説明

シート状製品の検査システム及びシート状製品の検査方法

【課題】欠陥位置の検出や特定をする処理を簡単に行うことができるシート状製品(偏光板原反)の検査方法を提供する。
【解決手段】帯状の偏光板原反Nの幅方向端部に、偏光板原反Nの移送される方向に沿って、所定間隔毎に移送方向の位置を表わす識別情報を記録する工程と、記録された識別情報を読み取る工程と、偏光板原反Nが移送される方向の移動量を検出する工程と、偏光板原反Nの表面欠陥を検査する検査工程と、読み取られた識別情報と検出された移動量とに基づいて、検出された表面欠陥の位置を演算し、この演算された位置情報を記憶装置9に記憶する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状のシート状製品の表面に存在する欠陥の位置を記録するのに好適なシート状製品の検査方法及び検査システム及びシート状製品及び枚葉物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
帯状のシート状製品として、例えば、液晶表示装置に用いられる偏光板原反がある。帯状の偏光板原反から個々の偏光板を打ち抜くまでの工程は、次のように行われている。まず、偏光板原反の表面に存在するキズ等の欠陥を検出する。欠陥が検出されると、その欠陥箇所にマーキングを行い、偏光板原反をロールに巻き取り保管する。最終製品としての偏光板には、ユーザーからの仕様に応じて種々の大きさがあるが、偏光板原反としては共通に使用することができるので、偏光板原反を大量に製造しておき、後日必要に応じて(個々のユーザーからの注文に応じて)、偏光板原反から必要な大きさの偏光板製品を打ち抜きするようにしている。偏光板製品を得る場合には、表面欠陥が存在する位置を避けなければならない。したがって、欠陥を検出すると共に、その欠陥の位置を記憶装置に記憶させておく必要がある。欠陥の位置を記憶させておくのは、欠陥を検出した後に、ただちに偏光板製品を帯状の偏光板原反から打ちぬくわけではないからである。すなわち、 欠陥位置を検出する工程と、偏光板製品を打ち抜く工程とは別工程であり、両者はまったく別の時期に行われることもありうる。そこで、欠陥位置を検出した後、この位置情報を記憶装置に記憶させるようにしている。
【0003】
帯状のシート状製品の表面の欠陥を検出する技術を開示する公知技術として、下記の特許文献1,2が例としてあげられる。
【0004】
特許文献1に開示される欠陥マーキング装置では、シート状製品に表面の画像を取得して画像処理を行うことで欠陥を検出し、欠陥が存在する位置にマーキングを施す。
【0005】
特許文献2に開示されるウェブ状素材の不良位置検査確定方法では、検査開始位置を特定する工程、不良位置を検査し抽出する工程、2個以上複数の基準位置を確定する工程とを含んでいる。また検査終了位置も確定する。不良位置は、上記基準位置に基づいて確定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−148198号公報(要約)
【特許文献2】特開2000−19127号公報(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は次の通りである。すなわち、 特許文献1では、欠陥位置に直接マーキングを行っているが、マーキングを行うことで、そのシート状製品の厚みが局所的に厚くなる。欠陥を検出した後、シート状製品をロールに巻き取った形で保管することがあるが、マーキングをした状態でロールに巻き取ると、マーキングをしたことが原因でシート状製品の表面にキズをつけてしまうなどの新たな欠陥を生じさせる可能性があり好ましくない。
【0008】
特許文献2では、そのようなマーキングを行わないで、不良位置(欠陥位置)を検出してデータにより管理することができるものであるが、不良位置を確定するために検査開始位置と検査終了位置を確定しなければならず、複数の工程で検査を行う場合は、検査開始位置がずれてしまい欠陥位置を特定する処理が複雑となる。
【0009】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、欠陥位置の検出や特定をする処理を簡単に行うことができるシート状製品の検査方法及び検査システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本発明に係るシート状製品の検査方法は、
帯状のシート状製品の幅方向端部に、シート状製品の移送される方向に沿って、所定間隔毎に移送方向の位置を表わす識別情報を記録する工程と、
この記録された識別情報を読み取る工程と、
シート状製品が移送される方向の移動量を検出する工程と、
シート状製品の表面欠陥を検査する検査工程と、
読み取られた識別情報と検出された移動量とに基づいて、検出された表面欠陥の位置情報を演算し、この演算された位置情報を記憶装置に記憶する工程とを有することを特徴とするものである。
【0011】
この構成による検査方法の作用・効果は、以下の通りである。まず、帯状のシート状製品の幅方向端部に、所定間隔毎に移送方向の位置を表わす識別情報を記録する。この識別情報が付された位置は、シート状製品の移送方向における座標に相当するものである。また、シート状製品が移送される方向の移動量を検出する工程を有する。所定間隔ごとの識別情報と、移動量の検出により、移送方向に沿った位置を特定することができる。そこで、シート状製品の表面欠陥を検査する工程において、欠陥が検出された場合、読み取られた識別情報と検出された移動量に基づいて、欠陥位置を特定することができる。この手法によれば、検査開始位置や検査終了位置の特定といった処理は必要ない。その結果、欠陥位置の検出や特定をする処理を簡単に行うことができるシート状製品の検査方法を提供することができる。
【0012】
なお、本発明に係る各工程は連続的に行われる必要はない。例えば、識別情報を記録する工程のみを他の工程と切り離して行うこともできる。すなわち、 識別情報のみを記録した後、シート状製品を一旦ロールの形に巻き取っても良い。
【0013】
本発明の好適な実施形態として、帯状のシート状製品が移動される方向の移動量を検出する工程と、
シート状製品の幅方向端部に記録された識別情報を読み取る工程と、
前記記憶装置から欠陥の位置情報を読み出す工程と、
読み出された位置情報と、検出された移動量と、読み取られた識別情報に基づいて、帯状のシート状製品に存在する欠陥の位置を特定する工程とを有するものがあげられる。
【0014】
識別情報を記録してから欠陥の位置情報を記憶装置に記憶させた後、帯状のシート状製品から個々の製品を打ち抜き等で得るためには、欠陥の位置を特定する必要がある。そこで、記憶装置から位置情報を読み出すと共に、シート状製品の幅方向端部に記録された識別情報と、移動量の検出に基づいて、欠陥位置を特定することができる。したがって、欠陥が形成されているエリアを避けて、個々のシート状製品を得ることができる。
【0015】
本発明に係る識別情報としては、距離データを用いることができる。距離データにより、帯状シート状製品の移送方向に沿った位置座標にすることができる。
【0016】
本発明に係る識別情報としては、連番構成の数値データを用いることもできる。例えば、単純に数値を1つずつ増加させていくなどの方法を取ることができる。係る数値データも位置座標とすることができる。
【0017】
本発明の別の好適な実施形態として、前記識別情報には、日時と製品名の情報も含まれるものがあげられる。かかる情報も記録することで、シート状製品の管理を行いやすくすることができる。
【0018】
上記課題を解決するため本発明に係るシート状製品の検査システムは、
帯状のシート状製品の幅方向端部に、シート状製品の移送される方向に沿って、所定間隔毎に位置を表わす識別情報を記録する識別情報記録手段と、
この記録された識別情報を読み取る識別情報読み取り手段と、
シート状製品が移送される方向の移動量を検出する移動量検出手段と、
シート状製品の表面欠陥を検査する検査装置と、
読み取られた識別情報と検出された移動量とに基づいて、検出された表面欠陥の位置情報を演算する演算手段と、
この演算された位置情報が記憶される記憶装置とを有することを特徴とするものである。
【0019】
本発明の好適な実施形態として、帯状のシート状製品が移動される方向の移動量を検出する第2移動量検出手段と、
シート状製品の幅方向端部に記録された識別情報を読み取る第2識別情報読み取り手段と、
前記記憶装置から読み出された欠陥の位置情報と、検出された移動量と、読み取られた識別情報に基づいて、帯状のシート状製品に存在する欠陥の位置を特定する第2演算手段とを有するものがあげられる。
【0020】
かかる構成による検査システムの作用・効果は、既に述べた通りである。なお、上記欠陥を検査する検査装置は、複数あってもよく、帯状のシート状製品の特徴によっては、例えば、深さ方向に異なる欠陥を有する場合の検査に対応させることができる。あるいは、精度の異なる検査を行うことによって欠陥のレベルを把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】偏光板原反(帯状のシート状製品)に識別情報を記録する工程を説明する図
【図2】識別情報の具体例を示す図
【図3】偏光板原反の表面欠陥を検出する工程を説明する図
【図4】欠陥の位置情報の演算方法について説明する図
【図5】欠陥検査された偏光板原反から枚葉物を打ち抜く工程を説明する斜視図
【図6】欠陥検査された偏光板原反から枚葉物を打ち抜く工程を説明する制御機能ブロック図
【図7】枚葉物を打ち抜きせずにロールで巻き取る構成例を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0022】
<シート状製品の具体例>
本検査システムの説明を行うにあたり、シート状製品の例として偏光板原反をあげて説明する。偏光板原反は、長い帯状に形成され、フィルム状の偏光板原反から個々の大きさの偏光板を打ち抜きにより得るようにしている。偏光板原反Nは、予め製造しておいたPVAフィルムの表裏両面に例えばTACフィルムを貼り合わせることで得ることができる。この多層構造とされた偏光板原反Nの表面あるいは内部に存在する欠陥(キズや異物など)を検出する必要がある。
【0023】
偏光板原反Nは、(A)染色、架橋および延伸処理を施したポリビニルアルコール系フィルムを乾燥して偏光子を得る工程、(B)該偏光子の片側または両側に保護層を貼り合わせる工程、(C)貼り合わせた後に加熱処理する工程、を含む製造方法により製造される。
【0024】
ポリビニルアルコール系フィルムの染色、架橋、延伸の各処理は、別々に行う必要はなく同時に行ってもよく、また、各処理の順番も任意でよい。なお、ポリビニルアルコール系フィルムとして、膨潤処理を施したポリビニルアルコール系フィルムを用いてもよい。一般には、ポリビニルアルコール系フィルムを、ヨウ素や二色性色素を含む溶液に浸漬し、ヨウ素や二色性色素を吸着させて染色した後洗浄し、ホウ酸やホウ砂等を含む溶液中で延伸倍率3倍〜7倍で一軸延伸した後、乾燥する。ヨウ素や二色性色素を含む溶液中で延伸した後、ホウ酸やホウ砂等を含む溶液中でさらに延伸(二段延伸)した後、乾燥することにより、ヨウ素の配向が高くなり、偏光度特性が良くなるため、特に好ましい。
【0025】
上記のポリビニルアルコール系ポリマーとしては、例えば、酢酸ビニルを重合した後にケン化したものや、酢酸ビニルに少量の不飽和カルボン酸、不飽和スルホン酸、カチオン性モノマー等の共重合可能なモノマーを共重合したもの、等が挙げられる。ポリビニルアルコール系ポリマーの平均重合度は、特に制限されず任意のものを使用することができるが、1000以上が好ましく、より好ましくは2000〜5000である。また、ポリビニルアルコール系ポリマーのケン化度は85モル%以上が好ましく、より好ましくは98〜100モル%である。
【0026】
製造される偏光子の厚さは、5〜80μmが一般的であるが、これに限定するものではなく、また、偏光子の厚さを調整する方法に関しても、特に限定するものではなく、テンター、ロール延伸や圧延等の通常の方法を用いることができる。
【0027】
偏光子と保護層である透明保護フィルムとの接着処理は、特に限定されるものではないが、例えば、ビニルアルコール系ポリマーからなる接着剤、あるいは、ホウ酸やホウ砂、グルタルアルデヒドやメラミン、シュウ酸などのビニルアルコール系ポリマーの水溶性架橋剤から少なくともなる接着剤等を介して行うことができる。かかる接着層は、水溶液の塗布乾燥層等として形成されるが、その水溶液の調製に際しては必要に応じて、他の添加剤や、酸等の触媒も配合することができる。
【0028】
偏光子の片側又は両側に設ける保護フィルムには、適宜な透明フィルムを用いることができる。中でも、透明性や機械的強度、熱安定性や水分遮蔽性等に優れるポリマーからなるフィルムが好ましく用いられる。そのポリマーとしては、トリアセチルセルロースの如きアセテート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリノルボルネン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、液晶ポリマー等が挙げられる。フィルムは、キャスティング法、カレンダー法、押出し法のいずれで製造したものでもよい。
【0029】
また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルム、たとえば、(A)側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換および/非置換フェニルならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物があげられる。具体例としてはイソブチレンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物のフィルムがあげられる。フィルムは樹脂組成物の混合押出品などからなるフィルムを用いることができる。これらのフィルムは位相差が小さく、光弾性係数が小さいため偏光板の歪みによるムラなどの不具合を解消することができ、また透湿度が小さいため、加湿耐久性に優れる。
【0030】
また、保護フィルムは、できるだけ色付きがないことが好ましい。したがって、Rth=[(nx+ny)/2−nz]・d(ただし、nx、nyはフィルム平面内の主屈折率、nzはフィルム厚方向の屈折率、dはフィルム厚みである)で表されるフィルム厚み方向の位相差値が−90nm〜+75nmである保護フィルムが好ましく用いられる。かかる厚み方向の位相差値(Rth)が−90nm〜+75nmのものを使用することにより、保護フィルムに起因する偏光板の着色(光学的な着色)をほぼ解消することができる。厚み方向位相差値(Rth)は、さらに好ましくは−80nm〜+60nm、特に−70nm〜+45nmが好ましい。
【0031】
偏光特性や耐久性などの点から、トリアセチルセルロースの如きアセテート系樹脂が好ましく、特に表面をアルカリなどでケン化処理したトリアセチルセルロースフィルムが好ましい。なお、偏光フィルムの両側に透明保護フィルムを設ける場合、その表裏で異なるポリマーからなる透明保護フィルムを用いてもよい。
【0032】
保護フィルムの厚さは、任意であるが、一般には偏光板の薄型化等を目的に、500μm以下、好ましくは1〜300μm、特に好ましくは5〜200μmとされる。なお、偏光フィルムの両側に透明保護フィルムを設ける場合、その表裏で異なるポリマー等からなる透明保護フィルムとすることもできる。
【0033】
透明保護フィルムは、本発明の目的を損なわない限り、ハードコート処理や反射防止処理、スティッキングの防止や拡散ないしアンチグレア等を目的とした処理等を施したものであってもよい。ハードコート処理は、偏光板表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり、例えばシリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り性等に優れる硬化皮膜を透明保護フィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。
【0034】
一方、反射防止処理は、偏光板表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、従来に準じた反射防止膜などの形成により達成することができる。また、スティッキング防止は隣接層との密着防止を目的に、アンチグレア処理は偏光板の表面で外光が反射して偏光板透過光の視認を阻害することの防止などを目的に施されるものであり、例えばサンドブラスト方式やエンボス加工方式等による粗面化方式や透明微粒子の配合方式などの適宜な方式にて透明保護フィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。
【0035】
前記の透明微粒子には、例えば平均粒径が0.5〜20μmのシリカやアルミナ、チタニアやジルコニア、酸化錫や酸化インジウム、酸化カドミウムや酸化アンチモン等が挙げられ、導電性を有する無機系微粒子を用いてもよく、また、架橋又は未架橋のポリマー粒状物等からなる有機系微粒子などを用いることができる。透明微粒子の使用量は、透明樹脂100質量部あたり2〜70質量部、特に5〜50質量部が一般的である。
【0036】
さらに、透明微粒子配合のアンチグレア層は、透明保護層そのものとして、あるいは透明保護層表面への塗工層などとして設けることができる。アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角を拡大するための拡散層(視角補償機能など)を兼ねるものであってもよい。なお、上記した反射防止層やスティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等は、それらの層を設けたシートなどからなる光学層として透明保護層とは別体のものとして設けることもできる。
【0037】
<シート状製品の検査システムの構成>
次に、本発明に係るシート状製品の検査方法(検査システム)の好適な実施形態を図面を用いて説明する。
【0038】
<識別情報記録工程>
図1は、偏光板原反N(帯状のシート状製品)に識別情報を記録する工程を説明する図である。偏光板原反Nは、ロール1の形で保管されており、ロール1から順次引き出していくことで、偏光板原反Nの幅方向端部に識別情報を記録する。識別情報を記録された偏光板原反Nは、再びロール2の形に巻き取られて保管される。偏光板原反Nは、図1の矢印方向に、不図示の移送機構により移送され、偏光板原反Nの幅方向端部に識別情報を印字する。偏光板原反Nからは、最終的には、所定の平面形状の枚葉物(最終製品)が打ち抜きされるが、偏光板原反Nの幅方向端部は製品として利用されないエリアであるので、識別情報を印字しても問題ない。
【0039】
測長器3(移動量検出手段に相当)は、移送機構により移送される偏光板原反Nの移動量を検出する。具体的には、偏光板原反Nの移送に連動するロータリエンコーダを用いて移動量を検出する。印字装置4(識別情報記録手段に相当)は、幅方向端部に識別情報を記録(印字)するための装置であり、印字ヘッド4aを備えている。印字装置4としては、例えば、インクジェットプリンタやレーザーマーカー等を用いることができるが、特定の種類の印字装置に限定されるものではない。識別情報は、偏光板原反Nが移送される方向に沿って、等間隔に印字される。印字制御装置5は、測長器3から入力される信号に基づいて、印字装置4に対する制御を行う。すなわち、 測長器3からの移動量信号(パルス信号)に基づいて、所定間隔毎に識別情報を印字して行うように、印字装置4に指令を与える。識別情報を印字する間隔は、特定の数値に限定されるものではなく、例えば1m間隔とすることができる。
【0040】
次に、識別情報の具体例を図2により説明する。図2(a)は、バーコードにより形成した例である。バーコードと共に数値データもいっしょに印字している。数値データは、連番構成としており、101,102,103・・・と1つずつ数値を増加させている。連番構成とする場合は、図示した例に限定されるものではなく、種々の方法が考えられる。例えば、数値を1つずつ減少させても良い。増減させる数値は「1」でなくてもよい。数値ではなく、文字列(a,b,c・・)でもよい。バーコードと合わせて数値も印字することで、オペレータによる目視確認も行うことができる。数値データを読み取る場合は、バーコードを読み取ればよい。上記のような数値データは、偏光板原反Nの移送方向に沿った位置座標を表わすことになる。
【0041】
図2(b)は、二次元コードの例である。二次元コードの場合は、一次元バーコードと比べて多くの情報を記録させることができる。そこで、連番情報だけでなく、日時情報や製品番号も合わせて印字することができる。日時情報は、二次元コードを記録した日時等を記録することができる。製品情報としては、製品番号だけでなく、製品名やロット番号を印字させても良い。二次元コードの場合も、数値データをいっしょに印字することができる。図2(b)の例では、日付データと連番の数値も合わせて印字している。
【0042】
以上のような構成によれば、等間隔に識別情報を印字していけば良く、検査開始位置や検査終了位置をわざわざ特定する必要はない。
【0043】
<欠陥位置検出工程>
次に、欠陥位置を検出する工程を図3により説明する。図1で説明したように識別情報を記録したシート状製品を一旦ロールに巻き取るが、検査を行う時にはロールから引き出す必要がある。図3に示すように、ロール11から順次、帯状のシート状製品が引き出されていき、検査が終了した後、再びロール12の形に巻き取られて保管される。
【0044】
測長器13は、図1で説明した測長器3と同じ機能を有する。読み取りセンサー6(識別情報読取手段に相当)は、印字装置4により印字された識別情報を読み取る機能を有する。例えば、バーコードセンサーを用いることができる。CCDカメラ7(画像取得手段に相当)は、偏光板原反Nの画像を取得する。CCDカメラ7は、偏光板原反Nの幅方向全視野の画像を取得する必要があり、必要に応じて複数台を設置してもよい。また、CCDカメラ7に設けられる画像センサーは、ラインセンサーでもエリアセンサーでもよい。
【0045】
検査装置8は、CCDカメラ7により取り込んだ画像情報に基づいて欠陥を検出すると共に、欠陥位置を検出する。欠陥検出は、画像処理技術を用いて行うことができ、検出アルゴリズムは、公知の手法を用いることができ、説明は省略する。検出された欠陥の位置情報は、記憶装置9に記憶される。
【0046】
<欠陥の位置情報の演算>
次に、欠陥の位置情報の演算手法について図4により説明する。図4では、偏光板原反は真上から見た状態を示している。また、検査装置8の機能をブロック図にして説明している。移動量演算部8aは、測長器13から入力されるパルス信号に基づいて、偏光板原反Nの移動量を演算する。具体的には、各識別情報を基準として、識別情報からの移動量(移動距離に相当)を演算する。識別情報解析部8bは、読み取った識別情報の解析を行う。具体的には、識別情報に含まれている数値データを解析する。日時や製品番号等のデータが含まれている場合は、それらのデータについても解析する。画像処理部8cは、CCDカメラ7により取り込んだ画像情報に基づいて、欠陥が存在するか否かを解析し、また欠陥の位置も解析する。画像処理部8cにより解析される欠陥位置のデータは、取り込んだ画像の中における位置座標であり、欠陥位置の幅方向端面からの距離(図4にBで示される)が含まれている。
【0047】
欠陥位置演算部8dは、移動量演算部8aと識別情報解析部8bからの演算結果と、画像処理部8cにより検出された欠陥位置情報に基づいて、シート状製品全体における欠陥の位置情報を特定する。CCDカメラ7により画像情報を取り込んだタイミングと、その瞬間における識別情報の数値データと、移動量データに基づいて、欠陥位置を特定できる。すなわち、 図4に示すように、欠陥が連番103が記録されている位置から距離A(これは測長器13により求められる)により、偏光板原反の移送方向に沿った位置を特定することができる。また、幅方向の位置は距離B(画像情報から求められる)により特定することができる。以上のように得られた欠陥位置情報(連番103、距離A,B)は、記憶装置9に記憶される。
【0048】
以上のように、欠陥位置は、識別情報を基準として求めることができる。また、識別情報は等間隔で記録されているから、仮に、ある識別情報の表面が汚れていて読み取りセンサー6により読み取ることができなくても、それ以外の識別情報に基づいて位置を特定することが可能である。これは、識別情報は連番の数値データにより構成されているから可能になっていることである。
【0049】
<枚葉物の製造(打ち抜き)>
次に、欠陥検査された偏光板原反から枚葉物を打ち抜く(切断する)工程を図5と図6により説明する。図5に示すように、偏光板原反Nはロール21の形態に巻き取られており、枚葉物を得る場合は、ロール21から偏光板原反Nを順次、引き出していく。測長器23と読み取りセンサー16については、図3において説明した測長器13(第2位置検出手段に相当)及び読み取りセンサー6(第2識別情報読み取り手段に相当)と同じ機能を有する。
【0050】
図6において、カッター制御装置10は、カッター18を作動させて、帯状の偏光板原反Nから枚葉物Mを取り出す。枚葉物Mは、例えば、矩形形状を有しており、最終製品に相当するものである。カッター制御装置10は、移動量演算部10aと識別情報解析部10bを有しており、これは図4で説明した移動量演算部8a及び識別情報解析部8bと同じ機能を有している。欠陥位置特定部10c(第2演算手段に相当)は、記憶装置9に格納されている欠陥の位置情報と、移動量演算部10aと識別情報解析部10bの演算結果に基づいて、欠陥位置を特定する。
【0051】
カッター18(打ち抜き装置)を作動させて枚葉物Mを製造する場合、欠陥位置が含まれる枚葉物Mは適宜の方法で除去される。読み取りセンサー16とカッター18までの距離Lは、予め決まっている。また、枚葉物の大きさ(図6にWで示す)も予め決まっている。図6に示すように、記憶装置9に記憶されている欠陥の位置情報に基づき、ある識別情報(「103」のコード情報とする)から距離Aのところに欠陥があることが分かっていたとすれば、読み取りセンサー16により「103」のコード情報を読み取った時点からL+Aだけ移送した時に欠陥がちょうどカッター18の位置に来ることになる。したがって、カッター18により打ち抜かれた枚葉物Mに欠陥が存在しているか否かを判定することができる。
【0052】
欠陥が含まれる枚葉物Mについては、適宜の方法により取り除くことができる。また、図5に示すように、枚葉物Mが打ち抜かれた残りの部分は、別途巻き取るようにしている。なお、欠陥位置を避けた状態で枚葉物Mが得られるようにカッター18を作動させるようにしてもよい。
【0053】
<枚葉物を打ち抜きしない構成例>
本発明に係る検査システムによれば、欠陥の位置を精度良く(10mm以下)検出することができる。そこで、図5のように、枚葉物Mに打ち抜かないで、欠陥の位置にマーキングを行い、これを巻き取ったロールの形で製品出荷とすることもできる。かかる構成例を図7により説明する。
【0054】
図7において、マーキング装置17が設けられており、欠陥位置にマーキングを行う。マーキング装置17は、マーキング装置制御部15により制御される。マーキング装置17は、偏光板原反の幅方向に沿って移動可能なマジック17aを備えており、欠陥位置にマーキングを行う。また、図7における測長器23、読み取りセンサー6、移動量演算部15a、識別情報解析部15bについては、既に説明した通りである。
【0055】
欠陥位置特定部15cは、移動量演算部15aと識別情報解析部15bからの演算結果と、記憶装置9から読み出した欠陥位置情報に基づいて、シート状製品全体における欠陥の位置情報を特定する。図6における欠陥位置特定部10cと同様の機能である。記憶装置9に記憶されている欠陥位置の位置情報に基づいて、マジック17aを作動させ、欠陥位置にマーキングを行う。マーキングを行った後、ロール32に巻き取りロール32の形で製品を出荷することができる。
【0056】
<効果>
以上のように、本発明に係る検査システム(検査方法)は、シート状製品の幅方向端部に印字装置により識別情報を印字する。識別情報は、等間隔で印字・記録される。この識別情報を基準として欠陥の位置情報を記憶装置に記憶させておくことができる。記憶装置に記憶されている位置情報と、移送されるシート状製品の現在の位置情報とを照合することで、欠陥位置を特定することができる。これに基づいて、欠陥が含まれる不良品を精度良く排除することができる。その結果、歩留り低下を抑制することができる。
【0057】
<別実施形態>
(1)本実施形態では、図1の識別情報記録工程、図3の欠陥検査及び記憶工程、図5の枚葉物打ち抜き工程を別個独立した工程としているが、これに限定されるものではない。例えば、識別情報を記録した後、ただちに、検査工程と記憶工程を行うようにしても良い。
(2)識別情報は、帯状シート状製品の幅方向端部に記録しているが、幅方向両側に記録しても良い。
【符号の説明】
【0058】
3,13,23 測長器
4 印字装置
5 印字装置制御部
6,16 読み取りセンサー
7 CCDカメラ
8 検査装置
8a,10a,15a 移動量演算部
8b,10b,15b 識別情報解析部
8d 欠陥位置演算部
9 記憶装置
10c,15c 欠陥位置特定部
N 偏光板原反

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め欠陥検査された帯状のシート状製品を、その幅方向端部に記録された識別情報と関連付けられて欠陥の位置情報が記憶された記憶装置と、マーキング制御装置とにより、欠陥位置に対するマーキング制御を行う検査システムであって、
前記マーキング制御装置は、
帯状のシート状製品が移動する方向の移動量を検出する移動量検出手段と、前記識別情報を読み取る識別情報読み取り手段と、前記記憶装置から読み出された欠陥の位置情報と、検出された前記移動量及び読み取られた識別情報に基づいて、帯状のシート状製品に存在する欠陥の位置を特定する演算手段と、帯状のシート状製品の幅方向に沿って移動可能なマジック手段と、を有し、
前記識別情報読み取り手段から前記マーキング制御装置により作動される前記マジック手段までの距離と、前記識別情報から欠陥までの距離と、前記記憶装置に記憶されている欠陥位置の位置情報とに基づいて、前記マジック手段を作動させるように構成した、ことを特徴とするシート状製品の検査システム。
【請求項2】
予め欠陥検査された帯状のシート状製品を、その幅方向端部に記録された識別情報と関連付けられて欠陥の位置情報が記憶された記憶装置と、マーキング制御装置とにより、欠陥位置に対するマーキング制御を行う検査方法であって、
前記マーキング制御装置は、
帯状のシート状製品が移動する方向の移動量を検出する工程と、識別情報読み取り手段により前記識別情報を読み取る工程と、前記記憶装置から読み出された欠陥の位置情報と、検出された前記移動量及び読み取られた識別情報に基づいて、帯状のシート状製品に存在する欠陥の位置を特定する工程と、帯状のシート状製品の幅方向に沿って移動可能なマジック手段によりマーキングをする工程と、を実行し、
前記識別情報読み取り手段から前記マーキング制御装置により作動される前記マジック手段までの距離と、前記識別情報から欠陥までの距離と、前記記憶装置に記憶されている欠陥位置の位置情報とに基づいて、前記マジック手段を作動させる工程を実行する、ことを特徴とするシート状製品の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−177713(P2012−177713A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−132910(P2012−132910)
【出願日】平成24年6月12日(2012.6.12)
【分割の表示】特願2008−306626(P2008−306626)の分割
【原出願日】平成15年10月9日(2003.10.9)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】