説明

シート空調装置

【課題】空調エアの漏れを抑制して効率良く空調エアを車両用シートに導入することができ、異音の発生がなく、耐久性を向上させることが可能なシート空調装置を提供する。
【解決手段】吸い込み口が車体フロア2側に配置されるフロア側ダクト5と、フロア側ダクト5の吹き出し口が差し込まれる吸い込み口22とシートクッション3側に開口する吹き出し口23とがエア通路24を介して連通し、シートクッション3側に配置されるシート側ダクト6とを備える。シート側ダクト6の吸い込み口22がシートクッションの前後方向に沿って長く開口し、エア通路24がシート側ダクト6の吸い込み口22から吹き出し口23に向かって徐々に狭くなるように形成される。フロア側ダクト5はシート側ダクト6の吸い込み口22よりも長く且つ幅広となっており、シート側ダクト6の吸い込み口22と対向するエア止めフランジ15を有する。フロア側ダクト5とシート側ダクト6とが小間隙を有した非接触状態で対向している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載の車両用空調ユニットからの空調エアを車両用シートに導いてシート空調を行うシート空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シート空調装置は、空調ユニットからの空調エアを車両用シートに導くことによりシート着座者の背中、大腿部等の身体部位の暖房や蒸れ、発汗の抑制のために用いられる。従来のシート空調装置としては、特許文献1〜3に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されているシート空調装置は、車載の空調ユニットからの空調エアを車両用シートに送り込む送風ダクトを備え、この送風ダクトの一部を車両用シートの前後移動に追随して伸縮する蛇腹状のダクトとした構造となっている。
特許文献2に開示されているシート空調装置は、車両用シートの裏面の空気通路に空気ガイドを接続し、空気ガイドに床面に向かって開口する開口部を形成している。そして、車両用空調ユニットに接続された空気ダクトの吹き出し口を空気ガイドの開口部に臨むようにしている。又、特許文献2には、空気ガイドとして、弾性変形可能な枠体を非通気性のシートによって筒状に覆った構造とすることが開示されている。
特許文献3に開示されているシート空調装置は、車両用空調ユニットにフロアダクトを接続する一方、車両用シートの底面側に集風手段を設け、集風手段の集風口をフロアダクトの吹き出し口に対向させた構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−47848号公報
【特許文献2】特開2001−327362号公報
【特許文献3】特開2008−168776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された構造では、蛇腹状のダクトが伸縮動作することから蛇腹状のダクトが痛み易く、耐久性に問題がある。
特許文献2に開示された構造では、空気ダクトの吹き出し口と空気ガイドの開口部との間から空調エアが漏れる問題がある。又、シートが前後移動する際に空気ダクトの吹き出し口が空気ガイドと干渉したり、これらが離れて空調エア漏れが多くなることがある。これを防止するため、特許文献2においては、空気ダクトの吹き出し口の位置をスライドレールの取付角度と合わせる必要があり、高精度の組み付けが必要となっている。さらに、弾性変形可能な枠体をシートによって覆った構造では、耐久性が小さく、しかもシートに覆われた枠体とダクトが擦れ合うことによる異音が発生する問題を有している。
特許文献3に開示された構造では、フロアダクトの吹き出し口と集風口との間から空調エアが漏れ出る問題を有している。
【0006】
本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、空調エアの漏れを抑制して効率良く空調エアを車両用シートに導入することができ、しかも異音の発生がなく、簡単に組み付けることができ、耐久性を向上させることが可能なシート空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車両用空調ユニットの空調エアを車両用シートに導くシート空調装置であって、吸い込み口が前記車両用空調ユニットに連結されて車体フロア側に配置されるフロア側ダクトと、前記フロア側ダクトの吹き出し口が差し込まれる吸い込み口と前記車体フロア上に設けたシートクッション側に開口する吹き出し口とがエア通路を介して連通し、前記シートクッション側に配置されるシート側ダクトとを備え、前記シート側ダクトの吸い込み口が前記シートクッションの前後方向に沿って長く開口し、前記エア通路が前記シート側ダクトの吸い込み口から吹き出し口に向かって徐々に狭くなるように形成され、前記フロア側ダクトは前記シート側ダクトの吸い込み口よりも長く且つ幅広となっており、前記シート側ダクトの吸い込み口と対向するエア止めフランジを有し、前記フロア側ダクトとシート側ダクトとが小間隙を有した非接触状態で対向していることを特徴とする。
【0008】
上記発明においては、前記シートクッションが固定側レール及び可動側レールからなるスライドレールによって車体フロア上に前後移動可能に設けられており、前記フロア側ダクトが固定側レールに取り付けられ、前記シート側ダクトが可動側レールに取り付けられていることが好ましい。
又、前記空調エアを前記フロア側ダクトの吸い込み口から吹き出し口に向かって導くエアガイドが前記フロア側ダクトのエア流路の内部に設けられていることが好ましい。
又、前記シート側ダクトのエア流路が、前記シートクッションの下面が延びる方向と同じ方向に沿って設けられていることが好ましい。
又、前記シート側ダクトのエア流路が、前記シートクッションの下面が延びる方向と同じ方向に沿って設けられ、前記フロア側ダクトの吹き出し口が前記エア流路の内部で開口していることが好ましい。
又、前記エア止めフランジが前記可動側レールに沿って配置され、前記シート側ダクトの吸い込み口が前記可動側レール又はエア止めフランジのいずれか一方に臨んでいることが好ましい。
又、前記シート側ダクトの内部に送風ファンが配置されていることが好ましい。
又、前記エア止めフランジの両端部が前記シート側ダクトの吸い込み口の方向に屈曲していることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のシート空調装置によれば、フロア側ダクトの吹き出し口が差し込まれるシート側ダクトの吸い込み口がシートクッションの前後方向に沿って長く開口されるが、このシート側ダクトの吸い込み口よりも長く且つ幅広となっているエア止めフランジが同吸い込み口と対向しているため、空調エアの漏れを抑制することができ、効率良く空調エアを車両用シートに導入することができる。又、シート側ダクトとフロア側ダクトとが非接触となっており、相互に干渉しないため、異音の発生がなく空調エアを静かに導入することができ、しかも摩耗等がなく耐久性が向上する。
【0010】
又、シート側ダクトの吸い込み口がシートクッションの前後方向に沿って長く開口しており、シート側ダクトの吸い込み口へのフロア側ダクトの吹き出し口の差し込みが容易となるのに加えてシート側ダクトとフロア側ダクトとが非接触のため、シート空調装置を簡単に組み付けることができる。さらに、本発明によれば、シート側ダクトのエア流路が吸い込み口から吹き出し口に向かって徐々に狭くなるように形成されているため、空調エアの圧力損失が生じにくく、空調エアを高効率でシートに導入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態のシート空調装置の配置を示す正面図である。
【図2】第1実施形態のシート空調装置を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図3】(a)、(b)はシート側ダクトの前後方向移動を示す側面図である。
【図4】(a)は本発明の別の実施形態のシート空調装置を示す平面図、(b)は正面図である。
【図5】シート空調装置をスライドレールに取り付ける構造を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図6】(a)はスライドレールに取り付ける別の構造を示す斜視図、(b)は下からの斜視図である。
【図7】シート側ダクトの内部構造を示す斜視図である。
【図8】スライドレールへの別の取付構造を示し、(a)は斜視図、(b)は分解斜視図である。
【図9】エア止めフランジを変更した実施形態の正面図である。
【図10】送風ファンを設けた実施形態の正面図である。
【図11】(a)、(b)はさらに別の実施形態のシート空調装置を示す側面図及び正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を図示する実施形態により具体的に説明する。なお、各実施形態において、同一の部材には同一の符号を付して対応させてある。
【0013】
(第1実施形態)
図1〜図3は本発明の第1実施形態のシート空調装置1を示す。シート空調装置1は、車体フロア2と、車両用シートのシートクッション(フロントシートクッション)3との間に配置されるものであり、車体フロア2側に配置されるフロア側ダクト5とシートクッション3側に配置されるシート側ダクト6とを備えている。
【0014】
シートクッション3は、スライドレール7を介して車体フロア2上に取り付けられている。スライドレール7は、車体フロア2上に固定された固定側レール8と、固定側レール8にスライド可能に組み付けられた可動側レール9とを備えており、可動側レール9にシートクッション3が支持されている。可動側レール9は、車体フロア2上を前後移動可能に固定側レール8に組み付けられており、これによりシートクッション3は車体フロア2上で前後方向に移動可能となっている。ここで、前後方向は図1においては紙面貫通方向であり、図3においては矢印A及びBで示す方向である。
【0015】
フロア側ダクト5は、車両用空調ユニット(図示省略)に接続されるものであり、車体フロア2上に配置された車両用空調ユニットからの送風ダクト10に吸い込み口12が連結される。フロア側ダクト5の吹き出し口13は、シート側ダクト6に連結され、これにより車両用空調ユニットからの空調エアが送風ダクト10、フロア側ダクト5を介してシート側ダクト6に導入される。
【0016】
シート側ダクト6は、フロア側ダクト5の吸い込み口12が差し込まれる吸い込み口22と、シートクッション3側に開口する吹き出し口23とを有している。これらの吸い込み口22及び吹き出し口23は、エア流路24を介して連通している。シート側ダクト6の吹き出し口23は、図1に示すように、シートクッション3の下側から同クッション3の内部に挿入されており、シートクッション3に形成した図示を省略した空気通路に空調エアを導入する。導入された空調エアは、シートクッション3のパッドに形成された空気孔から吹き出すことによりシートから乗員への空調が行われる。
【0017】
以下、この実施形態におけるシート空調装置1の構造上の特徴を説明する。
【0018】
シート側ダクト6の吸い込み口22は、シートクッション3の前後方向に沿って長くなるように開口している。すなわち、シート側ダクト6の吸い込み口22は図2(c)の左右方向に沿って長く形成されるものである。この吸い込み口22にはフロア側ダクト5の吹き出し口13が鉛直方向から差し込まれるが、このフロア側ダクト5側の吹き出し口13に対して吸い込み口22が長くなっているため、フロア側ダクト5の吹き出し口13を容易に差し込むことができる。このように、シート側ダクト6の吸い込み口22がシートクッション5の前後方向に沿って長くなっていることにより、シートクッション5が前後移動してもシート側ダクト6の吸い込み口22がフロア側ダクト5の吹き出し口13から外れることがなく、フロア側ダクト5の吹き出し口13からの空調エアが外に漏れることがなくなる。又、空調エアをシートクッション3に導くためにシートクッション3の前後移動に追従して伸縮する蛇腹ダクト等の変形部材を用いる必要がないため、故障が少なく、耐久性を向上させることができる。ここで、フロア側ダクト5の吹き出し口13は図2(c)及び図3に示すように、差し込み側の先端部(上端部)13aが口広となっている。これにより、吹き出し口13を通過する空調エアの圧力損失が生じにくいと共に空調エアに整流作用が加わるため、吹き出し口13からシート側ダクト内に流入する空調エアの音を小さくすることができる。
【0019】
シート側ダクト6の吸い込み口22と吹き出し口23とを連通するエア流路24は、図1及び図2(b)で示すように、シートクッション3の下面3aの方向と略平行となって延びている。すなわち、エア流路24は鉛直方向の吸い込み口22から直角方向に屈曲してシートクッション3の下面3aに沿って延びるものである。このように、エア流路24がシートクッション3の下面3aの方向に沿っていることにより、シート側ダクト6のための高さ方向のスペースが小さくなる。これにより、車体フロア2とシートクッション3との間の隙間が小さい場合にもシート空調装置1を取り付けることができる。従って、車体フロア2に電池が設置される電気自動車に対してもシート空調装置1の組み付けが容易となる。
【0020】
シート側ダクト6のエア流路24は、吸い込み口22から吹き出し口23に向かって徐々に狭くなるように形成されるものである。すなわち、図2(a)で示すように、吸い込み口22側の流路が最も広く、吸い込み口22に向かうにつれて徐々に狭くなっており、吹き出し口23との連通部分が最も狭くなる平面視三角錐状に形成されるものである。このように、吸い込み口22から吹き出し口23に向かって徐々に狭くなるように形成されることにより、エア流路24を流動する空調エアの圧力損失が生じにくくなる。このため、空調エアを効率良くシートクッション3に導くことが可能となる。
【0021】
フロア側ダクト5には、エア止めフランジ15が設けられる。エア止めフランジ15は図2に示すにように、シート側ダクト6の吸い込み口22よりも長くなっていると共に、同吸い込み口22よりも幅広となっている平板部材によって形成されている。平板部材からなるエア止めフランジ15は、シート側ダクト6の吸い込み口22に対し、その長さ方向及び幅方向を同じ方向とした状態で同吸い込み口22に対向するようにフロア側ダクト5の吹き出し口13側に設けられている。このようにエア止めフランジ15が長くなっているシート側ダクト6の吸い込み口22と対向することにより、フロア側ダクト5からシート側ダクト6の吸い込み口22内に流れ込んだ空調エアが吸い込み口22の開口端から外部に漏れることを抑制することが可能となっている。これにより、空調エアを効率良くシートクッション3に導くことができる。
【0022】
図3はフロア側ダクト5の吹き出し口13がシート側ダクト6の吸い込み口22に差し込まれた状態でシートクッション3が矢印A及びBで示す前後方向に移動した状態を示す。シートクッション3の前後方向(矢印A及びB)への移動に追随してシート側ダクト6も一体に前後方向に移動するが、シート側ダクト6の吸い込み口22がシートクッション3の前後方向に沿って長く開口しているため、シート側ダクト6の吸い込み口22からフロア側ダクト5の吹き出し口13が外れることがない。又、フロア側ダクト5のエア止めフランジ15がシート側ダクト6の吸い込み口22よりも長くなっており、この状態でエア止めフランジ15がシート側ダクト6の吸い込み口22と対向しているため、エア止めフランジ15はシート側ダクト6の吸い込み口22から空調エアが外部に漏れることを抑制する。これらにより、フロア側ダクト5からの空調エアのエア漏れを抑制することができ、空調エアを効率良くシートクッション3に導くことができる。
【0023】
以上に加えて、フロア側ダクト5及びシート側ダクト6は、小間隙を有した非接触状態で組み付けられるものである。すなわち、図2(c)及び図3に示すように、フロア側ダクト5のエア止めフランジ15がシート側ダクト6の吸い込み口22と対向するが、これらの間は小間隙を有した非接触状態となっている。又、図2(b)に示すように、シート側ダクト6の吸い込み口22にフロア側ダクト5の吹き出し口13が差し込まれるが、これらの間も小間隙を有した非接触状態となっている。従って、シートクッション3の前後移動に伴ってシート側ダクト6が前後移動しても、シート側ダクト6とフロア側ダクト5とが接触することがなくなる。又、車両走行時の振動があってもこれらが接触することがない。これにより接触に起因した干渉音等の異音が発生することがなく、乗員に不快感を与えることがなくなる。
【0024】
(第2実施形態)
図4は本発明の第2実施形態のシート空調装置1を示す。この実施形態においては、フロア側ダクト5の吹き出し口13が屈曲しており、その他の構成は第1実施形態のシート空調装置1と同様である。
【0025】
フロア側ダクト5の吹き出し口13は、シート側ダクト6の吸い込み口22に差し込まれるが、シートクッション3の下面3a(図1参照)に沿って延びるように長くなっている。すなわち、フロア側ダクト5の吹き出し口13は鉛直方向を向く吸い込み口12に対し、直角方向に屈曲しており、シート側ダクト6のエア流路24内に至るまで長く差し込まれている。このような構造では、フロア側ダクト5からの空調エアがシート側ダクト6のエア流路24に直接に流入するため、空調エアが漏れることをさらに良好に抑制することができる。又、フロア側ダクト5の高さ方向寸法を小さくすることができる。これにより、車体フロア2とシートクッション3との間の隙間が小さい場合にもシート空調装置1を取り付けることができる。
【0026】
(第3実施形態)
図5はシート空調装置1をスライドレール7に取り付ける構造を示す実施形態である。
【0027】
図5(b)に示すように、スライドレール7は車体フロア2側の固定側レール8と、固定側レール8の長さ方向にスライド可能に組み付けられた可動側レール9とを備えており、固定側レール8にフロア側ダクト5が取り付けられ、可動側レール9にシート側ダクト6が取り付けられる。
【0028】
フロア側ダクト5においては、そのエア止めフランジ15に複数の取付ブラケット16が同フランジ15の長さ方向に沿って間隔を有して一体に形成されている(図5(a)参照)。取付ブラケット16はエア止めフランジ15の側面から突出するように形成されるものである。この取付ブラケット16を固定側レール8の下面にねじ止めすることにより、フロア側ダクト5が固定側レール8に取り付けられる。
【0029】
シート側ダクト6においては、長尺な吸い込み口22の両端部に取付ブラケット26がそれぞれ一体に設けられている。長尺な吸い込み口22の両端部に設けられることにより、取付ブラケット26はフロア側ダクト5のエア止めフランジ15の長さ方向に沿って設けられた状態となる。この取付ブラケット26を可動側レール9の側面にねじ止めすることにより、シート側ダクト6が可動側レール9に取り付けられる。これによりシート側ダクト6においては、その吸い込み口22がシートクッション3の前後方向(可動側レール9の移動方向)に沿って延びた状態となり、この吸い込み口22に対しフロア側ダクト5のエア止めフランジ15が対向するように設けられる。又、吸い込み口22とエア止めフランジ15とを小間隙を有した非接触状態とすることができる。
【0030】
(第4実施形態)
図6はシート空調装置1をスライドレール7に取り付けるさらに別の構造を示す実施形態である。
【0031】
図6(a)で示すように、シート側ダクト6のエア流路24に複数の取付ブラケット27が間隔を有して一体に設けられている。複数の取付ブラケット27は、エア流路24における吸い込み口22側の端部から直線的に延びるように形成されており、その先端部分がスライドレール7の可動側レール9に達している。一方、図6(b)で示すように、フロア側ダクト5のエア止めフランジ15には複数の取付ブラケット17が間隔を有して一体に設けられている。複数のブラケット17は、スライドレール7の固定側レール8に達するように直線的に延びている。
【0032】
このような構造では、取付ブラケット27をスライドレール7の可動側レール9の上面にねじ、クリップ、溶着、接着等により固定することにより、可動側レール9にシート側ダクト6を取り付けることができ、取付ブラケット17をスライドレール7の固定側レール8の下面にねじ、クリップ等により固定することにより、固定側レール8にフロア側ダクト5を取り付けることができる。これらの取り付けにおいては、長尺となっているシート側ダクト6の吸い込み口22にエア止めフランジ15を対向するように配置することができる。
【0033】
(第5実施形態)
図7はシート側ダクト6の内部を示す本発明の第5実施形態である。シート側ダクト6のエア流路24には、複数のエアガイド21が形成されている。複数のエアガイド21は、細板状となっており、吸い込み口22側の端部が最も離れた状態であり、吹き出し口23側の端部が最も近づいた状態となるように傾斜して形成されている。すなわち、複数のエアガイド21は吸い込み口22から吹き出し口23に向かって徐々に狭くなるエア流路24と同じ方向に傾斜するように形成されるものである。このようなエアガイド21をエア流路24に設けることにより、エア流路24内に流入した空調エアを整流してエア流路24内の空調エアの乱れを抑制することができる。このため、空調エアの乱れがなく、シート側ダクト6とフロア側ダクト5の隙間からの空調エアの漏れを抑制することができる。
【0034】
(第6実施形態)
図8は本発明の第6実施形態を示す。図8(b)に示すように、シートクッション3の前後方向に沿って長くなっているシート側ダクト6の吸い込み口22の一部が切り欠かれることにより切欠部28が形成されている。切欠部28は、エア流路24における吸い込み口22側の端部に形成されるものである。すなわち、エア流路24を形成する三角錐状の一対の板材29の一方に吸い込み口22に沿った長さ切欠きを設けることにより切欠部28が形成される。かかる切欠部28は、フロア側ダクト5のエア止めフランジ15に対向する。
【0035】
シート側ダクト6は、切欠部28内に吹き出し口13が位置するようにフロア側ダクト5に組み付けられる。すなわち、フロア側ダクト5の吹き出し口13が切欠部28に臨むようにシート側ダクト6が組み付けられる。このとき、長く開口しているシート側ダクト6の吸い込み口22は、可動側レール9の側壁9aに当接するようにシート側ダクト6が可動側レール9に取り付けられる。このような構造では、可動側レール9の側壁9aがシート側ダクト6の吸い込み口22に対向するため、吸い込み口22からの空調エアの漏れを防止することができる。又、シート側ダクト6の切欠部28にフロア側ダクト5のエア止めフランジ15が対応しているため、シート側ダクト6が可動側レール9と共に前後移動する際にも、空調エアが切欠部28から外部に漏れることを抑制することができる。
【0036】
(第7実施形態)
図9は、エア止めフランジ15を変更したシート空調装置1の実施形態を示す。エア止めフランジ15には立壁部18が形成されている。立壁部18は、エア止めフランジ15の幅方向両端部をシート側ダクト6の吸い込み口22側に屈曲することにより形成されており、エア止めフランジ15の長さ方向に沿って延びている。又、立壁部18はシート側ダクト6の吸い込み口22よりも幾分高くなるように形成されるが、吸い込み口22と小間隙を有した非接触となるように形成される。このような立壁部18は、シート側ダクト6の吸い込み口22の周囲を非接触で覆っており、吸い込み口22からの空調エアの漏れを抑制するように作用する。このため、エア止めフランジ15による空調エアの漏れ抑制に加えて立壁部18による空調エアの漏れが作用するため、さらに空調エアの漏れを効果的に抑制することができる。
【0037】
(第8実施形態)
図10は送風ファン31を設けたシート空調装置1の実施形態を示す。送風ファン31は、シート側ダクト6におけるエア流路24の内部に設けられて回転駆動する。送風ファン31の回転駆動によりフロア側ダクト5からシート側ダクト6内に流入した空調エアに流動圧を加えることができる。これにより、シートクッション3に対して空調エアを効率良く供給することができる。
【0038】
(第9実施形態)
図11はシート空調装置1のさらに別の実施形態を示す。シート側ダクト6の吸い込み口22はシートクッション3の前後方向に沿って長く開口し、この吸い込み口22から吹き出し口23にかけてエア流路24が連通している。エア流路24は、吸い込み口22から吹き出し口23に向かって徐々に流路が狭くなるように形成されており、圧力損失が生じにくく効率的に空調エアを吹き出し口23から送り出すことができる。
【0039】
フロア側ダクト5には、シート側ダクト6の吸い込み口22よりも長く、且つ幅広のエア止めフランジ15が設けられ、このエア止めフランジ15がシート側ダクト6の吸い込み口22と対向している。エア止めフランジ15は、小間隙を有した非接触状態で吸い込み口22と対向するものである。
【0040】
この実施形態においては、シート側ダクト6が屈曲されることなく鉛直方向に延びて形成されている。このような構造のシート空調装置1は、車体フロア2とシートクッション3との間に大きな隙間がある場合に適用されるものである。
【符号の説明】
【0041】
1 シート空調装置
2 車体フロア
3 シートクッション
3a シートクッションの下面
5 フロア側ダクト
6 シート側ダクト
7 スライドレール
8 固定側レール
9 可動側レール
12、22 吸い込み口
13、23 吹き出し口
15 エア止めフランジ
18 立壁部
24 エア流路
28 切欠部
31 送風ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用空調ユニットの空調エアを車両用シートに導くシート空調装置であって、
吸い込み口が前記車両用空調ユニットに連結されて車体フロア側に配置されるフロア側ダクトと、前記フロア側ダクトの吹き出し口が差し込まれる吸い込み口と前記車体フロア上に設けたシートクッション側に開口する吹き出し口とがエア通路を介して連通し、前記シートクッション側に配置されるシート側ダクトとを備え、
前記シート側ダクトの吸い込み口が前記シートクッションの前後方向に沿って長く開口し、
前記エア通路が前記シート側ダクトの吸い込み口から吹き出し口に向かって徐々に狭くなるように形成され、
前記フロア側ダクトは前記シート側ダクトの吸い込み口よりも長く且つ幅広となっており、前記シート側ダクトの吸い込み口と対向するエア止めフランジを有し、
前記フロア側ダクトとシート側ダクトとが小間隙を有した非接触状態で対向していることを特徴とするシート空調装置。
【請求項2】
前記シートクッションが固定側レール及び可動側レールからなるスライドレールによって車体フロア上に前後移動可能に設けられており、前記フロア側ダクトが固定側レールに取り付けられ、前記シート側ダクトが可動側レールに取り付けられていることを特徴とする請求項1記載のシート空調装置。
【請求項3】
前記空調エアを前記フロア側ダクトの吸い込み口から吹き出し口に向かって導くエアガイドが前記フロア側ダクトのエア流路の内部に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のシート空調装置。
【請求項4】
前記シート側ダクトのエア流路が、前記シートクッションの下面が延びる方向と同じ方向に沿って設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のシート空調装置。
【請求項5】
前記シート側ダクトのエア流路が、前記シートクッションの下面が延びる方向と同じ方向に沿って設けられ、前記フロア側ダクトの吹き出し口が前記エア流路の内部で開口していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のシート空調装置。
【請求項6】
前記エア止めフランジが前記可動側レールに沿って配置され、前記シート側ダクトの吸い込み口が前記可動側レール又はエア止めフランジのいずれか一方に臨んでいることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のシート空調装置。
【請求項7】
前記シート側ダクトの内部に送風ファンが配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のシート空調装置。
【請求項8】
前記エア止めフランジの両端部が前記シート側ダクトの吸い込み口の方向に屈曲していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のシート空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−131356(P2012−131356A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284966(P2010−284966)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】