シールド掘進機の台車転倒防止装置
【課題】
コンクリート製のセグメントが使用されるシールド掘進機でも、簡便に台車の転倒を防止できる台車転倒防止装置を提供する。
【解決手段】
コンクリート製セグメント３４の注入孔３５に転倒防止ブラケット４３を取付け、掘進機本体に牽引される台車１８に進行方向に沿って延びる転倒防止バー２８を設け、前記台車が所定角度傾斜した場合に、前記転倒防止バーが前記転倒防止ブラケットに当接して転倒を防止する様構成した。
コンクリート製のセグメントが使用されるシールド掘進機でも、簡便に台車の転倒を防止できる台車転倒防止装置を提供する。
【解決手段】
コンクリート製セグメント３４の注入孔３５に転倒防止ブラケット４３を取付け、掘進機本体に牽引される台車１８に進行方向に沿って延びる転倒防止バー２８を設け、前記台車が所定角度傾斜した場合に、前記転倒防止バーが前記転倒防止ブラケットに当接して転倒を防止する様構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、トンネルを掘削する為のシールド掘進機が牽引する台車の転倒防止装置に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
シールド掘進機は、掘進機本体と該掘進機本体に牽引され複数の台車からなる台車群により構成されている。
【０００３】
図７、図８により、シールド掘進機の概略を説明する。又、図中、１は掘進機本体、２は台車群、３はセグメント台車である。
【０００４】
前記掘進機本体１は、カッタ４が多数設けられた円盤状のカッタヘッド５を回転させて地中を掘削し、掘削した土砂はスクリューコンベア６により後方に排出する。又、前記掘削機本体１には前記台車群２がロープ等の連結手段７を介して連結され、前記掘進機本体１の掘進の進行と共に前記台車群２が追従する様になっている。
【０００５】
該台車群２を構成する台車には、バルブユニットを搭載したバルブユニット台車１１、操作盤を搭載すると共に作業者が搭乗する操作台車１２、ポンプユニットを搭載したポンプユニット台車１３等が含まれており、各台車間は連結バー１５により連結されている。前記台車群２の各台車（以下台車１８と総称する）は、レール１６に走行自在に軌乗し、該レール１６は進行方向に対して所要間隔で設けられた枕木１７によって支持されている。
【０００６】
前記カッタヘッド５によって掘削された土砂は、泥水とされ、前記スクリューコンベア６によって排出され、更に搬送ホース１０によって後方に搬送される。
【０００７】
掘削後のトンネル壁面には、セグメント１９が貼付けられる。該セグメント１９はエレクタ８によって貼付け位置迄持上げられ移動され、掘削の進行に伴って順次継足される。又、前記セグメント１９の設置後は、該セグメント１９と掘削した土面との間の隙間に、液状セメント等の裏込め材が充填される。
【０００８】
前記セグメント１９は、前記セグメント台車３によって運搬され、トンネル内には該セグメント台車３が通行する空間２１（図９参照）が確保される。従って、前記台車群２の各台車は、壁部２２に沿った縦長の狭小な空間２３を利用して配置される。
【０００９】
この為、前記台車群２の各台車は、縦長で重心の高い構造となり、トンネルが湾曲している等の状態では、不安定となり、転倒する可能性がある。従って、従来より台車には転倒防止装置が設けられている。
【００１０】
図９、図１０を参照して、従来の台車転倒防止装置について説明する。
【００１１】
前記セグメント１９は、図９、図１０に見られる様に、円筒曲面を軸芯方向に所要距離で分割し、更に円周方向に所要等分した矩形形状をしており、円筒曲面を構成する表面鋼板２４と矩形の枠体２５とを有し、前記セグメント１９を軸芯方向（進行方向）に継足していく場合は、進行方向と直交する枠部２５ａ同士をボルト２６により締結していた。
【００１２】
転倒防止用のブラケット２７が進行方向所定間隔で、前記ボルト２６を利用して前記枠部２５ａに固着される。
【００１３】
又、前記台車１８のトンネル中心側の上方に転倒防止バー２８が設けられ、該転倒防止バー２８は、前記台車１８の進行方向に延出し、少なくとも前記ブラケット２７の取付け間隔よりは大きい長さを有している。
【００１４】
前記ブラケット２７と前記転倒防止バー２８との関係は、図９に見られる様に、前記台車１８が正常に前記レール１６に軌乗している状態では、非接触状態となっており、前記台車１８が転倒する状態となった場合には、前記転倒防止バー２８が前記ブラケット２７に当接して、転倒が防止される様になっている。
【００１５】
ところが、上記台車転倒防止装置は、鋼製の枠構造のセグメントには実施可能であるが、枠構造となっていないコンクリート製のセグメントに対しては実施することができない。
【００１６】
コンクリート製のセグメント間の接合では、例えば一方のセグメントの接合端面には凸部を形成し、或は、結合ピンを突出させ、他方のセグメントの接合端面には凹部を形成し、或は結合穴を形成し、凸部と凹部、或は結合ピンと結合穴を嵌合してセグメント間の接合をしている。
【００１７】
従って、従来の枠部２５ａ、ボルト２６を利用してブラケット２７を固定する方法は適用できない。
【００１８】
【特許文献１】特開２００１−１３２３８６号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【００１９】
本発明は斯かる実情に鑑み、コンクリート製のセグメントが使用されるシールド掘進機でも、簡便に台車の転倒を防止できる台車転倒防止装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【００２０】
本発明は、コンクリート製セグメントの注入孔に転倒防止ブラケットを取付け、掘進機本体に牽引される台車に進行方向に沿って延びる転倒防止バーを設け、前記台車が所定角度傾斜した場合に、前記転倒防止バーが前記転倒防止ブラケットに当接して転倒を防止する様構成したシールド掘進機の台車転倒防止装置に係るものである。
【００２１】
又本発明は、前記転倒防止ブラケットは、前記注入孔を閉塞する閉塞栓にボルト付けされるシールド掘進機の台車転倒防止装置に係るものである。
【００２２】
又本発明は、前記転倒防止ブラケットは、前記セグメントの壁面に沿う座プレートと、該座プレートに設けられトンネルの中心方向に向うバー受け片とを有し、前記座プレートは隣接する２箇所の注入孔に取付けられたシールド掘進機の台車転倒防止装置に係り、更に又前記転倒防止ブラケットは、前記セグメントの壁面に沿う座プレートと、該座プレートに設けられトンネルの中心方向に向うバー受け片とを有し、該バー受け片は前記座プレートの強度部材として機能し、該座プレートは１箇所の注入孔に取付けられたシールド掘進機の台車転倒防止装置に係るものである。
【発明の効果】
【００２３】
本発明によれば、コンクリート製セグメントの注入孔に転倒防止ブラケットを取付け、掘進機本体に牽引される台車に進行方向に沿って延びる転倒防止バーを設け、前記台車が所定角度傾斜した場合に、前記転倒防止バーが前記転倒防止ブラケットに当接して転倒を防止する様構成したので、コンクリート製セグメントを使用したトンネル掘進工法であっても、簡便に台車の転倒を防止することができる。
【００２４】
又本発明によれば、前記転倒防止ブラケットは、前記注入孔を閉塞する閉塞栓にボルト付けされるので、前記閉塞栓を着脱する必要がなく、転倒防止ブラケットを取付ける準備作業も、取外し後の後処理作業も必要ない等の優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２５】
以下、図面を参照しつつ本発明を実施する為の最良の形態を説明する。
【００２６】
尚、本発明に係る台車転倒防止装置が実施されるシールド掘進機の主要な構成は、図７、図８で示したものと同様であるので、図７、図８を参照し説明は省略する。
【００２７】
図１に示される様に、トンネル３１内にセグメント台車用レール３２と台車用のレール１６が敷設され、それぞれセグメント台車３、台車１８が走行可能となっている。
【００２８】
前記レール１６は前記セグメント台車用レール３２に対して狭幅であり、前記台車１８の形状は縦長となっている。該台車１８の中心側の側面の上端部より上方に支持アーム３３が延出し、該支持アーム３３の上端に転倒防止バー２８が固着される。該転倒防止バー２８は前記トンネル３１内壁面の最頂部に接近した位置に支持され、又該転倒防止バー２８は前記台車１８の進行方向と平行に延び、少なくともセグメントの軸芯方向の長さよりも大きい長さを有している。
【００２９】
図２に示される様に、コンクリート製のセグメント３４には裏込め材を注入する為の注入孔３５が設けられている。該注入孔３５はコンクリートを貫通する孔３６に金属筒３７が液密に埋設されたものであり、該金属筒３７には雌ネジ３８が刻設され、該雌ネジ３８を介して閉塞栓３９が螺着される。尚、４０はシール材である。
【００３０】
前記注入孔３５を介して裏込め材を注入後、前記閉塞栓３９を前記金属筒３７に螺着することで、前記注入孔３５は液密に閉塞される。
【００３１】
前記閉塞栓３９のトンネルに露出する端面には、ナット４１が埋設され、該ナット４１にはボルト４２が螺合可能となっている。前記ナット４１は前記金属筒３７を前記注入孔３５に取付け、取外す際に使用される。
【００３２】
本発明に係る転倒防止ブラケット４３は、前記注入孔３５を利用して取付けられる。
【００３３】
図３、図４に示される様に、前記転倒防止ブラケット４３は前記セグメント３４の内面に沿って湾曲した座プレート４４と、該座プレート４４に固着され前記トンネル３１の中心に向って突出するバー受け片４５から構成され、該バー受け片４５には両端部にボルト挿通孔４６，４７が穿設され、いずれか一方は長孔となっている。
【００３４】
又、前記ボルト挿通孔４６，４７の孔間ピッチは前記注入孔３５が設けられるピッチと同じにされ、前記ボルト挿通孔４６，４７に挿通したボルト４２を前記閉塞栓３９の前記ナット４１に螺着することで前記転倒防止ブラケット４３が前記セグメント３４に取付けられる。前記ボルト挿通孔４６，４７のいずれか一方を長孔とすることで、前記注入孔３５の位置誤差があっても支障なく前記転倒防止ブラケット４３を取付けることができる。
【００３５】
更に、前記転倒防止バー２８に対する前記バー受け片４５の位置は、前記転倒防止ブラケット４３が取付けられた状態で、前記トンネル３１の最頂部で前記転倒防止バー２８と対峙する様に設定し、前記台車１８が所要角度傾斜した場合に前記バー受け片４５と前記転倒防止バー２８が当接する位置とする。又、前記台車１８の傾斜角度は、該台車１８が復元可能な値であることが好ましい。
【００３６】
次に、前記セグメント３４を継足す場合、継目が合致しない様に所要角度ずらせる。従って、前記注入孔３５の位置は隣接するセグメント３４間でずれることになる。図５は、前記注入孔３５がずれた場合に対応した転倒防止ブラケット４３を示している。尚、交互に反対方向に同一角度をずらせる継足し方法では、前記転倒防止ブラケット４３は２組用意すればよい。
【００３７】
又、前記転倒防止ブラケット４３は前記台車１８、即ち前記台車群２が位置する範囲だけでよく、該台車群２が通過した部分の前記転倒防止ブラケット４３は取外して繰返し使用する。尚、該転倒防止ブラケット４３は前記ボルト４２によって固定しているので、着脱は容易に行える。又、前記転倒防止ブラケット４３の着脱によって、前記閉塞栓３９による閉塞状態に変化はないので、前記転倒防止ブラケット４３を取外した後の処理は必要ない。
【００３８】
尚、前記転倒防止ブラケット４３に充分な剛性を持たせれば、前記注入孔３５の１箇所を利用して前記転倒防止ブラケット４３を取付けることが可能である。
【００３９】
図６は、１つの注入孔３５を利用して転倒防止ブラケット４３を固定する場合を示している。
【００４０】
前記転倒防止ブラケット４３に設けられるバー受け片４５を剛性部材として用いたものであり、前記バー受け片４５の台形形状の底辺部分を長くし、前記座プレート４４の曲げ剛性を大きくし、前記バー受け片４５に水平方向の力が作用した場合に前記転倒防止ブラケット４３の曲げ変形を防止し、水平外力が前記ボルト４２に伝達される様にしたものである。
【００４１】
尚、図示では、前記バー受け片４５を２片としたが、剛性が得られれば、片側１片であってもよい。
【００４２】
又、前記閉塞栓３９自体もボルトであるので、該閉塞栓３９により前記転倒防止ブラケット４３を前記セグメント３４に固定してもよい。
【００４３】
本発明によれば、コンクリート製のセグメントであっても簡単に転倒防止ブラケット４３を取付けることができ、台車１８の転倒が防止される。
【図面の簡単な説明】
【００４４】
【図１】本発明の実施の形態を示す正面図である。
【図２】該実施の形態に於ける転倒防止ブラケットとセグメントとの固定部の拡大断面図である。
【図３】該転倒防止ブラケットとセグメントとの関係を示す正面図である。
【図４】該転倒防止ブラケットの底面図である。
【図５】取付け位置が異なる場合の前記転倒防止ブラケットとセグメントとの関係を示す正面図である。
【図６】他の形態の転倒防止ブラケットを示す斜視図である。
【図７】シールド掘進機の概略側断面図である。
【図８】シールド掘進機の概略平断面図である。
【図９】従来の台車転倒防止装置を示す正面図である。
【図１０】従来のセグメントとブラケットとの関係を示す斜視図である。
【符号の説明】
【００４５】
１ 掘進機本体
２ 台車群
５ カッタヘッド
６ スクリューコンベア
１１ バルブユニット台車
１６ レール
１７ 枕木
２８ 転倒防止バー
３１ トンネル
３４ セグメント
３５ 注入孔
３９ 閉塞栓
４３ 転倒防止ブラケット
４４ 座プレート
４５ バー受け片
４６ ボルト挿通孔
４７ ボルト挿通孔
【技術分野】
【０００１】
本発明は、トンネルを掘削する為のシールド掘進機が牽引する台車の転倒防止装置に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
シールド掘進機は、掘進機本体と該掘進機本体に牽引され複数の台車からなる台車群により構成されている。
【０００３】
図７、図８により、シールド掘進機の概略を説明する。又、図中、１は掘進機本体、２は台車群、３はセグメント台車である。
【０００４】
前記掘進機本体１は、カッタ４が多数設けられた円盤状のカッタヘッド５を回転させて地中を掘削し、掘削した土砂はスクリューコンベア６により後方に排出する。又、前記掘削機本体１には前記台車群２がロープ等の連結手段７を介して連結され、前記掘進機本体１の掘進の進行と共に前記台車群２が追従する様になっている。
【０００５】
該台車群２を構成する台車には、バルブユニットを搭載したバルブユニット台車１１、操作盤を搭載すると共に作業者が搭乗する操作台車１２、ポンプユニットを搭載したポンプユニット台車１３等が含まれており、各台車間は連結バー１５により連結されている。前記台車群２の各台車（以下台車１８と総称する）は、レール１６に走行自在に軌乗し、該レール１６は進行方向に対して所要間隔で設けられた枕木１７によって支持されている。
【０００６】
前記カッタヘッド５によって掘削された土砂は、泥水とされ、前記スクリューコンベア６によって排出され、更に搬送ホース１０によって後方に搬送される。
【０００７】
掘削後のトンネル壁面には、セグメント１９が貼付けられる。該セグメント１９はエレクタ８によって貼付け位置迄持上げられ移動され、掘削の進行に伴って順次継足される。又、前記セグメント１９の設置後は、該セグメント１９と掘削した土面との間の隙間に、液状セメント等の裏込め材が充填される。
【０００８】
前記セグメント１９は、前記セグメント台車３によって運搬され、トンネル内には該セグメント台車３が通行する空間２１（図９参照）が確保される。従って、前記台車群２の各台車は、壁部２２に沿った縦長の狭小な空間２３を利用して配置される。
【０００９】
この為、前記台車群２の各台車は、縦長で重心の高い構造となり、トンネルが湾曲している等の状態では、不安定となり、転倒する可能性がある。従って、従来より台車には転倒防止装置が設けられている。
【００１０】
図９、図１０を参照して、従来の台車転倒防止装置について説明する。
【００１１】
前記セグメント１９は、図９、図１０に見られる様に、円筒曲面を軸芯方向に所要距離で分割し、更に円周方向に所要等分した矩形形状をしており、円筒曲面を構成する表面鋼板２４と矩形の枠体２５とを有し、前記セグメント１９を軸芯方向（進行方向）に継足していく場合は、進行方向と直交する枠部２５ａ同士をボルト２６により締結していた。
【００１２】
転倒防止用のブラケット２７が進行方向所定間隔で、前記ボルト２６を利用して前記枠部２５ａに固着される。
【００１３】
又、前記台車１８のトンネル中心側の上方に転倒防止バー２８が設けられ、該転倒防止バー２８は、前記台車１８の進行方向に延出し、少なくとも前記ブラケット２７の取付け間隔よりは大きい長さを有している。
【００１４】
前記ブラケット２７と前記転倒防止バー２８との関係は、図９に見られる様に、前記台車１８が正常に前記レール１６に軌乗している状態では、非接触状態となっており、前記台車１８が転倒する状態となった場合には、前記転倒防止バー２８が前記ブラケット２７に当接して、転倒が防止される様になっている。
【００１５】
ところが、上記台車転倒防止装置は、鋼製の枠構造のセグメントには実施可能であるが、枠構造となっていないコンクリート製のセグメントに対しては実施することができない。
【００１６】
コンクリート製のセグメント間の接合では、例えば一方のセグメントの接合端面には凸部を形成し、或は、結合ピンを突出させ、他方のセグメントの接合端面には凹部を形成し、或は結合穴を形成し、凸部と凹部、或は結合ピンと結合穴を嵌合してセグメント間の接合をしている。
【００１７】
従って、従来の枠部２５ａ、ボルト２６を利用してブラケット２７を固定する方法は適用できない。
【００１８】
【特許文献１】特開２００１−１３２３８６号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【００１９】
本発明は斯かる実情に鑑み、コンクリート製のセグメントが使用されるシールド掘進機でも、簡便に台車の転倒を防止できる台車転倒防止装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【００２０】
本発明は、コンクリート製セグメントの注入孔に転倒防止ブラケットを取付け、掘進機本体に牽引される台車に進行方向に沿って延びる転倒防止バーを設け、前記台車が所定角度傾斜した場合に、前記転倒防止バーが前記転倒防止ブラケットに当接して転倒を防止する様構成したシールド掘進機の台車転倒防止装置に係るものである。
【００２１】
又本発明は、前記転倒防止ブラケットは、前記注入孔を閉塞する閉塞栓にボルト付けされるシールド掘進機の台車転倒防止装置に係るものである。
【００２２】
又本発明は、前記転倒防止ブラケットは、前記セグメントの壁面に沿う座プレートと、該座プレートに設けられトンネルの中心方向に向うバー受け片とを有し、前記座プレートは隣接する２箇所の注入孔に取付けられたシールド掘進機の台車転倒防止装置に係り、更に又前記転倒防止ブラケットは、前記セグメントの壁面に沿う座プレートと、該座プレートに設けられトンネルの中心方向に向うバー受け片とを有し、該バー受け片は前記座プレートの強度部材として機能し、該座プレートは１箇所の注入孔に取付けられたシールド掘進機の台車転倒防止装置に係るものである。
【発明の効果】
【００２３】
本発明によれば、コンクリート製セグメントの注入孔に転倒防止ブラケットを取付け、掘進機本体に牽引される台車に進行方向に沿って延びる転倒防止バーを設け、前記台車が所定角度傾斜した場合に、前記転倒防止バーが前記転倒防止ブラケットに当接して転倒を防止する様構成したので、コンクリート製セグメントを使用したトンネル掘進工法であっても、簡便に台車の転倒を防止することができる。
【００２４】
又本発明によれば、前記転倒防止ブラケットは、前記注入孔を閉塞する閉塞栓にボルト付けされるので、前記閉塞栓を着脱する必要がなく、転倒防止ブラケットを取付ける準備作業も、取外し後の後処理作業も必要ない等の優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２５】
以下、図面を参照しつつ本発明を実施する為の最良の形態を説明する。
【００２６】
尚、本発明に係る台車転倒防止装置が実施されるシールド掘進機の主要な構成は、図７、図８で示したものと同様であるので、図７、図８を参照し説明は省略する。
【００２７】
図１に示される様に、トンネル３１内にセグメント台車用レール３２と台車用のレール１６が敷設され、それぞれセグメント台車３、台車１８が走行可能となっている。
【００２８】
前記レール１６は前記セグメント台車用レール３２に対して狭幅であり、前記台車１８の形状は縦長となっている。該台車１８の中心側の側面の上端部より上方に支持アーム３３が延出し、該支持アーム３３の上端に転倒防止バー２８が固着される。該転倒防止バー２８は前記トンネル３１内壁面の最頂部に接近した位置に支持され、又該転倒防止バー２８は前記台車１８の進行方向と平行に延び、少なくともセグメントの軸芯方向の長さよりも大きい長さを有している。
【００２９】
図２に示される様に、コンクリート製のセグメント３４には裏込め材を注入する為の注入孔３５が設けられている。該注入孔３５はコンクリートを貫通する孔３６に金属筒３７が液密に埋設されたものであり、該金属筒３７には雌ネジ３８が刻設され、該雌ネジ３８を介して閉塞栓３９が螺着される。尚、４０はシール材である。
【００３０】
前記注入孔３５を介して裏込め材を注入後、前記閉塞栓３９を前記金属筒３７に螺着することで、前記注入孔３５は液密に閉塞される。
【００３１】
前記閉塞栓３９のトンネルに露出する端面には、ナット４１が埋設され、該ナット４１にはボルト４２が螺合可能となっている。前記ナット４１は前記金属筒３７を前記注入孔３５に取付け、取外す際に使用される。
【００３２】
本発明に係る転倒防止ブラケット４３は、前記注入孔３５を利用して取付けられる。
【００３３】
図３、図４に示される様に、前記転倒防止ブラケット４３は前記セグメント３４の内面に沿って湾曲した座プレート４４と、該座プレート４４に固着され前記トンネル３１の中心に向って突出するバー受け片４５から構成され、該バー受け片４５には両端部にボルト挿通孔４６，４７が穿設され、いずれか一方は長孔となっている。
【００３４】
又、前記ボルト挿通孔４６，４７の孔間ピッチは前記注入孔３５が設けられるピッチと同じにされ、前記ボルト挿通孔４６，４７に挿通したボルト４２を前記閉塞栓３９の前記ナット４１に螺着することで前記転倒防止ブラケット４３が前記セグメント３４に取付けられる。前記ボルト挿通孔４６，４７のいずれか一方を長孔とすることで、前記注入孔３５の位置誤差があっても支障なく前記転倒防止ブラケット４３を取付けることができる。
【００３５】
更に、前記転倒防止バー２８に対する前記バー受け片４５の位置は、前記転倒防止ブラケット４３が取付けられた状態で、前記トンネル３１の最頂部で前記転倒防止バー２８と対峙する様に設定し、前記台車１８が所要角度傾斜した場合に前記バー受け片４５と前記転倒防止バー２８が当接する位置とする。又、前記台車１８の傾斜角度は、該台車１８が復元可能な値であることが好ましい。
【００３６】
次に、前記セグメント３４を継足す場合、継目が合致しない様に所要角度ずらせる。従って、前記注入孔３５の位置は隣接するセグメント３４間でずれることになる。図５は、前記注入孔３５がずれた場合に対応した転倒防止ブラケット４３を示している。尚、交互に反対方向に同一角度をずらせる継足し方法では、前記転倒防止ブラケット４３は２組用意すればよい。
【００３７】
又、前記転倒防止ブラケット４３は前記台車１８、即ち前記台車群２が位置する範囲だけでよく、該台車群２が通過した部分の前記転倒防止ブラケット４３は取外して繰返し使用する。尚、該転倒防止ブラケット４３は前記ボルト４２によって固定しているので、着脱は容易に行える。又、前記転倒防止ブラケット４３の着脱によって、前記閉塞栓３９による閉塞状態に変化はないので、前記転倒防止ブラケット４３を取外した後の処理は必要ない。
【００３８】
尚、前記転倒防止ブラケット４３に充分な剛性を持たせれば、前記注入孔３５の１箇所を利用して前記転倒防止ブラケット４３を取付けることが可能である。
【００３９】
図６は、１つの注入孔３５を利用して転倒防止ブラケット４３を固定する場合を示している。
【００４０】
前記転倒防止ブラケット４３に設けられるバー受け片４５を剛性部材として用いたものであり、前記バー受け片４５の台形形状の底辺部分を長くし、前記座プレート４４の曲げ剛性を大きくし、前記バー受け片４５に水平方向の力が作用した場合に前記転倒防止ブラケット４３の曲げ変形を防止し、水平外力が前記ボルト４２に伝達される様にしたものである。
【００４１】
尚、図示では、前記バー受け片４５を２片としたが、剛性が得られれば、片側１片であってもよい。
【００４２】
又、前記閉塞栓３９自体もボルトであるので、該閉塞栓３９により前記転倒防止ブラケット４３を前記セグメント３４に固定してもよい。
【００４３】
本発明によれば、コンクリート製のセグメントであっても簡単に転倒防止ブラケット４３を取付けることができ、台車１８の転倒が防止される。
【図面の簡単な説明】
【００４４】
【図１】本発明の実施の形態を示す正面図である。
【図２】該実施の形態に於ける転倒防止ブラケットとセグメントとの固定部の拡大断面図である。
【図３】該転倒防止ブラケットとセグメントとの関係を示す正面図である。
【図４】該転倒防止ブラケットの底面図である。
【図５】取付け位置が異なる場合の前記転倒防止ブラケットとセグメントとの関係を示す正面図である。
【図６】他の形態の転倒防止ブラケットを示す斜視図である。
【図７】シールド掘進機の概略側断面図である。
【図８】シールド掘進機の概略平断面図である。
【図９】従来の台車転倒防止装置を示す正面図である。
【図１０】従来のセグメントとブラケットとの関係を示す斜視図である。
【符号の説明】
【００４５】
１ 掘進機本体
２ 台車群
５ カッタヘッド
６ スクリューコンベア
１１ バルブユニット台車
１６ レール
１７ 枕木
２８ 転倒防止バー
３１ トンネル
３４ セグメント
３５ 注入孔
３９ 閉塞栓
４３ 転倒防止ブラケット
４４ 座プレート
４５ バー受け片
４６ ボルト挿通孔
４７ ボルト挿通孔
【特許請求の範囲】
【請求項１】
コンクリート製セグメントの注入孔に転倒防止ブラケットを取付け、掘進機本体に牽引される台車に進行方向に沿って延びる転倒防止バーを設け、前記台車が所定角度傾斜した場合に、前記転倒防止バーが前記転倒防止ブラケットに当接して転倒を防止する様構成したことを特徴とするシールド掘進機の台車転倒防止装置。
【請求項２】
前記転倒防止ブラケットは、前記注入孔を閉塞する閉塞栓にボルト付けされる請求項１のシールド掘進機の台車転倒防止装置。
【請求項３】
前記転倒防止ブラケットは、前記セグメントの壁面に沿う座プレートと、該座プレートに設けられトンネルの中心方向に向うバー受け片とを有し、前記座プレートは隣接する２箇所の注入孔に取付けられた請求項１のシールド掘進機の台車転倒防止装置。
【請求項４】
前記転倒防止ブラケットは、前記セグメントの壁面に沿う座プレートと、該座プレートに設けられトンネルの中心方向に向うバー受け片とを有し、該バー受け片は前記座プレートの強度部材として機能し、該座プレートは１箇所の注入孔に取付けられた請求項１のシールド掘進機の台車転倒防止装置。
【請求項１】
コンクリート製セグメントの注入孔に転倒防止ブラケットを取付け、掘進機本体に牽引される台車に進行方向に沿って延びる転倒防止バーを設け、前記台車が所定角度傾斜した場合に、前記転倒防止バーが前記転倒防止ブラケットに当接して転倒を防止する様構成したことを特徴とするシールド掘進機の台車転倒防止装置。
【請求項２】
前記転倒防止ブラケットは、前記注入孔を閉塞する閉塞栓にボルト付けされる請求項１のシールド掘進機の台車転倒防止装置。
【請求項３】
前記転倒防止ブラケットは、前記セグメントの壁面に沿う座プレートと、該座プレートに設けられトンネルの中心方向に向うバー受け片とを有し、前記座プレートは隣接する２箇所の注入孔に取付けられた請求項１のシールド掘進機の台車転倒防止装置。
【請求項４】
前記転倒防止ブラケットは、前記セグメントの壁面に沿う座プレートと、該座プレートに設けられトンネルの中心方向に向うバー受け片とを有し、該バー受け片は前記座プレートの強度部材として機能し、該座プレートは１箇所の注入孔に取付けられた請求項１のシールド掘進機の台車転倒防止装置。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【公開番号】特開２００８−２４０４３８（Ｐ２００８−２４０４３８Ａ）
【公開日】平成２０年１０月９日（２００８．１０．９）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００７−８４８１９（Ｐ２００７−８４８１９）
【出願日】平成１９年３月２８日（２００７．３．２８）
【出願人】（０００００００９９）株式会社ＩＨＩ (5,014)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２０年１０月９日（２００８．１０．９）
【国際特許分類】
【出願日】平成１９年３月２８日（２００７．３．２８）
【出願人】（０００００００９９）株式会社ＩＨＩ (5,014)
【Ｆターム（参考）】
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