説明

シールを有するノズル煉瓦

【課題】タンディッシュをシュラウドに対して迅速にシールするタンディッシュの閉止機構のための下部煉瓦を提供する。
【解決手段】下部ノズル煉瓦1とシュラウド5との間のシールを、下部ノズル煉瓦1の外側表面上の領域に設けるに際し、シール3の保持を改善するための個所すなわち構造を設けて、シール3を適当な位置に保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶鋼の製造に関する。より具体的には、本発明は、タンディッシュをシュラウドに対して迅速にシールするタンディッシュの閉止機構のための下部煉瓦に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の解決法においては、円錐状の下部を有する下部ノズル煉瓦とシュラウドとの間に、長い円錐状のシールが挿入されており、このシールは、酸化アルミニウムで製造されることが多い。溶鋼注湯ラドルは、鋳造機械の上部に立っているためにシールが行なわれ、その目的は、鋳造中に空気中の不純物、特に窒素が溶鋼に入るのを防止することである。シールが上手く行なわれれば、この工程から純粋でより高品質な鋼が得られる。下部ノズル煉瓦の上部に挿入される長い円錐状の「スリーブ−タイプ」のシールは、例えば特許文献1及び特許文献2に開示されている。
【0003】
他のタイプのシールによる解決法は、特許文献3に開示され、ここでは、2つの前面の間の平面的なシールリングによってシールが行なわれている。この場合、下部ノズル煉瓦とシュラウドとが一体に結合される前にシュラウドの前面にシールが挿入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第4420199号明細書
【特許文献2】特開昭60−199556号公報
【特許文献3】米国特許第4949885号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の従来技術の解決法においては、シールを挿入する際、作業者が溶鋼で満たされた注湯ラドルの下に行く必要があるので、シールの挿入は、非常に危険である。
【0006】
本発明の目的は、シールの挿入及びシールの実行における従来技術の欠点を解消し、下部ノズル煉瓦に安全に挿入することができ、満たされた注湯ラドルの下でシールを挿入する必要をなくすことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これは、下部ノズル煉瓦にシールのための箇所を設けて、下部ノズル煉瓦とシールを一体とした本体を設けることによって達成される。シールは、下部ノズル煉瓦に既に挿入されているので、別体のシールを必要とせず、作業者は、注湯ラドルの下の危険な状態に入る必要がなくなる。
【0008】
より具体的には、本発明は、独立請求項の特徴部分に示されるところのことを特徴とする。独立請求項は、さらに、本発明の他の有利な実施形態を開示する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る下部ノズル煉瓦とシュラウドのシールの一実施形態を示す図である。
【図2】本発明に係る下部ノズル煉瓦とシュラウドのシールの第2の実施形態を示す図である。
【図3】本発明に係るシールのために下部ノズル煉瓦にグリップ部が設けられた一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、次に添付図面を参照してより詳細に説明する。
図1には、溶融金属用の流通開口2を有する下部ノズル煉瓦1が示されている。この下部ノズル煉瓦1には、環状のシール3のための挿入溝4が設けられている。シール3は、下部ノズル煉瓦1が注湯ラドルの下に配置される前に、下部ノズル煉瓦1の挿入溝4に挿入される。シュラウド5とのシールは、下部ノズル煉瓦1及びシュラウド5の円錐状の構造により、これらが入れ子の位置に配置されたとき、自動的に生じる。下部ノズル煉瓦1の構造は、鋳込み用の流通開口2を有する本体の煉瓦及びこの煉瓦の外側表面上の金属被覆6からなる。図1に従った解決法では、金属被覆6は、下部ノズル煉瓦1の下縁部7まで延びていないが、その端部は、シール3の挿入ポイント4に達している。この場合、シール3は、煉瓦表面8上に直接挿入される。この煉瓦表面8は、金属被覆6の表面よりも粗いので、シール3を適当な位置で保持し易くする。しかしながら、金属被覆6は、シール3の挿入ポイント4を覆うように形成して、下部ノズル煉瓦1の下縁部7まで延ばしてもよい。スリーブ−タイプの従来技術の解決法と比べると、シール3の挿入ポイントは、異なっている。従来技術のスリーブ−タイプのシールは、下部ノズル煉瓦1の下縁部7から屈曲点9までの全体が挿入されていた、すなわち、本質的に下部ノズル煉瓦1の円錐状部分全体を覆っていた。更に、従来技術の解決法では、金属被覆6は、下部ノズル煉瓦1の下縁部7まで全体に延びて、シールは、金属表面の上に挿入されていた。
【0011】
図1に示される実施形態の解決法では、シール3は、鋳造中に下部ノズル煉瓦1の金属被覆6の縁部を金属飛沫から非常に良好に保護する。溶融金属の飛沫によって生じるこの問題は、従来技術において一般的な問題であった。
【0012】
下部ノズル煉瓦1は、一般的に、交換されるまでに約3〜4回使用され、下部ノズル煉瓦1のシール3は、使用後に毎回交換される。シール3のための製造材料は、一般的に、グラファイトであり、これは挿入ポイント3の高熱に耐える。シール3の縦断面形状は、非常に自由に選択可能である。適用可能な断面形状は、例えば長方形、正方形、円形、楕円形、三角形又は四角形でもよい。
【0013】
図2において、本発明に従ったシールの四角形の断面形状が図示されている。ここでは、下部ノズル煉瓦1のシール3の挿入ポイントに四角形のシールリングが挿入されている。このようなシュラウド5の内側表面に合せて傾斜されたシールリングは、長方形又は正方形断面を有するシールリングよりも良好なシールを行なう。また、この解決法は、金属被覆6を下部ノズル煉瓦1の下縁部7まで延ばしたものでも実行可能である。
【0014】
図3において、本発明の解決法の第2実施形態が図示されている。ここでは、下部ノズル煉瓦1の金属がコーティングされていない領域に、シール(本図には図示されていない)取付用のグリップ部10が設けられている。このようなグリップ部10は、多くの異なる形状とすることができる。これらは、下部ノズル煉瓦1が注湯ラドルの下部に装着されたとき、シールを適当な位置に保持することが要求される。本実施形態では、シールは、好ましくは、長方形の断面形状を有しているが、使用されるシールの断面形状は、変更できることは明らかである。
【0015】
下部ノズル煉瓦1に形成されるグリップ部10は、均一のリングのように下部ノズル煉瓦1の円周に行き渡るようにしてもよく、又は、下部ノズル煉瓦1の円周方向に部分的にのみ設けられてもよい。また、グリップ部10の下部ノズル煉瓦1の縦軸方向の数は、セットされるシールの形状及び寸法に応じて変更することができる。また、この解決法は、金属被覆6を下部ノズル煉瓦1の下縁部7まで延ばしたものでも実行可能である。この場合、グリップ部10は、下部ノズル煉瓦1の金属被覆6に直接的に設けられる。
【0016】
これにより、シール3の装着は、煉瓦表面8上に直接的に行なわれるか、又は、シールの挿入ポイントを覆う金属被覆6上に直接的に行われる。下部ノズル煉瓦1のこの金属表面層である金属被覆6は、取除かれるか、シール領域には形成されないか、又は、シール3の挿入ポイントも覆うように形成される。また、金属被覆6は、シール3の下に、全体的に又は一部に形成されてもよい。
【0017】
酸化アルミニウム、グラファイト又は他の金属の鋳造の熱に耐える材料は、シール3の材料として使用することができる。
【0018】
下部ノズル煉瓦1とシュラウド5との間の接触部をシールする方法は、次の工程を含む:
−その下部側が基本的に使用するシール3の高さに対応する範囲に形成された領域を含み、該領域がシール3を装着するための円筒状の凹部又はグリップ部10を有する下部ノズル煉瓦1の少なくとも一部に金属被覆6を設け、
−シール3を下部ノズル煉瓦1に装着し、
−下部ノズル煉瓦1をそのシール3と共に注湯ラドルの下に装着し、
−下部ノズル煉瓦1をシュラウド5にシール接触させる。
【0019】
更に、この方法は、
−下部ノズル煉瓦1は、シール3の領域には金属被覆6を設けないようにすることができ、
又は、この方法は、
−下部ノズル煉瓦1に、少なくとも一部がシール3の領域に延びる金属被覆6を設けるようにすることができる。
【0020】
本発明の様々な実施形態を一実施例として以上に示してきた。これらは、本発明を限定するものではなく、本発明の保護範囲は、添付の特許請求項範囲によって定義される保護範囲によって定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部に設けられた金属の外側被覆(6)及び溶融金属の流通開口(2)を含む下部ノズル煉瓦(1)であって、その下部が少なくとも途中まで円錐状に形成され、前記下部の外側表面に環状のシール(3)のために形成された領域が設けられていることを特徴とする下部ノズル煉瓦。
【請求項2】
前記シール(3)のための領域は、前記円錐状の下部に形成された円筒状の凹部であることを特徴とする請求項1に記載の下部ノズル煉瓦。
【請求項3】
前記円筒状の凹部は、当該下部ノズル煉瓦(1)の下縁部(7)から上方へ前記シール(3)の高さに対応する範囲にわたって延びていることを特徴とする請求項2に記載の下部ノズル煉瓦。
【請求項4】
前記シール(3)のための領域は、前記シール(3)のためのグリップ部(10)を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の下部ノズル煉瓦。
【請求項5】
前記グリップ部(10)は、少なくとも部分的に当該下部ノズル煉瓦(1)の周囲を囲む突起であることを特徴とする請求項4に記載の下部ノズル煉瓦。
【請求項6】
前記金属被覆(6)は、前記シール(3)の下に延びていないことを特徴とする請求項1に記載の下部ノズル煉瓦。
【請求項7】
前記金属被覆(6)は、少なくとも一部が前記シール(3)の下に延びていることを特徴とする請求項1に記載の下部ノズル煉瓦。
【請求項8】
前記環状のシール(3)の断面形状は、長方形、正方形、円形、楕円形、三角形又は四角形であることを特徴とする請求項1に記載の下部ノズル煉瓦。
【請求項9】
前記シール(3)は、酸化アルミニウム、グラファイト又は他の耐熱性材料で製造されていることを特徴とする請求項1に記載の下部ノズル煉瓦。
【請求項10】
−その下部側が使用するシール(3)の高さに対応する範囲に形成された領域を含み、該領域が前記シール(3)を装着するための円筒状の凹部又はグリップ部(10)を有する下部ノズル煉瓦(1)の少なくとも一部に金属被覆6を設け、
−前記シール(3)を前記下部ノズル煉瓦(1)に装着し、
−前記下部ノズル煉瓦(1)をその前記シール(3)と共に注湯ラドルの下に装着し、
−前記下部ノズル煉瓦(1)をシュラウド(5)にシール接触させる
工程を含むことを特徴とする下部ノズル煉瓦(1)とシュラウド(5)との間をシール接触するための方法。
【請求項11】
更に、
−前記下部ノズル煉瓦(1)の前記シール(3)の領域には、前記金属被覆(6)を設けないことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
更に、
−少なくとも一部が前記シール(3)の領域に延びる前記金属被覆(6)を前記下部ノズル煉瓦(1)に設けることを特徴とする請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−162605(P2010−162605A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−7416(P2010−7416)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(508202717)
【Fターム(参考)】