説明

シート材の製造方法

本発明は、シート材を製造する方法であって、硬化性組成物を基材に導入する段階と、硬化性組成物を硬化することによって、硬化性組成物を含まない基材から作られたシート材と比較して製造されるシート材の機械的性質を向上又は改善する段階とを有するほう法を提供する。また、本発明は、通常のセルロース繊維を含むセルロースベースの製品と比べて、品質の低いセルロース繊維を用いた場合に“パルプ融合”によって製品の機械的性質を少なくとも維持できるのに十分な硬化性組成物がセルロースベースのウェブに導入されるセルロースベースの製品を提供する。別の側面においては、発明は、ほぼ脱水されたセルロース繊維のウェブからの水の除去、及び従来のシート材の製造方法と比べて硬化性組成物のその場での発熱性の重合によってエネルギーの必要量と炭素排出量との減少をもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート材、特に紙及び板紙の製造方法に関する。しかし、本発明はこの分野における使用のみに限定されないことが理解される。
【背景技術】
【0002】
従来技術に関する以下の説明は、発明を適切な背景技術に関連させると共に、発明の利点を十分に理解できるようにするために提供される。しかし、明細書における従来技術の説明は、そのような従来技術が当該分野において広く周知である又は一般的な常識の一部であることを明確に又は暗に認めると捕らえられるべきではないことが理解されなければならない。紙材及び紙製品に関する以下の説明において本発明は幾つかの実施形態として説明されるが、本発明はそれらの物に限定されないことが理解される。
【0003】
紙の製造は、1%未満の濃度(スラリー中における固体の乾燥重量%)であるセルロースの水性懸濁液又はスラリーを調製する段階、スラリーを湿紙(web)(以下、ウェブともいう)へと脱水する段階、及びウェブを乾燥する段階を一般に含む。通常、脱水されたウェブは約80%の水を保持している。しかし、完成したシートは約5重量%未満の水を含んでいることが好ましい。そのため、製紙の脱水及び乾燥工程は、生産効率及び生産コストにおいて非常に重要である。しかし、数百メートルに及ぶ乾燥セクションは、稼動するのに費用がかかり、相対的に多くの電気を消費し、物理的に非常に大きく、生産施設のために多大なスペースを必要とするため、乾燥工程は特に重要である。そのため、長期間にわたって、産業界は乾燥工程の効率を向上する手段を模索してきたが、未だ限定的な成功のみである。
【0004】
他の産業と同様に製紙業は、セルロース繊維又はパルプを成分として含有する紙及び板材などの繊維材料から形成される生産物の強度を向上する方法を長い間模索してきた。再利用された紙料(furnish)又は木材由来の繊維が全体又は一部で利用される繊維材料から作られる製品の強度を向上することも製紙業における目的の一つである。例えば、再利用されるセルロース繊維は一般に新聞用印刷紙及び軽量コート紙の製造に用いられる。これらの要素は、高品質の紙及び板との関係において、好適な種類の未使用の木材の希少性の上昇、及び使用可能である場合そのような木材のコストの上昇によって、ここ数年において商業的な重要性が劇的に向上した。
【0005】
過去には、セルロース繊維から作られた紙又は板材などの繊維材料から作られたシートの乾燥強度及び関連する性質を向上するために様々な方法が示唆されてきた。例えば、一つの方法は、シートを形成する前に、繊維紙料に直接化学添加剤を導入することである。一般的な添加剤は、カチオン性のスターチ又はメラミン樹脂を含んでいる。しかし、これらの添加剤は紙の機械的性質を劇的に向上するためには効果的ではない。別の一般的な添加剤はポリビニルアルコールであり、その使用は米国特許第2,402,469号及び第4,865,691号に記載されている。ポリビニルアルコールなどのポリマー性バインダーの使用は少量でも可能であるが、10〜20重量%又はそれ以上の大量の使用は、例えばカレンダー又は印刷などの下流の工程において処理を困難にする。また、ウェブの乾燥の間に、ポリマー性バインダーは粘着質になり、フェルトに張り付くことがある。そのため、紙製品におけるポリマー性バインダーの多量の使用による潜在的な利点は、そのような製品を作ることができなかったため、現在に至るまで知られていない。
【0006】
本発明の目的の一つは、従来技術の一つ以上の欠点を解消する又は改善することであり、少なくとも利用可能な代替物を提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第2,402,469号明細書
【特許文献2】米国特許第4,865,691号明細書
【発明の概要】
【0008】
第1の側面によると、本発明はシート材を製造する方法であり、基材に硬化性組成物を加える段階と、硬化性組成物を硬化する段階と、を有し、十分な量の硬化性組成物が基材に加えられることによって、硬化性組成物を含まない基材で形成されたシート材と比べて製造されるシート材の機械的性質を向上又は改善することができる。
【0009】
第2の側面において、本発明はセルロースベースの製品を製造する方法を提供しており、当該方法は、硬化性組成物を脱水されたセルロース繊維のウェブと接触させる段階と、硬化性組成物を硬化させる段階と、を有し、十分な量の硬化性組成物がウェブに導入されることによって、硬化性組成物を含まない対応するセルロースベースの製品と比較してセルロースベースの製品の機械的性質を向上又は改善することができる。
【0010】
関連する側面において、本発明はセルロースベースの製品を製造する方法を提供しており、当該方法は、硬化性組成物を脱水されたセルロース繊維のウェブと接触する段階と、硬化性組成物を硬化する段階と、を有し、十分な量の硬化性組成物をウェブに導入することによって、通常のセルロース繊維を含むセルロースベースの製品に対して相対的に質の低いセルロース繊維を用いた場合にセルロースベースの製品の機械的性質を少なくとも維持できる。脱水されたセルロース繊維のウェブに導入される硬化性組成物の量は、硬化性組成物を含まない対応するセルロースベースの製品に対してセルロースベースの製品の機械的性質を向上又は改善するのに十分であることが好ましい。十分な量の硬化性組成物がウェブに導入されることによって、硬化性組成物を含まない相対的に質の低いセルロース繊維と通常のセルロース繊維との混合物を含むセルロースベースの製品と比べて、相対的に質の低いセルロース繊維と通常のセルロース繊維との混合物を用いた場合にセルロースベースの製品の機械的性質を少なくとも維持でき、好ましくは改善できることが好ましい。
【0011】
第3及び第4の側面によると、本発明は、第1及び第2の側面それぞれの方法によって調製されるシート材又はセルロースベースの製品を提供する。
【0012】
本発明のシート材は、特に紙又は紙製品としての使用に適していることが好ましい。例えば、本発明のシート材は、“標準的な”紙製品の見た目と同様に、多くの“標準的な”又は一般的な紙製品の機械的及び物理的性質を示す。本発明のシート材は、印刷可能に適用され、標準的な紙製品と同様の又は改善された可撓性及び折り曲げ性を示すことが好ましい。本発明のシート材は、同等の紙製品と比べて向上された又は少なくとも維持された印刷適性を示すことが好ましい。当業者に理解されるように、印刷適性は、印刷された文を受容及び保持し、印刷後にロール状に再び巻かれる際に印刷の裏うつりを防ぐ紙の性能として一般に測定される。本発明は、シート材に印刷する段階を含み、硬化性組成物を含まない前記基材から形成されたシート材と少なくとも同等の印刷適性を提供することが好ましい。
【0013】
別の実施形態においては、本発明のシート材はスポンジ状に構成されることによって吸水性のペーパータオルのようにすることができる。別の実施形態では、本発明のシート材はその見た目を布のように構成される。別の実施形態では、本発明のシート材は上質紙(wood free paper)、新聞用紙、又は雑誌用紙の見た目を有する。
【0014】
本発明は、この明細書全体にわたって説明されるように、従来技術に対して重大な利点をもたらす。ここで、一つの重大な利点は、エネルギーの必要量、すなわち実質的に減少するであろう製紙工程の二酸化炭素排出量に関する。説明すると、通常のセルロース繊維を含むセルロースベースの製品と比較して機械的性質が維持又は改善されている紙製品を製造するために質の低いセルロース繊維が使用可能であるため、少ない比率の通常のセルロース繊維の使用は輸送コストの削減及び容易に利用できない木材の消費量の減少を意味するので、本発明の方法は紙を製造するためのエネルギーの必要量を著しく低減できる。製紙業における二酸化炭素排出量は、多大なエネルギー必要量とパルプ原料のための森林の消費との組み合わせのため、大きな世界的な懸案事項である。例えば、当業者が理解するように叩解(refining)工程は比較的多くのエネルギーを消費するため、繊維をフィブリル化するために必要な生成のレベルが低下されているので本発明の方法によって二酸化炭素排出量の減少が実現される。再生繊維が利用可能であるため、二酸化炭素排出量の更なる低減が実現される。さらに、以下においてより詳細に説明されるように、従来の乾燥工程は多大なエネルギーを利用しているが、本発明はセルロース性のウェブの脱水を促進するため、本発明はこのエネルギー必要量を低減することができる。さらに、電子ビーム硬化処理は加熱などの他の硬化方法よりも比較的少ない電力を消費するため、電子ビーム(EB)硬化の使用は二酸化炭素排出量の更なる低減をもたらす。例えば、EBは他の熱エネルギー硬化法の約20%の電力を消費する。
【0015】
ある実施形態において、本発明のシート材は縦方向(machine direction)及び/又は横方向(cross-machine direction)において著しく強く、向上した引き裂き抵抗を示す。本発明により得られるシート材の乾燥強度は改善されており、湿潤強度も改善されていることが好ましい。例えば別の実施形態においては、シート材はスポンジ状に構成することによって吸水性のペーパータオルのようにすることができる。関連する実施形態においては、シート材はその見た目を布のように構成される。別の実施形態において、シート材は(一面又は両面の光沢に関し)新聞用紙又は雑誌用紙のような見た目を有する。好ましい実施形態においては、本発明のシート材は“標準的な”紙製品に近い又は紙製品のように見える。“標準的な”紙製品は、現在、市場に流通している紙製品のような従来の紙製品を製造するため従来の組成から作られていることが理解される。
【0016】
ある好適な実施形態において、本発明のシート材は、標準的な紙製品とポリマー性シートとのハイブリッドのような特殊な紙製品である。例えば出願人は、ある実施形態において、本発明のシート材は紙幣として特に有用であると考えており、それは従来の紙製の紙幣の見た目を有しており、最近のポリマー製の紙幣の強度と引き裂き抵抗とを有している。そのようなハイブリッドシート材は透かしを入れることができる利点を有すると共に、最近の紙幣のセキュリティー機能を有することもできる。そのような特殊な製品においては、シート材のコストはシート材の性能又は特性よりも重要視されないことが明らかである。
【0017】
別の実施形態においては、本発明のシート材は、一般に本に用いられる紙と比べて、表面の毛羽立ちが比較的少ない本の印刷用紙などの特殊な紙製品である。
【0018】
ある実施形態において、基材は、脱水されたセルロース繊維のウェブで実質的に形成された支持ウェブ(supporting web)の形態である。別の実施形態においては、基材はポリマー繊維のウェブであり、それはスクリムのように少なくとも部分的に織られている。別の実施形態においては、基材は任意に針で穴を空けることができる不織のポリマー繊維のウェブである。更に別の実施形態においては、基材は一つ以上の上記ウェブの組み合わせである。基材が不織のポリマー繊維のウェブである場合、ウェブは脱水されたセルロースウェブの厚みと同程度の厚みを有する。さらに、不織のポリマーウェブを含むポリマー繊維の厚みは、脱水された際のセルロース繊維の厚みと同程度でなければならない。
【0019】
ある実施形態において、基材は、例えば約0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1又は0.05mm厚のいずれかを下回る薄い基材である。別の実施形態において、基材は比較的厚い、すなわち、1、1.5、2、2.5、又は3mm厚である。ある実施形態における本発明のシート材の最終的な硬化重量は、目的とされる用途に応じて20から450g/m(gsm)であり、例えば、20、30、40、50、60、70、80、90、100、120、150、175、200、150、300、350、400、又は450g/mである。
【0020】
硬化性組成物の導入によってもたらされる改善された性質は多数の利点をもたらすことが理解される。例えば、基材がセルロース繊維のウェブである場合、十分な量の硬化性組成物がそこに導入されることによって、通常の又は未使用のセルロース繊維を含むセルロースベースのシート材と比較して、相対的に質の低いセルロース繊維を用いて得られるセルロースベースのシート材の機械的性質を少なくとも維持できる。相対的に質の低いセルロース繊維が未使用の繊維の完全な又は部分的な代替物として使用可能であることが理解される。また、相対的に少量のセルロース繊維を用いることによって、得られるシート材に同程度の強度がもたらされることが理解される。別の実施形態においては、基材がポリマー繊維のウェブである場合、大幅に低減された量のセルロース繊維が、事実上標準的な紙製シート材のようになる結果物であるシートの形成に必要である。
【0021】
本発明は、セルロースベースの製品又はセルロースベースの製品の模造品であることが好ましいシート材の製造に関連しており、相対的に少量のセルロースが製造されるシート材に必要であるか、質の低いセルロースが利用可能であり、製造されるシート製品の機械的及び物理的性質は、未使用のセルロース材料で作られた“標準的な”製品と比べて少なくとも維持されていることが理解される。本発明のシート材は商業生産の速度で製造可能であることが好ましいことが理解される。
【0022】
硬化性組成物は、製造されるシート材の機械的性質を向上又は改善し、及び/又は相対的に質の低いセルロース繊維が使用される場合に機械的性質を少なくとも維持するように選択されなければならないことは当業者にとって明らかである。セルロースベースの製品は紙であることが好ましいが、セルロースベースの製品は紙板、ボール紙、ティッシュペーパー、又は類似製品であっても良い。シート材は、以下において更に説明されるように、紙幣などのハイブリッド材料であっても良い。別の実施形態においては、合成強化材、すなわちガラス繊維、ナイロン(登録商標)繊維、又は他の種類のポリマーが使用可能である。本発明は、広範な繊維の組み合わせにおいて、縦方向(MD)及び/又は横方向(CD)の強度を大幅に向上させる。
【0023】
当業者は、相対的に質の低い繊維と通常のセルロース繊維との差異を理解するであろう。例えば、製紙に用いられる通常のセルロース繊維は一般にパルプ状の未使用の繊維である。また、製紙工程を補助し且つ繊維を漂白するために、未使用の繊維は化学処理されることによってリグニンが除去されている。例えば、未使用の(非再生)木質繊維は、主に硬材の(落葉樹である)木及び軟材の(針葉樹である)木から抽出される。一方、相対的に質の低い繊維は標準的な製紙設備で加工することはより困難であるか、処理された未使用のパルプ状繊維で作られた紙と比べて相対的に低品質の紙をもたらすことが理解される。例えば、そのような繊維の特徴は、それらは、相対的に短い繊維長であり、低い繊維強度であり、低下した可撓性であり、吸着/吸収された不純物を含み、漂白又はパルプ化処理によって不完全に漂白されている。そのような低品質のセルロース繊維の一般的な供給源は、再利用された新聞紙又は事務用紙であるか、他の再生紙材である。他の供給源は、好適でない木材由来の未使用の木質繊維、又は準最適な処理手法をもちいて製造された未使用の木質繊維を含む。紙などのセルロースベースの製品における低品質のセルロース繊維の使用は、引張強度及び引き裂き抵抗などの機械的性質の低下を一般にもたらす。例えば、“通常の”又は“長い”繊維は、約1.5から3mmの繊維長を有する成長が遅い寒冷気候の北方林の繊維である。例えば、“低品質の”又は“短い”繊維は、約0.5から1.2mmの繊維長を有する成長の早いユーカリである。通常の繊維と置換可能な低品質の繊維の量は、一般に製造される紙及び目的とする用途の種類による。もちろん、低品質の繊維を100%用いる幾つかの紙の用途は存在するが、一定量の低品質の繊維が通常の繊維と置換されることが一般的であり、例えば5から30%の置換が普通である。ここで、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、35、40又はそれ以上の置換が可能である。通常の繊維の割合は、合計の繊維成分の30%未満、20%未満、10%未満、5%未満又は0%未満であることが好ましい。
【0024】
世界中で利用できる木材の供給が減少しており、未使用のセルロースのコストが上昇しているため、環境問題からと同様に商業面からも紙製品における再生セルロース繊維の使用を増加させる動きがある。しかし、上述したように、そのような再生繊維は未使用の繊維よりも加工することが困難であると共に、例えば低い引張強度又は低い引き裂き抵抗を有する製品などの相対的に品質の低い紙製品が製造される。例えば、低い引張強度は、破れることを防止するために印刷速度を遅くしなければならず、ある種のインク又は印刷工程を回避しなければならない、又はその両方であることを意味する。また、環境に悪く、比較的費用のかかる漂白の必要性が全体的に低下するため、再生繊維の使用は推奨される。また、未使用の繊維の加工よりも再利用はコスト効率がより良いため、未使用の材料からよりも古紙から紙を作るための環境コストは低下する。さらに、種類の異なる木は異なる性質を有する繊維をもたらし、数種類のみが製紙に適した繊維を提供することが理解される。そのため、セルロース繊維の適切な供給が無い国又は地域は再生繊維を使用する以外の選択肢がほとんど無い。
【0025】
そこで、セルロースベースの紙製品が製造可能であり、未使用のセルロース繊維のみを含むセルロースベースの製品と比べて、相対的に質の低いセルロース繊維を使用した場合に製品の機械的性質が少なくとも維持されるため、本発明は従来技術に対して重要な利点をもたらす。例えば、ウェブを本発明の硬化性組成物と接触させた場合、縦方向に35%及び横方向に25%の強度の向上が可能であることが見出されている。この結果から、出願人は、本発明の方法を用いれば未使用の繊維の一部が再生繊維と置き換わっても、縦方向及び横方向の強度は維持可能であり、一方、従来の製造方法を用いてそのような置換を行った場合、両方向の強度に大幅な低下が生じると推測している。縦方向の強度における以下の改善は製造されるシート材中の硬化性組成物の種類及び割合に応じて見出されており、つまり、強度の向上は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34若しくは35%と同程度又はそれ以上である。同様に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24若しくは25%と同程度又はそれ以上の横方向の強度の改善が見出された。セルロースウェブの電子ビーム露光はウェブの強度を低下させることが一般に知られているため、当業者はこれらの改善が実際に正味の改善であることを理解する。そのため、強度の改善は上述の数値よりも高いことが推測される。
【0026】
本発明の方法を用いて完全に又は部分的に未使用のセルロース繊維を相対的に品質の低いセルロース繊維に置換することは、最終的な紙製品の機械的性質に悪影響を与えることなく紙製品の合計コストを削減する。本出願人は、未使用のセルロース繊維を相対的に品質の低いセルロース繊維に少なくとも部分的に置換するコストは、製品に導入される硬化性組成物のコストを十分に相殺すると考えている。
【0027】
ある実施形態において、脱水されたセルロース繊維のウェブは約10から約80%の水、例えば、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70又は75%の水を含む。
【0028】
硬化性組成物は一つ以上の硬化性ポリマー又はオリゴマー及び/又は一つ以上の硬化性モノマーであることが好ましい。本発明に適した硬化性組成物は、従来技術に開示されており、例えば、参照によって本明細書中に援用される国際公開第00/55228号、第82/02894号、第81/00569号、及びオーストラリア特許第566738号及び第539112号に開示されている硬化性オリゴマー及びモノマーである。これらの公報に記載されている硬化性組成物は水性インク及びそれに関連する印刷方法(つまり、コーティング)に関連して開発されたが、驚くべきことに、それらは強度を向上し、及び/又は(以下において更に説明するように)セルロースウェブの脱水を補助するバインダーとして本発明において有用であることが見出された。これらの文献は、これらのモノマー/オリゴマーを含むインクのUV硬化を例示している。しかし、上述の文献に記載されているモノマー/オリゴマーを本明細書において説明されるようにシート材用のバインダーとして利用する場合、一般的な製紙ラインのスピード、すなわち600から2000m/分で硬化しようとするにはUV硬化は不十分であると本出願人は考えている。したがって、UVより非常に高いラジカルフラックス(radical flux)がEBによって生じるため、電子ビーム(EB)硬化が好ましい。しかし、遅い製造速度で行う場合は、UV硬化も使用可能であることが理解される。硬化は、一つ以上の下記の種類の化学線、UV、X線、EB及びガンマ線の照射によって実現可能であることが理解される。
【0029】
硬化性組成物を硬化する工程は、基材に導入された組成物を、組成物を硬化するのに十分な時間にわたって十分な強度で、UV照射、ガンマ線照射、電子ビーム照射、又はX線照射にさらすことを含む。
【0030】
本発明のシート材を形成するために、様々なモノマー、プレポリマー、オリゴマー及び反応性ポリマーが硬化性組成物に使用可能であり、適した基材に導入可能であることが理解される。硬化性組成物は、UV又は電子ビームなどの化学線照射によって重合可能及び/又は架橋可能でなければならない。しかし、熱エネルギーは重合を開始するために代わりに使用可能である。
【0031】
ポリマー化を開始するために熱エネルギーを用いる場合、いくつかの潜在的な硬化性組成物は重合を開始するのに適した触媒の添加を必要とする。触媒は潜在的であって良く、つまり、熱エネルギーに晒されるまでポリマー化を促進しなくて良い。触媒されたモノマー/オリゴマーへの加熱により、触媒は、モノマー/オリゴマーを反応及び重合させるフリーラジカルの形成をし始める。化学構造を変化させる触媒は、望ましい温度で重合するために、それぞれのモノマー/オリゴマーに対する効率及び適性を考慮して選択される。触媒は、単一成分の添加剤として用いられても良いし、共力剤と共に用いられる場合には二成分又は複数成分の添加剤として使用されても良い。幾つかの触媒の例は、(網羅してはいないが)有機過酸化物、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、AZDN、第3級ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、及びMIBK(メチルイソブチルケトンペルオキシド)である。あるデュアルシステムの触媒及び共力剤は、三価の鉄、ホルムアルデヒド・スルホキシル酸ナトリウム(ロンガリットC)及びメタ重亜硫酸ナトリウムである。共力剤デュアルシステムは、“レドックス対”と呼ばれており、重合は非常に低い温度、例えば20から70℃で開始可能である。デュアルシステムにおいて、一つの触媒成分は樹脂/パルプの混合物中に導入され、第2の共力剤成分は、重合又は発熱反応が必要な処理の時点で添加することができる。我々は、参照によって本明細書中に援用されている国際公開第00/55228号を読者に参照させる。
【0032】
上述したように、組成物は組成物が導入される基材/支持ウェブの強度を向上するように選択されなければならない。さらに、組成物は、(以下において更に説明される)製造されるシート材の乾燥工程を補助するために発熱しながら硬化するように選択されることが好ましい。
【0033】
ある実施形態において、硬化性組成物はN−メチロールアミドエーテルアクリレートを含む。
【0034】
別の実施形態において、硬化性組成物は、少なくとも一つのアミン基を有するオリゴマーと不飽和カルボン酸との間に形成された水溶性アミン塩プレポリマーを含む。前記塩のオリゴマー成分は、限定はしないが、エポキシアミン付加物、ウレアホルムアルデヒド及びメラミンホルムアルデヒドのアクリル酸エルテルタイプの樹脂などの保護されたアミノベースの樹脂、アミンイソシアネート付加物、脂肪族アミンとポリアクリレート又はポリメタクリレート化合物とのマイケル付加物、及びグリオキサルベースのヘミアセチルアクリレートを含むオリゴマーの範囲から選択される。
【0035】
別の実施形態において、硬化性組成物は少なくとも一つのエチレン不飽和のラジカル重合可能なモノマーを含む。本明細書で用いられる場合、“エチレン不飽和のラジカル重合可能なモノマー”及び同様の用語は、ビニルモノマー、(メタ)アリルモノマー、及びラジカル重合可能な他のエチレン不飽和モノマーを含むことを意味する。ビニルモノマーの部類は、限定しないが、(メタ)アクリレート、ビニル芳香族モノマー、ハロゲン化ビニル、及びカルボン酸のビニルエステルを含む。本明細書で用いられる場合、“(メタ)アクリレート”及び同様の用語は、メタクリレート及びアクリレートの両方を意味する。
【0036】
ある好適なモノマーの例は、ヘキサンジオール及びネオペンチルグリコールに基づいており、別のグリコールは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールであり、これらは200から2000の分子量である。さらに、全ての物は、所望される場合にはエチレン又はプロピレンオキシドと反応することによってカルボン酸とのエステル化の土台としてエトキシ化及びプロポキシル化された部分を形成するために修飾される。エステル化のモル比は1:1又は1:2である。当業者は、高度のエーテル化は、水性システムに望まれるより親水性の塩基モノマーを産出することを知っている。高分子量のモノマーはトリメチロールプロパン及びペンタエリスリトール由来であり、そのままで又は更に反応してエトキシ化又はプロポキシル化された部分を形成するため、これらを1から3モルのカルボン酸とエステル化することによって、この特許の目的を満たすのに適した所望の塩基モノマーを形成することができる。
【0037】
別の範囲のモノマーの種類は、アルキル基に1から20の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート、ビニル芳香族モノマー、ハロゲン化ビニル、及びカルボン酸のビニルエステルの少なくとも一つが由来である。アルキル基に1から20の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレートの具体例は、限定はしないが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びイソブチル(メタ)アクリレートを含む。また、モノマーはアクリレート化メチロールアミドエステル、エポキシアクリレート、エポキシ化植物油アクリレート、ウレタンアクリレート、カルボン酸塩で修飾されたウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、カルボン酸塩で修飾されたポリエステルアクリレート、ポリエステルアクリレート、シリコンアクリレート、ポリオール多官能アクリレート、アクリレート化オイル、アクリレート化アミン、アクリル化アクリレート、及びそれらの組み合わせであっても良い。また、モノマーはヒドロキシル基の末端を有するモノ(メタ)アクリレートであっても良い。また、モノマーはメチル化アクリレートのオリゴマー、すなわち、ヒドロキシ末端を有するモノ(メタ)アクリレートで縮合されたNMAであっても良い。また、モノマーは、ヒドロキシ末端を有する(メタ)アクリレートのグリコキサルとのヘミアセタール生成のアセタール、及び/又は他のアルデヒド、ウレタンモノ、ジ、トリ、ペンタ、及びヘキサアクリレート、カルボン酸塩で修飾されたウレタンアクリレート、メルカプトプロピオネートと反応したエーテルのアクリレートであっても良い。
【0038】
単一の反応性希釈剤又は反応性希釈剤の混合物が硬化性組成物に含まれても良い。反応性希釈剤は、例えば、以下のジアクリレート及び単官能アクリレートを含む低分子量であり液状のアクリレート官能性化合物であっても良い:トリデシルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、ポリ(ブタンジオール)ジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリイソプロピレングリコールジアクリレート、トリイソプロピレングリコールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、及びイソボルニルアクリレート。反応性希釈剤の他の例は、n−ビニルカプロラクタム又はビニルピロリドンである。
【0039】
また、硬化性組成物は、例えばフリーラジカル光重合開始剤などの光重合開始剤を含んでも良い。好適なフリーラジカル光重合開始剤は、例えばアシルホスフィンオキシド光重合開始剤、より具体的には、ベンゾイルジアリルホスフィンオキシド光重合開始剤を含む。ベンゾイルジアリルホスフィンオキシド光重合開始剤の好適な例は、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(チバ アディティブス(Civa Additives)から販売されているイルガキュア(Irgacure)819)、(2,4,6−トリメチオールベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド(BASFから販売されているルセリンTPO(Lucerin TPO))、チバ アディティブスから販売されているイルガキュア1700の第1成分(25重量%)であるビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシドを含む。イルガキュア1700の第2成分(75重量%)は2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンである。2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンもダロキュア(Darocur)1173と名づけられた単一の光重合開始剤として利用可能である。フリーラジカルタイプの光重合開始剤の更なる例は、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ヒドロキシメチルフェニルプロパノン、ジメトキシフェニルアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(2−ヒドロキシ−2−プロピル)−ケトン、ジエトキシフェニルアセトフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフォン、及びそれらの混合物を含む。更なる例は、アミン共力剤を含むベンゾフェノン、ビフェニルベンゾフェノン(すなわち、トリガノール(Triganol)12)、PBZ(4−フェニルベンゾフェノン)、ITX(2−イソ−プロピル−チオキサントン)、及びOMBB(o−メチルベンゾイルベンゾエート)を含む。
【0040】
別の実施形態において、硬化性組成物はカチオン型硬化性組成物を含む。当業者に理解されるように、カチオン型硬化システムにおいては、ルイス酸が照射により開始剤から形成され、その後に酸が架橋反応を開始させる。当業者に周知の従来のモノマーは、エポキシオリゴマー又は脂環式エポキシ樹脂であっても良く、それらは一分子中に2つより多くのエポキシ基を有しても良い。ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールAグリシジルエーテル、エポキシウレタン樹脂、グリセリントリグリシジルエーテル、ジグリシジルヘキサヒドロフタレート、二量体酸のジグリシジルエステル、例えば3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシシクロヘキサン)カルボキシレートなどの(メチル)シクロヘキセンのエポキシ化誘導体、又はエポキシ化ポリブタジエンが例として挙げられる。ポリエポキシ化合物の平均分子質量(Mn)は10000未満であることが好ましい。例えばシクロヘキセンオキシド、ブテンオキシド、ブタンジオールジグリシジルエーテル、又はヘキサンジオールジグリシジルエーテルなどの反応性希釈剤が使用されても良い。
【0041】
カチオン型硬化システム用の光重合開始剤は、照射作用を受けると光分解によりルイス酸を放出するオニウム塩として良く知られている物質である。その例は、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩、又はヨードニウム塩である。トリアリルスルホニウム塩が好ましい。カチオン型硬化システム用の光重合開始剤は、個別の又は混合物のカチオンにより重合可能なプレポリマー、反応性希釈剤及び重合開始剤の合計に対して、0.5から5重量%の量で用いられる。
【0042】
別の実施形態においては、硬化性組成物は電荷移動錯体を含んでも良く、電荷移動錯体は、電荷供与基を有する不飽和化合物と電子求引基を有する不飽和化合物から得られる。当該化合物は、電子供与基に結合された重合可能な不飽和部分と電子求引基に結合された別の重合可能な不飽和部分とを含む。錯体が二つ以上の化合物由来の場合、一般に、電子供与化合物の電子求引化合物に対する二重結合のモル比は、約0.5から約2、より一般的には約0.8から約1.2、好ましくは約1:1である。
【0043】
好適な電子求引化合物は以下から選択される:
下記式で表されるマレイン酸ジエステル、
【化1】


下記式で表されるマレイン酸アミドハーフエステル(maleicamide halfesters)、
【化2】


下記式で表されるマレイン酸ジアミド、
【化3】


下記式で表されるマレイミド、
【化4】


下記式で表されるマレイン酸ハーフエステル、
【化5】


下記式で表されるマレイン酸ハーフアミド(maleicacid half amides)、
【化6】


下記式で表されるフマル酸ジエステル、
【化7】


下記式で表されるフマル酸モノエステルハーフアミド(fumaric acid monoester halfamides)、
【化8】


下記式で表されるフマル酸ジアミド、
【化9】


下記式で表されるフマル酸モノエステル、
【化10】


下記式で表されるフマル酸モノアミド、
【化11】


下記式で表されるエキソメチレン構造体、
【化12】


下記式で表されるイタコン酸誘導体、
【化13】


式1−13のニトリル誘導体、及び式1−13のイミド誘導体。X及びYはそれぞれOR、OR、NHR、NHR、NR及びOHからなるグループから選択され、上記式1−13におけるR及びRはそれぞれ脂肪族基又は芳香族基から選択される。
【0044】
脂肪族基は、1から22の炭素原子、好ましくは1から12の炭素原子を有するアルキル基を含む。一般的な芳香族基はフェニル、ベンジル、ビフェニルを含む。好適な化合物の他の例には、例えばマレイン酸及びフマル酸の対応するニトリル及びイミド誘導体が含まれる。
【0045】
具体的な電子求引化合物は、無水マレイン酸、マレアミド、N−メチルマレアミド、N−エチルマレアミド、N−フェニルマフェアミド、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート及びジエチルフマレート、アダマンタンフマレート、及びフマル酸ジニトリルである。2、3、4又はそれ以上の不飽和基を有する化合物を含む多官能性、すなわち多価不飽和の、化合物は、同様に使用可能であり、実際には好ましい。ポリエチレン型の不飽和ポリエステル、例えばフマル酸及びマレイン酸又はそのアルデヒド由来のポリエステルが例として挙げられる。
【0046】
好適な電子供与化合物は以下から選択される:
下記式で表されるビニルエーテル、
【化14】


下記式で表されるアルケニルエーテル、
【化15】


下記式で表される置換シクロペンテン、
【化16】


下記式で表される置換シクロヘキセン、
【化17】


下記式で表される部分的に置換されたフラン又はチオフェン、
【化18】


下記式で表される部分的に置換されたピラン又はチオピラン、
【化19】


下記式で表される環置換のスチレン。
【化20】


上記式中のnは1〜5の整数であり、最大値は環構造中の炭素原子の数に依存する。Rx及びRは、それぞれ1から12個の炭素原子を一般に有する脂肪族基又はフェニル基などの芳香族基であり、R3、R4及びR5はそれぞれH、脂肪族基、好ましくはメチル、エチル、プロピルなどの1〜12個の炭素原子を有するアルキル基であり、ZはO及びSからそれぞれ選択される。
【0047】
エーテルに関しては、モノビニルエーテル及びジビニルエーテルが特に好ましい。モノビニルエーテルの例には、通常は1から22個の炭素原子、好ましくは4〜12個の炭素原子の鎖長を有するアルキルビニルエーテルが含まれる。ジビニルエーテルは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、3メチルプロパントリオール及びペンタエリスリトールを含む例えば2から6個のヒドロキシ基を有するポリオールのジビニルエーテルを含む。
【0048】
具体的な電子供与化合物の例には、モノブチル−4−ブトキシカルボネート、エチルビニルジエチレングリコール、p−メトキシスチレン、3,4−ジメトキシウロペニルベンゼン、N−ビニルカルバゾール、プロペニルジエチレングリコール、N−プロペニルカルバゾール、モノブチル−4−プロペニルブトキシカルバネート、モノフェニル−4−プロペニルブトキシカルボネート、及び4−プロペニルアニソールが含まれる。
【0049】
別の実施形態においては、硬化性組成物は一つ以上の不飽和ポリエステルを含んでいても良く、それは、エステル、無水物若しくは酸塩化物、及び多価アルコールなどの、多塩基性酸又は対応する酸当量誘導体の縮合生成物である。重合可能な不飽和が多塩基性酸又は多価アルコールの選択によってポリエステル分子に導入されても良く、それはα、β−エチレン不飽和を含む。例えば、ペンダントの不飽和を有する多価アルコールはグリセロールモノメタクリレートである。しかし、多くの場合、不飽和は多塩基性酸ユニットに含まれるであろう。任意に、重縮合の分野において周知である一つ以上の追加ポリ酸が不飽和ポリ酸に加えて用いられる。これらのエチレン不飽和ポリ酸は、限定する必要は無いが、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、フェニレンジアクリル酸、シトラコン酸、及びメサコン酸を含む。また、そのような不飽和ポリエステルは、スチレン又はメチルメタクリレートなどの反応性希釈剤を含んでも良く、照射又はフリーラジカル触媒及び促進剤によって硬化されても良い。
【0050】
別の実施形態において、硬化性組成物はエン・チオールカップリング反応に適合されたモノマーを含んでも良い。または、硬化性組成物は含硫ポリマーを形成するためにジオレフィン及びジチオールを含んでも良い。
【0051】
別の実施形態においては、硬化性組成物は水又はアルコールを除去することによる硬化、すなわち、縮合反応に適合したモノマーを含んでも良い。この実施形態においては、一般に赤外線エネルギー(IR)の形である熱エネルギーが、反応系から水を放出し始めるために必要である。そのような反応の例は、織物、布の“パーマネントプレス”処理などのための仕上げ剤に用いられるメスロレート化(methlolated)誘導体である。
【0052】
ある実施形態において、硬化性組成物は、IR架橋ビニルアクリル酸エマルジョンと組み合わされたメチオレート化(methyolated)アクリルアミドエーテルアクリレートの使用されている。これらの化合物の組み合わせは加熱すると架橋し、最初は水溶性である化合物を架橋されると不溶性に変質させる。しかし、この種類の反応においては発熱が起きず、反応を完了するために加熱が必要であることが認識されなければならない。
【0053】
上述の硬化性組成物は高固形分の水性システムであっても良く、例えばエマルジョン化されていても良い50から95重量%の固形分を含む。しかし、硬化性組成物は、水と共に又は水無しで導入可能な100%の被覆化合物であっても良い。または、上述の硬化性組成物は分散体又は溶液であっても良い。硬化性組成物を硬化することにより生じる発熱によって(以下、参照)又は標準的な脱水手段によって、後に除去されなければならない水の添加を最小限にするために、硬化性組成物は最低限の水を含んでいることが好ましい。
【0054】
硬化性組成物のガラス転移温度(Tg)は、約5から70℃の範囲であることが好ましい。
【0055】
本発明の方法は、シート材又はセルロースベースの製品を少なくとも部分的に乾燥する段階を更に含んでも良い。乾燥は、シート材を加熱すること、及び/又はシート材を減圧すること、及び/又は本発明のシート材の上に例えば空気などの加熱ガス(任意に乾燥ガス)流を流すことを含む。
【0056】
製紙に有用である充填材の例には、炭酸カルシウム、タルク、雲母、粘土(clay)、シリカ粉末、コロイダルシリカ、硫化バリウム、水酸化アルミニウム、ガラス粉末、アルミナ粉末、二酸化シリコン粉末、ガラスビーズ、及び砕砂が含まれる。これらの充填剤は、硬化性組成物で含浸/被覆することができ、硬化性組成物の担体として機能しても良く、又は硬化性組成物が充填剤の担体として機能しても良い。
【0057】
理論に拘束されることは望まないが、本出願人は、本発明はある実施形態においてセルロース繊維のウェブ中にインターペネトレイティングポリマーネットワーク(Interpenetrating Polymer Network)(IPN)をもたらしていると考えている。製造される紙製品の機械的性質の上昇又は(質の低い繊維を用いた場合における)維持は、IPNを有するポリマーの固有の強度に原因があると推測される。しかし、再度理論に拘束されることは望まないが、本出願人は別の実施形態において、硬化性組成物が繊維を一緒に接着している又は隣接する繊維間に架橋結合を形成しており、それは硬化した組成物が存在しない場合には存在しない又は著しく少なくなっており、結果的に機械的性質の向上(すなわち、“パルプの融合”)をもたらすと考えている。繊維は、ファンデルワールス力による結合よりも、化学的に結合していると考えられる。
【0058】
好適な実施形態においては、硬化性組成物はほぼ水溶性である。ウェブに導入される硬化性組成物の量は希望の効果を実現できる量である。例えば、添加可能な量はセルロース繊維の乾燥固形分の約1から85重量%の範囲であるが、好ましい範囲は約5から75%である。ウェブに添加される硬化性組成物の量は、セルロース繊維の乾燥固形分の約0.2から1、1から5、5から10、10から15、15から20、20から25、25から30、30から35、35から40、40から45、45から50、50から55、55から60、60から65、65から70、70から75、75から80、又は80から85重量%であることが好ましい。ウェブに添加される硬化性組成物の量は、約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25,26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84又は85%であることが好ましい。
【0059】
硬化性組成物は、上述したように電子ビーム照射(EB)により効果可能であることが好ましい。しかし、UV、IR又はガンマ線などの別の種類の照射が適していることも理解される。電子ビーム照射の一つの利点は、光重合開始剤の使用が必要ないことであり、又は硬化性組成物中に少量のみが必要であることである。硬化段階は、約0.5ミリラド、1ミリラド、1.5ミリラド、2ミリラド、2.5ミリラド、又は3.0ミリラドのEBを用いることが好ましい。
【0060】
硬化性組成物はいかなる方法で脱水されたセルロース繊維の基材に導入されても良いことが理解される。例えばある実施形態においては、硬化性組成物は乾燥前に基材上に塗布又はスプレーされる。硬化性組成物は基材の片面又は両面に塗布されても良く、組成物は基材を完全にぬらす又は染み込むことが好ましいことが理解される。または、硬化性組成物は、当該分野において周知であるように、粘土粒子などの好適な担体上にコーティングされていても良く、又はセルロース繊維上にコーティングされている若しくは含浸されていても良い。別の実施形態においては、脱水されたセルロース繊維のウェブは、硬化性組成物のタンクを通され、その後すぐに硬化及び乾燥される。別の実施形態においては、セルロース繊維のウェブは脱水されて、その後に硬化性組成物がそこに導入されて、硬化される。更に別の実施形態においては、上記構成の組み合わせが考えられる。
【0061】
第5の側面によると、本発明は基材から水を除去する方法を提供しており、当該方法は、基材に硬化性組成物を導入する段階と、硬化性組成物を硬化する段階と、を有し、硬化性組成物は基材の含水率を低下するのに適している。
【0062】
ある実施形態においては、硬化性組成物は発熱しながら硬化し、基材の含水率を低下させるのに十分な熱を放出する。硬化性組成物が水溶性である別の実施形態においては、水は硬化性組成物の硬化(架橋)の際にシート材から排出される。説明すると、硬化性組成物は最初は水溶性であり、硬化によってほぼ水に溶けないポリマーに変質する。本出願人は、この方法は、シート材から水を“発散する”、“浸出させる”又は“除去する”のに効果的であり、排出された水は効果的にシート材の含水率を減少させると考えている。硬化したポリマーは疎水性が上昇することによってシート材からの水の除去を促進することが好ましい。本出願人は、モノマーの重合による熱の放出とほぼ疎水性であるポリマーへのその同時の変質とは、シートから水を放出するために相乗的に作用すると考えている。硬化性組成物は水溶性であると共に、ほぼ水に溶けない組成物へと硬化し、硬化性組成物の硬化の際にシート材から水が排出され、結果的に基材の含水率が低下することが好ましい。さらに、理論に縛られることは望まないが、本出願人は、ポリマーはセルロース繊維に化学的に結合しており、それはシートから水を排出するために更に相乗的に作用すると考えている。硬化性組成物は個々の繊維の表面に吸着されても良いし、繊維中に吸収されてもよいことが理解される。好ましいモノマー/オリゴマーは、高度に水溶性であり、親水性であり、完全に透明な溶液から選択される。好適なプレポリマーの例は、プレポリマー鎖に沿った反応のヒドロキシル末端基とNH基を有するアミン塩で修飾されたエポキシアクリレートである。重合は、照射、又はオリゴマーの重合を引き起こす熱及びフリーラジカル触媒によって引き起こされることが好ましい。ポリマーの架橋はポリマーを疎水性にする。水素結合により結合されたプレポリマー内の希釈水は、急速に形成される疎水性ポリマーから押し出され、水素結合は消滅する。水の排出は重合の発熱反応の熱によって補助される。一般的な組成は60%のアミン塩で修飾されたエポキシアクリレート、38%の水及び2%のダロキュア1173を含んでおり、組成物はUV若しくはEB照射又は熱及びレドックス系触媒によって硬化される。
【0063】
第6の側面において、本発明はほぼ脱水されたセルロース繊維のウェブから水を除去する方法を提供し、当該方法は、硬化性組成物をウェブに導入する段階、及び硬化性組成物を硬化する段階を有し、硬化性組成物は発熱して硬化するように選択されており、硬化性組成物の量は、基材の含水率を低下させるために十分な熱を放出させるのに十分である。硬化性組成物の量は、ウェブをほぼ乾燥させるのに十分な熱の放出もたらすのに十分であることが好ましい。ウェブは硬化性組成物の硬化の放熱作用によって完全に乾燥する必要は無く、ウェブは重合反応の発熱作用によってある程度脱水されれば十分であることが理解される。しかし、好ましい実施形態においては、ウェブは完全に乾燥される。
【0064】
基材が脱水されたセルロース繊維のウェブである実施形態において、基材の含水率はおよそ80から85%である。つまり、基材は基材自体の製造工程由来の残留水を含んでいる。さらに、基材に導入される硬化性組成物は更に水を含んでおり、基材の合計含水率が上昇しても良い。基材がほぼ乾燥したセルロース繊維のウェブ又は合成ポリマー繊維の乾燥したウェブである関連する実施形態において、硬化性組成物自体が水の供給源である。これらの実施形態のそれぞれにおいて、水は硬化性組成物の導入前に基材中に存在しているか、又は乾燥した基材に導入されている。本発明は反応(重合)の熱の放出によってこの水の除去を補助している。
【0065】
当業者は、紙製品などの基材又は支持ウェブから水を除去するコストが重要であると考えている。これは主に水の比較的高い熱容量に起因する。本出願人は、硬化性ポリマーが発熱しながら硬化するように選択されている場合、セルロース材料のほぼ脱水されたウェブは、当該脱水されたウェブに硬化性組成物を導入して硬化性組成物を硬化することによって、(エネルギー源のエネルギー必要量とは別に)ほとんど又は全く更に加熱することなく更に乾燥可能であることを見出した。硬化性組成物の賢明な選択及び脱水されたウェブにおけるその濃度は、硬化の際にかなりの発熱をもたらし、それによってウェブから残存する又は余剰の水を排出できる。例えば、セルロース材料のほぼ脱水されたウェブはその合計の重量の約80から85重量%の残留水を有する。本発明はこの残留水の大幅な低減をもたらし、大幅に乾燥コストを削減できる。残留水は一般的な乾燥方法によって除去可能であることが理解されるが、本発明の発熱性の硬化性組成物を導入することによってかなりの量の水が除去されるため、乾燥セクションは長さを大幅に低減できることが理解される。
【0066】
硬化性組成物は、セルロースベースの製品の機械的性質を向上させる、及び発熱しながら硬化することによってウェブをほぼ乾燥させるように選択されることが好ましい。本発明の重要な利点はそれが従来の製紙機械に適用可能である点であることが理解される。また、製紙機械はより短い乾燥セクションを有するように設計可能になるため、本発明は製紙機械の資本コストを大幅に減少可能であることも理解される。好適な実施形態においては、硬化性組成物はできる限り早く発熱できる最短時間で硬化され、それによって残存/残留する水を基材から“素早く排出(flash off)”できることが理解される。この実施形態を実現するために、硬化は電子ビーム照射によって開始される。
【0067】
上述したように、低品質のセルロース繊維が“維持”又は改善された機械的性質を有する紙製品を製造するために使用可能であり、及び/又は乾燥に必要なエネルギー量が減少できるため、本発明の方法は製紙工程における二酸化炭素排出量を大幅に減少できる。繊維をフィブリル化するために必要な叩解のレベルが低減されており、叩解処理は比較的エネルギー消費が大きいと当業者に理解されていることからも、二酸化炭素排出量の更なる減少が本発明の方法によってもたらされる。再生繊維が使用可能であることにより、二酸化炭素排出量の更なる低減がもたらされる。また、電子ビーム硬化処理は熱などの他の硬化法と比べて相対的に少量の電力を消費するため、電子ビーム硬化の使用は二酸化炭素排出量の更なる低減をもたらすことができる。例えば、電子ビームは熱エネルギー法の約20%の電力を消費する。製紙業の二酸化炭素排出量は、大きなエネルギー必要量とパルプの原材料のための森林の消費との組み合わせのために、世界的に重要な懸念事項になっている。
【0068】
本発明の別の実施形態においては、不織の穴あけ加工されたポリマーフェルトなどの支持ウェブを形成する事前に形成された基材に硬化性組成物が導入される。このウェブは本発明の組成物に含浸又は被覆されて、その後に電子ビーム硬化により硬化される。十分量の組成物が導入されることによって、両面に滑らかな表面を形成することができる。十分なセルロース繊維のみが従来の紙の見た目を形成するために導入される必要があることが理解される。さらに、従来の充填材も当業者に知られているように利用可能である。この実施形態の製造方法は、湿ったスラリー状態からの製造というよりも、担体であるウェブを被覆する被覆方法である。もちろん、セルロースではない繊維もポリマーフェルト又はウェブを“充填”するために使用可能である。
【0069】
文脈上明確に他の意味に解すべき場合を除き、明細書及び請求項において、“有する”、“含む”などの語句は、排他的又は網羅的意味とは反対の包括的な意味、すなわち、“含むが、限定しない”の意味で解釈されなければならない。
【0070】
動作例以外の場合、又は他のものが示されている場合、本明細書において用いられている有効成分又は反応条件の量を表す全ての数字は、全ての例において語句“約”によって修飾可能であることが理解されなければならない。例は、本発明の範囲を限定することを意図していない。以下において、又は他のものが示されている場合において、“%”は“重量%”を意味しており、“比”は“重量比”を、“部”は“重量部”を意味する。
【0071】
本発明の好適な実施形態は、例示である添付図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は単純化された概略状態の一般的なフォードリニア製紙装置の湿潤末端を図示しており、本発明の組成物が支持ウェブに導入される実施形態を示している。
【図2】図2は図1に示されているフォードリニア装置の乾燥セクション(“乾燥末端”)の主要部材を図示している。
【図3】図3は合成不織ウェブ支持材を用いた本発明のシート材を製造する実施形態を図示している。
【図4】図4は合成不織ウェブ支持材を用いた本発明のシート材を製造する別の実施形態を図示している。
【図5】図5は、合成不織ウェブ支持材がその場で形成される本発明のシート材を製造する別の実施形態を図示している。
【発明を実施するための形態】
【0073】
本発明の説明及び請求項における特定において、下記の用語が以下に規定される定義に基づいて使用される。本明細書において用いられる用語は本発明の具体的な実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図していないことが理解されなければならない。他の意味で規定されている場合を除き、本明細書で用いられる全ての技術及び技術用語は本発明が属する分野の当業者に一般的に理解されるものと同じ意味でなければならない。
【0074】
終点を用いた数値範囲の規定は、その範囲内に属する全ての数字を含む(例えば、1から5は1、1.5、2、2.75、3、3.8、4、5などを含む)。
【0075】
“好ましい”、“好ましくは”の語句は、ある条件下において、ある利点をもたらす発明の実施形態に対して用いられる。しかし、同じ又は別の条件下においては別の実施形態が好ましい場合もある。さらに、一つ以上の好ましい実施形態の記載は、他の実施形態が役に立たないことを意味しておらず、本発明の範囲から他の実施形態を排除することを意図していない。
【0076】
本発明において、硬化性組成物を脱水されたセルロース繊維の支持ウェブに導入する例を指す場合は、用語“導入”は硬化性組成物をウェブに導入するためのあらゆる手段を含むと理解されなければならない。これは製造方法の“上流”及び/又は“下流”であっても良い。例えば、硬化性組成物は(脱水の前又は後に)ウェブに直接コーティング又はスプレーされても良く、好適な担体を用いて導入されても良い。または、硬化性組成物は硬化性組成物のタンクにウェブを通すことによって導入されても良い。別の変形として、硬化性組成物はウェブの形成前に繊維パルプに混合されても良い。また、現在考えられるように、他の変形も実行可能であり、発明の範囲に入ると考えられなければならない。
【0077】
本発明は、全ての点に関して例示であり非限定的であると考えられなければならない以下の実施例を参照して説明される。
【0078】
最初に図1及び2を参照すると、一般的なフォードリニア製紙装置の湿潤及び乾燥末端がそれぞれ示されている。硬化性組成物が基材に導入される工程中の位置はAからDで標識されている。硬化性組成物を導入する好適な方法はこれらの図に関連する以下の実施例において説明される。
【0079】
実施例1
第1の実施形態において、硬化性組成物は、一般にセルロースのスラリー及び他の一般的な製紙用化合物を導入する混合容器1におけるポイント“A”で導入される。そのスラリーは、当該分野において周知であるように、ヘッドボックス2に移され、その後に製紙装置の成形ワイヤー3上に連続的に堆積される。混合容器1に導入される硬化性組成物の濃度は、成形ワイヤー3上での脱水中に起こる様々な損失の原因となるように選択される。硬化性組成物の重合は、プレスセクション4の後及び乾燥セクション5の前に電子ビーム照射によって行われる。この実施例においては、硬化性組成物は紙ウェブの厚み全体にわたって均一に分散されており、出願人は、この構成が硬化性組成物の重合した架橋構造によって向上した引張強度をもたらすことを見出した。
【0080】
実施例2
この実施例においては、硬化性組成物は、部分的に成形された紙ウェブ8の両面に細いスプレーノズルを介して“B”で導入される。この時点のウェブは一般に80%から85%の含水率であるため、好ましくは水溶性である硬化性組成物はある程度ウェブ8に染み込むが、ウェブの表面に近いほど高い濃度になる。上記実施例と同様に、硬化性組成物の重合はプレスセクション4の後であり乾燥セクション5の前に電子ビーム照射により行われる。
【0081】
実施例3
硬化性組成物は、プレスセクション4の後であり乾燥セクション5の前である“C”で紙ウェブに導入される。この実施例においては、紙ウェブはプレス作用によって部分的に成形されており、約70%から75%に低下した含水率である。硬化性組成物は細いスプレーノズルを介してウェブに接触し、ウェブが乾燥セクション5に入る前にすぐに電子ビーム照射によって重合される。
【0082】
実施例4
この実施例においては、硬化性組成物はポイント“D”において被覆として脱水された紙ウェブ8に接触する。被覆の組成は以下のとおりである。
硬化性組成物 最大約10%
CaCO 40から約60%(他の補完充填剤を含む)
O 最大約30%
アクリルのエマルジョン 最大約10%
脱水されたウェブ8は適当な手段によって被覆されており、それは、限定はしないが、ローラーコーティング、ブレードコーティング、エアーナイフなどを含む。硬化性組成物の流動性は異なるコーティング方法に適合するよう調整可能である。流動はニュートン流動であることが好ましく、粘度はザーン#2で30から40秒に調節される。
【0083】
硬化性組成物は、電子ビーム照射によって基材に導入された直後に重合され、(最大30%の水である)被覆の水分は、重合化処理によって生じる発熱及び親水性モノマーから疎水性ポリマーへの移行によってほぼ瞬時に蒸発する。
【0084】
図3から5を参照すると、基材が不織ポリマーウェブ10である本発明のシート材を製造する別の方法が示されている。これらの図は以下の実施例においてより詳細に説明される。
【0085】
実施例5
図4を参照すると、成形ワイヤー3は、セルローススラリーと硬化性組成物とを含む混合物6を通過する。ドラム7内の真空が成形ワイヤー3を介して混合物を引き寄せることによって、ウェブ8が形成される。ドラム7を通った混合物は混合物6へと戻される。混合容器(“ヘッドボックス”)11もセルローススラリー及び硬化性組成物を有しており、それは成形ワイヤー3上に堆積される。不織布10のロール9は装置を通って引き出され、セルロース繊維/硬化性組成物のウェブ8の両面にコーティングを受ける。コーティングされた不織布10は、ローラー12の間でプレスされることによって基材を脱水し、その後に電子ビーム照射装置13によって硬化される。
【0086】
この実施形態においては、従来の紙の見た目を有するが比較的少量のセルロース繊維を利用する紙製品の形態であり、比較的高い強度及び引き裂き抵抗を備えるシート材20を提供するために、ポリマーの不織基材10は、炭酸カルシウム、充填剤、相対的に量が少ないセルロース繊維、及び本明細書で説明された硬化性組成物の組み合わせを含む混合物で両面をコーティングされる。
【0087】
別の実施例においては、下側の成形ワイヤー21が、帯電電位を有すると共に、反対の電荷を有しており硬化性組成物でコーティングされた乾燥繊維粒子の流動床を通っている。乾燥繊維粒子は下側の成形ワイヤー21及びウェブに引き付けられ、不織布10によって被覆/上塗りされる。繊維及び硬化性組成物の一番上の層は、その後に繊維/硬化性組成物で更に被覆され、電子ビームによって硬化される。この方法はほぼ乾燥しているため、蒸発の必要がある水分は存在しない。
【0088】
実施例6
図5を参照すると、図4と類似の製紙方法が示されており、同様の構造物には同様の参照番号が付されている。この場合、不織ポリマー基材10はその場で作られる。説明すると、回転/振動ヘッドを備える押し出し機14はウェブ8の上部に不織布10を継続的に作る。その後、セルロース繊維の更なる層が、混合容器(“ヘッドボックス”)11から不織布10の上に配置される。それは真空15の利用によって成形ワイヤー3を介して引き寄せられる。
【0089】
その場で形成された不織ポリマー基材10は、例えば、押し出される際には液状であり、その後、処理ラインにおいて照射された後に熱硬化する非常に高い分子量の反応性オリゴマーでできている。この実施形態においては、セルロース繊維及び硬化性組成物の上側及び下側の被覆はこの不織ポリマー基材10に結合されている。
【0090】
別の実施形態において、図3に最も良く示されるように、不織ポリマー基材10は取り出しリール16から引き出され、硬化性組成物及びセルローススラリーを塗布するために一対のコーティングローラ17を通され、上述されたようにその後すぐに硬化され、巻き取りリール18に巻き取られる。この実施形態においては、担体となる溶媒無しで本発明のシート材を形成することができる、すなわち、全体が乾燥したシステムである。しかし、スラリーを用いて不織ポリマー基材10がコーティングされ、ウェブに加えられた水は発熱性の硬化処理によってほぼ蒸発することが好ましい。
【0091】
別の実施形態においては、不織布基材10は高い軟化点の熱溶解物として押し出されても良い。この場合、組成物が冷えるとウェブが形成されるため、照射は必要ない。ポリマーはナイロン(登録商標)又は他の好適な合成ポリマーであっても良い。
【0092】
関連する側面において、不織布基材10はNCO自由端基を有する高分子量のウレタンであっても良い。コーティングされた基材は、液状担体を要することなく、反応性末端基を架橋(重合)させるアミンガスのチャンバーを通されても良いことが理解される。
【0093】
実施例3
例えば、平方メートルあたり36g(gsm)の新聞印刷用紙が両面に以下の硬化性組成物を接触させられ、電子ビームによって硬化される。
アミドエーテルアクリレート(amideether acrylate) 10%
アクリルエマルジョン 10%
消泡剤 0.4%
湿潤剤 0.6%
粘土 50%
二酸化チタン 10%
ダロキュア1173 3%
水 適量
【0094】
硬化したシートは、縦方向で1.47kNmから1.98kNm、横方向で0.916kNmから1.13kNm引張強度が上昇した。これらの結果は15回の個別の試験の平均から得られた。試験に3ミリラジアンの線量率を用いた試験ではほとんどの紙の機械的強度の性質は大幅に低下したため、これらの結果はより驚くべきものである。
【0095】
本発明は具体例を参照しながら説明されたが、当業者は多くの別の形態でも実施可能であることを理解するであろう。特に、説明された様々な例の内の一つの特徴は、説明された他の例と組み合わせることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材を製造する方法であって、
硬化性組成物を基材に加える段階と、
前記硬化清楚生物を硬化する段階と、
を有し、硬化性組成物を含まない基材から作られたシート材に対して製造されたシート材の機械的性質を向上又は改善できる十分な量の硬化性組成物が基材に加えられることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記シート材が、標準的な紙製品と比べて、縦方向及び/又は横方向において向上した引張強度を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
硬化性組成物を含まない基材から作られたシート材に対する縦方向の引張強度の向上率が1%以上であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
硬化性組成物を含まない基材から作られたシート材に対する縦方向の引張強度の向上率が10%以上であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の方法。
【請求項5】
硬化性組成物を含まない基材から作られたシート材に対する縦方向の引張強度の向上率が25%以上であることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
硬化性組成物を含まない基材から作られたシート材に対する縦方向の引張強度の向上率が35%以上であることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
硬化性組成物を含まない基材から作られたシート材に対する横方向の引張強度の向上率が1%以上であることを特徴とする請求項2から請求項6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
硬化性組成物を含まない基材から作られたシート材に対する横方向の引張強度の向上率が5%以上であることを特徴とする請求項2から請求項7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
硬化性組成物を含まない基材から作られたシート材に対する横方向の引張強度の向上率が10%以上であることを特徴とする請求項2から請求項7のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
硬化性組成物を含まない基材から作られたシート材に対する横方向の引張強度の向上率が25%以上であることを特徴とする請求項2から請求項8のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記基材が脱水されたセルロース繊維のウェブからなる支持ウェブを含むことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記基材が不織ポリマー繊維のウェブを含むことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記シート材が紙又は紙製品としての使用に適していることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記シート材が印刷に適しており、標準的な紙製品と同様の可撓性を有することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記シート材が吸水性のペーパータオルのようにスポンジ状にするのに適していることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記シート材は見た目を布のようにするのに適していることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記シート材が上質紙、新聞印刷用紙、又は雑誌印刷用紙の見た目を有することを特徴とする請求項1から請求項12のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記シート材に印刷する段階を有し、印刷性が、硬化性組成物を含まない基材から作られたシート材と少なくとも同等であることを特徴とする請求項1から請求項17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記シート材が、硬化性組成物を含まない基材から作られたシート材と比べて少ないエネルギー量で製造されることを特徴とする請求項1から請求項18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
セルロースベースの製品の製造方法であって、
硬化性組成物を脱水されたセルロース繊維のウェブに接触させる段階と、
硬化性組成物を硬化する段階と、
を有し、硬化性組成物を含まない対応するセルロースベースの製品と比較してセルロースベースの製品の機械的性質を向上又は改善できる十分な量の硬化性組成物が用いられることを特徴とする方法。
【請求項21】
通常のセルロース繊維を含むセルロースベースの製品と比較して、比較的品質の低いセルロース繊維を用いたセルロースベースの製品の機械的性質を少なくとも維持できる十分な量の硬化性組成物が用いられることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
基材から水を除去する方法であって、
硬化性組成物を基材に導入する段階と、
硬化性組成物を硬化する段階と、
を有し、硬化性組成物は基材の水分を低減するのに適していることを特徴とする方法。
【請求項23】
前記硬化性組成物は発熱しながら硬化し、基材の水分を減らすのに十分な熱を放出することを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
硬化性組成物は水溶性であり、水に難溶性の組成物へと硬化し、前記硬化性組成物の硬化の際に水が前記シート材から排出されることによって、基材の含水率が低下することを特徴とする請求項22又は請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ほぼ脱水されたセルロース繊維のウェブから水を除去する方法であって、
硬化性組成物を前記ウェブに導入する段階と、
前記硬化性組成物を硬化する段階と、
を有し、前記硬化性組成物は発熱しながら硬化するように選択され、前記硬化性組成物の量は基材の含水率を低下するのに十分であることを特徴とする方法。
【請求項26】
前記硬化性組成物の量は、前記ウェブをほぼ乾燥させるのに十分な熱を放出するのに十分であることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記硬化性組成物は水溶性であり水に難溶性の組成物へと硬化し、前記硬化性組成物の硬化の際に前記シート材から水が排出されることによって基材の含水率が低下することを特徴とする請求項25又は請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記硬化性組成物は、一つ以上のモノマー、プレポリマー、ポリマー若しくはオリゴマー、又はそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1から請求項27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記モノマー、プレポリマー、ポリマー又はオリゴマーは、水溶性であり、エマルジョン化されており、分散体であり、溶液であり、又は高固体の水性システムであることを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記モノマーはN−メチロールアミドエーテルアクリレートであることを特徴とする請求項28又は請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記硬化性組成物は、UV照射、電子ビーム照射、X線照射又は加熱によって硬化可能であることを特徴とする請求項1から請求項30のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−504708(P2012−504708A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529413(P2011−529413)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【国際出願番号】PCT/AU2008/001473
【国際公開番号】WO2009/043110
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(511085057)フィルセン プロプライエタリー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】