シート搬送装置および画像形成装置
【課題】良好な分離性能を得ることができ、吸着分離ユニットを揺動させるだけで、シート束から吸着ベルトを離間させることができ、かつ、部品点数を削減することができるシート搬送装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】吸着分離ユニット12は、吸着ベルト13を2つの帳架ローラ(駆動ローラ13Aと従動ローラ13B)で帳架し、2つの帳架ローラのうち、シート搬送方向上流側の帳架ローラである従動ローラ13Bを、シート束の上面に対して所定範囲垂直方向に移動可能に支持した。また、吸着分離ユニット12の揺動の支点を、従動ローラ13Bよりも、シート搬送方向上流側に設けた。
【解決手段】吸着分離ユニット12は、吸着ベルト13を2つの帳架ローラ(駆動ローラ13Aと従動ローラ13B)で帳架し、2つの帳架ローラのうち、シート搬送方向上流側の帳架ローラである従動ローラ13Bを、シート束の上面に対して所定範囲垂直方向に移動可能に支持した。また、吸着分離ユニット12の揺動の支点を、従動ローラ13Bよりも、シート搬送方向上流側に設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート搬送装置および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積載された原稿や記録紙等のシートを分離搬送する方法としては、従来、摩擦力を用いた分離搬送方法や、エアー吸引などによる分離搬送方法が知られている。摩擦力を用いた分離搬送方法では、給送ローラにゴム材料等を用いるため、磨耗などの経時変化によって摩擦力が変化し、搬送性能が低下する。また、摩擦係数が変化(バラツキ)するシートや、摩擦係数の異なるシートを同時に分離搬送する場合には、複数枚を同時に給送する重送や、分離できないといった、給送不良が発生することがある。さらに、シートの搬送時に圧力を加えて分離する構成のため、シートが汚れる場合がある。
【0003】
一方、エアー吸引を用いた分離搬送方法は、ローラやシートの摩擦係数に依存しない非摩擦分離方式ではあるが、エアー吸引ブロワやエアーダクトを必要とするため、装置が大型化すると共に、エアー吸引音が騒音となり、オフィスで使用する装置としては不向きのものである。
【0004】
そこで、非摩擦分離方式の一種で、誘電体ベルトに電界を形成し、これをシートに接触させて吸着し、分離する静電吸着分離方式が提案されている(例えば、特許文献1)。静電吸着分離方式は、複数のローラに巻き掛けられた吸着ベルトに交番電荷を付与し、吸着ベルトを積載シート束に対して平行移動させて近接または接触させ、積載シート束の最上シートを吸着ベルトに吸着させる。その後、この吸着ベルトを積載シート束から離間する方向に移動させることでシート束の最上のシートをシート束から分離する。静電吸着分離方式は、磨耗、シートの痛め、騒音の発生等がなく、しかも、装置の小型化を達成し得る点で優れている。
【0005】
図10は、吸着ベルト200を複数のローラに巻き掛けた吸着分離ユニット201を平行移動させて、シート束の最上シートを吸着分離させるものである。図10の構成においては、シート束の最上シートS1を吸着ベルト200に吸着させた後、吸着ベルト200をシート束から離間する方向に移動させるとき、最上のシートS1と吸着ベルト200との静電吸着力がシートの自重よりも強いため、最上のシートS1は、吸着ベルト200に吸着する。一方、2番目のシートは、吸着ベルト200との距離が、最上のシートS1より遠いため、静電吸着力が最上のシートS1よりも弱い。このため、2番目のシートは、静電吸着力がシートの自重よりも弱くなり、2番目のシートは、シート束に残り、最上のシートS1と2番目のシートとが分離される。
【0006】
しかしながら、シートが薄紙の場合は、2番目のシートと吸着ベルト200との距離が近く、しかも、シートの自重も小さいため、2番目のシートの静電吸着力がシートの自重よりも強くなり、最上のシートS1と2番目のシートとを分離することができない場合があった。
【0007】
図11は、誘電吸着ベルト200を帳架するローラのうち、シート搬送方向上流側のローラ203を回転中心にして吸着分離ユニット201を揺動させてシート束の最上シートS1を吸着分離させるものである。図11の構成においては、シート束の最上シートS1を吸着ベルト200に吸着させた後、シート搬送方向上流側のローラ203を回転中心にして揺動させてシート搬送方向下流側のローラ202を積載シート束から離間させる。この構成においては、吸着ベルト200に静電吸着したシートが、吸着ベルト200とともに移動しようとすると、シート搬送方向上流側の帳架ローラ203との当接部を支点にして、シートが曲がり、シートに復元力が働く。最上のシートS1は、この復元力よりも吸着ベルト200への吸着力の方が勝り、吸着ベルト200とともに移動する。一方、2番目のシートは、吸着ベルト200との距離が遠いので、吸着ベルト200との吸着力がシートの復元力よりも弱くなり、2番目のシートは、吸着ベルト200から分離する。このようにシートの復元力(剛性)を利用することにより、良好な分離性能を得ることができる。しかしながら、この図11の構成においては、分離後、吸着ベルト200に吸着した最上のシートS1を搬送する際、シート搬送方向上流側のローラ203をシート束から離間させる必要がある。これは、シート搬送方向上流側のローラ203をシート束に接触した状態で移動させると、最上のシート束の後端が、シート搬送方向上流側のローラ203から抜けた場合、2番目のシートが、シート搬送方向上流側のローラ203により搬送力を受け、シート搬送方向へ移動してしまうからである。このように、図11の構成においては、吸着分離ユニット201を揺動させる手段に加え、吸着分離ユニット201を上方へ移動させる手段が必要となる。
【0008】
図12は、特許文献2に記載のシート搬送装置100である。
図12に示す特許文献2に記載のシート搬送装置100の吸着分離ユニット201は、駆動ローラ203と、従動ローラ202と、テンションローラ204とで吸着ベルト200を帳架している。また、吸着分離ユニット201は、吸着ベルト表面を帯電させる帯電手段たる帯電ローラ205、最上のシートと当接し、シートと供回りするコロ206を有している。駆動ローラ203、従動ローラ202、テンションローラ204、帯電ローラ205、コロ206は、吸着分離ユニット201の不図示の側板に回動可能に支持されており、側板は、駆動ローラ203の回転軸を中心にして回動可能となっている。
【0009】
給紙トレイ210に積載されたシート束の最上シートS1を搬送するとき、給紙トレイ210を上昇させて、最上のシートS1をコロ206に接触させる。次に、吸着ベルト200を回転させて、吸着ベルト表面に帯電ローラ205によって交番電荷を付与する。次に、吸着分離ユニット201を駆動ローラ203の回転軸を中心にして、図中反時計回りに回動させて、吸着ベルト200の従動ローラ202とテンションローラ204とに帳架された領域を最上のシートS1に接触させ、最上のシートS1を吸着ベルト200に静電吸着させる(図12(b)参照)。次に、吸着分離ユニット201を時計回りに回動させると、吸着ベルト200に静電吸着したシートが、吸着ベルト200とともに移動しようとする。このとき、コロ206との当接部を支点にして、シートが曲がり、シートに復元力が働く。最上のシートS1は、この復元力よりも吸着ベルト200への吸着力の方が勝り、吸着ベルト200とともに移動する。一方、2番目のシートは、吸着ベルト200との距離が遠いので、吸着ベルト200との吸着力がシートの復元力よりも弱くなり、2番目のシートは、吸着ベルト200から分離する(図12(c)参照)。そして、吸着ベルト200を回転させて、吸着ベルト200に吸着している最上のシートを搬送ローラ対に向けて搬送する。
【0010】
特許文献2に記載のシート搬送装置100は、吸着分離ユニット201の揺動の中心を、吸着ベルト200の最上のシートと接触する領域よりも、シート材搬送方向上流側に位置させることで、吸着分離ユニット201を揺動させるだけで、吸着ベルト200をシート束から離間させることができる。これにより、吸着分離ユニット201を上方へ移動させる手段が必要なくなる。また、コロ206をシートに当接させることで、良好な分離性能が得られる。また、コロ206は、シートと供回りする構成なので、最上のシートS1の後端が抜けた後は、回転することがないので、2番目のシートが搬送力を受けることがない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献2に記載のシート搬送装置100においては、吸着ベルト200を3本のローラ202、203,204で帳架する必要があり、また、これとは別にコロ206も設ける必要もあり、部品点数が増加し、装置のコスト高に繋がるという問題があった。
【0012】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、良好な分離性能を得ることができ、吸着分離ユニットを揺動させるだけで、シート束から吸着ベルトを離間させることができ、かつ、部品点数を削減することができるシート搬送装置および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、積載されたシート束の上面に対向配置された吸着ベルトと、該吸着ベルト表面を帯電させる帯電手段とを備えた吸着分離ユニットと、該吸着分離ユニットを揺動させて、上記吸着ベルトを上記シート束に対して接離させる接離手段とを備えたシート搬送装置において、上記吸着分離ユニットは、上記吸着ベルトを2つの帳架ローラで帳架し、2つの帳架ローラのうち、シート搬送方向上流側の帳架ローラを、シート束の上面に対して所定範囲垂直方向に移動可能に支持しており、上記吸着分離ユニットの揺動の支点を、上記シート搬送方向上流側の帳架ローラよりも、シート搬送方向上流側に設けたことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1のシート搬送装置において、上記シート搬送方向上流側の帳架ローラを、吸着分離ユニットの側板に設けられた長穴に回転自在に支持したことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1または2のシート搬送装置において、吸着ベルトが上記シート束に対して離間位置にあるときの吸着ベルトのシート束と接触する接触面とシート束の上面とがなす角度を、上記接離手段の上記吸着分離ユニット揺動角度よりも大きくしたことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3いずれかのシート搬送装置において、吸着ベルトが上記シート束に対して離間位置にあるときにおける上記シート搬送方向下流側の帳架ローラの回転中心から、吸着ベルトのシート束最近接位置までの上下方向の距離が、吸着ベルトが上記シート束に対して離間位置にあるときにおける上記シート搬送方向下流側の帳架ローラの回転中心から、シート束上面までの上下方向の距離よりも短くしたことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4いずれかのシート搬送装置において、上記シート搬送方向下流側の帳架ローラを、駆動力が伝達される駆動ローラとしたことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至5いずれかのシート搬送装置において、待機状態のとき、帯電させた吸着ベルトを上記シート束の上面に当接させるよう構成し、上記待機状態が所定期間経過したら、上記吸着ベルトの帯電動作を行うよう制御する制御手段を備えたことを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項6のシート搬送装置において、上記吸着ベルトの帯電動作時に、上記吸着ベルトに吸着したシートの搬送を阻止する搬送阻止手段を備えたことを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項1乃至7いずれかのシート搬送装置において、上記吸着ベルトの表面をクリーニングするクリーニング手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項8シート搬送装置において、クリーニング手段を清浄化する清浄化手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項8または9のシート搬送装置において、上記クリーニング手段は、吸着ベルトに当接し、いずれかの帳架ローラと吸着ベルトを介して対向配置されたクリーニングローラであり、該クリーニングローラの軸と上記クリーニングローラと吸着ベルトを介して対向する帳架ローラの軸との軸間距離が一定となるよう構成したことを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、請求項1乃至10いずれかのシート搬送装置において、上記シート搬送方向上流側の帳架ローラを、上記シート束方向に付勢する付勢部材を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項12の発明は、請求項11のシート搬送装置において、上記付勢部材は、上記シート搬送方向上流側の帳架ローラの軸受を付勢するよう構成したことを特徴とするものである。
また、請求項13の発明は、請求項11のシート搬送装置において、上記シート搬送方向上流側の帳架ローラの軸受と、上記シート搬送方向下流側の帳架ローラの軸受とを接続する接続部材を設け、上記付勢部材は、上記接続部材を付勢するよう構成したことを特徴するシート搬送装置。
また、請求項14の発明は、請求項11乃至13いずれかのシート搬送装置において、上記付勢部材として、圧縮コイルバネを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項15の発明は、請求項11乃至13いずれかのシート搬送装置において、上記付勢部材として、ねじりコイルバネを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項16の発明は、シートに画像を形成する画像形成手段と、積載されたシート束から最上のシートを分離し、上記画像形成手段へシートを搬送するシート搬送手段とを備えた画像形成装置において、上記シート搬送手段として、請求項1乃至15いずれかのシート搬送装置を用いたことを特徴とするものである。
【0014】
本発明によれば、吸着ベルトをシート束の最上のシートと当接した状態から吸着ベルトがシート束の上面から離間する方向に吸着分離ユニットを揺動させると、シート束の上面に対して所定範囲垂直方向に移動可能に支持したシート搬送方向上流側の帳架ローラは、吸着分離ユニットに対して、シート束上面方向へ相対的に移動する。すなわち、シート搬送方向上流側の帳架ローラが、吸着ベルトを介してシート束の上面と接触した状態のままで、シート搬送方向下流側の帳架ローラが、吸着分離ユニットとともにシート束の上面と離間する方向へ移動する。これにより、吸着ベルトは、シート搬送方向上流側の帳架ローラの回転軸を中心にして、揺動するような動きをとり、吸着ベルトに吸着したシートが、吸着ベルトのシート搬送方向上流側の帳架ローラに巻き回された部分を支点して折れ曲がる。その結果、吸着ベルトに吸着したシートに復元力が働き、最上のシートのみを吸着ベルトに吸着させ、2番目のシートをシートの復元力により分離させることができる。
吸着分離ユニットを吸着ベルトがシート束の上面から離間する方向へさらに揺動させて、シート搬送方向上流側の帳架ローラが、上記所定範囲の上限まで吸着分離ユニットに対して移動すると、シート搬送方向上流側の帳架ローラが、吸着分離ユニットとともに、シート束の上面から離間する方向へ移動する。これにより、吸着ベルトのシート搬送方向上流側の帳架ローラに巻き回された部分が、シート束の上面から離間する。その結果、吸着ベルトをシート束の上面から完全に離間させることができる。よって、この状態で吸着ベルトを回転させて、吸着ベルトに吸着している最上のシートを搬送して、最上のシートの後端が、吸着ベルトのシート搬送方向上流側の帳架ローラに巻き回された部分を抜けても、2番目のシートが、吸着ベルトから搬送力を受けることがない。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、吸着分離ユニットの揺動の支点をシート搬送方向上流側の帳架ローラよりもシート搬送方向上流側に設け、シート搬送方向上流側の帳架ローラを、シート束の上面に対して所定範囲垂直方向に移動可能に吸着分離ユニットに支持することで、シート復元力(剛性)を利用した分離を行え、かつ、2番目のシートに吸着ベルトの搬送力が伝達されるのを防止できる。これにより、3つの帳架ローラで吸着ベルトを支持したり、シートと共回りするコロを設けたりして、シート復元力(剛性)を利用した分離と、2番目のシートに吸着ベルトの搬送力の伝達を防止する特許文献2に記載のシート搬送装置に比べて、部品点数を少なくでき、装置を安価にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態の複写機の概略構成図。
【図2】シート搬送装置の概略構成図。
【図3】吸着分離ユニットの要部構成図。
【図4】吸着分離ユニット離間位置における吸着ベルトと側板の角度について説明する図。
【図5】吸着分離ユニット離間位置における吸着ベルトの離間について説明する図。
【図6】変形例1のシート搬送装置の要部構成図。
【図7】変形例1の吸着ベルト帯電制御フロー図。
【図8】変形例2のシート搬送装置の要部構成図。
【図9】清浄化手段と汚れ検知手段とを設けた例を示す図。
【図10】従来の吸着分離ユニットの一例を示す図。
【図11】従来の吸着分離ユニットの他の例を示す図。
【図12】特許文献2に記載の吸着分離ユニットの動作説明図。
【図13】変形例3のシート搬送装置の要部構成図。
【図14】圧縮コイルバネが接続部材を付勢するよう構成した変形例3のシート搬送装置の要部構成図。
【図15】ねじりコイルバネを用いた変形例3のシート搬送装置の要部構成図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を適用した画像形成装置として電子写真方式の複写機を用いた一実施形態について説明する。まず、複写機の全体構成及び動作について説明する。
図1は、本実施形態に係る複写機の概略構成図である。
複写機の画像形成手段たる画像形成部30として、潜像担持体として感光体31のまわりに、帯電装置32、現像装置34、転写装置35、感光体クリーニング装置36等を備えている。また、画像形成部30は、感光体31にレーザー光33を照射するための光書込ユニット(不図示)、用紙上のトナー画像を定着する定着装置37等を備えている。画像形成部30の上方には、スキャナが設けられている。画像形成部30の下方には、画像形成部で形成された画像を転写するためのシートを積載して収容し、順次、画像形成部30に供給するよう搬送するシート搬送装置1を備えている。
【0018】
上記構成の画像形成部30では、感光体31の回転とともに、まず帯電装置32で感光体31の表面を一様に帯電する。次いで、画像データに基づく光書込ユニット(不図示)からのレーザー光33を照射して感光体31上に静電潜像を形成する。その後、現像装置34によりトナーを付着させ静電潜像を可視像化することで感光体31上にトナー画像を形成する。一方、シート搬送装置1は、シートを1枚づつ分離して搬送して、用紙搬送経路44に入れ、用紙搬送経路44の搬送ローラ45で搬送してレジストローラ46に突き当てて止める。そして、画像形成部30のトナー画像形成のタイミングに合わせて、レジストローラ46に突き当てて止めたシートを感光体31と転写装置35とが対向する転写部に送り出す。転写部では、感光体31上のトナー画像は供給されたシートに転写される。トナー画像が転写されたシートは、定着装置37によりトナー画像を定着後、機外へ排出される。一方、トナー画像転写後の感光体31の表面は感光体クリーニング装置36で残留トナーを除去して清掃して再度の画像形成に備える。
【0019】
次に、本実施形態の複写機の特徴部であるシート搬送装置1について説明する。
図2は、シート搬送装置1の概略構成を示す側面図である。
図2に示すようにシート搬送装置1は、シート収容部11と、シート収容部11の上方に吸着分離ユニット12とを備えている。
【0020】
シート収容部11は、積層された複数枚のシート束2を積載する底板19を有している。シート収容部11の底部には、底板19を支持する支持部材18が回動自在に取り付けられている。
【0021】
底板19の移動は、以下のように行う。シート収容部11には、シート束2の最上シートS1が、所定の位置に来たことを検知する不図示のシート検知手段を有している。支持部材18を不図示の駆動モータにより図中反時計まわりに回動させ、底板19を上昇させると、底板19に積載されたシート束2が上昇し、不図示のシート検出手段が最上シートS1を検出する。不図示のシート検出手段がシート束の最上シートS1が、所定の位置にきたことを検知したら支持部材18の回転を停止する。
【0022】
吸着分離ユニット12は、駆動ローラ13Aと従動ローラ13Bの2つの帳架ローラに帳架される吸着ベルト13を備えている。従動ローラ13Bは、不図示のスプリングにて図中左方向へ付勢されており、吸着ベルト13に張力をかけている。吸着ベルト13は108Ωcm以上の抵抗を有する誘電体で構成されており、例えば、厚さ100μm程度のポリエチレンテレフタレート等のフィルムで構成されている。また、駆動ローラ13Aは抵抗値が106Ωcmの導電性ゴム層が表面に設けられ、従動ローラ13Bは金属ローラである。駆動ローラ13A及び従動ローラ13Bはともに接地されている。駆動ローラ13Aは吸着ベルト13からシートを曲率により分離するのに適した小径にされている。また、駆動ローラ13Aは、不図示の駆動モータにより電磁クラッチを介して給紙信号に応じて間欠的に駆動されるよう構成されている。駆動ローラ13A、従動ローラ13Bは、吸着分離ユニット12の側板15に回転自在に支持されている。側板15は、回転軸15aに固定されており、吸着分離ユニット12は、図中矢印A方向に揺動可能に装置本体に支持されている。
【0023】
吸着分離ユニット12は、吸着ベルト13の駆動ローラ13Aに巻き付いた部分と当接する帯電手段たる帯電ローラ14を有している。帯電ローラ14は、交流電源16に接続されており、吸着ベルト13のおもて面に交番電荷を付与して、吸着ベルト13を帯電させる。
【0024】
帯電ローラ14は、吸着分離ユニット12に回転自在に支持され、吸着ベルト13に対する位置が一意的に決定されている。また、吸着ベルト13の両側端縁のうら面には寄止め用のリブが設けられており、帳架ローラ13A,13Bの両側端面と係合し、吸着ベルト13の寄りを防止している。
【0025】
図3は、吸着分離ユニット12の要部構成図である。
図に示すように、シート搬送方向上流側帳架ローラである従動ローラ13Bは、側板15に設けられた長穴15bに、側板15に対して移動可能に回転自在に支持されている。一方、駆動ローラ13Aは、側板15に対して移動不能に回転自在に支持されている。長穴15b内を従動ローラ13Bが移動することで、従動ローラ13Bの回転中心と駆動ローラ13Aの回転中心との距離が変化しないように、長穴15bは、駆動ローラ13Aの回転中心を中心とする円弧形状となっている。その結果、従動ローラ13Bが、駆動ローラ13Aの回転中心を中心として回動するように、長穴15b内を移動し、長穴15b内を従動ローラ13Bが移動しても、従動ローラ13Bの回転中心と駆動ローラ13Aの回転中心との距離が変化することがない。これにより、吸着ベルト13の張力が変化することがない。
【0026】
側板15は、シート搬送方向上流側帳架ローラである従動ローラ13Bよりもシート搬送方向上流側を支点にして、揺動自在に装置本体に支持されている。具体的には、側板15は、従動ローラ13Bよりもシート搬送方向上流側に設けられた回転軸15aに固定されている。そして、回転軸15aには、ステッピングモータなどの回転角度が調整可能な駆動手段に接続されている。不図示の駆動手段により所定角度回転軸15aが、反時計回りに回動すると、側板15が、所定角度反時計回りに回転する。すると、図3(a)に示すように、吸着ベルト13が、シート束2の最上シートに接触した状態から、図3(b)に示すような吸着ベルト13がシート束2から離間する位置へ移動する。すなわち、本実施形態においては、側板15と、回転軸15aと、駆動手段とで接離手段が構成されている。
【0027】
次に、この吸着分離ユニット12を用いたシート搬送装置動作について説明する。
[帯電動作]
吸着分離ユニット12は通常、図3(b)の位置にて待機しており、給紙信号が入ると、電磁クラッチが入り、駆動ローラ13Aが回転駆動され、吸着ベルト13を無端移動させる。次に、無端移動する吸着ベルト13に帯電ローラ14を介して交流電源16より交番電圧を印加し、吸着ベルト13の表面に交流電源周波数と吸着ベルト13の周動速度に応じたピッチ(ピッチは5mm〜15mm程度とするのがよい)で交番する電荷パターンを形成する。電源16は交流の他直流を高低交互の電位に変化させたものでもよく、矩形波、正弦波などが考えられる。本実施形態では、吸着ベルト13の表面に対して4KVの振幅を持った矩形波を印加している。
【0028】
[吸着動作]
上記したように、吸着ベルト13に電荷パターンを形成したら、支持部材18を回転させ底板19を上昇させる。また、これと前後して、吸着分離ユニット12を図中時計回りに回転させ、図3(a)の吸着ベルト13当接位置へ移動させる。このとき、従動ローラ13Bは、長穴15bの下端と当接している。底板19が上昇していくと、シート束の最上シートS1が従動ローラ13Bと当接する。さらに、底板19を上昇させ、従動ローラ13Bを押し上げていくと、長穴15bに案内されながら、従動ローラ13Bが上方へ移動していく。そして、従動ローラ13Bが、長穴15bの上端に当接するタイミングで不図示のシート検出手段がシート束の最上シートS1が、所定の位置にきたことを検知し、底板19の上昇が停止する。このとき、吸着ベルト13のシート束の上面と対向する部分が、シート束の最上シートS1と当接する。
【0029】
このように、吸着ベルト13が最上シートS1と当接すると、誘電体であるシートには吸着ベルト13の表面の電荷パターンにより形成される不平等電界により、Maxwellの応力が働き、シート束の最上シートS1が吸着ベルト13に吸着する。
【0030】
[分離・搬送動作]
図3(a)に示す状態にて所定時間待機し、吸着ベルト13にシートS1が吸着したら、吸着分離ユニット12の側板15を、図中反時計まわりに回動させる。すると、シート搬送方向下流側の帳架ローラである駆動ローラ13Aは、側板15とともにシート束2から離間する方向へ移動する。一方、シート搬送方向上流側の帳架ローラである従動ローラ13Bは、自重により、シート束2の上面から動かず、側板15に対して相対的にシート束方向へ移動する。これにより、吸着ベルト13は、従動ローラ13Bの回転中心を中心にして、揺動するような動きをとり、吸着ベルト13に吸着したシートが、吸着ベルト13の従動ローラ13Bに巻き回された部分を支点して湾曲する。その結果、吸着ベルト13に吸着したシートに復元力が働き、最上のシートS1のみを吸着ベルト13に吸着させ、2番目のシートS2をシートの復元力により分離させることができる。
【0031】
本実施形態においては、吸着分離ユニット12の回転中心をシート搬送方向上流側に設け、かつ、従動ローラ13Bを、側板15に対して上下方向に移動可能に支持しているので、図4に示すように、軸方向から見たときにおけるシート束2の上面と吸着ベルト13面との角度βを側板15の回転中心と駆動ローラ13Aの回転中心とを結んだ線とシート束2の上面との角度α(側板15の揺動角度)よりも大きくすることができる。このように、角度βを大きくできるので、より高い分離性を実現できる。
【0032】
側板15が、さらに図中反時計回りに回動すると、従動ローラ13Bが、長穴15bの下端に突き当る。このように、従動ローラ13Bが、長穴15bに突き当たった状態から、さらに側板15を回動させると、従動ローラ13Bも側板15とともに移動し、従動ローラ13Bが、シート束2の上面から離間し、図3(b)に示す状態で、側板15の回動が停止する。側板15の回動が停止したら、電磁クラッチを入れて、駆動ローラ13Aを回転駆動し、吸着ベルト13を無端移動させて、吸着ベルト13に吸着している最上シートS1を、搬送ローラ対45へ向けて搬送する。吸着ベルト13に静電吸着した最上シートS1の先端が、吸着ベルト13の駆動ローラ13Aの巻き回し部分に到達すると、曲率分離により吸着ベルト13から分離し、ガイド部材51に案内されながら、搬送ローラ45対へ向けて移動する。
【0033】
この吸着ベルト13によるシート搬送時は、図5に示すように、駆動ローラ13Aの回転中心から、吸着ベルト13のシート束最近接位置までの上下方向までの距離L1が、駆動ローラ13Aの回転中心から、シート束上面までの上下方向の距離L2よりも短くなっている。よって、吸着ベルト13に吸着している最上のシートS1を搬送しているときに、搬送力が、2番目のシートS2へ伝達されるのを抑制することができる。よって、2番目のシートS2が、搬送されることがない。
【0034】
搬送ローラ対45と吸着ベルト13との線速は同一にされており、搬送ローラ対45がタイミングを取って間欠駆動されているような場合は吸着ベルト13も間欠駆動されるように制御される。
【0035】
また、本実施形態においては、シート搬送方向下流側の帳架ローラを、駆動ローラとしたので、側板15に対して所定範囲可動するシート搬送方向下流側の帳架ローラを駆動ローラとする場合に比べて、駆動伝達機構の構成を簡易にすることができる。これにより、装置のコストアップを避けることができる。
【0036】
また、吸着ベルト13の帯電は、吸着ベルト13のシートの分離位置から、搬送ローラ対45の長さ分だけ行うようにして、それ以降は、帯電ローラ14で吸着ベルト13を除電するようにしてもよい。これによりシートは、搬送ローラ対45へ搬送された後は吸着ベルト13の影響を受けずに、搬送ローラ対45の搬送力のみによって搬送される。また、吸着ベルト13を除電することによって、2枚目のシートS2が、離間した吸着ベルト13に静電吸着するのを抑制することができる。
【0037】
ここで、周動する吸着ベルト13に交番電圧を印加することにより、帯電した吸着ベルト13の電荷を除電することができる原理を説明する。吸着ベルト13外周面に導電性ローラ等の帯電電極を接触させ直流電源により直流電圧を印加した場合、吸着ベルト13は印加される直流電圧がある電圧以下の電圧では帯電されない。この電圧を帯電開始電圧といい、その値V0は吸着ベルト13の厚さ、体積抵抗等により変化する。次に上記の帯電開始電圧V0をピーク値として持つような交番する電圧を帯電ローラ14に印加したところ、帯電している吸着ベルト13の表面電位がほぼ零Vに除電されることが確認されている。これは、印加電圧のピーク値を帯電開始電位V0とすることにより、この印加電圧では誘電体である吸着ベルト13を帯電させる能力はないが、吸着ベルト13に帯電している空間電荷には移動させる力が働き、除電できることを意味する。また、交互に交番する印加電圧を用いることから、吸着ベルト13が(+),(−)のどちらに帯電していても除電効果がある。しかし、帯電開始電圧以下の印加電圧では、除電不足が発生し、帯電開始電圧以上では、印加周波数(120Hz,v/f=1mm周期)の帯電が生じ、零Vに除電できなかった。したがって、電源16の交番電圧はピーク値が吸着ベルト13に対する帯電開始電圧になるように制御すればよいことになる。
【0038】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0039】
[変形例1]
上述では、給紙信号が入ると、シート束から離間している吸着ベルト13を帯電させる帯電動作、離間位置にある吸着ベルト13をシート束の最上にシートS1に接触させて、最上シートS1を吸着ベルト13に吸着させる吸着動作を行った後、分離・搬送動作を行うため、ファーストプリントが遅くなってしまうという問題がある。この変形例1では、待機状態のとき、図3(a)に示すように、帯電した吸着ベルト13をシート束の最上シートS1に当接させて、最上シートS1を吸着ベルト13に吸着させて、待機させるものである。吸着ベルト13の電荷は計算上、時間が経っても消失することはないため、待機状態が長くても、最上シートS1は、吸着ベルト13に吸着し続けることができる。これにより、給紙信号が入ってから、帯電動作および吸着動作を行うものに比べて、ファーストプリントを早くすることができる。しかし、例えば高温高湿環境にてシートの抵抗が非常に小さくなった場合に、ベルト上の帯電電荷が非常に小さい抵抗のシートと接触することで消失してしまうことがある。このように、吸着ベルト13の電荷が消失してしまうと、シート束の最上シートS1を、分離搬送することができず、搬送不良が生じてしまう。
【0040】
したがって、この変形例1においては、所定時間印刷ジョブが無いときに、所定のタイミングで帯電動作を行って、吸着ベルト13の電荷が消失しないようにしている。
【0041】
図6は、変形例1のシート搬送装置の概略構成図である。
この変形例1には、吸着分離ユニット12よりもシート搬送方向下流側に、最上シートS1の搬送を阻止する搬送阻止手段たる搬送阻止部材50が、設けられている。この搬送阻止部材50は、シート束2の最上シートS1と対向する対向面が、摩擦係数の高い部材で構成されており、吸着ベルト13の帯電動作のとき、搬送阻止部材50を当接させている。この搬送阻止部材50を設ける理由は、この変形例1においては、所定時間印刷ジョブが無いときに、所定のタイミングで帯電動作を行っているが、このとき、吸着ベルト13に電荷が残っており、最上シートS1が吸着ベルト13から分離しないことがある。このような状態で、帯電動作を行うと、最上シートS1が搬送されてしまう。よって、帯電動作時に、上記搬送阻止部材50で、最上シートS1が搬送されるのを阻止することで、帯電動作を行うときに、最上シートS1が吸着ベルト13から離間していなくても、最上シートS1が搬送されてしまうことがない。また、最上シートS1を搬送するときは、搬送阻止部材50を、最上シートS1から離間させる。これにより、最上シートS1を搬送させることができる。
【0042】
図7は、変形例1の帯電制御フローである。
図に示すように、所定時間経過したら(S1のYES)、不図示の制御手段たる制御部は、搬送阻止部材50を下降させて、シート束2の最上シートS1と接触させる(S2)。搬送阻止部材50は、シート束2に対して所定の押圧力で押圧している。次に、側板15を回動させて、図3(b)に示すような吸着ベルト13がシート束2から離間する位置へ移動させる(S3)。吸着ベルト13が図3(b)に示す離間位置まで移動したら、上述した帯電動作を行う(S4)。すなわち、吸着ベルト13を回転駆動させながら、吸着ベルト13に交番する電荷パターンを形成する。このとき、吸着ベルト13に最上シートS1が吸着していても、最上シートS1のシート搬送方向上流側は、搬送阻止部材50により、押さえられているので、吸着ベルト13の搬送力により、搬送されることはなく、吸着ベルト13から剥離して、シート束へ落下する。帯電動作が終了したら、上述した吸着動作を行う(S5)。すなわち、吸着ベルト13がシート束2の最上シートS1に接触する接触位置へ移動させ、吸着ベルト13をシート束2の最上シートS1と接触させて、吸着ベルト13に最上シートS1を吸着させるのである。そして、搬送阻止部材50を上昇(S6)させて、搬送阻止部材50を最上のシートS1から分離させる。
【0043】
このように、変形例1では、所定の間隔で、吸着ベルト13を帯電させることにより、給紙時に吸着ベルト13の帯電不足により、最上シートS1が吸着ベルト13から分離するのを抑制することができ、搬送不良が生じるのを抑制することができる。また、吸着ベルト13に最上シートS1を吸着させた状態で、待機させているので、給紙信号が入力されたとき、分離・搬送動作のみ行えばよいので、ファーストプリントを早くすることができる。
【0044】
また、上述では、通常時は、搬送阻止部材50をシート束2から離間させておき、帯電動作のときに、搬送阻止部材50をシート束2の最上シートS1に当接させているが、通常時は、搬送阻止部材50をシート束の最上シートS1に当接させ、給紙時に、シート束から搬送阻止部材50を離間させるようにしてもよい。
【0045】
また、搬送阻止手段は、上述の構成に限るものではない。例えば、吸着分離ユニット12よりもシート搬送方向下流側に、搬送阻止手段として壁部を設けて、吸着ベルト13によって搬送される最上シートS1の先端がこの壁部に突き当たることで、最上シートS1の搬送を阻止してもよい。帯電動作時に、この壁部を突き当たり位置に移動させる。帯電動作時に吸着ベルト13に最上シートS1が吸着しており、帯電動作時の吸着ベルト13の回転駆動により、最上シートS1が吸着ベルト13から搬送力を受けても、最上シートS1の先端が、壁部に突き当り、最上シートS1が搬送されるのを阻止することができる。このように、壁部でシートの搬送を阻止する場合は、シートが折れ曲がるなどの不具合が生じないように、シートの先端が壁部に突き当たると、シートが吸着ベルト13から剥離するよう、壁部の形状を工夫する必要がある。給紙時においては、壁部を当接しない位置へ移動させることで、給紙時において、吸着ベルト13に吸着した最上シートS1は、壁部に突き当たることなく、搬送ローラ対45へ向けて搬送される。また、壁部を動かずに、帯電動作時は、吸着ベルト13を、吸着ベルト13に吸着した最上シートS1が壁部に突き当たる位置へ移動させ、給紙時は、吸着ベルト13を、吸着ベルト13に吸着した最上シートS1が、壁部に突き当たらない位置へ移動させるようにしてもよい。具体的には、帯電動作時と、分離・搬送動作時とで、吸着分離ユニット12の揺動角度を異ならせる。
【0046】
また、吸着ベルト13に最上シートS1が吸着しているか否かを検知する検知手段を設け、所定時間経過後、吸着ベルト13をシート束から離間させ、このとき、最上シートS1が吸着ベルト13に吸着しているか否かを検知手段で検知する。検知の結果、最上シートS1が吸着ベルトに吸着していないときは、帯電動作を行い、吸着しているときは、帯電動作を行わずに、吸着ベルト13を接触位置に戻すようにしてもよい。検知手段としては、変位センサなどを用いることができる。
【0047】
[変形例2]
図8は、変形例2のシート搬送装置1の要部構成図であり、図8に示すように、この変形例2においては、吸着ベルト13表面をクリーニングするクリーニング手段たるクリーニングローラ17を有している。クリーニングローラ17の軸は、ホルダ20の一端に回転自在に支持されており、このホルダ20の他端には、従動ローラ13Bの軸が回転自在に支持されている。また、クリーニングローラ17の軸のホルダ20取り付け箇所よりも端部側に、スプリング21の一端を取り付け、従動ローラ13Bの軸のホルダ20取り付け箇所よりも端部側に、スプリング21の他端を取り付けて、クリーニングローラ17を従動ローラ13B側に付勢している。このように、クリーニングローラ17が、ホルダ20を介して、側板15に回動自在に支持されている従動ローラ13Bに取り付けられることで、吸着分離ユニット12が回動すると、クリーニングローラ17・スプリング21が従動ローラ13Bと共に移動する。これにより、吸着ベルト13が離間位置にあるときと、接触位置にあるときとで、クリーニングローラ17の当接圧が変化することがない。また、図8では、スプリング21の他端を従動ローラ13Bに取り付けているが、スプリング21の他端を駆動ローラ13Aに取り付けてもよい。このように構成しても、クリーニングローラ17の吸着ベルト13に対する当接圧を一定に維持することができる。
【0048】
吸着ベルト13に付着した紙粉などの付着物は、所定の当接圧で吸着ベルト13の従動ローラ13Bの巻き回し部分に当接するクリーニングローラ17に付着し、除去される。
【0049】
なお、上述では、クリーニング手段をローラとしたが、マイラ等のブレードを押し当てる構成であってもよい。ブレードをクリーニング手段として用いた場合は、吸着ベルト13に付着した紙粉などを、ブレードで掻き落としして除去する。
【0050】
また、図9に示すように、クリーニングローラ17を清浄化する清浄化手段24を設けてもよい。清浄化手段24として、スポンジなどの複数のセル(空孔)が設けられた部材を用いる。クリーニングローラ17に付着した紙粉などの部材は、セルなどに付着し、クリーニングローラ17から除去される。
【0051】
また、図9に示すように、吸着ベルト表面の汚れを検知する汚れ検知手段25を備えてもよい。汚れ検知手段25は例えば表面電位センサを用いることができる。クリーニングローラ17のクリーニング能力が落ち、吸着ベルト13の表面の汚れを十分に除去できなくなると、吸着ベルト13の電位が落ちてしまう。よって、吸着ベルト13の表面電位をモニタリングすることで、クリーニング機能のモニタリングができる。このように、汚れ検知手段で、クリーニング機能をモニタリングすることで、清浄化手段の交換時期予測や、クリーニング動作時間の制御を行うことができる。
【0052】
[変形例3]
図13は、変形例3のシート搬送装置1の要部構成図である。
実施形態のシート搬送装置では、吸着分離ユニット12のシート分離動作時、従動ローラ13Bの自重により従動ローラ13Bの軸を長穴15bの上端から下端へ移動させるよう構成している。しかし、部品不良や経時変化により、従動ローラ13Bの軸が長穴15bに対してスムーズに移動しない場合がある。その結果、シート分離動作時に従動ローラ13Bが、シート束表面を叩いて、その衝撃で最上のシートS1が吸着ベルト13から離間するおそれがある。また、従動ローラ13Bの軸が、長穴15bの下端まで移動せず、シート分離動作終了時のシート束2の上面と吸着ベルト13面との角度が、所定角度以下となり、2番目のシートS2が、吸着ベルト13から離間しないおそれがあった。そこで、この変形例3においては、図13に示すように、従動ローラ13Bを、上記シート束方向に付勢する付勢部材たる圧縮コイルバネ27を設けている。
【0053】
図に示すように、側板15の長穴15bが形成された箇所の上方にバネ受け15cが設けられ、圧縮コイルバネ27の一端が取り付けられている。圧縮コイルバネ27の他端は、側板15の外側に設けられた従動ローラ13Bの軸受131Bに取り付けられ、従動ローラ13Bをシート束方向に向けて付勢している。
【0054】
図13の(a)に示すように、表面が帯電した吸着ベルト13のシート束の上面と対向する部分が、シート束の最上シートS1と当接した状態から、側板15を、回動させて、吸着ベルト13をシート束から離間する方向へ移動させると、従動ローラ13Bは、圧縮コイルバネ27の付勢力により、シート束2の上面から動かず、側板15に対して相対的にシート束方向へ移動する。このように、圧縮コイルバネ27で従動ローラ13Bをシート束方向に付勢しているので、吸着ベルト13をシート束から離間させるときに、確実に従動ローラ13Bをシート束の上面に当接させておくことができる。その結果、吸着ベルト13に吸着したシートが、吸着ベルト13の従動ローラ13Bに巻き回された部分を支点して湾曲させることができ、最上のシートS1のみを吸着ベルト13に吸着させ、2番目のシートS2をシートの復元力により確実に分離させることができる。
【0055】
そして、従動ローラ13Bの軸が、長穴15bの下端に突き当ったら従動ローラ13Bが、シート束2の上面から離間し、図13(b)に示す状態で、側板15の回動が停止する。この変形例3においては、従動ローラ13Bを、圧縮コイルバネ27で付勢しているので、従動ローラ13Bの軸を確実に長穴15bの下端に突き当てることができる。これにより、従動ローラ13Bが、シート束2の上面から離間したときのシート束2の上面と吸着ベルト13面との角度を、確実に所定角度にでき、2番目のシートS2を、確実に吸着ベルト13から離間させることができる。
【0056】
また、従動ローラ13Bの軸受131Bを付勢することで、従動ローラ13Bを直接シート束方向に付勢できるので、従動ローラ13Bに付勢力を効率的に付与することができる。また付勢部材として、圧縮コイルバネ27を用いることで、簡単な構成で従動ローラ13Bをシート束方向へ付勢することができ、装置のコストを抑えることができる。
【0057】
また、図14に示すように、駆動ローラ13Aの軸受131Aと、従動ローラ13Bの軸受131Bとを接続する接続部材28を設け、圧縮コイルバネ27は、この接続部材28を付勢するよう構成してもよい。このように、接続部材28を付勢することによって、付勢力の作用点の位置を自在に選択することができ、部品設計の自由度を得ることができる。例えば、圧縮コイルバネ27の変形量を少なくしたい場合は、付勢力の作用点(圧縮コイルバネ27と接続部材28とが当接する箇所)を、駆動ローラ13A側にすればよい。また、圧縮コイルバネ27の変形量を多くしたい場合は、付勢力の作用点(圧縮コイルバネ27と接続部材28とが当接する箇所)を、従動ローラ13B側にすればよい。また、接続部材28を従動ローラ13Bよりも回転軸15a側に延設することによって、圧縮コイルバネ27の変形量をさらに多くすることもできる。
【0058】
また、図15に示すように、付勢部材として、ねじりコイルバネ29を用いてもよい。
図15に示すように、ねじりコイルバネ29は、駆動ローラ13Aの軸に挿入され、一端が側板15に取り付けられ、他端が、接続部材28に取り付けられて、接続部材28をシート束方向に付勢している。
従動ローラ13Bは、駆動ローラ13Aの回転中心を中心にして揺動するので、従動ローラ13Bの揺動角度が大きい場合、圧縮コイルバネ27を用いると、コイルバネが湾曲して、従動ローラ13Bを回転軸15a側へ引っ張る力が生じてしまう。その結果、従動ローラ13Bの軸が長穴15bをスムーズに移動しなくなるおそれがある。しかしながら、ねじりコイルバネ29とすることで、従動ローラ13Bに駆動ローラ13Aの回転中心を中心として揺動する方向の付勢力を付与でき、回動角度が大きくても、従動ローラ13Bの軸が、スムーズに長穴15bを移動することができる。
【0059】
以上、本実施形態のシート搬送装置1によれば、積載されたシート束の上面に対向配置された吸着ベルト13と、吸着ベルト13表面を帯電させる帯電手段たる帯電ローラ14とを備えた吸着分離ユニット12を有している。また、吸着分離ユニット12を揺動させて、吸着ベルト13をシート束に対して接離させる接離手段(側板15を回動自在に支持する回転軸15aと、駆動手段とで構成)を備えている。そして、吸着分離ユニット12は、吸着ベルト13を2つの帳架ローラ(駆動ローラ13Aと従動ローラ13B)で帳架し、2つの帳架ローラのうち、シート搬送方向上流側の帳架ローラである従動ローラ13Bを、シート束の上面に対して所定範囲垂直方向に移動可能に支持している。また、吸着分離ユニット12の揺動の支点を、従動ローラ13Bよりも、シート搬送方向上流側に設けている。これにより、シートの復元力を利用した分離を行えることができ、良好な分離性能を得ることができる。また、吸着分離ユニット12を揺動させるだけで、吸着ベルト13をシート束2の上面から離間させることができる。
【0060】
また、従動ローラ13Bを、吸着分離ユニット12の側板15に設けられた長穴15bに回転自在に支持することによって、簡単な構成で、従動ローラ13Bをシート束2の上面に対して所定範囲垂直方向に移動可能に支持することができる。
【0061】
また、図4に示すように、吸着ベルト13がシート束2に対して離間位置にあるときの吸着ベルト13のシート束2と接触する接触面とシート束2の上面とがなす角度βを、接離手段の吸着分離ユニット12の揺動角度αよりも大きくしたことで、吸着ベルト13の分離性能を高めることができる。
【0062】
また、図5に示すように、吸着ベルト13がシート束2に対して離間位置にあるときにおける駆動ローラ13Aの回転中心から、吸着ベルト13のシート束最近接位置までの上下方向の距離L1が、駆動ローラ13Aの回転中心から、シート束上面までの上下方向の距離L2よりも短くしたので、吸着ベルト13に吸着している最上のシートS1を搬送しているときに、搬送力が、2番目のシートS2へ伝達されるのを抑制することができる。
【0063】
また、シート搬送方向下流側の帳架ローラを、駆動ローラとしたので、側板15に対して所定範囲可動するシート搬送方向下流側の帳架ローラを駆動ローラとする場合に比べて、駆動伝達機構の構成を簡易にすることができる。これにより、装置のコストアップを避けることができる。
【0064】
また、本実施形態においては、待機状態のとき、帯電させた吸着ベルト13をシート束の上面に当接させるよう構成している。これにより、ファーストプリントにおいては、分離・搬送動作のみとなり、ファーストプリントを早く行うことができる。また、所定時間経過したら、吸着ベルトの帯電動作を行うので、吸着ベルトの帯電不足が生じるのを抑制し、搬送不良が生じるのを抑制することができる。
【0065】
また、吸着ベルト13の帯電動作時に、吸着ベルト13に吸着したシートの搬送を阻止する搬送阻止手段たる搬送阻止部材50を設けた。これにより、帯電動作時に、吸着ベルト13に吸着したシートの搬送が、搬送阻止部材50により阻止されるので、吸着ベルト13に吸着したシートが、帯電動作時に搬送されてしまうのを抑制することができる。
【0066】
また、吸着ベルトの表面をクリーニングするクリーニング手段たるクリーニングローラ17を設けたので、吸着ベルト13の汚れを抑制することができ、経時にわたり、吸着ベルト13を所定の電位に帯電させることができる。
【0067】
また、クリーニングローラ17を清浄化する清浄化手段24を設けたことで、経時にわたり、クリーニングローラ17で吸着ベルト表面を良好にクリーニングすることができる。
【0068】
また、クリーニングローラ17の軸とクリーニングローラ17と吸着ベルト13を介して対向する帳架ローラである従動ローラ13Bの軸との軸間距離が一定となるよう構成したことで、吸着分離ユニット12が揺動しても、クリーニングローラ17の吸着ベルト13に対する当接圧が変動することがなく、良好なクリーニング性を維持することができる。
【0069】
また、従動ローラ13Bを、シート束方向に付勢する付勢部材を設けることで、吸着ベルト13をシート束から離間する方向へ移動させるとき、従動ローラ13Bを、付勢部材の付勢力により、シート束2の上面に当接させておくことができる。これにより、従動ローラ13Bの自重でシート束2の上面に当接させておくものに比べて、確実にシート束2の上面に当接させておくことができる。その結果、吸着ベルト13をシート束から離間させる分離動作のときに、従動ローラ13Bが、シート束表面を叩いてしまうのを抑制することができ、最上のシートS1が吸着ベルト13から離間するのを抑制することができる。
【0070】
また、付勢部材は、従動ローラ13Bの軸受131Bを付勢するよう構成することで、効率的に従動ローラ13Bに付勢部材の付勢力を作用させることができる。
【0071】
また、従動ローラ13Bの軸受131Bと、駆動ローラ13Aの軸受131Aとを接続する接続部材28を設け、付勢部材は、接続部材28を付勢するよう構成してもよい。かかる構成によれば、付勢部材の作用点の位置を自在に選択することができ、部品設計の自由度が得られる。
【0072】
また、付勢部材として、圧縮コイルバネ27を用いることで、簡単な構成で従動ローラ13Bをシート束方向へ付勢することができ、装置のコストを抑えることができる。
【0073】
また、付勢部材として、ねじりコイルバネ29を用いてもよい。ねじりコイルバネ29を用いることで、従動ローラ13Bの駆動ローラ13Aの回転中心を中心とする回動角度が大きくても、その回動角度方向に従動ローラ13Bを付勢することができる。これにより、付勢部材の付勢力により従動ローラの軸がスムーズに長穴内を移動することができる。
【符号の説明】
【0074】
1,100:シート搬送装置
2:シート束
11:シート収容部
12,201:吸着分離ユニット
13,200:吸着ベルト
13A:駆動ローラ
13B:従動ローラ
14,205:帯電ローラ
15:側板
15a:回転軸
15b:長穴
16:交流電源
17:クリーニングローラ
18:支持部材
19:底板
20:ホルダ
21:スプリング
24:清浄化手段
25:汚れ検知手段
27:圧縮コイルバネ
28:接続部材
29:ねじりコイルバネ
30:画像形成部
50:搬送阻止部材
204:テンションローラ
206:コロ
S1:最上シート
S2:2番目のシート
【先行技術文献】
【特許文献】
【0075】
【特許文献1】特開平5−139548号公報
【特許文献2】特開2003−237969号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート搬送装置および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積載された原稿や記録紙等のシートを分離搬送する方法としては、従来、摩擦力を用いた分離搬送方法や、エアー吸引などによる分離搬送方法が知られている。摩擦力を用いた分離搬送方法では、給送ローラにゴム材料等を用いるため、磨耗などの経時変化によって摩擦力が変化し、搬送性能が低下する。また、摩擦係数が変化(バラツキ)するシートや、摩擦係数の異なるシートを同時に分離搬送する場合には、複数枚を同時に給送する重送や、分離できないといった、給送不良が発生することがある。さらに、シートの搬送時に圧力を加えて分離する構成のため、シートが汚れる場合がある。
【0003】
一方、エアー吸引を用いた分離搬送方法は、ローラやシートの摩擦係数に依存しない非摩擦分離方式ではあるが、エアー吸引ブロワやエアーダクトを必要とするため、装置が大型化すると共に、エアー吸引音が騒音となり、オフィスで使用する装置としては不向きのものである。
【0004】
そこで、非摩擦分離方式の一種で、誘電体ベルトに電界を形成し、これをシートに接触させて吸着し、分離する静電吸着分離方式が提案されている(例えば、特許文献1)。静電吸着分離方式は、複数のローラに巻き掛けられた吸着ベルトに交番電荷を付与し、吸着ベルトを積載シート束に対して平行移動させて近接または接触させ、積載シート束の最上シートを吸着ベルトに吸着させる。その後、この吸着ベルトを積載シート束から離間する方向に移動させることでシート束の最上のシートをシート束から分離する。静電吸着分離方式は、磨耗、シートの痛め、騒音の発生等がなく、しかも、装置の小型化を達成し得る点で優れている。
【0005】
図10は、吸着ベルト200を複数のローラに巻き掛けた吸着分離ユニット201を平行移動させて、シート束の最上シートを吸着分離させるものである。図10の構成においては、シート束の最上シートS1を吸着ベルト200に吸着させた後、吸着ベルト200をシート束から離間する方向に移動させるとき、最上のシートS1と吸着ベルト200との静電吸着力がシートの自重よりも強いため、最上のシートS1は、吸着ベルト200に吸着する。一方、2番目のシートは、吸着ベルト200との距離が、最上のシートS1より遠いため、静電吸着力が最上のシートS1よりも弱い。このため、2番目のシートは、静電吸着力がシートの自重よりも弱くなり、2番目のシートは、シート束に残り、最上のシートS1と2番目のシートとが分離される。
【0006】
しかしながら、シートが薄紙の場合は、2番目のシートと吸着ベルト200との距離が近く、しかも、シートの自重も小さいため、2番目のシートの静電吸着力がシートの自重よりも強くなり、最上のシートS1と2番目のシートとを分離することができない場合があった。
【0007】
図11は、誘電吸着ベルト200を帳架するローラのうち、シート搬送方向上流側のローラ203を回転中心にして吸着分離ユニット201を揺動させてシート束の最上シートS1を吸着分離させるものである。図11の構成においては、シート束の最上シートS1を吸着ベルト200に吸着させた後、シート搬送方向上流側のローラ203を回転中心にして揺動させてシート搬送方向下流側のローラ202を積載シート束から離間させる。この構成においては、吸着ベルト200に静電吸着したシートが、吸着ベルト200とともに移動しようとすると、シート搬送方向上流側の帳架ローラ203との当接部を支点にして、シートが曲がり、シートに復元力が働く。最上のシートS1は、この復元力よりも吸着ベルト200への吸着力の方が勝り、吸着ベルト200とともに移動する。一方、2番目のシートは、吸着ベルト200との距離が遠いので、吸着ベルト200との吸着力がシートの復元力よりも弱くなり、2番目のシートは、吸着ベルト200から分離する。このようにシートの復元力(剛性)を利用することにより、良好な分離性能を得ることができる。しかしながら、この図11の構成においては、分離後、吸着ベルト200に吸着した最上のシートS1を搬送する際、シート搬送方向上流側のローラ203をシート束から離間させる必要がある。これは、シート搬送方向上流側のローラ203をシート束に接触した状態で移動させると、最上のシート束の後端が、シート搬送方向上流側のローラ203から抜けた場合、2番目のシートが、シート搬送方向上流側のローラ203により搬送力を受け、シート搬送方向へ移動してしまうからである。このように、図11の構成においては、吸着分離ユニット201を揺動させる手段に加え、吸着分離ユニット201を上方へ移動させる手段が必要となる。
【0008】
図12は、特許文献2に記載のシート搬送装置100である。
図12に示す特許文献2に記載のシート搬送装置100の吸着分離ユニット201は、駆動ローラ203と、従動ローラ202と、テンションローラ204とで吸着ベルト200を帳架している。また、吸着分離ユニット201は、吸着ベルト表面を帯電させる帯電手段たる帯電ローラ205、最上のシートと当接し、シートと供回りするコロ206を有している。駆動ローラ203、従動ローラ202、テンションローラ204、帯電ローラ205、コロ206は、吸着分離ユニット201の不図示の側板に回動可能に支持されており、側板は、駆動ローラ203の回転軸を中心にして回動可能となっている。
【0009】
給紙トレイ210に積載されたシート束の最上シートS1を搬送するとき、給紙トレイ210を上昇させて、最上のシートS1をコロ206に接触させる。次に、吸着ベルト200を回転させて、吸着ベルト表面に帯電ローラ205によって交番電荷を付与する。次に、吸着分離ユニット201を駆動ローラ203の回転軸を中心にして、図中反時計回りに回動させて、吸着ベルト200の従動ローラ202とテンションローラ204とに帳架された領域を最上のシートS1に接触させ、最上のシートS1を吸着ベルト200に静電吸着させる(図12(b)参照)。次に、吸着分離ユニット201を時計回りに回動させると、吸着ベルト200に静電吸着したシートが、吸着ベルト200とともに移動しようとする。このとき、コロ206との当接部を支点にして、シートが曲がり、シートに復元力が働く。最上のシートS1は、この復元力よりも吸着ベルト200への吸着力の方が勝り、吸着ベルト200とともに移動する。一方、2番目のシートは、吸着ベルト200との距離が遠いので、吸着ベルト200との吸着力がシートの復元力よりも弱くなり、2番目のシートは、吸着ベルト200から分離する(図12(c)参照)。そして、吸着ベルト200を回転させて、吸着ベルト200に吸着している最上のシートを搬送ローラ対に向けて搬送する。
【0010】
特許文献2に記載のシート搬送装置100は、吸着分離ユニット201の揺動の中心を、吸着ベルト200の最上のシートと接触する領域よりも、シート材搬送方向上流側に位置させることで、吸着分離ユニット201を揺動させるだけで、吸着ベルト200をシート束から離間させることができる。これにより、吸着分離ユニット201を上方へ移動させる手段が必要なくなる。また、コロ206をシートに当接させることで、良好な分離性能が得られる。また、コロ206は、シートと供回りする構成なので、最上のシートS1の後端が抜けた後は、回転することがないので、2番目のシートが搬送力を受けることがない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献2に記載のシート搬送装置100においては、吸着ベルト200を3本のローラ202、203,204で帳架する必要があり、また、これとは別にコロ206も設ける必要もあり、部品点数が増加し、装置のコスト高に繋がるという問題があった。
【0012】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、良好な分離性能を得ることができ、吸着分離ユニットを揺動させるだけで、シート束から吸着ベルトを離間させることができ、かつ、部品点数を削減することができるシート搬送装置および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、積載されたシート束の上面に対向配置された吸着ベルトと、該吸着ベルト表面を帯電させる帯電手段とを備えた吸着分離ユニットと、該吸着分離ユニットを揺動させて、上記吸着ベルトを上記シート束に対して接離させる接離手段とを備えたシート搬送装置において、上記吸着分離ユニットは、上記吸着ベルトを2つの帳架ローラで帳架し、2つの帳架ローラのうち、シート搬送方向上流側の帳架ローラを、シート束の上面に対して所定範囲垂直方向に移動可能に支持しており、上記吸着分離ユニットの揺動の支点を、上記シート搬送方向上流側の帳架ローラよりも、シート搬送方向上流側に設けたことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1のシート搬送装置において、上記シート搬送方向上流側の帳架ローラを、吸着分離ユニットの側板に設けられた長穴に回転自在に支持したことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1または2のシート搬送装置において、吸着ベルトが上記シート束に対して離間位置にあるときの吸着ベルトのシート束と接触する接触面とシート束の上面とがなす角度を、上記接離手段の上記吸着分離ユニット揺動角度よりも大きくしたことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3いずれかのシート搬送装置において、吸着ベルトが上記シート束に対して離間位置にあるときにおける上記シート搬送方向下流側の帳架ローラの回転中心から、吸着ベルトのシート束最近接位置までの上下方向の距離が、吸着ベルトが上記シート束に対して離間位置にあるときにおける上記シート搬送方向下流側の帳架ローラの回転中心から、シート束上面までの上下方向の距離よりも短くしたことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4いずれかのシート搬送装置において、上記シート搬送方向下流側の帳架ローラを、駆動力が伝達される駆動ローラとしたことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至5いずれかのシート搬送装置において、待機状態のとき、帯電させた吸着ベルトを上記シート束の上面に当接させるよう構成し、上記待機状態が所定期間経過したら、上記吸着ベルトの帯電動作を行うよう制御する制御手段を備えたことを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項6のシート搬送装置において、上記吸着ベルトの帯電動作時に、上記吸着ベルトに吸着したシートの搬送を阻止する搬送阻止手段を備えたことを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項1乃至7いずれかのシート搬送装置において、上記吸着ベルトの表面をクリーニングするクリーニング手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項8シート搬送装置において、クリーニング手段を清浄化する清浄化手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項8または9のシート搬送装置において、上記クリーニング手段は、吸着ベルトに当接し、いずれかの帳架ローラと吸着ベルトを介して対向配置されたクリーニングローラであり、該クリーニングローラの軸と上記クリーニングローラと吸着ベルトを介して対向する帳架ローラの軸との軸間距離が一定となるよう構成したことを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、請求項1乃至10いずれかのシート搬送装置において、上記シート搬送方向上流側の帳架ローラを、上記シート束方向に付勢する付勢部材を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項12の発明は、請求項11のシート搬送装置において、上記付勢部材は、上記シート搬送方向上流側の帳架ローラの軸受を付勢するよう構成したことを特徴とするものである。
また、請求項13の発明は、請求項11のシート搬送装置において、上記シート搬送方向上流側の帳架ローラの軸受と、上記シート搬送方向下流側の帳架ローラの軸受とを接続する接続部材を設け、上記付勢部材は、上記接続部材を付勢するよう構成したことを特徴するシート搬送装置。
また、請求項14の発明は、請求項11乃至13いずれかのシート搬送装置において、上記付勢部材として、圧縮コイルバネを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項15の発明は、請求項11乃至13いずれかのシート搬送装置において、上記付勢部材として、ねじりコイルバネを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項16の発明は、シートに画像を形成する画像形成手段と、積載されたシート束から最上のシートを分離し、上記画像形成手段へシートを搬送するシート搬送手段とを備えた画像形成装置において、上記シート搬送手段として、請求項1乃至15いずれかのシート搬送装置を用いたことを特徴とするものである。
【0014】
本発明によれば、吸着ベルトをシート束の最上のシートと当接した状態から吸着ベルトがシート束の上面から離間する方向に吸着分離ユニットを揺動させると、シート束の上面に対して所定範囲垂直方向に移動可能に支持したシート搬送方向上流側の帳架ローラは、吸着分離ユニットに対して、シート束上面方向へ相対的に移動する。すなわち、シート搬送方向上流側の帳架ローラが、吸着ベルトを介してシート束の上面と接触した状態のままで、シート搬送方向下流側の帳架ローラが、吸着分離ユニットとともにシート束の上面と離間する方向へ移動する。これにより、吸着ベルトは、シート搬送方向上流側の帳架ローラの回転軸を中心にして、揺動するような動きをとり、吸着ベルトに吸着したシートが、吸着ベルトのシート搬送方向上流側の帳架ローラに巻き回された部分を支点して折れ曲がる。その結果、吸着ベルトに吸着したシートに復元力が働き、最上のシートのみを吸着ベルトに吸着させ、2番目のシートをシートの復元力により分離させることができる。
吸着分離ユニットを吸着ベルトがシート束の上面から離間する方向へさらに揺動させて、シート搬送方向上流側の帳架ローラが、上記所定範囲の上限まで吸着分離ユニットに対して移動すると、シート搬送方向上流側の帳架ローラが、吸着分離ユニットとともに、シート束の上面から離間する方向へ移動する。これにより、吸着ベルトのシート搬送方向上流側の帳架ローラに巻き回された部分が、シート束の上面から離間する。その結果、吸着ベルトをシート束の上面から完全に離間させることができる。よって、この状態で吸着ベルトを回転させて、吸着ベルトに吸着している最上のシートを搬送して、最上のシートの後端が、吸着ベルトのシート搬送方向上流側の帳架ローラに巻き回された部分を抜けても、2番目のシートが、吸着ベルトから搬送力を受けることがない。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、吸着分離ユニットの揺動の支点をシート搬送方向上流側の帳架ローラよりもシート搬送方向上流側に設け、シート搬送方向上流側の帳架ローラを、シート束の上面に対して所定範囲垂直方向に移動可能に吸着分離ユニットに支持することで、シート復元力(剛性)を利用した分離を行え、かつ、2番目のシートに吸着ベルトの搬送力が伝達されるのを防止できる。これにより、3つの帳架ローラで吸着ベルトを支持したり、シートと共回りするコロを設けたりして、シート復元力(剛性)を利用した分離と、2番目のシートに吸着ベルトの搬送力の伝達を防止する特許文献2に記載のシート搬送装置に比べて、部品点数を少なくでき、装置を安価にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態の複写機の概略構成図。
【図2】シート搬送装置の概略構成図。
【図3】吸着分離ユニットの要部構成図。
【図4】吸着分離ユニット離間位置における吸着ベルトと側板の角度について説明する図。
【図5】吸着分離ユニット離間位置における吸着ベルトの離間について説明する図。
【図6】変形例1のシート搬送装置の要部構成図。
【図7】変形例1の吸着ベルト帯電制御フロー図。
【図8】変形例2のシート搬送装置の要部構成図。
【図9】清浄化手段と汚れ検知手段とを設けた例を示す図。
【図10】従来の吸着分離ユニットの一例を示す図。
【図11】従来の吸着分離ユニットの他の例を示す図。
【図12】特許文献2に記載の吸着分離ユニットの動作説明図。
【図13】変形例3のシート搬送装置の要部構成図。
【図14】圧縮コイルバネが接続部材を付勢するよう構成した変形例3のシート搬送装置の要部構成図。
【図15】ねじりコイルバネを用いた変形例3のシート搬送装置の要部構成図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を適用した画像形成装置として電子写真方式の複写機を用いた一実施形態について説明する。まず、複写機の全体構成及び動作について説明する。
図1は、本実施形態に係る複写機の概略構成図である。
複写機の画像形成手段たる画像形成部30として、潜像担持体として感光体31のまわりに、帯電装置32、現像装置34、転写装置35、感光体クリーニング装置36等を備えている。また、画像形成部30は、感光体31にレーザー光33を照射するための光書込ユニット(不図示)、用紙上のトナー画像を定着する定着装置37等を備えている。画像形成部30の上方には、スキャナが設けられている。画像形成部30の下方には、画像形成部で形成された画像を転写するためのシートを積載して収容し、順次、画像形成部30に供給するよう搬送するシート搬送装置1を備えている。
【0018】
上記構成の画像形成部30では、感光体31の回転とともに、まず帯電装置32で感光体31の表面を一様に帯電する。次いで、画像データに基づく光書込ユニット(不図示)からのレーザー光33を照射して感光体31上に静電潜像を形成する。その後、現像装置34によりトナーを付着させ静電潜像を可視像化することで感光体31上にトナー画像を形成する。一方、シート搬送装置1は、シートを1枚づつ分離して搬送して、用紙搬送経路44に入れ、用紙搬送経路44の搬送ローラ45で搬送してレジストローラ46に突き当てて止める。そして、画像形成部30のトナー画像形成のタイミングに合わせて、レジストローラ46に突き当てて止めたシートを感光体31と転写装置35とが対向する転写部に送り出す。転写部では、感光体31上のトナー画像は供給されたシートに転写される。トナー画像が転写されたシートは、定着装置37によりトナー画像を定着後、機外へ排出される。一方、トナー画像転写後の感光体31の表面は感光体クリーニング装置36で残留トナーを除去して清掃して再度の画像形成に備える。
【0019】
次に、本実施形態の複写機の特徴部であるシート搬送装置1について説明する。
図2は、シート搬送装置1の概略構成を示す側面図である。
図2に示すようにシート搬送装置1は、シート収容部11と、シート収容部11の上方に吸着分離ユニット12とを備えている。
【0020】
シート収容部11は、積層された複数枚のシート束2を積載する底板19を有している。シート収容部11の底部には、底板19を支持する支持部材18が回動自在に取り付けられている。
【0021】
底板19の移動は、以下のように行う。シート収容部11には、シート束2の最上シートS1が、所定の位置に来たことを検知する不図示のシート検知手段を有している。支持部材18を不図示の駆動モータにより図中反時計まわりに回動させ、底板19を上昇させると、底板19に積載されたシート束2が上昇し、不図示のシート検出手段が最上シートS1を検出する。不図示のシート検出手段がシート束の最上シートS1が、所定の位置にきたことを検知したら支持部材18の回転を停止する。
【0022】
吸着分離ユニット12は、駆動ローラ13Aと従動ローラ13Bの2つの帳架ローラに帳架される吸着ベルト13を備えている。従動ローラ13Bは、不図示のスプリングにて図中左方向へ付勢されており、吸着ベルト13に張力をかけている。吸着ベルト13は108Ωcm以上の抵抗を有する誘電体で構成されており、例えば、厚さ100μm程度のポリエチレンテレフタレート等のフィルムで構成されている。また、駆動ローラ13Aは抵抗値が106Ωcmの導電性ゴム層が表面に設けられ、従動ローラ13Bは金属ローラである。駆動ローラ13A及び従動ローラ13Bはともに接地されている。駆動ローラ13Aは吸着ベルト13からシートを曲率により分離するのに適した小径にされている。また、駆動ローラ13Aは、不図示の駆動モータにより電磁クラッチを介して給紙信号に応じて間欠的に駆動されるよう構成されている。駆動ローラ13A、従動ローラ13Bは、吸着分離ユニット12の側板15に回転自在に支持されている。側板15は、回転軸15aに固定されており、吸着分離ユニット12は、図中矢印A方向に揺動可能に装置本体に支持されている。
【0023】
吸着分離ユニット12は、吸着ベルト13の駆動ローラ13Aに巻き付いた部分と当接する帯電手段たる帯電ローラ14を有している。帯電ローラ14は、交流電源16に接続されており、吸着ベルト13のおもて面に交番電荷を付与して、吸着ベルト13を帯電させる。
【0024】
帯電ローラ14は、吸着分離ユニット12に回転自在に支持され、吸着ベルト13に対する位置が一意的に決定されている。また、吸着ベルト13の両側端縁のうら面には寄止め用のリブが設けられており、帳架ローラ13A,13Bの両側端面と係合し、吸着ベルト13の寄りを防止している。
【0025】
図3は、吸着分離ユニット12の要部構成図である。
図に示すように、シート搬送方向上流側帳架ローラである従動ローラ13Bは、側板15に設けられた長穴15bに、側板15に対して移動可能に回転自在に支持されている。一方、駆動ローラ13Aは、側板15に対して移動不能に回転自在に支持されている。長穴15b内を従動ローラ13Bが移動することで、従動ローラ13Bの回転中心と駆動ローラ13Aの回転中心との距離が変化しないように、長穴15bは、駆動ローラ13Aの回転中心を中心とする円弧形状となっている。その結果、従動ローラ13Bが、駆動ローラ13Aの回転中心を中心として回動するように、長穴15b内を移動し、長穴15b内を従動ローラ13Bが移動しても、従動ローラ13Bの回転中心と駆動ローラ13Aの回転中心との距離が変化することがない。これにより、吸着ベルト13の張力が変化することがない。
【0026】
側板15は、シート搬送方向上流側帳架ローラである従動ローラ13Bよりもシート搬送方向上流側を支点にして、揺動自在に装置本体に支持されている。具体的には、側板15は、従動ローラ13Bよりもシート搬送方向上流側に設けられた回転軸15aに固定されている。そして、回転軸15aには、ステッピングモータなどの回転角度が調整可能な駆動手段に接続されている。不図示の駆動手段により所定角度回転軸15aが、反時計回りに回動すると、側板15が、所定角度反時計回りに回転する。すると、図3(a)に示すように、吸着ベルト13が、シート束2の最上シートに接触した状態から、図3(b)に示すような吸着ベルト13がシート束2から離間する位置へ移動する。すなわち、本実施形態においては、側板15と、回転軸15aと、駆動手段とで接離手段が構成されている。
【0027】
次に、この吸着分離ユニット12を用いたシート搬送装置動作について説明する。
[帯電動作]
吸着分離ユニット12は通常、図3(b)の位置にて待機しており、給紙信号が入ると、電磁クラッチが入り、駆動ローラ13Aが回転駆動され、吸着ベルト13を無端移動させる。次に、無端移動する吸着ベルト13に帯電ローラ14を介して交流電源16より交番電圧を印加し、吸着ベルト13の表面に交流電源周波数と吸着ベルト13の周動速度に応じたピッチ(ピッチは5mm〜15mm程度とするのがよい)で交番する電荷パターンを形成する。電源16は交流の他直流を高低交互の電位に変化させたものでもよく、矩形波、正弦波などが考えられる。本実施形態では、吸着ベルト13の表面に対して4KVの振幅を持った矩形波を印加している。
【0028】
[吸着動作]
上記したように、吸着ベルト13に電荷パターンを形成したら、支持部材18を回転させ底板19を上昇させる。また、これと前後して、吸着分離ユニット12を図中時計回りに回転させ、図3(a)の吸着ベルト13当接位置へ移動させる。このとき、従動ローラ13Bは、長穴15bの下端と当接している。底板19が上昇していくと、シート束の最上シートS1が従動ローラ13Bと当接する。さらに、底板19を上昇させ、従動ローラ13Bを押し上げていくと、長穴15bに案内されながら、従動ローラ13Bが上方へ移動していく。そして、従動ローラ13Bが、長穴15bの上端に当接するタイミングで不図示のシート検出手段がシート束の最上シートS1が、所定の位置にきたことを検知し、底板19の上昇が停止する。このとき、吸着ベルト13のシート束の上面と対向する部分が、シート束の最上シートS1と当接する。
【0029】
このように、吸着ベルト13が最上シートS1と当接すると、誘電体であるシートには吸着ベルト13の表面の電荷パターンにより形成される不平等電界により、Maxwellの応力が働き、シート束の最上シートS1が吸着ベルト13に吸着する。
【0030】
[分離・搬送動作]
図3(a)に示す状態にて所定時間待機し、吸着ベルト13にシートS1が吸着したら、吸着分離ユニット12の側板15を、図中反時計まわりに回動させる。すると、シート搬送方向下流側の帳架ローラである駆動ローラ13Aは、側板15とともにシート束2から離間する方向へ移動する。一方、シート搬送方向上流側の帳架ローラである従動ローラ13Bは、自重により、シート束2の上面から動かず、側板15に対して相対的にシート束方向へ移動する。これにより、吸着ベルト13は、従動ローラ13Bの回転中心を中心にして、揺動するような動きをとり、吸着ベルト13に吸着したシートが、吸着ベルト13の従動ローラ13Bに巻き回された部分を支点して湾曲する。その結果、吸着ベルト13に吸着したシートに復元力が働き、最上のシートS1のみを吸着ベルト13に吸着させ、2番目のシートS2をシートの復元力により分離させることができる。
【0031】
本実施形態においては、吸着分離ユニット12の回転中心をシート搬送方向上流側に設け、かつ、従動ローラ13Bを、側板15に対して上下方向に移動可能に支持しているので、図4に示すように、軸方向から見たときにおけるシート束2の上面と吸着ベルト13面との角度βを側板15の回転中心と駆動ローラ13Aの回転中心とを結んだ線とシート束2の上面との角度α(側板15の揺動角度)よりも大きくすることができる。このように、角度βを大きくできるので、より高い分離性を実現できる。
【0032】
側板15が、さらに図中反時計回りに回動すると、従動ローラ13Bが、長穴15bの下端に突き当る。このように、従動ローラ13Bが、長穴15bに突き当たった状態から、さらに側板15を回動させると、従動ローラ13Bも側板15とともに移動し、従動ローラ13Bが、シート束2の上面から離間し、図3(b)に示す状態で、側板15の回動が停止する。側板15の回動が停止したら、電磁クラッチを入れて、駆動ローラ13Aを回転駆動し、吸着ベルト13を無端移動させて、吸着ベルト13に吸着している最上シートS1を、搬送ローラ対45へ向けて搬送する。吸着ベルト13に静電吸着した最上シートS1の先端が、吸着ベルト13の駆動ローラ13Aの巻き回し部分に到達すると、曲率分離により吸着ベルト13から分離し、ガイド部材51に案内されながら、搬送ローラ45対へ向けて移動する。
【0033】
この吸着ベルト13によるシート搬送時は、図5に示すように、駆動ローラ13Aの回転中心から、吸着ベルト13のシート束最近接位置までの上下方向までの距離L1が、駆動ローラ13Aの回転中心から、シート束上面までの上下方向の距離L2よりも短くなっている。よって、吸着ベルト13に吸着している最上のシートS1を搬送しているときに、搬送力が、2番目のシートS2へ伝達されるのを抑制することができる。よって、2番目のシートS2が、搬送されることがない。
【0034】
搬送ローラ対45と吸着ベルト13との線速は同一にされており、搬送ローラ対45がタイミングを取って間欠駆動されているような場合は吸着ベルト13も間欠駆動されるように制御される。
【0035】
また、本実施形態においては、シート搬送方向下流側の帳架ローラを、駆動ローラとしたので、側板15に対して所定範囲可動するシート搬送方向下流側の帳架ローラを駆動ローラとする場合に比べて、駆動伝達機構の構成を簡易にすることができる。これにより、装置のコストアップを避けることができる。
【0036】
また、吸着ベルト13の帯電は、吸着ベルト13のシートの分離位置から、搬送ローラ対45の長さ分だけ行うようにして、それ以降は、帯電ローラ14で吸着ベルト13を除電するようにしてもよい。これによりシートは、搬送ローラ対45へ搬送された後は吸着ベルト13の影響を受けずに、搬送ローラ対45の搬送力のみによって搬送される。また、吸着ベルト13を除電することによって、2枚目のシートS2が、離間した吸着ベルト13に静電吸着するのを抑制することができる。
【0037】
ここで、周動する吸着ベルト13に交番電圧を印加することにより、帯電した吸着ベルト13の電荷を除電することができる原理を説明する。吸着ベルト13外周面に導電性ローラ等の帯電電極を接触させ直流電源により直流電圧を印加した場合、吸着ベルト13は印加される直流電圧がある電圧以下の電圧では帯電されない。この電圧を帯電開始電圧といい、その値V0は吸着ベルト13の厚さ、体積抵抗等により変化する。次に上記の帯電開始電圧V0をピーク値として持つような交番する電圧を帯電ローラ14に印加したところ、帯電している吸着ベルト13の表面電位がほぼ零Vに除電されることが確認されている。これは、印加電圧のピーク値を帯電開始電位V0とすることにより、この印加電圧では誘電体である吸着ベルト13を帯電させる能力はないが、吸着ベルト13に帯電している空間電荷には移動させる力が働き、除電できることを意味する。また、交互に交番する印加電圧を用いることから、吸着ベルト13が(+),(−)のどちらに帯電していても除電効果がある。しかし、帯電開始電圧以下の印加電圧では、除電不足が発生し、帯電開始電圧以上では、印加周波数(120Hz,v/f=1mm周期)の帯電が生じ、零Vに除電できなかった。したがって、電源16の交番電圧はピーク値が吸着ベルト13に対する帯電開始電圧になるように制御すればよいことになる。
【0038】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0039】
[変形例1]
上述では、給紙信号が入ると、シート束から離間している吸着ベルト13を帯電させる帯電動作、離間位置にある吸着ベルト13をシート束の最上にシートS1に接触させて、最上シートS1を吸着ベルト13に吸着させる吸着動作を行った後、分離・搬送動作を行うため、ファーストプリントが遅くなってしまうという問題がある。この変形例1では、待機状態のとき、図3(a)に示すように、帯電した吸着ベルト13をシート束の最上シートS1に当接させて、最上シートS1を吸着ベルト13に吸着させて、待機させるものである。吸着ベルト13の電荷は計算上、時間が経っても消失することはないため、待機状態が長くても、最上シートS1は、吸着ベルト13に吸着し続けることができる。これにより、給紙信号が入ってから、帯電動作および吸着動作を行うものに比べて、ファーストプリントを早くすることができる。しかし、例えば高温高湿環境にてシートの抵抗が非常に小さくなった場合に、ベルト上の帯電電荷が非常に小さい抵抗のシートと接触することで消失してしまうことがある。このように、吸着ベルト13の電荷が消失してしまうと、シート束の最上シートS1を、分離搬送することができず、搬送不良が生じてしまう。
【0040】
したがって、この変形例1においては、所定時間印刷ジョブが無いときに、所定のタイミングで帯電動作を行って、吸着ベルト13の電荷が消失しないようにしている。
【0041】
図6は、変形例1のシート搬送装置の概略構成図である。
この変形例1には、吸着分離ユニット12よりもシート搬送方向下流側に、最上シートS1の搬送を阻止する搬送阻止手段たる搬送阻止部材50が、設けられている。この搬送阻止部材50は、シート束2の最上シートS1と対向する対向面が、摩擦係数の高い部材で構成されており、吸着ベルト13の帯電動作のとき、搬送阻止部材50を当接させている。この搬送阻止部材50を設ける理由は、この変形例1においては、所定時間印刷ジョブが無いときに、所定のタイミングで帯電動作を行っているが、このとき、吸着ベルト13に電荷が残っており、最上シートS1が吸着ベルト13から分離しないことがある。このような状態で、帯電動作を行うと、最上シートS1が搬送されてしまう。よって、帯電動作時に、上記搬送阻止部材50で、最上シートS1が搬送されるのを阻止することで、帯電動作を行うときに、最上シートS1が吸着ベルト13から離間していなくても、最上シートS1が搬送されてしまうことがない。また、最上シートS1を搬送するときは、搬送阻止部材50を、最上シートS1から離間させる。これにより、最上シートS1を搬送させることができる。
【0042】
図7は、変形例1の帯電制御フローである。
図に示すように、所定時間経過したら(S1のYES)、不図示の制御手段たる制御部は、搬送阻止部材50を下降させて、シート束2の最上シートS1と接触させる(S2)。搬送阻止部材50は、シート束2に対して所定の押圧力で押圧している。次に、側板15を回動させて、図3(b)に示すような吸着ベルト13がシート束2から離間する位置へ移動させる(S3)。吸着ベルト13が図3(b)に示す離間位置まで移動したら、上述した帯電動作を行う(S4)。すなわち、吸着ベルト13を回転駆動させながら、吸着ベルト13に交番する電荷パターンを形成する。このとき、吸着ベルト13に最上シートS1が吸着していても、最上シートS1のシート搬送方向上流側は、搬送阻止部材50により、押さえられているので、吸着ベルト13の搬送力により、搬送されることはなく、吸着ベルト13から剥離して、シート束へ落下する。帯電動作が終了したら、上述した吸着動作を行う(S5)。すなわち、吸着ベルト13がシート束2の最上シートS1に接触する接触位置へ移動させ、吸着ベルト13をシート束2の最上シートS1と接触させて、吸着ベルト13に最上シートS1を吸着させるのである。そして、搬送阻止部材50を上昇(S6)させて、搬送阻止部材50を最上のシートS1から分離させる。
【0043】
このように、変形例1では、所定の間隔で、吸着ベルト13を帯電させることにより、給紙時に吸着ベルト13の帯電不足により、最上シートS1が吸着ベルト13から分離するのを抑制することができ、搬送不良が生じるのを抑制することができる。また、吸着ベルト13に最上シートS1を吸着させた状態で、待機させているので、給紙信号が入力されたとき、分離・搬送動作のみ行えばよいので、ファーストプリントを早くすることができる。
【0044】
また、上述では、通常時は、搬送阻止部材50をシート束2から離間させておき、帯電動作のときに、搬送阻止部材50をシート束2の最上シートS1に当接させているが、通常時は、搬送阻止部材50をシート束の最上シートS1に当接させ、給紙時に、シート束から搬送阻止部材50を離間させるようにしてもよい。
【0045】
また、搬送阻止手段は、上述の構成に限るものではない。例えば、吸着分離ユニット12よりもシート搬送方向下流側に、搬送阻止手段として壁部を設けて、吸着ベルト13によって搬送される最上シートS1の先端がこの壁部に突き当たることで、最上シートS1の搬送を阻止してもよい。帯電動作時に、この壁部を突き当たり位置に移動させる。帯電動作時に吸着ベルト13に最上シートS1が吸着しており、帯電動作時の吸着ベルト13の回転駆動により、最上シートS1が吸着ベルト13から搬送力を受けても、最上シートS1の先端が、壁部に突き当り、最上シートS1が搬送されるのを阻止することができる。このように、壁部でシートの搬送を阻止する場合は、シートが折れ曲がるなどの不具合が生じないように、シートの先端が壁部に突き当たると、シートが吸着ベルト13から剥離するよう、壁部の形状を工夫する必要がある。給紙時においては、壁部を当接しない位置へ移動させることで、給紙時において、吸着ベルト13に吸着した最上シートS1は、壁部に突き当たることなく、搬送ローラ対45へ向けて搬送される。また、壁部を動かずに、帯電動作時は、吸着ベルト13を、吸着ベルト13に吸着した最上シートS1が壁部に突き当たる位置へ移動させ、給紙時は、吸着ベルト13を、吸着ベルト13に吸着した最上シートS1が、壁部に突き当たらない位置へ移動させるようにしてもよい。具体的には、帯電動作時と、分離・搬送動作時とで、吸着分離ユニット12の揺動角度を異ならせる。
【0046】
また、吸着ベルト13に最上シートS1が吸着しているか否かを検知する検知手段を設け、所定時間経過後、吸着ベルト13をシート束から離間させ、このとき、最上シートS1が吸着ベルト13に吸着しているか否かを検知手段で検知する。検知の結果、最上シートS1が吸着ベルトに吸着していないときは、帯電動作を行い、吸着しているときは、帯電動作を行わずに、吸着ベルト13を接触位置に戻すようにしてもよい。検知手段としては、変位センサなどを用いることができる。
【0047】
[変形例2]
図8は、変形例2のシート搬送装置1の要部構成図であり、図8に示すように、この変形例2においては、吸着ベルト13表面をクリーニングするクリーニング手段たるクリーニングローラ17を有している。クリーニングローラ17の軸は、ホルダ20の一端に回転自在に支持されており、このホルダ20の他端には、従動ローラ13Bの軸が回転自在に支持されている。また、クリーニングローラ17の軸のホルダ20取り付け箇所よりも端部側に、スプリング21の一端を取り付け、従動ローラ13Bの軸のホルダ20取り付け箇所よりも端部側に、スプリング21の他端を取り付けて、クリーニングローラ17を従動ローラ13B側に付勢している。このように、クリーニングローラ17が、ホルダ20を介して、側板15に回動自在に支持されている従動ローラ13Bに取り付けられることで、吸着分離ユニット12が回動すると、クリーニングローラ17・スプリング21が従動ローラ13Bと共に移動する。これにより、吸着ベルト13が離間位置にあるときと、接触位置にあるときとで、クリーニングローラ17の当接圧が変化することがない。また、図8では、スプリング21の他端を従動ローラ13Bに取り付けているが、スプリング21の他端を駆動ローラ13Aに取り付けてもよい。このように構成しても、クリーニングローラ17の吸着ベルト13に対する当接圧を一定に維持することができる。
【0048】
吸着ベルト13に付着した紙粉などの付着物は、所定の当接圧で吸着ベルト13の従動ローラ13Bの巻き回し部分に当接するクリーニングローラ17に付着し、除去される。
【0049】
なお、上述では、クリーニング手段をローラとしたが、マイラ等のブレードを押し当てる構成であってもよい。ブレードをクリーニング手段として用いた場合は、吸着ベルト13に付着した紙粉などを、ブレードで掻き落としして除去する。
【0050】
また、図9に示すように、クリーニングローラ17を清浄化する清浄化手段24を設けてもよい。清浄化手段24として、スポンジなどの複数のセル(空孔)が設けられた部材を用いる。クリーニングローラ17に付着した紙粉などの部材は、セルなどに付着し、クリーニングローラ17から除去される。
【0051】
また、図9に示すように、吸着ベルト表面の汚れを検知する汚れ検知手段25を備えてもよい。汚れ検知手段25は例えば表面電位センサを用いることができる。クリーニングローラ17のクリーニング能力が落ち、吸着ベルト13の表面の汚れを十分に除去できなくなると、吸着ベルト13の電位が落ちてしまう。よって、吸着ベルト13の表面電位をモニタリングすることで、クリーニング機能のモニタリングができる。このように、汚れ検知手段で、クリーニング機能をモニタリングすることで、清浄化手段の交換時期予測や、クリーニング動作時間の制御を行うことができる。
【0052】
[変形例3]
図13は、変形例3のシート搬送装置1の要部構成図である。
実施形態のシート搬送装置では、吸着分離ユニット12のシート分離動作時、従動ローラ13Bの自重により従動ローラ13Bの軸を長穴15bの上端から下端へ移動させるよう構成している。しかし、部品不良や経時変化により、従動ローラ13Bの軸が長穴15bに対してスムーズに移動しない場合がある。その結果、シート分離動作時に従動ローラ13Bが、シート束表面を叩いて、その衝撃で最上のシートS1が吸着ベルト13から離間するおそれがある。また、従動ローラ13Bの軸が、長穴15bの下端まで移動せず、シート分離動作終了時のシート束2の上面と吸着ベルト13面との角度が、所定角度以下となり、2番目のシートS2が、吸着ベルト13から離間しないおそれがあった。そこで、この変形例3においては、図13に示すように、従動ローラ13Bを、上記シート束方向に付勢する付勢部材たる圧縮コイルバネ27を設けている。
【0053】
図に示すように、側板15の長穴15bが形成された箇所の上方にバネ受け15cが設けられ、圧縮コイルバネ27の一端が取り付けられている。圧縮コイルバネ27の他端は、側板15の外側に設けられた従動ローラ13Bの軸受131Bに取り付けられ、従動ローラ13Bをシート束方向に向けて付勢している。
【0054】
図13の(a)に示すように、表面が帯電した吸着ベルト13のシート束の上面と対向する部分が、シート束の最上シートS1と当接した状態から、側板15を、回動させて、吸着ベルト13をシート束から離間する方向へ移動させると、従動ローラ13Bは、圧縮コイルバネ27の付勢力により、シート束2の上面から動かず、側板15に対して相対的にシート束方向へ移動する。このように、圧縮コイルバネ27で従動ローラ13Bをシート束方向に付勢しているので、吸着ベルト13をシート束から離間させるときに、確実に従動ローラ13Bをシート束の上面に当接させておくことができる。その結果、吸着ベルト13に吸着したシートが、吸着ベルト13の従動ローラ13Bに巻き回された部分を支点して湾曲させることができ、最上のシートS1のみを吸着ベルト13に吸着させ、2番目のシートS2をシートの復元力により確実に分離させることができる。
【0055】
そして、従動ローラ13Bの軸が、長穴15bの下端に突き当ったら従動ローラ13Bが、シート束2の上面から離間し、図13(b)に示す状態で、側板15の回動が停止する。この変形例3においては、従動ローラ13Bを、圧縮コイルバネ27で付勢しているので、従動ローラ13Bの軸を確実に長穴15bの下端に突き当てることができる。これにより、従動ローラ13Bが、シート束2の上面から離間したときのシート束2の上面と吸着ベルト13面との角度を、確実に所定角度にでき、2番目のシートS2を、確実に吸着ベルト13から離間させることができる。
【0056】
また、従動ローラ13Bの軸受131Bを付勢することで、従動ローラ13Bを直接シート束方向に付勢できるので、従動ローラ13Bに付勢力を効率的に付与することができる。また付勢部材として、圧縮コイルバネ27を用いることで、簡単な構成で従動ローラ13Bをシート束方向へ付勢することができ、装置のコストを抑えることができる。
【0057】
また、図14に示すように、駆動ローラ13Aの軸受131Aと、従動ローラ13Bの軸受131Bとを接続する接続部材28を設け、圧縮コイルバネ27は、この接続部材28を付勢するよう構成してもよい。このように、接続部材28を付勢することによって、付勢力の作用点の位置を自在に選択することができ、部品設計の自由度を得ることができる。例えば、圧縮コイルバネ27の変形量を少なくしたい場合は、付勢力の作用点(圧縮コイルバネ27と接続部材28とが当接する箇所)を、駆動ローラ13A側にすればよい。また、圧縮コイルバネ27の変形量を多くしたい場合は、付勢力の作用点(圧縮コイルバネ27と接続部材28とが当接する箇所)を、従動ローラ13B側にすればよい。また、接続部材28を従動ローラ13Bよりも回転軸15a側に延設することによって、圧縮コイルバネ27の変形量をさらに多くすることもできる。
【0058】
また、図15に示すように、付勢部材として、ねじりコイルバネ29を用いてもよい。
図15に示すように、ねじりコイルバネ29は、駆動ローラ13Aの軸に挿入され、一端が側板15に取り付けられ、他端が、接続部材28に取り付けられて、接続部材28をシート束方向に付勢している。
従動ローラ13Bは、駆動ローラ13Aの回転中心を中心にして揺動するので、従動ローラ13Bの揺動角度が大きい場合、圧縮コイルバネ27を用いると、コイルバネが湾曲して、従動ローラ13Bを回転軸15a側へ引っ張る力が生じてしまう。その結果、従動ローラ13Bの軸が長穴15bをスムーズに移動しなくなるおそれがある。しかしながら、ねじりコイルバネ29とすることで、従動ローラ13Bに駆動ローラ13Aの回転中心を中心として揺動する方向の付勢力を付与でき、回動角度が大きくても、従動ローラ13Bの軸が、スムーズに長穴15bを移動することができる。
【0059】
以上、本実施形態のシート搬送装置1によれば、積載されたシート束の上面に対向配置された吸着ベルト13と、吸着ベルト13表面を帯電させる帯電手段たる帯電ローラ14とを備えた吸着分離ユニット12を有している。また、吸着分離ユニット12を揺動させて、吸着ベルト13をシート束に対して接離させる接離手段(側板15を回動自在に支持する回転軸15aと、駆動手段とで構成)を備えている。そして、吸着分離ユニット12は、吸着ベルト13を2つの帳架ローラ(駆動ローラ13Aと従動ローラ13B)で帳架し、2つの帳架ローラのうち、シート搬送方向上流側の帳架ローラである従動ローラ13Bを、シート束の上面に対して所定範囲垂直方向に移動可能に支持している。また、吸着分離ユニット12の揺動の支点を、従動ローラ13Bよりも、シート搬送方向上流側に設けている。これにより、シートの復元力を利用した分離を行えることができ、良好な分離性能を得ることができる。また、吸着分離ユニット12を揺動させるだけで、吸着ベルト13をシート束2の上面から離間させることができる。
【0060】
また、従動ローラ13Bを、吸着分離ユニット12の側板15に設けられた長穴15bに回転自在に支持することによって、簡単な構成で、従動ローラ13Bをシート束2の上面に対して所定範囲垂直方向に移動可能に支持することができる。
【0061】
また、図4に示すように、吸着ベルト13がシート束2に対して離間位置にあるときの吸着ベルト13のシート束2と接触する接触面とシート束2の上面とがなす角度βを、接離手段の吸着分離ユニット12の揺動角度αよりも大きくしたことで、吸着ベルト13の分離性能を高めることができる。
【0062】
また、図5に示すように、吸着ベルト13がシート束2に対して離間位置にあるときにおける駆動ローラ13Aの回転中心から、吸着ベルト13のシート束最近接位置までの上下方向の距離L1が、駆動ローラ13Aの回転中心から、シート束上面までの上下方向の距離L2よりも短くしたので、吸着ベルト13に吸着している最上のシートS1を搬送しているときに、搬送力が、2番目のシートS2へ伝達されるのを抑制することができる。
【0063】
また、シート搬送方向下流側の帳架ローラを、駆動ローラとしたので、側板15に対して所定範囲可動するシート搬送方向下流側の帳架ローラを駆動ローラとする場合に比べて、駆動伝達機構の構成を簡易にすることができる。これにより、装置のコストアップを避けることができる。
【0064】
また、本実施形態においては、待機状態のとき、帯電させた吸着ベルト13をシート束の上面に当接させるよう構成している。これにより、ファーストプリントにおいては、分離・搬送動作のみとなり、ファーストプリントを早く行うことができる。また、所定時間経過したら、吸着ベルトの帯電動作を行うので、吸着ベルトの帯電不足が生じるのを抑制し、搬送不良が生じるのを抑制することができる。
【0065】
また、吸着ベルト13の帯電動作時に、吸着ベルト13に吸着したシートの搬送を阻止する搬送阻止手段たる搬送阻止部材50を設けた。これにより、帯電動作時に、吸着ベルト13に吸着したシートの搬送が、搬送阻止部材50により阻止されるので、吸着ベルト13に吸着したシートが、帯電動作時に搬送されてしまうのを抑制することができる。
【0066】
また、吸着ベルトの表面をクリーニングするクリーニング手段たるクリーニングローラ17を設けたので、吸着ベルト13の汚れを抑制することができ、経時にわたり、吸着ベルト13を所定の電位に帯電させることができる。
【0067】
また、クリーニングローラ17を清浄化する清浄化手段24を設けたことで、経時にわたり、クリーニングローラ17で吸着ベルト表面を良好にクリーニングすることができる。
【0068】
また、クリーニングローラ17の軸とクリーニングローラ17と吸着ベルト13を介して対向する帳架ローラである従動ローラ13Bの軸との軸間距離が一定となるよう構成したことで、吸着分離ユニット12が揺動しても、クリーニングローラ17の吸着ベルト13に対する当接圧が変動することがなく、良好なクリーニング性を維持することができる。
【0069】
また、従動ローラ13Bを、シート束方向に付勢する付勢部材を設けることで、吸着ベルト13をシート束から離間する方向へ移動させるとき、従動ローラ13Bを、付勢部材の付勢力により、シート束2の上面に当接させておくことができる。これにより、従動ローラ13Bの自重でシート束2の上面に当接させておくものに比べて、確実にシート束2の上面に当接させておくことができる。その結果、吸着ベルト13をシート束から離間させる分離動作のときに、従動ローラ13Bが、シート束表面を叩いてしまうのを抑制することができ、最上のシートS1が吸着ベルト13から離間するのを抑制することができる。
【0070】
また、付勢部材は、従動ローラ13Bの軸受131Bを付勢するよう構成することで、効率的に従動ローラ13Bに付勢部材の付勢力を作用させることができる。
【0071】
また、従動ローラ13Bの軸受131Bと、駆動ローラ13Aの軸受131Aとを接続する接続部材28を設け、付勢部材は、接続部材28を付勢するよう構成してもよい。かかる構成によれば、付勢部材の作用点の位置を自在に選択することができ、部品設計の自由度が得られる。
【0072】
また、付勢部材として、圧縮コイルバネ27を用いることで、簡単な構成で従動ローラ13Bをシート束方向へ付勢することができ、装置のコストを抑えることができる。
【0073】
また、付勢部材として、ねじりコイルバネ29を用いてもよい。ねじりコイルバネ29を用いることで、従動ローラ13Bの駆動ローラ13Aの回転中心を中心とする回動角度が大きくても、その回動角度方向に従動ローラ13Bを付勢することができる。これにより、付勢部材の付勢力により従動ローラの軸がスムーズに長穴内を移動することができる。
【符号の説明】
【0074】
1,100:シート搬送装置
2:シート束
11:シート収容部
12,201:吸着分離ユニット
13,200:吸着ベルト
13A:駆動ローラ
13B:従動ローラ
14,205:帯電ローラ
15:側板
15a:回転軸
15b:長穴
16:交流電源
17:クリーニングローラ
18:支持部材
19:底板
20:ホルダ
21:スプリング
24:清浄化手段
25:汚れ検知手段
27:圧縮コイルバネ
28:接続部材
29:ねじりコイルバネ
30:画像形成部
50:搬送阻止部材
204:テンションローラ
206:コロ
S1:最上シート
S2:2番目のシート
【先行技術文献】
【特許文献】
【0075】
【特許文献1】特開平5−139548号公報
【特許文献2】特開2003−237969号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積載されたシート束の上面に対向配置された吸着ベルトと、該吸着ベルト表面を帯電させる帯電手段とを備えた吸着分離ユニットと、該吸着分離ユニットを揺動させて、上記吸着ベルトを上記シート束に対して接離させる接離手段とを備えたシート搬送装置において、
上記吸着分離ユニットは、上記吸着ベルトを2つの帳架ローラで帳架し、2つの帳架ローラのうち、シート搬送方向上流側の帳架ローラを、シート束の上面に対して所定範囲垂直方向に移動可能に支持しており、
上記吸着分離ユニットの揺動の支点を、上記シート搬送方向上流側の帳架ローラよりも、シート搬送方向上流側に設けたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
請求項1のシート搬送装置において、
上記シート搬送方向上流側の帳架ローラを、吸着分離ユニットの側板に設けられた長穴に回転自在に支持したことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項3】
請求項1または2のシート搬送装置において、
吸着ベルトが上記シート束に対して離間位置にあるときの吸着ベルトのシート束と接触する接触面とシート束の上面とがなす角度を、上記接離手段の上記吸着分離ユニット揺動角度よりも大きくしたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれかのシート搬送装置において、
吸着ベルトが上記シート束に対して離間位置にあるときにおける上記シート搬送方向下流側の帳架ローラの回転中心から、吸着ベルトのシート束最近接位置までの上下方向の距離が、吸着ベルトが上記シート束に対して離間位置にあるときにおける上記シート搬送方向下流側の帳架ローラの回転中心から、シート束上面までの上下方向の距離よりも短くしたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれかのシート搬送装置において、
上記シート搬送方向下流側の帳架ローラを、駆動力が伝達される駆動ローラとしたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれかのシート搬送装置において、
待機状態のとき、帯電させた吸着ベルトを上記シート束の上面に当接させるよう構成し、上記待機状態が所定期間経過したら、上記吸着ベルトの帯電動作を行うよう制御する制御手段を備えたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項7】
請求項6のシート搬送装置において、
上記吸着ベルトの帯電動作時に、上記吸着ベルトに吸着したシートの搬送を阻止する搬送阻止手段を備えたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項8】
請求項1乃至7いずれかのシート搬送装置において、
上記吸着ベルトの表面をクリーニングするクリーニング手段を設けたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項9】
請求項8シート搬送装置において、
クリーニング手段を清浄化する清浄化手段を設けたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項10】
請求項8または9のシート搬送装置において、
上記クリーニング手段は、吸着ベルトに当接し、いずれかの帳架ローラと吸着ベルトを介して対向配置されたクリーニングローラであり、該クリーニングローラの軸と上記クリーニングローラと吸着ベルトを介して対向する帳架ローラの軸との軸間距離が一定となるよう構成したことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項11】
請求項1乃至10いずれかのシート搬送装置において、
上記シート搬送方向上流側の帳架ローラを、上記シート束方向に付勢する付勢部材を設けたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項12】
請求項11のシート搬送装置において、
上記付勢部材は、上記シート搬送方向上流側の帳架ローラの軸受を付勢するよう構成したことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項13】
請求項11のシート搬送装置において、
上記シート搬送方向上流側の帳架ローラの軸受と、上記シート搬送方向下流側の帳架ローラの軸受とを接続する接続部材を設け、
上記付勢部材は、上記接続部材を付勢するよう構成したことを特徴するシート搬送装置。
【請求項14】
請求項11乃至13いずれかのシート搬送装置において、
上記付勢部材として、圧縮コイルバネを用いたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項15】
請求項11乃至13いずれかのシート搬送装置において、
上記付勢部材として、ねじりコイルバネを用いたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項16】
シートに画像を形成する画像形成手段と、積載されたシート束から最上のシートを分離し、上記画像形成手段へシートを搬送するシート搬送手段とを備えた画像形成装置において、
上記シート搬送手段として、請求項1乃至15いずれかのシート搬送装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
積載されたシート束の上面に対向配置された吸着ベルトと、該吸着ベルト表面を帯電させる帯電手段とを備えた吸着分離ユニットと、該吸着分離ユニットを揺動させて、上記吸着ベルトを上記シート束に対して接離させる接離手段とを備えたシート搬送装置において、
上記吸着分離ユニットは、上記吸着ベルトを2つの帳架ローラで帳架し、2つの帳架ローラのうち、シート搬送方向上流側の帳架ローラを、シート束の上面に対して所定範囲垂直方向に移動可能に支持しており、
上記吸着分離ユニットの揺動の支点を、上記シート搬送方向上流側の帳架ローラよりも、シート搬送方向上流側に設けたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
請求項1のシート搬送装置において、
上記シート搬送方向上流側の帳架ローラを、吸着分離ユニットの側板に設けられた長穴に回転自在に支持したことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項3】
請求項1または2のシート搬送装置において、
吸着ベルトが上記シート束に対して離間位置にあるときの吸着ベルトのシート束と接触する接触面とシート束の上面とがなす角度を、上記接離手段の上記吸着分離ユニット揺動角度よりも大きくしたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれかのシート搬送装置において、
吸着ベルトが上記シート束に対して離間位置にあるときにおける上記シート搬送方向下流側の帳架ローラの回転中心から、吸着ベルトのシート束最近接位置までの上下方向の距離が、吸着ベルトが上記シート束に対して離間位置にあるときにおける上記シート搬送方向下流側の帳架ローラの回転中心から、シート束上面までの上下方向の距離よりも短くしたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれかのシート搬送装置において、
上記シート搬送方向下流側の帳架ローラを、駆動力が伝達される駆動ローラとしたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれかのシート搬送装置において、
待機状態のとき、帯電させた吸着ベルトを上記シート束の上面に当接させるよう構成し、上記待機状態が所定期間経過したら、上記吸着ベルトの帯電動作を行うよう制御する制御手段を備えたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項7】
請求項6のシート搬送装置において、
上記吸着ベルトの帯電動作時に、上記吸着ベルトに吸着したシートの搬送を阻止する搬送阻止手段を備えたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項8】
請求項1乃至7いずれかのシート搬送装置において、
上記吸着ベルトの表面をクリーニングするクリーニング手段を設けたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項9】
請求項8シート搬送装置において、
クリーニング手段を清浄化する清浄化手段を設けたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項10】
請求項8または9のシート搬送装置において、
上記クリーニング手段は、吸着ベルトに当接し、いずれかの帳架ローラと吸着ベルトを介して対向配置されたクリーニングローラであり、該クリーニングローラの軸と上記クリーニングローラと吸着ベルトを介して対向する帳架ローラの軸との軸間距離が一定となるよう構成したことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項11】
請求項1乃至10いずれかのシート搬送装置において、
上記シート搬送方向上流側の帳架ローラを、上記シート束方向に付勢する付勢部材を設けたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項12】
請求項11のシート搬送装置において、
上記付勢部材は、上記シート搬送方向上流側の帳架ローラの軸受を付勢するよう構成したことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項13】
請求項11のシート搬送装置において、
上記シート搬送方向上流側の帳架ローラの軸受と、上記シート搬送方向下流側の帳架ローラの軸受とを接続する接続部材を設け、
上記付勢部材は、上記接続部材を付勢するよう構成したことを特徴するシート搬送装置。
【請求項14】
請求項11乃至13いずれかのシート搬送装置において、
上記付勢部材として、圧縮コイルバネを用いたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項15】
請求項11乃至13いずれかのシート搬送装置において、
上記付勢部材として、ねじりコイルバネを用いたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項16】
シートに画像を形成する画像形成手段と、積載されたシート束から最上のシートを分離し、上記画像形成手段へシートを搬送するシート搬送手段とを備えた画像形成装置において、
上記シート搬送手段として、請求項1乃至15いずれかのシート搬送装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−190103(P2011−190103A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109191(P2010−109191)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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