説明

シーラー用樹脂エマルション

【課題】耐凍害性、塗膜の耐透水性及び塗膜強度に優れたシーラー用樹脂エマルションの提供。
【解決手段】内層が芳香族系単量体85〜100重量%及びエチレン性不飽和単量体0〜15重量%を含有する単量体成分を乳化重合させてなる重合体で構成され、内層を構成する重合体と外層を構成する重合体との重量比(内層を構成している重合体/外層を構成する重合体)が10/90〜60/40、エマルション粒子における内層を構成する重合体と外層を構成する重合体との合計含有量が40〜100重量%、前記全単量体成分におけるスチレンの含有量が5〜40重量%、スチレン以外の単量体の含有量が60〜95重量%、外層に用いられる単量体成分におけるカルボキシル基含有単量体の含有量が1〜10重量%、カルボキシル基含有単量体以外の単量体の量が90〜99重量%、エマルション粒子のガラス転移温度が−70〜10℃であるシーラー用樹脂エマルション。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーラー用樹脂エマルションに関する。さらに詳しくは、例えば、建築物の外装に用いられるシーラー、微弾性フィラーなどに有用なシーラー用樹脂エマルションおよびその製造方法に関する。発明のシーラー用樹脂エマルションは、例えば、建築物の外壁などを塗装する際に好適に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から、エマルション樹脂を含有する水性下塗り塗料組成物(例えば、特許文献1参照)、共重合体エマルションを主成分とする水性2液型下塗り塗料組成物(例えば、特許文献2参照)が提案されている。これらの下塗り塗料組成物には、皮膜の形成が樹脂粒子の融合によって行なわれるため、その樹脂のガラス転移温度が高い場合には、造膜助剤を多量に使用する必要がある。しかし、造膜助剤を多量に使用することは、環境保護の観点から好ましくないのみならず、十分な耐凍害性が得られなくなるという欠点がある。
【0003】
耐凍害性および耐ブロッキング性が改善された水性塗料組成物として、多層構造を有する粒子が分散された水性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかし、この水性樹脂組成物には、耐ブロッキング性を付与するために粒子のシェル部のガラス転移温度を高くする必要があることから、造膜性および塗膜の耐透水性に劣るという欠点がある。
【0004】
そこで、耐ブロッキング性を改善するために、ガラス転移温度が高く、分子量が低い水溶性ポリマーを使用したり、顔料の含有量を多くすることが考えられる。しかし、ガラス転移温度が高く、分子量が低い水溶性ポリマーを使用した場合には、耐凍害性に劣るという欠点がある。また、顔料の含有量を多くした場合には、塗膜の耐透水性が低下するという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−335735号公報
【特許文献2】特開2001−262053号公報
【特許文献3】特開2002−12816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、耐凍害性、塗膜の耐透水性および塗膜強度に優れたシーラー用樹脂エマルションを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(1)内層および外層を有するエマルション粒子を含有する樹脂エマルションであって、前記内層が芳香族系単量体85〜100重量%およびエチレン性不飽和単量体0〜15重量%を含有する単量体成分を乳化重合させてなる重合体で構成され、内層を構成している重合体と外層を構成している重合体との重量比(内層を構成している重合体/外層を構成している重合体)が10/90〜60/40であり、エマルション粒子における内層を構成している重合体と外層を構成している重合体との合計含有量が40〜100重量%であり、前記エマルション粒子の原料として用いられる全単量体成分におけるスチレンの含有量が5〜40重量%で、スチレン以外の単量体の含有量が60〜95重量%であり、外層の原料として用いられる単量体成分におけるカルボキシル基含有単量体の含有量が1〜10重量%で、カルボキシル基含有単量体以外の単量体の量が90〜99重量%であり、エマルション粒子のガラス転移温度が−70〜10℃であるシーラー用樹脂エマルション、
(2)エマルション粒子の原料として用いられる全単量体成分におけるスチレン以外の単量体が、スチレン以外の芳香族系単量体およびエチレン性不飽和単量体からなる群より選ばれた少なくとも1種の単量体を含有する前記(1)に記載のシーラー用樹脂エマルション、
(3)スチレン以外の芳香族系単量体が、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、tert−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエンおよびアラルキル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれた少なくとも1種の単量体である前記(2)に記載のシーラー用樹脂エマルション、
(4)外層の原料として用いられる単量体成分におけるカルボキシル基含有単量体以外の単量体が、芳香族系単量体およびカルボキシル基含有単量体以外のエチレン性不飽和単量体からなる群より選ばれた少なくとも1種の単量体である前記(1)〜(3)のいずれかに記載のシーラー用樹脂エマルション、
(5)カルボキシル基含有単量体以外のエチレン性不飽和単量体が、アルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレート、オキソ基含有単量体、フッ素原子含有単量体、窒素原子含有単量体およびエポキシ基含有単量体からなる群より選ばれた少なくとも1種の単量体である前記(4)に記載のシーラー用樹脂エマルション、および
(6)内層および外層を有するエマルション粒子を含有する樹脂エマルションの製造方法であって、芳香族系単量体85〜100重量%およびエチレン性不飽和単量体0〜15重量%を含有する単量体成分を乳化重合させることによって内層を形成し、カルボキシル基含有単量体1〜10重量%およびカルボキシル基含有単量体以外の単量体90〜99重量%を含有する単量体成分を乳化重合させることによって外層を形成し、内層を構成している重合体と外層を構成している重合体との重量比(内層を構成している重合体/外層を構成している重合体)を10/90〜60/40に調整し、エマルション粒子における内層を構成している重合体と外層を構成している重合体との合計含有量を40〜100重量%に調整し、前記エマルション粒子の原料として用いられる全単量体成分におけるスチレンの含有量を5〜40重量%に、スチレン以外の単量体の含有量を60〜95重量%に調整し、エマルション粒子のガラス転移温度を−70〜10℃に調整するシーラー用樹脂エマルションの製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐凍害性、塗膜の耐透水性および塗膜強度に優れたシーラー用樹脂エマルションが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のシーラー用樹脂エマルションは、前記したように、内層および外層を有するエマルション粒子を含有する樹脂エマルションであって、前記内層が芳香族系単量体85〜100重量%およびエチレン性不飽和単量体0〜15重量%を含有する単量体成分を乳化重合させてなる重合体で構成され、内層を構成している重合体と外層を構成している重合体との重量比(内層を構成している重合体/外層を構成している重合体)が10/90〜60/40であり、エマルション粒子における内層を構成している重合体と外層を構成している重合体との合計含有量が40〜100重量%であり、エマルション粒子における内層を構成している重合体と外層を構成している重合体との合計含有量が40〜100重量%であり、前記エマルション粒子の原料として用いられる全単量体成分におけるスチレンの含有量が5〜40重量%で、スチレン以外の単量体の含有量が60〜95重量%であり、外層の原料として用いられる単量体成分におけるカルボキシル基含有単量体の含有量が1〜10重量%で、カルボキシル基含有単量体以外の単量体の量が90〜99重量%であり、エマルション粒子のガラス転移温度が−70〜10℃である。本発明のシーラー用樹脂エマルションは、前記構成を有するので、耐凍害性、塗膜の耐透水性および塗膜強度に優れている。
【0010】
なお、本明細書において、耐凍害性は、JIS A6909に規定されている温冷くり返し試験を行なったときの塗膜の耐久性を意味する。
【0011】
本発明においては、本発明の目的が阻害されない範囲内であれば、前記エマルション粒子には、前記内層および前記外層以外の層が形成されていてもよい。
【0012】
本発明のシーラー用樹脂エマルションは、内層を形成する単量体成分を乳化重合させ、内層を形成した後、外層を形成する単量体成分を乳化重合させ、外層を形成することによって製造することができる。
【0013】
内層を形成する単量体成分(以下、単量体成分Aという)および外層を形成する単量体成分(以下、単量体成分Bという)に用いられる単量体としては、例えば、芳香族系単量体、エチレン性不飽和単量体などが挙げられる。なお、本発明において、エチレン性不飽和単量体は、芳香族系単量体以外のエチレン性不飽和単量体を意味する。
【0014】
芳香族系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、tert−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、アラルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの芳香族系単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。アラルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、メチルベンジル(メタ)アクリレート、ナフチルメチル(メタ)アクリレートなどの炭素数が7〜18のアラルキル基を有するアラルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの芳香族系単量体のなかでは、塗膜の耐透水性を向上させる観点から、スチレンが好ましい。
【0015】
エチレン性不飽和単量体としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有単量体、オキソ基含有単量体、フッ素原子含有単量体、窒素原子含有単量体、エポキシ基含有単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのエチレン性不飽和単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、2−(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が1〜18のアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が1〜18の水酸基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
カルボキシル基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、無水マレイン酸などのカルボキシル基含有脂肪族系単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのカルボキシル基含有単量体のなかでは、エマルション粒子の分散安定性を向上させる観点から、アクリル酸、メタクリル酸およびイタコン酸が好ましく、アクリル酸およびメタクリル酸がより好ましい。
【0019】
オキソ基含有単量体としては、例えば、エチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレートなどの(ジ)エチレングリコール(メトキシ)(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
フッ素原子含有単量体としては、例えば、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が2〜6のフッ素原子含有アルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
窒素原子含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどのアクリルアミド化合物、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの窒素原子含有(メタ)アクリレート化合物、N−ビニルピロリドンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
エポキシ基含有単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
エチレン性不飽和単量体のなかでは、塗膜の耐透水性を向上させる観点から、(メタ)アクリル系単量体が好まく、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートおよびグリシジル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0024】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」および/または「メタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸」および/または「メタクリル酸」を意味する。
【0025】
前記内層は、芳香族系単量体85〜100重量%およびエチレン性不飽和単量体0〜15重量%を含有する単量体成分を乳化重合させることによって得られる重合体で構成される。
【0026】
単量体成分Aにおける芳香族系単量体の含有量は、塗膜強度および塗膜の耐透水性を向上させる観点から、85重量%以上、好ましくは90重量%以上である。芳香族系単量体のなかでは、塗膜の耐透水性を向上させる観点から、スチレンが好ましい。単量体成分Aにおける芳香族系単量体以外の単量体として、エチレン性不飽和単量体が用いられる。単量体成分Aにおけるエチレン性不飽和単量体の量は、塗膜強度および塗膜の耐透水性を向上させる観点から、15重量%以下、好ましくは10重量%以下である。
【0027】
単量体成分Bにおけるカルボキシル基含有単量体の含有量は、密着性を向上させるとともに造膜性を向上させる観点から1重量%以上であり、塗膜の耐透水性および耐凍害性を向上させる観点から10重量%以下、好ましくは5重量%以下である。したがって、単量体成分Bにおけるカルボキシル基含有単量体以外の単量体の量は、密着性を向上させるとともに造膜性を向上させる観点から、99重量%以下であり、塗膜の耐透水性および耐凍害性を向上させる観点から、90重量%以上、好ましくは95重量%以上である。
【0028】
カルボキシル基含有単量体以外の単量体としては、例えば、芳香族系単量体、カルボキシル基含有単量体以外のエチレン性不飽和単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
カルボキシル基含有単量体以外のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレート、オキソ基含有単量体、フッ素原子含有単量体、窒素原子含有単量体、エポキシ基含有単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
エマルション粒子の原料として用いられる全単量体成分におけるスチレンの含有量は、塗膜の耐透水性を向上させる観点から5重量%以上であり、塗膜の可撓性を向上させる観点から40重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは25重量%以下である。したがって、エマルション粒子の原料として用いられる全単量体成分におけるスチレン以外の単量体の含有量は、塗膜の耐透水性を向上させる観点から95重量%以下であり、塗膜の可撓性を向上させる観点から60重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは75重量%以上である。
【0031】
スチレン以外の単量体としては、例えば、スチレン以外の芳香族系単量体、エチレン性不飽和単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
スチレン以外の芳香族系単量体としては、例えば、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、tert−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、前記アラルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのスチレン以外の芳香族系単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
エチレン性不飽和単量体としては、例えば、前記したものが挙げられる。より具体的には、エチレン性不飽和単量体としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有単量体、オキソ基含有単量体、フッ素原子含有単量体、窒素原子含有単量体、エポキシ基含有単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのエチレン性不飽和単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
次に、単量体成分Aを乳化重合させ、内層を形成した後、単量体成分Bを乳化重合させ、外層を形成することにより、本発明のシーラー用樹脂エマルションが得られるが、単量体成分Aを乳化重合させて内層を形成した後、単量体成分Bを乳化重合させて外層を形成する前に、本発明の目的を阻害しない範囲内で他の層を形成してもよい。
【0035】
単量体成分Aを乳化重合させる方法としては、例えば、メタノールなどの低級アルコールなどの水溶性有機溶媒と水とを含む水性媒体、水などの媒体中に乳化剤を溶解させ、加熱撹拌下で単量体成分Aおよび重合開始剤を滴下させる方法、乳化剤および水を用いてあらかじめ乳化させておいた単量体成分を水または水性媒体に滴下させる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる方法のみに限定されるものではない。なお、媒体の量は、得られる樹脂エマルションに含まれる不揮発分量を考慮して適宜設定すればよい。
【0036】
乳化剤としては、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性乳化剤、高分子乳化剤などが挙げられ、これらの乳化剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
アニオン性乳化剤としては、例えば、アンモニウムドデシルサルフェート、ナトリウムドデシルサルフェートなどのアルキルサルフェート塩;アンモニウムドデシルスルホネート、ナトリウムドデシルスルホネートなどのアルキルスルホネート塩;アンモニウムドデシルベンゼンスルホネート、ナトリウムドデシルナフタレンスルホネートなどのアルキルアリールスルホネート塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩;ジアルキルスルホコハク酸塩;アリールスルホン酸−ホルマリン縮合物;アンモニウムラウリレート、ナトリウムステアリレートなどの脂肪酸塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0038】
ノニオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの縮合体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、エチレンオキサイドと脂肪族アミンとの縮合体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0039】
カチオン性乳化剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライドなどのアルキルアンモニウム塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0040】
両性乳化剤としては、例えば、ベタインエステル型乳化剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0041】
高分子乳化剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウムなどのポリ(メタ)アクリル酸塩;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;ポリヒドロキシエチルアクリレートなどのポリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;これらの重合体を構成する単量体のうちの1種以上の単量体を共重合成分とする共重合体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0042】
また、前記乳化剤としては、塗膜の耐透水性を向上させる観点から、重合性基を有する乳化剤、すなわち、いわゆる反応性乳化剤が好ましく、環境面から、非ノニルフェニル型の乳化剤が好ましい。
【0043】
反応性乳化剤としては、例えば、プロペニル−アルキルスルホコハク酸エステル塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンスルホネート塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンホスフォネート塩〔例えば、三洋化成工業(株)製、商品名:エレミノールRS−30など〕、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテルスルホネート塩〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10など〕、アリルオキシメチルアルキルオキシポリオキシエチレンのスルホネート塩〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンKH−10など〕、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレンのスルホネート塩〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSE−10など〕、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン硫酸エステル塩〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10、SR−30など〕、ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレート化スルホネート塩〔例えば、日本乳化剤(株)製、商品名:アントックスMS−60など〕、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープER−20など〕、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンRN−20など〕、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープNE−10など)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0044】
乳化剤の量は、単量体成分A100重量部あたり、重合安定性を向上させる観点から、好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは1重量部以上であり、塗膜の耐透水性を向上させる観点から、好ましくは10重量部以下、より好ましくは7重量部以下、さらに好ましくは5重量部以下である。
【0045】
重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2―ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)などのアゾ化合物;過硫酸カリウムなどの過硫酸塩;過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、過酸化アンモニウムなどの過酸化物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
重合開始剤の量は、単量体成分A100重量部あたり、重合速度を高め、未反応の単量体成分Aの残存量を低減させる観点から、好ましくは0.05重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上であり、形成される塗膜の耐透水性を向上させる観点から、好ましくは1重量部以下、より好ましくは0.5重量部以下である。
【0047】
重合開始剤の添加方法は、特に限定されない。その添加方法としては、例えば、一括仕込み、分割仕込み、連続滴下などが挙げられる。また、重合反応の終了時期を早める観点から、単量体成分Aを反応系内に添加する終了前またはその終了後に、重合開始剤の一部を添加してもよい。
【0048】
なお、重合開始剤の分解を促進するために、例えば、亜硫酸水素ナトリウムなどの還元剤、硫酸第一鉄などの遷移金属塩などの重合開始剤の分解剤を反応系内に適量で添加してもよい。
【0049】
また、反応系内には、必要により、例えば、tert−ドデシルメルカプタンなどのチオール基を有する化合物などの連鎖移動剤、pH緩衝剤、キレート剤、造膜助剤などの添加剤を添加してもよい。添加剤の量は、その種類によって異なるので一概には決定することができないが、通常、単量体成分A100重量部あたり、好ましくは0.01〜5重量部、より好ましくは0.1〜3重量部である。
【0050】
単量体成分Aを乳化重合させる際の雰囲気は、特に限定されないが、重合開始剤の効率を高める観点から、窒素ガスなどの不活性ガスであることが好ましい。
【0051】
単量体成分Aを乳化重合させる際の重合温度は、特に限定がないが、通常、好ましくは50〜100℃、より好ましくは60〜95℃である。重合温度は、一定であってもよく、重合反応の途中で変化させてもよい。
【0052】
単量体成分Aを乳化重合させる重合時間は、特に限定がなく、重合反応の進行状況に応じて適宜設定すればよいが、通常、2〜9時間程度である。
【0053】
以上のようにして単量体成分Aを乳化重合させることにより、内層を構成するエマルション粒子が得られる。
【0054】
前記エマルション粒子を構成している重合体は、架橋構造を有していてもよい。重合体の重量平均分子量は、塗膜の耐透水性を向上させる観点から、好ましくは10万以上、より好ましくは30万以上、さらに好ましくは55万以上、特に好ましくは60万以上である。重合体の重量平均分子量の上限値は、架橋構造を有する場合、その重量平均分子量を測定することが困難なため、特に限定されないが、架橋構造を有しない場合には、造膜性を向上させる観点から、500万以下であることが好ましい。
【0055】
なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー〔東ソー(株)製、品番:HLC−8120GPC、カラム:TSKgel G−5000HXLとTSKgel GMHXL−Lとを直列に使用〕を用いて測定された重量平均分子量(ポリスチレン換算)を意味する。
【0056】
次に、単量体成分Aを乳化重合させた反応溶液中で、単量体成分Bを乳化重合させることにより、外層が形成される。単量体成分Bを乳化重合させる際には、得られる重合体の重合反応率が90%以上、好ましくは95%以上に到達した後、単量体成分Bを乳化重合させることが、エマルション粒子内で層分離構造を形成させる観点から好ましい。
【0057】
なお、単量体成分Aを重合させることによって内層を形成させた後、外層を形成させる前に、本発明の目的が阻害されない範囲内で、必要により、他の重合体からなる中間層が形成されていてもよい。したがって、本発明のシーラー用樹脂エマルションの製造方法においては、内層を形成させた後、外層を形成させる前に、必要により、他の重合体を形成させる操作が含まれていてもよい。
【0058】
単量体成分Bを乳化重合させる方法および重合条件は、前記単量体Aを乳化重合させる方法および重合条件と同様であればよい。
【0059】
以上のようにして単量体成分Bを乳化重合させることにより、外層を形成する重合体が前記内層の表面に形成されたエマルション粒子を得ることができる。なお、このエマルション粒子の外層の表面上には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、必要により、他の重合体からなる表面層がさらに形成されていてもよい。
【0060】
単量体成分Bを乳化重合させることによって得られる重合体架橋構造を有していてもよい。重合体の重量平均分子量は、塗膜の耐透水性を向上させる観点から、好ましくは10万以上、より好ましくは30万以上、さらに好ましくは55万以上、特に好ましくは60万以上である。重合体の重量平均分子量の上限値は、架橋構造を有する場合、その重量平均分子量を測定することが困難なため、特に限定されないが、架橋構造を有しない場合には、造膜性を向上させる観点から、500万以下であることが好ましい。
【0061】
内層を構成している重合体および外層を構成している重合体のうちのいずれか一方のガラス転移温度、好ましくは内層を構成している重合体のガラス転移温度は、塗膜強度を向上させる観点から、好ましくは75℃以上、より好ましくは90℃以上であり、塗膜の可撓性を向上させる観点から、好ましくは120℃以下である。この重合体のガラス転移温度は、単量体成分の組成を調整することにより、容易に調節することができる。
【0062】
なお、本明細書において、重合体のガラス転移温度は、当該重合体を構成する単量体成分に使用されている単量体の単独重合体のガラス転移温度を用いて、式:
1/Tg=Σ(Wm/Tgm)/100
〔式中、Wmは重合体を構成する単量体成分における単量体mの含有率(重量%)、Tgmは単量体mの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度:K)を示す〕
で表されるフォックス(Fox)の式に基づいて求められた温度を意味する。
【0063】
重合体のガラス転移温度は、例えば、スチレンの単独重合体では100℃、メチルメタクリレートの単独重合体では105℃、ブチルアクリレートの単独重合体では−56℃、2−エチルヘキシルアクリレートの単独重合体では−70℃、アクリル酸の単独重合体では95℃、メタクリル酸の単独重合体では130℃、ヒドロキシエチルメタクリレート単独重合体では55℃、アクリロニトリルの単独重合体では96℃、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(TMSMA)単独重合体では70℃である。
【0064】
重合体のガラス転移温度は、前記フォックス(Fox)の式に基づいて求められた値であるが、重合体のガラス転移温度の実測値は、前記フォックス(Fox)の式に基づいて求められた値と同じであることが好ましい。重合体のガラス転移温度の実測値は、例えば、その示差走査熱量の測定によって求めることができる。
【0065】
示差走査熱量の測定装置としては、例えば、セイコーインスツル(株)製、品番:DSC220Cなどが挙げられる。また、示差走査熱量を測定する際、示差走査熱量(DSC)曲線を描画する方法、示差走査熱量(DSC)曲線から一次微分曲線を得る方法、スムージング処理を行なう方法、目的のピーク温度を求める方法などには特に限定がない。例えば、前記測定装置を用いた場合には、当該測定装置を用いることによって得られたデータから作図すればよい。その際、数学的処理を行なうことができる解析ソフトウェアを用いることができる。当該解析ソフトウェアとしては、例えば、解析ソフトウェア〔セイコーインスツル(株)製、品番:EXSTAR6000〕などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。なお、このようにして求められたピーク温度には、上下5℃程度の作図による誤差が含まれることがある。
【0066】
また、前記内層および外層を有するエマルション粒子自体のガラス転移温度は、塗膜の強度を高める観点から、好ましくは−70℃以上、より好ましくは−60℃以上であり、塗膜の可撓性を向上させ、溶媒量を低減させる観点から、好ましくは10℃以下、より好ましくは0℃以下、さらに好ましくは−10℃以下である。なお、エマルション粒子自体のガラス転移温度は、当該エマルション粒子の原料として用いられている全単量体の単独重合体のガラス転移温度を用いて、前記フォックス(Fox)の式に基づいて求められた温度を意味する。
【0067】
なお、外層を構成している重合体の溶解パラメーター(以下、SP値ともいう)は、内層を構成している重合体のSP値よりも高いことが、塗膜の可撓性および造膜性を向上させる観点から好ましい。また、内層を構成している重合体のSP値と外層を構成している重合体のSP値の差(絶対値)は、エマルション粒子内で層分離構造を形成させる観点から、大きいことが好ましい。本発明では、エマルション粒子は、SP値が低いスチレンが多量で使用されている重合体(I)と、SP値が高いカルボキシル基含有単量体が多量で使用されている重合体(II)で構成されているので、内層と外層とが明確に分離されているという理想的な構造を有する。
【0068】
なお、SP値は、ヒルデブラント(Hildebrand)によって導入された正則溶液論により定義される値であり、2成分系溶液の溶解度の目安にもなっている。一般に、SP値が近い物質同士は互いに混ざりやすい傾向がある。したがって、SP値は、溶質と溶媒との混ざりやすさを判断する目安にもなっている。
【0069】
内層を構成している重合体と外層を構成している重合体との重量比(内層を構成している重合体/外層を構成している重合体)は、塗膜強度および塗膜の耐透水性を向上させる観点から、10/90以上、好ましくは15/85以上であり、耐凍害性を向上させる観点から、60/40以下である。
【0070】
また、エマルション粒子における内層を構成している重合体と外層を構成している重合体との合計含有量は、塗膜強度、塗膜の耐透水性および耐凍害性を向上させる観点から、40重量%以上であり、内層を構成している重合体と外層を構成している重合体との合計含有量が多いほど好ましく、その上限値は100重量%である。
【0071】
エマルション粒子の平均粒子径は、エマルション粒子の機械的安定性を向上させる観点から、好ましくは150nm以上、より好ましくは200nm以上であり、塗膜の耐透水性を向上させる観点から、好ましくは500nm以下、より好ましくは400nm以下である。
【0072】
なお、本明細書において、エマルション粒子の平均粒子径は、動的光散乱法による粒度分布測定器〔パーティクル・サイジング・システムズ(Particle Sizing Systems)社製、商品名:NICOMP Model 380)を用いて測定された体積平均粒子径を意味する。
【0073】
本発明のシーラー用樹脂エマルションにおける不揮発分量は、生産性を向上させる観点から、好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上であり、取り扱い性を向上させる観点から、好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。
【0074】
なお、本明細書において、シーラー用樹脂エマルションにおける不揮発分量は、シーラー用樹脂エマルション1gを秤量し、熱風乾燥機で110℃の温度で1時間乾燥させ、得られた残渣を不揮発分とし、式:
〔シーラー用樹脂エマルションにおける不揮発分量(質量%)〕
=(〔残渣の質量〕÷〔シーラー用樹脂エマルション1g〕)×100
に基づいて求められた値を意味する。
【0075】
また、本発明のシーラー用樹脂エマルションの最低造膜温度は、造膜性を向上させる観点から、好ましくは10℃以下、より好ましくは0℃以下である。本発明のシーラー用樹脂エマルションの最低造膜温度は、例えば、エマルション粒子全体のガラス転移温度や最外層のガラス転移温度を調節することによって調整することができる。
【0076】
なお、本明細書において、シーラー用樹脂エマルションの最低造膜温度は、熱勾配試験機の上に置いたガラス板上にシーラー用樹脂エマルションを厚さが0.2mmとなるようにアプリケーターで塗工し、クラックが生じたときの温度を意味する。
【0077】
以上のようにして得られる本発明のシーラー用樹脂エマルションは、耐凍害性、塗膜の耐透水性および塗膜強度に優れているので、例えば、建築物の外装に用いられるシーラー、微弾性フィラーなどに有用である。
【0078】
建築物の外装を構成する材料の代表例としては、無機質建材が挙げられる。無機質建材としては、例えば、窯業系基材、金属系基材などが挙げられる。窯業系基材は、例えば、瓦、外壁材などの用途に使用される。窯業系基材は、無機質硬化体の原料となる水硬性膠着材に無機充填剤、繊維質材料などを添加し、得られた混合物を成形し、得られた成形体を養生し、硬化させることによって得られる。無機質建材としては、例えば、フレキシブルボード、珪酸カルシウム板、石膏スラグパーライト板、木片セメント板、プレキャストコンクリート板、ALC板、石膏ボードなどが挙げられる。
【0079】
このような無機質建材は、一般に、その内部に水が透しやすので、劣化しやすいという性質を有する。そのため、無機質建材の表面には、一般に、シーラーと呼ばれている下塗り材が塗布されている。その無機質建材の表面には、通常、所望の意匠を付与するために、上塗り塗料が塗布されている。本発明のシーラー用樹脂エマルションは、これらのうち、下塗り材に好適に使用することができる。
【実施例】
【0080】
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特に断りがない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「重量%」を意味する。
【0081】
実施例1
滴下ロート、攪拌機、窒素導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水46部を仕込んだ。
【0082】
スチレン12.8部、メチルメタクリレート1.7部およびアクリル酸0.5部を混合することにより、単量体成分Aを調製した。
【0083】
前記で得られた単量体成分A、脱イオン水5部および乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10〕の25%水溶液2部を混合することにより、滴下用プレエマルションを調製した。
【0084】
得られた滴下用プレエマルションのうち、単量体成分の総量の1%にあたる1.5部を前記フラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液2部をフラスコ内に添加し、初期の乳化重合を開始した。
【0085】
次に、滴下用プレエマルションの残部、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液1部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液1部を40分間かけてフラスコ内に滴下させた。滴下終了後、80℃の温度で60分間維持した。
【0086】
その後、アクリル酸1部、2−エチルヘキシルアクリレート76.5部、ヒドロキシエチルメタクリレート0.5部およびアクリロニトリル7部を混合することにより、単量体成分Bを調製した。
【0087】
得られた単量体成分B、脱イオン水29部および乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10〕の25%水溶液10部を混合することにより、2段目のプレエマルションを調製した。
【0088】
得られた2段目のプレエマルション、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液6部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液6部を200分間かけてフラスコ内に滴下した。滴下終了後、80℃の温度で120分間維持し、25%アンモニア水を添加し、pH〔(株)堀場製作所製、品番:F−23を用いて23℃で測定、以下同様〕を8.5に調整して乳化重合反応を終了した。得られた反応混合物を室温まで冷却した後、300メッシュ(JISメッシュ、以下同様)の金網で濾過することにより、不揮発分の含有量が50%のシーラー用樹脂エマルションを得た。
【0089】
シーラー用樹脂エマルションに用いられた単量体成分の組成および当該シーラー用樹脂エマルションの性質をそれぞれ表1および表2に示す。
【0090】
実施例2〜11
実施例1において、単量体成分を表1に示すように変更し、単量体15部あたりの量が2部となるように25%乳化剤水溶液の量を調整し、不揮発分量に合わせてフラスコ内に仕込む脱イオン水の量を調整し、各層を形成する際に単量体成分と乳化剤と水とからなる成分における単量体成分の濃度が68%となるように脱イオン水の量を調整し、乳化重合に要する時間を式:
〔乳化重合に要する時間〕
=〔(各層で使用する単量体の重量)÷(使用する全単量体の重量)〕×240分間
に基づいて決定し、初期の乳化重合以外の乳化重合を行なう際に3.5%過硫酸アンモニウム水溶液の量を式:
〔3.5%過硫酸アンモニウム水溶液の量〕
=〔(各層における単量体成分の重量)÷99〕×7
に基づいて決定し、2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液の量を式:
〔2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液の量〕
=〔(各層における単量体成分の重量)÷99〕×7
に基づいて決定し、各層を形成させる際に使用した単量体成分を滴下した後の維持温度を80℃に調整して60分間維持したこと以外は、実施例1と同様にしてシーラー用樹脂エマルションを得た。シーラー用樹脂エマルションに用いられた単量体成分の組成および当該シーラー用樹脂エマルションの性質をそれぞれ表1および表2に示す。
【0091】
なお、以下の表に記載の略号は、以下のことを意味する。
〔表中の略号の意味〕
St:スチレン
MMA:メチルメタクリレート
BA:ブチルアクリレート
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
AA:アクリル酸
MAA:メタクリル酸
HEMA:ヒドロキシエチルメタクリレート
AN:アクリロニトリル
TMSMA:γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
【0092】
また、表に記載の用語は、以下のことを意味する。
〔内層中のSt量〕
内層の原料として使用されている単量体成分Aにおけるスチレンの含有率(%)
〔外層中のカルボン酸量〕
外層の原料として使用されている単量体成分Bにおけるカルボキシル基含有単量体の含有率(%)
〔層構成比〕
内層を構成している重合体と外層を構成している重合体との重量比〔内層の重合体/外層の重合体〕
〔内外層合計量〕
エマルション粒子における内層の重合体と外層の重合体との合計含有率(%)
〔外層Tg〕
外層を構成している重合体のガラス転移温度(℃)
〔トータルSt量〕
エマルション粒子を構成している重合体に原料として使用されている全単量体成分におけるスチレンの含有率(%)
〔トータルTg〕
エマルション粒子のガラス転移温度(℃)
〔MFT〕
シーラー用樹脂エマルションの最低造膜温度(℃)
〔トータルカルボン酸量〕
エマルション粒子を構成している重合体に原料として使用されている全単量体成分におけるカルボキシル基含有単量体の含有率(%)
〔内層Tg〕
内層を構成している重合体のガラス転移温度(℃)
〔その他の層のTg〕
内層および外層以外の層を構成している重合体のガラス転移温度(℃)
〔不揮発分量〕
樹脂エマルションに含まれている樹脂固形分の含有率(%)
〔平均粒子径〕
エマルション粒子の平均粒子径(nm)
【0093】
また、以下の表において、層1〜層5は重合順序を示している。また、表中の各層の組成において、「−」は、その単量体が使用されていないことを意味する。
【0094】
【表1】

【0095】
【表2】

【0096】
比較例1
滴下ロート、攪拌機、窒素導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水28部を仕込んだ。
【0097】
滴下ロートに、脱イオン水34部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10〕の25%水溶液12部、スチレン15部、メチルメタクリレート33部、2−エチルヘキシルアクリレート51部およびアクリル酸1部からなる滴下用プレエマルションを調製した。
【0098】
得られた滴下用プレエマルションのうち、単量体成分の総量の1%にあたる1.5部を前記フラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液2部をフラスコ内に添加し、初期の乳化重合を開始した。
【0099】
次に、滴下用プレエマルションの残部、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液7部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液7部を240分間かけてフラスコ内に滴下させた。滴下終了後、80℃の温度で120分間維持した。その後、25%アンモニア水を添加し、pHを8.5に調整して乳化重合反応を終了した。
【0100】
得られた反応混合物を室温まで冷却した後、300メッシュ(JISメッシュ、以下同様)の金網で濾過することにより、シーラー用樹脂エマルションを得た。
【0101】
シーラー用樹脂エマルションに用いられた単量体成分の組成および当該シーラー用樹脂エマルションの性質をそれぞれ表3および表4に示す。
【0102】
比較例2〜8
実施例1において、単量体成分を表3に示すように変更し、単量体15部あたりの量が2部となるように25%乳化剤水溶液の量を調整し、不揮発分量に合わせてフラスコ内に仕込む脱イオン水の量を調整し、各層を形成する際に単量体成分と乳化剤と水とからなる成分における単量体成分の濃度が68%となるように脱イオン水の量を調整し、乳化重合に要する時間を式:
〔乳化重合に要する時間〕
=〔(各層で使用する単量体の重量)÷(使用する全単量体の重量)〕×240分間
に基づいて決定し、初期の乳化重合以外の乳化重合を行なう際に3.5%過硫酸アンモニウム水溶液の量を式:
〔3.5%過硫酸アンモニウム水溶液の量〕
=〔(各層における単量体成分の重量)÷99〕×7
に基づいて決定し、2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液の量を式:
〔2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液の量〕
=〔(各層における単量体成分の重量)÷99〕×7
に基づいて決定し、各層を形成させる際に使用した単量体成分を滴下した後の維持温度を80℃に調整して60分間維持したこと以外は、比較例1と同様にしてシーラー用樹脂エマルションを得た。シーラー用樹脂エマルションに用いられた単量体成分の組成および当該シーラー用樹脂エマルションの性質をそれぞれ表3および表4に示す。
【0103】
【表3】

【0104】
【表4】

【0105】
実験例
各実施例または各比較例で得られたシーラー用樹脂エマルションを用いた。不揮発分量が50%であるシーラー用樹脂エマルションでは、シーラー用樹脂エマルション100部と水33部とを混合した。不揮発分量が55%であるシーラー用樹脂エマルションでは、シーラー用樹脂エマルション91部と水42部とを混合した。また、不揮発分量が60%であるシーラー用樹脂エマルションでは、シーラー用樹脂エマルション83部と水50部とを混合した。
【0106】
前記でシーラー用樹脂エマルションと水とを混合することによって得られた混合物をディスパーにより回転速度1000min-1で攪拌しながら、造膜温度が0℃となるように造膜助剤〔2,2,2−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、チッソ(株)製、品番:CS−12〕とこの混合物とを混合した。得られた混合物に、さらに分散剤〔(株)サンノプコ製、商品名:ノプコスパース44C〕4部、炭酸カルシウム〔日東粉化商事(株)製、品番:NS#100〕100部、炭酸カルシウム〔日東粉化商事(株)製、品番:NN#200〕100部、酸化亜鉛9部および消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:ノプコ8034L〕0.8部をディスパーによる攪拌下で添加した後、回転速度3000min-1で5分間攪拌し、次いで回転速度を1000min-1に戻した。
【0107】
次に、この混合物に、BH型粘度計〔東京計器(株)製〕で回転速度20min-1における25℃での粘度が15000mPa・sとなるように増粘剤〔ダイセル化学工業(株)製、商品名:SP−850の3%水溶液〕を添加し、30分間攪拌することにより、シーラー塗料を得た。このシーラー塗料を室温で1日間以上放置した。
【0108】
次に、このシーラー塗料をフレキシブルボード〔日本テストパネル(株)製〕に乾燥後の厚さが0.5mmとなるように塗布し、温度が23℃で相対湿度が50%の雰囲気中で14日間静置することによって乾燥させ、試験板を得た。得られた試験板を用いて以下の物性を評価した。その結果を表5に示す。なお、物性において×の評価が1つでもあるシーラー塗料は、不合格である。
【0109】
<耐透水性>
試験板に形成された塗膜上にロート(直径:10cm)を載置し、両者の接触部をシリコーン系バスボンド〔コニシ(株)製〕でシールし、JIS K5400に規定の「ロート法」に準拠して24時間経過後の減水量を測定し、以下の評価基準に基づいて耐透水性を評価した。
(評価基準)
◎:0.3mL/cm2未満
○:0.3mL/cm2以上、0.5mL/cm2未満
△:0.5mL/cm2以上、1.0mL/cm2未満
×:1.0mL/cm2以上
【0110】
<耐凍害性>
JIS A6909に記載の温冷くり返し試験を行なった。すなわち、試験板の側面および塗膜が形成されていない背面をシリコーン系バスボンド〔コニシ(株)製〕でシールした後、凍結融解試験機を用い、23℃の水中に18時間浸漬した後、−20℃の大気中で冷却することによって3時間凍結し、さらに50℃の大気中で3時間加熱することからなる操作を1サイクルとし、4サイクルごとに拡大倍率が30倍のルーペを用いて塗膜面のクラックの発生状態を観察しながら前記操作を20サイクル行ない、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:20サイクルでも問題なし
○:16サイクルで問題がないが、20サイクルでクラックが発生
△:12サイクルで問題がないが、16サイクルでクラックが発生
×:4サイクル、8サイクルまたは12サイクルでクラックが発生
【0111】
<密着性>
試験板の塗膜をカッターナイフで2mm角の碁盤目が100個形成されるようにカットし、セロハン粘着テープ〔ニチバン(株)製、品番:CT405AP−18〕をこの碁盤目に貼り付け、JIS K5400に準拠して剥離試験を行ない、残存している碁盤目数を数え、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:すべて残存
○:残存している碁盤目が98個以上
△:残存している碁盤目が90〜97個
×:残存している碁盤目が89個以下
【0112】
<伸び物性>
金属製の板上に離型紙を敷き、その上に乾燥後の厚さが0.5mmとなるように、前記で得られたシーラー塗料を塗布し、温度が23℃で相対湿度が50%の雰囲気中で7日間静置することによって乾燥させた後、形成された塗膜を剥がし、剥がした塗膜の表と裏とを逆にして離型紙の上でさらに7日間静置することによって乾燥させ、試験体を得た。
【0113】
次に、この試験体をJIS K6251の4.1に規定するダンベル状2号形に打ち抜き、離型紙を取り除くことにより、試験片を得た。得られた試験片を引張り試験機のチャック間距離が60mmとなるように取り付け、200mm/minの引張り速度で試験片が破断するまで引張り荷重を加える操作を行ない、最大引張り荷重および破断時におけるチャック間の試験体の伸び率を求め、以下の評価基準に基づいて塗膜強度および伸び率を評価した。
【0114】
(1)塗膜強度の評価基準
◎:最大引張り荷重が2N/mm2以上
○:最大引張り荷重が1.5N/mm2以上、2N/mm2未満
△:最大引張り荷重が1.0N/mm2以上、1.5N/mm2未満
×:最大引張り荷重が1.0N/mm2未満
(2)伸び率の評価基準
◎:伸び率が50%以上
○:伸び率が30%以上、50%未満
△:伸び率が10%以上、30%未満
×:伸び率が10%未満
【0115】
<環境に対する負荷>
一般に、シーラー用樹脂エマルションに造膜性を付与するために最低造膜温度が0℃以下となるように調整されている。この最低造膜温度を調整する際には造膜助剤が使用されているが、造膜助剤は揮発性物質であることから、環境負荷を軽減させる観点から、その造膜助剤の使用量を極力低減させることが望まれる。
【0116】
そこで、シーラー用樹脂エマルションに必要とされる造膜助剤の量によって環境に対する負荷を評価した。その評価基準は、以下のとおりである。
(評価基準)
◎:シーラー用樹脂エマルションにおける造膜助剤の含有量が1%未満
○:シーラー用樹脂エマルションにおける造膜助剤の含有量が0.5%以上1%未満
△:シーラー用樹脂エマルションにおける造膜助剤の含有量が1%以上2%未満
×:シーラー用樹脂エマルションにおける造膜助剤の含有量が2%以上
【0117】
【表5】

【0118】
表5に示された結果から、各実施例で得られたシーラー用樹脂エマルションは、いずれも、耐透水性、耐凍害性および塗膜強度に優れた塗膜を形成することがわかる。また、各実施例で得られたシーラー用樹脂エマルションは、一定量の顔料を配合しても密着性が低下することなく、耐透水性、耐凍害性および伸び物性に優れた塗膜を形成するので、経済的価値が高く、造膜助剤の使用量を大幅に低減させることができるので、環境面にも優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明のシーラー用樹脂エマルションは、例えば、建築物の外装に用いられるシーラー、微弾性フィラーなどに有用なシーラー用樹脂エマルション、塗料などに使用することが期待されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層および外層を有するエマルション粒子を含有する樹脂エマルションであって、前記内層が芳香族系単量体85〜100重量%およびエチレン性不飽和単量体0〜15重量%を含有する単量体成分を乳化重合させてなる重合体で構成され、内層を構成している重合体と外層を構成している重合体との重量比(内層を構成している重合体/外層を構成している重合体)が10/90〜60/40であり、エマルション粒子における内層を構成している重合体と外層を構成している重合体との合計含有量が40〜100重量%であり、前記エマルション粒子の原料として用いられる全単量体成分におけるスチレンの含有量が5〜40重量%で、スチレン以外の単量体の含有量が60〜95重量%であり、外層の原料として用いられる単量体成分におけるカルボキシル基含有単量体の含有量が1〜10重量%で、カルボキシル基含有単量体以外の単量体の量が90〜99重量%であり、エマルション粒子のガラス転移温度が−70〜10℃であるシーラー用樹脂エマルション。
【請求項2】
エマルション粒子の原料として用いられる全単量体成分におけるスチレン以外の単量体が、スチレン以外の芳香族系単量体およびエチレン性不飽和単量体からなる群より選ばれた少なくとも1種の単量体を含有する請求項1に記載のシーラー用樹脂エマルション。
【請求項3】
スチレン以外の芳香族系単量体が、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、tert−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエンおよびアラルキル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれた少なくとも1種の単量体である請求項2に記載のシーラー用樹脂エマルション。
【請求項4】
外層の原料として用いられる単量体成分におけるカルボキシル基含有単量体以外の単量体が、芳香族系単量体およびカルボキシル基含有単量体以外のエチレン性不飽和単量体からなる群より選ばれた少なくとも1種の単量体である請求項1〜3のいずれかに記載のシーラー用樹脂エマルション。
【請求項5】
カルボキシル基含有単量体以外のエチレン性不飽和単量体が、アルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレート、オキソ基含有単量体、フッ素原子含有単量体、窒素原子含有単量体およびエポキシ基含有単量体からなる群より選ばれた少なくとも1種の単量体である請求項4に記載のシーラー用樹脂エマルション。
【請求項6】
内層および外層を有するエマルション粒子を含有する樹脂エマルションの製造方法であって、芳香族系単量体85〜100重量%およびエチレン性不飽和単量体0〜15重量%を含有する単量体成分を乳化重合させることによって内層を形成し、カルボキシル基含有単量体1〜10重量%およびカルボキシル基含有単量体以外の単量体90〜99重量%を含有する単量体成分を乳化重合させることによって外層を形成し、内層を構成している重合体と外層を構成している重合体との重量比(内層を構成している重合体/外層を構成している重合体)を10/90〜60/40に調整し、エマルション粒子における内層を構成している重合体と外層を構成している重合体との合計含有量を40〜100重量%に調整し、前記エマルション粒子の原料として用いられる全単量体成分におけるスチレンの含有量を5〜40重量%に、スチレン以外の単量体の含有量を60〜95重量%に調整し、エマルション粒子のガラス転移温度を−70〜10℃に調整するシーラー用樹脂エマルションの製造方法。


【公開番号】特開2011−111487(P2011−111487A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267365(P2009−267365)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】