説明

シーリング・ポンプアップ装置、及び、シーリング・ポンプアップ方法。

【課題】シーリング剤を適切に空気入りタイヤへ注入して、空気入りタイヤを補修する、シーリング・ポンプアップ装置、及び、シーリング・ポンプアップ方法を提供する。
【解決手段】シーリング剤Sの注入時にはシーリング剤用圧力P1で圧縮空気を液剤容器18へ供給し、シーリング剤Sが液剤容器18から排出された後にタイヤ100をポンプアップする時には、ポンプアップ用圧力P2でポンプアップする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンクした空気入りタイヤをシールするためのシーリング剤を空気入りタイヤ内へ注入すると共に、空気入りタイヤ内に圧縮空気を供給して空気入りタイヤの内圧を昇圧するシーリング・ポンプアップ装置、及び、シーリング・ポンプアップ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」という。)がパンクした際に、タイヤ及びホイールを交換することなく、タイヤをシーリング剤により補修して所定の指定圧まで内圧をポンプアップするシーリング・ポンプアップ装置が普及している。この種のシーリング・ポンプアップ装置としては、例えば、特許文献1に記載されているものが知られている。
【0003】
このようなシーリング・ポンプアップ装置は、圧縮空気を供給するためのコンプレッサ、及び、シーリング剤が収容された液剤容器を備えている。このシーリング・ポンプアップ装置では、コンプレッサから液剤容器へ圧縮空気が送り込まれて、シーリング剤が空気入りタイヤへ供給され、その後、コンプレッサからの圧縮空気により、空気入りタイヤがポンプアップされる。
【0004】
ところで、シーリング剤を空気入りタイヤへ供給するために必要とされる注入圧力と、空気入りタイヤをポンプアップするために必要とされるポンプアップ圧力では、一般的に前者の注入圧力の方が低い。しかしながら、通常、コンプレッサから供給される圧縮空気の圧力は一定であり、シーリング剤を空気入りタイヤへ注入する圧力が、ポンプアップ圧力と同等の高い圧力となっている。このように、シーリング剤の注入時の圧力が必要以上に高い圧力となると、シーリング剤が高温になり、高圧でゲル化して、シーリング機能に影響を与えたり、シーリング剤がタイヤバルブで詰まってしまったりすることも考えられる。
【特許文献1】特開2008−23977号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の事実を考慮してなされたものであり、シーリング剤を適切に空気入りタイヤへ注入して、空気入りタイヤを補修する、シーリング・ポンプアップ装置、及び、シーリング・ポンプアップ方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係るシーリング・ポンプアップ装置は、圧縮空気を生成し、生成した圧縮空気を供給する空気供給源と、シーリング剤が収容され、前記空気供給源から圧縮空気が供給されて、前記シーリング剤を空気入りタイヤへ供給する液剤供給源と、前記空気供給源からの圧縮空気を前記空気入りタイヤへ導く空気供給路と、前記空気供給路の供給圧力を、前記空気入りタイヤへ前記シーリング剤を供給する際のシーリング剤用圧力と、前記空気入りタイヤをポンプアップする際のポンプアップ用圧力と、で切り換える、圧力切換手段と、を備えている。
【0007】
本発明のシーリング・ポンプアップ装置によれば、圧力切換手段で空気供給路の供給圧力を切り換えて、空気入りタイヤへシーリング剤を供給する際にはシーリング剤用圧力でシーリング剤の供給を行って、シーリング剤に過度の高圧がかかるのを防止することができる。また、空気入りタイヤをポンプアップする際にはポンプアップ用圧力でポンプアップすることにより、適切に空気入りタイヤのポンプアップを行うことができる。
【0008】
本発明の請求項2に係るシーリング・ポンプアップ装置は、前記圧力切換手段が、前記供給圧力の切換えのタイミングを検知する検知センサを有し、この検知センサにより検知された切換のタイミングによって、前記供給圧力が前記シーリング剤用圧力から前記ポンプアップ用圧力へ切換られること、を特徴とする。
【0009】
このように、検知センサを設け、検知センサより検知された切換のタイミングによって供給圧力を切換えることにより、手動で供給圧力を切換える必要がなく、利便性を高くすることができる。
【0010】
本発明の請求項3に係るシーリング・ポンプアップ装置は、前記圧力切換手段が、前記空気供給源による圧縮空気の供給開始からシーリング剤注入に要する所定時間経過後に、前記供給圧力を前記シーリング剤用圧力から前記ポンプアップ用圧力へ切換えること、を特徴とする。
【0011】
通常、シーリング・ポンプアップ装置では、まず、シーリング剤の注入を行い、次いでタイヤのポンプアップが行われる。したがって、空気供給源による圧縮空気の供給開始からシーリング剤注入に要する所定時間経過後に供給圧力を前記シーリング剤用圧力から前記ポンプアップ用圧力へ切換ることにより、適切な圧力で、シーリング剤の注入とタイヤポンプアップを行うことができる。
【0012】
本発明の請求項4に係るシーリング・ポンプアップ装置は、前記圧力切換手段が、前記空気供給源からの圧縮空気の圧力が、前記シーリング剤用圧力を超えた場合に前記圧縮空気を逃がす第1作動圧力と、前記ポンプアップ用圧力を超えた場合に圧縮空気を逃がす第2作動圧力と、の間で作動圧力を切換可能な安全弁を備えていること、を特徴とする。
【0013】
上記構成のシーリング・ポンプアップ装置では、安全弁が設置され、この安全弁の作動圧力が、シーリング剤用圧力を超えた場合に圧縮空気を逃がす第1作動圧力と、ポンプアップ用圧力を超えた場合に圧縮空気を逃がす第2作動圧力と、の間で切換可能とされている。このように、作動圧力を切換可能な安全弁を設置することにより、空気供給源で生成する圧縮空気の圧力を一定にしたままで、容易に空気供給路の圧力を切換えることができる。
【0014】
本発明の請求項5に係るシーリング・ポンプアップ装置は、前記空気供給路は、前記空気供給源と前記液剤供給源とを接続する第1供給路と、前記空気供給源と前記空気入りタイヤとを接続する第2供給路と、を含んで構成され、前記圧力切換手段が、前記空気供給源と連通される前記空気供給路を、前記第1供給路と前記第2供給路との間で切換える切換弁と、前記第1供給路に設置され、作動圧力が前記シーリング剤用圧力を超えた場合に前記圧縮空気を逃がす第1作動圧力に設定された第1安全弁と、第2供給路に設置され、作動圧力が前記ポンプアップ用圧力を超えた場合に前記圧縮空気を逃がす第2作動圧力に設定された第2安全弁と、を含んで構成されていること、を特徴とする。
【0015】
上記構成のシーリング・ポンプアップ装置では、第1安全弁の設置された第1供給路と、第2安全弁の設置された第2供給路とで、空気供給路を切換えることにより、空気供給源で生成する圧縮空気の圧力を一定にしたままで、容易に空気供給路の圧力を切換えることができる。
【0016】
本発明の請求項6に係るシーリング・ポンプアップ方法は、シーリング剤供給用圧力で圧縮空気を供給して、シーリング剤を空気入りタイヤへ供給し、前記シーリング剤の供給後に、前記シーリング剤供給用圧力よりも高いポンプアップ用圧力で前記空気入りタイヤをポンプアップするものである。
【0017】
このように、シーリング剤供給用圧力と、ポンプアップ用圧力という、異なる圧力で空気入りタイヤの補修を行うことにより、シーリング剤を適切に注入することができると共に、空気入りタイヤを適切にポンプアップすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、シーリング剤を適切に空気入りタイヤへ注入して、空気入りタイヤを補修することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[第1実施形態]
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係るシーリング・ポンプアップ装置について説明する。
【0021】
図1には、本発明の一実施形態に係るシーリング・ポンプアップ装置10が示されている。シーリング・ポンプアップ装置10は、自動車等の車両に装着された空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」という。)がパンクした際、そのタイヤ及びホイールを交換することなく、タイヤをシーリング剤により補修して所定の指定圧まで内圧を再加圧(ポンプアップ)するものである。
【0022】
図1に示されるように、シーリング・ポンプアップ装置10は外殻部としてケーシング11を備えており、このケーシング11の内部には、コンプレッサユニット12、注入ユニット20及び、この注入ユニット20に連結固定された液剤容器18が配置されている。
【0023】
シーリング・ポンプアップ装置10には、コンプレッサのON/OFFを行うためのスイッチ60が設けられている。また、タイヤ100へ供給される圧縮空気の圧力を表示する圧力ゲージGが設けられている。
【0024】
コンプレッサユニット12には、その内部にモータ、エアコンプレッサ12A、電源回路、制御基板等が配置されると共に、電源回路からユニット外部へ延出する電源ケーブル14が設けられている。この電源ケーブル14の先端部に設けられたプラグ15を、例えば、車両に設置されたシガレットライターのソケットに差込むことにより、車両に搭載されたバッテリにより電源回路を通してモータ等へ電源が供給可能になる。ここで、コンプレッサユニット12は、そのエアコンプレッサ12Aにより修理すべきタイヤ100の種類毎に規定された指定圧よりも高圧(例えば、300kPa以上)の圧縮空気を発生可能とされている。
【0025】
図2に示すように、液剤容器18内には、シーリング・ポンプアップ装置10により修理すべきタイヤ100の種類、サイズ等に応じた規定量(例えば、200g〜400g)よりも若干多めのシーリング剤Sが充填されている。液剤容器18の下端部には、シーリング剤の吐出口24が開口されており、この吐出口24は膜状のアルミシール26により閉塞されている。液剤容器18の下側には、注入ユニット20が連結されている。
【0026】
注入ユニット20は、上端側が開口して略有底円筒状に形成されたユニット本体部30及び、このユニット本体部30の下端部から外周側へ延出する円板状の脚部38を備えている。ユニット本体部30には、液剤容器18の吐出口24側と連結される上開口部32、コンプレッサユニット12から延出される耐圧ホース70と連結される第1連結部33、及び、タイヤ100側へ接続されるジョイントホース78と連結される第2連結部34が構成されている。また、ユニット本体部30には、アルミシール26に対向するように穿孔部材27が配置されている。穿孔部材27は、ユニット本体部30内に構成された連通路35に軸部27Aが挿入されており、押圧治具36を連通路35の下側から挿入することにより、液剤容器18側へ押し出されて、アルミシール26を突き破って液剤容器18内へ入り込む。押圧治具36は、連通路35に保持され、吐出口24、上開口部32、第1連結部33、及び、第2連結部34が、連通される。
【0027】
空気供給路としての耐圧ホース70は、その基端部がコンプレッサユニット12内のエアコンプレッサ12Aに接続され、他端部が第1連結部33と接続されている。耐圧ホース70には、圧力切換用安全弁40が取り付けられている。空気供給路としてのジョイントホース78の一端部は第2連結部34に接続され、他端部はバルブアダプタ80を介してタイヤ100のタイヤバルブ102に接続される。ジョイントホース78は、シーリング剤Sの供給時には、液体供給路として機能し、タイヤポンプアップ時には、空気供給路として機能する。
【0028】
圧力切換用安全弁40は、図3(A)に示すように、安全弁本体42、及び、圧力調整部50を備えている。安全弁本体42は、円筒形状とされ、耐圧ホース70を連結する連結部43、スプリング45と開閉蓋46が収納される収納部44を有している。連結部43には、耐圧ホース70が連結されている。
【0029】
収納部44内には、収納空間44Rが構成され、連通路44Aを介して連結部43と連通されている。収納部44の側壁には、空気を外部へ逃がすための排出口44Cが構成されている。収納部44の連通路44A側には、シール部材47が配置されている。開閉蓋46は、連通路44A側が連通路44Aへ向かって突条の円錐形状とされており、スプリング45によってシール部材47へ押し当てられるように付勢されている。通常時には、連通路44Aは、開閉蓋46によって閉鎖されている。
【0030】
圧力調整部50は、ソレノイド52、及び、押圧板54を備えている。ソレノイド52は、後述するタイミング信号T1の入力により通電されて、図3(B)に示すように、プランジャ52Aが引き込まれて押圧板54がスプリング45を押圧する方向へ移動し、スプリング45を圧縮させる。押圧板54は、非通電時には、図3(A)に示すように、圧力調整部50の安全弁本体42側に構成された段差部48Dに当接するシーリング剤注入用圧力位置A1に配置されている。また、押圧板54は、通電時には、図3(B)に示すように、段差部48Dよりも収納空間44Rへ入り込んだポンプアップ用圧力位置A2に配置されている。
【0031】
押圧板54がシーリング剤注入用圧力位置A1に配置されているときには、圧力切換用安全弁40の作動圧力(開閉蓋46が耐圧ホース70からの圧力により押されて開放される圧力)は、シーリング剤Sをタイヤ100へ注入するために適したシーリング剤用圧力P1になるように設定されている。すなわち、耐圧ホース70内の圧力がシーリング剤用圧力P1を超えると、図4(A)に示すように、開閉蓋46が空気圧により押されて開放され、圧縮空気が排出口44Cから逃がされる。
【0032】
また、押圧板54がポンプアップ用圧力位置A2に配置されているときには、圧力切換用安全弁40の作動圧力は、シーリング剤用圧力P1よりも高いタイヤ100をポンプアップするために適したポンプアップ用圧力P2になるように設定されている。すなわち、耐圧ホース70内の圧力がポンプアップ用圧力P2を超えると、図4(B)に示すように、開閉蓋46が空気圧により押されて開放され、圧縮空気が排出口44Cから逃がされる。
【0033】
なお、シーリング剤用圧力P1は、50kpa〜100kpa程度、ポンプアップ用圧力P2は、300kpa〜350kpa程度である。
【0034】
液剤容器18の下端部の側壁には、液剤排出検知センサ56が取り付けられている。液剤排出検知センサ56と向い合う側の液剤容器18の側壁には、発光部55が設けられている。液剤排出検知センサ56は、シーリング剤Sが吐出口24から排出されて液剤排出検知センサ56と発光部55との間を通過している間は、発光部55からの光はシーリング剤Sによって遮断されて光を検知できないが、液剤容器18からシーリング剤Sがすべて流出されて液剤排出検知センサ56と発光部55との間にシーリング剤Sが介在しなくなると、発光部55からの光を検知して、圧力切換用安全弁40の圧力調整部50へタイミング信号T1が送られる。
【0035】
図5には、本実施形態のシーリング・ポンプアップ装置10の、圧力切換用安全弁40の作動に係る構成の概略ブロック図が示されている。液剤排出検知センサ56は、圧力調整部50と接続されている。液剤排出検知センサ56は、発光部55からの光を検知すると圧力調整部50へタイミング信号T1を出力する。タイミング信号T1を受けた圧力調整部50は、ソレノイド52が通電されて、プランジャ52Aが移動し、押圧板54でスプリング45を押して、圧力切換用安全弁40の作動圧力を、シーリング剤用圧力P1からポンプアップ用圧力P2へ切換える。
【0036】
次に、本実施形態のシーリング・ポンプアップ装置10の作用を説明する。
【0037】
タイヤ100にパンクが発生した際には、先ず、作業者は、ジョイントホース78のバルブアダプタ80をタイヤ100のタイヤバルブ102にねじ止めし、ジョイントホース78をタイヤ100内へ連通させる。
【0038】
次いで、作業者は、押圧治具36をシーリング・ポンプアップ装置10の連通路35に挿入する。これにより、押圧治具36で押された穿孔部材27により、アルミシール26が突き破られ、押圧治具36が連通路35に保持されると共に、吐出口24、上開口部32、第1連結部33、及び、第2連結部34が、連通される。
【0039】
作業者は、注入ユニット20の上側に液剤容器18が位置するようにシーリング・ポンプアップ装置10を路面上などに置き、スイッチ60をONにしてコンプレッサユニット12を作動させる。これにより、エアコンプレッサ12Aが作動して圧縮空気が生成されると共に、発光部55が発光を開始し、液剤排出検知センサ56も発光部55からの光のセンシングを開始する。
【0040】
ここで、エアコンプレッサ12Aにより生成される圧縮空気は、ポンプアップ用圧力P2に対応した圧力であり、エアコンプレッサ12Aによっては、生成する圧縮空気の圧力は調整されない。
【0041】
エアコンプレッサ12Aにより生成された圧縮空気は、耐圧ホース70を通り、圧力切換用安全弁40を介して液剤容器18へ供給される。圧力切換用安全弁40は、初期の作動圧力がシーリング剤用圧力P1に設定されている。生成された圧縮空気の圧力がシーリング剤用圧力P1に達すると、図4(A)に示すように、耐圧ホース70から連通路44Aへ流入する圧縮空気に押されて、開閉蓋46がシール部材47から離れる。これにより、圧縮空気が排出口44Cから外部へ逃がされ、耐圧ホース70から液剤容器18へ供給される圧縮空気の圧力は、シーリング剤用圧力P1となる。
【0042】
圧縮空気が液剤容器18内に供給されると、この圧縮空気が液剤容器18内でシーリング剤Sの上方へ浮上し、液剤容器18内のシーリング剤S上に空間(空気層)を形成する。この空気層からの空気圧により加圧されたシーリング剤Sは、アルミシール26に開けられた孔を通して吐出され、第2連結部34へ向かい、ジョイントホース78を通ってタイヤ100内へ、シーリング剤用圧力P1で注入される。
【0043】
シーリング剤Sが、液剤容器18からすべて吐出され、発光部55からの光がシーリング剤Sによって遮断されなくなると、液剤排出検知センサ56により発光部55からの光が検知され、液剤排出検知センサ56から圧力調整部50へタイミング信号T1が出力される。タイミング信号T1が入力されると、圧力調整部50のソレノイド52が通電されて、プランジャ52Aが引き込まれ、押圧板54がシーリング剤注入用圧力位置A1からポンプアップ用圧力位置A2スプリング45へ移動し、スプリング45を押圧して圧縮させる。これにより、圧力切換用安全弁40の作動圧力は、シーリング剤用圧力P1からポンプアップ用圧力P2に切換えられ、開閉蓋44Cは、一旦閉鎖される。
【0044】
耐圧ホース70の圧力が、ポンプアップ用圧力P2に達すると、図4(B)に示すように、耐圧ホース70から連通路44Aへ流入する圧縮空気に押されて、再び開閉蓋46がシール部材47から離れる。これにより、圧縮空気が排出口44Cから外部へ逃がされ、耐圧ホース70から液剤容器18へ供給される圧縮空気の圧力は、ポンプアップ用圧力P2となる。圧縮空気は、耐圧ホース70から、液剤容器18、注入ユニット20、及び、ジョイントホース78を通ってタイヤ100へ供給され、タイヤ100は、ポンプアップ用圧力P2でポンプアップされる。
【0045】
次に、作業者は、コンプレッサユニット12に設けられた圧力ゲージGによりタイヤ100の内圧が指定圧になったことを確認したならば、コンプレッサユニット12を停止し、バルブアダプタ80をタイヤバルブ102から取り外す。
【0046】
作業者は、タイヤ100の膨張完了後一定時間内に、シーリング剤Sが注入されたタイヤ100を用いて一定距離に亘って予備走行する。これにより、タイヤ100内部にシーリング剤Sが均一に拡散し、シーリング剤Sがパンク穴に充填されてパンク穴を閉塞する。予備走行完了後に、作業者は、タイヤ100の内圧を再測定し、必要に応じて再びジョイントホース78のバルブアダプタ80をタイヤバルブ102にねじ止めし、コンプレッサユニット12を再作動させてタイヤ100を規定の内圧まで加圧する。これにより、タイヤ100のパンク修理が完了し、このタイヤ100を用いて一定の距離範囲内で一定速度以下(例えば、80Km/h以下)での走行が可能になる。
【0047】
本実施形態のシーリング・ポンプアップ装置10では、シーリング剤Sの注入時にはシーリング剤用圧力P1で圧縮空気を液剤容器18へ供給し、シーリング剤Sが液剤容器18から排出された後にタイヤ100をポンプアップする時には、ポンプアップ用圧力P2でポンプアップする。したがって、シーリング剤Sに過度な圧力が加わって、シーリング剤Sがゲル化してシーリング機能に影響を与えたり、シーリング剤Sがタイヤバルブで詰まってしまったりすることを防止することができる。
【0048】
なお、本実施形態では、液剤排出検知センサ56を用いて、液剤容器18からシーリング剤Sの排出が終了するタイミングを検知して、供給する圧縮空気の圧力をシーリング剤用圧力P1からポンプアップ用圧力P2へ切換えたが、タイマーを用いて圧力を切換えてもよい。
【0049】
この場合には、予め、液剤容器18からのシーリング剤Sの排出開始から排出完了までの時間Qを計測しておき、スイッチ60がONされた後、時間Qの経過後に圧力を切換える。構成としては、例えば、図6に示すように、時間Qの設定されたタイマー62を、エアコンプレッサ12AをON/OFFするためのスイッチ60と接続すると共に、圧力調整部50とも接続する。そして、スイッチ60のONに連動させて、タイマー62を作動させ、時間Qの経過後に圧力調整部50へタイミング信号T1を送って、圧力切換用安全弁40の作動圧力を、シーリング剤用圧力P1からポンプアップ用圧力P2へ切換える。
【0050】
また、圧力切換用安全弁40の作動圧力の切換えは、作業者によって手動で行ってもよい。この場合には、図7に示すように、スイッチ60とは別に、圧力調整部50と接続され、ONされることによりタイミング信号T1を圧力調整部50へ送信する圧力切換スイッチ64を設ける。作業者は目視で液剤容器18からのシーリング剤Sの排出完了を確認した後、圧力切換スイッチ64をONにして、タイミング信号T1を送り、圧力切換用安全弁40の作動圧力を、シーリング剤用圧力P1からポンプアップ用圧力P2へ切換える。
【0051】
また、本実施形態では、圧力切換用安全弁40を用いて供給圧力の切換を行ったが、エアコンプレッサ12Aを制御することにより、上記と同様のタイミングで供給圧力の切換えを行ってもよい。特に、本実施形態のように、圧力切換用安全弁40を用いることにより、簡易な構成で、供給圧力の切換えを行うことができる。
【0052】
[第2実施形態]
【0053】
次に、第2の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0054】
図8に示すように、本実施形態のシーリング・ポンプアップ装置90は、耐圧ホース70が下流側で第1耐圧ホース71、第2耐圧ホース72に分岐されている。分岐部分には、切換弁73が設けられている。図9には、本実施形態のシーリング・ポンプアップ装置90の、圧力切換に係る構成の概略ブロック図が示されている。
【0055】
切換弁73には三方電磁弁が用いられており、図9に示すように、耐圧ホース70と連結される吸入ポート70A、第1耐圧ホース71と連結される第1排出ポート71A、及び、第2耐圧ホース72と連結される第2排出ポート72Aを有している。切換弁73は、液剤排出検知センサ56と接続されており、第1実施形態と同様のタイミングで、タイミング信号T1が切換弁73に入力される。初期設定では、切換弁73は、第1排出ポート71A側が開口されており、第2排出ポート72A側は閉鎖されている。タイミング信号T1が入力されると、開口ポートが切換えられ、第2排出ポート72A側が開口され、第1排出ポート71A側が閉鎖される。
【0056】
第1耐圧ホース71には、第1安全弁74が設置されている。第1安全弁74の作動圧力は、シーリング剤Sをタイヤ100へ注入するために適したシーリング剤用圧力P1に設定されている。第1耐圧ホース71の下流端は、液剤容器18と連通する第1連結部33(図2参照)と連結されている。
【0057】
第2耐圧ホース72には、第2安全弁75が設置されている。第2安全弁7の作動圧力は、タイヤ100をポンプアップするために適したポンプアップ用圧力P2に設定されている。第2耐圧ホース72の下流端は、ジョイントホース78に逆止弁77を介して連結されている。逆止弁77は、タイヤ100側から、液剤容器18側及び第2安全弁75側へのシーリング剤S、圧縮空気の逆流を防止する。第1安全弁74、第2安全弁75としては、一般的なリリーフ弁を用いることができる。
【0058】
次に、本実施形態のシーリング・ポンプアップ装置90の作用を説明する。
【0059】
作業者による作業手順は、第1実施形態と同様である。スイッチ60がONされると、耐圧ホース70、第1耐圧ホース71を経て、圧縮空気が液剤容器18へ供給される。エアコンプレッサ12Aにより生成される圧縮空気は、ポンプアップ用圧力P2に対応した圧力であるが、生成された圧縮空気の圧力がシーリング剤用圧力P1に達すると、第1安全弁74が作動して、圧縮空気が外部に逃がされ、液剤容器18へ供給される圧縮空気の圧力は、シーリング剤用圧力P1となる。
【0060】
圧縮空気が液剤容器18内に供給されると、第1実施形態と同様にして、液剤容器18内のシーリング剤Sは、ジョイントホース78を通ってシーリング剤用圧力P1で注入される。
【0061】
シーリング剤Sが、液剤容器18からすべて吐出され、発光部55からの光がシーリング剤Sによって遮断されなくなると、液剤排出検知センサ56により発光部55からの光が検知され、液剤排出検知センサ56から切換弁73へタイミング信号T1が出力される。タイミング信号T1が入力されると、切換弁73の開口が、第1排出口71Aから第2排出口72Aへ切換えられる。これにより、圧縮空気は第2耐圧ホース72、第2安全弁75を介してタイヤ100へ供給される。第2安全弁75の作動圧力は、ポンプアップ用圧力P2であるため、圧縮空気の圧力はシーリング剤用圧力P1からポンプアップ用圧力P2へ上昇し、タイヤ100は、ポンプアップ用圧力P2でポンプアップされる。
【0062】
タイヤ100をポンプアップした後の作業手順については、第1実施形態と同様である。
【0063】
本実施形態のシーリング・ポンプアップ装置90でも、シーリング剤Sの注入時にはシーリング剤用圧力P1で圧縮空気を液剤容器18へ供給し、シーリング剤Sが液剤容器18から排出された後にタイヤ100をポンプアップする時には、ポンプアップ用圧力P2でポンプアップする。したがって、シーリング剤Sに過度な圧力が加わって、シーリング剤Sがゲル化してシーリング機能に影響を与えたり、シーリング剤Sがタイヤバルブで詰まってしまったりすることを防止することができる。
【0064】
なお、上記では、液剤排出検知センサ56を用いて、液剤容器18からシーリング剤Sの排出が終了するタイミングを検知して、供給する圧縮空気の圧力をシーリング剤用圧力P1からポンプアップ用圧力P2へ切換えたが、図10に示すように、タイマーを用いて圧力を切換えてもよい。この場合のタイマー62の構成については、第1実施形態で説明したものと同様である。
【0065】
また、切換弁73の作動圧力の切換えは、作業者によって手動で行ってもよい。この場合には、図11に示すように、スイッチ60とは別に、切換弁73と接続され、ONされることによりタイミング信号T1を切換弁73へ送信する圧力切換スイッチ64を設ける。作業者による操作については、第1実施形態と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】第1実施形態のシーリング・ポンプアップ装置の構成を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態のシーリング・ポンプアップ装置における液剤容器、注入ユニット及び押圧治具の構成を示す断面図である。
【図3】第1実施形態の圧力切換用安全弁の(A)は作動圧力がシーリング用圧力の状態、(B)は作動圧力がポンパップ用圧力の状態で、閉鎖された状態を示す断面図である。
【図4】第1実施形態の圧力切換用安全弁の(A)は作動圧力がシーリング用圧力の状態、(B)は作動圧力がポンパップ用圧力の状態で、開放された状態を示す断面図である。
【図5】第1実施形態のシーリング・ポンプアップ装置の圧力切換用安全弁の作動に係る部分の概略ブロック図である。
【図6】第1実施形態のシーリング・ポンプアップ装置の変形例の圧力切換用安全弁の作動に係る部分の概略ブロック図である。
【図7】第1実施形態のシーリング・ポンプアップ装置の他の変形例の圧力切換用安全弁の作動に係る部分の概略ブロック図である。
【図8】第2実施形態のシーリング・ポンプアップ装置の構成を示す斜視図である。
【図9】第2実施形態のシーリング・ポンプアップ装置の切換弁の作動に係る部分の概略ブロック図である。
【図10】第2実施形態のシーリング・ポンプアップ装置の変形例の切換弁の作動に係る部分の概略ブロック図である。
【図11】第2実施形態のシーリング・ポンプアップ装置の他の変形例の切換弁の作動に係る部分の概略ブロック図である。
【符号の説明】
【0067】
10 シーリング・ポンプアップ装置
12A エアコンプレッサ
12 コンプレッサユニット
18 液剤容器
20 注入ユニット
24 吐出口
40 圧力切換用安全弁
42 安全弁本体
46 開閉蓋
47 シール部材
50 圧力調整部
54 押圧板
55 発光部
56 液剤排出検知センサ
60 スイッチ
62 タイマー
64 圧力切換スイッチ
70 耐圧ホース
71 第1耐圧ホース
72 第2耐圧ホース
73 切換弁
74 第1安全弁
75 第2安全弁
78 ジョイントホース
90 シーリング・ポンプアップ装置
100 タイヤ
A1 シーリング剤注入用圧力位置
A2 ポンプアップ用圧力位置
P1 シーリング剤用圧力
P2 ポンプアップ用圧力
Q 時間
S シーリング剤
T1 タイミング信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮空気を生成し、生成した圧縮空気を供給する空気供給源と、
シーリング剤が収容され、前記空気供給源から圧縮空気が供給されて、前記シーリング剤を空気入りタイヤへ供給する液剤供給源と、
前記空気供給源からの圧縮空気を前記空気入りタイヤへ導く空気供給路と、
前記空気供給路の供給圧力を、前記空気入りタイヤへ前記シーリング剤を供給する際のシーリング剤用圧力と、前記空気入りタイヤをポンプアップする際のポンプアップ用圧力と、で切り換える、圧力切換手段と、
を備えたシーリング・ポンプアップ装置。
【請求項2】
前記圧力切換手段は、前記供給圧力の切換えのタイミングを検知する検知センサを有し、この検知センサにより検知された切換のタイミングによって、前記供給圧力が前記シーリング剤用圧力から前記ポンプアップ用圧力へ切換られること、を特徴とする請求項1に記載のシーリング・ポンプアップ装置。
【請求項3】
前記圧力切換手段は、前記空気供給源による圧縮空気の供給開始からシーリング剤注入に要する所定時間経過後に、前記供給圧力を前記シーリング剤用圧力から前記ポンプアップ用圧力へ切換えること、を特徴とする請求項1に記載のシーリング・ポンプアップ装置。
【請求項4】
前記圧力切換手段は、前記空気供給源からの圧縮空気の圧力が、前記シーリング剤用圧力を超えた場合に前記圧縮空気を逃がす第1作動圧力と、前記ポンプアップ用圧力を超えた場合に圧縮空気を逃がす第2作動圧力と、の間で作動圧力を切換可能な安全弁を備えること、を特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のシーリング・ポンプアップ装置。
【請求項5】
前記空気供給路は、前記空気供給源と前記液剤供給源とを接続する第1供給路と、前記空気供給源と前記空気入りタイヤとを接続する第2供給路と、を含んで構成され、
前記圧力切換手段が、
前記空気供給源と連通される前記空気供給路を、前記第1供給路と前記第2供給路との間で切換える切換弁と、
前記第1供給路に設置され、作動圧力が前記シーリング剤用圧力を超えた場合に前記圧縮空気を逃がす第1作動圧力に設定された第1安全弁と、
第2供給路に設置され、作動圧力が前記ポンプアップ用圧力を超えた場合に前記圧縮空気を逃がす第2作動圧力に設定された第2安全弁と、
を含んで構成されていること、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシーリング・ポンプアップ装置。
【請求項6】
シーリング剤供給用圧力で圧縮空気を供給して、シーリング剤を空気入りタイヤへ供給し、
前記シーリング剤の供給後に、前記シーリング剤供給用圧力よりも高いポンプアップ用圧力で前記空気入りタイヤをポンプアップする、シーリング・ポンプアップ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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