約16μmの繊維がさらに好ましい。サイズ剤の混合固体含有量は、約5〜約15%でよい。
【0025】
サイジング組成物は、任意の従来の手法、例えば該サイズ組成物を繊維上に噴霧するか、又はサイジングされる繊維をサイジング組成物と共に回転又は静止ロールウェットを渡して引き出すことによって繊維上に適用され得る。サイズ組成物は、好ましくは該繊維を約5質量%〜約15質量%の水分含有量で提供するのに十分な量で繊維に適用される。
【0026】
上記のサイジング組成物でサイジングされた繊維は、有利にはシート成形材料(SMC)における強化材として用いられ得、例えば自動車の外部車体部品及び構造体部品を形成する。例えば、サイジング組成物は、任意の従来の手法でガラス繊維に適用され得る。続いて、サイジングされたガラス繊維を別々のストランドに集め、及び巻き付けてガラス繊維パッケージを製造し得る。次に、該パッケージを、該パッケージから水を除去するが該サイジング組成物を硬化しない十分高い温度まで加熱され得る。複数の乾燥されたガラス繊維パッケージをロービングドフ又はパッケージ(ロービング)と呼ばれるスプールに巻き付け、及びその後の使用のために保存されるか又は即時の使用のために細断してよい。
【0027】
細断されたガラス繊維は、ポリマーフィルムの層上に置かれ、例えば不飽和ポリエステル樹脂又はビニルエステル樹脂が非接着性表面を有するキャリアシート上に置かれる。ポリマーフィルムの第二の層を含有する第二の非接着性キャリアシートが、該第二のポリマーフィルムが細断されたガラスの束と接触し、及びポリマーフィルム-細断されたガラス-ポリマーフィルムのサンドイッチされた材料を形成するような位置で、細断されたガラス繊維上に置かれ得る。続いて、このサンドイッチされた材料を、コンパクションローラーなどのローラーで混練し、得られたSMC材料中にポリマー樹脂マトリックス及びガラス繊維の束を実質的に均一に分散してもよい。ここで用いられているように、“実質的に均一に分散する”という用語は、均一に分散することか、又はほぼ均一に分散することを意味する。続いて、SMC材料を2〜3日間保存し、樹脂を肥厚及び成熟させてもよい。
【0028】
一端SMC材料が目標の粘度を達成したら、該SMC材料を投入量に切り分け、及び最終生成物の所望の形状を有する鋳型に入れてよい。該鋳型は高温に加熱され、及び閉じると高圧まで上昇する。高熱及び高圧のこの組み合わせは、SMC材料を鋳型に流し且つ満たす。続いて、マトリックス樹脂を架橋又は硬化させ、最終的な熱硬化成形コンポジット部品を形成する。本発明のサイジング組成物によってサイジングされた繊維で形成される典型的な成形コンポジット部品は、外部自動車体部品及び構造自動車体部品を含む。外部自動車体部品は、約25〜30%のガラス含有量を含み得、及び構造自動車体部品は、約30〜60%のガラス含有量を含み得る。
【0029】
本発明のサイジング組成物は、改良された濡れ特性を提供する。ガラス繊維のより速い濡れは、インラインのより高い生産性及び1時間当たりに大量のSMC材料を製造する能力を生じる。さらに、ガラス繊維のより速い濡れは、より少ない乾燥ガラス繊維を含有するSMC材料を生じる。SMC材料におけるより少ない乾燥ガラス繊維は、順々にコンポジット部品の成形中に起こり得る欠損数の減少、及びサイジング組成物でサイジングされたガラス繊維から形成されるコンポジット部品の製造を伴う製造コストの減少を生じる。
【0030】
概して本発明に記載されているように、さらなる理解は以下に説明されるいくつかの具体例を参照して得ることができ、これらは説明のみの目的のために提供され、及び特に明記しない限り全てを包括するか又は限定することを意図しない。
【0031】
実施例1:クラスAのSMC樹脂調合物
フィルム形成剤の比を変えながら、シラン化ポリビニルアセテート、エポキシド化ポリビニルアセテート、修飾エポキシエマルジョン、A-1 100、及びEmery 6760Lを含有するサイジング組成物を製造し、及び試験して外部自動車部品パネルに用いられるクラスA樹脂システムにおける湿潤速度を測定した。湿潤速度は、SMCライン湿潤テストに存在する非湿潤繊維のパーセントの主観的評価である。SMCライン湿潤テストは、底の非接着性層にSMC樹脂を置くこと、本発明のサイジング組成物でサイジングされた乾燥細断ガラスをSMC樹脂上に置くこと、及び続いてSMC樹脂が細断されたガラス束中にいかに湿潤したかを視覚的に評価することを含んだ。細断されたガラスの束の頂部に見える乾燥ガラスが少ないほど、湿潤速度は低くなり、濡れが良くなる。ポリエステルエマルジョン、ポリビニルアセテート、及び修飾エポキシエマルジョンでサイジングされた標準ロービング973C-AA、905A-AB、及び973C-ABを、対照として評価した。フィルム形成剤の比及び結果を、表2に述べる。













【0032】
表2:クラスA SMC樹脂システムにおける濡れの結果









【0033】
表2対照:クラスA SMC樹脂システムにおける濡れの結果

【0034】
最初に、対照3が、3種の標準ロービングの最も優れたSMC湿潤速度を有することが測定された。次に、対照3のSMC湿潤パーセントを、本発明のサイジング組成物でサイジングされた繊維のSMC湿潤パーセントと比較した。この実験では、10パーセント以上のSMC湿潤速度の差は、視覚的に有意な差であり、及び改良された濡れ特性を示すと考えられた。表2から分かるように、混合4-1、4-2、混合10、及び混合11(フィルム形成比は、それぞれ70/25/5、70/25/5、63/18/18、及び63/18/18)は、対照3の湿潤速度よりも10%以上高い湿潤速度を有した。本発明のサイジング組成物のフィルム形成剤では70/25/5及び63/18/18の比が、クラスA樹脂SMCシステムにおける改良された濡れ特性を示すことが結論された。
【0035】
実施例2:構造的SMC調合物
フィルム形成剤の比を変えながら、シラン化ポリビニルアセテート、エポキシド化ポリビニルアセテート、修飾エポキシエマルジョン、A-1 100、及びEmery 6760Lを含有するサイジング組成物を製造し、及び試験して構造自動車体部品に用いられる構造SMC樹脂システムにおける湿潤速度を測定した。湿潤速度は、SMCライン湿潤テストに存在する非湿潤繊維のパーセントの主観的評価である。SMCライン湿潤テストは、底の非接着性層にSMC樹脂を置くこと、本発明のサイジング組成物でサイジングされた乾燥細断ガラスをSMC樹脂上に置くこと、及び続いてSMC樹脂が細断されたガラス束中にいかに湿潤したかを視覚的に評価することを含んだ。細断されたガラスの束の頂部に見える乾燥ガラスが少ないほど、湿潤速度は低くなり、濡れが良くなる。ポリエステルエマルジョン、ポリビニルアセテート、及び修飾エポキシエマルジョンでサイジングされた標準ロービング973C-AA、905A-AB、及び973C-ABを、対照として評価した。フィルム形成剤の比及び結果を、表3に述べる。
【0036】
表3:構造的SMC樹脂システムにおける濡れの結果






















【0037】
表3対照:構造的SMC樹脂システムにおける濡れの結果

【0038】
最初に、対照2及び対照3が、試験された3種の標準ロービングの最も低い湿潤速度を有することが測定された。続いて、対照2及び3のSMC湿潤パーセント及び本発明のサイジング組成物でサイジングされた繊維のSMC湿潤パーセントを比較した。10パーセント以上のSMC湿潤速度の差は、視覚的に有意な差であり、及び改良された濡れ特性を示すと考えられた。表3から分かるように、混合3-1(比は50/5/45)、混合5-1(比は70/5/25)、混合6-1(比は50/25/25)、混合7-1(比は63/18/18)、混合3-2(比は50/5/45)、混合4-2(比は70/25/5)、混合5-2(比は70/5/25)、混合6-2(比は50/25/25)、混合7-2(比は63/18/18)、混合9(比は70/5/25)、混合10(比は63/18/18)、混合11(比は63/18/18)、混合12(比は63/18/18)、混合16(比は63/18/18)、及び混合18(比は63/18/18)は、対照と比較して10%よりも大きい差を有する湿潤速度を有した。従って、本発明のサイジング組成物のフィルム形成剤には、50/5/45、70/25/5、70/5/25、50/25/25、及び63/18/18の比が、構造的SMC樹脂システムにおける改良された濡れ特性を示すことが結論された。
【0039】
具体的な態様の前述の記載は、当技術分野の技術内の知識(ここに引用されている引例の内容を含む)を適用することにより、本発明の一般的概念から逸脱することなく、他人が容易に過度の実験をすることなく種々の用途にそのような具体的な態様を容易に改良及び/又は採用することのできる本発明の一般的な性質を明らかにするだろう。従って、そのような適応及び改良は、ここで提示されている教示及び案内に基づき、開示された態様と等価な意味及び範囲内であることが意図される。ここの表現又は用語は、記載及び限定しない目的のために、本明細書の該表現又は用語が、ここに提示されている教示及び案内の観点から当業者の知識と組み合わせて当業者によって解釈されるようなものであると理解される。
【0040】
本出願の発明は、一般的且つ具体的な態様の両方について記載されている。本発明は、好ましい態様と考えられるものについて述べられているが、当業者に知られている広い種類の変形を、一般的な開示の範囲内で選択することができる。本発明は、以下に記載される請求項の内容を除いて特に限定されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維のためのサイジング組成物であって:
シラン化ポリビニルアセテート;
エポキシド化ポリビニルアセテート;及び
修飾エポキシエマルジョン;
を含むフィルム形成用ポリマー成分:
少なくとも1種のシランカップリング剤;及び
1種以上の潤滑剤を含む、サイジング組成物。
【請求項2】
前記フィルム形成用ポリマー成分が、75:25:5のシラン化ポリビニルアセテート:エポキシド化ポリビニルアセテート:修飾エポキシエマルジョンの比を有する、請求項1記載のサイジング組成物。
【請求項3】
前記フィルム形成用ポリマー成分が、50:25:25のシラン化ポリビニルアセテート:エポキシド化ポリビニルアセテート:修飾エポキシエマルジョンの比を有する、請求項1記載のサイジング組成物。
【請求項4】
前記フィルム形成用ポリマー成分が、63:18:18のシラン化ポリビニルアセテート:エポキシド化ポリビニルアセテート:修飾エポキシエマルジョンの比を有する、請求項1記載のサイジング組成物。
【請求項5】
さらにpH調整剤を含む、請求項1記載のサイジング組成物。
【請求項6】
前記修飾エポキシエマルジョンが、アミン修飾エポキシエマルジョン及びエポキシエステルエマルジョンからなる群から選択される、請求項1記載のサイジング組成物。
【請求項7】
強化用繊維製品であって、
シラン化ポリビニルアセテート;
エポキシド化ポリビニルアセテート;及び
修飾エポキシエマルジョン;
を含むフィルム形成用ポリマー成分:
少なくとも1種のシランカップリング剤;及び
1種以上の潤滑剤を含むサイジング組成物で、少なくとも部分的にコーティングされている強化用繊維材料の1種以上のストランドを含む、強化用繊維製品。
【請求項8】
前記フィルム形成用ポリマー成分が、75:25:5のシラン化ポリビニルアセテート:エポキシド化ポリビニルアセテート:修飾エポキシエマルジョンの比を有する、請求項7記載の強化用繊維製品。
【請求項9】
前記フィルム形成用ポリマー成分が、50:25:25のシラン化ポリビニルアセテート:エポキシド化ポリビニルアセテート:修飾エポキシエマルジョンの比を有する、請求項7記載の強化用繊維製品。
【請求項10】
前記フィルム形成用ポリマー成分が、63:18:18のシラン化ポリビニルアセテート:エポキシド化ポリビニルアセテート:修飾エポキシエマルジョンの比を有する、請求項7記載の強化用繊維製品。
【請求項11】
前記修飾エポキシエマルジョンが、アミン修飾エポキシエマルジョン及びエポキシエステルエマルジョンからなる群から選択される、請求項7記載の強化用繊維製品。
【請求項12】
前記サイジング組成物がさらにpH調整剤を含む、請求項7記載の強化用繊維製品。
【請求項13】
前記強化用繊維が、ガラス繊維、修飾ガラス繊維、炭素繊維及び合成ポリマー繊維からなる群から選択される、請求項7記載の強化用繊維製品。
【請求項14】
前記強化用繊維製品がロービングの形状である、請求項13記載の強化用繊維製品。
【請求項15】
強化されたコンポジット物品であって、
シラン化ポリビニルアセテート;
エポキシド化ポリビニルアセテート;及び
修飾エポキシエマルジョン;
を含むフィルム形成用ポリマー成分:
少なくとも1種のシランカップリング剤;及び
1種以上の潤滑剤を含むサイジング組成物でサイジングされた複数のガラス繊維を含む、コンポジット物品。
【請求項16】
前記フィルム形成用ポリマー成分が、75:25:5、50:25:25及び63:18:18からなる群から選択されるシラン化ポリビニルアセテート:エポキシド化ポリビニルアセテート:修飾エポキシエマルジョンの比を有する、請求項15記載のコンポジット物品。
【請求項17】
前記修飾エポキシエマルジョンが、アミン修飾エポキシエマルジョン及びエポキシエステルエマルジョンからなる群から選択される、請求項16記載のコンポジット物品。
【請求項18】
前記サイジング組成物がさらにpH調整剤を含む、請求項17記載のコンポジット物品。
【請求項19】
前記コンポジット物品が、自動車の外部車体部品及び自動車の構造体部品からなる群から選択される形状を有する、請求項16記載のコンポジット物品。
【請求項20】
強化されたコンポジット物品を形成する方法であって:
サイジング組成物で少なくとも部分的にコーティングされている細断ガラス繊維を第一のポリマーフィルム上に沈着する工程、前記サイジング組成物は:
シラン化ポリビニルアセテート;
エポキシド化ポリビニルアセテート;及び
修飾エポキシエマルジョン;
を含むフィルム形成用ポリマー成分:
少なくとも1種のシランカップリング剤;及び
1種以上の潤滑剤を含む;
第二のポリマーフィルムを前記細断ガラス繊維上に配置し、サンドイッチされた材料を形成する工程;及び
前記サンドイッチされた材料を強化されたコンポジット物品に成形する工程、
を含む、方法。
【請求項21】
前記サンドイッチされた材料を混練し、前記ガラス繊維及び前記第一及び第二ポリマーフィルムを実質的に均一に分散する工程、
をさらに含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記フィルム形成用ポリマー成分が、75:25:5、50:25:25及び63:18:18からなる群から選択されるシラン化ポリビニルアセテート:エポキシド化ポリビニルアセテート:修飾エポキシエマルジョンの比を有する、請求項20記載の方法。
【請求項23】
前記修飾エポキシエマルジョンが、アミン修飾エポキシエマルジョン及びエポキシエステルエマルジョンからなる群から選択される、請求項22記載の方法。

【公表番号】特表2008−505828(P2008−505828A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518077(P2007−518077)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【国際出願番号】PCT/US2005/018016
【国際公開番号】WO2006/007171
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(595080337)オウェンス コーニング (19)
【Fターム(参考)】