説明

シート材

【課題】優れた滑り止め性能を有しているとともに、リクライニング動作時の身体にかかる負荷を軽減することができるシート材を提供する。
【解決手段】
リクライニング機能を有する寝具または家具に用いられるシート材であり、該シート材を構成する布帛のうち、上半身が当接する部分には静摩擦係数が0.15以上0.4以下の布帛を用い、かつ、下半身が当接する部分には静摩擦係数が1.0以上の布帛を用いてなるシート材である。前記シート材は、上半身が当接する部分と下半身が当接する部とで異なる性質の布帛を用いることにより、優れた滑り止め性能を得るとともに、リクライニング動作時の身体にかかる負荷を軽減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リクライニング機能を有する寝具または家具に用いられるシート材に関する。さらに詳しくは、上半身が当接する部分と下半身が当接する部分とが異なる性質の布帛で構成されてなるシート材であり、リクライニング動作時に身体にかかる負荷を軽減し、かつ、リクライニング動作時に身体がずれるのを防止する機能に優れたシート材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リクライニング機能を有する寝具または家具として、椅子やソファ等の家具、ベッド等の寝具などがあり、日常生活に用いられるもののほか、医療用、介護用などがある。
【0003】
また近年は、高齢化社会に伴い、身体の不自由な高齢者や、身体障害者、病人などの寝たきりの患者のために、リクライニングベッドが多く使用されている。このリクライニングベッドは、病院、介護施設、自宅などで使用され、食事の際などに、仰向けに寝ている状態から要介護者の上半身を起き上がらせることができる。
しかしながら、リクライニング機能によって上半身を起き上がらせる場合、背もたれ部が上昇するに従って身体が過度に下方向へずれ、一定位置を保つことが難しい問題がある。
また、シーツやカバーなどを併用する場合は、それ自体が滑りやすく、上半身を起き上がらせる際にすぐにずり落ちてしまうという問題がある。また、シーツがずれることにより、身体も一緒にずれるという問題もある。
特に、自力で踏ん張ったり体勢を直したりすることのできない病人や要介護者などの場合は、リクライニング動作時に体勢を維持できずにベッドからずり落ちる危険性もある。
【0004】
このような問題を解決する手段として、滑り止め機能を有した布帛やシート、マットなどが開発されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、繊維布帛基材の少なくとも片面にマイクロカプセルをバインダー樹脂により固定してなる滑り止め布帛が開示されている。
しかし、特許文献1に開示されている滑り止め布帛は片面全体に防滑性を有しているため、過度に全身が固定された状態となる。したがって、リクライニング機能によって上半身を起き上がらせる際に、下半身と同時に首や肩、下腹部なども固定され、結果臀部に著しく負荷がかかるという問題がある。
【0006】
また、特許文献2には、滑り止め加工が施された突起部を適宜間隔で複数設け、突起部が倒れる状態により、下方向には滑り止め効果が生じ、上方向には容易に身体を滑らせて動かすことのできる滑り防止布が開示されている。
これによれば、身体が下方向へずれることを防止するとともに、下方向にずれた場合でも容易に元に戻すことができる。
しかし、起き上がった状態からベッドの背もたれ部を倒す際には、起き上がる前の位置よりも身体が上方向へずれるおそれがあり、上方向に身体がずれた場合には位置を直すのが困難となる問題がある。
【0007】
【特許文献1】特開2002−13080号公報
【特許文献2】特開2003−166167号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、優れた滑り止め機能を有しているとともに、リクライニング動作時に身体にかかる負荷を軽減することのできるシート材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意研究の結果、上半身が当接する部分と下半身が当接する部分とで異なる性質の布帛を用いることにより、優れた滑り止め性能を得るとともに、リクライニング動作時に身体にかかる負担を軽減できることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成させるに到った。
【0010】
すなわち、本発明は、リクライニング機能を有する寝具または家具に用いられるシート材であり、該シート材を構成する布帛のうち、上半身が当接する部分には静摩擦係数が0.15以上0.4以下の布帛を用い、かつ、下半身が当接する部分には静摩擦係数が1.0以上の布帛を用いてなるシート材である。
【0011】
静摩擦係数が1.0以上である布帛は、基布表面に防滑層を形成してなることが好ましい。
【0012】
前記防滑層は、発泡性樹脂からなることが好ましい。
【0013】
また、本発明のシート材は、ベッドパッドの表皮材として好ましく用いられる。
【0014】
また、本発明のシート材は、椅子張地として好ましく用いられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上半身が過度に固定されないため、リクライニング動作時に身体にかかる負荷を解消することができる。また、下半身は防滑効果によって適度に固定されるため、リクライニング動作時に身体がずれることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のシート材は、リクライニング機能を有する寝具または家具に用いられる。
【0017】
ここで言う寝具または家具としては、日常生活で使用される椅子、ベッド、ソファなどのほか、医療用、介護用に使用される椅子、ベッド、ソファなどが挙げられ、主に人が座る、寝る、横たわるなどの際に使用するものを意味する。なかでも、自力で体勢を変えることのできない人が使用する介護用ベッドや医療用ベッドなどが、滑り止めシートの需要という点から好ましい。
【0018】
本発明のシート材にかかるものとしては、例えばベッドに関するものであれば、ベッドのマットレスを覆うシーツ、マットレスの上に敷いて用いるベッドパッドの表皮材、ベッドパッドをさらに覆う取り外し可能なカバー材などが具体的に挙げられる。また、例えば椅子に関するものであれば、椅子やソファの椅子張地、椅子やソファをさらに覆う取り外し可能なカバー材などが具体的に挙げられる。
【0019】
本発明のシート材を構成する布帛のうち、上半身が当接する部分に用いられる布帛は、静摩擦係数が0.15以上0.4以下であることが求められる。静摩擦係数が0.15未満であると、平滑性が高すぎるために、リクライニング動作時に上半身が横に傾くおそれや、身体がベッドから滑り落ちるおそれがあり、特に高さのあるベッドなどに使用した場合は転落する危険性もある。一方、静摩擦係数が0.4より大きい場合、上半身との摩擦により滑りが悪くなるため、使用者に引っかかるような違和感を与え、また身体にかかる負荷が増加する。以下、静摩擦係数が0.15以上0.4以下である布帛を、平滑性布帛と称す。
【0020】
前記平滑性布帛は、前記範囲内の静摩擦係数を有していれば、基布のみで構成されていてもよく、また、フィルムラミネート加工など、摩擦を減少させる加工が施されてなるものでもよい。
【0021】
平滑性布帛を構成する基布としては、繊維糸条を用いて製織される織物、繊維糸条を用いて製編される編物、不織布などが挙げられ、なかでも耐久性や強度の点から織物が好ましい。
【0022】
前記織物の織組織としては、特に限定するものではないが、例えば、平織、朱子織(サテン)、綾織(ツイル)などが挙げられる。
【0023】
平滑性布帛に用いられる繊維は、天然繊維、化学繊維、無機繊維など、特に限定するものではないが、なかでも、汎用性、布帛の製造工程、物性などの点から、ポリエステル系繊維、ナイロン系繊維などの合成繊維が好ましい。
【0024】
なお、平滑性布帛は、その製造過程で、必要に応じて、染色加工、プリント加工、撥水加工、裏面へのコーティング処理やフィルムラミネートなどを施した防水加工、吸水加工、汚れ除去加工(SR加工)、制電防止加工、防炎加工、消臭加工、カレンダー加工による通気止めなどの公知の加工を施してもよい。
【0025】
また、下半身が当接する部分に用いられる布帛は、静摩擦係数が1.0以上であることが求められる。静摩擦係数が1.0未満であると、十分な防滑性が得られず、リクライニング動作時に身体がずれるのを十分に防止し難い。以下、静摩擦係数が1.0以上である布帛を、防滑性布帛と称す。
【0026】
前記防滑性布帛は、例えば基布の少なくとも片面に防滑層を設けることにより得られる。
【0027】
前記防滑層は、基布表面に樹脂を塗工することにより形成される。使用する樹脂としては、特に限定するものではないが、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴムラテックス系樹脂などが挙げられる。
【0028】
かかる樹脂は、発泡して使用することが好ましい。発泡することによって樹脂が多孔構造を形成し、これにより静摩擦係数を向上することができる。ただし、目的とする防滑性を付与することができれば樹脂を発泡せずに使用しても何ら問題はない。
【0029】
樹脂の発泡方法としては、ミキサー等で攪拌することで樹脂に空気を含ませ機械的に発泡させる機械発泡、熱により膨張する成分を樹脂中に含ませることにより発泡させる化学発泡などが挙げられる。なかでも、発泡の均一性、加工安定性、磨耗等の物理的強度が高いという点から、機械発泡が好ましい。
【0030】
なお、防滑層を形成する樹脂には、顔料、シリコンオイルやワックス等のブロッキング防止剤、酸化亜鉛や銀等の消臭剤などを必要に応じて適宜付与してもよい。付与方法としては、発泡する前の樹脂に任意に混合する方法や、樹脂コーティングを行った後にスプレー処理等で付与する方法などがある。
【0031】
かかる樹脂の乾燥付着量は、10〜200g/mであることが好ましく、30〜150g/mであることがより好ましい。乾燥付着量が10g/m未満であると、目的とする静摩擦係数が得られないおそれがある。また、200g/mよりも多くなると、布帛が重くなる、硬くなる、風合いが悪くなるなどの弊害が生じるおそれがあり、またコストが高くなるため経済的でない。
【0032】
かかる樹脂を塗工する方法としては;ナイフコーター、コンマコーター等により全面に塗工する方法;ロータリープリント、スクリーンプリント等により全面または一部に塗工する方法;グラビア、スプレー等により一部に塗工する方法など、公知の技術を採用すればよい。なかでも、耐摩耗性や耐洗濯性、均一性の点で、ナイフコーターによる塗工が好ましい。
【0033】
また、かかる樹脂を塗工する前処理として、常法により基布に撥水加工を施すことが好ましい。これにより、後工程で塗工する樹脂が基布の裏面に染み出すことを抑制することができる。
【0034】
防滑性布帛を構成する基布としては、特に限定するものではないが、例として、繊維糸条を用いて製織される織物、繊維糸条を用いて製編される編物、不織布などが挙げられる。また、基布組織に関しても特に限定するものではなく、用途や目的などに応じて適宜選択すればよい。
【0035】
防滑性布帛に用いられる繊維は、天然繊維、化学繊維、無機繊維など、特に限定するものではないが、なかでも、汎用性、布帛の製造工程、物性などの点から、ポリエステル系繊維、ナイロン系繊維などの合成繊維が好ましい。
【0036】
なお、本発明に用いられる防滑性布帛は、前記撥水加工のほか、製造過程で必要に応じて、染色加工、プリント加工、コーティングやフィルムラミネートなどの防水加工、汚れ除去加工(SR加工)、防炎加工、消臭加工などの公知の加工を施してもよい。
【0037】
以下、本発明の理解を容易にするために具体例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、リクライニング機能を有する寝具または家具の形状や用途などに応じて適宜選択することができる。
【0038】
本発明のシート材の一例として、リクライニング機能を有する介護用ベッドに用いるベッドパッドについて説明する。
図1は、本発明の一例であるベッドパッドの概略説明図である。
【0039】
ベッドパッドとは、ベッドのマットレスや敷布団の上に敷いて使用するパッドである。
【0040】
本発明の一例であるベッドパッド1は、上半身が当接する部分の表皮材およびその裏側の表皮材に平滑性布帛2および平滑性布帛3を用い、かつ、下半身が当接する部分の表皮材およびその裏側の表皮材に防滑性布帛4および防滑性布帛5を用いてなる。これら表皮材は、図1に示すような形状に縫製されてベッドパッドを構成し、内部にはクッション材(図示せず)を有する。
【0041】
ここで、上半身が当接する部分とは、ベッドパッドをベッドに設置した場合に身体の上半身が当接する部分を意味し、一般的にリクライニングベッドの背もたれ部を起き上がらせる際に生じるベッドパッドの屈折部分よりも上側の面をさす。また、下半身が当接する部分とは、ベッドパッドをベッドに設置した場合に身体の下半身が当接する部分を意味し、リクライニングベッドの背もたれ部を起き上がらせる際に生じるベッドパッドの屈折部分よりも下側の面をさす。
【0042】
前記ベッドパッドは、上半身が当接する部分の表皮材に平滑性布帛を用いることで、上半身が過度に固定されるのを防ぐ。
【0043】
上半身が当接する部分の裏側にあたる表皮材は特に限定されないが、なかでも平滑性布帛を用いることで、リクライニング動作に合わせて、上半身を支持しているベッドパッド部分がベッドに対し適度にスライドし、より円滑に体勢を変えることができる。
【0044】
一方、下半身が当接する部分の表皮材およびその裏側にあたる表皮材は、防滑性布帛を用いることにより、下半身を適度に固定するとともに、ベッドパッド自体がずれるのを防ぐ。
【0045】
前記ベッドパッドに用いるクッション材は、特に限定するものではないが、例えばウレタンフォームなどが挙げられる。
【0046】
なお、前記ベッドパッドは、ベッドシーツなどのその他の寝具類と併用してもよい。
【0047】
また、本発明のその他の一例として、本発明のシート材を、リクライニング機能を有する寝具または家具の上張地とすることもできる。その場合は、平滑性布帛を上半身が当接する部分の上張地として用い、防滑性布帛を下半身が当接する部分の上張地として用いることが求められる。
【0048】
そのほか、本発明にかかるシート材は、リクライニング機能を有する寝具または家具の形状に応じて、形状を適宜決定することが可能である。
【0049】
本発明のシート材は、上半身が当接する部分に平滑性布帛を配置し、下半身が当接する部分に防滑性布帛を配置することが重要である。その組み合わせと配置を満たすものであれば、平滑性布帛と防滑性布帛は必ずしも縫合されている必要はない。
【実施例】
【0050】
以下、実施例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の%とは、重量%を意味し、部とは、重量部数を意味する。
実施例の中で行われている評価は、下記の方法に従った。
【0051】
(1)布帛の判断基準
[静摩擦係数]
JIS A 1407に基づき、静摩擦係数測定機(HEIDON社製)を用いて測定した。
試験片を上昇板に固定し、平面圧子には、綿100%の平織布(経糸および緯糸に50番手の綿糸を用いた目付200g/mの平織物)を取り付けた。水平状態にある上昇板が測定開始と同時に傾斜していき、平面圧子が滑り始めた時点の上昇板の角度を測定した。そして、測定した角度より、静摩擦係数を求めた。
なお、今回用いた測定機で測定可能な静摩擦係数の上限は1.6である。
【0052】
(2)下半身が当接する部分の防滑性評価
表1に示す実施例および比較例に挙げるベッドパッドを用いて、リクライニング機能を有する介護用ベッドに設置して実際に使用し、リクライニング動作時における下半身が当接する部分の防滑性について、下記の評価基準により評価した。

下半身が当接する部分の防滑性評価基準
○:防滑効果がある。
×:十分な防滑効果が得られない。
【0053】
(3)身体にかかる負荷の評価
表1に示す実施例および比較例に挙げるベッドパッドを用いて、リクライニング機能を有する介護用ベッドに設置して実際に使用し、リクライニング動作時における首、肩、下腹部、臀部などにかかる負荷に対して下記の評価基準により評価した。

負荷評価基準
○:(首、肩、下腹部、臀部などに対し)負荷とは感じない程度である。
△:使用上で問題ない程度である。
×:負荷を大きく感じる。
【0054】
(4)総合使用感評価
表1に示す実施例および比較例に挙げるベッドパッドの総合使用感評価を下記の評価基準により行なった。

総合評価基準
○:使用感が良い。
△:使用上で問題ない程度である。
×:使用感が悪い。

なお、総合使用感の評価において、○(使用感が良い)と判断したものを合格とした。
【0055】
[布帛の作製]
下記に示す方法により、実施例および比較例のベッドパッドに用いる布帛1〜9を作製した。
【0056】
[布帛1]
経糸および緯糸が250dtex/48フィラメントのレギュラーポリエステル糸を用い、経糸密度が120本/インチ、かつ、緯糸密度が98本/インチの3/2ツイルを作製した。得られた布帛1の静摩擦係数は、0.15であった。
【0057】
[布帛2]
経糸および緯糸が55dtex/36フィラメントのレギュラーポリエステル糸を用い、経糸密度が120本/インチ、かつ、緯糸密度が90本/インチの朱子織物を作製した。得られた布帛2の静摩擦係数は、0.22であった。
【0058】
[布帛3]
経糸および緯糸が167dtex/72フィラメントのレギュラーポリエステル糸を用い、経糸密度が100本/インチ、かつ、緯糸密度が80本/インチの平織物を作製した。得られた布帛3の静摩擦係数は0.35であった。
【0059】
[布帛4]
84dtex/36フィラメントのレギュラーポリエステル糸を用い、丸編機にて、コース方向の糸密度が40本/インチ、かつ、ウェル方向の糸密度が28本/インチのスムース組織編地を作製した。
次いで、処方1に示す組成からなるフィルム形成物を、塗工量50g/mとなるように離型紙上にコーティングし、ウレタンフィルムを作製した。次いで、前記ウレタンフィルムに、処方2に示す組成からなる接着剤を、塗工量20g/mとなるようにコーティングした後、乾燥機にて100℃条件下で乾燥し、ドライラミネート手法により前記スムース組織編地表面に接着させ、布帛4を作製した。得られた布帛4の静摩擦係数は、0.35であった。

処方1:ウレタンフィルム組成
クリスボン5116ELD(大日本インキ化学工業(株)、ウレタン樹脂) 100部
DMF 25部
トルエン 25部

処方2:接着剤組成
クリスボンTA−170(大日本インキ化学工業(株)、ウレタン接着剤) 100部
バーノックDN950(大日本インキ化学工業(株)、架橋剤) 10部
アクセルT(大日本インキ化学工業(株)、促進剤) 1部
トルエン 50部
【0060】
[布帛5]
ラミネート加工を行なわないこと以外は、布帛4と同様にして布帛を作製した。得られた布帛5の静摩擦係数は、0.45であった。
【0061】
[布帛6]
経糸および緯糸が22dtexモノフィラメントのレギュラーポリエステル糸を用い、経糸密度および緯糸密度が150本/インチの平織物を作製した。得られた布帛6の静摩擦係数は0.10であった。
【0062】
[布帛7]
経糸および緯糸に84dtex/36フィラメントのレギュラーポリエステルフィラメント糸を使用し、経糸密度が75本/インチ、かつ、緯糸密度が50本/インチの平織物を作製し、精練および染色加工を行なった。次いで、処方3に示す組成からなる撥水処理液をパディング処理し、120℃で2分間乾燥した後さらに170℃で1分間熱処理した。

処方3:撥水処理剤組成
AG−7000(明成化学工業(株)製、フッ素系撥水剤) 2%
水 98%

次いで、処方4に示す組成からなる防滑剤をミキサーにより混合攪拌して機械発泡させ、これを前記撥水処理布帛に乾燥付着量が70g/mとなるようにナイフコーターを用いて付与し、110℃で1分間熱処理することにより布帛7を作製した。

処方4:防滑剤組成
DICNAL K−2505(大日本インキ化学工業(株)、アクリル樹脂)100部
DICNAL M−20(大日本インキ化学工業(株)、整泡剤) 3部
DICNAL M−40(大日本インキ化学工業(株)、整泡剤) 4部
DICNAL MX(大日本インキ化学工業(株)、増粘剤) 0.5部
アンモニア2.8%水溶液 0.5部

得られた布帛7の静摩擦係数は、1.6であった。
【0063】
[布帛8]
処方5に示す組成からなる樹脂を、発泡させずに、乾燥付着量が60g/mとなるようにナイフコーターを用いて付与したこと以外は、布帛7と同様にして、布帛8を作製した。

処方5:樹脂組成
DICNAL K−2505(大日本インキ化学工業(株)、アクリル樹脂)100部
DICNAL MX(大日本インキ化学工業(株)、増粘剤) 0.5部
アンモニア2.8%水溶液 0.5部

得られた布帛8の静摩擦係数は、1.0であった。
【0064】
[布帛9]
処方6に示す組成からなる樹脂を、発泡させずに使用した以外は、布帛7と同様にして布帛9を作製した。

処方6:樹脂組成
DICNAL K−2523(大日本インキ化学工業(株)、アクリル樹脂)100部
DICNAL MX(大日本インキ化学工業(株)、増粘剤) 0.5部
アンモニア2.8%水溶液 0.5部

得られた布帛9の静摩擦係数は、0.8であった。
【0065】
[実施例]
ベッドパッドを構成する、上半身が当接する部分の表皮材およびその裏側にあたる表皮材、下半身が当接する部分の表皮材およびその裏側にあたる表皮材の4箇所に対し、表1に示すように布帛を組み合わせ、縫製を行うことにより、実施例1、2および比較例1〜6のベッドパッドを作製した。
[評価]
実施例1、2および比較例1〜6のベッドパッドについて、下半身が当接する部分の防滑性、身体にかかる負荷、および総合使用感を評価した。結果を表1に示す。
なお、表1の中で、布帛番号と共に記載した数値は、布帛の静摩擦係数である。
【0066】
実施例1および2のベッドパッドは、いずれも身体への負荷が軽減され、使用感のよいものであった。
比較例1のベッドパッドは、全てに平滑性布帛を用いたため、リクライニング動作時に身体が滑るのを防止できず、さらにベッドパッド自体もリクライニング動作時にずれてしまうというものであった。
比較例2のベッドパッドは、全てに防滑性布帛を用いたため、下半身が滑るのを防止することはできるが、上半身も固定されることになり、リクライニング動作時に身体に負荷がかかるものであった。
比較例3のベッドパッドは、上半身の滑り性が悪く、リクライニング動作時に身体にかかる負荷が軽減されるものではなかった。
比較例4のベッドパッドは、上半身の滑りが良すぎるために、リクライニング動作時に上半身が横方向に傾いてしまい、姿勢を維持することができなかった。
比較例5のベッドパッドは、下半身が当接する部分の防滑性が十分でなく、リクライニング動作時に身体が滑るのを防止できなかった。
比較例6のベッドパッドは、裏側全面に防滑性布帛を用いたため、リクライニング動作時にベッドパッド自体がずれるということはないが、ベッドパッドの表側全面に平滑性布帛を用いたため、身体が滑るのを防止することはできず、よって目的の効果は得られなかった。
【0067】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一例であるベッドパッドの概略説明図。
【符号の説明】
【0069】
1 ベッドパッド
2 平滑性布帛(表側)
3 平滑性布帛(裏側)
4 防滑性布帛(表側)
5 防滑性布帛(裏側)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リクライニング機能を有する寝具または家具に用いられるシート材であり、該シート材を構成する布帛のうち、上半身が当接する部分には静摩擦係数が0.15以上0.4以下の布帛を用い、かつ、下半身が当接する部分には静摩擦係数が1.0以上の布帛を用いてなるシート材。
【請求項2】
静摩擦係数が1.0以上である布帛が、基布表面に防滑層を形成してなることを特徴とする請求項1に記載のシート材。
【請求項3】
前記防滑層が発泡性樹脂からなる請求項2に記載のシート材。
【請求項4】
ベッドパッドの表皮材であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシート材。
【請求項5】
椅子張地であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシート材。

【図1】
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【公開番号】特開2009−275320(P2009−275320A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129306(P2008−129306)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】