説明

シート搬送装置、画像読取装置、及び画像形成装置

【課題】排出されるシートの先端部に折れ曲がりが生じるのを抑制可能で、新たに排出されるシートが排出済みのシートに衝突することも抑制可能なシート搬送装置の提供。
【解決手段】排出済みの原稿が少ない段階では、スタックレバー33には、ねじりコイルばね35からの付勢力のみが作用し、ねじりコイルばね36からの付勢力が作用しない。この場合、原稿排出部18へ排出される原稿がスタックレバー33に当接すれば、スタックレバー33は容易に持ち上がるので、原稿の進行方向が急激に下方へ曲げられることはなく、原稿の先端が原稿排出部18に衝突して折れ曲がるのを抑制できる。排出済みの原稿が増えると、スタックレバー33には、ねじりコイルばね35,36双方からの付勢力が作用する。この場合、排出済みの原稿はスタックレバー33によってしっかりと押さえつけられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを所定の搬送経路に沿って搬送するシート搬送装置と、そのようなシート搬送装置を備えた画像読取装置、及びシート搬送装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の搬送経路を搬送され、排出されたシートを積載するシート積載部を備え、そのシート積載部に積載されたシートを、シート押さえ部材によって上から押圧することにより、積載されたシートの搬送方向後端側が反り上がるのを抑制可能とされた画像形成装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このようなシート押さえ部材が設けられていれば、いくらかカールしたシートがシート積載部へ排出されたとしても、シート後端が反り上がってしまうのを抑制できる。したがって、新たにシート積載部へと排出されるシート(特に先端側)が、反り上がった排出済みシートに衝突してしまうのを防止ないし抑制できる。
【0004】
また、そのような衝突を抑制できるので、新たに排出されるシートに衝突に伴う耳折れ(先端角部の折れ曲がり)等の不具合が発生してしまうのを防止ないし抑制できる。さらに、そのような衝突を抑制できるので、衝突に伴ってすでに排出済みのシートがシート積載部から押し出されてしまうのも防止ないし抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−252511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1には、上述のようなシート押さえ部材として、自重でシートを押圧するものが開示されており、さらに、シート押さえ部材が付勢手段によって付勢されてシートを押圧する構成になっていてもよい旨も記載されている。
【0007】
しかし、シート押さえ部材の自重が過剰に重い場合、あるいは、シート押さえ部材に作用する付勢力が過剰に強い場合、シート積載部へと排出されるシートがシート押さえ部材に当接しても、その程度ではシート押さえ部材が上方へ揺動しないことがある。
【0008】
この場合、図7(a)に示すように、シート積載部101へと排出されるシート103は、シート押さえ部材105との当接に伴って、進行方向が急激に下方へと曲げられることになる。そのため、シート103の先端部がシート積載部101に衝突し、シート103の先端部に耳折れ等の不具合を生じる可能性がある。
【0009】
一方、シート押さえ部材の自重が軽い場合、あるいは、シート押さえ部材に作用する付勢力が弱い場合、シート積載部へと排出されるシートがシート押さえ部材に当接すれば、シート押さえ部材はシートとの当接に伴って上方へ揺動する。この場合、シートの進行方向が急激に下方へと曲げられるのを抑制できるので、上述のような耳折れの発生を抑制することも可能となる。
【0010】
しかし、シート押さえ部材の自重が過剰に軽い場合、あるいは、シート押さえ部材に作用する付勢力が過剰に弱い場合、シート押さえ部材は、排出済みのシートを十分に押さえ込むことができなくなる。この場合、図7(b)に示すように、排出済みシート107の搬送方向後端の位置を十分に下方へ変位させることができなくなるので、排出済みシート107と新たに排出されるシート103との衝突を招きやすくなる、という問題がある。
【0011】
つまり、シート押さえ部材からシートに作用する押圧力については、強めに設定しても弱めに設定しても、それぞれ問題が生じやすいため、設計上、シート押さえ部材からシートに作用する押圧力を最適化することは困難を極める、という問題があった。
【0012】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、排出されるシートの先端部に折れ曲がりが生じるのを抑制可能で、しかも、新たに排出されるシートが排出済みのシートに衝突することも抑制可能なシート搬送装置を提供することにある。また、そのようなシート搬送装置を備えた画像読取装置、及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下、本発明において採用した構成について説明する。
請求項1に記載のシート搬送装置は、シートを所定の搬送経路に沿って搬送可能な搬送手段と、前記搬送経路の搬送方向下流端となる位置にあり、前記搬送手段から排出されるシートを堆積させるスタック手段と、第一位置から第二位置を経て第三位置に至る可動範囲を往復移動可能な可動部品からなり、前記スタック手段に堆積した前記シートに上方から当接して当該シートを上方から押圧可能で、当該シートとの当接点が上昇するのに伴って前記第三位置に近づく方向へと移動するシート押さえ手段と、前記シート押さえ手段が前記第一位置から前記第二位置に至る範囲にある場合は、前記シート押さえ手段に対して付勢力を作用させない一方、前記シート押さえ手段が前記第二位置から前記第三位置に至る範囲にある場合は、前記シート押さえ手段を前記第一位置側に向かって移動させる方向へと付勢する付勢手段とを備えたことを特徴とする。
【0014】
このように構成されたシート搬送装置によれば、スタック手段に堆積したシートの枚数が比較的少ない場合には、シート押さえ手段が第一位置から第二位置に至る範囲にある。この場合、付勢手段は、シート押さえ手段に対して付勢力を作用させないため、シート押さえ手段は比較的弱い力を受けても容易に第二位置側へと変位する。
【0015】
したがって、搬送手段からスタック手段へとシートを排出した際に、排出中のシートがシート押さえ手段に当接しても、シート押さえ手段は排出中のシートから受ける力で比較的容易に第二位置側へと逃げる。よって、シート押さえ手段がシート排出の障害となることはなく、例えば、排出中のシートの端がシート押さえ手段との当接に伴って折れ曲がる、といった事態に至るのを抑制できる。また、排出されるシートに押されてシート押さえ手段が逃げれば、そのような逃げが起きない場合に比べ、排出されるシートの進行方向が大きく変更されないので、シートの進行方向が急激に下方へ曲げられてしまうことも抑制でき、シート先端がスタック手段に衝突して折れ曲がる、といった事態に至ることも抑制できる。
【0016】
一方、スタック手段に堆積したシートの枚数が比較的多い場合には、シート押さえ手段が第二位置から第三位置に至る範囲にある。この場合、付勢手段は、シート押さえ手段に対して付勢力を作用させるため、シート押さえ手段は比較的強い力でスタック手段に堆積したシートを押さえることになる。
【0017】
したがって、スタック手段に堆積したシート間に空隙ができるのを抑制でき、より多くのシートを堆積させても、堆積したシートの最上位置が過剰に上方へ来ないようにすることができる。よって、排出されるシートの先端が、堆積したシートの端面に側方から衝突してしまうのを抑制でき、搬送手段からスムーズにシートを排出することができるようになる。
【0018】
請求項2に記載のシート搬送装置は、請求項1に記載のシート搬送装置において、前記付勢手段である第一付勢手段に加え、前記シート押さえ手段が前記第一位置から前記第二位置に至る範囲にある場合は、単独で前記シート押さえ手段を前記第一位置側に向かって移動させる方向へと付勢する一方、前記シート押さえ手段が前記第二位置から前記第三位置に至る範囲にある場合は、前記第一付勢手段とともに前記シート押さえ手段を前記第一位置側に向かって移動させる方向へと付勢する第二付勢手段を備えたことを特徴とする。
【0019】
このように構成されたシート搬送装置によれば、第一付勢手段に加え、第二付勢手段も備えているので、シート押さえ手段が第一位置から第二位置に至る範囲にある場合でも、シート押さえ手段を自重に任せることなく、いくらか第一位置側へ付勢できる。
【0020】
したがって、シート押さえ手段を自重に任せて第一位置側へ付勢する場合に比べ、シート押さえ手段をより確実に第一位置側へ付勢することが可能となり、例えば、シート押さえ手段そのものを軽量化しても、シート押さえ手段をスムーズに第一位置側へ移動させることができるようになる。あるいは、シート押さえ手段が第一位置から第二位置に至る範囲にある場合の付勢力を容易に最適化できる。
【0021】
請求項3に記載のシート搬送装置は、請求項1又は請求項2に記載のシート搬送装置において、前記シート押さえ手段は、上端側が下端側よりも前記搬送手段のなす搬送経路に近い位置に配設され、当該上端側を中心に揺動して前記第一位置から前記第三位置に至る前記可動範囲を往復移動可能で、斜め下方に向けられた傾斜面を有し、当該傾斜面で前記搬送手段から排出される前記シートに当接する部材であり、しかも、前記傾斜面は、前記シート押さえ手段が前記第一位置側から前記第三位置側へと移動するほど、水平面に対する傾斜角が小さくなることを特徴とする。
【0022】
このように構成されたシート搬送装置によれば、シート押さえ手段が第一位置側により近い位置にあるほど、傾斜面は水平面に対する傾斜角が大きくなる。そのため、この傾斜角が維持されたままでは、搬送手段から排出されるシートが傾斜面に当接すると、シートの進行方向が急激に下方へ曲げられてしまい、シート先端がスタック手段に衝突して折れ曲がる、といった事態に至るおそれがあるが、上記シート押さえ手段は、搬送手段から排出されるシートが傾斜面に当接すると、シートから受ける力でシート押さえ手段が第三位置側へと変位するので、シートの進行方向が急激に下方へ曲げられてしまうのを抑制でき、シート先端がスタック手段に衝突して折れ曲がる、といった事態に至ることを抑制できる。
【0023】
請求項4に記載の画像読取装置は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のシート搬送装置によって、読取対象となる原稿を搬送可能に構成されていることを特徴とする。
このように構成された画像読取装置によれば、読取対象となる原稿を搬送する際に、上記シート搬送装置について述べた通りの作用、効果を期待できる。すなわち、排出される原稿の先端部に折れ曲がりが生じるのを抑制でき、新たに排出される原稿が排出済みの原稿に衝突するのも抑制できる。
【0024】
請求項5に記載の画像形成装置は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のシート搬送装置によって、印刷対象となる被記録媒体を搬送可能に構成されていることを特徴とする。
【0025】
このように構成された画像形成装置によれば、印刷対象となる被記録媒体を搬送する際に、上記シート搬送装置について述べた通りの作用、効果を期待できる。すなわち、排出される被記録媒体の先端部に折れ曲がりが生じるのを抑制でき、新たに排出される被記録媒体が排出済みの被記録媒体に衝突するのも抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】複合機の斜視図。
【図2】複合機が備えるイメージスキャナ部を示す図であり、(a)は原稿供給トレイを閉じた状態を示す縦断面図、(b)は原稿供給トレイを開いた状態を示す縦断面図。
【図3】第一実施形態のスタックレバー付近(図2(a)中に示したA部)の拡大図。
【図4】第一実施形態のスタックレバーの挙動を説明するための説明図。
【図5】第二実施形態のスタックレバー付近の拡大図。
【図6】第二実施形態のスタックレバーの挙動を説明するための説明図。
【図7】(a)はスタックレバーの押圧力が過剰に強い場合に生じる問題を説明するための説明図、(b)はスタックレバーの押圧力が過剰に弱い場合に生じる問題を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明の実施形態について、いくつかの具体例を挙げて説明する。
〔1〕第一実施形態
図1に示す複合機1は、画像読取装置としての機能(スキャン機能)に加え、その他の機能(例えば、プリント機能、コピー機能、ファクシミリ送受信機能など)を兼ね備えたものである。なお、以下の説明においては、複合機1が備える各部の相対的な位置関係をわかりやすく説明するため、図中に併記した上下左右前後の各方向を利用する。
【0028】
複合機1は、プリンタ部2と、プリンタ部2の上部に搭載されたスキャナ部3と、プリンタ部2の上部でスキャナ部3の前方に配設された操作部4とを備えている。プリンタ部2は、電子写真方式で被記録媒体に画像を形成可能な画像形成機構が内蔵されている。また、プリンタ部2の下部には、前方へ引き出すことができる給紙カセット6が配設され、プリンタ部2の上部には、画像形成済みの被記録媒体が排出される被記録媒体排出部7が設けられている。
【0029】
スキャナ部3は、フラットベッド(以下、FBと略称する。)型イメージスキャナに対しADFが付加された構造とされたもので、FB本体部3Aと、このFB本体部3Aの上面側を覆うADF部3Bとを備えている。ADF部3Bは、後端側を回動中心にして前端側が上下に変位する方向へ回動可能に構成され、これにより、FB本体部3A上面にある原稿載置面を覆う位置又は同原稿載置面を露出させる位置へと変位可能な構造とされている。
【0030】
また、ADF部3Bには、図2(a)及び同図(b)に示すように、動力源から伝達される動力で駆動されるローラとして、供給ローラ11、分離ローラ12、メイン搬送ローラ13、及び排出ローラ14などを備えている。これらのローラ群により、原稿台16に載せられた原稿を、図2(b)中に二点鎖線で示した略U字形状の搬送経路に沿って原稿排出部18へと搬送可能となっている。
【0031】
原稿台16は、図2(a)に示す閉位置、及び図2(b)に示す開位置へ回動可能で、閉位置へ移動させた際には、ADF部3B上部の一部分を覆うカバーとして機能し、開位置へ移動させた際に原稿台として利用可能となる。
【0032】
上述の略U字形状の搬送経路を構成する対向している経路部分の一方側に沿う位置には、第一原稿ホルダ21が配設されている。この第一原稿ホルダ21は、上述の搬送経路を搬送される原稿をFB本体部3A側にある第一ADFガラス(図示略)に押し当てる部材である。
【0033】
なお、FB本体部3Aには、FB本体部3Aの内部を往復移動可能に構成された第一イメージセンサ(図示略)が配設されている。この第一イメージセンサを、第一ADFガラスを挟んで第一原稿ホルダ21に対向する位置へと移動させると、上述の搬送経路を搬送される原稿から、第一イメージセンサで画像を読み取ることができる。
【0034】
また、上述の略U字形状の搬送経路沿いとなる位置で、第一原稿ホルダ21が配設された位置とは反対側(搬送方向上流側)の経路部分に沿う位置には、第二原稿ホルダ22が配設されている。この第二原稿ホルダ22は、上述の搬送経路を搬送される原稿を第二ADFガラス24に押し当てる部材である。
【0035】
ADF部3Bの内部で、第二ADFガラス24を挟んで第二原稿ホルダ22に対向する位置には第二イメージセンサ26が設けられ、この第二イメージセンサ26を利用しても上述の搬送経路を搬送される原稿から画像を読み取ることができる。すなわち、この複合機1では、上述の第一イメージセンサと第二イメージセンサを利用して、搬送経路を搬送される原稿の表裏両面から画像を読み取り可能となっている。
【0036】
排出ローラ14の上方には、図3に拡大して示すように、排出ローラ14と協働して原稿を原稿排出部18へと排出するニップローラ31が設けられている。また、排出ローラ14及びニップローラ31によって原稿が排出される際に、その原稿の搬送方向先端側が当接することとなる位置には、スタックレバー33が設けられている。
【0037】
スタックレバー33は、上端側が下端側よりも排出ローラ14及びニップローラ31のなす搬送経路に近い位置に配設され、上端側を中心に揺動可能に構成されている。また、このスタックレバー33は、斜め下方に向けられた傾斜面33Aを有し、排出ローラ14及びニップローラ31によって排出される原稿には、傾斜面33Aで当接する。
【0038】
また、スタックレバー33の上方には、ねじりコイルばね35及びねじりコイルばね36が配設されている。これらのうち、ねじりコイルばね35は、アーム部35Aが、常時、スタックレバー33に当接する状態にあり、スタックレバー33を下方へ揺動させる方向(図3では時計回りとなる方向)へ付勢している。
【0039】
また、ねじりコイルばね35の付勢力に抗してスタックレバー33を上方へ揺動させた際には、ねじりコイルばね35は弾性変形し、アーム部35Aが図3中に実線で示した位置から破線で示した位置まで変位する。
【0040】
一方、ねじりコイルばね36は、図3中に実線で示したように、スタックレバー33が最も下方へ変位している状態(以下、この状態におけるスタックレバー33の位置を第一位置という。)においては、スタックレバー33から離間した位置にある。
【0041】
そして、スタックレバー33が揺動していくらか上方へと変位すると、ねじりコイルばね36のアーム部36Aがスタックレバー33に当接する状態になる(以下、この状態におけるスタックレバー33の位置を第二位置という。)。
【0042】
さらに、ねじりコイルばね36の付勢力に抗してスタックレバー33が上方へ揺動した際には、ねじりコイルばね36は弾性変形し、アーム部36Aが図3中に実線で示した位置から破線で示した位置まで変位する(以下、この状態におけるスタックレバー33の位置を第三位置という。)。
【0043】
したがって、スタックレバー33は、上述の第一位置から第二位置に至る範囲では、ねじりコイルばね35によって付勢され、第二位置から第三位置に至る範囲では、ねじりコイルばね35及びねじりコイルばね36によって付勢される状態となる。また、スタックレバー33の傾斜面33Aは、スタックレバー33が第一位置側から第三位置側へと移動するほど、水平面に対する傾斜角が小さくなる。
【0044】
以上のように構成された複合機1の場合、ADF部3Bにおいて原稿を搬送した際、原稿排出部18へ排出済みの原稿が比較的少ない段階では、図4(a)に示すように、スタックレバー33が第一位置へ変位した状態にある。この状態において、排出ローラ14及びニップローラ31によって原稿が排出されると、その原稿の搬送方向先端がスタックレバー33に当接する。
【0045】
ただし、ねじりコイルばね35の付勢力は比較的弱めに設定されているため、原稿の先端がスタックレバー33に当接すると、スタックレバー33は揺動して上方(例えば図4(a)中に破線で示したい位置)へと変位する。そのため、スタックレバー33が上方へ持ち上がらない場合とは異なり、原稿の進行方向がスタックレバー33との当接に伴って急激に下方へと曲げられることはなく、原稿の先端が原稿排出部18の上面に急角度で衝突することもない。したがって、スタックレバー33が上方へ持ち上がりにくい場合に比べ、原稿の先端に耳折れなどが発生するのを抑制することができる。
【0046】
一方、原稿排出部18へ排出済みの原稿Dが増えてくると、排出済み原稿Dがスタックレバー33の下端に当接する位置に達し、以降、スタックレバー33は、排出済み原稿Dを押さえる状態になる。この時点では、スタックレバー33は、ねじりコイルばね35によって軽く付勢された状態にある。そして、排出済み原稿Dが増えるほどスタックレバー33は徐々に上方へと揺動して、図4(b)に示すように第二位置に至る。
【0047】
スタックレバー33が第二位置に達すると、その時点で、ねじりコイルばね36のアーム部36Aがスタックレバー33に当接する状態になる。そして、さらに排出済み原稿Dが増えると、スタックレバー33は徐々に上方へと揺動する。この時点では、スタックレバー33は、ねじりコイルばね35及びねじりコイルばね36の双方によって強く付勢される状態となる。
【0048】
したがって、スタックレバー33が第二位置から第三位置に至るまでは、図4(c)に示すように、スタックレバー33が排出済み原稿Dを上からしっかりと押さえつける状態になり、排出済み原稿Dの後端付近において、排出済み原稿Dが反り上がったりかさばったりするのを抑制できる。よって、新たに排出される原稿が排出済みの原稿Dに衝突するのを抑制することができる。
【0049】
すなわち、この複合機1においては、スタックレバー33の移動範囲内において、スタックレバー33にかかる付勢力を段階的に変えることができ、排出済みの原稿Dの量に応じて、スタックレバー33に適切な付勢力を作用させることができる。
【0050】
より詳しくは、排出済み原稿Dが少ない段階では、スタックレバー33に与える付勢力を弱めにすることで、原稿先端の耳折れを抑制するとともに、排出済み原稿Dが多くなった段階では、スタックレバー33に与える付勢力を強めにして、排出済み原稿Dをしっかりと押さえ込んでいる。
【0051】
よって、原稿先端の耳折れ抑制だけを目的として、スタックレバー33に与える付勢力を単に弱めたものとは異なり、排出済み原稿Dが多くなったときに、原稿を押さえ込む力が不足してしまう、といった問題を招くことはない。また、原稿をしっかりと押さえ込むことだけを目的として、スタックレバー33に与える付勢力を単に強めたものとも異なり、スタックレバー33が変位しにくくなって、原稿の折れ曲がりが生じてしまう、といった問題を招くこともない。
【0052】
〔2〕第二実施形態
次に、第二実施形態について説明する。なお、以下に説明する第二実施形態においては、第一実施形態との相違点を中心に詳述し、共通部分に関しては、第一実施形態と同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0053】
図5に示すように、第二実施形態において例示するスタックレバー33は、単一のねじりコイルばね37によって付勢されている。このねじりコイルばね37は、第一実施形態で示したねじりコイルばね36とほぼ同様に機能するものである。
【0054】
すなわち、スタックレバー33が第一位置から第二位置に至る範囲にあるときは、スタックレバー33に当接せず、スタックレバー33が第二位置から第三位置に至る範囲にあれば、スタックレバー33を下方へと揺動させる方向へ付勢する。
【0055】
なお、第一実施形態で示したねじりコイルばね35に相当する部材は設けられておらず、スタックレバー33が第一位置から第二位置に至る範囲にある場合、スタックレバー33は自重で下方へと揺動するように構成されている。
【0056】
以上のように構成された場合でも、原稿排出部18へ排出済みの原稿が比較的少ない段階では、図6(a)に示すように、原稿の先端がスタックレバー33に当接すれば、スタックレバー33は揺動して上方(例えば図6(a)中に破線で示したい位置)へと変位する。
【0057】
そのため、スタックレバー33が上方へ持ち上がらない場合とは異なり、排出される原稿の進行方向がスタックレバー33との当接に伴って急激に下方へと曲げられることはなく、原稿の先端が原稿排出部18の上面に急角度で衝突することもない。したがって、スタックレバー33が上方へ持ち上がりにくい場合に比べ、原稿の先端に耳折れなどが発生するのを抑制することができる。
【0058】
また、図6(b)に示すように、スタックレバー33が第二位置に達すると、その時点で、ねじりコイルばね37のアーム部37Aがスタックレバー33に当接する状態になる。以降、排出済み原稿Dが増えてスタックレバー33が徐々に上方へと揺動すれば、スタックレバー33は、ねじりコイルばね37によって強く付勢される状態となる。
【0059】
したがって、スタックレバー33が第二位置から第三位置に至るまでは、図6(c)に示すように、スタックレバー33が排出済み原稿Dを上からしっかりと押さえつける状態になり、排出済み原稿Dの後端付近において、排出済み原稿Dが反り上がったりかさばったりするのを抑制できる。
【0060】
すなわち、上述のような単一のねじりコイルばね37を採用しても、スタックレバー33の移動範囲内において、スタックレバー33にかかる付勢力を段階的に変えることができ、排出済みの原稿Dの量に応じて、スタックレバー33に適切な付勢力を作用させることができる。
【0061】
〔3〕変形例等
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されず、この他にも種々の形態で実施することができる。
【0062】
例えば、上記実施形態では、ADF部3Bにおいて原稿排出部18へ排出される原稿をスタックレバー33で押さえ込む事例を示したが、プリンタ部2において被記録媒体排出部7へ排出される被記録媒体を、スタックレバー33と同等な構造で押さえ込むように構成してもよい。
【0063】
この場合でも、排出される被記録媒体の先端部に折れ曲がりが生じるのを抑制することができ、新たに排出される被記録媒体が排出済みの被記録媒体に衝突することも抑制することができる。
【0064】
また、上記実施形態では、画像読取装置としての機能(スキャン機能)、画像形成装置としての機能(プリント機能)を兼ね備えた複合機1を例示したが、画像読取装置としての機能のみを備えた単機能のイメージスキャナ装置、画像形成装置としての機能のみを備えた単機能のプリンタ装置などにおいても本発明を採用することができる。
【0065】
なお、以上説明した実施形態においては、供給ローラ11、分離ローラ12、メイン搬送ローラ13、及び排出ローラ14が、本発明でいう搬送手段の一例に相当する。また、原稿排出部18が、本発明でいうスタック手段の一例に相当する。また、スタックレバー33が、本発明でいうシート押さえ手段の一例に相当する。また、ねじりコイルばね36,37が、本発明でいう付勢手段ないし第一付勢手段の一例に相当し、ねじりコイルばね35が、本発明でいう第二付勢手段の一例に相当する。
【符号の説明】
【0066】
1・・・複合機、2・・・プリンタ部、3・・・スキャナ部、3A・・・FB本体部、3B・・・ADF部、4・・・操作部、6・・・給紙カセット、7・・・被記録媒体排出部、11・・・供給ローラ、12・・・分離ローラ、13・・・メイン搬送ローラ、14・・・排出ローラ、16・・・原稿台、18・・・原稿排出部、21・・・第一原稿ホルダ、22・・・第二原稿ホルダ、24・・・第二ADFガラス、26・・・第二イメージセンサ、31・・・ニップローラ、33・・・スタックレバー、35,36,37・・・ねじりコイルばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを所定の搬送経路に沿って搬送可能な搬送手段と、
前記搬送経路の搬送方向下流端となる位置にあり、前記搬送手段から排出されるシートを堆積させるスタック手段と、
第一位置から第二位置を経て第三位置に至る可動範囲を往復移動可能な可動部品からなり、前記スタック手段に堆積した前記シートに上方から当接して当該シートを上方から押圧可能で、当該シートとの当接点が上昇するのに伴って前記第三位置に近づく方向へと移動するシート押さえ手段と、
前記シート押さえ手段が前記第一位置から前記第二位置に至る範囲にある場合は、前記シート押さえ手段に対して付勢力を作用させない一方、前記シート押さえ手段が前記第二位置から前記第三位置に至る範囲にある場合は、前記シート押さえ手段を前記第一位置側に向かって移動させる方向へと付勢する付勢手段と
を備えたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
前記付勢手段である第一付勢手段に加え、
前記シート押さえ手段が前記第一位置から前記第二位置に至る範囲にある場合は、単独で前記シート押さえ手段を前記第一位置側に向かって移動させる方向へと付勢する一方、前記シート押さえ手段が前記第二位置から前記第三位置に至る範囲にある場合は、前記第一付勢手段とともに前記シート押さえ手段を前記第一位置側に向かって移動させる方向へと付勢する第二付勢手段
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記シート押さえ手段は、上端側が下端側よりも前記搬送手段のなす搬送経路に近い位置に配設され、当該上端側を中心に揺動して前記第一位置から前記第三位置に至る前記可動範囲を往復移動可能で、斜め下方に向けられた傾斜面を有し、当該傾斜面で前記搬送手段から排出される前記シートに当接する部材であり、しかも、前記傾斜面は、前記シート押さえ手段が前記第一位置側から前記第三位置側へと移動するほど、水平面に対する傾斜角が小さくなる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のシート搬送装置によって、読取対象となる原稿を搬送可能に構成されている
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のシート搬送装置によって、印刷対象となる被記録媒体を搬送可能に構成されている
ことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−158427(P2012−158427A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18684(P2011−18684)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】