シールドコネクタ及びシールドシェル
【課題】シールド機能の信頼性向上を図る。
【解決手段】シールドシェルは、メインシェル３１（他方のシェル構成部材）とサブシェル３２（一方のシェル構成部材）を合体させて構成される。サブシェル３２には固着部３４が一体形成され、メインシェル３１には、シールド部材１１の外周に重ねられてシールド部材１１と共に固着部３４に固着される突起部３５が一体形成されている。固着部３４の第１カシメ片４７には外周側へ突出した形態の接触部４９が形成され、固着部３４の固着過程では、接触部４９が、突起部３５の外周面に当接した状態で径方向内向きに変位しながら変形させられる。
【解決手段】シールドシェルは、メインシェル３１（他方のシェル構成部材）とサブシェル３２（一方のシェル構成部材）を合体させて構成される。サブシェル３２には固着部３４が一体形成され、メインシェル３１には、シールド部材１１の外周に重ねられてシールド部材１１と共に固着部３４に固着される突起部３５が一体形成されている。固着部３４の第１カシメ片４７には外周側へ突出した形態の接触部４９が形成され、固着部３４の固着過程では、接触部４９が、突起部３５の外周面に当接した状態で径方向内向きに変位しながら変形させられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、シールドコネクタ及びシールドシェルに関するものである。
【背景技術】
【０００２】
特許文献１には、導体をシールド部材で包囲した形態のシールド導電路の端末に接続されるシールドコネクタが開示されている。このシールドコネクタは、導体に接続された端子金具を収容するハウジングと、ハウジングを包囲するシールドシェルとを備え、シールドシェルには、ハウジングを包囲する手段としての角筒部と、シールド部材に対しその外周を包囲する形態で固着する手段としてのオープンバレル状の固着部とが設けられている。
【０００３】
シールドシェルは、２つのシェル構成部材を合体させて構成され、一方のシェル構成部材には固着部が一体に形成されている。また、他方のシェル構成部材には、片持ち状に突出した形態であって、シールド部材の外周に重なるように配される突起部が形成されている。固着部は、アプリケータと称される自動圧着機により、縮径変形しながらシールド部材と突起部に対し両者を一緒に包囲するようにカシメ付けられる。このように、固着部と突起部とを介して２つのシェル構成部材を導通可能に接続することにより、シールド機能の接触信頼性向上を図るようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特開２００６−１２１２号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
自動圧着機においては、固着済み状態における固着部の径寸法（即ち、高さ寸法や幅寸法）が高い精度で管理されているのであるが、シールド部材の外径寸法については、公差の範囲内でバラツキが生じることは避けられない。そのため、シールド部材の外径寸法が規定の寸法よりも小さい場合には、固着部の内周面と突起部の外面との間や、突起部の内面とシールド部材の外周面との間における接触状態が不安定になり、シールド機能の信頼性低下が懸念される。
【０００６】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、シールド機能の信頼性向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
上記の目的を達成するための手段として、請求項１の発明は、導体をシールド部材で包囲した形態のシールド導電路の端末に接続されるシールドコネクタであって、前記導体に接続された端子金具を収容するハウジングと、前記ハウジングを包囲するシールドシェルとを備え、前記シールドシェルには、前記ハウジングを包囲する手段として、角筒部が設けられているとともに、前記シールド部材に対しその外周を包囲する形態で固着する手段として、前記角筒部の後方に配され、基板部の両側縁から一対のカシメ片を周方向へ延出させた形態のオープンバレル状の固着部が設けられており、前記シールドシェルは、２つのシェル構成部材を合体させて構成され、一方の前記シェル構成部材には、前記固着部が一体に形成され、他方の前記シェル構成部材には、前記シールド部材の外周に重ねられるように配されて、前記シールド部材と共に前記固着部に固着される突起部が一体に形成されており、前記カシメ片には、前記固着部が前記シールド部材と前記突起部に固着される前の状態では前記カシメ片の外周側又は内周側へ突出した形態とされた接触部が形成され、前記固着部が前記シールド部材と前記突起部に固着される過程では、前記接触部が、前記突起部の外周面に当接した状態で径方向内向きに変位しながら変形させられているところに特徴を有する。
【０００８】
請求項２の発明は、請求項１に記載のものにおいて、前記接触部は、一方の前記カシメ片の延出端縁から周方向へ突出した形態とされているとともに、その突出方向に沿った側縁から突出した形態の係止部を有しており、他方の前記カシメ片には、その延出端縁に開口した形態の凹部と、前記凹部の開口部において前記他方のカシメ片の延出端縁に沿って突出する形態とされた係止部とが形成されており、前記固着部が前記シールド部材に固着された状態では、前記接触部の前記係止部と前記凹部の前記係止部との係止作用によって前記一対のカシメ片が周方向への離間を規制されるようになっているところに特徴を有する。
【０００９】
請求項３の発明は、請求項２に記載のものにおいて、前記固着部を前記シールド部材の外周に固着する工程では、前記一対のカシメ片を、その延出端縁同士が周方向に接近するように変形させるとともに、前記一対のカシメ片の変形に伴って前記接触部を前記凹部内に進入させるようになっており、前記固着部が前記シールド部材に固着された状態では、前記接触部の周面と前記他方のカシメ片の延出端部の周面とが概ね面一状に連なる位置関係となることで、前記接触部の前記係止部と前記凹部の前記係止部とが係止するようになっており、前記固着部を前記シールド部材に固着する前の状態では、前記接触部は、その係止部を前記凹部の前記係止部との係止位置から板厚方向又は前記凹部の開口幅方向へ位置ずれさせるように屈曲した形態に成形されており、前記固着部を前記シールド部材に固着する工程では、前記一対のカシメ片を周方向において正規位置まで接近させた状態において、前記接触部をその屈曲部が伸びるように変形させることで、前記係止部同士がその板厚範囲内で係止する状態とされているところに特徴を有する。
【００１０】
請求項４の発明は、請求項１乃至請求項３のいずれか１項に記載のものにおいて、前記他方のシェル構成部材には、後端面が開放した形態の前記角筒部が形成されており、前記突起部は、前記角筒部の後端面の開放部に対し上下左右方向へ外れた位置に配されているところに特徴を有する。
【００１１】
請求項５の発明は、導体をシールド部材で包囲した形態のシールド導電路の端末に接続されたシールドコネクタにおいて、前記導体に接続した端子金具が収容されているハウジングを包囲するシールドシェルであって、前記ハウジングを包囲する手段として、前記ハウジングを角筒部を備えているとともに、前記シールド部材に対しその外周を包囲する形態で固着する手段として、前記角筒部の後方に配され、基板部の両側縁から一対のカシメ片を周方向へ延出させた形態のオープンバレル状の固着部を備えており、２つのシェル構成部材を合体させて構成されるシールドシェルにおいて、一方の前記シェル構成部材には、前記固着部が一体に形成され、他方の前記シェル構成部材には、前記シールド部材の外周に重ねられるように配されて、前記シールド部材と共に前記固着部に固着される突起部が一体に形成されており、前記カシメ片には、前記固着部が前記シールド部材と前記突起部に固着される前の状態では前記カシメ片の外周側又は内周側へ突出した形態とされた接触部が形成され、前記固着部が前記シールド部材と前記突起部に固着される過程では、前記接触部が、前記突起部の外周面に当接した状態で径方向内向きに変位しながら変形させられているところに特徴を有する。
【００１２】
請求項６の発明は、請求項５に記載のものにおいて、前記接触部は、一方の前記カシメ片の延出端縁から周方向へ突出した形態とされているとともに、その突出方向に沿った側縁から突出した形態の係止部を有しており、他方の前記カシメ片には、その延出端縁に開口した形態の凹部と、前記凹部の開口部において前記他方のカシメ片の延出端縁に沿って突出する形態とされた係止部とが形成されており、前記固着部が前記シールド部材に固着された状態では、前記接触部の前記係止部と前記凹部の前記係止部との係止作用によって前記一対のカシメ片が周方向への離間を規制されるようになっているところに特徴を有する。
【００１３】
請求項７の発明は、請求項６に記載のものにおいて、前記固着部を前記シールド部材の外周に固着する工程では、前記一対のカシメ片を、その延出端縁同士が周方向に接近するように変形させるとともに、前記一対のカシメ片の変形に伴って前記接触部を前記凹部内に進入させるようになっており、前記固着部が前記シールド部材に固着された状態では、前記接触部の周面と前記他方のカシメ片の延出端部の周面とが概ね面一状に連なる位置関係となることで、前記接触部の前記係止部と前記凹部の前記係止部とが係止するようになっており、前記固着部を前記シールド部材に固着する前の状態では、前記接触部は、その係止部を前記凹部の前記係止部との係止位置から板厚方向又は前記凹部の開口幅方向へ位置ずれさせるように屈曲した形態に成形されており、前記固着部を前記シールド部材に固着する工程では、前記一対のカシメ片を周方向において正規位置まで接近させた状態において、前記接触部をその屈曲部が伸びるように変形させることで、前記係止部同士がその板厚範囲内で係止する状態とされているところに特徴を有する。
【００１４】
請求項８の発明は、請求項５乃至請求項７のいずれか１項に記載のものにおいて、前記他方のシェル構成部材には、後端面が開放した形態の前記角筒部が形成されており、前記突起部は、前記角筒部の後端面の開放部に対し上下左右方向へ外れた位置に配されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【００１５】
＜請求項１及び請求項５の発明＞
固着部がシールド部材と突起部に固着される過程では、接触部は、突起部の外周面に当接した状態で径方向内向きに変位しながら変形させられる。したがって、シールド部材の外径寸法が規定寸法よりも小さい場合には、突起部が固着部側から押されて径方向内側へ変位することによりシールド部材の外周面に押圧される。これにより、突起部の内面とシールド部材の外周面との間の接触状態が安定する。また、固着部の内周面と突起部の外面との間の接触状態は良好に維持されている。したがって、シールド性能の信頼性に優れている。
【００１６】
＜請求項２及び請求項６の発明＞
接触部は、その係止部を凹部の係止部に係止させることにより、一対のカシメ片の周方向への離間を規制する機能も発揮する。したがって、一対のカシメ片の周方向への離間を規制する手段を、接触部とは別に独立して形成する場合に比べると、カシメ片の形状の簡素化を図ることができる。
【００１７】
＜請求項３及び請求項７の発明＞
固着部をシールド導電路に固着する際には、一対のカシメ片を周方向に接近させるように変形させることにより、基板部とカシメ片をシールド部材の外周に密着させるとともに、接触部を凹部内に進入させる。このとき、接触部は、その係止部を凹部の係止部との係止位置から板厚方向又は凹部の開口幅方向へ位置ずれさせるように屈曲した形態に成形されているので、接触部が凹部内に進入するときに、接触部の係止部と凹部の係止部が干渉することはない。接触部が凹部に進入した後は、接触部をその屈曲部が伸びるように変形させることにより、接触部の係止部と凹部の係止部とを係止させる。
【００１８】
＜請求項４及び請求項８の発明＞
組付けの際には、ハウジングを後方から角筒部内に挿入し、次に、両シェル構成部材を合体させ、その後で、固着部を突起部とシールド部材に固着する。突起部は、角筒部の後端面の開放部に対し上下左右方向へ外れた位置に配されているので、ハウジングを角筒部に挿入する作業の妨げになることはない。
【図面の簡単な説明】
【００１９】
【図１】実施形態１の分解斜視図
【図２】メインシェルにサブシェルを組み付けた状態をあらわす斜視図
【図３】メインシェルの斜視図
【図４】サブシェルの斜視図
【図５】固着部とシールド部材を接続する前の状態において、凸部と第１係止部を周方向に見た状態をあらわす部分拡大平面図
【図６】固着部とシールド部材を接続する前の状態において、凸部と第１係止部を側方から見た状態をあらわす部分拡大側面図
【図７】サブシェルの展開図
【図８】第１係止部と第２係止部が係止している状態をあらわす部分拡大平面図
【図９】両カシメ片を変形させる過程で、凸部と第１係止部が凹部内に進入した状態をあらわす部分拡大平面図
【図１０】シールドコネクタをシールド導電路の軸線方向に沿って縦に切断した状態をあらわす断面図
【図１１】シールドコネクタをシールド導電路の軸線方向に沿って水平に切断した状態をあらわす断面図
【図１２】シールド部材と固着部との固着部分を、ハッチングを省略してあらわした断面図
【図１３】固着部とシールド部材を接続する過程をあらわす図９のＸ−Ｘ線断面図
【図１４】固着部とシールド部材の接続が進んだ状態をあらわす断面図
【図１５】固着部とシールド部材との接続が完了した状態をあらわす図８のＹ−Ｙ線断面図
【発明を実施するための形態】
【００２０】
＜実施形態１＞
以下、本発明を具体化した実施形態１を図１乃至図１５を参照して説明する。本実施形態のシールドコネクタＡは、シールド導電路Ｂの端末部（前端部）に接続されるものである。シールド導電路Ｂは、図１０〜１２に示すように、被覆電線からなる４本の導体１０と、４本の導体１０を束ねた状態で包囲する編組線からなる筒状のシールド部材１１と、シールド部材１１の外周を包囲する筒状の絶縁性のシース１２とを備えた周知形態のものである。シールド導電路Ｂの前端部においては、シース１２の前端から前方へ突出したシールド部材１１を後方へ折り返し、このシールド部材１１の折返部１１ａをシース１２の外周に被せ、シース１２の前端から導出している各導体１０の被覆を除去した状態となっている。また、シース１２には、予め円筒状をなす金属製のスリーブ１３が外嵌されており、このスリーブ１３がシース１２の外周とシールド部材１１の折返部１１ａとの間に介装されている。
【００２１】
シールドコネクタＡは、４本の導体１０の前端部を幅方向（左右方向）において所定のピッチで並列した状態に保持するホルダ２０と、各導体１０に接続された４つの雌形の端子金具２１と、４つの端子金具２１を収容するインナハウジング２２（本発明の構成要件であるハウジング）と、インナハウジング２２を包囲するシールドシェル３０と、シールドシェル３０を包囲するアウタハウジング２３とを備えて構成されている。シールドシェル３０には、シールド導電路Ｂのシールド部材１１が電気的導通可能に接続されている。
【００２２】
次に、シールドシェル３０の構成について詳しく説明する。シールドシェル３０は、金属製のメインシェル３１（本発明の構成要件である他方のシェル構成部材）と同じく金属製のサブシェル３２（本発明の構成要件である一方のシェル構成部材）とを電気的導通可能に組み付けて構成されている。このシールドシェル３０には、インナハウジング２２を包囲する手段として、後方からインナハウジング２２を挿入することが可能な角筒部３３が設けられているとともに、シールド部材１１に対しその外周を包囲する形態で固着する手段として、角筒部３３の後方に配されたオープンバレル状の固着部３４が設けられている。
【００２３】
メインシェル３１は、前後方向に貫通する形態であって横長の形態の角筒部３３と、角筒部３３の上面壁の後端縁から後方へ突出する板状の突起部３５とを備えて構成されている。突起部３５は、上面壁の後端縁のうち左右方向中央位置から後方へ片持ち状に突出している。後方（シールド導電路Ｂの軸線方向と平行な方向であり、角筒部３３に対するインナハウジング２２の挿入方向と平行な方向）から見た突起部３５の形状は、上面側が膨らんだ形態であってシールド導電路Ｂと同心の略円弧形をなすように湾曲している。また、突起部３５は、角筒部３３の上面壁よりも上方の位置（角筒部３３の後端面の開放部３６から上方へ外れた位置）に配されている。つまり、突起部３５は、前後方向に投影した面上において、開放部３６の開口範囲内（つまり、角筒部３３内に対するインナハウジング２２の挿入経路内）には、突起部３５は存在していない。
【００２４】
角筒部３３の上面壁には、斜め下前方へ突出した形態の左右一対のランス３７が形成されている。また、角筒部３３の上面壁の前端縁には、その幅方向における中央位置に下方へ突出するストッパ３８が形成され、下面壁の前端縁にも、その幅方向における中央位置に上方へ突出するストッパ３８が形成されている。また、下面壁には、その後端側領域を全幅に亘って略方形に切欠した形態の切欠部３９が形成されている。角筒部３３の左右両側壁の下端縁には、前後方向において切欠部３９と対応する範囲内において下方へ突出した形態の位置決め用突部４０が形成されている。また、位置決め用突部４０の内面には、折り返し状の受け部４１が形成されている。
【００２５】
サブシェル３２は、図７に示す所定の形状に打ち抜いた金属板材４２に、曲げ加工を施すことによって成形されている。サブシェル３２は、方形をなす板状部４３と、板状部４３の後端縁４３Ｒから後方へ延出した形態の固着部３４とを一体に形成したものである。板状部４３の左右両側縁部には、浅く凹ませた形態の位置決め部４４が形成されている。板状部４３の前端縁には左右一対の接触片４５が斜め上方へ突出する形態で形成されている。
【００２６】
板状部４３の後端縁４３Ｒには、固着部３４が連なっている。固着部３４は、前後方向（シールド導電路Ｂの軸線方向）の基板部４６の左右両側縁から一対の板状をなすカシメ片４７，４８を周方向へ延出させた形態のオープンバレル状をなしている。この固着部３４は、その基板部４６の前端を板状部４３の後端縁４３Ｒに連ねた形態で、板状部４３の後端縁４３Ｒから後方へ突出されている。そして、金属板材４２を曲げ加工する前の展開状態では、図７に示すように、一対のカシメ片４７，４８が板状部４３の後端縁４３Ｒに沿って左右方向へ片持ち状に延出するように配置されている。また、金属板材４２を曲げ加工した後であって固着部３４をシールド部材１１に固着する前の状態では、図２及び図４に示すように、一対のカシメ片４７，４８は、基板部４６から斜め上方へ延出した向きとされている。
【００２７】
一対のカシメ片のうち第１カシメ片４７（本発明の構成要件である一方のカシメ片）には、その前後方向の延出端縁から周方向へ片持ち状に突出した形態の板状の接触部４９が形成されている。接触部４９は、延出端縁のうち前後方向における中央位置に配置されている。また、接触部４９は、その突出方向（周方向）に沿った前側と後側の両側縁から突出するように形成された一対の第１係止部５０を有している。周方向（接触部４９の突出方向）における第１係止部５０の形成領域は、接触部４９の突出端側のほぼ１／２の領域である。また、一対の第１係止部５０は、周方向の仮想軸線（図示せず）に関して前後対称である。
【００２８】
金属板材４２に曲げ加工を施す前の展開状態及びシールド部材１１に固着部３４を固着した状態では、図７及び図８に示すように、接触部４９のうち第１係止部５０の形成されている領域は、突出端側に向かって次第に幅広となるような台形をなしている。つまり、第１係止部５０には、周方向に対して傾斜した第１傾斜縁部５０ａが形成されている。また、第１係止部５０には、周方向と直角な方向であって、第１カシメ片４７の延出端縁と対向するように配された第１係止縁部５０ｂが形成されている。さらに、接触部４９の突出寸法（周方向の寸法）は、上記した突起部３５の突出方向と直角な幅寸法（周方向の寸法）よりも小さい寸法とされている。
【００２９】
金属板材４２を曲げ加工した後であって固着部３４をシールド部材１１に固着する前の状態では、図４及び図５に示すように、第１カシメ片４７のうち第１係止部５０を含む接触部４９は、周方向に見て略弧状（概ね半円弧形）に湾曲した形態に屈曲成形されている。この接触部４９の湾曲の形態は、接触部４９の第１カシメ片４７からの突出方向（つまり、周方向）と直交する幅方向における中央部分が外周側へ膨らむような形態である。このように接触部４９を屈曲させたことにより、図９に示すように、第１係止部５０を含む接触部４９は、その周方向の直交する幅寸法が、後述する凹部５１の開口部５２の開口幅よりも小さい幅狭の寸法とされている。
【００３０】
一対のカシメ片４７，４８のうち第２カシメ片４８（本発明の構成要件である他方のカシメ片）には、その前後方向の延出端縁に開口した形態の凹部５１が形成されている。凹部５１の開口部５２には、前後一対の第２係止部５３が、第２カシメ片４８の延出端縁に沿って突出するように形成されている。前側の第２係止部５３は、開口部５２の前側の端縁から後方へ突出し、後側の第２係止部５３は、開口部５２の後側の端縁から前方へ突出しており、この一対の第２係止部５３により、凹部５１は、その開口部５２の開口幅が狭められた形態となっている。周方向（凹部５１の奥行き方向）における第２係止部５３の形成領域は、凹部５１の奥行きのうち開口部５２側の約１／２の領域となっている。また、第２カシメ片４８のうち凹部５１を前後から挟む部分は一対のアーム部５４となっており、上記した第２係止部５３は、アーム部５４の先端から突出した形態となっている。
【００３１】
凹部５１の開口縁のうち第２係止部５３よりも基板部４６側（開口部５２と反対側）には、周方向に対して傾斜した前後一対の第２傾斜縁部５５ａが形成されている。この第２傾斜縁部５５ａの傾斜角度は、第１係止部５０を含む接触部４９が伸ばされて第１係止部５０と第２係止部５３が係止する状態（展開状態）において、第１傾斜縁部５０ａとほぼ同じ角度とされている。また、第２係止部５３における基板部４６側の縁部は、周方向と直角な第２係止縁部５５ｂとなっている。さらに、開口部５２の開口幅は、接触部４９のうち第１係止部５０の形成されていない領域の幅寸法とほぼ同じ寸法である。また、凹部５１の奥行き寸法（第２カシメ片４８の延出端縁から凹部５１の基板部４６側の奥端縁までの周方向の寸法）は、接触部４９の周方向の寸法とほぼ同じ寸法であり、上記した突起部３５の突出方向と直角な幅寸法（周方向の寸法）よりも小さい寸法とされている。
【００３２】
板状部４３の左右両側縁における後端部に近い位置には、板状部４３と略直角に上方へ延出する形態の方形の第１側板５６が一体に形成されている。この第１側板５６の前端縁からは、方形の第２側板５７が、第１側板５６の内面に沿って後方へ折り返し状に延出する形態で一体に形成されている。第２側板５７の上端縁（板状部４３とは反対側の端縁）は第１側板５６の上端縁と同じ高さである。また、第２側板５７の下端縁は第１側板５６の下端縁（板状部４３）よりも高い位置とされている。さらに、第２側板５７の後端縁は、第１側板５６の後端縁よりも後方に位置している。
【００３３】
第２側板５７の後端縁からは、方形をなす後壁５８が、第２側板５７と略直角をなして板状部４３の後端縁４３Ｒに沿うように延出する形態で一体に形成されている。後壁５８は、前後方向において板状部４３の後端縁４３Ｒとほぼ同じ位置に配置されている。後壁５８の上端縁（板状部４３とは反対側の端縁）は第１側板５６及び第２側板５７の上端縁と同じ高さとされている。後壁５８の下端縁（板状部４３側の端縁）は第２側板５７の下端縁と同じ高さとされている。
【００３４】
金属板材４２を曲げ加工する前の展開状態では、図７に示すように、第１側板５６が板状部４３の側方近傍に位置し、第２側板５７が第１側板５６の前方に位置し、後壁５８が第２側板５７の前方に位置する。つまり、第１側板５６、第２側板５７及び後壁５８は、板状部４３の後端縁４３Ｒよりも前方（前後方向において固着部３４とは反対方向）の領域において、板状部４３の側縁に沿って前後方向に連なる形態で配置されている。したがって、サブシェル３２に後壁５８を形成するに際して、後壁５８も、後壁５８を支持する第１側板５６と第２側板５７も、固着部３４のカシメ片４７，４８と干渉することはない。これにより、カシメ片４７，４８は、板状部４３の後端縁４３Ｒの近傍に配置されており、板状部４３の後端縁４３Ｒとカシメ片４７，４８（固着部３４）との間に大きなデッドスペースが空くことはない。このような後壁５８の形成形態によれば、シールドシェル３０の前後長を短くすることができ、ひいては、シールドコネクタＡの小型化を図ることができる。
【００３５】
次に、シールドコネクタＡの組付工程を説明する。シールド導電路Ｂの各導体１０に端子金具２１の後端部を接続し、次に、導体１０の前端部をホルダ２０の溝部に嵌合して、導体１０及び端子金具２１を左右方向において位置決めする。その後、４つの端子金具２１を一斉にインナハウジング２２内に挿入し、次いで、インナハウジング２２をメインシェル３１の角筒部３３に後方から挿入する。このとき、メインシェル３１にはサブシェル３２は組み付けられておらず、メインシェル３１の後端の開放部３６内に進出するものは存在しないので、インナハウジング２２の挿入は支障なく行われる。
【００３６】
また、角筒部３３に挿入されたインナハウジング２２は、その上面の係止孔２２ａに角筒部３３のランス３７を係止させることにより抜止めされているとともに、角筒部３３の前端縁のストッパ３８に突き当たることにより前止まりされている。インナハウジング２２を角筒部３３に収容した状態では、インナハウジング２２から後方へ導出された４本の導体１０が角筒部３３の後端部によって包囲されるとともに、角筒部３３の後方近傍位置に、シールド部材１１の折返部１１ａとスリーブ１３が配置される。そして、突起部３５が、シールド部材１１の折返部１１ａの外面に接触又は接近して対応する。
【００３７】
この後、メインシェル３１に対し、サブシェル３２を下方から接近させるようにして組み付ける。両シェル３１，３２を組み付けた状態では、サブシェル３２の板状部４３が、メインシェル３１の切欠部３９の開口領域を塞いで、インナハウジング２２の外面（下面）に沿った形態となる。また、メインシェル３１の位置決め用突部４０がサブシェル３２の位置決め部４４に嵌合することにより、両シェル３１，３２が前後方向への相対移動を規制される。さらに、受け部４１が板状部４３の側縁部に対して下から係止することにより、両シェル３１，３２の上下方向への離間が規制されている。また、サブシェル３２の接触片４５がメインシェル３１の外面に対して弾性的に当接し、両シェル３１，３２間が電気的導通可能に接続された状態となる。
【００３８】
両シェル３１，３２を組み付けた状態では、角筒部３３の後端の開放部３６のうち左右方向中央部領域は固着部３４とシールド導電路Ｂによって塞がれた状態となり、開放部３６のうち固着部３４及びシールド導電路Ｂと非対応の左右両端部領域は、サブシェル３２に形成した後壁５８によって塞がれた状態となる。これにより、角筒部３３の後端においてる高いシールド性能が発揮される。
【００３９】
また、固着部３４の基板部４６が、シールド導電路Ｂのうちシールド部材１１の折返部１１ａが露出している部分を突起部３５との間で上下に挟むように位置するとともに、両カシメ片４７，４８が、シールド導電路Ｂのうちシールド部材１１の折返部１１ａが露出している部分を左右方向に挟むように位置する。
【００４０】
この後、アンビルとクリンパを備えた自動圧着機（図示せず）を用いて、固着部３４とシールド部材１１との接続を行う。接続に際しては、固着部３４の基板部４６をアンビルに載置させるようにして、シールドシェル３０とシールド導電路Ｂをセットする。すると、クリンパが下降して第１カシメ片４７の接触部４９の先端（上端）と第２カシメ片４８の延出端縁に当接する。そして、クリンパの下降動作が進むのに伴い、両カシメ片４７，４８が、内側へ倒れ込むように変形することにより固着部３４が縮径して、シールド部材１１の折返部１１ａを包んでいく。
【００４１】
尚、この過程では、両カシメ片４７，４８の内周面が、突起部３５の左右両側縁に当接するのであるが、このときに、第１カシメ片４７の前後方向の延出端縁のうち接触部４９よりも前方と後方の領域や、第２カシメ片４８の前後方向の延出端縁のうち開口部５２よりも前方と後方の領域が、突起部３５の側縁に突き当たり、その結果、それ以上のカシメ片４７，４８の正常な変形が阻害されてしまうことが懸念される。しかし、本実施形態では、第１カシメ片４７において突起部３５と最初に当接する位置は、第１カシメ片４７の延出端縁よりも基板部４６側の領域内に設定されており、また、第２カシメ片４８において突起部３５と最初に当接する位置も、第２カシメ片４８の延出端縁よりも基板部４６側の領域内に設定されている。したがって、カシメ片４７，４８の延出端縁が突起部３５の側縁に突き当たる虞はない。
【００４２】
上記のように突起部３５に対して両カシメ片４７，４８が当接した後は、両カシメ片４７，４８は、その延出端縁同士を周方向に接近させるように更に変形を続け、変形の終期には、接触部４９が凹部５１内に進入する。ここで、第１カシメ片４７の第１係止部５０を含む接触部４９は屈曲した形態に成形されていて、この屈曲形態により、第１係止部５０が、第２係止部５３との係止位置から板厚方向（径方向）における内側へ変位するとともに、凹部５１の開口幅方向へ位置ずれしている。具体的には、図５に示すように、接触部４９は、周方向に見て略弧状に湾曲するように屈曲されることにより、凹部５１の開口部５２を通過可能な幅狭の形態とされている。したがって、両カシメ４７，４８片が周方向に接近する過程では、図９に示すように、接触部４９は、第２係止部５３と干渉することなく、凹部５１内に進入することができる。
【００４３】
接触部４９が凹部５１内に進入し、第１係止縁部５０ｂが周方向において第２係止縁部５５ｂと並ぶ位置又はそれよりも僅かに凹部５１の奥側の位置まで到達すると、クリンパの下降が停止して、両カシメ片４７，４８の周方向への変形（即ち、固着部３４の縮径変形）が終了する。これにより、シールド部材１１の折返部１１ａは、基板部４６及び両カシメ片４７，４８によってスリーブ１３の外周に強く押圧され、シールド部材１１とサブシェル３２（シールドシェル３０）とが、電気的導通可能に接続され、且つ摩擦により離脱を規制された状態に固着される。
【００４４】
このとき、メインシェル３１の突起部３５は、シールド部材１１の折返部１１ａと一緒に両カシメ片４７，４８のうち接触部４９を除いた部分とスリーブ１３との間で強固に挟み付けられる。換言すると、突起部３５は、固着部３４に対しシールド部材１１と共に固着される。これにより、突起部３５と両カシメ片４７，４８とが相対変位を規制された状態に固定され、メインシェル３１とサブシェル３２はガタ付きなく組付け状態に保持される。また、突起部３５と両カシメ片４７，４８とは直接当接した状態に固定されるので、メインシェル３１とサブシェル３２とが確実に電気的導通可能に接続された状態に保持される。
【００４５】
両カシメ片４７，４８を変形させてシールド部材１１に固着した後は、クリンパ内に組み込んだ加圧部材（図示せず）で接触部４９の外周面を打圧又は押圧する。このとき、第１係止部５０を含む接触部４９は、接触部４９の突出方向と直交する幅方向（前後方向）における中央部分が外周側へ膨らむような形態で屈曲しているので、接触部４９の外周面における打圧位置又は押圧位置は、幅方向中央部の１カ所だけであり、この幅方向中央部の周方向に沿った領域を打圧又は押圧することになる。また、図８及び図９に示すように、第１係止部５０を含む接触部４９の全体、凹部５１の開口領域全体、及び前後両両アーム部５４は、それよりも内周側の突起部３５の形成範囲内に含まれるように位置し、前側の第１係止部５０の前端と後側の第１係止部５０の後端が突起部３５の外周面に当接している。したがって、接触部４９を打圧又は押圧すると、湾曲している接触部４９は、加圧部材と突起部３５との間で径方向に挟み付けられることによって湾曲が伸びるように（曲率が小さくなるように）変形させられる。
【００４６】
湾曲している接触部４９が伸びるように変形する過程では、接触部４９は、前後両第１係止部５０において突起部３５の外周面上を摺接する状態を終始保ちながら、全体として径方向内側（突起部３５に接近する方向）へ変位する。同じく接触部４９が変形する過程では、接触部４９において変形に伴って生じる応力により、前後両第１係止部５０が突起部３５を内周側へ弾性的に押圧する状態を保つ。したがって、スリーブ１３と突起部３５との間で挟まれている折返部１１ａの径方向の厚さ寸法にバラツキがあっても、折返部１１ａが突起部３５とスリーブ１３との間で確実に挟み付けられ、突起部３５と折返部１１ａとが確実に導通可能に接続されるとともに、突起部３５と固着部３４（接触部４９）とが確実に導通可能に接続される。したがって、シールド部材１１とメインシェル３１（突起部３５の形成母体）とサブシェル３２（固着部３４の形成母体）とは、互いに電気的導通可能に接続された状態となり、ひいては、高いシールド性能が発揮される。
【００４７】
伸ばされるように変形した接触部４９は、その周面をアーム部５４及び第２カシメ片４８の周面に対して概ね面一状に連なる形態（周方向にほぼ滑らかに連なる形態）となり、突起部３５の外周面に沿った形状（突起部３５の外周面に対して概ね面当たり状に当接する形状）となる。尚、両アーム部５４と第２係止部５３も、突起部３５の外周面に対して面当たり状に当接している。
【００４８】
接触部４９が伸ばされると、前側（図８における左側）の第１係止部５０の第１係止縁部５０ｂが、前側の第２係止部５３の第２係止縁部５５ｂに対し、両係止部５０，５３の板厚の範囲内で周方向に突き当たるように係止するとともに、後側の第１係止部５０の第１係止縁部５０ｂが、後側の第２係止部５３の第２係止縁部５５ｂに対し、両係止部５０，５３の板厚の範囲内で周方向に突き当たるように係止する。この前後２カ所の係止作用により、両カシメ片４７，４８が周方向（図８における上下方向）へ離間することが規制され、ひいては、固着部３４の拡開変形が防止される。
【００４９】
また、接触部４９が伸ばされると、前側の第１係止部５０の第１傾斜縁部５０ａが、凹部５１の前側の傾斜縁部５５ａに対し、両係止部５０，５３の板厚の範囲内で周方向に突き当たるように係止するとともに、後側の第１係止部５０の第１傾斜縁部５０ａが、凹部の後側の傾斜縁部５５ａに対し、両係止部５０，５３の板厚の範囲内で周方向に突き当たるように係止する。この前後２カ所の係止作用によっても、両カシメ片４７，４８の周方向への離間が規制され、固着部３４の拡開変形が防止される。
【００５０】
上述のように、本実施形態においては、固着部３４がシールド部材１１と突起部３５に固着される過程では、接触部４９は、突起部３５の外周面に当接した状態で径方向内向きに変位しながら変形させられる。したがって、シールド部材１１の折返部１１ａが薄くてその外径寸法が規定寸法よりも小さい場合には、突起部３５が固着部３４側から押されて径方向内側へ変位することにより折返部１１ａの外周面に押圧される。これにより、突起部３５の内面と折返部１１ａの外周面との間の接触状態が安定する。また、固着部３４の内周面と突起部３５の外面との間の接触状態は良好に維持されている。したがって、シールド性能の信頼性に優れている。
【００５１】
また、接触部４９は、その第１係止部５０を凹部５１の第２係止部５３に係止させることにより、一対のカシメ片４７，４８の周方向への離間を規制する機能も発揮する。したがって、一対のカシメ片４７，４８の周方向への離間を規制する手段を、接触部４９とは別に独立して形成する場合に比べると、カシメ片４７，４８の形状の簡素化を図ることが実現されている。
【００５２】
また、固着部３４をシールド導電路Ｂに固着する際には、一対のカシメ片４７，４８を周方向に接近させるように変形させることにより、基板部４６とカシメ片４７，４８をシールド部材１１の外周に密着させるとともに、接触部４９を凹部５１内に進入させる。このとき、接触部４９は、その第１係止部５０を凹部５１の第２係止部５３との係止位置から凹部５１の開口幅方向へ位置ずれさせるように屈曲した形態に成形されているので、接触部４９が凹部５１内に進入するときに、接触部４９の第１係止部５０と凹部５１の第２係止部５３が干渉することはない。接触部４９が凹部５１に進入した後は、接触部４９をその屈曲部が伸びるように変形させれば、接触部４９の第１係止部５０と凹部５１の第２係止部５３とが係止状態となる。
【００５３】
また、組付けの際には、インナハウジング２２を後方から角筒部３３内に挿入し、次に、メインシェル３１とサブシェル３２を合体させ、その後で、固着部３４を突起部３５とシールド部材１１に固着するのであるが、突起部３５は、角筒部３３の後端面の開放部３６に対し上下左右方向へ外れた位置に配されているので、インナハウジング２２を角筒部３３に挿入する作業の妨げになることはない。
【００５４】
また、第１傾斜縁部５０ａと第２傾斜縁部５５ａは、いずれも周方向に対して傾斜しているので、接触部４９が伸ばされるのに伴って前後両第１傾斜縁部５０ａの間隔が次第に拡大する過程の終期では、第１傾斜縁部５０ａと第２傾斜縁部５５ａとの当接に起因して楔作用が生じる。この楔作用により、接触部４９が凹部５１に対して開口部側へ戻る方向へ変位すること（即ち、両カシメ片４７，４８が周方向の離間して固着部３４の径が拡大すること）が防止される。また、第１傾斜縁部５０ａと第２傾斜縁部５５ａは、いずれも、軸線方向と直角な向きに近い角度なので、両傾斜縁部５０ａ，５５ａの当接作用により、一対のカシメ片４７，４８の軸線方向へのガタ付きも確実に防止されている。
【００５５】
尚、接触部４９が伸ばされる過程の終期においては、楔作用によって両カシメ片４７，４８が接近する方向へ僅かに相対変位する場合があるため、接触部４９の延出端縁と凹部５１の奥端縁との間、及び第１カシメ片４７の延出端縁と第２カシメ片４８の延出端縁との間には、僅かなクリアランスを空けておくことが好ましい。
【００５６】
また、図８及び図９に示すように、周方向と軸線方向の両方向において、第１係止部５０を含む接触部４９の全体、凹部５１の開口領域の全体、第２係止部５５３を含む両アーム部５４の全体は、いずれも突起部３５の形成範囲内に配置されている。この配置は、固着部３４をシールド部材１１と突起部３５に固着する過程、及び接触部４９を伸ばすように変形させる過程において、シールド部材１１を構成する編組線が第１カシメ片４７と第２カシメ片４８との間に噛み込む虞のある部分（即ち、第１カシメ片４７の延出端縁と第２カシメ片４８の延出端縁との接近部分、接触部４９の延出端縁と凹部５１の奥端縁との接近部分、開口部５２において接触部４９が進入する部分、凹部５１内において第１係止部５０（第１係止縁部５０ｂ）と第２係止部５３（第２係止縁部５５ｂ）とが接近して係止する部分、及び、第１傾斜縁部５０ａと第２傾斜縁部５５ａとが接近して係止する部分）は、いずれも、突起部３５の形成範囲内にあり、突起部３５によってシールド部材１１（編組線）から隔絶された状態となっている。したがって、固着部３４とシールド部材１１とを固着する際に、第１カシメ片４７と第２カシメ片４８との間にシールド部材（編組線）が噛み込む虞はない。
【００５７】
また、接触部４９を屈曲形態に成形するに際しては、接触部４９が第１カシメ片４７の延出端縁から周方向に突出する形態であることに鑑みて、第１カシメ片４７を、周方向に見て屈曲した形態としている。このような屈曲形態により、接触部４９は、その突出寸法が大きくても剛性が高くなるので、他部材の干渉などに起因して不正な変形を来す、という虞はない。
【００５８】
また、接触部が周方向の折り目に沿って角張ったように屈曲されている場合には、その屈曲部分を伸ばすように接触部を変形させたときに、折り目の部分が稜線状に残り、この稜線状部分やその近傍において接触部の内周面における突起部との接触不良を来すことが懸念される。これに対し、本実施形態では、接触部４９を湾曲した形態に成形したので、屈曲部を伸ばすように変形させたときに、稜線状の折り目が残る虞がない。したがって、接触部４９の内周面における突起部３５との接触信頼性に優れている。
【００５９】
＜他の実施形態＞
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
（１）上記実施形態では、角筒部を有するメインシェルと、板状部に固着部を形成したサブシェルとを合体させてシールドシェルを構成したが、シールドシェルは、ハウジングを上下又は左右に挟むように合体する一対の半割状のシェル構成部材によって構成されたものであってもよい。
（２）上記実施形態では、接触部が一対のカシメ片が周方向へ離間するのを規制する機能を兼ね備えるようにしたが、一対のカシメ片の周方向への離間を規制する手段を、接触部とは別に独立して形成してもよい。
（３）上記実施形態では、接触部をカシメ片の延出端縁から周方向に突出する形態としたが、接触部は、カシメ片の延出端縁よりも基板部側の部分を切り起こした形態であってもよい。
（４）上記実施形態では、接触部をカシメ片の外周側へ突出した形態としたが、接しよく部は、カシメ片の内周側へ突出した形態であってもよく、また、内周側と外周側の両方へ突出した形態であってもよい。
（５）上記実施形態では、接触部を湾曲させるように屈曲させたが、接触部の屈曲の仕方としては、直線状に折り目に沿って角張った形態（例えば、三角形や台形など）としてもよい。
（６）上記実施形態では、接触部を、幅方向（接触部の突出方向と直交する方向）における中央部分が外周側へ膨らむような形態で屈曲させたが、接触部の屈曲形態としては、接触部の幅方向中央部分が内周側へ膨らむような形態で屈曲させてもよく、周方向に見て波形をなすような形態で屈曲させてもよい。
（７）上記実施形態では、接触部を周方向に見て湾曲した形態に屈曲さたが、これに限らず、接触部を、軸線方向（接触部の延出方向と交差する方向）に見て屈曲するように内周側又は外周側へ突出するように曲げて、第１係止部を板厚方向へ位置ずれさせてもよい。
（８）上記実施形態では第１係止部を接触部の前側の縁部と後側の縁部の両方に形成したが、第１係止部は、接触部の前後いずれか一方の縁部のみに形成されていてもよい。
（９）上記実施形態では固着部に１つの接触部を形成したが、１つの固着部に複数の接触部を形成してもよい。
（１０）上記実施形態では、突起部を片持ち状に突出する形態としたが、突起部は、両端支持された形態であってもよい。
（１１）上記実施形態では、一対のカシメ片のうち第１カシメ片（接触部側のカシメ片）のみを屈曲させたが、これに替えて、第２カシメ片（凹部側のカシメ片）のみを屈曲させてもよく、第１カシメ片と第２カシメ片の両方を屈曲させてもよい。
（１１−１）第２カシメ片の屈曲形態としては、凹部の開口部の開口幅を拡げる形態がある。一例としては、一対の第２係止部を、その基端部において周方向の折り目に沿って板厚方向（外周側又は内周側）へ屈曲（位置ずれ）させる形態がある。この場合、一対の第２係止部の変位方向は、互いに同じ方向でもよく、互いに違いに逆方向でもよい。
（１１−２）第２カシメ片の屈曲形態としては、凹部の開口部の開口幅はそのままで、第２カシメ片の延出端部を、軸線方向に見て屈曲させることにより、第２係止部を板厚方向（外周側又は内周側）へ屈曲（位置ずれ）させてもよい。この場合、アーム部の一部のみが板厚方向へ変位するようにしてもよく、アーム部の全体が板厚方向へ変位するようにしてもよく、アーム部の全体と第２カシメ片の延出端部が板厚方向へ変位するようにしてもよい。また、アーム部のみが変位する場合において、板厚方向における一対のアーム部の変位の向きは、互いに同じ方向（外周側又は内周側）でもよく、互いに逆方向でもよい。
（１２）上記実施形態では第２係止部を凹部の開口部における前側の端縁と後側の端縁の両方に形成したが、第２係止部は、凹部の開口部における前後いずれか一方の端縁のみに形成されていてもよい。
（１３）上記実施形態では、第１係止部を含む接触部の全体、凹部の開口領域の全体、第２係止部を含む前後両アーム部の全体が、突起部の形成範囲内に配置されるようにしたが、第１係止部を含む接触部、凹部の開口領域、第２係止部を含む前後両アーム部のうち、少なくとも一部が突起部の形成範囲の外部に配置されていてもよい。
（１４）上記実施形態ではシールド導電路の導体を４本としたが、本発明は、１本のシールド導電路における導体の本数が３本以下又は５本以上である場合にも適用できる。
（１５）上記実施形態では、シールドコネクタが雌形の端子金具を有する雌形のコネクタである場合について説明したが、本発明は、雄形の端子金具を有する雄形のシールドコネクタにも適用できる。
（１６）上記実施形態では、シールド部材が編組線である場合について説明したが、本発明は、シールド部材が金属箔である場合にも適用できる。
【符号の説明】
【００６０】
Ａ…シールドコネクタ
Ｂ…シールド導電路
１０…導体
１１…シールド部材
２１…端子金具
２２…インナハウジング（ハウジング）
３０…シールドシェル
３１…メインシェル（他方のシェル構成部材）
３２…サブシェル（一方のシェル構成部材）
３３…角筒部
３４…固着部
３５…突起部
３６…角筒部の後端の開放部
４６…基板部
４７…第１カシメ片（一方のカシメ片）
４８…第２カシメ片（他方のカシメ片）
４９…接触部
５０…第１係止部
５１…凹部
５２…開口部
５３…第２係止部
【技術分野】
【０００１】
本発明は、シールドコネクタ及びシールドシェルに関するものである。
【背景技術】
【０００２】
特許文献１には、導体をシールド部材で包囲した形態のシールド導電路の端末に接続されるシールドコネクタが開示されている。このシールドコネクタは、導体に接続された端子金具を収容するハウジングと、ハウジングを包囲するシールドシェルとを備え、シールドシェルには、ハウジングを包囲する手段としての角筒部と、シールド部材に対しその外周を包囲する形態で固着する手段としてのオープンバレル状の固着部とが設けられている。
【０００３】
シールドシェルは、２つのシェル構成部材を合体させて構成され、一方のシェル構成部材には固着部が一体に形成されている。また、他方のシェル構成部材には、片持ち状に突出した形態であって、シールド部材の外周に重なるように配される突起部が形成されている。固着部は、アプリケータと称される自動圧着機により、縮径変形しながらシールド部材と突起部に対し両者を一緒に包囲するようにカシメ付けられる。このように、固着部と突起部とを介して２つのシェル構成部材を導通可能に接続することにより、シールド機能の接触信頼性向上を図るようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特開２００６−１２１２号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
自動圧着機においては、固着済み状態における固着部の径寸法（即ち、高さ寸法や幅寸法）が高い精度で管理されているのであるが、シールド部材の外径寸法については、公差の範囲内でバラツキが生じることは避けられない。そのため、シールド部材の外径寸法が規定の寸法よりも小さい場合には、固着部の内周面と突起部の外面との間や、突起部の内面とシールド部材の外周面との間における接触状態が不安定になり、シールド機能の信頼性低下が懸念される。
【０００６】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、シールド機能の信頼性向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
上記の目的を達成するための手段として、請求項１の発明は、導体をシールド部材で包囲した形態のシールド導電路の端末に接続されるシールドコネクタであって、前記導体に接続された端子金具を収容するハウジングと、前記ハウジングを包囲するシールドシェルとを備え、前記シールドシェルには、前記ハウジングを包囲する手段として、角筒部が設けられているとともに、前記シールド部材に対しその外周を包囲する形態で固着する手段として、前記角筒部の後方に配され、基板部の両側縁から一対のカシメ片を周方向へ延出させた形態のオープンバレル状の固着部が設けられており、前記シールドシェルは、２つのシェル構成部材を合体させて構成され、一方の前記シェル構成部材には、前記固着部が一体に形成され、他方の前記シェル構成部材には、前記シールド部材の外周に重ねられるように配されて、前記シールド部材と共に前記固着部に固着される突起部が一体に形成されており、前記カシメ片には、前記固着部が前記シールド部材と前記突起部に固着される前の状態では前記カシメ片の外周側又は内周側へ突出した形態とされた接触部が形成され、前記固着部が前記シールド部材と前記突起部に固着される過程では、前記接触部が、前記突起部の外周面に当接した状態で径方向内向きに変位しながら変形させられているところに特徴を有する。
【０００８】
請求項２の発明は、請求項１に記載のものにおいて、前記接触部は、一方の前記カシメ片の延出端縁から周方向へ突出した形態とされているとともに、その突出方向に沿った側縁から突出した形態の係止部を有しており、他方の前記カシメ片には、その延出端縁に開口した形態の凹部と、前記凹部の開口部において前記他方のカシメ片の延出端縁に沿って突出する形態とされた係止部とが形成されており、前記固着部が前記シールド部材に固着された状態では、前記接触部の前記係止部と前記凹部の前記係止部との係止作用によって前記一対のカシメ片が周方向への離間を規制されるようになっているところに特徴を有する。
【０００９】
請求項３の発明は、請求項２に記載のものにおいて、前記固着部を前記シールド部材の外周に固着する工程では、前記一対のカシメ片を、その延出端縁同士が周方向に接近するように変形させるとともに、前記一対のカシメ片の変形に伴って前記接触部を前記凹部内に進入させるようになっており、前記固着部が前記シールド部材に固着された状態では、前記接触部の周面と前記他方のカシメ片の延出端部の周面とが概ね面一状に連なる位置関係となることで、前記接触部の前記係止部と前記凹部の前記係止部とが係止するようになっており、前記固着部を前記シールド部材に固着する前の状態では、前記接触部は、その係止部を前記凹部の前記係止部との係止位置から板厚方向又は前記凹部の開口幅方向へ位置ずれさせるように屈曲した形態に成形されており、前記固着部を前記シールド部材に固着する工程では、前記一対のカシメ片を周方向において正規位置まで接近させた状態において、前記接触部をその屈曲部が伸びるように変形させることで、前記係止部同士がその板厚範囲内で係止する状態とされているところに特徴を有する。
【００１０】
請求項４の発明は、請求項１乃至請求項３のいずれか１項に記載のものにおいて、前記他方のシェル構成部材には、後端面が開放した形態の前記角筒部が形成されており、前記突起部は、前記角筒部の後端面の開放部に対し上下左右方向へ外れた位置に配されているところに特徴を有する。
【００１１】
請求項５の発明は、導体をシールド部材で包囲した形態のシールド導電路の端末に接続されたシールドコネクタにおいて、前記導体に接続した端子金具が収容されているハウジングを包囲するシールドシェルであって、前記ハウジングを包囲する手段として、前記ハウジングを角筒部を備えているとともに、前記シールド部材に対しその外周を包囲する形態で固着する手段として、前記角筒部の後方に配され、基板部の両側縁から一対のカシメ片を周方向へ延出させた形態のオープンバレル状の固着部を備えており、２つのシェル構成部材を合体させて構成されるシールドシェルにおいて、一方の前記シェル構成部材には、前記固着部が一体に形成され、他方の前記シェル構成部材には、前記シールド部材の外周に重ねられるように配されて、前記シールド部材と共に前記固着部に固着される突起部が一体に形成されており、前記カシメ片には、前記固着部が前記シールド部材と前記突起部に固着される前の状態では前記カシメ片の外周側又は内周側へ突出した形態とされた接触部が形成され、前記固着部が前記シールド部材と前記突起部に固着される過程では、前記接触部が、前記突起部の外周面に当接した状態で径方向内向きに変位しながら変形させられているところに特徴を有する。
【００１２】
請求項６の発明は、請求項５に記載のものにおいて、前記接触部は、一方の前記カシメ片の延出端縁から周方向へ突出した形態とされているとともに、その突出方向に沿った側縁から突出した形態の係止部を有しており、他方の前記カシメ片には、その延出端縁に開口した形態の凹部と、前記凹部の開口部において前記他方のカシメ片の延出端縁に沿って突出する形態とされた係止部とが形成されており、前記固着部が前記シールド部材に固着された状態では、前記接触部の前記係止部と前記凹部の前記係止部との係止作用によって前記一対のカシメ片が周方向への離間を規制されるようになっているところに特徴を有する。
【００１３】
請求項７の発明は、請求項６に記載のものにおいて、前記固着部を前記シールド部材の外周に固着する工程では、前記一対のカシメ片を、その延出端縁同士が周方向に接近するように変形させるとともに、前記一対のカシメ片の変形に伴って前記接触部を前記凹部内に進入させるようになっており、前記固着部が前記シールド部材に固着された状態では、前記接触部の周面と前記他方のカシメ片の延出端部の周面とが概ね面一状に連なる位置関係となることで、前記接触部の前記係止部と前記凹部の前記係止部とが係止するようになっており、前記固着部を前記シールド部材に固着する前の状態では、前記接触部は、その係止部を前記凹部の前記係止部との係止位置から板厚方向又は前記凹部の開口幅方向へ位置ずれさせるように屈曲した形態に成形されており、前記固着部を前記シールド部材に固着する工程では、前記一対のカシメ片を周方向において正規位置まで接近させた状態において、前記接触部をその屈曲部が伸びるように変形させることで、前記係止部同士がその板厚範囲内で係止する状態とされているところに特徴を有する。
【００１４】
請求項８の発明は、請求項５乃至請求項７のいずれか１項に記載のものにおいて、前記他方のシェル構成部材には、後端面が開放した形態の前記角筒部が形成されており、前記突起部は、前記角筒部の後端面の開放部に対し上下左右方向へ外れた位置に配されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【００１５】
＜請求項１及び請求項５の発明＞
固着部がシールド部材と突起部に固着される過程では、接触部は、突起部の外周面に当接した状態で径方向内向きに変位しながら変形させられる。したがって、シールド部材の外径寸法が規定寸法よりも小さい場合には、突起部が固着部側から押されて径方向内側へ変位することによりシールド部材の外周面に押圧される。これにより、突起部の内面とシールド部材の外周面との間の接触状態が安定する。また、固着部の内周面と突起部の外面との間の接触状態は良好に維持されている。したがって、シールド性能の信頼性に優れている。
【００１６】
＜請求項２及び請求項６の発明＞
接触部は、その係止部を凹部の係止部に係止させることにより、一対のカシメ片の周方向への離間を規制する機能も発揮する。したがって、一対のカシメ片の周方向への離間を規制する手段を、接触部とは別に独立して形成する場合に比べると、カシメ片の形状の簡素化を図ることができる。
【００１７】
＜請求項３及び請求項７の発明＞
固着部をシールド導電路に固着する際には、一対のカシメ片を周方向に接近させるように変形させることにより、基板部とカシメ片をシールド部材の外周に密着させるとともに、接触部を凹部内に進入させる。このとき、接触部は、その係止部を凹部の係止部との係止位置から板厚方向又は凹部の開口幅方向へ位置ずれさせるように屈曲した形態に成形されているので、接触部が凹部内に進入するときに、接触部の係止部と凹部の係止部が干渉することはない。接触部が凹部に進入した後は、接触部をその屈曲部が伸びるように変形させることにより、接触部の係止部と凹部の係止部とを係止させる。
【００１８】
＜請求項４及び請求項８の発明＞
組付けの際には、ハウジングを後方から角筒部内に挿入し、次に、両シェル構成部材を合体させ、その後で、固着部を突起部とシールド部材に固着する。突起部は、角筒部の後端面の開放部に対し上下左右方向へ外れた位置に配されているので、ハウジングを角筒部に挿入する作業の妨げになることはない。
【図面の簡単な説明】
【００１９】
【図１】実施形態１の分解斜視図
【図２】メインシェルにサブシェルを組み付けた状態をあらわす斜視図
【図３】メインシェルの斜視図
【図４】サブシェルの斜視図
【図５】固着部とシールド部材を接続する前の状態において、凸部と第１係止部を周方向に見た状態をあらわす部分拡大平面図
【図６】固着部とシールド部材を接続する前の状態において、凸部と第１係止部を側方から見た状態をあらわす部分拡大側面図
【図７】サブシェルの展開図
【図８】第１係止部と第２係止部が係止している状態をあらわす部分拡大平面図
【図９】両カシメ片を変形させる過程で、凸部と第１係止部が凹部内に進入した状態をあらわす部分拡大平面図
【図１０】シールドコネクタをシールド導電路の軸線方向に沿って縦に切断した状態をあらわす断面図
【図１１】シールドコネクタをシールド導電路の軸線方向に沿って水平に切断した状態をあらわす断面図
【図１２】シールド部材と固着部との固着部分を、ハッチングを省略してあらわした断面図
【図１３】固着部とシールド部材を接続する過程をあらわす図９のＸ−Ｘ線断面図
【図１４】固着部とシールド部材の接続が進んだ状態をあらわす断面図
【図１５】固着部とシールド部材との接続が完了した状態をあらわす図８のＹ−Ｙ線断面図
【発明を実施するための形態】
【００２０】
＜実施形態１＞
以下、本発明を具体化した実施形態１を図１乃至図１５を参照して説明する。本実施形態のシールドコネクタＡは、シールド導電路Ｂの端末部（前端部）に接続されるものである。シールド導電路Ｂは、図１０〜１２に示すように、被覆電線からなる４本の導体１０と、４本の導体１０を束ねた状態で包囲する編組線からなる筒状のシールド部材１１と、シールド部材１１の外周を包囲する筒状の絶縁性のシース１２とを備えた周知形態のものである。シールド導電路Ｂの前端部においては、シース１２の前端から前方へ突出したシールド部材１１を後方へ折り返し、このシールド部材１１の折返部１１ａをシース１２の外周に被せ、シース１２の前端から導出している各導体１０の被覆を除去した状態となっている。また、シース１２には、予め円筒状をなす金属製のスリーブ１３が外嵌されており、このスリーブ１３がシース１２の外周とシールド部材１１の折返部１１ａとの間に介装されている。
【００２１】
シールドコネクタＡは、４本の導体１０の前端部を幅方向（左右方向）において所定のピッチで並列した状態に保持するホルダ２０と、各導体１０に接続された４つの雌形の端子金具２１と、４つの端子金具２１を収容するインナハウジング２２（本発明の構成要件であるハウジング）と、インナハウジング２２を包囲するシールドシェル３０と、シールドシェル３０を包囲するアウタハウジング２３とを備えて構成されている。シールドシェル３０には、シールド導電路Ｂのシールド部材１１が電気的導通可能に接続されている。
【００２２】
次に、シールドシェル３０の構成について詳しく説明する。シールドシェル３０は、金属製のメインシェル３１（本発明の構成要件である他方のシェル構成部材）と同じく金属製のサブシェル３２（本発明の構成要件である一方のシェル構成部材）とを電気的導通可能に組み付けて構成されている。このシールドシェル３０には、インナハウジング２２を包囲する手段として、後方からインナハウジング２２を挿入することが可能な角筒部３３が設けられているとともに、シールド部材１１に対しその外周を包囲する形態で固着する手段として、角筒部３３の後方に配されたオープンバレル状の固着部３４が設けられている。
【００２３】
メインシェル３１は、前後方向に貫通する形態であって横長の形態の角筒部３３と、角筒部３３の上面壁の後端縁から後方へ突出する板状の突起部３５とを備えて構成されている。突起部３５は、上面壁の後端縁のうち左右方向中央位置から後方へ片持ち状に突出している。後方（シールド導電路Ｂの軸線方向と平行な方向であり、角筒部３３に対するインナハウジング２２の挿入方向と平行な方向）から見た突起部３５の形状は、上面側が膨らんだ形態であってシールド導電路Ｂと同心の略円弧形をなすように湾曲している。また、突起部３５は、角筒部３３の上面壁よりも上方の位置（角筒部３３の後端面の開放部３６から上方へ外れた位置）に配されている。つまり、突起部３５は、前後方向に投影した面上において、開放部３６の開口範囲内（つまり、角筒部３３内に対するインナハウジング２２の挿入経路内）には、突起部３５は存在していない。
【００２４】
角筒部３３の上面壁には、斜め下前方へ突出した形態の左右一対のランス３７が形成されている。また、角筒部３３の上面壁の前端縁には、その幅方向における中央位置に下方へ突出するストッパ３８が形成され、下面壁の前端縁にも、その幅方向における中央位置に上方へ突出するストッパ３８が形成されている。また、下面壁には、その後端側領域を全幅に亘って略方形に切欠した形態の切欠部３９が形成されている。角筒部３３の左右両側壁の下端縁には、前後方向において切欠部３９と対応する範囲内において下方へ突出した形態の位置決め用突部４０が形成されている。また、位置決め用突部４０の内面には、折り返し状の受け部４１が形成されている。
【００２５】
サブシェル３２は、図７に示す所定の形状に打ち抜いた金属板材４２に、曲げ加工を施すことによって成形されている。サブシェル３２は、方形をなす板状部４３と、板状部４３の後端縁４３Ｒから後方へ延出した形態の固着部３４とを一体に形成したものである。板状部４３の左右両側縁部には、浅く凹ませた形態の位置決め部４４が形成されている。板状部４３の前端縁には左右一対の接触片４５が斜め上方へ突出する形態で形成されている。
【００２６】
板状部４３の後端縁４３Ｒには、固着部３４が連なっている。固着部３４は、前後方向（シールド導電路Ｂの軸線方向）の基板部４６の左右両側縁から一対の板状をなすカシメ片４７，４８を周方向へ延出させた形態のオープンバレル状をなしている。この固着部３４は、その基板部４６の前端を板状部４３の後端縁４３Ｒに連ねた形態で、板状部４３の後端縁４３Ｒから後方へ突出されている。そして、金属板材４２を曲げ加工する前の展開状態では、図７に示すように、一対のカシメ片４７，４８が板状部４３の後端縁４３Ｒに沿って左右方向へ片持ち状に延出するように配置されている。また、金属板材４２を曲げ加工した後であって固着部３４をシールド部材１１に固着する前の状態では、図２及び図４に示すように、一対のカシメ片４７，４８は、基板部４６から斜め上方へ延出した向きとされている。
【００２７】
一対のカシメ片のうち第１カシメ片４７（本発明の構成要件である一方のカシメ片）には、その前後方向の延出端縁から周方向へ片持ち状に突出した形態の板状の接触部４９が形成されている。接触部４９は、延出端縁のうち前後方向における中央位置に配置されている。また、接触部４９は、その突出方向（周方向）に沿った前側と後側の両側縁から突出するように形成された一対の第１係止部５０を有している。周方向（接触部４９の突出方向）における第１係止部５０の形成領域は、接触部４９の突出端側のほぼ１／２の領域である。また、一対の第１係止部５０は、周方向の仮想軸線（図示せず）に関して前後対称である。
【００２８】
金属板材４２に曲げ加工を施す前の展開状態及びシールド部材１１に固着部３４を固着した状態では、図７及び図８に示すように、接触部４９のうち第１係止部５０の形成されている領域は、突出端側に向かって次第に幅広となるような台形をなしている。つまり、第１係止部５０には、周方向に対して傾斜した第１傾斜縁部５０ａが形成されている。また、第１係止部５０には、周方向と直角な方向であって、第１カシメ片４７の延出端縁と対向するように配された第１係止縁部５０ｂが形成されている。さらに、接触部４９の突出寸法（周方向の寸法）は、上記した突起部３５の突出方向と直角な幅寸法（周方向の寸法）よりも小さい寸法とされている。
【００２９】
金属板材４２を曲げ加工した後であって固着部３４をシールド部材１１に固着する前の状態では、図４及び図５に示すように、第１カシメ片４７のうち第１係止部５０を含む接触部４９は、周方向に見て略弧状（概ね半円弧形）に湾曲した形態に屈曲成形されている。この接触部４９の湾曲の形態は、接触部４９の第１カシメ片４７からの突出方向（つまり、周方向）と直交する幅方向における中央部分が外周側へ膨らむような形態である。このように接触部４９を屈曲させたことにより、図９に示すように、第１係止部５０を含む接触部４９は、その周方向の直交する幅寸法が、後述する凹部５１の開口部５２の開口幅よりも小さい幅狭の寸法とされている。
【００３０】
一対のカシメ片４７，４８のうち第２カシメ片４８（本発明の構成要件である他方のカシメ片）には、その前後方向の延出端縁に開口した形態の凹部５１が形成されている。凹部５１の開口部５２には、前後一対の第２係止部５３が、第２カシメ片４８の延出端縁に沿って突出するように形成されている。前側の第２係止部５３は、開口部５２の前側の端縁から後方へ突出し、後側の第２係止部５３は、開口部５２の後側の端縁から前方へ突出しており、この一対の第２係止部５３により、凹部５１は、その開口部５２の開口幅が狭められた形態となっている。周方向（凹部５１の奥行き方向）における第２係止部５３の形成領域は、凹部５１の奥行きのうち開口部５２側の約１／２の領域となっている。また、第２カシメ片４８のうち凹部５１を前後から挟む部分は一対のアーム部５４となっており、上記した第２係止部５３は、アーム部５４の先端から突出した形態となっている。
【００３１】
凹部５１の開口縁のうち第２係止部５３よりも基板部４６側（開口部５２と反対側）には、周方向に対して傾斜した前後一対の第２傾斜縁部５５ａが形成されている。この第２傾斜縁部５５ａの傾斜角度は、第１係止部５０を含む接触部４９が伸ばされて第１係止部５０と第２係止部５３が係止する状態（展開状態）において、第１傾斜縁部５０ａとほぼ同じ角度とされている。また、第２係止部５３における基板部４６側の縁部は、周方向と直角な第２係止縁部５５ｂとなっている。さらに、開口部５２の開口幅は、接触部４９のうち第１係止部５０の形成されていない領域の幅寸法とほぼ同じ寸法である。また、凹部５１の奥行き寸法（第２カシメ片４８の延出端縁から凹部５１の基板部４６側の奥端縁までの周方向の寸法）は、接触部４９の周方向の寸法とほぼ同じ寸法であり、上記した突起部３５の突出方向と直角な幅寸法（周方向の寸法）よりも小さい寸法とされている。
【００３２】
板状部４３の左右両側縁における後端部に近い位置には、板状部４３と略直角に上方へ延出する形態の方形の第１側板５６が一体に形成されている。この第１側板５６の前端縁からは、方形の第２側板５７が、第１側板５６の内面に沿って後方へ折り返し状に延出する形態で一体に形成されている。第２側板５７の上端縁（板状部４３とは反対側の端縁）は第１側板５６の上端縁と同じ高さである。また、第２側板５７の下端縁は第１側板５６の下端縁（板状部４３）よりも高い位置とされている。さらに、第２側板５７の後端縁は、第１側板５６の後端縁よりも後方に位置している。
【００３３】
第２側板５７の後端縁からは、方形をなす後壁５８が、第２側板５７と略直角をなして板状部４３の後端縁４３Ｒに沿うように延出する形態で一体に形成されている。後壁５８は、前後方向において板状部４３の後端縁４３Ｒとほぼ同じ位置に配置されている。後壁５８の上端縁（板状部４３とは反対側の端縁）は第１側板５６及び第２側板５７の上端縁と同じ高さとされている。後壁５８の下端縁（板状部４３側の端縁）は第２側板５７の下端縁と同じ高さとされている。
【００３４】
金属板材４２を曲げ加工する前の展開状態では、図７に示すように、第１側板５６が板状部４３の側方近傍に位置し、第２側板５７が第１側板５６の前方に位置し、後壁５８が第２側板５７の前方に位置する。つまり、第１側板５６、第２側板５７及び後壁５８は、板状部４３の後端縁４３Ｒよりも前方（前後方向において固着部３４とは反対方向）の領域において、板状部４３の側縁に沿って前後方向に連なる形態で配置されている。したがって、サブシェル３２に後壁５８を形成するに際して、後壁５８も、後壁５８を支持する第１側板５６と第２側板５７も、固着部３４のカシメ片４７，４８と干渉することはない。これにより、カシメ片４７，４８は、板状部４３の後端縁４３Ｒの近傍に配置されており、板状部４３の後端縁４３Ｒとカシメ片４７，４８（固着部３４）との間に大きなデッドスペースが空くことはない。このような後壁５８の形成形態によれば、シールドシェル３０の前後長を短くすることができ、ひいては、シールドコネクタＡの小型化を図ることができる。
【００３５】
次に、シールドコネクタＡの組付工程を説明する。シールド導電路Ｂの各導体１０に端子金具２１の後端部を接続し、次に、導体１０の前端部をホルダ２０の溝部に嵌合して、導体１０及び端子金具２１を左右方向において位置決めする。その後、４つの端子金具２１を一斉にインナハウジング２２内に挿入し、次いで、インナハウジング２２をメインシェル３１の角筒部３３に後方から挿入する。このとき、メインシェル３１にはサブシェル３２は組み付けられておらず、メインシェル３１の後端の開放部３６内に進出するものは存在しないので、インナハウジング２２の挿入は支障なく行われる。
【００３６】
また、角筒部３３に挿入されたインナハウジング２２は、その上面の係止孔２２ａに角筒部３３のランス３７を係止させることにより抜止めされているとともに、角筒部３３の前端縁のストッパ３８に突き当たることにより前止まりされている。インナハウジング２２を角筒部３３に収容した状態では、インナハウジング２２から後方へ導出された４本の導体１０が角筒部３３の後端部によって包囲されるとともに、角筒部３３の後方近傍位置に、シールド部材１１の折返部１１ａとスリーブ１３が配置される。そして、突起部３５が、シールド部材１１の折返部１１ａの外面に接触又は接近して対応する。
【００３７】
この後、メインシェル３１に対し、サブシェル３２を下方から接近させるようにして組み付ける。両シェル３１，３２を組み付けた状態では、サブシェル３２の板状部４３が、メインシェル３１の切欠部３９の開口領域を塞いで、インナハウジング２２の外面（下面）に沿った形態となる。また、メインシェル３１の位置決め用突部４０がサブシェル３２の位置決め部４４に嵌合することにより、両シェル３１，３２が前後方向への相対移動を規制される。さらに、受け部４１が板状部４３の側縁部に対して下から係止することにより、両シェル３１，３２の上下方向への離間が規制されている。また、サブシェル３２の接触片４５がメインシェル３１の外面に対して弾性的に当接し、両シェル３１，３２間が電気的導通可能に接続された状態となる。
【００３８】
両シェル３１，３２を組み付けた状態では、角筒部３３の後端の開放部３６のうち左右方向中央部領域は固着部３４とシールド導電路Ｂによって塞がれた状態となり、開放部３６のうち固着部３４及びシールド導電路Ｂと非対応の左右両端部領域は、サブシェル３２に形成した後壁５８によって塞がれた状態となる。これにより、角筒部３３の後端においてる高いシールド性能が発揮される。
【００３９】
また、固着部３４の基板部４６が、シールド導電路Ｂのうちシールド部材１１の折返部１１ａが露出している部分を突起部３５との間で上下に挟むように位置するとともに、両カシメ片４７，４８が、シールド導電路Ｂのうちシールド部材１１の折返部１１ａが露出している部分を左右方向に挟むように位置する。
【００４０】
この後、アンビルとクリンパを備えた自動圧着機（図示せず）を用いて、固着部３４とシールド部材１１との接続を行う。接続に際しては、固着部３４の基板部４６をアンビルに載置させるようにして、シールドシェル３０とシールド導電路Ｂをセットする。すると、クリンパが下降して第１カシメ片４７の接触部４９の先端（上端）と第２カシメ片４８の延出端縁に当接する。そして、クリンパの下降動作が進むのに伴い、両カシメ片４７，４８が、内側へ倒れ込むように変形することにより固着部３４が縮径して、シールド部材１１の折返部１１ａを包んでいく。
【００４１】
尚、この過程では、両カシメ片４７，４８の内周面が、突起部３５の左右両側縁に当接するのであるが、このときに、第１カシメ片４７の前後方向の延出端縁のうち接触部４９よりも前方と後方の領域や、第２カシメ片４８の前後方向の延出端縁のうち開口部５２よりも前方と後方の領域が、突起部３５の側縁に突き当たり、その結果、それ以上のカシメ片４７，４８の正常な変形が阻害されてしまうことが懸念される。しかし、本実施形態では、第１カシメ片４７において突起部３５と最初に当接する位置は、第１カシメ片４７の延出端縁よりも基板部４６側の領域内に設定されており、また、第２カシメ片４８において突起部３５と最初に当接する位置も、第２カシメ片４８の延出端縁よりも基板部４６側の領域内に設定されている。したがって、カシメ片４７，４８の延出端縁が突起部３５の側縁に突き当たる虞はない。
【００４２】
上記のように突起部３５に対して両カシメ片４７，４８が当接した後は、両カシメ片４７，４８は、その延出端縁同士を周方向に接近させるように更に変形を続け、変形の終期には、接触部４９が凹部５１内に進入する。ここで、第１カシメ片４７の第１係止部５０を含む接触部４９は屈曲した形態に成形されていて、この屈曲形態により、第１係止部５０が、第２係止部５３との係止位置から板厚方向（径方向）における内側へ変位するとともに、凹部５１の開口幅方向へ位置ずれしている。具体的には、図５に示すように、接触部４９は、周方向に見て略弧状に湾曲するように屈曲されることにより、凹部５１の開口部５２を通過可能な幅狭の形態とされている。したがって、両カシメ４７，４８片が周方向に接近する過程では、図９に示すように、接触部４９は、第２係止部５３と干渉することなく、凹部５１内に進入することができる。
【００４３】
接触部４９が凹部５１内に進入し、第１係止縁部５０ｂが周方向において第２係止縁部５５ｂと並ぶ位置又はそれよりも僅かに凹部５１の奥側の位置まで到達すると、クリンパの下降が停止して、両カシメ片４７，４８の周方向への変形（即ち、固着部３４の縮径変形）が終了する。これにより、シールド部材１１の折返部１１ａは、基板部４６及び両カシメ片４７，４８によってスリーブ１３の外周に強く押圧され、シールド部材１１とサブシェル３２（シールドシェル３０）とが、電気的導通可能に接続され、且つ摩擦により離脱を規制された状態に固着される。
【００４４】
このとき、メインシェル３１の突起部３５は、シールド部材１１の折返部１１ａと一緒に両カシメ片４７，４８のうち接触部４９を除いた部分とスリーブ１３との間で強固に挟み付けられる。換言すると、突起部３５は、固着部３４に対しシールド部材１１と共に固着される。これにより、突起部３５と両カシメ片４７，４８とが相対変位を規制された状態に固定され、メインシェル３１とサブシェル３２はガタ付きなく組付け状態に保持される。また、突起部３５と両カシメ片４７，４８とは直接当接した状態に固定されるので、メインシェル３１とサブシェル３２とが確実に電気的導通可能に接続された状態に保持される。
【００４５】
両カシメ片４７，４８を変形させてシールド部材１１に固着した後は、クリンパ内に組み込んだ加圧部材（図示せず）で接触部４９の外周面を打圧又は押圧する。このとき、第１係止部５０を含む接触部４９は、接触部４９の突出方向と直交する幅方向（前後方向）における中央部分が外周側へ膨らむような形態で屈曲しているので、接触部４９の外周面における打圧位置又は押圧位置は、幅方向中央部の１カ所だけであり、この幅方向中央部の周方向に沿った領域を打圧又は押圧することになる。また、図８及び図９に示すように、第１係止部５０を含む接触部４９の全体、凹部５１の開口領域全体、及び前後両両アーム部５４は、それよりも内周側の突起部３５の形成範囲内に含まれるように位置し、前側の第１係止部５０の前端と後側の第１係止部５０の後端が突起部３５の外周面に当接している。したがって、接触部４９を打圧又は押圧すると、湾曲している接触部４９は、加圧部材と突起部３５との間で径方向に挟み付けられることによって湾曲が伸びるように（曲率が小さくなるように）変形させられる。
【００４６】
湾曲している接触部４９が伸びるように変形する過程では、接触部４９は、前後両第１係止部５０において突起部３５の外周面上を摺接する状態を終始保ちながら、全体として径方向内側（突起部３５に接近する方向）へ変位する。同じく接触部４９が変形する過程では、接触部４９において変形に伴って生じる応力により、前後両第１係止部５０が突起部３５を内周側へ弾性的に押圧する状態を保つ。したがって、スリーブ１３と突起部３５との間で挟まれている折返部１１ａの径方向の厚さ寸法にバラツキがあっても、折返部１１ａが突起部３５とスリーブ１３との間で確実に挟み付けられ、突起部３５と折返部１１ａとが確実に導通可能に接続されるとともに、突起部３５と固着部３４（接触部４９）とが確実に導通可能に接続される。したがって、シールド部材１１とメインシェル３１（突起部３５の形成母体）とサブシェル３２（固着部３４の形成母体）とは、互いに電気的導通可能に接続された状態となり、ひいては、高いシールド性能が発揮される。
【００４７】
伸ばされるように変形した接触部４９は、その周面をアーム部５４及び第２カシメ片４８の周面に対して概ね面一状に連なる形態（周方向にほぼ滑らかに連なる形態）となり、突起部３５の外周面に沿った形状（突起部３５の外周面に対して概ね面当たり状に当接する形状）となる。尚、両アーム部５４と第２係止部５３も、突起部３５の外周面に対して面当たり状に当接している。
【００４８】
接触部４９が伸ばされると、前側（図８における左側）の第１係止部５０の第１係止縁部５０ｂが、前側の第２係止部５３の第２係止縁部５５ｂに対し、両係止部５０，５３の板厚の範囲内で周方向に突き当たるように係止するとともに、後側の第１係止部５０の第１係止縁部５０ｂが、後側の第２係止部５３の第２係止縁部５５ｂに対し、両係止部５０，５３の板厚の範囲内で周方向に突き当たるように係止する。この前後２カ所の係止作用により、両カシメ片４７，４８が周方向（図８における上下方向）へ離間することが規制され、ひいては、固着部３４の拡開変形が防止される。
【００４９】
また、接触部４９が伸ばされると、前側の第１係止部５０の第１傾斜縁部５０ａが、凹部５１の前側の傾斜縁部５５ａに対し、両係止部５０，５３の板厚の範囲内で周方向に突き当たるように係止するとともに、後側の第１係止部５０の第１傾斜縁部５０ａが、凹部の後側の傾斜縁部５５ａに対し、両係止部５０，５３の板厚の範囲内で周方向に突き当たるように係止する。この前後２カ所の係止作用によっても、両カシメ片４７，４８の周方向への離間が規制され、固着部３４の拡開変形が防止される。
【００５０】
上述のように、本実施形態においては、固着部３４がシールド部材１１と突起部３５に固着される過程では、接触部４９は、突起部３５の外周面に当接した状態で径方向内向きに変位しながら変形させられる。したがって、シールド部材１１の折返部１１ａが薄くてその外径寸法が規定寸法よりも小さい場合には、突起部３５が固着部３４側から押されて径方向内側へ変位することにより折返部１１ａの外周面に押圧される。これにより、突起部３５の内面と折返部１１ａの外周面との間の接触状態が安定する。また、固着部３４の内周面と突起部３５の外面との間の接触状態は良好に維持されている。したがって、シールド性能の信頼性に優れている。
【００５１】
また、接触部４９は、その第１係止部５０を凹部５１の第２係止部５３に係止させることにより、一対のカシメ片４７，４８の周方向への離間を規制する機能も発揮する。したがって、一対のカシメ片４７，４８の周方向への離間を規制する手段を、接触部４９とは別に独立して形成する場合に比べると、カシメ片４７，４８の形状の簡素化を図ることが実現されている。
【００５２】
また、固着部３４をシールド導電路Ｂに固着する際には、一対のカシメ片４７，４８を周方向に接近させるように変形させることにより、基板部４６とカシメ片４７，４８をシールド部材１１の外周に密着させるとともに、接触部４９を凹部５１内に進入させる。このとき、接触部４９は、その第１係止部５０を凹部５１の第２係止部５３との係止位置から凹部５１の開口幅方向へ位置ずれさせるように屈曲した形態に成形されているので、接触部４９が凹部５１内に進入するときに、接触部４９の第１係止部５０と凹部５１の第２係止部５３が干渉することはない。接触部４９が凹部５１に進入した後は、接触部４９をその屈曲部が伸びるように変形させれば、接触部４９の第１係止部５０と凹部５１の第２係止部５３とが係止状態となる。
【００５３】
また、組付けの際には、インナハウジング２２を後方から角筒部３３内に挿入し、次に、メインシェル３１とサブシェル３２を合体させ、その後で、固着部３４を突起部３５とシールド部材１１に固着するのであるが、突起部３５は、角筒部３３の後端面の開放部３６に対し上下左右方向へ外れた位置に配されているので、インナハウジング２２を角筒部３３に挿入する作業の妨げになることはない。
【００５４】
また、第１傾斜縁部５０ａと第２傾斜縁部５５ａは、いずれも周方向に対して傾斜しているので、接触部４９が伸ばされるのに伴って前後両第１傾斜縁部５０ａの間隔が次第に拡大する過程の終期では、第１傾斜縁部５０ａと第２傾斜縁部５５ａとの当接に起因して楔作用が生じる。この楔作用により、接触部４９が凹部５１に対して開口部側へ戻る方向へ変位すること（即ち、両カシメ片４７，４８が周方向の離間して固着部３４の径が拡大すること）が防止される。また、第１傾斜縁部５０ａと第２傾斜縁部５５ａは、いずれも、軸線方向と直角な向きに近い角度なので、両傾斜縁部５０ａ，５５ａの当接作用により、一対のカシメ片４７，４８の軸線方向へのガタ付きも確実に防止されている。
【００５５】
尚、接触部４９が伸ばされる過程の終期においては、楔作用によって両カシメ片４７，４８が接近する方向へ僅かに相対変位する場合があるため、接触部４９の延出端縁と凹部５１の奥端縁との間、及び第１カシメ片４７の延出端縁と第２カシメ片４８の延出端縁との間には、僅かなクリアランスを空けておくことが好ましい。
【００５６】
また、図８及び図９に示すように、周方向と軸線方向の両方向において、第１係止部５０を含む接触部４９の全体、凹部５１の開口領域の全体、第２係止部５５３を含む両アーム部５４の全体は、いずれも突起部３５の形成範囲内に配置されている。この配置は、固着部３４をシールド部材１１と突起部３５に固着する過程、及び接触部４９を伸ばすように変形させる過程において、シールド部材１１を構成する編組線が第１カシメ片４７と第２カシメ片４８との間に噛み込む虞のある部分（即ち、第１カシメ片４７の延出端縁と第２カシメ片４８の延出端縁との接近部分、接触部４９の延出端縁と凹部５１の奥端縁との接近部分、開口部５２において接触部４９が進入する部分、凹部５１内において第１係止部５０（第１係止縁部５０ｂ）と第２係止部５３（第２係止縁部５５ｂ）とが接近して係止する部分、及び、第１傾斜縁部５０ａと第２傾斜縁部５５ａとが接近して係止する部分）は、いずれも、突起部３５の形成範囲内にあり、突起部３５によってシールド部材１１（編組線）から隔絶された状態となっている。したがって、固着部３４とシールド部材１１とを固着する際に、第１カシメ片４７と第２カシメ片４８との間にシールド部材（編組線）が噛み込む虞はない。
【００５７】
また、接触部４９を屈曲形態に成形するに際しては、接触部４９が第１カシメ片４７の延出端縁から周方向に突出する形態であることに鑑みて、第１カシメ片４７を、周方向に見て屈曲した形態としている。このような屈曲形態により、接触部４９は、その突出寸法が大きくても剛性が高くなるので、他部材の干渉などに起因して不正な変形を来す、という虞はない。
【００５８】
また、接触部が周方向の折り目に沿って角張ったように屈曲されている場合には、その屈曲部分を伸ばすように接触部を変形させたときに、折り目の部分が稜線状に残り、この稜線状部分やその近傍において接触部の内周面における突起部との接触不良を来すことが懸念される。これに対し、本実施形態では、接触部４９を湾曲した形態に成形したので、屈曲部を伸ばすように変形させたときに、稜線状の折り目が残る虞がない。したがって、接触部４９の内周面における突起部３５との接触信頼性に優れている。
【００５９】
＜他の実施形態＞
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
（１）上記実施形態では、角筒部を有するメインシェルと、板状部に固着部を形成したサブシェルとを合体させてシールドシェルを構成したが、シールドシェルは、ハウジングを上下又は左右に挟むように合体する一対の半割状のシェル構成部材によって構成されたものであってもよい。
（２）上記実施形態では、接触部が一対のカシメ片が周方向へ離間するのを規制する機能を兼ね備えるようにしたが、一対のカシメ片の周方向への離間を規制する手段を、接触部とは別に独立して形成してもよい。
（３）上記実施形態では、接触部をカシメ片の延出端縁から周方向に突出する形態としたが、接触部は、カシメ片の延出端縁よりも基板部側の部分を切り起こした形態であってもよい。
（４）上記実施形態では、接触部をカシメ片の外周側へ突出した形態としたが、接しよく部は、カシメ片の内周側へ突出した形態であってもよく、また、内周側と外周側の両方へ突出した形態であってもよい。
（５）上記実施形態では、接触部を湾曲させるように屈曲させたが、接触部の屈曲の仕方としては、直線状に折り目に沿って角張った形態（例えば、三角形や台形など）としてもよい。
（６）上記実施形態では、接触部を、幅方向（接触部の突出方向と直交する方向）における中央部分が外周側へ膨らむような形態で屈曲させたが、接触部の屈曲形態としては、接触部の幅方向中央部分が内周側へ膨らむような形態で屈曲させてもよく、周方向に見て波形をなすような形態で屈曲させてもよい。
（７）上記実施形態では、接触部を周方向に見て湾曲した形態に屈曲さたが、これに限らず、接触部を、軸線方向（接触部の延出方向と交差する方向）に見て屈曲するように内周側又は外周側へ突出するように曲げて、第１係止部を板厚方向へ位置ずれさせてもよい。
（８）上記実施形態では第１係止部を接触部の前側の縁部と後側の縁部の両方に形成したが、第１係止部は、接触部の前後いずれか一方の縁部のみに形成されていてもよい。
（９）上記実施形態では固着部に１つの接触部を形成したが、１つの固着部に複数の接触部を形成してもよい。
（１０）上記実施形態では、突起部を片持ち状に突出する形態としたが、突起部は、両端支持された形態であってもよい。
（１１）上記実施形態では、一対のカシメ片のうち第１カシメ片（接触部側のカシメ片）のみを屈曲させたが、これに替えて、第２カシメ片（凹部側のカシメ片）のみを屈曲させてもよく、第１カシメ片と第２カシメ片の両方を屈曲させてもよい。
（１１−１）第２カシメ片の屈曲形態としては、凹部の開口部の開口幅を拡げる形態がある。一例としては、一対の第２係止部を、その基端部において周方向の折り目に沿って板厚方向（外周側又は内周側）へ屈曲（位置ずれ）させる形態がある。この場合、一対の第２係止部の変位方向は、互いに同じ方向でもよく、互いに違いに逆方向でもよい。
（１１−２）第２カシメ片の屈曲形態としては、凹部の開口部の開口幅はそのままで、第２カシメ片の延出端部を、軸線方向に見て屈曲させることにより、第２係止部を板厚方向（外周側又は内周側）へ屈曲（位置ずれ）させてもよい。この場合、アーム部の一部のみが板厚方向へ変位するようにしてもよく、アーム部の全体が板厚方向へ変位するようにしてもよく、アーム部の全体と第２カシメ片の延出端部が板厚方向へ変位するようにしてもよい。また、アーム部のみが変位する場合において、板厚方向における一対のアーム部の変位の向きは、互いに同じ方向（外周側又は内周側）でもよく、互いに逆方向でもよい。
（１２）上記実施形態では第２係止部を凹部の開口部における前側の端縁と後側の端縁の両方に形成したが、第２係止部は、凹部の開口部における前後いずれか一方の端縁のみに形成されていてもよい。
（１３）上記実施形態では、第１係止部を含む接触部の全体、凹部の開口領域の全体、第２係止部を含む前後両アーム部の全体が、突起部の形成範囲内に配置されるようにしたが、第１係止部を含む接触部、凹部の開口領域、第２係止部を含む前後両アーム部のうち、少なくとも一部が突起部の形成範囲の外部に配置されていてもよい。
（１４）上記実施形態ではシールド導電路の導体を４本としたが、本発明は、１本のシールド導電路における導体の本数が３本以下又は５本以上である場合にも適用できる。
（１５）上記実施形態では、シールドコネクタが雌形の端子金具を有する雌形のコネクタである場合について説明したが、本発明は、雄形の端子金具を有する雄形のシールドコネクタにも適用できる。
（１６）上記実施形態では、シールド部材が編組線である場合について説明したが、本発明は、シールド部材が金属箔である場合にも適用できる。
【符号の説明】
【００６０】
Ａ…シールドコネクタ
Ｂ…シールド導電路
１０…導体
１１…シールド部材
２１…端子金具
２２…インナハウジング（ハウジング）
３０…シールドシェル
３１…メインシェル（他方のシェル構成部材）
３２…サブシェル（一方のシェル構成部材）
３３…角筒部
３４…固着部
３５…突起部
３６…角筒部の後端の開放部
４６…基板部
４７…第１カシメ片（一方のカシメ片）
４８…第２カシメ片（他方のカシメ片）
４９…接触部
５０…第１係止部
５１…凹部
５２…開口部
５３…第２係止部
【特許請求の範囲】
【請求項１】
導体をシールド部材で包囲した形態のシールド導電路の端末に接続されるシールドコネクタであって、
前記導体に接続された端子金具を収容するハウジングと、
前記ハウジングを包囲するシールドシェルとを備え、
前記シールドシェルには、
前記ハウジングを包囲する手段として、角筒部が設けられているとともに、
前記シールド部材に対しその外周を包囲する形態で固着する手段として、前記角筒部の後方に配され、基板部の両側縁から一対のカシメ片を周方向へ延出させた形態のオープンバレル状の固着部が設けられており、
前記シールドシェルは、２つのシェル構成部材を合体させて構成され、
一方の前記シェル構成部材には、前記固着部が一体に形成され、
他方の前記シェル構成部材には、前記シールド部材の外周に重ねられるように配されて、前記シールド部材と共に前記固着部に固着される突起部が一体に形成されており、
前記カシメ片には、前記固着部が前記シールド部材と前記突起部に固着される前の状態では前記カシメ片の外周側又は内周側へ突出した形態とされた接触部が形成され、
前記固着部が前記シールド部材と前記突起部に固着される過程では、前記接触部が、前記突起部の外周面に当接した状態で径方向内向きに変位しながら変形させられていることを特徴とするシールドコネクタ。
【請求項２】
前記接触部は、一方の前記カシメ片の延出端縁から周方向へ突出した形態とされているとともに、その突出方向に沿った側縁から突出した形態の係止部を有しており、
他方の前記カシメ片には、その延出端縁に開口した形態の凹部と、前記凹部の開口部において前記他方のカシメ片の延出端縁に沿って突出する形態とされた係止部とが形成されており、
前記固着部が前記シールド部材に固着された状態では、前記接触部の前記係止部と前記凹部の前記係止部との係止作用によって前記一対のカシメ片が周方向への離間を規制されるようになっていることを特徴とする請求項１記載のシールドコネクタ。
【請求項３】
前記固着部を前記シールド部材の外周に固着する工程では、前記一対のカシメ片を、その延出端縁同士が周方向に接近するように変形させるとともに、前記一対のカシメ片の変形に伴って前記接触部を前記凹部内に進入させるようになっており、
前記固着部が前記シールド部材に固着された状態では、前記接触部の周面と前記他方のカシメ片の延出端部の周面とが概ね面一状に連なる位置関係となることで、前記接触部の前記係止部と前記凹部の前記係止部とが係止するようになっており、
前記固着部を前記シールド部材に固着する前の状態では、前記接触部は、その係止部を前記凹部の前記係止部との係止位置から板厚方向又は前記凹部の開口幅方向へ位置ずれさせるように屈曲した形態に成形されており、
前記固着部を前記シールド部材に固着する工程では、前記一対のカシメ片を周方向において正規位置まで接近させた状態において、前記接触部をその屈曲部が伸びるように変形させることで、前記係止部同士がその板厚範囲内で係止する状態とされていることを特徴とする請求項１又は請求項２に記載のシールドコネクタ。
【請求項４】
前記他方のシェル構成部材には、後端面が開放した形態の前記角筒部が形成されており、
前記突起部は、前記角筒部の後端面の開放部に対し上下左右方向へ外れた位置に配されていることを特徴とする請求項１ないし請求項３のいずれか１項に記載のシールドコネクタ。
【請求項５】
導体をシールド部材で包囲した形態のシールド導電路の端末に接続されたシールドコネクタにおいて、前記導体に接続した端子金具が収容されているハウジングを包囲するシールドシェルであって、
前記ハウジングを包囲する手段として、前記ハウジングを角筒部を備えているとともに、
前記シールド部材に対しその外周を包囲する形態で固着する手段として、前記角筒部の後方に配され、基板部の両側縁から一対のカシメ片を周方向へ延出させた形態のオープンバレル状の固着部を備えており、
２つのシェル構成部材を合体させて構成されるシールドシェルにおいて、
一方の前記シェル構成部材には、前記固着部が一体に形成され、
他方の前記シェル構成部材には、前記シールド部材の外周に重ねられるように配されて、前記シールド部材と共に前記固着部に固着される突起部が一体に形成されており、
前記カシメ片には、前記固着部が前記シールド部材と前記突起部に固着される前の状態では前記カシメ片の外周側又は内周側へ突出した形態とされた接触部が形成され、
前記固着部が前記シールド部材と前記突起部に固着される過程では、前記接触部が、前記突起部の外周面に当接した状態で径方向内向きに変位しながら変形させられていることを特徴とするシールドシェル。
【請求項６】
前記接触部は、一方の前記カシメ片の延出端縁から周方向へ突出した形態とされているとともに、その突出方向に沿った側縁から突出した形態の係止部を有しており、
他方の前記カシメ片には、その延出端縁に開口した形態の凹部と、前記凹部の開口部において前記他方のカシメ片の延出端縁に沿って突出する形態とされた係止部とが形成されており、
前記固着部が前記シールド部材に固着された状態では、前記接触部の前記係止部と前記凹部の前記係止部との係止作用によって前記一対のカシメ片が周方向への離間を規制されるようになっていることを特徴とする請求項５記載のシールドシェル。
【請求項７】
前記固着部を前記シールド部材の外周に固着する工程では、前記一対のカシメ片を、その延出端縁同士が周方向に接近するように変形させるとともに、前記一対のカシメ片の変形に伴って前記接触部を前記凹部内に進入させるようになっており、
前記固着部が前記シールド部材に固着された状態では、前記接触部の周面と前記他方のカシメ片の延出端部の周面とが概ね面一状に連なる位置関係となることで、前記接触部の前記係止部と前記凹部の前記係止部とが係止するようになっており、
前記固着部を前記シールド部材に固着する前の状態では、前記接触部は、その係止部を前記凹部の前記係止部との係止位置から板厚方向又は前記凹部の開口幅方向へ位置ずれさせるように屈曲した形態に成形されており、
前記固着部を前記シールド部材に固着する工程では、前記一対のカシメ片を周方向において正規位置まで接近させた状態において、前記接触部をその屈曲部が伸びるように変形させることで、前記係止部同士がその板厚範囲内で係止する状態とされていることを特徴とする請求項５又は請求項６に記載のシールドシェル。
【請求項８】
前記他方のシェル構成部材には、後端面が開放した形態の前記角筒部が形成されており、
前記突起部は、前記角筒部の後端面の開放部に対し上下左右方向へ外れた位置に配されていることを特徴とする請求項５ないし請求項７のいずれか１項に記載のシールドシェル。
【請求項１】
導体をシールド部材で包囲した形態のシールド導電路の端末に接続されるシールドコネクタであって、
前記導体に接続された端子金具を収容するハウジングと、
前記ハウジングを包囲するシールドシェルとを備え、
前記シールドシェルには、
前記ハウジングを包囲する手段として、角筒部が設けられているとともに、
前記シールド部材に対しその外周を包囲する形態で固着する手段として、前記角筒部の後方に配され、基板部の両側縁から一対のカシメ片を周方向へ延出させた形態のオープンバレル状の固着部が設けられており、
前記シールドシェルは、２つのシェル構成部材を合体させて構成され、
一方の前記シェル構成部材には、前記固着部が一体に形成され、
他方の前記シェル構成部材には、前記シールド部材の外周に重ねられるように配されて、前記シールド部材と共に前記固着部に固着される突起部が一体に形成されており、
前記カシメ片には、前記固着部が前記シールド部材と前記突起部に固着される前の状態では前記カシメ片の外周側又は内周側へ突出した形態とされた接触部が形成され、
前記固着部が前記シールド部材と前記突起部に固着される過程では、前記接触部が、前記突起部の外周面に当接した状態で径方向内向きに変位しながら変形させられていることを特徴とするシールドコネクタ。
【請求項２】
前記接触部は、一方の前記カシメ片の延出端縁から周方向へ突出した形態とされているとともに、その突出方向に沿った側縁から突出した形態の係止部を有しており、
他方の前記カシメ片には、その延出端縁に開口した形態の凹部と、前記凹部の開口部において前記他方のカシメ片の延出端縁に沿って突出する形態とされた係止部とが形成されており、
前記固着部が前記シールド部材に固着された状態では、前記接触部の前記係止部と前記凹部の前記係止部との係止作用によって前記一対のカシメ片が周方向への離間を規制されるようになっていることを特徴とする請求項１記載のシールドコネクタ。
【請求項３】
前記固着部を前記シールド部材の外周に固着する工程では、前記一対のカシメ片を、その延出端縁同士が周方向に接近するように変形させるとともに、前記一対のカシメ片の変形に伴って前記接触部を前記凹部内に進入させるようになっており、
前記固着部が前記シールド部材に固着された状態では、前記接触部の周面と前記他方のカシメ片の延出端部の周面とが概ね面一状に連なる位置関係となることで、前記接触部の前記係止部と前記凹部の前記係止部とが係止するようになっており、
前記固着部を前記シールド部材に固着する前の状態では、前記接触部は、その係止部を前記凹部の前記係止部との係止位置から板厚方向又は前記凹部の開口幅方向へ位置ずれさせるように屈曲した形態に成形されており、
前記固着部を前記シールド部材に固着する工程では、前記一対のカシメ片を周方向において正規位置まで接近させた状態において、前記接触部をその屈曲部が伸びるように変形させることで、前記係止部同士がその板厚範囲内で係止する状態とされていることを特徴とする請求項１又は請求項２に記載のシールドコネクタ。
【請求項４】
前記他方のシェル構成部材には、後端面が開放した形態の前記角筒部が形成されており、
前記突起部は、前記角筒部の後端面の開放部に対し上下左右方向へ外れた位置に配されていることを特徴とする請求項１ないし請求項３のいずれか１項に記載のシールドコネクタ。
【請求項５】
導体をシールド部材で包囲した形態のシールド導電路の端末に接続されたシールドコネクタにおいて、前記導体に接続した端子金具が収容されているハウジングを包囲するシールドシェルであって、
前記ハウジングを包囲する手段として、前記ハウジングを角筒部を備えているとともに、
前記シールド部材に対しその外周を包囲する形態で固着する手段として、前記角筒部の後方に配され、基板部の両側縁から一対のカシメ片を周方向へ延出させた形態のオープンバレル状の固着部を備えており、
２つのシェル構成部材を合体させて構成されるシールドシェルにおいて、
一方の前記シェル構成部材には、前記固着部が一体に形成され、
他方の前記シェル構成部材には、前記シールド部材の外周に重ねられるように配されて、前記シールド部材と共に前記固着部に固着される突起部が一体に形成されており、
前記カシメ片には、前記固着部が前記シールド部材と前記突起部に固着される前の状態では前記カシメ片の外周側又は内周側へ突出した形態とされた接触部が形成され、
前記固着部が前記シールド部材と前記突起部に固着される過程では、前記接触部が、前記突起部の外周面に当接した状態で径方向内向きに変位しながら変形させられていることを特徴とするシールドシェル。
【請求項６】
前記接触部は、一方の前記カシメ片の延出端縁から周方向へ突出した形態とされているとともに、その突出方向に沿った側縁から突出した形態の係止部を有しており、
他方の前記カシメ片には、その延出端縁に開口した形態の凹部と、前記凹部の開口部において前記他方のカシメ片の延出端縁に沿って突出する形態とされた係止部とが形成されており、
前記固着部が前記シールド部材に固着された状態では、前記接触部の前記係止部と前記凹部の前記係止部との係止作用によって前記一対のカシメ片が周方向への離間を規制されるようになっていることを特徴とする請求項５記載のシールドシェル。
【請求項７】
前記固着部を前記シールド部材の外周に固着する工程では、前記一対のカシメ片を、その延出端縁同士が周方向に接近するように変形させるとともに、前記一対のカシメ片の変形に伴って前記接触部を前記凹部内に進入させるようになっており、
前記固着部が前記シールド部材に固着された状態では、前記接触部の周面と前記他方のカシメ片の延出端部の周面とが概ね面一状に連なる位置関係となることで、前記接触部の前記係止部と前記凹部の前記係止部とが係止するようになっており、
前記固着部を前記シールド部材に固着する前の状態では、前記接触部は、その係止部を前記凹部の前記係止部との係止位置から板厚方向又は前記凹部の開口幅方向へ位置ずれさせるように屈曲した形態に成形されており、
前記固着部を前記シールド部材に固着する工程では、前記一対のカシメ片を周方向において正規位置まで接近させた状態において、前記接触部をその屈曲部が伸びるように変形させることで、前記係止部同士がその板厚範囲内で係止する状態とされていることを特徴とする請求項５又は請求項６に記載のシールドシェル。
【請求項８】
前記他方のシェル構成部材には、後端面が開放した形態の前記角筒部が形成されており、
前記突起部は、前記角筒部の後端面の開放部に対し上下左右方向へ外れた位置に配されていることを特徴とする請求項５ないし請求項７のいずれか１項に記載のシールドシェル。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１１】
【図１２】
【図１３】
【図１４】
【図１５】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
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【図１０】
【図１１】
【図１２】
【図１３】
【図１４】
【図１５】
【公開番号】特開２０１０−１８２６４５（Ｐ２０１０−１８２６４５Ａ）
【公開日】平成２２年８月１９日（２０１０．８．１９）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００９−２７７３３（Ｐ２００９−２７７３３）
【出願日】平成２１年２月９日（２００９．２．９）
【出願人】（０００１８３４０６）住友電装株式会社 (6,135)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２２年８月１９日（２０１０．８．１９）
【国際特許分類】
【出願日】平成２１年２月９日（２００９．２．９）
【出願人】（０００１８３４０６）住友電装株式会社 (6,135)
【Ｆターム（参考）】
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