説明

シート材用浮揚装置

【課題】隣接する浮揚室2,2を屈折させた状態で連ねる。
【解決手段】シート走行路Rに沿う仮想平面Pを挟んで一方側及び他方側の各々に複数のノズル箱からなるノズル群N1,N2を配置した浮揚室2の複数を連ね、隣接する浮揚室2,2の仮想平面P,Pどうしが、隣接する浮揚室2,2の間でのシート材の浮揚状態を確保できる交差角度θで交差していること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックフィルム又は紙等のシート材を無接触の浮揚(フローティング)状態で走行させつつ、シート材に擦り傷等のダメージを与えることなく乾燥や硬化等の処理を行う浮揚室の複数を連ねたシート材用浮揚装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の浮揚室からなるシート材用浮揚装置は、シート走行路に沿う仮想平面を挟んで一方側及び他方側にノズル群を配置した浮揚室の複数について、隣接する浮揚室の仮想平面どうしを直線状に連ねることが常識である(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−152274号公報
【特許文献2】特開平10−319611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シート材には、耳端カール防止等の観点から、隣接する浮揚室の間で屈折させて走行させたい要請のものもある。また、シート材用浮揚装置を設置する建物には、建物内部の構造等から、隣接する浮揚室を屈折させた状態で連ねたい要請のものもある。
【0005】
しかし、従来のシート材用浮揚装置は、隣接する浮揚室の仮想平面どうしを直線状に連ねているため、上記要請に応えることができない。
【0006】
本発明は、上記要請に応えるために、隣接する浮揚室を屈折させた状態で連ねたシート材用浮揚装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
隣接する浮揚室を屈折させた状態で連ねるために請求項1記載の本発明が採用した手段は、図1乃至図4に示す如く、シート走行路Rに沿う仮想平面Pを挟んで一方側及び他方側の各々に複数のノズル箱3からなるノズル群N1,N2を配置した浮揚室2の複数を連ねたシート材用浮揚装置1において、隣接する浮揚室2,2の仮想平面P,Pどうしが、隣接する浮揚室2,2の間でのシート材Wの浮揚状態を確保できる交差角度θ(図2)で交差していることを特徴とするシート材用浮揚装置1である。
【0008】
隣接する浮揚室の間でシート材の安定した浮揚状態を確保するために請求項2記載の本発明が採用した手段は、隣接する浮揚室2,2における一方側の隣接するノズル群N1,N1の間、及び他方側の隣接するノズル群N2,N2の間の各々に、ガス供給装置の吸気路に連通するガス還流空間Dが形成されている請求項1記載のシート材用浮揚装置1である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の本発明に係るシート材用浮揚装置は、隣接する浮揚室の仮想平面どうしを交差させることで、隣接する浮揚室の間でのシート材の浮揚状態を確保しつつ隣接する浮揚室を屈折させた状態で連ねることができる。
【0010】
請求項2記載の本発明に係るシート材用浮揚装置は、ノズル箱から吹出してシート材を浮揚させた後のガスが、隣接する浮揚室の間のガス還流空間へ至ると、ガス還流空間を通過してガス供給装置の吸気路に吸引されるので、隣接する浮揚室の間のガス還流空間にガスを淀ませることなく、隣接する浮揚室の間でシート材を安定よく浮揚させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るシート材用浮揚装置(以下、「本発明シート材用浮揚装置」と言う。)の第1の実施形態を示す断面した側面図である。
【図2】第1の実施形態における隣接する浮揚室2,2の接続部を拡大して断面した側面図であって、図(A)は隣接する仮想平面P,Pが交差する状態を示し、図(B)はシート材Wの浮揚状態を示す。
【図3】第1の実施形態における浮揚室2を示す断面した側面図である。
【図4】第1の実施形態における浮揚室2を示す断面した正面図である。
【図5】第1の実施形態においてシート材Wを浮揚させている上下両側のノズル箱3,3を拡大して示す側面図である。
【図6】本発明シート材用浮揚装置の第2の実施形態を示す断面した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明シート材用浮揚装置を図面に示す実施形態に基づいて説明する。なお、「前」「後」「左」「右」「上」及び「下」は、各図面に示す通りであり、左右方向をシート材Wの横断方向に沿うようにしてある。
【0013】
(第1の実施の形態)
図1乃至図5は第1の実施形態に係る本発明シート材用浮揚装置1を示すものであり、本発明シート材用浮揚装置1は、図1に示す如く、シート走行路R(波動曲線状となる)に沿う仮想平面Pを挟んで一方側(上側)及び他方側(下側)の各々に複数のノズル箱3からなるノズル群N1,N2を配置した浮揚室2の複数室を連ねたものである。仮想平面Pは、図5に示す如く、一方側(上側)のノズル群N1を構成する各ノズル箱3の平坦部(シート走行路Rに対面する部分)7aと、他方側(下側)のノズル群N1を構成する各ノズル箱3の平坦部7aとの中間に位置することになる。本発明シート材用浮揚装置1の改良点は、図2(A)に示す如く、隣接する浮揚室2,2の仮想平面P,Pどうしを、シート材Wの浮揚状態を確保できる(同図(B)参照)交差角度θ(例えば、1〜10度の範囲で選択される角度)で交差させたことである。
【0014】
前記浮揚室2は、図3及び図4に示す如く、シート走行路Rが貫通する室内2aを囲む上下左右四辺の仕切壁部4と、シート走行路R(仮想平面P)を挟んで上下両側に配置したノズル群N1,N2と、上側のノズル群N1の各ノズル箱3に連通する給気ダクト5と、下側のノズル群N2の各ノズル箱3に連通する給気ダクト6とを備えている。ノズル群N1,N2の各々は、左右方向へ延びる複数個のノズル箱3,3…を適宜寸法Sの間隔を開けて配置し、ノズル群N1の隣接するノズル箱3,3の間に、ノズル群N2のノズル箱3を対向させるようにしてある。給気ダクト5,6は、浮揚室2の室外に配置したガス供給装置(図示略)のガス供給路に分配ダクト9を介して連通され、ガス供給装置から供給されたガス(例えば、空気や窒素ガス等の気体)Gを各ノズル箱3へ供給するようにしてある。浮揚室2は、仕切壁部4に還流口10が開設され、還流口10に接続した還流ガス用ダクト11を介してガス供給装置(図示略)のガス還流路と室内2aを連通させ、各ノズル箱3から噴出したガスGが室内2aを通過してガス供給装置へ還流するようにしてある。ガス供給装置は、ガス供給路とガス還流路の間に循環ファンと熱交換器を備え、熱交換器を制御することで、各ノズル箱3から設定温度のガスを噴出させ、シート走行路Rを走行するシート材Wに処理(乾燥、加熱硬化又は冷却等の処理)を施すようになっている。
【0015】
前記ノズル箱3は、図5に示す如く、左右に長いガス案内板7と、ガス案内板7の前後外縁に開設された左右方向に長い前後一対のガス噴出スリツト8,8とを有している。該ガス案内板7は、静圧保持部となる平坦部7aと、平坦部7aの前後縁部で彎曲した前後一対のコアンダ部7c,7cと、コアンダ部7c,7cから延設した前後一対の裾部7b,7bとが形成されている。前記ガス噴出スリツト8,8は、裾部7b,7bの外表面をガスGの案内面とするように開設されている。該ガス噴出スリツト8,8から噴出したガスGは、裾部7b,7bで案内されてコアンダ部7c,7cに達し、コアンダ部7c,7cでコアンダ効果により平坦部7aへ方向転換し、平坦部7aにプラス静圧を発生させつつ平坦部7aから離反してシート材Wへ吹き付けられる。シート材Wは、各ノズル箱3の平坦部7aとの間に発生したプラス静圧のクッション的な保持作用により波動曲線を描くように保持されて浮揚する。
【0016】
前記ガス供給装置(図示略)は、ガスを吸引・圧送する送風機と、ガスを設定温度まで加熱する加熱装置と、還流したガスの一部を排出して、浮揚室2へ供給するガス中の蒸発ガス(乾燥等で生じた蒸気)濃度を一定にする排気装置とを備えている。本例におけるガス供給装置は、一組の浮揚室2毎に設けられ、ノズル箱3,3…から噴出するガスの風速や温度の条件を各浮揚室2毎に設定できるようにしてある。なお、一組の浮揚室2のノズル群N1,N2のガス条件を異にするように、ノズル群N1に連通するガス供給装置とノズル群N2に連通するガス供給装置とを個別に備えることもある。
【0017】
前記隣接する浮揚室2,2は、図2に示す如く、各浮揚室2の四辺の仕切壁部4の前後側端部にフランジ部12を備え、隣接するフランジ部12,12どうしを気密性の有る蛇腹等からなる可撓性で筒状の気密性のある接合部14で接合し、室内2a内のガスを室外へ漏洩させないようにしてある。隣接する浮揚室2,2の接合箇所の構造は、図2に示すように、前側の浮揚室2の後端側に位置する上方のノズル箱3と、後側の浮揚室2の前端側に位置する下方のノズル箱3とを対向させるか、または図示は省略したが、前側の浮揚室2の後端側に位置する下方のノズル箱3と、後側の浮揚室2の前端側に位置する上方のノズル箱3とを対向させるようにし、隣接する浮揚室2,2の全体にわたって、上下のノズル箱3を交互に千鳥配置するようにしてある。隣接する浮揚室2,2の接合部14で接合された内側は、前記ガス供給装置(図示略)の吸気路に連通するガス還流空間Dとなっており、図2(B)に示す如く、ノズル箱3から吹出してシート材Wを浮揚させた後のガスGがガス還流空間Dへ至ると、ガス還流空間Dを通過してガス供給装置(図示略)の吸気路に吸引されるので、隣接する浮揚室2,2の間のガス還流空間BにガスGを淀ませることなく、隣接する浮揚室2,2の間でシート材Wを安定よく浮揚させることができる構造となっている。
【0018】
前記各浮揚室2は、図1に示す如く、枠組された架台16の上に高さ調節可能な脚部15を介して支持され、仮想平面Pと水平面の交差角度を脚部15で調整して、図2(A)に示す隣接する浮揚室2,2の仮想平面P,Pどうしの交差角度θを1〜10度の範囲で選択した所望角度値に変更できるようになっている。
【0019】
本発明シート材用浮揚装置1は、隣接する浮揚室2,2の仮想平面P,Pどうしを交差させることで、隣接する浮揚室2,2を屈折させた状態で連ねることができ、シート材Wの耳端カール防止、又は建物の内部の構造に浮揚室2,2…の配置を対応させることができる。
【0020】
(第2の実施の形態)
図6に示す実施の形態に係る本発明構造21は、浮揚室2,2の配置を前側から後側へ向かって下り傾斜させた点が、上り傾斜させた前記第1の実施の形態と大きく異なり、その他の部分については第1の実施の形態と実質的に同一であり、図6において図1乃至図5と同一符号は相当部分を示す。
【符号の説明】
【0021】
1(21)…本発明シート材用浮揚装置、2…浮揚室、2a…室内、3…ノズル箱、4…仕切壁部、5…給気ダクト(上側)、6…給気ダクト(下側)、7…ガス案内板、7a…静圧保持部、7b…裾部、7c…コアンダ部、8…ガス噴出スリット、9…分配ダクト、10…還流口、11…還流ガス用ダクト、12…フランジ部、14…接合部、15…脚部、16…架台、D…ガス還流空間、G…ガス、N1,N2…ノズル群、P…仮想平面、R…シー走行路、W…シート状基材、θ…交差角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート走行路に沿う仮想平面を挟んで一方側及び他方側の各々に複数のノズル箱からなるノズル群を配置した浮揚室の複数を連ねたシート材用浮揚装置において、隣接する浮揚室の仮想平面どうしが、隣接する浮揚室の間でのシート材の浮揚状態を確保できる交差角度で交差していることを特徴とするシート材用浮揚装置。
【請求項2】
隣接する浮揚室における一方側の隣接するノズル群の間、及び他方側の隣接するノズル群の間の各々に、ガス供給装置の吸気路に連通するガス還流空間が形成されている請求項1記載のシート材用浮揚装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−56712(P2013−56712A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194594(P2011−194594)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000119254)株式会社テクノスマート (18)
【復代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
【復代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
【Fターム(参考)】