説明

シート搬送装置及び画像形成装置

【課題】シートが湾曲したシート搬送路を通過する際、シートと内側ガイド部材の間に発生する衝撃音を低減することのできるシート搬送装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】中間搬送ローラ対70を、シート搬送方向における給送ローラ60及び給紙コロ62の幅方向の両側に対応する位置に配置する。そして、中間搬送ローラ71に中間搬送コロ73を、シートを搬送する方向がシート搬送路の幅方向中央側となるように傾斜して当接することにより、中間搬送ローラ対70によりシートを引き抜きながら搬送する際、シートを幅方向に波打たせ、湾曲したシート搬送路を形成する対向するガイド部材の内側のガイド部材に接触させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート搬送装置及び画像形成装置に関し、特にシートが湾曲したシート搬送路を通過する際、シートとシート搬送路を形成する内側ガイド部材の間に生じる衝撃音を低減するための構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を利用して記録紙等のシートに画像を形成する画像形成装置においては、感光体ドラム上あるいは転写体上に担持されているトナー像(可視像)を、給紙カセットより搬送された普通紙等のシートに転写して画像を得るようになっている。このような従来の画像形成装置においては、給紙カセット内からシートを給送する給送動作中や、この後のシートの搬送中にシート先端方向がシート搬送方向に対して若干回転する、すなわちシートが斜行する場合がある。そして、このようにシートが斜行すると、この後、転写、定着工程をへてシート上に形成される画像が、シートに対して曲がった状態となってしまう。
【0003】
そこで、従来の画像形成装置においては、レジストローラを設け、このレジストローラによってシートの斜行を補正することにより、画像形成位置精度の向上を図っている。ところで、このような従来の画像形成装置においては、対向する外側ガイド部材及び内側ガイド部材により形成され湾曲したシート搬送路を備えている。そして、このシート搬送路に、給送ローラから給送されたシートを搬送する中間搬送ローラ及びレジストローラを配置したものがある(特許文献1参照)。
【0004】
ここで、レジストローラよりも中間搬送ローラのシート搬送速度の方が若干遅く設定されている場合には、レジストローラと中間搬送ローラの両方にシートが挟持されている間、シートは内側ガイドに押し付けられながら、引っ張られた状態で搬送される。この結果、シートの搬送抵抗が大きくなり、レジストローラでのシート搬送精度が悪化してしまう。
【0005】
そこで、従来は、中間搬送ローラのシート搬送速度が、レジストローラのシート搬送速度に対して若干速く設定されている。このような2つのローラの速度関係においては、レジストローラと中間搬送ローラの両方にシートが挟持されている間、シートは内側ガイド部材に押し付けられることなく、外側ガイド部材の方向に撓んだ状態で搬送される。そして、このように内側ガイド部材に押し付けられることなく搬送されることにより、シートへの搬送抵抗が軽減され、レジストローラによるシート搬送精度を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平07−117899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、このような従来の画像形成装置において、既述したように、レジストローラと中間搬送ローラのシート搬送速度差により、シートは外側ガイドの方向に撓みながら搬送される。ここで、このように搬送される場合、シート後端が中間搬送ローラのニップを通過すると、通過した瞬間から、シートはレジストローラだけで搬送されるようになる。しかし、このようにシートがレジストローラだけで搬送されるようになると、外側ガイド部材の方向に撓んだ状態のシートは内側ガイドに急激に寄せられて内側ガイド部材にぶつかり、これにより衝撃音が発生する。
【0008】
このように、レジストローラでのシート搬送精度を高めるため、レジストローラよりも中間搬送ローラのシート搬送速度を若干速く設定した場合、シート後端が中間搬送ローラのニップを通過した後、シートが内側ガイド部材とぶつかり、衝撃音が発生する。
【0009】
そこで、本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、シートが湾曲したシート搬送路を通過する際、シートと内側ガイド部材の間に発生する衝撃音を低減することのできるシート搬送装置及び画像形成装置を提供することを目的とするである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、シートを搬送する回転体を有する第1シート搬送部と、前記第1シート搬送部の下流に配置され、シート搬送方向と直交する幅方向に設けられた複数の回転体対を有し、前記複数の回転体対により前記第1シート搬送部からシートを搬送する第2シート搬送部と、対向する外側ガイド部材及び内側ガイド部材により形成され、前記第2シート搬送部により搬送されるシートを下流側に案内する湾曲したシート搬送路と、を備え、前記第2シート搬送部によりシートを搬送する際、前記第2シート搬送部の複数の回転体対を、シート搬送方向における前記第1シート搬送部の回転体の幅方向の両側に対応する位置に配置し、かつ前記第2シート搬送部の複数の回転体対によるシートを搬送する方向を前記シート搬送路の幅方向中央側となるように構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のように、シートを搬送する際、シートを幅方向に波打たせて、湾曲したシート搬送路を形成する内側ガイド部材に接触させることができ、シートがシート搬送路を通過する際、シートと内側ガイド部材の間に発生する衝撃音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係るシート搬送装置を備えた画像形成装置の一例としてのレーザプリンタの概略構成を示す図。
【図2】上記レーザプリンタに設けられたシート給送装置の構成を説明する図。
【図3】上記シート給送装置のシート給送動作を説明する図。
【図4】上記シート搬送装置に設けられた中間搬送ローラ対の構成を説明する第1の図。
【図5】上記中間搬送ローラ対の構成を説明する第2の図。
【図6】シート搬送時、シートが波打つ様子を示す図。
【図7】シートの波打ち状態を示す第1の図。
【図8】シートの波打ち状態を示す第2の図。
【図9】上記中間搬送ローラ対の他の構成を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の一例としてのレーザプリンタの概略構成を示す図である。図1において、1はレーザプリンタ、1Aはレーザプリンタ本体(以下、装置本体という)、1Bは画像形成部であり、この装置本体1Aの下部に、画像形成部1Bにシートを給送するシート給送装置1Cが設けられている。さらに、装置本体1Aには、シート給送装置1Cから給送されたシートを画像形成部1Bに搬送するシート搬送装置1Dが設けられている。
【0014】
画像形成部1Bは、像担持体としての感光体ドラム3を有するカートリッジユニット2と、感光体ドラム3を露光するレーザスキャナ5を備えている。そして、画像形成の際には、レーザスキャナ5により感光体ドラム3を露光して感光体ドラム表面に潜像を形成し、この後、この潜像を現像することにより、感光体ドラム表面にトナー画像を形成するようにしている。
【0015】
また、シート給送装置1Cは、装置本体1Aに着脱可能に設けられたシート積載部である給紙カセット50と、この給紙カセット50の上方に設けられ、給紙カセット50に収納されたシートSを送り出す給送ローラ60とを備えている。なお、給紙カセット50にはシートSを給送ローラ側に押し付ける中板51が昇降可能に設けられており、シート給送時、シートSは中板51の下方に設けられた中板加圧バネ54により、給送ローラ60に押し付けられる。さらに、シート給送装置1Cは、給送ローラ60に圧接し、給送ローラ60により送り出されたシートSを分離する摩擦分離部材である分離パッド40を備えている。
【0016】
図2は、シート給送装置1Cの構成を説明する図であり、中板51は、中板回動穴52と、給紙カセット50に設けられた中板回動軸53によって上下方向に回動可能(昇降可能)に給紙カセット50に支持されている。また、給送ローラ60は、不図示の駆動手段によって回転駆動されるローラ軸61に取り付けられており、給送ローラ60の両側には給紙コロ62がローラ軸61に回転自在に取り付けられている。なお、給紙コロ62には駆動力は伝達されていない。
【0017】
図2において、41は分離パッド40を保持する分離パッドホルダであり、分離パッドホルダ41は分離パッドホルダ回動軸41aが給紙カセット50に設けられた分離パッドホルダ軸受け55によって回動自在に支持されている。そして、分離パッド40は、分離パッドホルダ41を介して分離パッドバネ42によって給送ローラ60又は給紙コロ62に圧接している。なお、一般的に給送ローラ60、分離パッド55、中間搬送ローラ71は高摩擦部材(ゴム部材等)から形成される。
【0018】
ところで、給送ローラ60の外形は円形ではなく、周面の一部が切り欠かれた扇型の形状を有している。一方、給送ローラ60の幅方向の両側に同軸上に配置された給紙コロ62は円形を有しており、給紙コロ62の外径は、給送ローラ60の円弧部外径よりも、若干小さく形成されている。ここで、中板51が上昇すると、中板51に積載された最上位のシートSaは、まず給紙コロ62に当接する。そして、この後、ローラ軸61と一体に給送ローラ60が回転すると、図3の(a)に示すように、給送ローラ60の凸部60aが最上位のシートSaに接触し、この後、給送ローラ60が矢印の方向に回転することでシートSaが送り出される。
【0019】
次に、図3の(b)に示すように、凸部60aが分離パッド40に対向する位置に達すると、分離パッド40により、最上位のシートSaと重なって繰り出されたシートSが分離される。この後、凸部60aが分離パッド40に対向しない位置に移動すると、最上位のシートSaに給紙コロ62が当接するようになり、搬送されるシートSaに給送ローラ60による摩擦力が及ばなくなる。このとき、シートSaは分離パッド40と給紙コロ62に挟まれている。なお、この後、給送ローラ60は、次のシートの給送に備え、シートSaが中間搬送ローラ対70まで搬送されたタイミングで図3の(c)で示す待機位置で停止する。
【0020】
シート搬送装置1Dは、図1に示すように、シート給送装置1Cから給送されたシートを、斜行を補正した後、所定のタイミングで感光体ドラム3と転写ローラ4とにより形成される転写部に搬送するレジストローラ対80を備えている。また、シート搬送装置1Dは、湾曲したシート搬送路Rに設けられ、第1シート搬送部を構成するシート給送装置1Cから給送されたシートをレジストローラ対80に搬送する第2シート搬送部70Aを備えている。
【0021】
なお、この第2シート搬送部70Aは、シート搬送方向と直交する幅方向に複数設けられた複数の回転体対である中間搬送ローラ対70を備えている。なお、本実施の形態において、中間搬送ローラ対70の搬送速度は、レジストローラ対80の搬送速度よりも速く設定されている。
【0022】
次に、このように構成されたシート給送装置1Cのシート給送動作及びシート搬送装置1Dのシート搬送動作について説明する。シート給送装置1Cは、既述した画像形成部1Bの画像形成動作に並行して、図3に示すシート給送動作により、給紙カセット50に収納されたシートSを送り出した後、給送ローラ60に圧接する分離パッド40により1枚ずつ分離する。
【0023】
そして、シート給送装置1Cにより1枚ずつ分離給送されたシートSを、シート搬送装置1Dは、シート給送装置1Cの下流に設けられた第2シート搬送部70Aに設けられた複数の中間搬送ローラ対70によりレジストローラ対80に搬送する。この後、第2シート搬送部70Aの下流に設けられたレジストローラ対80によって所定のタイミングで感光体ドラム3と転写ローラ4とにより形成される転写部に搬送する。
【0024】
なお、転写部に搬送されたシートSは、この転写部において感光体ドラム表面に形成されたトナー画像が転写され、この後、定着器6Aに搬送され、定着器6Aに設けられた定着ローラ対6により加熱及び加圧されることにより、トナー像が定着される。そして、このようにして画像が定着された後、シートSは、排紙ローラ対8により装置本体上面に設けられた排出部9に排出される。
【0025】
次に、第2シート搬送部70Aに設けられた中間搬送ローラ対70の構成について図4を用いて説明する。図4に示すように、中間搬送ローラ対70は、第1回転体である中間搬送ローラ71と、中間搬送ローラ71に圧接する第2回転体である中間搬送コロ73を備えている。なお、72は中間搬送ローラ71が取り付けられた中間搬送ローラ軸であり、この中間搬送ローラ軸72は図示しない駆動手段によって回転駆動される。
【0026】
74は中間搬送コロ73を回転自在に支持する中間搬送コロホルダであり、中間搬送コロ73は中間搬送コロ軸73cが、中間搬送コロホルダ74に形成された中間搬送コロ軸受け74aにより支持されることにより、回転自在となっている。なお、中間搬送コロホルダ74は中間搬送コロホルダ回動軸74bが、外側中間ガイド75に設けられた中間搬送コロホルダ回動軸受け76により支持されることにより、回動自在となっている。そして、中間搬送コロ73は、中間搬送コロホルダ74を介して中間搬送コロバネ77により付勢されて中間搬送ローラ71に圧接している。
【0027】
ここで、中間搬送ローラ対70を図2における中間搬送コロ73側から見た図である図5に示すように、中間搬送ローラ71(71a,71b)、中間搬送コロ73(73a,73b)は、給紙コロ62(62a,62b)に対して軸方向外側に配置されている。即ち、中間搬送ローラ対70は、シート搬送方向における給紙コロ62の幅方向の両側に対応する位置に配置されている。
【0028】
また、シート搬送方向に回転する第1回転体である中間搬送ローラ71に圧接するコロである中間搬送コロ73はシートSの幅方向の中央側に向けて傾いた角度を有して配置されている。言い換えれば、中間搬送コロ73は、シートを搬送する方向がシート搬送路Rの幅方向中央側となるように傾斜して配置されている。なお、シート給送装置1Cの回転体である給送ローラ60及び給紙コロ62から中間搬送ローラ対70の間は、図2に示すように内側中間ガイド110と外側中間ガイド75によって構成されるシート搬送路R1が設けられている。
【0029】
また、シート給送装置1Cの下流側に設けられた中間搬送ローラ対70とレジストローラ対80の間には、湾曲した内側レジ前ガイド111と外側レジ前ガイド112によって構成されるシート搬送路Rが設けられている。つまり、内側ガイド部材である内側レジ前ガイド111と外側ガイド部材である外側レジ前ガイド112とにより構成される中間搬送ローラ対70からレジストローラ対80へのシート搬送路Rは屈曲している。
【0030】
そして、既述したようにシート給送装置1Cにより1枚ずつ分離されたシートSは、内側中間ガイド110と、外側中間ガイド75とに案内されて中間搬送ローラ対70に送られる。なお、中間搬送ローラ対70に達したとき、シートSは、分離パッド40と給紙コロ62で挟まれた状態となっている。これにより、シートSは、搬送抵抗に抗して中間搬送ローラ対70により引き抜かれながら搬送される。
【0031】
ここで、図5に示すように、中間搬送ローラ71aと中間搬送コロ73aは、既述したようにシート搬送方向における給紙コロ62aの軸方向外側(幅方向外側)に配置される。同様に、中間搬送ローラ71bと中間搬送コロ73bは給紙コロ62bの軸方向外側に配置される。したがって、搬送抵抗によってシートに生じる搬送抵抗力は、矢印Fa,Fbの方向となる。
【0032】
つまり、矢印Faに示す搬送抵抗力は中間搬送ローラ71aと中間搬送コロ73aのニップから、分離パッド40と給紙コロ62aのニップに向けた力となる。同じく、矢印Fbに示す搬送抵抗力は、中間搬送ローラ71bと中間搬送コロ73bのニップと、分離パッド40と給紙コロ62bのニップに向けた力となる。
【0033】
これにより、搬送抵抗力Fa,Fbは、シートSの幅方向の中央側に向けた力として作用する。そして、このような向きの搬送抵抗力Fa,Fbにより、シートSには、後述する図6に示すように中間搬送ローラ71a,71bの間でシートSの幅方向における中央方向に向けた力Fa’,Fb’が作用する。
【0034】
ここで、シートSは中間搬送ローラ71と中間搬送コロ73のニップで挟持されている。従って、搬送抵抗力Fa,Fbによって、Fa’,Fb’が作用しても、中間搬送ローラ71と中間搬送コロ73の挟持力により、シートSはFa’、Fb’の方向には移動しにくい。つまり、シートSは幅方向における中央方向に圧縮されにくい。従って、シートSの波打ち量は小さい。
【0035】
ところで、シートSの搬送状態は、シートSの搬送抵抗と、中間搬送コロ73の傾きの有無によって変化する。次に、このようなシートSの搬送抵抗と、中間搬送コロ73の傾きの有無によって変化するシートSの搬送状態について説明する。
【0036】
まず、シートSの搬送抵抗は有るものの、中間搬送コロ73の傾きが無い、つまり中間搬送コロ73の軸線がシートSの搬送方向と直交する場合のシートSの状態を説明する。この状態では、図5の(b)に示すように、中間搬送ローラ対70の矢印Pa,Pbで示す搬送力はシート搬送方向となり、この場合、Fa’、Fb’が小さくなる。このため、シートSには小さな波打ちが発生する。しかし、中間搬送ローラ対70は傾きが無いため、幅方向の中央側に向かった搬送力は発生しない。
【0037】
なお、既述したように、中間搬送ローラ対70からレジストローラ対80までのシート搬送路Rは屈曲している。このため、シートSの見かけの剛性が強くなるので、このようにして発生したシートSの小さな波打ちは中間搬送ローラ対70の下流で幅方向に引き伸ばされるようにして無くなる。これにより、シートSは、後端が中間搬送ローラ対70を抜けると、レジストローラ対80により搬送され、内側レジ前ガイド111に急激に寄せられる。この結果、シートSは内側レジ前ガイド111に叩きつけられて衝撃音が発生する。
【0038】
次に、シートSの搬送抵抗が無く、中間搬送コロ73がシートSの幅方向における中央側に傾いた角度を有して配置されている場合のシートSの状態を説明する。このように搬送抵抗が無い状態では、シートSにはFa’、Fb’が作用していない。一方、中間搬送ローラ対70では、図5の(c)の矢印Pa,Pbで示すシートSの幅方向の中央側に向かった搬送力が発生する。
【0039】
なお、シートSの搬送抵抗が無い状態とは、例えばシートSの分離後に給紙コロ62から分離パッド40を離間させた状態を示している。これによって、シートSは給紙コロ62と分離パッド40の間で挟まれることなく、すなわち搬送抵抗が無い状態で搬送される。
【0040】
既述したように、中間搬送ローラ対70からレジストローラ対80までのシート搬送路Rは屈曲しているため、シートSの見かけの剛性が強くなり、シートSを波打たせるためには大きな力が必要になる。このため、シートSを波打たせる搬送抵抗による力Fa’,Fb’が無く、中間搬送コロ73を傾けて配置することで生じる力Pa,Pbだけでは、シートSを十分に波打たせることができない。
【0041】
従って、この場合も、シートSは、後端が中間搬送ローラ対70を抜けると、レジストローラ対80で搬送され、シートSは内側レジ前ガイド111に急激に寄せられる。この結果、シートSは内側レジ前ガイド111に叩きつけられて衝撃音が発生する。
【0042】
最後に、シートSの搬送抵抗が有り、中間搬送コロ73がシートSの幅方向の中央側に傾いた角度を有して配置されている場合のシートSの状態を説明する。即ち、中間搬送ローラ対70によるシートを搬送する方向が幅方向中央側となる場合のシートSの状態を説明する。
【0043】
このように、シートSの搬送抵抗が有る場合には、図5の(a)に示すように、シートSにFa’,Fb’が作用して、小さな波打ちが発生する。また、中間搬送ローラ対70が傾いている場合には、矢印Pa,Pbで示すようなシートSの幅方向の中央側に向かった力が発生し、シートに波打ちが発生する。
【0044】
ここで、中間搬送ローラ対70からレジストローラ対80までのシート搬送路Rは屈曲しているが、このようにシート搬送路Rが屈曲していても搬送抵抗によるシートSの波打ちをきっかけとして、中間搬送コロ73によってシートSが更に波打つ。つまり、シートSの搬送抵抗が有り、中間搬送コロ73が傾いた角度を有して配置されている場合には、シートSの搬送抵抗と中間搬送コロ73との両方により中間搬送ローラ対70の下流に、シートの大きな波打ちを形成することができる。
【0045】
図7は、このときのシートSの波打ち状態を示す図である。なお、図7は図2における断面Lを上方から見た概略図である。図7に示すように、シートSは、中間搬送ローラ対70の下流である内側レジ前ガイド111と外側レジ前ガイド112の間の空間で大きく波打つ。ここで、このように大きく波打った場合、シートの一部は内側レジ前ガイド111に接触する。
【0046】
そして、波打ったシートSは、一部が内側レジ前ガイド111に接触しながら内側レジ前ガイド111と外側レジ前ガイド112とにより案内されてレジストローラ対80に送られる。なお、既述したように、中間搬送ローラ対70からレジストローラ対80までのシート搬送路Rは屈曲しているため、シートSの波打ちはレジストローラ対80に近づくにつれて引き伸ばされるようにして減少する。このため、シートSの波打ちが転写へ影響することはない。
【0047】
また、既述したように中間搬送ローラ対70の搬送速度は、レジストローラ対80の搬送速度よりも速く設定されている。従って、シートSが中間搬送ローラ対70とレジストローラ対80の両方にニップされて搬送されている間、波打ちが減少しているレジストローラ対80の上流側近傍のシートSは、外側レジ前ガイド112に沿うように搬送される。
【0048】
なお、シートSの後端部は、図8に示すように中間搬送ローラ対70を抜ける直前まで波打ち形状になっている。そして、シートSは、後端が中間搬送ローラ対70を抜けた瞬間からレジストローラ対80で搬送され始めるので、内側レジ前ガイド111に一気に寄せられる。しかし、シートSの後端部には波打ちがあり、波打ったシートの一部は内側レジ前ガイド111へ接触している。
【0049】
このため、シートSは内側レジ前ガイド111に一気に叩きつけられず、徐々に接触していく。そして、このようにシートSが内側レジ前ガイド111に徐々に接触することにより、シート後端が中間搬送ローラ対70を通過した際のシートと内側ガイド間に発生する衝撃音を低減することができる。
【0050】
以上説明したように、本実施の形態では、中間搬送ローラ対70を給紙コロ62aの幅方向の両側に対応する位置に配置すると共に、シートを搬送する方向がシートの幅方向中央側となるように中間搬送コロ73をシートSの中央側に向けて傾けて配置している。これにより、第2シート搬送部70Aによりシートを引き抜きながら搬送する際、シートを幅方向に波打たせ、シートを湾曲したシート搬送路Rを形成する内側レジ前ガイド111に接触させることができる。この結果、シートSの後端が中間搬送ローラ対70を通過した際、シートSが内側レジ前ガイド111に接触する力を軽減することができ、シート後端が中間搬送ローラ対70を通過した際のシートと内側レジ前ガイド間に発生する衝撃音を低減することができる。
【0051】
なお、既述した図6及び図7ではシートSの波打ちの山が一つの場合を示したものの、これに限定されるものではなく、シートの種類、温度、湿度などの条件によって波打ちの山が複数の場合もある。
【0052】
また、これまでの説明においては、中間搬送ローラ対70の下流でシートSを波打たせることができるように、中間搬送コロ73をシートSの中央側に向けて傾けて配置する場合について説明したが、本発明は、これに限らない。例えば、図9に示すように、中間搬送コロ73を幅方向中央側の外径120a,120bに対して、幅方向外側の外径121a,121bが大きい円錐形状で形成しても良い。
【0053】
そして、このように中間搬送コロ73を円錐形状とすることにより、中間搬送コロ73による搬送速度は、中間搬送コロ73の内側に対して外側の方が速くなり、この結果、シートSの幅方向の中央側に向かった力Pa,Pbが発生する。
【0054】
このように、中間搬送コロ73を円錐形状とし、中間搬送コロ73の内側と外側の寸法差によってシートSの幅方向の中央側に向かった力Pa,Pbを発生させることにより、より簡単な構成でシートSを波打たせることができる。
【符号の説明】
【0055】
1…レーザプリンタ、1A…レーザプリンタ本体、1B…画像形成部、1C…シート給送装置、1D…シート搬送装置、40…分離パッド、60…給送ローラ、62…給紙コロ、70…中間搬送ローラ対、70A…第2シート搬送部、71…中間搬送ローラ、73…中間搬送コロ、80…レジストローラ対、R…シート搬送路、S…シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを搬送する回転体を有する第1シート搬送部と、
前記第1シート搬送部の下流に配置され、シート搬送方向と直交する幅方向に設けられた複数の回転体対を有し、前記複数の回転体対により前記第1シート搬送部からシートを搬送する第2シート搬送部と、
対向する外側ガイド部材及び内側ガイド部材により形成され、前記第2シート搬送部により搬送されるシートを下流側に案内する湾曲したシート搬送路と、を備え、
前記第2シート搬送部によりシートを搬送する際、前記第2シート搬送部の複数の回転体対を、シート搬送方向における前記第1シート搬送部の回転体の幅方向の両側に対応する位置に配置し、かつ前記第2シート搬送部の複数の回転体対によるシートを搬送する方向を前記シート搬送路の幅方向中央側となるように構成したことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
前記第2シート搬送部の回転体対は、シート搬送方向に回転する第1回転体及び前記第1回転体に、シート搬送方向に対して前記シート搬送路の幅方向中央側に傾いて当接する第2回転体により構成されることを特徴とする請求項1記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記第2シート搬送部は、シート搬送方向に回転する第1回転体及び前記第1回転体に当接する幅方向中央側の外径に対して、幅方向外側の外径が大きく形成された第2回転体により構成されることを特徴とする請求項1記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記第1シート搬送部は、前記回転体と、前記回転体の幅方向外側に同軸上に設けられたコロと、前記コロと圧接してシートを押さえる摩擦分離部材とを備え、前記第2シート搬送部の複数の回転体対を、シート搬送方向における前記コロの幅方向の両側に対応する位置に配置したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
シートを積載するシート積載部を備え、
前記第1シート搬送部の回転体は、前記シート積載部に積載されているシートを給送する給送ローラであり、前記コロは前記摩擦分離部材に圧接して前記給送ローラにより給送された後、シートを押さえる給紙コロであることを特徴とする請求項4記載のシート搬送装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシート搬送装置と、
前記シート搬送装置により搬送されるシートに画像を形成する画像形成部と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−201447(P2012−201447A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66001(P2011−66001)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】