説明

シールドパイプおよび高圧ケーブル

【課題】ハイブリッド電気自動車(HEV)のフロアなどに敷設される高圧ケーブルにおいて、シールドパイプの製造コストを抑制する。
【解決手段】シールドパイプ4は、3個の直管部分2A、2B、2Cと3個の螺旋状の蛇腹部分3A、3B、3Cとが互いに連通して一体に形成された構造を有している。これにより、シールドパイプの製造工程において、作業時間が短縮されるとともに、部品点数が削減される。また、直管部分2A、2B、2Cと蛇腹部分3A、3B、3Cとの継ぎ目がなくなるため、その部分の防水処理が不要となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド電気自動車(HEV)のフロアなどに敷設されるシールドパイプおよび高圧ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のシールドパイプとしては、ベンダーで所定形状に曲げ加工されたメインシールド部に、筒状の編組線を備えたサブシールド部を接続したものが用いられていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−171952号公報(段落〔0018〕〔0019〕の欄、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、このシールドパイプ(以下、公知技術1という。)では、次のような課題があった。
【0004】
第1に、シールドパイプの製造工程において、メインシールド部の曲げ加工が必要となるため、作業時間が長引くばかりか、メインシールド部とは別にサブシールド部を必要とするため、部品点数が多くなる。それらの結果、シールドパイプの製造コストが高騰する。
【0005】
第2に、シールドパイプを被水環境で使えるようにするためには、メインシールド部とサブシールド部との継ぎ目に防水処理を施さなければならないので、その分だけシールドパイプの製造コストが高騰する。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、こうした課題を解決することが可能なシールドパイプと、このシールドパイプを備えた高圧ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
まず、請求項1に係るシールドパイプの発明では、リジッド管部分と可とう管部分とが互いに連通して一体に形成されていることを特徴とする。
また、請求項2に係るシールドパイプの発明では、前記リジッド管部分は、直管部分であることを特徴とする。
また、請求項3に係るシールドパイプの発明では、前記可とう管部分は、蛇腹部分であることを特徴とする。
また、請求項4に係るシールドパイプの発明では、前記蛇腹部分は、螺旋状に形成されていることを特徴とする。
また、請求項5に係る高圧ケーブルの発明では、上記シールドパイプを有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、リジッド管部分と可とう管部分とが一体に形成されているため、シールドパイプの製造工程において、作業時間が短縮されるとともに、部品点数が削減される。したがって、シールドパイプの製造コストを抑制することが可能となる。
【0009】
また、リジッド管部分と可とう管部分とが一体に形成されているため、両者の継ぎ目がなくなることから、その部分の防水処理が不要となる。したがって、シールドパイプを被水環境で使えるようにする場合においても、シールドパイプの製造コストを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
<第1の実施形態>
図1は本発明に係る高圧ケーブルの第1の実施形態を示す正面図、図2はシールドパイプ製作設備の一例を示す正面図、図3は金属ストリップが平板状から円筒状に成形される様子を示す正面図、図4は円筒状の金属ストリップにコルゲート処理が施される様子を示す正面図である。
【0012】
高圧ケーブル1は、図1に示すように、ステンレススチールなどの金属からなる折れ線形状のシールドパイプ4を備えており、シールドパイプ4は、3個の直管部分2(2A、2B、2C)と3個の螺旋状の蛇腹部分3(3A、3B、3C)とが互いに連通して一体に形成された構造を有している。ここで、第1の直管部分2Aの右側には、第1の蛇腹部分3Aを介して第2の直管部分2Bが揺動自在に接続されており、第2の直管部分2Bの右側には、第2の蛇腹部分3Bを介して第3の直管部分2Cが揺動自在に接続されている。さらに、第3の直管部分2Cの右側には、第3の蛇腹部分3Cを介してシールドシェル7が揺動自在に取り付けられている。また、シールドパイプ4の内部にはケーブルコア5が配設されている。
【0013】
また、シールドパイプ製作設備11は、図2に示すように、機体12を有している。機体12の後方(図2左方)には、金属ストリップドラム16が回転自在に支持されており、金属ストリップドラム16には、シールドパイプ4の素材となる平板状の金属ストリップ17が巻回されている。さらに、機体12上には溶接機19が設置されている。また、機体12の前方(図2右方)には2個のクランプキャプスタン20が載置されており、これらのクランプキャプスタン20の前方にはコルゲータ(コルゲーション機)21が設置されている。
【0014】
そして、高圧ケーブル1を製造する際には、次の手順による。
【0015】
まず、シールドパイプ製作設備11を用いてシールドパイプ4を製作する。それには、図2に示すように、金属ストリップ17を金属ストリップドラム16から引き出し、溶接機19、クランプキャプスタン20、コルゲータ21に順次供給する。すると、金属ストリップ17は、溶接機19の手前で、図3に示すように、平板状から円筒状に成形された後、端面の合わせ目が溶接機19で隙間なく縦方向(金属ストリップ17の長さ方向)に電気溶接される。さらに、この円筒状の金属ストリップ17は、クランプキャプスタン20で絞り込まれた後、図4に示すように、蛇腹部分3となる部位にコルゲータ21で螺旋状の波形が付与される。その結果、直管部分2および蛇腹部分3を備えた一直線状のシールドパイプ4が完成する。
【0016】
こうして、直管部分2および蛇腹部分3を備えたシールドパイプ4が完成したところで、このシールドパイプ4内にケーブルコア5を通線する。このとき、シールドパイプ4は一直線状であるため、ケーブルコア5の通線作業は支障なく行われる。次いで、シールドパイプ4をケーブルコア5ごと所定の折れ線形状に折り曲げる。このとき、ケーブルコア5は柔軟性を有するので、シールドパイプ4の折曲作業は円滑に行われる。
【0017】
これにより、折れ線形状のシールドパイプ4の内部にケーブルコア5が配設された高圧ケーブル1が完成し、ここで高圧ケーブル1の製造工程が終了する。
【0018】
このように、シールドパイプ4は、直管部分2と蛇腹部分3とが一体に形成されるので、公知技術1と比べて、シールドパイプ4の製造工程において、作業時間が短縮されるとともに、部品点数が削減される。したがって、シールドパイプ4、ひいては高圧ケーブル1の製造コストを抑制することが可能となる。
【0019】
また、シールドパイプ4は、直管部分2と蛇腹部分3とが一体に形成されているので、両者の継ぎ目がなく、その部分の防水処理が不要となる。したがって、高圧ケーブル1を被水環境で使えるようにする場合においても、シールドパイプ4、ひいては高圧ケーブル1の製造コストを抑制することができる。
【0020】
さらに、平板状の金属ストリップ17が円筒状に成形されるときには、端面の合わせ目が隙間なく接合されるので、この合わせ目から液体や気体が浸透する恐れはない。
【0021】
また、シールドパイプ4は、可とう性(可撓性)のある蛇腹部分3を持ち合わせているので、配索経路に応じた柔軟性を発揮することができる。また、素材が薄くても、蛇腹状にすることによって強度を高めることが可能となる。例えば、厚さ0.2〜0.3mmのステンレススチール板を蛇腹状にすることにより、アルミニウム1.0mm相当の強度を発揮することができる。しかも、この蛇腹部分3は螺旋状であるため、蛇腹部分3の連続成形が可能となり、また、蛇腹部分3を形成したり、止めたりすることも可能となる。
【0022】
<その他の実施形態>
なお、上述の実施形態においては、リジッド管部分として直管部分2を採用するとともに、可とう管部分として蛇腹部分3を採用した場合について説明した。しかし、配索経路に応じて、直管部分2以外のリジッド管部分(例えば、くの字形や円弧状のリジッド管部分、蛇腹の深さを浅くして柔軟性を阻害し強度を確保したリジッド管部分など)や、蛇腹部分3以外の可とう管部分(例えば、編組線にて対応した可とう管部分など)を代用することもできる。
【0023】
なお、上述の実施形態においては、3個の直管部分2と3個の蛇腹部分3とを備えたシールドパイプ4について説明したが、これらの直管部分2、蛇腹部分3の個数は、3個に限るわけではなく、1個以上であれば何個でも構わない。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、自動車、航空機、電車、製造プラント、電化製品、OA機器など各種の産業分野に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る高圧ケーブルの第1の実施形態を示す正面図である。
【図2】シールドパイプ製作設備の一例を示す正面図である。
【図3】金属ストリップが平板状から円筒状に成形される様子を示す正面図である。
【図4】円筒状の金属ストリップにコルゲート処理が施される様子を示す正面図である。
【符号の説明】
【0026】
1……高圧ケーブル
2……直管部分(リジッド管部分)
3……蛇腹部分(可とう管部分)
4……シールドパイプ
5……ケーブルコア
11……シールドパイプ製作設備
12……機体
16……金属ストリップドラム
17……金属ストリップ
19……溶接機
20……クランプキャプスタン
21……コルゲータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リジッド管部分と可とう管部分とが互いに連通して一体に形成されていることを特徴とするシールドパイプ。
【請求項2】
前記リジッド管部分は、直管部分であることを特徴とする請求項1に記載のシールドパイプ。
【請求項3】
前記可とう管部分は、蛇腹部分であることを特徴とする請求項1または2に記載のシールドパイプ。
【請求項4】
前記蛇腹部分は、螺旋状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載のシールドパイプ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のシールドパイプを有していることを特徴とする高圧ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−192871(P2008−192871A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−26445(P2007−26445)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】