説明

シールドコネクタ

【課題】シールド性能を向上させることができるとともに、シールドコネクタの構造を簡素化することができるシールドコネクタを提供すること。
【解決手段】相手側のシールドコネクタ50と接続可能なコネクタ接続部35が、導電性のインバータカバー31から外側へ突設され、コネクタ接続部35はインバータカバー31と一体成形されている。相手側のシールドコネクタ50がコネクタ接続部35に接続された状態で、シールド部Sとコネクタ接続部35とが導通接続される。インバータカバー31の内側には、金属端子36を保持する絶縁部材37が、コネクタ接続部35内に金属端子36が露出するようにコネクタ接続部35内に挿入された状態で固定されている。さらに、インバータカバー31は、コネクタ接続部35を介してシールド部Sと導通接続するアース部となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド部を有する相手側のシールドコネクタが接続される機器側のシールドコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車等に搭載される電動圧縮機は、例えば、インバータが外部から発せられるノイズの影響により誤作動を起こし、正常に運転できなくなる場合がある。そこで、電気自動車等において、外部から発せられるノイズによってインバータが影響を受けることを抑制するために、電動圧縮機には、シールド電線と接続されるシールドコネクタが設けられている。このようなシールドコネクタとしては、例えば、特許文献1に記載されているものがある。特許文献1のシールドコネクタでは、絶縁樹脂製の略長方形状のコネクタハウジングがねじ部材によって車載電気機器のコネクタ取付部(機器ケース)に固定されている。コネクタ取付部は、導電材料で形成された車体フレーム等の構造材で、表面がシールド電線のシールド部(相手側のシールドコネクタのシールド部)と導通接続するアース面となっている。
【0003】
コネクタハウジングは、シールド電線と接続するためのシールド電線用ボス部を備えている。シールド電線用ボス部は、機器内の金属端子に接続された雌型の接続端子を収容する略円筒状の内筒部と、該内筒部の周囲に金属シェルの円筒部を挿通する隙間を区画形成する外筒部とからなる。金属シェルは、シールド電線のシールド部と導通接続される円筒部と、該円筒部の基端から外径方向に張り出したアース接続用鍔部とを、金属板のプレス成形により形成したものである。アース接続用鍔部には、ねじ部材を挿通するねじ挿通孔が形成されている。ねじ挿通孔の内径は、ねじ部材の外径よりも大きく設定されており、ねじ挿通孔の内径とねじ部材の外径との間には、鍔付き円筒状のカラーが嵌合装着される。カラーの鍔部は、ねじ部材がねじ挿通孔に挿通されると、ねじ部材の頭部内側と接触し、カラーがコネクタ取付部側へと押圧される。アース接続用鍔部は、コネクタハウジングとコネクタ取付部との間にねじ部材によって共締めされることで、カラーを介してコネクタ取付部のアース面に押圧される。
【0004】
シールド電線をシールド電線用ボス部に接続すると、シールド電線のシールド部と金属シェルの円筒部とが導通接続され、外部からシールド電線へ流入したノイズが、シールド部からアース接続用鍔部を介してコネクタ取付部へと流れる。その結果、ノイズが機器側へ流れ込むことを抑制している。
【特許文献1】特開2002−313453号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のシールドコネクタでは、シールド部とコネクタ取付部とを導通接続させるために、アース接続用鍔部を設ける必要があるとともに、アース接続用鍔部をコネクタハウジングとコネクタ取付部との間に共締めするためのねじ部材が必要となる。さらには、アース接続用鍔部をコネクタ取付部におけるアース面に確実に接触させるために、アース接続用鍔部をコネクタ取付部におけるアース面に押圧するカラーが必要となる。このため、シールドコネクタにおける部品点数が多くなり、シールドコネクタの構造が複雑化してしまう。また、シールド電線へ流入したノイズをコネクタ取付部へ流すために、シールド部からアース接続用鍔部を介してコネクタ取付部へノイズを流す必要があるため、アース接続用鍔部を介す分だけノイズをコネクタ取付部へ流す際の接触抵抗が増してしまい、シールド性能が低下してしまう。
【0006】
本発明の目的は、シールド性能を向上させることができるとともに、シールドコネクタの構造を簡素化することができるシールドコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、シールド部を有する相手側のシールドコネクタが接続される機器側のシールドコネクタであって、前記機器における導電性の機器ケースには、前記相手側のシールドコネクタと接続可能なコネクタ接続部が前記機器ケースから外側へ突設され、前記コネクタ接続部は前記機器ケースに一体成形されるとともに、前記相手側のシールドコネクタが前記コネクタ接続部に接続された状態で前記シールド部と導通接続され、前記機器ケースの内側には、前記相手側のシールドコネクタの接続端子と接続される金属端子を保持した絶縁部材が、前記コネクタ接続部内に前記金属端子が露出するように前記コネクタ接続部内に挿入された状態で固定され、さらに、前記機器ケースが、前記コネクタ接続部を介して前記シールド部と導通接続するアース部となっていることを要旨とする。
【0008】
この発明によれば、相手側のシールドコネクタがコネクタ接続部に接続された状態で、シールド部とコネクタ接続部とが接触することにより、コネクタ接続部を介して機器ケースとシールド部とが導通接続される。よって、外部から発せられるノイズを相手側のシールドコネクタのシールド部からコネクタ接続部へ流し、コネクタ接続部から機器ケースへと流すことができ、ノイズが機器ケース内の回路等へ流れ込むことを抑制することができる。したがって、機器ケースとシールド部とを別の部品を介して導通接続する場合と比べて、ノイズを機器ケースへ流す際の接触抵抗が減り、シールド性能が向上する。また、特許文献1のシールドコネクタは、シールド部からコネクタ取付部へノイズを流すために、他の部材を必要とした。しかしながら、この発明によれば、シールド部から機器ケースへノイズを流すためには、シールド部をコネクタ接続部に接触させるだけでよく、シールドコネクタの構造としては、金属端子をコネクタ接続部内に配置させるために、金属端子を保持した絶縁部材を機器ケースの内側からコネクタ接続部内に挿入して固定するのみでよい。よって、機器ケースとシールド部とを別の部品を介して導通接続する場合と比べて、シールドコネクタにおける部品点数が減り、シールドコネクタの構造を簡素化することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記絶縁部材には、前記金属端子の一部分を全周に亘って被覆するようにフェライトコアが設けられていることを要旨とする。
【0010】
この発明によれば、絶縁部材には、金属端子の一部分を全周に亘って被覆するようにフェライトコアが設けられていることで、接続端子と金属端子とが接続された状態において、例えば、外部からのノイズが接続端子へ流入し、そのノイズが金属端子へ流入したとしても、フェライトコアによってノイズを除去することができる。よって、接続端子から金属端子へ流入したノイズが、機器ケース内の回路等へ流入してしまうことを防止することができ、外部からのノイズが原因で機器が誤作動を起こすことを防止することができる。また、例えば、機器ケース内の回路等から金属端子へノイズが流入したとしても、フェライトコアによって金属端子へ流入したノイズを除去することができる。よって、金属端子へ流入したノイズが相手側のシールドコネクタ側へ流入してしまうことを防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、シールド性能を向上させることができるとともに、シールドコネクタの構造を簡素化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を電気自動車に搭載される電動圧縮機に具体化した一実施形態を図1〜図5にしたがって説明する。図1は、本実施形態の電動圧縮機10の縦断面図を示す。
図1に示すように、電動圧縮機10は、エンジン(図示せず)にボルト(図示せず)で固定されている。電動圧縮機10の機器ケースとしてのハウジングは、モータハウジング12と吐出ハウジング13とからなり、モータハウジング12と吐出ハウジング13との間には吐出室15が区画形成されている。吐出ハウジング13の端壁には、吐出ポート16が形成されている。吐出ポート16は、図示しない外部冷媒回路と接続されている。モータハウジング12の端壁には、吸入ポート17が形成されている。吸入ポート17は、図示しない外部冷媒回路と接続されている。モータハウジング12内には、冷媒を圧縮するための圧縮部18と、圧縮部18を駆動するための電動モータ19とが収容されている。
【0013】
まず、圧縮部18について説明する。圧縮部18は、モータハウジング12内に固定された固定スクロール20と、固定スクロール20に対向配置された可動スクロール21とで構成されている。固定スクロール20と可動スクロール21との間には容積変更可能な圧縮室22が区画形成されている。モータハウジング12内には、回転軸23が収容されている。回転軸23はモータハウジング12によって回転可能に支持されている。
【0014】
次に、電動モータ19について説明する。モータハウジング12内には、ロータ24(回転子)と、ステータ25(固定子)とが設けられている。モータハウジング12内において、ロータ24は、回転軸23と一体的に回転するように回転軸23の外周に固定されている。ロータ24は、回転軸23に止着されたロータコア241と、ロータコア241の周面に設けられた複数の永久磁石242とからなる。ステータ25は、全体として略円環状をなしている。ステータ25は、モータハウジング12の内周面に固定されたステータコア251のティース(図示せず)にコイル26が巻回されて構成されている。
【0015】
モータハウジング12の外周面121には、一面が開放された箱状をなす導電性を有するアルミニウム製のインバータカバー31が固設されている。そして、インバータカバー31は機器ケースの一部を構成している。インバータカバー31がモータハウジング12の外周面121に固設された状態において、モータハウジング12の外周面121の一部分は、インバータカバー31の底面となっている。よって、外周面121の一部分とインバータカバー31とによって空間を区画形成するとともに、該空間には電動モータ19を駆動させるための機器としてのインバータ30(二点鎖線で示す)が収納されている。インバータ30は、図示しないリード線によって電動モータ19のステータ25と電気的に接続されている。
【0016】
上記構成の電動圧縮機10では、インバータ30からの電力供給により、電動モータ19に電力が供給されると、ロータ24とともに回転軸23を回転させる。すると、圧縮部18において、可動スクロール21と固定スクロール20との間の圧縮室22が容積減少する。そして、外部冷媒回路から吸入ポート17を介して、モータハウジング12内に冷媒が吸入される。モータハウジング12内に吸入された冷媒は、吸入通路27を経由して圧縮室22へ吸入されるとともに、圧縮室22で圧縮される。圧縮室22内で圧縮された冷媒は、固定スクロール20に形成された吐出通路28から吐出弁29を押し退けて吐出室15へ吐出される。吐出室15内の冷媒は、吐出ポート16を介して外部冷媒回路へ流出して、モータハウジング12内へ還流する。
【0017】
図2に示すように、インバータカバー31における上壁31aには、機器側のシールドコネクタ40が設けられ、この機器側のシールドコネクタ40は、後述する相手側のシールドコネクタ50と接続可能なコネクタ接続部35を有している。このコネクタ接続部35は、上壁31aからインバータカバー31の外側に電動圧縮機10の軸方向(回転軸23の軸方向)と直交する方向に沿うように突設されている。コネクタ接続部35は、インバータカバー31に一体成形されるとともに、導電性を有する。
【0018】
コネクタ接続部35は筒状をなすとともに、インバータカバー31内外を連通する連通孔35aが形成されている。連通孔35aは、連通孔35aにおけるインバータカバー31内寄りが小径部35bとなっており、小径部35bよりインバータカバー31外寄りは小径部35bよりも大径の大径部35cとなっている。
【0019】
インバータカバー31の内側には、機器側のシールドコネクタ40を構成する絶縁部材37が固定されている。絶縁部材37は、接続用鍔部37cを備えている。接続用鍔部37cには、ボルトBを挿通する挿通孔37dが形成されている。また、絶縁部材37は、接続用鍔部37cが張り出されている方向と直交する方向に突出する端子保持部37aを備えている。端子保持部37aは、連通孔35aにおける小径部35bに嵌合可能な外形を有しており、端子保持部37aの先端中央部からは嵌合凹部37bが凹設されている。
【0020】
端子保持部37aには、金属端子36の長さ方向における一部が保持されているとともに、金属端子36の先端部が嵌合凹部37b内に露出されている。金属端子36の基端部は、配線R(図1に示す)によってインバータ30と電気的に接続されている。金属端子36は、図3に示すように、タブ状をなすプラス端子36aとマイナス端子36bとで構成されている。プラス端子36a及びマイナス端子36bには、各端子36a,36bの長さ方向における一部分を全周に亘って被覆するようにフェライトコア41が設けられている。フェライトコア41は、プラス端子36aからマイナス端子36bへノイズが流れることにより発生するノイズのエネルギー(磁界)を、フェライトコア41の磁化によって吸収し、吸収したノイズのエネルギーを熱に変えることでノイズを除去する。
【0021】
絶縁部材37は、フェライトコア41を巻き付けた状態の金属端子36を絶縁部材37の鋳型に配置するとともに、絶縁部材37の鋳型に溶融樹脂を流し込み、冷却することで製作される。そして、図2に示すように、絶縁部材37は、小径部35bに端子保持部37aをインバータカバー31の内側から挿入し、嵌合させるとともに、挿通孔37dにボルトBを挿通し、接続用鍔部37cとインバータカバー31とを共締めすることで、インバータカバー31の内側に固定されている。絶縁部材37が、インバータカバー31内に固定された状態では、金属端子36とコネクタ接続部35との間に絶縁部材37が介在し、絶縁部材37によって、金属端子36が絶縁されている。また、金属端子36の先端部は、コネクタ接続部35内に露出している。
【0022】
次に、相手側のシールドコネクタ50について、図4にしたがって説明する。なお、図4における下側を相手側のシールドコネクタ50における先端側、図4における上側を相手側のシールドコネクタ50における基端側とする。図4に示すように、相手側のシールドコネクタ50は、合成樹脂製からなるコネクタハウジング51を有しており、コネクタハウジング51は、接続端子53を収容する内側筒部51aと、内側筒部51aの先端側を外側から取り囲む外側筒部51bとから構成されている。内側筒部51aは、先端側が接続端子53を収容するためのインナ部511となっており、基端側はインナ部511の一部分を囲うように形成されたアウタ部512となっている。
【0023】
接続端子53は、2本並べられた状態でインナ部511内に収容されている。各接続端子53の一方の端部は、金属端子36と接続される端子接続部53aとなるとともに、他方の端部は、コネクタハウジング51内から外側へ引出された配線52と接続されている。配線52は、図4において配線52の一部分を破断させて示すように、中心部に通電線52aが配設されるとともに、通電線52aの外側へ順に絶縁用の内部被覆線52b、導電性を有するシールド線52c及び外部被覆線52dそれぞれが同心円状に配設されている。配線52の端末は、外部被覆線52dが一部皮むきされており、シールド線52cの一部が露出されている。シールド線52cの露出部分には、導通部材54が接続されている。導通部材54は、導電性の金属によって形成され、先端側が小径部54aをなし、基端側は大径部54bとなった段付きの円筒形状に形成されている。導通部材54の小径部54aをシールド線52cの露出部分に対してかしめ付けることで導通部材54がシールド線52cの露出部分に対して固定される。
【0024】
インナ部511の外周面とアウタ部512の内周面との間及びアウタ部512の内周面と導通部材54との間には、挿入孔Hが設けられており、挿入孔Hには、導電性の金属板を筒状に折り曲げて全体が形成されたシールドシェル55が配設されている。シールドシェル55は、先端側が直線状に形成される接触片55aと、基端側が内側に向けて山形状に折り曲げられた弾接片55bとで構成されている。シールドシェル55は、コネクタハウジング51の基端側から挿入孔Hへ挿入されることで組み付けられる。シールドシェル55の接触片55aは、インナ部511の外周面とアウタ部512の内周面との間に装着され、接触片55aの先端部はインナ部511の外周面に沿って密着状態で露出する。シールドシェル55の弾接片55bは、アウタ部512の内周面と導通部材54との間に装着され、弾接片55bが、導通部材54の大径部54bの外周面と弾性的に接触可能に設けられている。そして、シールド線52c、導通部材54及びシールドシェル55は、相手側のシールドコネクタ50に設けられるシールド部Sを構成する。
【0025】
アウタ部512内においてシールドシェル55よりも基端側にはゴム栓56が配設されている。ゴム栓56は、2本の配線52とアウタ部512との間を一括してシールしている。アウタ部512における先端部の外面にはパッキン57が嵌着されている。
【0026】
図5に示すように、このようにして構成された機器側のシールドコネクタ40及び相手側のシールドコネクタ50は、インナ部511が、嵌合凹部37bの内側に嵌合されるとともに、金属端子36が端子接続部53aを介して接続端子53と接続される。コネクタ接続部35とコネクタハウジング51とが嵌合することで、連通孔35aにおける大径部35cの内面とパッキン57とが密着し、コネクタ接続部35とコネクタハウジング51との間がシールされた状態となっている。シールドシェル55における接触片55aの先端部は、連通孔35aにおける小径部35bの長さ方向における内周面の一部分の全周に亘って接触している。インバータカバー31は、相手側のシールドコネクタ50におけるシールド部Sと導通接続するアース部となっており、接触片55aの先端部が小径部35b(コネクタ接続部35)の長さ方向における内周面の一部分の全周に亘って接触することによって、インバータカバー31とシールド部Sとがコネクタ接続部35を介して導通接続されている。
【0027】
さて、相手側のシールドコネクタ50が機器側のシールドコネクタ40に接続された状態において、例えば、外部から発せられるノイズが、相手側のシールドコネクタ50側に流入する場合がある。しかしながら、相手側のシールドコネクタ50側に流入したノイズは、シールド線52c、導通部材54及びシールドシェル55を介してコネクタ接続部35へ流入し、インバータカバー31を伝い、ハウジングからエンジンへとアースされる。また、例えば、外部からのノイズが接続端子53へ流入し、そのノイズが金属端子36へ流入する場合があるが、フェライトコア41によってノイズを除去する。さらに、例えば、インバータ30側から金属端子36へノイズが流入する場合があるが、フェライトコア41によって金属端子36へ流入したノイズを除去する。
【0028】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)インバータカバー31にコネクタ接続部35を一体成形するとともに、インバータカバー31及びハウジングをアース部とした。このため、コネクタ接続部35とシールド部Sとが導通接続されることで、ノイズをシールド部Sからコネクタ接続部35を介してインバータカバー31へと流し、さらに、ハウジングからエンジンへとアースすることができる。このため、ノイズをインバータカバー31からハウジングへ流すために、インバータカバー31とシールド部Sとを別の部品を介して導通接続する場合と比べて、ノイズをインバータカバー31へ流す際の接触抵抗が減り、シールド性能が向上する。また、特許文献1のシールドコネクタは、シールド部からコネクタ取付部へノイズを流すために、他の部材を必要とした。しかしながら、本実施形態によれば、シールド部Sからインバータカバー31へノイズを流すためには、シールド部Sをコネクタ接続部35に接触させるだけでよい。よって、機器側のシールドコネクタ40の構造としては、金属端子36をコネクタ接続部35内に配置させるために、金属端子36を保持した絶縁部材37をインバータカバー31の内側からコネクタ接続部35内に挿入して固定するのみでよい。したがって、インバータカバー31とシールド部Sとを別の部品を介して導通接続する場合と比べて、機器側のシールドコネクタ40における部品点数が減り、機器側のシールドコネクタ40の構造を簡素化することができる。
【0029】
(2)外部からのノイズが接続端子53へ流入し、そのノイズが金属端子36へ流入したとしても、フェライトコア41によってノイズを除去することができ、接続端子53から金属端子36へ流入したノイズが、インバータ30側へ流入してしまうことを防止することができる。よって、外部からのノイズが原因でインバータ30が誤作動を起こすことを防止することができる。また、インバータ30側から金属端子36へノイズが流入したとしても、フェライトコア41によって金属端子36へ流入したノイズを除去することができ、金属端子36へ流入したノイズが相手側のシールドコネクタ50側へ流入してしまうことを防止することができる。
【0030】
(3)コネクタ接続部35をインバータカバー31と一体成形することで、コネクタ接続部35とコネクタハウジング51との間をシールするパッキン57を設けるだけで相手側のシールドコネクタ50と機器側のシールドコネクタ40とを防水シールできる。このため、背景技術のように、コネクタ取付部の内側からシールド電線用ボス部が突設され、そのシールド電線用ボス部の周りにコネクタハウジングが取り付けられている場合と比べて、インバータカバー31内への防水シールを減らすことができる。
【0031】
(4)コネクタ接続部35をインバータカバー31と一体成形したことにより、背景技術のように、コネクタハウジングをコネクタ取付部の外面に組み付けることで構成されるシールドコネクタと比べて、機器側のシールドコネクタ40における相手側のシールドコネクタ50との接続部分が樹脂製からアルミニウム製となり強度が増す。
【0032】
なお、本実施形態では以下のような実施形態も可能である。
○ 図6に示す実施形態では、コネクタ接続部35が、インバータカバー31における側壁31bからインバータカバー31の外側に電動圧縮機10の軸方向に沿うように突設されている。つまり、コネクタ接続部35を成形する位置は特に限定される必要はなく、相手側のシールドコネクタ50とコネクタ接続部35とが接合可能であれば、コネクタ接続部35をインバータカバー31のどの位置に成形してもよい。
【0033】
○ また、図6に示す実施形態のように、フェライトコア41を金属端子36の長さ方向における一部分の全周に設けなくてもよい。
○ シールドシェル55における接触片55aの先端部は、例えば、コネクタ接続部35の外周面と接触するように構成されていてもよい。
【0034】
○ 絶縁部材37の接続用鍔部37cに凸部を形成するとともに、インバータカバー31の内側の面に凹部を形成し、該凸部と該凹部とを嵌合させ、接続用鍔部37cとインバータカバー31とをかしめることで、絶縁部材37をインバータカバー31の内側に固定させてもよい。
【0035】
○ 圧縮部18は、固定スクロール20と可動スクロール21とで構成されるタイプに限定されるものではなく、例えば、ピストンタイプやベーンタイプなどに変更してもよい。
【0036】
○ 本発明は、電動圧縮機10に適用される機器側のシールドコネクタに限らず、例えば、導電性を有した機器ケースにコネクタ接続部が一体成形されており、シールド部を有した相手側のシールドコネクタが、コネクタ接続部と接続された状態で、コネクタ接続部とシールド部とが接触することで導通接続されるものであれば何でもよい。
【0037】
以下の技術的思想(発明)は前記実施形態から把握できる。
(1)前記絶縁部材は、接続用鍔部を有し、前記接続用鍔部に形成される挿通孔にねじ部材を挿通し、前記接続用鍔部と前記機器ケースとを共締めすることで、前記絶縁部材が前記機器ケースの内側に固定されている請求項1又は請求項2に記載のシールドコネクタ。
【0038】
(2)前記絶縁部材は、接続用鍔部を有し、前記接続用鍔部及び前記機器ケースの内側のうち一方に凹部が形成されているとともに、他方に凸部が形成されており、前記凹部と前記凸部とは嵌合可能であり、前記凹部と前記凸部とが嵌合することで、前記絶縁部材が前記機器ケースの内側に固定されている請求項1又は請求項2に記載のシールドコネクタ。
【0039】
(3)前記機器は電動圧縮機である請求項1、請求項2、前記技術的思想(1)及び前記技術的思想(2)のうちいずれか一項に記載のシールドコネクタ。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施形態の電動圧縮機を示す縦断面図。
【図2】機器側のシールドコネクタを示す縦断面図。
【図3】金属端子及びフェライトコアを示す斜視図。
【図4】相手側のシールドコネクタを示す縦断面図。
【図5】機器側のシールドコネクタと相手側のシールドコネクタとが接続された状態を示す縦断面図。
【図6】別の実施形態の機器側のシールドコネクタを示す縦断面図。
【符号の説明】
【0041】
12…機器ケースを構成するモータハウジング、13…機器ケースを構成する吐出ハウジング、30…機器としてのインバータ、31…機器ケースの一部を構成するインバータカバー、35…コネクタ接続部、36…金属端子、37…絶縁部材、40…機器側のシールドコネクタ、41…フェライトコア、50…相手側のシールドコネクタ、52c…シールド部を構成するシールド線、53…接続端子、54…シールド部を構成する導通部材、55…シールド部を構成するシールドシェル、S…シールド部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド部を有する相手側のシールドコネクタが接続される機器側のシールドコネクタであって、
前記機器における導電性の機器ケースには、前記相手側のシールドコネクタと接続可能なコネクタ接続部が前記機器ケースから外側へ突設され、前記コネクタ接続部は前記機器ケースに一体成形されるとともに、前記相手側のシールドコネクタが前記コネクタ接続部に接続された状態で前記シールド部と導通接続され、
前記機器ケースの内側には、前記相手側のシールドコネクタの接続端子と接続される金属端子を保持した絶縁部材が、前記コネクタ接続部内に前記金属端子が露出するように前記コネクタ接続部内に挿入された状態で固定され、
さらに、前記機器ケースが、前記コネクタ接続部を介して前記シールド部と導通接続するアース部となっていることを特徴とするシールドコネクタ。
【請求項2】
前記絶縁部材には、前記金属端子の一部分を全周に亘って被覆するようにフェライトコアが設けられている請求項1に記載のシールドコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−295340(P2009−295340A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−145911(P2008−145911)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】