説明

シールドコネクタ及びシールドシェル

【課題】一対のカシメ片を有するオープンバレル状の固着部をシールド導電路に固着する場合に、両カシメ片を周方向に離間しないように保持する。
【解決手段】固着部34をシールド部材11に固着する前の状態では、第1カシメ片47は、その第1係止部50を第2係止部53との係止位置から板厚方向及び凹部の開口幅方向へ位置ずれさせるように屈曲した形態に成形されている。固着部34をシールド部材11に固着する工程では、両カシメ片47,48を周方向において正規位置まで接近させた状態で、第1カシメ片47をその屈曲部が伸びるように変形させることで、係止部50,53同士を係止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドコネクタ及びシールドシェルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、導体をシールド部材で包囲した形態のシールド導電路の端末に固着されるシールドコネクタが開示されている。このシールドコネクタは、導体に接続された端子金具を収容するハウジングと、ハウジングを包囲するシールドシェルとを備えており、シールドシェルには、シールド部材との導通手段としてオープンバレル状の固着部が形成されている。
【0003】
固着部は、基板部の左右両側縁から一対の板状のカシメ片を周方向へ延出させた形態であり、一対のカシメ片を径方向内側へ変形させることにより、シールド部材の外周に対して固着部が導通可能に密着されるようになっている。
【特許文献1】特開2006−32211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方のカシメ片の延出端部には周方向に延びる凸部が形成され、他方のカシメ片の延出端部には周方向に延びる凹部が形成されている。固着部をシールド部材の外周に固着する際には、一対のカシメ片をクリンパに摺接させながら周方向に接近させるようになっており、これに伴い、凸部と凹部は、その周面同士が面一となるような位置関係を保ちながら接近して嵌合状態に至る。そして、この凸部と凹部の嵌合により、一対のカシメ片は軸線方向への相対変位を規制された状態に保持されている。
【0005】
しかし、周方向に延びる凸部と凹部との嵌合では、一対のカシメ片が周方向に離間する方向への相対変位を規制することはできない。一対のカシメ片が周方向に離間することは、固着部が拡開変形してシールド部材の外周から離間し、接触不良を来すことを意味する。
【0006】
尚、この対策としては、凸部の先端部を幅広な形状にするとともに、凹部の入口を幅狭の形状とし、この凸部の幅広部と凹部の幅狭部とを係止させることにより、カシメ片の周方向への離間を規制する構造が考えられる。しかしながら、凸部と凹部がその周面同士を面一とするような位置関係を保ちながら接近して嵌合することに鑑みると、凸部の先端部を幅広とし、凹部の入口を幅狭とする形状では、嵌合させることはできない。
【0007】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、一対のカシメ片を有するオープンバレル状の固着部をシールド導電路に固着する場合において、一対のカシメ片を周方向に離間しないように保持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、導体をシールド部材で包囲した形態のシールド導電路の端末に接続されるシールドコネクタであって、前記導体に接続された端子金具を収容するハウジングと、前記ハウジングを包囲するシールドシェルとを備え、前記シールドシェルには、前記シールド部材に対しその外周を包囲する形態で固着する手段として、基板部の両側縁から一対の板状をなすカシメ片を周方向へ延出させた形態のオープンバレル状の固着部が形成され、一方の前記カシメ片には、その延出端縁から周方向へ突出した形態の凸部が形成され、前記凸部には、その突出方向に沿った側縁から突出した形態の係止部が形成され、他方の前記カシメ片には、その延出端縁に開口した形態の凹部が形成され、前記凹部の開口部には、前記他方のカシメ片の延出端縁に沿って突出した形態の係止部が形成され、前記固着部を前記シールド部材の外周に固着する工程では、前記一対のカシメ片を、その延出端縁同士が周方向に接近するように変形させるとともに、前記一対のカシメ片の変形に伴って前記凸部を前記凹部内に進入させるようになっており、前記固着部が前記シールド部材に固着された状態では、前記凸部の周面と前記他方のカシメ片の延出端部の周面とが概ね面一状に連なる位置関係となり、前記係止部同士の係止作用によって前記一対のカシメ片が周方向への離間を規制されるようになっているシールドコネクタにおいて、前記固着部を前記シールド部材に固着する前の状態では、前記一対のカシメ片のうち少なくとも一方の前記カシメ片は、その係止部を相手側の係止部との係止位置から板厚方向又は前記凹部の開口幅方向へ位置ずれさせるように屈曲した形態に成形されており、前記固着部を前記シールド部材に固着する工程では、前記一対のカシメ片を周方向において正規位置まで接近させた状態において、前記屈曲した形態のカシメ片をその屈曲部が伸びるように変形させることで、前記係止部同士がその板厚範囲内で係止する状態とされているところに特徴を有する。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記係止部同士が係止している状態では、前記凸部側の前記係止部が前記凹部の内周縁に対して軸線方向に押圧するように密着しているところに特徴を有する。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載のものにおいて、前記凸部の形成されている側の前記カシメ片は、周方向に見て前記凸部が屈曲した形態に成形され、前記凸部が、前記凹部の開口部を通過可能な幅狭の形態とされているところに特徴を有する。
【0011】
請求項4の発明は、請求項3に記載のものにおいて、前記凸部が、周方向に見て略弧状に湾曲した形態に成形されているところに特徴を有する。
【0012】
請求項5の発明は、請求項3又は請求項4に記載のものにおいて、前記凸部は、その突出方向と直交する幅方向における中央部分が外周側へ膨らむような形態で屈曲した形態に成形されているところに特徴を有する。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のものにおいて、前記シールドシェルが、前記ハウジングを後方から収容可能な角筒状をなすメインシェルと、後端部に前記固着部を備えたサブシェルとを電気的導通可能に組み付けて構成されており、前記メインシェルには、前記固着部に対し前記シールド部材と共に固着される突起部が形成されているところに特徴を有する。
【0014】
請求項7の発明は、導体をシールド部材で包囲した形態のシールド導電路の端末に接続されたシールドコネクタにおいて、前記導体に接続した端子金具が収容されているハウジングを包囲するシールドシェルであり、前記シールド部材に対しその外周を包囲する形態で固着する手段として、基板部の両側縁から一対の板状をなすカシメ片を周方向へ延出させた形態のオープンバレル状の固着部を備えており、一方の前記カシメ片には、その延出端縁から周方向へ突出した形態の凸部が形成され、前記凸部には、その突出方向に沿った側縁から突出した形態の係止部が形成され、他方の前記カシメ片には、その延出端縁に開口した形態の凹部が形成され、前記凹部の開口部には、前記他方のカシメ片の延出端縁に沿って突出した形態の係止部が形成され、前記固着部を前記シールド部材の外周に固着する工程では、前記一対のカシメ片を、その延出端縁同士が周方向に接近するように変形させるとともに、前記一対のカシメ片の変形に伴って前記凸部を前記凹部内に進入させるようになっており、前記固着部が前記シールド部材に固着された状態では、前記凸部の周面と前記他方のカシメ片の延出端部の周面とが概ね面一状に連なる位置関係となり、前記係止部同士の係止作用によって前記一対のカシメ片が周方向への離間を規制されるようになっているシールドシェルにおいて、前記固着部を前記シールド部材に固着する前の状態では、前記一対のカシメ片のうち少なくとも一方の前記カシメ片は、その係止部を相手側の係止部との係止位置から板厚方向又は前記凹部の開口幅方向へ位置ずれさせるように屈曲した形態に成形されており、前記固着部を前記シールド部材に固着する工程では、前記一対のカシメ片を周方向において正規位置まで接近させた状態において、前記屈曲した形態のカシメ片をその屈曲部が伸びるように変形させることで、前記係止部同士がその板厚範囲内で係止する状態とされているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0015】
<請求項1及び請求項7の発明>
固着部をシールド導電路に固着する際には、一対のカシメ片を周方向に接近させるように変形させることにより、基板部とカシメ片をシールド部材の外周に密着させるとともに、凸部を凹部内に進入させる。このとき、少なくとも一方のカシメ片は、その係止部を相手側の係止部との係止位置から板厚方向又は凹部の開口幅方向へ位置ずれさせるように屈曲した形態に成形されているので、凸部が凹部内に進入するときに、凸部の係止部と凹部の係止部が干渉することはない。凸部が凹部に進入した後は、屈曲した形態のカシメ片をその屈曲部が伸びるように変形させることにより、凸部の係止部と凹部の係止部とを係止させる。すると、この係止部同士の係止作用により、一対のカシメ片が周方向に離間することを規制させ、固着部がシールド部材の外周に固着された状態に保持される。
【0016】
<請求項2の発明>
係止部同士が係止している状態では、凸部側の係止部が凹部の内周縁に対して軸線方向に押圧するように密着しているので、一対のカシメ片の軸線方向へのガタ付きが確実に防止される。
【0017】
<請求項3の発明>
凸部が周方向に突出する形態であることに鑑みて、凸部側のカシメ片を、周方向に見て屈曲した形態としている。このような屈曲形態により、凸部は、その突出寸法が大きくても剛性が高くなるので、不正な変形を来す虞はない。
【0018】
<請求項4の発明>
凸部が折り目に沿って角張ったように屈曲されている場合には、その屈曲部分を伸ばすように凸部を変形させたときに、折り目の部分が稜線状に残り、この稜線状部分やその近傍において凸部の内周面における接触不良を来すことが懸念される。これに対し、本発明では、凸部を湾曲した形態に成形したので、屈曲部を伸ばすように変形させたときに、稜線状の折り目が残る虞がないので、凸部の内周面における接触信頼性に優れている。
【0019】
<請求項5の発明>
凸部を伸ばすように変形させる際には、外周側から凸部を打圧又は押圧するのであるが、本発明によれば、幅方向中央部分を外周側へ膨らませているので、打圧又は押圧する位置は1カ所だけで済む。
【0020】
<請求項6の発明>
シールドシェルをメインシェルとサブシェルとの2つの別部品によって構成しているため、メインシェルとサブシェルとの間で機械的なガタ付きや電気的な接触不良を来すことが懸念される。そこで、本発明では、メインシェルに、固着部に対してシールド部材と共に固着される突起部を形成した。固着部と突起部との固着部分では、機械的に一体化されるとともに、互いに当接した状態に保持されるので、メインシェルとサブシェルとの間における機械的なガタ付きと電気的な接触不良を回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図11を参照して説明する。本実施形態のシールドコネクタAは、シールド導電路Bの端末部(前端部)に接続されるものである。シールド導電路Bは、図10〜12に示すように、被覆電線からなる4本の導体10と、4本の導体10を束ねた状態で包囲する編組線からなる筒状のシールド部材11と、シールド部材11の外周を包囲する筒状の絶縁性のシース12とを備えた周知形態のものである。シールド導電路Bの前端部においては、シース12の前端から前方へ突出したシールド部材11を後方へ折り返し、このシールド部材11の折返部11aをシース12の外周に被せ、シース12の前端から導出している各導体10の被覆を除去した状態となっている。また、シース12には、予め円筒状をなす金属製のスリーブ13が外嵌されており、このスリーブ13がシース12の外周とシールド部材11の折返部11aとの間に介装されている。
【0022】
シールドコネクタAは、4本の導体10の前端部を幅方向(左右方向)において所定のピッチで並列した状態に保持するホルダ20と、各導体10に接続された4つの雌形の端子金具21と、4つの端子金具21を収容するインナハウジング22(本発明の構成要件であるハウジング)と、インナハウジング22を包囲するシールドシェル30と、シールドシェル30を包囲するアウタハウジング23とを備えて構成されている。シールドシェル30には、シールド導電路Bのシールド部材11が電気的導通可能に接続されている。
【0023】
次に、シールドシェル30の構成について詳しく説明する。シールドシェル30は、金属製のメインシェル31と同じく金属製のサブシェル32とを電気的導通可能に組み付けて構成されている。このシールドシェル30には、インナハウジング22を包囲する手段として、後方からインナハウジング22を挿入することが可能な角筒部33が設けられているとともに、シールド部材11に対しその外周を包囲する形態で固着する手段として、角筒部33の後方に配されたオープンバレル状の固着部34が設けられている。
【0024】
メインシェル31は、前後方向に貫通する形態であって横長の形態の角筒部33と、角筒部33の上面壁の後端縁から後方へ突出する突起部35とを備えて構成されている。突起部35は、上面壁の後端縁のうち左右方向中央位置から後方へ突出しており、後方から見た突起部35の形状は、上面側が膨らんだ形態の略円弧形をなすように湾曲している。また、突起部35は、上面壁よりも下方(角筒部33の後端面の開放部36)へは突き出してはいない。上面壁には、斜め下前方へ突出した形態の左右一対のランス37が形成されている。
【0025】
角筒部33の上面壁の前端縁には、その幅方向における中央位置に下方へ突出するストッパ38が形成され、下面壁の前端縁にも、その幅方向における中央位置に上方へ突出するストッパ38が形成されている。また、下面壁には、その後端側領域を全幅に亘って略方形に切欠した形態の切欠部39が形成されている。角筒部33の左右両側壁の下端縁には、前後方向において切欠部39と対応する範囲内において下方へ突出した形態の位置決め用突部40が形成されている。また、位置決め用突部40の内面には、折り返し状の受け部41が形成されている。
【0026】
サブシェル32は、図7に示す所定の形状に打ち抜いた金属板材42に、曲げ加工を施すことによって成形されている。サブシェル32は、方形をなす板状部43と、板状部43の後端縁43Rから後方へ延出した形態の固着部34とを一体に形成したものである。板状部43の左右両側縁部には、浅く凹ませた形態の位置決め部44が形成されている。板状部43の前端縁には左右一対の接触片45が斜め上方へ突出する形態で形成されている。
【0027】
板状部43の後端縁43Rには、固着部34が連なっている。固着部34は、前後方向(シールド導電路Bの軸線方向)の基板部46の左右両側縁から一対の板状をなすカシメ片47,48を周方向へ延出させた形態のオープンバレル状をなしている。この固着部34は、その基板部46の前端を板状部43の後端縁43Rに連ねた形態で、板状部43の後端縁43Rから後方へ突出されている。そして、金属板材42を曲げ加工する前の展開状態では、図7に示すように、一対のカシメ片47,48が板状部43の後端縁43Rに沿って左右方向に延出するように配置されている。また、金属板材42を曲げ加工した後であって固着部34をシールド部材11に固着する前の状態では、図2及び図4に示すように、一対のカシメ片47,48は、基板部46から斜め上方へ延出した向きとされている。
【0028】
一対のカシメ片のうち第1カシメ片47には、その前後方向の延出端縁から周方向へ突出した形態の凸部49が形成されている。凸部49は、延出端縁のうち前後方向における中央位置に配置されている。また、凸部49には、その突出方向(周方向)に沿った前側と後側の両側縁から突出した形態の一対の第1係止部50が形成されている。
【0029】
金属板材42に曲げ加工を施す前の展開状態及びシールド部材11に固着部34を固着した状態では、図7及び図8に示すように、凸部49の突出端部のうち第1係止部50の形成されている領域は、突出端側に向かって幅狭となるような台形をなす。
【0030】
金属板材42を曲げ加工した後であって固着部34をシールド部材11に固着する前の状態では、図4及び図5に示すように、第1カシメ片47のうち凸部49と第1係止部50は、周方向に見て略弧状に湾曲した形態に屈曲成形されている。この凸部49と第1係止部50の湾曲の形態は、凸部49の第1カシメ片47からの突出方向(つまり、周方向)と直交する幅方向における中央部分が外周側へ膨らむような形態である。このように凸部49と第1係止部50を屈曲させたことにより、図9に示すように、第1係止部50を含む凸部49は、その周方向の直交する幅寸法が、後述する凹部51の開口部52の開口幅よりも小さい幅狭の寸法とされている。
【0031】
一対のカシメ片47,48のうち第2カシメ片48には、その前後方向の延出端縁に開口した形態の凹部51が形成されている。凹部51の開口部52には、前後一対の第2係止部53が、第2カシメ片48の延出端縁に沿って突出するように形成されている。前側の第2係止部53は、開口部52の前側の端縁から後方へ突出し、後側の第2係止部53は、開口部52の後側の端縁から前方へ突出しており、この一対の第2係止部53により、凹部51は、その開口部52の開口幅が狭められた形態となっている。第2係止部53の内側(凹部51に臨む側)の縁部は、周方向に対して斜めをなしている。
【0032】
また、第2カシメ片48のうち凹部51を前後から挟む部分は一対のアーム部54となっており、上記した第2係止部53は、アーム部54の先端から突出した形態となっている。そして、凹部51の奥端縁(周方向において開口部52とは反対側の縁部)には、その前端部と後端部を第2係止部53側へ斜めに張り出した形態の前後一対の補強部55が形成されている。この補強部55により、アーム部54の基端部は、幅寸法が拡大されて補強されている。この補強により、アーム部54は、凹部51の開口部52の開口幅を拡大させるような変形を生じ難くなっている。
【0033】
板状部43の左右両側縁における後端部に近い位置には、板状部43と略直角に上方へ延出する形態の方形の第1側板56が一体に形成されている。この第1側板56の前端縁からは、方形の第2側板57が、第1側板56の内面に沿って後方へ折り返し状に延出する形態で一体に形成されている。第2側板57の上端縁(板状部43とは反対側の端縁)は第1側板56の上端縁と同じ高さである。また、第2側板57の下端縁は第1側板56の下端縁(板状部43)よりも高い位置とされている。さらに、第2側板57の後端縁は、第1側板56の後端縁よりも後方に位置している。
【0034】
第2側板57の後端縁からは、方形をなす後壁58が、第2側板57と略直角をなして板状部43の後端縁43Rに沿うように延出する形態で一体に形成されている。後壁58は、前後方向において板状部43の後端縁43Rとほぼ同じ位置に配置されている。後壁58の上端縁(板状部43とは反対側の端縁)は第1側板56及び第2側板57の上端縁と同じ高さとされている。後壁58の下端縁(板状部43側の端縁)は第2側板57の下端縁と同じ高さとされている。
【0035】
金属板材42を曲げ加工する前の展開状態では、図7に示すように、第1側板56が板状部43の側方近傍に位置し、第2側板57が第1側板56の前方に位置し、後壁58が第2側板57の前方に位置する。つまり、第1側板56、第2側板57及び後壁58は、板状部43の後端縁43Rよりも前方(前後方向において固着部34とは反対方向)の領域において、板状部43の側縁に沿って前後方向に連なる形態で配置されている。したがって、サブシェル32に後壁58を形成するに際して、後壁58も、後壁58を支持する第1側板56と第2側板57も、固着部34のカシメ片47,48と干渉することはない。これにより、カシメ片47,48は、板状部43の後端縁43Rの近傍に配置されており、板状部43の後端縁43Rとカシメ片47,48(固着部34)との間に大きなデッドスペースが空くことはない。このような後壁58の形成形態によれば、シールドシェル30の前後長を短くすることができ、ひいては、シールドコネクタAの小型化を図ることができる。
【0036】
次に、シールドコネクタAの組付工程を説明する。シールド導電路Bの各導体10に端子金具21の後端部を接続し、次に、導体10の前端部をホルダ20の溝部に嵌合して、導体10及び端子金具21を左右方向において位置決めする。その後、4つの端子金具21を一斉にインナハウジング22内に挿入し、次いで、インナハウジング22をメインシェル31の角筒部33に後方から挿入する。このとき、メインシェル31にはサブシェル32は組み付けられておらず、メインシェル31の後端の開放部36内に進出するものは存在しないので、インナハウジング22の挿入は支障なく行われる。
【0037】
また、角筒部33に挿入されたインナハウジング22は、その上面の係止孔22aに角筒部33のランス37を係止させることにより抜止めされているとともに、角筒部33の前端縁のストッパ38に突き当たることにより前止まりされている。インナハウジング22を角筒部33に収容した状態では、インナハウジング22から後方へ導出された4本の導体10が角筒部33の後端部によって包囲されるとともに、角筒部33の後方近傍位置に、シールド部材11の折返部11aとスリーブ13が配置される。そして、突起部35が、シールド部材11の折返部11aの外面に接触又は接近して対応する。
【0038】
この後、メインシェル31に対し、サブシェル32を下方から接近させるようにして組み付ける。両シェル31,32を組み付けた状態では、サブシェル32の板状部43が、メインシェル31の切欠部39の開口領域を塞いで、インナハウジング22の外面(下面)に沿った形態となる。また、メインシェル31の位置決め用突部40がサブシェル32の位置決め部44に嵌合することにより、両シェル31,32が前後方向への相対移動を規制される。さらに、受け部41が板状部43の側縁部に対して下から係止することにより、両シェル31,32の上下方向への離間が規制されている。また、サブシェル32の接触片45がメインシェル31の外面に対して弾性的に当接し、両シェル31,32間が電気的導通可能に接続された状態となる。
【0039】
両シェル31,32を組み付けた状態では、角筒部33の後端の開放部36のうち左右方向中央部領域は固着部34とシールド導電路Bによって塞がれた状態となり、開放部36のうち固着部34及びシールド導電路Bと非対応の左右両端部領域は、サブシェル32に形成した後壁58によって塞がれた状態となる。これにより、角筒部33の後端においてる高いシールド性能が発揮される。また、固着部34の基板部46が、シールド導電路Bのうちシールド部材11の折返部11aが露出している部分を突起部35との間で上下に挟むように位置するとともに、両カシメ片47,48が、シールド導電路Bのうちシールド部材11の折返部11aが露出している部分を左右方向に挟むように位置する。
【0040】
この後、アンビルとクリンパを備えた圧着用の自動機(図示せず)を用いて、固着部34とシールド部材11との接続を行う。接続に際しては、固着部34の基板部46をアンビルに載置させるようにして、シールドシェル30とシールド導電路Bをセットする。すると、クリンパが下降して第1カシメ片47の凸部49の先端(上端)と第2カシメ片48の延出端縁に当接する。そして、クリンパの下降動作が進むのに伴い、両カシメ片47,48が、内側へ倒れ込むように変形して、シールド部材11の折返部11aを包んでいく。
【0041】
尚、この過程では、両カシメ片47,48の内周面が、突起部35の左右両側縁に当接するのであるが、このときに、第1カシメ片47の前後方向の延出端縁のうち凸部49よりも前方と後方の領域や、第2カシメ片48の凹部51の開口縁のうち基板部46に最も近い前後方向の奥端縁が、突起部35の側縁に突き当たり、その結果、それ以上のカシメ片47,48の正常な変形が阻害されてしまうことが懸念される。しかし、本実施形態では、第1カシメ片47において突起部35と最初に当接する位置は、第1カシメ片47の延出端縁よりも基板部46側の領域内に設定されており、また、第2カシメ片48において突起部35と最初に当接する位置も、凹部51の奥端縁よりも基板部46側の領域内に設定されている。したがって、カシメ片47,48の延出端縁が突起部35の側縁に突き当たる虞はない。
【0042】
上記のように突起部35に対して両カシメ片47,48が当接した後、両カシメ片47,48は、その延出端縁同士を周方向に接近させるように変形し、変形の終期には、凸部49が凹部51内に進入する。ここで、第1カシメ片47の凸部49と第1係止部50は屈曲した形態に成形されていて、この屈曲形態により、第1係止部50が、第2係止部53との係止位置から板厚方向(径方向)における内側へ変位するとともに、凹部51の開口幅方向へ位置ずれしている。具体的には、図5に示すように、凸部49と第1係止部50は、周方向に見て略弧状に湾曲するように屈曲されることにより、凹部51の開口部52を通過可能な幅狭の形態とされている。したがって、両カシメ47,48片が周方向に接近する過程では、図9に示すように、凸部49と第1係止部50は、第2係止部53と干渉することなく、凹部51内に進入することができる。
【0043】
凸部49が凹部51内に進入したところで、クリンパの下降が停止して、両カシメ片47,48の周方向への変形が終了する。これにより、シールド部材11の折返部11aは、基板部46及び両カシメ片47,48によってスリーブ13の外周に強く押圧され、シールド部材11とサブシェル32(シールドシェル30)とが、電気的導通可能に接続され、且つ摩擦により離脱を規制された状態に固着される。
【0044】
このとき、メインシェル31の突起部35が、シールド部材11の折返部11aと一緒に両カシメ片47,48とスリーブ13との間で強固に挟み付けられる。換言すると、突起部35は、固着部34に対しシールド部材11と共に固着される。これにより、突起部35と両カシメ片47,48とが相対変位を規制された状態に固定され、メインシェル31とサブシェル32はガタ付きなく組付け状態に保持される。また、突起部35と両カシメ片47,48とは直接当接した状態に固定されるので、メインシェル31とサブシェル32とが確実に電気的導通可能に接続された状態に保持される。
【0045】
両カシメ片47,48を変形させてシールド部材11に固着した後は、クリンパ内に組み込んだ加圧部材(図示せず)で凸部49の外周面を打圧又は押圧する。このとき、凸部49と第1係止部50は、凸部49の突出方向と直交する幅方向(前後方向)における中央部分が外周側へ膨らむような形態で屈曲しているので、凸部49の外周面における打圧位置又は押圧位置は、幅方向中央部の1カ所だけであり、この幅方向中央部の周方向に沿った領域を打圧又は押圧することになる。また、図8及び図9に示すように、凸部49の一部、第1係止部50及び凹部51の形成領域にはその内周側から突起部35が対応するように位置し、前側の第1係止部50の前端と後側の第1係止部50の後端が突起部35の外周面に当接している。したがって、凸部49を打圧又は押圧すると、湾曲している凸部49と第1係止部50は、加圧部材と突起部35との間で挟み付けられることによって伸びるように(曲率が小さくなるように)変形させられる。
【0046】
湾曲している凸部49と第1係止部50が伸びるように変形する過程では、凸部49と第1係止部50において変形に伴って生じる応力により、前後両第1係止部50が、突起部35の外周面に対して摺接する状態を保ちながら、突起部35を内周側へ弾性的に押圧する。したがって、スリーブ13と突起部35との間で挟まれている折返部11aの径方向の寸法にバラツキがあっても、折返部11aが突起部35とスリーブ13との間で確実に挟み付けられ、突起部35と折返部11aとが確実に導通可能に接続されるとともに、突起部35と固着部34とが確実に導通可能に接続される。したがって、シールド部材11とメインシェル31(突起部35の形成母体)とサブシェル32(固着部34の形成母体)とは、互いに電気的導通可能に接続された状態となり、ひいては、高いシールド性能が発揮される。
【0047】
伸ばされるように変形した凸部49と第1係止部50は、その周面をアーム部54及び第2カシメ片48の周面に対して概ね面一状に連なる形態(周方向にほぼ滑らかに連なる形態)となり、突起部35の外周面に沿った形状(突起部35の外周面に対して面当たり状に当接する形状)となる。尚、両アーム部54と第2係止部53も、突起部35の外周面に対して面当たり状に当接している。
【0048】
凸部49と第1係止部50が伸ばされると、前側(図8における左側)の第1係止部50が、前側の第2係止部53に対し、両係止部50,53の板厚の範囲内で周方向に突き当たるように係止するとともに、後側の第1係止部50が、後側の第2係止部53に対し、両係止部50,53の板厚の範囲内で周方向に突き当たるように係止する。この前後2カ所の係止作用により、両カシメ片47,48が周方向(図8における上下方向)へ離間することが規制され、ひいては、固着部34の拡開変形が防止される。また、凸部49は凹部51内に進入した状態に保持される。これにより、シールド部材11に対して固着部34が固着された状態に保持される。
【0049】
また、凸部49と第1係止部50が伸びるように変形して両係止部50,53が係止している状態では、図8に示すように、前側の第1係止部50の前端縁が、凹部51の内周縁のうち前側の縁部に対して強く押圧した状態になるとともに、後側の第1係止部50の後端縁が、凹部51の内周縁のうち後側の縁部に対して強く押圧した状態となる。このように、第1係止部50が凹部51の内周縁に対して軸線方向(前後方向)に押圧するように密着しているので、一対のカシメ片47,48の軸線方向へのガタ付きが確実に防止されている。
【0050】
また、図8及び図9に示すように、周方向と軸線方向の両方向において、凸部49のうち固着状態において凹部51内に進入する領域、第1係止部50の全体、凹部51の全体、両アーム部54の全体、第2係止部53の全体は、突起部35の形成範囲内に配置されている。これにより、シールド部材11を構成する編組線が第1カシメ片47と第2カシメ片48との間で噛み込む虞のある部分(即ち、開口部52において凸部49と第2係止部53とが接近する部分、凹部51内において第1係止部50と第2係止部53とが係止する部分、及び、第1係止部50と凹部51とが密着する部分)は、いずれも、突起部35の形成範囲なにあり、突起部35によってシールド部材11(編組線)から隔絶された状態となっている。したがって、固着部34とシールド部材11とを固着する際に、第1カシメ片47と第2カシメ片48との間にシールド部材11(編組線)が噛み込む虞はない。
【0051】
また、第1カシメ片47を屈曲形態に成形するに際しては、凸部49が第1カシメ片47の延出端縁から周方向に突出する形態であることに鑑みて、第1カシメ片47を、周方向に見て屈曲した形態としている。このような屈曲形態により、凸部49は、その突出寸法が大きくても剛性が高くなるので、他部材の干渉などに起因して不正な変形を来す、という虞はない。
【0052】
また、凸部が周方向の折り目に沿って角張ったように屈曲されている場合には、その屈曲部分を伸ばすように凸部を変形させたときに、折り目の部分が稜線状に残り、この稜線状部分やその近傍において凸部の内周面における突起部との接触不良を来すことが懸念される。これに対し、本実施形態では、凸部49を湾曲した形態に成形したので、屈曲部を伸ばすように変形させたときに、稜線状の折り目が残る虞がない。したがって、凸部49の内周面における突起部35との接触信頼性に優れている。
【0053】
<実施形態2>
次に、本発明を具体化した実施形態2を図13を参照して説明する。本実施形態2は、凸部62と凹部69の係止形態を上記実施形態1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施形態1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0054】
第1カシメ片61における凸部62と第1係止部63の係止状態における形状は、上記実施形態1と同様に、凸部62の突出端に向かって幅狭となる台形をなしており、第1係止部63の軸線方向に沿った縁部は、周方向と直角な第1係止縁部64となっている。第2カシメ片65においては、補強部66を含むアーム部67の形状は実施形態1と同じであるが、第2係止部68のうち凹部69内に臨む縁部は、軸線方向(周方向と直角な方向)の第2係止縁部70となっている。
【0055】
第1係止部63と第2係止部68が周方向に係止している状態では、第1係止縁部64と第2係止縁部70とが軸線方向における全領域に亘って係止し、また、第1係止部63の斜辺の縁部が補強部66の斜めの縁部に当接している。尚、前側の第1係止部63の前端縁が凹部69の内周縁のうち前側の縁部71に当接するとともに、後側の第1係止部63の後端縁が凹部69の内周縁のうち後側の縁部71に当接する当接形態は、上記実施形態1と同じである。
【0056】
<実施形態3>
次に、本発明を具体化した実施形態3を図14を参照して説明する。本実施形態3は、凸部82と凹部85の形状を上記実施形態1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施形態1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0057】
凸部82の前側の縁部と後側の縁部には、第1カシメ片81の延出端縁からの突出方向に間隔を空けた二対の第1係止部83が突出形成されている。一方の凹部85には、その開口部86の開口幅を狭めるように第2カシメ片84の延出端縁に沿って突出する前後一対の第2係止部87と、凹部85の内周縁のうち前側の縁部と後側の縁部から突出する一対の第3係止部88とが形成されている。二対の第1係止部83は、第2係止部87と第3係止部88に係止し、これらの係止作用により、両カシメ片81,85は周方向への離間を規制される。
【0058】
<実施形態4>
次に、本発明を具体化した実施形態4を図15を参照して説明する。本実施形態4は、前側の第1係止部91の前端縁と凹部92の内周縁のうち前側の縁部との当接形態、及び後側の第1係止部91の後端縁と凹部92の内周縁のうち後側の縁部との当接形態を上記実施形態1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施形態1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0059】
図15は、第1係止部91の端縁と凹部92の縁部との当接部分を軸線方向に見た状態をあらわす。第1係止部91の端縁と凹部92の縁部は、いずれも、軸線方向に見て周方向に複数の弧状部が連続する波形に成形されており、第1係止部91の端縁の弧状部と凹部92の縁部の弧状部は、互いに1/2波長分だけずれた形態で当接している。かかる構成としたことにより、第1係止部91が凹部92に対し正規位置から板厚方向(図15における上下方向)、即ち外周側又は内周側へ位置ずれしたとしても、第1係止部91の端縁と凹部92の縁部との当接状態が確実に保持される。
【0060】
<実施形態5>
次に、本発明を具体化した実施形態5を図16〜図20を参照して説明する。本実施形態5は、サブシェル132の固着部134における一対のカシメ片147,148の形状を上記実施形態1のサブシェル32とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施形態1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0061】
一対のカシメ片のうち第1カシメ片147(本発明の構成要件である一方のカシメ片)には、その前後方向の延出端縁から周方向へ片持ち状に突出した形態の板状の凸部149が形成されている。凸部149は、延出端縁のうち前後方向における中央位置に配置され、その突出方向(周方向)に沿った前側と後側の両側縁から突出するように形成された一対の第1係止部150を有している。周方向(凸部149の突出方向)における第1係止部150の形成領域は、凸部149の突出端側のほぼ1/2の領域である。また、一対の第1係止部150は、周方向の仮想軸線(図示せず)に関して前後対称である。
【0062】
金属板材142に曲げ加工を施す前の展開状態及びシールド部材11に固着部134を固着した状態では、図19及び図20に示すように、凸部149のうち第1係止部150の形成されている領域は、突出端側に向かって次第に幅広となるような台形をなしている。つまり、第1係止部150には、周方向に対して傾斜した第1傾斜縁部150aが形成されている。また、第1係止部150には、周方向と直角な方向であって、第1カシメ片147の延出端縁と対向するように配された第1係止縁部150bが形成されている。さらに、凸部149の突出寸法(周方向の寸法)は、上記した突起部35の突出方向と直角な幅寸法(周方向の寸法)よりも小さい寸法とされている。
【0063】
金属板材142を曲げ加工した後であって固着部134をシールド部材11に固着する前の状態では、図16及び図17に示すように、第1カシメ片147のうち第1係止部150を含む凸部149は、周方向に見て略弧状(概ね半円弧形)に湾曲した形態に屈曲成形されている。この凸部149の湾曲の形態は、凸部149の第1カシメ片147からの突出方向(つまり、周方向)と直交する幅方向における中央部分が外周側へ膨らむような形態である。このように凸部149を屈曲させたことにより、第1係止部150を含む凸部149は、その周方向の直交する幅寸法が、後述する凹部151の開口部152の開口幅よりも小さい幅狭の寸法とされている。
【0064】
一対のカシメ片147,148のうち第2カシメ片148(本発明の構成要件である他方のカシメ片)には、その前後方向の延出端縁に開口した形態の凹部151が形成されている。凹部151の開口部152には、前後一対の第2係止部153が、第2カシメ片148の延出端縁に沿って突出するように形成されている。前側の第2係止部153は、開口部152の前側の端縁から後方へ突出し、後側の第2係止部153は、開口部152の後側の端縁から前方へ突出しており、この一対の第2係止部153により、凹部151は、その開口部152の開口幅が狭められた形態となっている。周方向(凹部151の奥行き方向)における第2係止部153の形成領域は、凹部151の奥行きのうち開口部152側の約1/2の領域となっている。また、第2カシメ片148のうち凹部151を前後から挟む部分は一対のアーム部154となっており、上記した第2係止部153は、アーム部154の先端から突出した形態となっている。
【0065】
凹部151の開口縁のうち第2係止部153よりも基板部146側(開口部152と反対側)には、周方向に対して傾斜した前後一対の第2傾斜縁部155aが形成されている。この第2傾斜縁部155aの傾斜角度は、第1係止部150を含む凸部149が伸ばされて第1係止部150と第2係止部153が係止する状態(展開状態)において、第1傾斜縁部150aとほぼ同じ角度とされている。また、第2係止部153における基板部146側の縁部は、周方向と直角な第2係止縁部155bとなっている。さらに、開口部152の開口幅は、凸部149のうち第1係止部150の形成されていない領域の幅寸法とほぼ同じ寸法である。また、凹部151の奥行き寸法(第2カシメ片148の延出端縁から凹部151の基板部146側の奥端縁までの周方向の寸法)は、凸部149の周方向の寸法とほぼ同じ寸法であり、上記した突起部35の突出方向と直角な幅寸法(周方向の寸法)よりも小さい寸法とされている。
【0066】
アンビルとクリンパを備えた自動圧着機(図示せず)を用いて、固着部134とシールド部材11とを接続する過程では、突起部35に対して両カシメ片147,148が当接し、その後、両カシメ片147,148は、その延出端縁同士を周方向に接近させるように更に変形を続け、変形の終期には、凸部149が凹部151内に進入する。ここで、第1カシメ片147の第1係止部150を含む凸部149は屈曲した形態に成形されていて、この屈曲形態により、第1係止部150が、第2係止部153との係止位置から板厚方向(径方向)における内側へ変位するとともに、凹部151の開口幅方向へ位置ずれしている。具体的には、図17に示すように、凸部149は、周方向に見て略弧状に湾曲するように屈曲されることにより、凹部151の開口部152を通過可能な幅狭の形態とされている。したがって、両カシメ147,148片が周方向に接近する過程では、凸部149は、第2係止部153と干渉することなく、凹部151内に進入することができる。
【0067】
凸部149が凹部151内に進入し、第1係止縁部150bが周方向において第2係止縁部155bと並ぶ位置又はそれよりも僅かに凹部151の奥側の位置まで到達すると、クリンパの下降が停止して、両カシメ片147,148の周方向への変形(即ち、固着部134の縮径変形)が終了する。これにより、シールド部材11の折返部11aは、基板部146及び両カシメ片147,148によってスリーブ13の外周に強く押圧され、シールド部材11とサブシェル132(シールドシェル30)とが、電気的導通可能に接続され、且つ摩擦により離脱を規制された状態に固着される。
【0068】
両カシメ片147,148を変形させてシールド部材11に固着した後は、クリンパ内に組み込んだ加圧部材(図示せず)で凸部149の外周面を打圧又は押圧する。このとき、第1係止部150を含む凸部149は、凸部149の突出方向と直交する幅方向(前後方向)における中央部分が外周側へ膨らむような形態で屈曲しているので、凸部149の外周面における打圧位置又は押圧位置は、幅方向中央部の1カ所だけであり、この幅方向中央部の周方向に沿った領域を打圧又は押圧することになる。
【0069】
また、第1係止部150を含む凸部149の全体、凹部151の開口領域全体、及び前後両両アーム部154は、それよりも内周側の突起部35の形成範囲内に含まれるように位置し、前側の第1係止部150の前端と後側の第1係止部150の後端が突起部35の外周面に当接している。したがって、凸部149を打圧又は押圧すると、湾曲している凸部149は、加圧部材と突起部35との間で径方向に挟み付けられることによって湾曲が伸びるように(曲率が小さくなるように)変形させられる。
【0070】
湾曲している凸部149が伸びるように変形する過程では、凸部149は、前後両第1係止部150において突起部35の外周面上を摺接する状態を終始保ちながら、全体として径方向内側(突起部35に接近する方向)へ変位する。同じく凸部149が変形する過程では、凸部149において変形に伴って生じる応力により、前後両第1係止部150が突起部35を内周側へ弾性的に押圧する状態を保つ。したがって、スリーブ13と突起部35との間で挟まれている折返部11aの径方向の厚さ寸法にバラツキがあっても、折返部11aが突起部35とスリーブ13との間で確実に挟み付けられ、突起部35と折返部11aとが確実に導通可能に接続されるとともに、突起部35と固着部134(凸部149)とが確実に導通可能に接続される。したがって、シールド部材11とメインシェル31(突起部35の形成母体)とサブシェル132(固着部134の形成母体)とは、互いに電気的導通可能に接続された状態となり、ひいては、高いシールド性能が発揮される。
【0071】
伸ばされるように変形した凸部149は、その周面をアーム部154及び第2カシメ片148の周面に対して概ね面一状に連なる形態(周方向にほぼ滑らかに連なる形態)となり、突起部35の外周面に沿った形状(突起部35の外周面に対して概ね面当たり状に当接する形状)となる。尚、両アーム部154と第2係止部153も、突起部35の外周面に対して面当たり状に当接している。
【0072】
凸部149が伸ばされると、前側(図20における左側)の第1係止部150の第1係止縁部150bが、前側の第2係止部153の第2係止縁部155bに対し、両係止部150,153の板厚の範囲内で周方向に突き当たるように係止するとともに、後側の第1係止部150の第1係止縁部150bが、後側の第2係止部153の第2係止縁部155bに対し、両係止部150,153の板厚の範囲内で周方向に突き当たるように係止する。この前後2カ所の係止作用により、両カシメ片147,148が周方向(図20における上下方向)へ離間することが規制され、ひいては、固着部134の拡開変形が防止される。
【0073】
また、凸部149が伸ばされると、前側の第1係止部150の第1傾斜縁部150aが、凹部151の前側の傾斜縁部155aに対し、両係止部150,153の板厚の範囲内で周方向に突き当たるように係止するとともに、後側の第1係止部150の第1傾斜縁部150aが、凹部の後側の傾斜縁部155aに対し、両係止部150,153の板厚の範囲内で周方向に突き当たるように係止する。この前後2カ所の係止作用によっても、両カシメ片147,148の周方向への離間が規制され、固着部134の拡開変形が防止される。
【0074】
上述のように、本実施形態においては、第1傾斜縁部150aと第2傾斜縁部155aは、いずれも周方向に対して傾斜しているので、凸部149が伸ばされるのに伴って前後両第1傾斜縁部150aの間隔が次第に拡大する過程の終期では、第1傾斜縁部150aと第2傾斜縁部155aとの当接に起因して楔作用が生じる。この楔作用により、凸部149が凹部151に対して開口部側へ戻る方向へ変位すること(即ち、両カシメ片147,148が周方向の離間して固着部134の径が拡大すること)が防止される。また、第1傾斜縁部150aと第2傾斜縁部155aは、いずれも、軸線方向と直角な向きに近い角度なので、両傾斜縁部150a,155aの当接作用により、一対のカシメ片147,148の軸線方向へのガタ付きも確実に防止されている。
【0075】
尚、凸部149が伸ばされる過程の終期においては、楔作用によって両カシメ片147,148が接近する方向へ僅かに相対変位する場合があるため、凸部149の延出端縁と凹部151の奥端縁との間、及び第1カシメ片147の延出端縁と第2カシメ片148の延出端縁との間には、僅かなクリアランスを空けておくことが好ましい。
【0076】
また、図20に示すように、周方向と軸線方向の両方向において、第1係止部150を含む凸部149の全体、凹部151の開口領域の全体、第2係止部553を含む両アーム部154の全体は、いずれも突起部35の形成範囲内に配置されている。この配置は、固着部134をシールド部材11と突起部35に固着する過程、及び凸部149を伸ばすように変形させる過程において、シールド部材11を構成する編組線が第1カシメ片147と第2カシメ片148との間に噛み込む虞のある部分(即ち、第1カシメ片147の延出端縁と第2カシメ片148の延出端縁との接近部分、凸部149の延出端縁と凹部151の奥端縁との接近部分、開口部152において凸部149が進入する部分、凹部151内において第1係止部150(第1係止縁部150b)と第2係止部153(第2係止縁部155b)とが接近して係止する部分、及び、第1傾斜縁部150aと第2傾斜縁部155aとが接近して係止する部分)は、いずれも、突起部35の形成範囲内にあり、突起部35によってシールド部材11(編組線)から隔絶された状態となっている。したがって、固着部134とシールド部材11とを固着する際に、第1カシメ片147と第2カシメ片148との間にシールド部材(編組線)が噛み込む虞はない。
【0077】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、凸部と第1係止部の両方を曲げたが、第1カシメ片の屈曲形態としては、凸部は曲げずに、第1係止部のみを曲げてもよい。
(2)上記実施形態では、第1カシメ片を湾曲させるように屈曲させたが、第1カシメ片の屈曲の仕方としては、直線状に折り目に沿って角張った形態(例えば、三角形や台形など)としてもよい。
(3)上記実施形態では、凸部の幅方向(凸部の突出方向と直交する方向)における中央部分が外周側へ膨らむような形態で第1カシメ片を屈曲させたが、第1カシメ片の屈曲形態としては、凸部の幅方向中央部分が内周側へ膨らむような形態で屈曲させてもよく、周方向に見て波形をなすような形態で屈曲させてもよい。
(4)上記実施形態では、第1カシメ片を周方向に見て湾曲した形態に屈曲さたが、これに限らず、第1カシメ片を、軸線方向(凸部の延出方向と交差する方向)に見て屈曲するように内周側又は外周側へ曲げて、第1係止部を板厚方向へ位置ずれさせてもよい。この場合、凸部の全体が板厚方向へ変位してもよく、凸部の一部のみが板厚方向へ変位してもよく、凸部の全体と第1カシメ片の延出端部が板厚方向へ変位してもよい。
(5)上記実施形態では、一対のカシメ片のうち第1カシメ片のみを屈曲させたが、これに替えて、第1カシメ片と第2カシメ片の両方を屈曲させてもよく、第2カシメ片のみを屈曲させてもよい。
(5−1)第2カシメ片の屈曲形態としては、凹部の開口部の開口幅を拡げる形態がある。一例としては、一対の第2係止部を、その基端部において周方向の折り目に沿って板厚方向(外周側又は内周側)へ屈曲(位置ずれ)させる形態がある。この場合、一対の第2係止部の変位方向は、互いに同じ方向でもよく、互いに違いに逆方向でもよい。
(5−2)第2カシメ片の屈曲形態としては、凹部の開口部の開口幅はそのままで、第2カシメ片の延出端部を、軸線方向に見て屈曲させることにより、第2係止部を板厚方向(外周側又は内周側)へ屈曲(位置ずれ)させてもよい。この場合、アーム部の一部のみが板厚方向へ変位するようにしてもよく、アーム部の全体が板厚方向へ変位するようにしてもよく、アーム部の全体と第2カシメ片の延出端部が板厚方向へ変位するようにしてもよい。また、アーム部のみが変位する場合において、板厚方向における一対のアーム部の変位の向きは、互いに同じ方向(外周側又は内周側)でもよく、互いに逆方向でもよい。
(6)上記実施形態では第1係止部を凸部の前側の縁部と後側の縁部の両方に形成したが、第1係止部は、凸部の前後いずれか一方の縁部のみに形成されていてもよい。
(7)上記実施形態では第2係止部を凹部の開口部における前側の端縁と後側の端縁の両方に形成したが、第2係止部は、凹部の開口部における前後いずれか一方の端縁のみに形成されていてもよい。
(8)上記実施形態では、係止部同士が係止する状態において、第1係止部が凹部の内周縁に対して軸線方向に押圧するように密着するようにしたが、係止部同士が係止する状態において、第1係止部が凹部の内周縁から離間するような形態であってもよい。
(9)上記実施形態3では、1つの凸部に二対の第1係止部が形成されていたが、この実施形態3の変形例として、1つの凸部に3対以上の数の第1係止部が形成されていてもよい。
(10)上記実施形態ではシールド導電路の導体を4本としたが、本発明は、1本のシールド導電路における導体の本数が3本以下又は5本以上である場合にも適用できる。
(11)上記実施形態ではシールドシェルをメインシェルとサブシェルとの2部品を組み付けて構成したが、シールドシェルは、単一部品からなるものであってもよい。
(12)上記実施形態では、シールドコネクタが雌形の端子金具を有する雌形のコネクタである場合について説明したが、本発明は、雄形の端子金具を有する雄形のシールドコネクタにも適用できる。
(13)上記実施形態では、シールド部材が編組線である場合について説明したが、本発明は、シールド部材が金属箔である場合にも適用できる。
(14)上記実施形態では、凸部、第1係止部、凹部、第2係止部及びアーム部の形成領域にその内周側から突起部が対応するように位置したが、これらの形成領域には、突起部が対応せずに、シールド部材の折返部が対応するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】実施形態1の分解斜視図
【図2】メインシェルにサブシェルを組み付けた状態をあらわす斜視図
【図3】メインシェルの斜視図
【図4】サブシェルの斜視図
【図5】凸部と第1係止部を周方向に見た状態をあらわす部分拡大平面図
【図6】凸部と第1係止部を側方から見た状態をあらわす部分拡大側面図
【図7】サブシェルの展開図
【図8】第1係止部と第2係止部が係止している状態をあらわす部分拡大平面図
【図9】両カシメ片を変形させる過程で、凸部と第1係止部が凹部内に進入した状態をあらわす部分拡大平面図
【図10】シールドコネクタをシールド導電路の軸線方向に沿って縦に切断した状態をあらわす断面図
【図11】シールドコネクタをシールド導電路の軸線方向に沿って水平に切断した状態をあらわす断面図
【図12】シールド部材と固着部との固着部分を、ハッチングを省略してあらわした断面図
【図13】実施形態2の部分拡大平面図
【図14】実施形態3の部分拡大平面図
【図15】実施形態4をあらわす部分拡大図
【図16】実施形態5のサブシェルの斜視図
【図17】凸部と第1係止部を周方向に見た状態をあらわす部分拡大平面図
【図18】凸部と第1係止部を側方から見た状態をあらわす部分拡大側面図
【図19】サブシェルの展開図
【図20】第1係止部と第2係止部が係止している状態をあらわす部分拡大平面図
【符号の説明】
【0079】
A…シールドコネクタ
B…シールド導電路
10…導体
11…シールド部材
21…端子金具
22…インナハウジング(ハウジング)
30…シールドシェル
31…メインシェル
32…サブシェル
34…固着部
35…突起部
46…基板部
47…第1カシメ片(凸部側のカシメ片)
48…第2カシメ片(凹部側のカシメ片)
49…凸部
50…第1係止部
51…凹部
52…開口部
53…第2係止部
61,81,147…第1カシメ片(凸部側のカシメ片)
62,82,149…凸部
63,83,91,150…第1係止部
65,84,148…第2カシメ片(凹部側のカシメ片)
68,87,153…第2係止部
69,85,92,151…凹部
86,152…開口部
134…固着部
146…基板部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体をシールド部材で包囲した形態のシールド導電路の端末に接続されるシールドコネクタであって、
前記導体に接続された端子金具を収容するハウジングと、
前記ハウジングを包囲するシールドシェルとを備え、
前記シールドシェルには、前記シールド部材に対しその外周を包囲する形態で固着する手段として、基板部の両側縁から一対の板状をなすカシメ片を周方向へ延出させた形態のオープンバレル状の固着部が形成され、
一方の前記カシメ片には、その延出端縁から周方向へ突出した形態の凸部が形成され、
前記凸部には、その突出方向に沿った側縁から突出した形態の係止部が形成され、
他方の前記カシメ片には、その延出端縁に開口した形態の凹部が形成され、
前記凹部の開口部には、前記他方のカシメ片の延出端縁に沿って突出した形態の係止部が形成され、
前記固着部を前記シールド部材の外周に固着する工程では、前記一対のカシメ片を、その延出端縁同士が周方向に接近するように変形させるとともに、前記一対のカシメ片の変形に伴って前記凸部を前記凹部内に進入させるようになっており、
前記固着部が前記シールド部材に固着された状態では、前記凸部の周面と前記他方のカシメ片の延出端部の周面とが概ね面一状に連なる位置関係となり、前記係止部同士の係止作用によって前記一対のカシメ片が周方向への離間を規制されるようになっているシールドコネクタにおいて、
前記固着部を前記シールド部材に固着する前の状態では、前記一対のカシメ片のうち少なくとも一方の前記カシメ片は、その係止部を相手側の係止部との係止位置から板厚方向又は前記凹部の開口幅方向へ位置ずれさせるように屈曲した形態に成形されており、
前記固着部を前記シールド部材に固着する工程では、前記一対のカシメ片を周方向において正規位置まで接近させた状態において、前記屈曲した形態のカシメ片をその屈曲部が伸びるように変形させることで、前記係止部同士がその板厚範囲内で係止する状態とされていることを特徴とするシールドコネクタ。
【請求項2】
前記係止部同士が係止している状態では、前記凸部側の前記係止部が前記凹部の内周縁に対して軸線方向に押圧するように密着していることを特徴とする請求項1記載のシールドコネクタ。
【請求項3】
前記凸部の形成されている側の前記カシメ片は、周方向に見て前記凸部が屈曲した形態に成形され、
前記凸部が、前記凹部の開口部を通過可能な幅狭の形態とされていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のシールドコネクタ。
【請求項4】
前記凸部が、周方向に見て略弧状に湾曲した形態に成形されていることを特徴とする請求項3記載のシールドコネクタ。
【請求項5】
前記凸部は、その突出方向と直交する幅方向における中央部分が外周側へ膨らむような形態で屈曲した形態に成形されていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のシールドコネクタ。
【請求項6】
前記シールドシェルが、前記ハウジングを後方から収容可能な角筒状をなすメインシェルと、後端部に前記固着部を備えたサブシェルとを電気的導通可能に組み付けて構成されており、
前記メインシェルには、前記固着部に対し前記シールド部材と共に固着される突起部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のシールドコネクタ。
【請求項7】
導体をシールド部材で包囲した形態のシールド導電路の端末に接続されたシールドコネクタにおいて、前記導体に接続した端子金具が収容されているハウジングを包囲するシールドシェルであり、
前記シールド部材に対しその外周を包囲する形態で固着する手段として、基板部の両側縁から一対の板状をなすカシメ片を周方向へ延出させた形態のオープンバレル状の固着部を備えており、
一方の前記カシメ片には、その延出端縁から周方向へ突出した形態の凸部が形成され、
前記凸部には、その突出方向に沿った側縁から突出した形態の係止部が形成され、
他方の前記カシメ片には、その延出端縁に開口した形態の凹部が形成され、
前記凹部の開口部には、前記他方のカシメ片の延出端縁に沿って突出した形態の係止部が形成され、
前記固着部を前記シールド部材の外周に固着する工程では、前記一対のカシメ片を、その延出端縁同士が周方向に接近するように変形させるとともに、前記一対のカシメ片の変形に伴って前記凸部を前記凹部内に進入させるようになっており、
前記固着部が前記シールド部材に固着された状態では、前記凸部の周面と前記他方のカシメ片の延出端部の周面とが概ね面一状に連なる位置関係となり、前記係止部同士の係止作用によって前記一対のカシメ片が周方向への離間を規制されるようになっているシールドシェルにおいて、
前記固着部を前記シールド部材に固着する前の状態では、前記一対のカシメ片のうち少なくとも一方の前記カシメ片は、その係止部を相手側の係止部との係止位置から板厚方向又は前記凹部の開口幅方向へ位置ずれさせるように屈曲した形態に成形されており、
前記固着部を前記シールド部材に固着する工程では、前記一対のカシメ片を周方向において正規位置まで接近させた状態において、前記屈曲した形態のカシメ片をその屈曲部が伸びるように変形させることで、前記係止部同士がその板厚範囲内で係止する状態とされていることを特徴とするシールドシェル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−182647(P2010−182647A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27739(P2009−27739)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】